JP4552911B2 - 車両用運転操作補助装置およびその装置を備えた車両 - Google Patents

車両用運転操作補助装置およびその装置を備えた車両 Download PDF

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Description

本発明は、運転者の操作を補助する車両用運転操作補助装置およびその装置を備えた車両に関する。
従来の車両用運転操作補助装置は、車両周囲の状況(障害物)を検出し、その時点における潜在的リスク度を求めている(例えば、特許文献1参照)。この車両用運転操作補助装置は、算出したリスクポテンシャルに基づいて操舵補助トルクを制御することにより、不慮の事態に至ろうとする操舵操作を抑制する。
本願発明に関連する先行技術文献としては次のものがある。
特開平10−211886号公報 特開平10−166889公報 特開平10−166890号公報
しかしながら、上述したような車両用運転操作補助装置においては、障害物との相対速度や距離等のわずかな変動に応じて操舵トルクが変動し、とくに定常走行中には運転者の感覚に沿った操舵トルク制御を行うことが困難であるという問題があった。
本発明による車両用運転操作補助装置は、自車両の走行状況および自車両周囲に存在する障害物の走行状況を検出する走行状況検出手段と、走行状況検出手段からの信号に基づいて、自車両の障害物に対するリスクポテンシャルを算出するリスクポテンシャル算出手段と、リスクポテンシャル算出手段からの信号に基づいて、車両操作機器に発生する操作反力を決定する操作反力決定手段と、操作反力決定手段によって決定される操作反力を発生するように車両操作機器を制御する車両操作機器制御手段と、自車両と障害物との走行状態が定常であるか否かを判定する走行状態判定手段と、走行状態判定手段によって走行状態が定常であると判定された場合、リスクポテンシャル算出手段によって算出されるリスクポテンシャルにヒステリシスを設けるリスクポテンシャル補正手段とを有し、操作反力決定手段は、走行状態判定手段によって走行状態が定常であると判定された場合、リスクポテンシャル補正手段によってヒステリシスが設けられたリスクポテンシャルに基づいて操作反力を決定する。
自車両と障害物との走行状態が定常である場合は、障害物認識信号に補正を加え、これに基づいてリスクポテンシャルを算出するので、定常走行中に車両操作機器の操作反力が必要以上に変動することを抑制することができる。
《第1の実施の形態》
本発明の第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置について、図面を用いて説明する。図1は、第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置1の構成を示すシステム図であり、図2は、車両用運転操作補助装置1を搭載した車両の構成図である。
まず、車両用運転操作補助装置1の構成を説明する。レーザレーダ10は、車両の前方グリル部もしくはバンパ部等に取り付けられ、水平方向に赤外光パルスを走査する。レーザレーダ10は、自車両の前方にある複数の反射物(通常、前方車の後端)で反射された赤外光パルスの反射波を計測し、反射波の到達時間より、前方車までの車間距離と相対速度を検出する。検出した車間距離および相対速度はコントローラ50へ出力される。レーザレーダ10によりスキャンされる前方の領域は、自車正面に対して±6deg程度であり、この範囲内に存在する障害物が検出される。
前方カメラ20は、フロントウィンドウ上部に取り付けられた小型のCCDカメラ、またはCMOSカメラ等であり、前方道路の状況を画像として検出し、コントローラ50へと出力する。前方カメラ20による検知領域は水平方向に±30deg程度であり、この領域に含まれる前方道路風景が画像として取り込まれる。
車速センサ30は、車輪の回転数等から自車両の走行車速を検出し、検出した自車速をコントローラ50に出力する。加速度センサ31は、車両前後方向の加速度を検出し、検出した自車両の加速度をコントローラ50に出力する。
コントローラ50は、CPUと、ROMおよびRAM等のCPU周辺部品とから構成されており、車両用運転操作補助装置1の全体の制御を行う。コントローラ50は、車速センサ30から入力される自車速と、レーザレーダ10から入力される距離情報と、前方カメラ20から入力される車両周辺の画像情報とから、自車両周囲の障害物状況を認識する。なお、コントローラ50は、前方カメラ20から入力される画像情報を画像処理することにより自車両周囲の障害物状況を認識する。第1の実施の形態における自車両周囲の障害物状況は、自車両前方を走行する先行車と自車両との車間距離と相対速度、および先行車の加減速度などである。
コントローラ50は、認識した障害物状況に基づいて自車両と障害物との走行状態を判定し、障害物状況認識信号を補正する。そして、コントローラ50は補正した障害物状況に基づいて障害物に対する自車両のリスクポテンシャルを算出し、後述するようにリスクポテンシャルに応じた制御を行う。
アクセルペダル反力制御装置80は、コントローラ50からの指令に応じて、アクセルペダル82のリンク機構に組み込まれたサーボモータ81で発生させるトルクを制御する。サーボモータ81は、アクセルペダル操作反力制御装置80からの指令値に応じて発生させる反力を制御し、運転者がアクセルペダル82を操作する際に発生する踏力を任意に制御することができる。また、アクセルペダル82のリンク機構にはアクセルペダル82のストローク量を検出するアクセルペダルストロークセンサ83が組み込まれている。アクセルペダルストロークセンサ83は、検出したアクセルペダルストローク量をコントローラ50へ出力する。コントローラ50は、入力されたストローク量に基づいて、アクセルペダル操作速度を算出する。
ブレーキペダル反力制御装置90は、コントローラ50からの指令に応じて、ブレーキブースタ91で発生させるブレーキアシスト力を制御する。ブレーキブースタ91は、ブレーキペダル反力制御装置90からの指令値に応じて発生させるブレーキアシスト力を制御し、運転者がブレーキペダル92を操作する際に発生する踏力を任意に制御することができる。ブレーキアシスト力が大きいほどブレーキペダル操作反力は小さくなり、ブレーキペダル92を踏み込みやすくなる。なお、ここではブレーキブースタ91によってエンジンの負圧を利用してブレーキアシスト力を発生させているが、これには限定されず、例えばコンピュータ制御による油圧力を用いてブレーキアシスト力を発生させることもできる。ブレーキペダルストロークセンサ93は、ブレーキペダル92のストローク量を検出し、コントローラ50に出力する。コントローラ50は、入力されたストローク量に基づいて、ブレーキペダル操作速度を算出する。
次に、第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置1の動作を説明する。まず、その動作の概略を説明する。第1の実施の形態においては、自車両周囲の障害物kとして自車線前方を走行する先行車を検出した場合について説明する。
コントローラ50は、自車両と先行車との走行状態に応じて障害物認識信号を補正し、補正した障害物認識信号に基づいて先行車に対するリスクポテンシャルを算出する。コントローラ50は、算出したリスクポテンシャルから車両前後方向の反力制御量を算出し、これを反力制御指令値としてアクセルペダル反力制御装置80およびブレーキペダル反力制御装置90へ出力する。アクセルペダル反力制御装置80は、入力されたアクセルペダル反力制御指令値に応じてサーボモータ81を制御し、アクセルペダル反力特性を変更する。また、ブレーキペダル反力制御装置90は、入力されたブレーキペダル反力制御指令値に応じてブレーキブースタ91を制御し、ブレーキペダル反力特性を変更する。
このように、先行車に対するリスクポテンシャルに応じてアクセルペダル/ブレーキペダル反力制御を行うことにより、運転者のアクセルペダル操作およびブレーキペダル操作を適切な方向へと促す。
以下に、上述した車両用運転操作補助装置1の動作の詳細を、図3を用いて説明する。図3は、第1の実施の形態によるコントローラ50における運転操作補助制御処理の処理手順を示すフローチャートである。なお、本処理内容は一定間隔、例えば50msec毎に連続的に行われる。
ステップS100で、自車両の走行状況を読み込む。走行状況は、自車両周囲の障害物状況を含む自車両の走行状況に関する情報である。そこで、レーザレーダ10、前方カメラ20、車速センサ30,加速度センサ31、ストロークセンサ83,93による検出信号を読み込む。
ステップS200では、ステップS100で読み込んだ走行状況データに基づいて、現在の車両周囲状況を認識する。ここでは、前回の処理周期以前に検出され、コントローラ50のメモリに記憶されている走行状況データと現在の走行状況データとにより、現在の障害物、すなわち先行車が自車両に対してどのように移動しているかを認識する。具体的には、先行車までの車間距離Dyk、相対速度Vryk、先行車速V1k、先行車加速度a1k、および自車速V0,自車加速度a0を認識する。また、運転者によるアクセルペダル82の操作速度APO_OMGと、ブレーキペダル92の操作速度BRK_OMGを認識する。
ステップS300では、ステップS200で認識した障害物状況に基づいて、先行車に対する自車両の走行状態を判定する。ここでは、自車両と先行車の走行状態が定常状態であるか非定常状態であるかを判定する。ここで、自車両と先行車との相対位置関係が変化せず、自車両が先行車に追従走行していくと予測される状態を、定常走行状態とする。以下に、ステップS300における先行車に対する走行状態判定処理を、図4のフローチャートを用いて説明する。
ステップS301において、自車両と先行車との相対速度Vrykの絶対値が所定値Vry0よりも小さいか否かを判定する。すなわち、相対速度Vrykが所定範囲内であるか否かを判定する。相対速度の絶対値|Vryk|が所定値Vry0、例えば1[m/s2]よりも小さい場合は、ステップS302へ進む。
ステップS302では、自車両と先行車との車間時間THWykが所定範囲以内であるいか否かを判定する。車間時間THWykが所定値THWd0、例えば0.5[sec]より大きく、かつ、所定値THWd1、例えば2.5[sec]よりも小さい場合(THWd0<THWyk<THWd1)は、ステップS303へ進む。ここで、車間時間THWykは(式1)に表すように、車間距離Dykを自車速V0で除したものであり、先行車の現在位置に自車両が到達するまでの時間を示す。
THWyk=Dyk/V0 (式1)
なお、自車両が先行車に追従し、自車速V0=先行車速V1kの場合は、(式1)において自車速V0の代わりに先行車速V1を用いることもできる。
ステップS303では、自車加速度a0の絶対値が所定値ad0よりも小さいか否かを判定する。すなわち、自車両の加速度あるいは減速度が所定範囲内であるか否かを判定する。自車加速度の絶対値|a0|が所定値ad0、例えば0.5[m/s2]よりも小さい場合は、ステップS304へ進む。
ステップS304では、先行車の加速度a1の絶対値が所定値ad1よりも小さいか否かを判定する。すなわち、先行車の加速度あるいは減速度が所定範囲内であるか否かを判定する。先行車加速度の絶対値|a1|が所定値ad1、例えば0.5[m/s2]よりも小さい場合は、ステップS305へ進む。
ステップS305では、アクセルペダル操作速度APO_OMGの絶対値が所定値APO_OMGよりも小さいか否かを判定する。すなわち、アクセルペダル82の踏み込み操作時、および戻し操作時の操作速度APO_OMGについて判定を行う。アクセルペダル操作速度の絶対値|APO_OMG|が所定値APO_OMGd、例えば10[%/s]よりも小さい場合は、ステップS306へ進む。ここで、アクセルペダル操作速度APO_OMGは、アクセルペダル82の全ストローク量を100%とし、単位時間に何パーセントのストローク量が操作されたかを示している。
ステップS306では、ブレーキペダル操作速度BRK_OMGの絶対値が所定値BRK_OMGdよりも小さいか否かを判定する。すなわち、ブレーキペダル92の踏み込み操作時、および戻し操作時の操作速度BRK_OMGについて判定を行う。ブレーキペダル操作速度の絶対値|BRK_OMG|が所定値BRK_OMGd、例えば15[%/s]よりも小さい場合は、ステップS307へ進む。ここで、ブレーキペダル操作速度BRK_OMGは、ブレーキペダル92の全ストローク量を100%とし、単位時間に何パーセントのストローク量が操作されたかを示している。
ステップS307では、ステップS301〜S306が全て肯定されており、自車両と先行車が定常走行状態であると判断する。すなわち、自車速V0、先行車速V1kおよび車間距離Dykがほぼ一定で自車両が先行車に追従走行しており、アクセルペダル82およびブレーキペダル92の操作がゆるやかである場合を、前後方向の定常走行状態とする。この場合、先行車に対する前後方向の走行状態フラグflgSTATEyk=1にセットしてこの処理を終了する。
一方、ステップS301〜S306のいずれかが否定判定されると、ステップS308へ進む。ステップS308では、自車両と先行車が非定常走行状態であると判断して、先行車に対する前後方向の走行状態フラグflgSTATEyk=0にセットしてこの処理を終了する。
このようにステップS300において自車両と先行車との走行状態を判定すると、ステップS400へ進む。ステップS400では、ステップS300で判定された走行状態に応じて、障害物認識信号を補正する。自車両と障害物kとの走行状態が定常状態である場合には、障害物認識信号を補正し、アクセルペダル82およびブレーキペダル92に発生するペダル反力の変動を抑える。具体的には、先行車との車間距離Dykに対してヒステリシス処理を施し、相対速度Vrykに対して不感帯を設けることによって補正を加える。一方、自車両と障害物kとの走行状態が非定常状態である場合には、障害物認識信号は補正せず、走行状況の変化を速やかにアクセルペダル反力制御およびブレーキペダル反力制御に反映させる。
まず、車間距離Dykに対して行うヒステリシス処理について説明する。図5に、ヒステリシス処理の概要を示す。図5の横軸は先行車との実際の車間距離Dykを示し、縦軸は補正処理後の車間距離Dy_hoseikを示している。図5に示すように、自車両と先行車との走行状態が非定常状態の場合、ヒステリシスを持たない直線Ly0を用いて補正処理後の車間距離Dy_hoseikを算出する。すなわち、Dy_hoseik=Dykとなる。一方、自車両と先行車との走行状態が定常状態の場合、特性線Ly1に示すようにヒステリシスを持たせて補正した車間距離Dy_hoseikを算出する。ヒステリシス幅αdyは、走行状況に応じて設定する。
以下に、車間距離Dykに対して行うヒステリシス処理の詳細を、図6のフローチャートを用いて説明する。
ステップS401において、上述したステップS300で判定した走行状態フラグflgSTATEykがであるか否か、すなわち自車両と先行車との走行状態が定常状態であるか否かを判定する。定常状態の場合は、ステップS402へ進む。一方、非定常状態の場合は、ステップS415へ進み、ヒステリシス処理は行わずに実際に検出された車間距離Dykを補正値Dy_hoseik(Dy_hoseik=Dyk)として設定する。これにより、実際の車間距離Dykを用いて先行車に対するリスクポテンシャルを算出し、反力制御に速やかに反映させるようにする。
ステップS402では、走行状態フラグの前回値flgSTATEyk_zが1であるか否かを判定する。なお、前回値flgSTATEyk_zはコントローラ50のメモリに記憶されている。前回値flgSTATEy_zが1の場合は前回周期においても定常状態であるので、ステップS403へ進み、車間距離Dyにヒステリシスを設ける処理を行う。一方、前回値flgSTATEy_zが1ではない、すなわち今回の処理において定常状態に移行した場合は、ステップS415へ進み、車間距離の補正値Dy_hoseikの初期値として実際に検出した車間距離Dykを設定する。
ステップS403〜S408では、図5に示すヒステリシス幅αdyを算出するため補正係数を算出する。まず、ステップS403においては、自車両と先行車との相対速度Vrykに応じた補正係数Svryを算出する。図7に、相対速度Vrykに対する補正係数Svryのマップを示す。このマップは予め適切に設定され、コントローラ50のメモリに記憶されている。マップに示す所定値Vry0は、上述したステップS301で用いた所定値Vry0と同じ値である。
図7に示すように、相対速度Vrykが所定範囲内(−Vry0<Vryk<Vry0)の場合は、相対速度Vrykが0に近づくにつれて補正係数Svryが大きくなり、相対速度Vrykが0近傍で補正係数Svry=1となる。相対速度Vrykが所定値範囲外の場合は、補正係数Svry=0とする。
ステップS404では、先行車に対する車間時間THWykに応じた補正係数Sthrを算出する。図8に、車間時間THWykに対する補正係数Sthwのマップを示す。このマップは予め適切に設定され、コントローラ50のメモリに記憶されている。マップに示す所定値THWd0,THWd1は、上述したステップS302で用いた所定値と同じ値である。図8に示すように、車間時間THWykが所定範囲内(THWd0<THWyk<THWd1)の場合は、車間時間THWykが所定範囲の中間値(THWd1−THWd0)/2に近づくにつれて補正係数Sthwが大きくなり、車間時間THWykが中間値近傍で補正係数Sthw=1となる。車間時間THWykが所定範囲外の場合は、補正係数Sthw=0とする。
ステップS405では、自車加速度a0に応じた補正係数Sa0を算出する。図9に、自車加速度a0に対する補正係数Sa0のマップを示す。このマップは予め適切に設定され、コントローラ50のメモリに記憶されている。マップに示す所値ad0は、上述したステップS303で用いた所定値と同じ値である。図9に示すように、自車加速度a0が所定範囲内(−ad0<a0<ad0)の場合は、自車加速度a0が0に近づくにつれて補正係数Sa0が大きくなり、自車加速度a0が0近傍で補正係数Sa0=1となる。
ステップS406では、先行車加速度a1kに応じた補正係数Sa1を算出する。図10に、先行車加速度a1kに対する補正係数Sa1のマップを示す。このマップは予め適切に設定され、コントローラ50のメモリに記憶されている。マップに示す所定値ad1は、上述したステップS304で用いた所定値と同じ値である。図10に示すように、先行車加速度a1kが所定範囲内(−ad1<a1k<ad1)の場合は、先行車加速度a1kが0に近づくにつれて補正係数Sa1が大きくなり、先行車加速度a1kが0近傍で補正係数Sa1=1となる。
ステップS407では、アクセルペダル操作速度APO_OMGに応じた補正係数Sapoを算出する。図11に、アクセルペダル操作速度APO_OMGに対する補正係数Sapoのマップを示す。このマップは予め適切に設定され、コントローラ50のメモリに記憶されている。マップに示す所定値APO_OMGdは、上述したステップS305で用いた所定値と同じ値である。図11に示すように、アクセルペダル操作速度APO_OMGが所定範囲内(−APO_OMGd<APO_OMG<APO_OMGd)の場合は、アクセルペダル操作速度APO_OMGが0に近づくにつれて補正係数Sapoが大きくなり、操作速度APO_OMGが0近傍で補正係数Sapo=1となる。
ステップS408では、ブレーキペダル操作速度BRK_OMGに応じた補正係数Sbrkを算出する。図12に、ブレーキペダル操作速度BRK_OMGに対する補正係数Sbrkのマップを示す。このマップは予め適切に設定され、コントローラ50のメモリに記憶されている。マップに示す所定値BRK_OMGdは、上述したステップS306で用いた所定値と同じ値である。図12に示すように、ブレーキペダル操作速度BRK_OMGが所定範囲内(−BRK_OMGd<BRK_OMG<BRK_OMGd)の場合は、ブレーキペダル操作速度BRK_OMGが0に近づくにつれて補正係数Sbrkが大きくなり、操作速度BRK_OMGが0近傍で補正係数Sbrk=1となる。
ステップS409では、ステップS403〜S408で算出した補正係数Svry、Sthw、Sa0、Sa1、Sapo、Sbrkと、ヒステリシス幅基準値αdy_baseとを用いて、ヒステリシス幅αdyを算出する。ヒステリシス幅基準値αdy_baseは、例えば5[m]とする。ヒステリシス幅αdyは、以下の(式2)によって表される。
αdy=αdy_base×Svry×Sthw×Sa0×Sa1×Sapo×Sbrk (式2)
ステップS410では、前回周期で設定しメモリに記憶されている車間距離の補正値Dy_hoseik_zに、ステップS409で算出したヒステリシス幅αdyを加算した値(Dy_hoseik_z+αdy)が、現在の車間距離Dykよりも小さいか否かを判定する。ステップS410が肯定判定されると、ステップS411へ進み、以下の(式3)に従って車間距離の補正値Dy_hoseikを設定する。
Dy_hoseik=Dyk−αdy (式3)
このように、車間距離Dykが、前回の補正値Dy_hoseik_zとヒステリシス幅αdyとの和よりも大きくなった場合は、車間距離Dykからヒステリシス幅αdyを引いた値を補正値Dy_hoseikとする。これにより、定常状態において車間距離Dykの変動を抑制するよう補正する。
一方、ステップS410が否定判定されると、ステップS412へ進む。ステップS412では、車間距離の前回補正値Dy_hoseik_zからヒステリシス幅αdyを引いた値(Dy_hoseik_z−αdy)が、車間距離Dykを上回るか否かを判定する。ステップS412が肯定判定されると、ステップS413へ進み、以下の(式4)に従って車間距離の補正値Dy_hoseikを設定する。
Dy_hoseik=Dyk+αdy (式4)
このように、車間距離Dykが、前回の補正値Dy_hoseik_zとヒステリシス幅αdyとの差よりも大きくなった場合は、車間距離Dykにヒステリシス幅αdyを加算した値を補正値Dy_hoseikとする。これにより、定常状態において車間距離Dykの変動を抑制するよう補正する。
一方、ステップS412が否定判定されると、ステップS414へ進む。この場合、車間距離Dykは、前回補正値Dy_hoseik_zとヒステリシス幅αdyとの差以上、かつ、前回補正値Dy_hoseik_zとヒステリシス幅αdyとの和以下であり、ヒステリシス幅αdy内に入っている。そこで、前回の補正値Dy_hoseik_zを、今回の車間距離補正値Dy_hoseikとして設定する。
ステップS416では、次回以降の処理のために、ステップS411,S413,S414,あるいはS415で設定した車間距離補正値Dy_hoseikを、前回値Dy_hoseik_zとして設定するとともに、フラグflgSTATEykを前回値flgSTATEyk_zとして設定する。これにより、今回の処理を終了する。なお、後述するリスクポテンシャル算出処理においては、今回算出した車間距離補正値Dy_hoseikを用いる。
つぎに、相対速度Vrykに対する不感帯の設定について説明する。図13に、不感帯設定処理の概要を示す。図13の横軸は実際の相対距離Vrykを示し、縦軸は補正処理後の相対速度Vry_hoseikを示している。図13に示すように、自車両と先行車との走行状態が定常状態の場合、相対速度Vrykが0付近において不感帯、すなわち実際の相対速度Vrykが変化した場合にも補正値Vry_hoseikが変化しない領域を設ける。不感帯幅αvryは、走行状況に応じて設定する。なお、相対速度Vrykが不感帯内にある場合、相対速度補正値Vry_hoseik=0とする。また、相対速度Vrykが不感帯外にある場合(Vryk>αvryk/2、あるいはVryk<−αvryk/2)、Vryk=±αvryk/2のときにVryk=0として、相対速度補正値Vry_hoseikが相対速度Vrykに比例するように設定する。
相対速度Vrykに対して行う不感帯処理の詳細を、図14のフローチャートを用いて説明する。
ステップS421において、上述したステップS300で判定した先行車との前後方向走行状態フラグflgSTATEykが1であるか否か、すなわち自車両と先行車との走行状態が定常状態であるか否かを判定する。定常状態の場合は、ステップS422へ進む。一方、非定常状態の場合は、ステップS433へ進み、不感帯処理は行わずに実際に検出された相対速度Vrykを補正値Vry_hoseik(Vry_hoseik=Vryk)として設定する。これにより、実際の相対速度Vrykを用いて先行車に対するリスクポテンシャルを算出し、反力制御に速やかに反映させるようにする。
ステップS422〜S426では、図13に示す不感帯幅αvryを算出するための補正係数を算出する。ステップS422〜S426での処理は、図6に示したステップS404〜S408での処理と同様であるので説明を省略する。ただし、ここでは相対速度Vrykに応じた補正係数Svryは算出しない。
ステップS427では、ステップS422〜S426で算出した補正係数Sthw、Sa0、Sa1、Sapo、Sbrkと、不感帯幅基準値αvry_baseとを用いて、不感帯幅αvryを算出する。不感帯幅基準値αvry_baseは、例えば1[m/s]とする。不感帯幅αvryは、以下の(式5)によって表される。
αvry=αvry_base×Sthw×Sa0×Sa1×Sapo×Sbrk (式5)
ステップS428では、現在の相対速度Vrykが不感帯よりも大きい領域にあるか否か、すなわちVryk>αvry/2であるか否かを判定する。ステップS428が肯定判定されると、ステップS429へ進み、以下の(式6)に従って相対速度Vry_hoseikを設定する。
Vry_hoseik=Vryk−αvry/2 (式6)
このように、相対速度Vrykがαvry/2より大きく、不感帯の外側にある場合は、相対速度Vrykから不感帯幅αvry/2を引いた値を補正値Vry_hoseikとする。これにより、定常状態において相対速度Vrykの変動を抑制するよう補正する。
一方、ステップS428が否定判定されると、ステップS430へ進む。ステップS430では、相対速度Vrykが不感帯よりも小さい領域にあるか否か、すなわちVryk<−αvry/2であるか否かを判定する。ステップS430が肯定判定されると、ステップS431へ進み、以下の(式7)に従って相対速度Vry_hoseikを設定する。
Vry_hoseik=Vryk+αvry/2 (式7)
このように、相対速度Vrykが−αvry/2より小さく、不感帯の外側にある場合は、相対速度Vrykに不感帯幅αvry/2を加算した値を補正値Vry_hoseikとする。これにより、定常状態において相対速度Vrykの変動を抑制するよう補正する。
一方、ステップS430が否定判定されると、ステップS432へ進む。この場合、相対速度Vrykは不感帯幅αvry内に入っている。そこで、相対速度補正値Vry_hoseikを0に設定する。これにより、今回の処理を終了する。
なお、図6に示すヒステリシス処理と図14に示す不感帯処理は、ステップS400においてパラレルに行われる。図6および図14の処理を終了すると、図3のフローチャートのステップS500に進む。
ステップS500では、ステップS400において補正した車間距離Dy_hoseikおよび相対速度Vry_hoseikを用いて、先行車に対する余裕時間TTCyk(Time To Collision)を算出する。余裕時間TTCykは、以下の(式8)を用いて算出することができる。
TTCyk=Dy_hoseik/Vry_hoseik (式8)
ここで、余裕時間TTCykは、先行車に対する現在の自車両の接近度合を示す物理量であり、現在の走行状況が継続した場合、つまり相対車速Vrykが一定の場合に、何秒後に自車両と先行車が接触するかを示す値である。
続くステップS600では、ステップS500で算出した余裕時間TTCykを用いて先行車に対するリスクポテンシャルRPykを算出する。リスクポテンシャルRPykは、以下の(式9)を用いて算出することができる。
RPyk=1/TTCyk×Wk (式9)
ここで、Wk:障害物kの重みを示す。(式9)に示すように、リスクポテンシャルRPykは、余裕時間TTCykの逆数を用いて、余裕時間TTCykの関数として表されている。リスクポテンシャルRPykが大きいほど、先行車への接近度合が高いことを示している。なお、ここで算出した先行車に対するリスクポテンシャルRPykは、車両前後方向に発生するリスクポテンシャルRPlongitudinalを示している。
障害物kの重みは、障害物の種別に応じて設定する。例えば、障害物kが四輪車両、二輪車両あるいは歩行者である場合、自車両が障害物kに近接した場合の重要度、つまり影響度が高いため、重みWk=1に設定する。一方、障害物kが白線である場合、自車両が白線に近接した場合の重要度は他の障害物に比べて相対的に小さくなる。そこで、重みWk=0.5程度に設定する。また、白線の向こう側に隣接車線が存在する場合と、白線の向こう側に隣接車線が存在せずガードレールのみの場合では、自車両近接時の重要度が異なるため、重みWkを異なるように設定することもできる。なお、第1の実施の形態においては障害物kは先行車であるので、重みWk=1に設定する。
ステップS600で前後方向リスクポテンシャルRPlongitudinalを算出した後、ステップS900へ進む。ステップS900では、リスクポテンシャルRPlongitudinalに基づいて、前後方向反力制御指令値、すなわちアクセルペダル反力制御装置80へ出力する反力制御指令値FAと、ブレーキペダル反力制御装置90へ出力する反力制御指令値FBとを算出する。アクセルペダル82に関しては、リスクポテンシャルRPlongitudinalが大きくなるほどペダルを戻す方向へ制御反力を発生させる。ブレーキペダル92に関しては、リスクポテンシャルRPlongitudinalが大きくなるほどペダルを踏み込みやすい方向へ制御反力を発生させる。
図15に、前後方向リスクポテンシャルRPlongitudinalに対するアクセルペダル反力制御指令値FAの特性の一例を示す。図15に示すように、リスクポテンシャルRPlongitudinalが所定値RP0より大きく、かつ所定値RPmaxよりも小さい場合、リスクポテンシャルRPlongitudinalが大きいほど、大きなアクセルペダル反力を発生させるようにアクセルペダル反力制御指令値FAを算出する。リスクポテンシャルRPlongitudinalが所定値RPmax以上の場合には、最大のアクセルペダル反力を発生させるように、アクセルペダル反力制御指令値FAを最大値FAmaxに固定する。
図16に、前後方向リスクポテンシャルRPlongitudinalに対するブレーキペダル反力制御指令値FBの特性の一例を示す。図16に示すように、リスクポテンシャルRPlongitudinalが所定値RPmax以上の場合、リスクポテンシャルRPlongitudinalが大きいほど、小さなブレーキペダル反力、すなわち大きなブレーキアシスト力を発生させるようにブレーキペダル反力制御指令値FBを算出する。リスクポテンシャルRPlongitudinalが所定値RP1より大きくなると、最小のブレーキペダル反力を発生させるように反力制御指令値FBをFBminに固定する。リスクポテンシャルRPlongitudinalが所定値RPmaxよりも小さい場合は、ブレーキペダル反力制御指令値FBをゼロに設定し、ブレーキペダル反力特性は変化させない。
図15に示すように、前後方向リスクポテンシャルRPlongitudinalが所定値RPmaxより小さい場合は、リスクポテンシャルRPlongitudinalが大きくなるほどアクセルペダル反力を大きくして、運転者によるアクセルペダル操作を適切な方向へと促す。リスクポテンシャルRPlongitudinalが所定値RPmax以上の場合には、アクセルペダル反力制御指令値FAを最大として運転者がアクセルペダル82を開放するよう促す。さらに、図16に示すように、リスクポテンシャルRPlongitudinalが所定値RPmax以上の場合には、運転者がアクセルペダル操作からブレーキペダル操作へと移行した際にブレーキペダル82を踏み込みやすいようにブレーキペダル反力制御を行う。
つづくステップS1100において、ステップS900で算出した前後方向制御指令値FA、FBをアクセルペダル反力制御装置80およびブレーキペダル反力制御装置90にそれぞれ出力する。アクセルペダル反力制御装置80およびブレーキペダル反力制御装置90は、コントローラ50から出力される指令値に応じてアクセルペダル反力およびブレーキペダル反力をそれぞれ制御する。これにより、今回の処理を終了する。
このように、以上説明した第1の実施の形態においては、以下の作用効果を奏することができる。
(1)自車両周囲の障害物kの走行状況を検出し、障害物状況認識信号に基づいて自車両と障害物kとの走行状態を検出した。走行状態に応じて補正した障害物状況認識信号に基づいて障害物kに対するリスクポテンシャルRPykを算出する。自車両と障害物kとの走行状態が定常である場合は、障害物認識信号に補正を加え、これに基づいてリスクポテンシャルRPykを算出するので、定常走行中に車両操作機器の操作反力が必要以上に変動することを抑制し、運転者に与える煩わしさを低減することができる。
(2)コントローラ50は、自車両と障害物kとの距離Dykの関数と相対速度Vrk、障害物の加速度a1k、および自車両の加速度a0のうち、少なくともいずれかを用いて走行状態を判定する。これにより、自車両と障害物kとの走行状態が定常か非定常かを正確に判定することができる。定常走行を、自車両と障害物kとの距離の関数、ここでは車間時間THWykが所定範囲内で、相対速度Vryk、障害物の加速度a1kおよび自車両の加速度a0がほぼ0である状態と定義し、車間時間THWykと相対速度Vryk、障害物の加速度a1k、および自車両の加速度a0を全て用いて走行状態を判定すると、自車両と障害物kとの走行状態をより正確に判定することができる。
(3)運転者による自車両への操作入力量を用いて自車両と障害物kとの走行状態を判定することにより、運転者の操作意図を加味して走行状態を判定することができる。アクセルペダル操作速度APO_OMGあるいはブレーキペダル操作速度BRK_OMGを用いることにより、運転者の運転意図を予測して、実際に自車両と障害物kとの距離Dyk、相対速度Vrykあるいは自車加速度a0が変化するよりも早いタイミングで走行状態を判定することができる。例えば、アクセルペダル操作速度APO_OMGを検出する場合、定常走行中にアクセルペダル82を単位時間に所定量以上踏み込んだとき、すなわちアクセルペダル操作速度APO_OMGが所定値APO_OMGd以上のときは、運転者に定常走行から非定常走行へ移行する意志があると予測し、非定常状態と判定する。ブレーキペダル操作速度BRK_OMGを用いて走行状態を判定する場合も同様に、操作速度が所定範囲内である場合は定常走行と判定し、操作速度BRK_OMGが所定範囲以上となると非定常走行と判定する。
(4)自車両と障害物kとの距離Dykおよび相対速度Vrykの少なくともいずれかを補正し、これらに基づいてリスクポテンシャルRPykを算出するので、定常走行中は車両操作機器の操作反力が必要以上に変動することを抑制し、ドライバの煩わしさを低減することができる。
(5)自車両と障害物kとの相対速度Vrykに対してゼロ近傍に不感帯を設けるので、定常走行中は相対速度Vrykの変動を抑制して車両操作機器の操作反力の変動を抑制する。一方、非定常走行中は実際の相対速度VrykによるリスクポテンシャルRPykを算出し、車両操作機器の反力制御を行う。これにより、運転者の感覚に沿った反力制御を行うことができる。
(6)自車両と障害物kとの距離Dykに対してヒステリシス処理を行うので、定常走行中は距離の変動を抑制し、非定常走行中は実際の距離を用いて、運転者の感覚に沿った反力制御を行うことができる。
(7)自車両と障害物kとの距離の関数、ここでは車間時間THWyk、相対速度Vryk、障害物の加速度a1k、自車加速度a0、アクセルペダル操作速度APO_OMGおよびブレーキペダル操作速度BRK_OMGの少なくともいずれかを用いて不感帯幅、あるいはヒステリシス幅を設定する。これにより、自車両および障害物kの走行状況に応じて距離Dykあるいは相対速度Vrykの補正を行うことができる。例えば追従走行中に先行車が所定値以上減速した場合に、不感帯幅αvryおよびヒステリシス幅αdyを基準値よりも小さく設定することにより、先行車に対するリスクポテンシャルRPykを速やかに反力制御に反映させることができる。また、運転者がアクセルペダル82あるいはブレーキペダル92を大きく操作した場合には不感帯幅およびヒステリシス幅を小さくして、実際の距離Dykおよび相対速度Vrykに応じたリスクポテンシャルを反力制御に速やかに反映させることができる。
《第2の実施の形態》
つぎに、本発明の第2の実施の形態による車両用運転操作補助装置について説明する。上述した第1の実施の形態においては、車両周囲の障害物として自車線前方の先行車、すなわち車両前後方向の障害物を検出したときに、アクセルペダルおよびブレーキペダル反力制御を行う場合について説明した。第2の実施の形態では、車両周囲に存在する複数の障害物、すなわち車両前後方向の障害物および車両横方向の障害物を検出した場合を説明する。
図17は、第2の実施の形態による車両用運転操作補助装置2の構成を示すシステム図であり、図18は、車両用運転操作補助装置2を搭載した車両の構成図である。図17および図18において、上述した第1の実施の形態と同様の機能を有する部分には同一の符号を付している。ここでは、第1の実施の形態との相違点を主に説明する。
後側方カメラ21は、リアウィンドウ上部の左右端付近に取り付けられた小型のCCDカメラ、またはCMOSカメラ等である。後側方カメラ21は、自車後側方の道路、とくに隣接車線上の状況を画像として検出し、コントローラ50Aへ出力する。
操舵反力制御装置60は、車両の操舵系に組み込まれ、コントローラ50Aから出力される指令に応じて、サーボモータ61で発生させるトルクを制御する。サーボモータ61は、操舵反力制御装置60からの指令値に応じて発生させるトルクを制御し、運転者がステアリングホイール62を操作する際の操舵反力を任意に制御することができる。舵角センサ63は、ステアリングホイール62の回転角度、すなわち操舵角を検出し、コントローラ50Aへ出力する。
次に、第2の実施の形態による車両用運転操作補助装置2の動作を説明する。まず、その動作の概略を説明する。第2の実施の形態においては、自車両周囲の障害物kとして自車線前方を走行する先行車および隣接車線を走行する隣接車両を検出した場合について説明する。隣接車両は自車両の側方を走行しているものとする。
コントローラ50Aは、車両周囲に存在する各障害物kの走行状況を認識し、自車両と各障害物kとの走行状態を判定する。そして、判定した走行状態に応じて障害物認識信号を補正し、補正した障害物認識信号に基づいて各障害物kに対するリスクポテンシャルを算出する。各障害物kに対するリスクポテンシャルは車両前後方向および左右方向成分毎に加算され、これらに基づいて前後方向の反力制御量および左右方向の反力制御量を算出する。
算出された前後方向反力制御量は、前後方向反力制御指令値としてアクセルペダル反力制御装置80およびブレーキペダル反力制御装置90へ出力される。アクセルペダル反力制御装置80は、入力されたアクセルペダル反力制御指令値に応じてサーボモータ81を制御し、アクセルペダル反力特性を変更する。また、ブレーキペダル反力制御装置90は、入力されたブレーキペダル反力制御指令値に応じてブレーキブースタ91を制御し、ブレーキペダル反力特性を変更する。
また、算出された左右方向反力制御量は、左右方向反力制御指令値として操舵反力制御装置60へ出力される。操舵反力制御装置60は、入力された反力制御指令値に応じてサーボモータ61を制御し、操舵反力特性を変更する。
このように、車両前後方向のリスクポテンシャルに応じてアクセルペダル/ブレーキペダル反力制御を行い、運転者のアクセルペダル操作およびブレーキペダル操作を適切な方向へと促す。また、車両左右方向のリスクポテンシャルに応じて操舵反力制御を行い、運転者の操舵操作を適切な方向へと促す。
以下に、上述した車両用運転操作補助装置2の動作の詳細を、図19を用いて説明する。図19は、第2の実施の形態によるコントローラ50Aにおける運転操作補助制御処理の処理手順を示すフローチャートである。なお、本処理内容は一定間隔、例えば50msec毎に連続的に行われる。
ステップS100Aにおいて、自車両の走行状況を読み込む。ここで読み込む走行状況は、上述した図3のステップS100で読み込む自車両周囲の障害物状況を含む自車両の走行状況に関する情報と同様である。ただし、ステップS100Aにおいては、さらに、後側方カメラ21からの画像入力および舵角センサ63による検出信号を読み込む。
ステップS200Aでは、ステップS100Aで読み込んだ走行状況データに基づいて、現在の車両周囲状況を認識する。ここでは、前回の処理周期以前に検出され、コントローラ50Aのメモリに記憶されている走行状況データと現在の走行状況データとにより、現在の各障害物kの自車両に対する相対位置、その移動方向および相対速度を認識する。そして、各障害物kが自車両周囲にどのように配置され、自車両に対してどのように移動しているかを認識する。
具体的には、自車線前方の先行車および隣接車線上の隣接車両を認識し、自車両と先行車との車間距離Dyk、相対速度Vryk、先行車加速度a1k,先行車速V1k,および自車速V0、自車加速度a0、運転者によるアクセルペダル操作速度APO_OMGおよびブレーキペダル操作速度BRK_OMGを認識する。さらに、自車両と隣接車両との車間距離Dxkおよび相対速度Vrxk、運転者によるステアリング操舵角STRを認識する。ここで、車間距離Dyk、および相対速度Vrykは車両前後方向の値であり、車間距離Dxk、および相対速度Vrxkは車両左右方向の値である。車両左右方向の相対速度Vrxkは、例えば車両右方向の移動速度を正の値、車両左方向の移動速度を負の値とし、自車両の左右方向移動速度をV0x、隣接車両の左右方向移動速度をVxkとすると、V0x−Vxkとして表される。
ステップS300Aでは、ステップS200Aで認識した障害物状況に基づいて、各障害物kに対する自車両の走行状態を判定する。ここでは、自車両と各障害物kとの走行状態が定常状態であるか非定常状態であるかを判定する。自車両と先行車との前後方向走行状態の判定処理は、図4のフローチャートに示した処理と同様であるので省略する。以下に、ステップS300Aにおいて実行される、隣接車両に対する左右方向走行状態判定処理を、図20のフローチャートを用いて説明する。ここで、自車両と隣接車両が現在の相対位置を維持しながら並行して走行することが予測される状態を定常走行状態とする。
ステップS351において、自車両と隣接車両との左右方向相対速度Vrxkの絶対値が所定値Vrx0よりも小さいか否かを判定する。すなわち、相対速度Vrxkが所定範囲内であるか否かを判定する。ここで、左右方向相対速度Vrxkの絶対値を用いることにより、自車両と隣接車両との移動方向に関わらず判定を行うことができる。相対速度の絶対値|Vrxk|が所定値Vrx0、例えば0.5[m/s2]よりも小さい場合は、ステップS352へ進む。
ステップS352では、自車両と隣接車両との車間距離Dxkの絶対値が所定範囲以内であるいか否かを判定する。車間距離の絶対値|Dxk|が所定値Dd0、例えば1.5[m]より大きく、かつ、所定値Dd1、例えば3[m]よりも小さい場合(Dd0<|Dxk|<Dd1)は、ステップS353へ進む。ここで、例えば隣接車両が自車両の右側に存在する場合の車間距離Dxkを正の値、左側に存在する場合の車間距離Dxkを負の値で表すと。車間距離Dxkの絶対値を用いることにより、隣接車両が自車両の右側に存在する場合も、左側に存在する場合も、同様に判定を行うことができる。
ステップS353では、操舵角STRの絶対値が所定値STRdよりも小さいか否かを判定する。すなわち、操舵角STRが所定範囲内であるか否かを判定する。ここで、例えばステアリングホイール62の中立位置を0[deg]とし、右方向へ操舵したときの操舵角STRを正の値、左方向へ操舵したときの操舵角STRを負の値で表す。操舵角の絶対値|STR|が所定値STRd、例えば10[deg]よりも小さい場合は、ステップS354へ進む。
ステップS354では、ステップS351〜S353が全て肯定されており、自車両と隣接車両が定常走行状態であると判断する。すなわち、自車両と隣接車両との間隔がほぼ一定で自車両と隣接車両が並行してほぼ直進走行している場合を、左右方向の定常走行状態とする。この場合、左右方向の走行状態フラグflgSTATEx=1にセットしてこの処理を終了する。
一方、ステップS351〜S353のいずれかが否定判定されると、ステップS355へ進む。ステップS355では、自車両と隣接車両が非定常走行状態であると判断して、左右方向の走行状態フラグflgSTATEx=0にセットしてこの処理を終了する。
このようにステップS300Aにおいて自車両と自車両周囲の各障害物kとの走行状態を判定すると、ステップS400Aへ進む。
ステップS400Aでは、ステップS300Aで判定された前後方向および左右方向の走行状態に応じて、ステップS200Aで認識した障害物認識信号を補正する。前後方向の車間距離Dykおよび相対速度Vrykに関しては、前後方向の走行状態に応じて、上述した第1の実施の形態と同様に、それぞれヒステリシス処理および不感帯処理を行う。また、左右方向の車間距離Dxkおよび相対速度Vrxkに関しては、左右方向の走行状態が定常状態である場合に、ヒステリシス処理および不感帯処理をそれぞれ行い補正を加える。一方、左右方向の走行状態が非定常状態である場合には、左右方向の車間距離Dxkおよび相対速度Vrxkは補正せず、走行状況の変化を速やかに操舵反力制御に反映させる。
前後方向の車間距離Dykに対するヒステリシス処理、および相対速度Vrykに対する不感帯処理は、上述した図6および図14で実行する処理と同様であるので説明を省略する。
まず、左右方向の車間距離Dxkに対して行うヒステリシス処理について説明する。図21に、左右方向車間距離補正処理の概要を示す。図21の横軸は実際の左右方向車間距離Dxkを示し、縦軸は補正処理後の車間距離Dx_hoseikを示している。図21において車間距離Dxkの正の値は、自車両とその右方向に存在する隣接車両との車間距離Dxkを示し、車間距離Dxkの負の値は、自車両とその左方向に存在する隣接車両との車間距離Dxkを示している。図21に示すように、自車両と隣接車両との走行状態が非定常状態の場合、ヒステリシスを持たない直線Lx0を用いて補正処理後の車間距離Dx_hoseikを算出する。すなわち、Dx_hoseik=Dxkとなる。一方、自車両と隣接車両との走行状態が定常状態の場合、特性線Lx1に示すようにヒステリシスを持たせて補正した車間距離Dx_hoseikを算出する。ヒステリシス幅αdxは、走行状況に応じて設定する。
以下に、車間距離Dxkに対して行うヒステリシス処理の詳細を、図22のフローチャートを用いて説明する。
ステップS441において、上述したステップS300Aで判定した左右方向の走行状態フラグflgSTATExが1であるか否か、すなわち自車両と隣接車両との走行状態が定常状態であるか否かを判定する。定常状態の場合は、ステップS442へ進む。一方、非定常状態の場合は、ステップS452へ進み、ヒステリシス処理は行わずに実際に検出された車間距離Dxkを補正値Dx_hoseik(Dx_hoseik=Dxk)として設定する。これにより、実際の車間距離Dxkを用いて隣接車両に対するリスクポテンシャルを算出し、操舵反力制御に速やかに反映させるようにする。
ステップS422では、前回周期で判定された左右方向走行状態フラグの前回値flgSTATEx_zが1であるか否かを判定する。なお、前回値flgSTATEx_zはコントローラ50Aのメモリに記憶されている。前回値flgSTATEx_zが1の場合は前回周期においても定常状態であるので、ステップS443へ進み、車間距離Dxkにヒステリシスを設ける処理を行う。一方、前回値flgSTATEx_zが1ではない、すなわち今回の処理において定常状態に移行した場合は、ステップS452へ進み、車間距離の補正値Dx_hoseikの初期値として実際に検出した車間距離Dxkを設定する。
ステップS443〜S445では、ヒステリシス幅αdxを算出するための補正係数を算出する。まず、ステップS443においては、自車両と隣接車両との左右方向の相対速度Vrxkに応じた補正係数Svrxを算出する。図23に、相対速度Vrxkに対する補正係数Svrxのマップを示す。このマップは予め適切に設定され、コントローラ50Aのメモリに記憶されている。マップに示す所定値Vrx0は、上述したステップS351で用いた所定値Vrx0と同じ値である。
図23に示すように、相対速度Vrxkが所定範囲内(−Vrx0<Vrxk<Vrx0)の場合は、相対速度Vrxkが0に近づくにつれて補正係数Svrxが大きくなり、相対速度Vrxkが0近傍で補正係数Svrx=1となる。相対速度Vrxkが所定値範囲外の場合は、補正係数Svrx=0とする。
ステップS444では、自車両と隣接車両との車間距離Dxkに応じた補正係数Sdxを算出する。図24に、車間距離Dxkに対する補正係数Sdxのマップを示す。このマップは予め適切に設定され、コントローラ50Aのメモリに記憶されている。マップに示す所定値Dd0,Dd1は、上述したステップS352で用いた所定値と同じ値である。なお、自車両の右側に存在する隣接車両および左側に存在する隣接車両について同様に補正係数Sdxを設定するように、ここでは車間距離Dxkの絶対値を用いる。図24に示すように、車間距離の絶対値|Dxk|が所定範囲内(Dd0<|Dxk|<Dd1)の場合は、車間距離の絶対値|Dxk|が所定範囲の中間値(Dd1−Dd0)/2に近づくにつれて補正係数Sdxが大きくなり、車間距離の絶対値|Dxk|が中間値近傍で補正係数Sdx=1となる。車間距離の絶対値|Dxk|が所定範囲外の場合は、補正係数Sdx=0とする。
ステップS445では、ステアリング操舵角STRに応じた補正係数Sstrを算出する。図25に、操舵角STRに対する補正係数Sstrのマップを示す。このマップは予め適切に設定され、コントローラ50Aのメモリに記憶されている。マップに示す所定値STRdは、上述したステップS353で用いた所定値と同じ値である。図25に示すように、操舵角STRがステアリングホイール62の中立位置を0として所定範囲内(−STRd<STR<STRd)の場合は、操舵角STRが中立位置0に近づくにつれて補正係数Sstrが大きくなり、操舵角STRが中立位置0近傍で補正係数Sstr=1となる。操舵角STRが所定範囲外の場合は、補正係数Sstr=0とする。
ステップS446では、ステップS443〜S445で算出した補正係数Svrx、Sdx、Sstrと、ヒステリシス幅基準値αdx_baseとを用いて、ヒステリシス幅αdxを算出する。ヒステリシス幅基準値αdx_baseは、例えば0.5[m]とする。ヒステリシス幅αdxは、以下の(式10)によって表される。
αdx=αdx_base×Svrx×Sdx×Sstr (式10)
ステップS447では、前回周期で設定しメモリに記憶されている車間距離の補正値Dx_hoseik_zに、ステップS446で算出したヒステリシス幅αdxを加算した値(Dx_hoseik_z+αdx)が、現在の車間距離Dxkよりも小さいか否かを判定する。ステップS447が肯定判定されると、ステップS448へ進み、以下の(式11)に従って車間距離の補正値Dx_hoseik設定する。
Dx_hoseik=Dxk−αdx (式11)
このように、車間距離Dxkが、前回の補正値Dx_hoseik_zとヒステリシス幅αdxとの和よりも大きくなった場合は、車間距離Dxkからヒステリシス幅αdxを引いた値を補正値Dx_hoseikとする。これにより、定常状態において左右方向車間距離Dxkの変動を抑制するよう補正する。
一方、ステップS447が否定判定されると、ステップS449へ進む。ステップS449では、車間距離の前回補正値Dx_hoseik_zからヒステリシス幅αdxを引いた値(Dx_hoseik_z−αdx)が、車間距離Dxkを上回るか否かを判定する。ステップS449が肯定判定されると、ステップS450へ進み、以下の(式12)に従って車間距離の補正値Dx_hoseikを設定する。
Dx_hoseik=Dxk+αdx (式12)
このように、車間距離Dxkが、前回の補正値Dx_hoseik_zとヒステリシス幅αdxとの差よりも大きくなった場合は、車間距離Dxkにヒステリシス幅αdxを加算した値を補正値Dx_hoseikとする。これにより、定常状態において左右方向車間距離Dxkの変動を抑制するよう補正する。
一方、ステップS449が否定判定されると、ステップS451へ進む。この場合、車間距離Dxkは、前回補正値Dx_hoseik_zとヒステリシス幅αdxとの差以上、かつ、前回補正値Dx_hoseik_zとヒステリシス幅αdxとの和以下であり、ヒステリシス幅αdx内に入っている。そこで、前回の補正値Dx_hoseik_zを、今回の左右方向の車間距離補正値Dx_hoseikとして設定する。
ステップS453では、次回以降の処理のために、ステップS448,S450,S451,あるいはS452で設定した左右方向車間距離補正値Dx_hoseikを、前回値Dx_hoseik_zとして設定するとともに、フラグflgSTATExkを前回値flgSTATExk_zとして設定する。これにより、今回の処理を終了する。なお、後述するリスクポテンシャル算出処理においては、今回算出した車間距離補正値Dx_hoseikを用いる。
つぎに、相対速度Vrxkに対する不感帯の設定について説明する。図26に、不感帯設定処理の概要を示す。図26の横軸は隣接車両との実際の左右方向相対距離Vrxkを示し、縦軸は補正処理後の隣接車両との左右方向相対速度Vrx_hoseikを示している。図26に示すように、自車両と隣接車両との走行状態が定常状態の場合、相対速度Vrxkが0付近において不感帯、すなわち実際の相対速度Vrxkが変化した場合にも補正値Vrx_hoseikが変化しない領域を設ける。不感帯幅αvrxは、走行状況に応じて設定する。なお、相対速度Vrxkが不感帯内にある場合、相対速度補正値Vrx_hoseik=0とする。また、相対速度Vrxkが不感帯外にある場合、すなわち相対速度Vrxkがαvrx/2より大きい、あるいは−αvrx/2よりも小さい場合は、Vrxk=±αvrx/2のときVrx_hoseik=0として、相対速度Vrxkに比例するように相対速度補正値Vrx_hoseikを設定する。
隣接車両との相対速度Vrxkに対して行う不感帯処理の詳細を、図27のフローチャートを用いて説明する。
ステップS461において、上述したステップS300Aで判定した左右方向走行状態フラグflgSTATExkが1であるか否か、すなわち自車両と隣接車両との走行状態が定常状態であるか否かを判定する。定常状態の場合は、ステップS462へ進む。一方、非定常状態の場合は、ステップS470へ進み、不感帯処理は行わずに実際に検出された左右方向の相対速度Vrxkを補正値Vrx_hoseik(Vrx_hoseik=Vrxk)として設定する。これにより、実際の相対速度Vrxkを用いて隣接車両に対するリスクポテンシャルを算出し、操舵反力制御に速やかに反映させるようにする。
ステップS462,S463では、図26に示す不感帯幅αvrxを算出するための補正係数を算出する。ステップS462,S463での処理は、図22に示したステップS444,S445での処理と同様であるので説明を省略する。ただし、ここでは相対速度Vrxkに応じた補正係数Svrxは算出しない。
ステップS464では、ステップS462,S463で算出した補正係数Sdx、Sstrと、不感帯幅基準値αvrx_baseとを用いて、不感帯幅αvrxを算出する。不感帯幅基準値αvrx_baseは、例えば0.5[m/s]とする。不感帯幅αvrxは、以下の(式13)によって表される。
αvrx=αvrx_base×Sdx×Sstr (式13)
ステップS465では、現在の左右方向相対速度Vrxkが不感帯よりも大きい領域にあるか否か、すなわちVrxk>αvrx/2であるか否かを判定する。ステップS465が肯定判定されると、ステップS466へ進み、以下の(式14)に従って左右方向相対速度の補正値Vrx_hoseikを設定する。
Vrx_hoseik=Vrxk−αvrx/2 (式14)
このように、相対速度Vrxkがαvrx/2より大きく、不感帯の外側にある場合は、相対速度Vrxkから不感帯幅の半分αvrx/2を引いた値を補正値Vrx_hoseikとする。これにより、定常状態において左右方向相対速度Vrxkの変動を抑制するよう補正する。
一方、ステップS465が否定判定されると、ステップS467へ進む。ステップS467では、相対速度Vrxkが不感帯よりも小さい領域にあるか否か、すなわちVrxk<−αvrx/2であるか否かを判定する。ステップS467が肯定判定されると、ステップS468へ進み、以下の(式15)に従って左右方向相対速度の補正値Vrx_hoseikを設定する。
Vrx_hoseik=Vrxk+αvrx/2 (式15)
このように、相対速度Vrxkが−αvrx/2よりも小さく、不感帯の外側にある場合は、相対速度Vrxkに不感帯幅の半分αvrx/2を加算した値を補正値Vrx_hoseikとする。これにより、定常状態において左右方向相対速度Vrxkの変動を抑制するよう補正する。
一方、ステップS467が否定判定されると、ステップS469へ進む。この場合、相対速度Vrxkは不感帯幅αvrx内に入っている。そこで、左右方向相対速度の補正値Vrx_hoseikを0に設定する。これにより、今回の処理を終了する。
なお、左右方向の障害物認識信号に関するヒステリシス処理と不感帯処理、および前後方向の障害物認識信号に関するヒステリシス処理と不感帯処理は、ステップS400Aにおいてパラレルに行われる。これらの処理を終了すると、図19のフローチャートのステップS500Aに進む。
ステップS500Aでは、ステップS400Aにおいて補正した障害物認識信号を用いて、各障害物kに対する余裕時間TTCk(Time To Collision)を算出する。具体的には、各障害物kに対する余裕時間の前後方向成分と左右方向成分とを算出する。ここでは、先行車に対する前後方向余裕時間TTCykと、隣接車両に対する左右方向余裕時間TTCxkとをそれぞれ算出する。先行車に対する余裕時間TTCykは、補正した車間距離Dy_hoseikおよび相対速度Vry_hoseikを用いて、上述した(式8)により算出する。隣接車両に対する余裕時間TTCxkは、補正した隣接車両との車間距離Dx_hoseikおよび相対速度Vrx_hoseikとを用いて、以下の(式16)を用いて算出することができる。
TTCxk=Dx_hoseik/Vrx_hoseik (式16)
続くステップS600Aでは、ステップS500Aで算出した余裕時間TTCykおよびTTCxkを用いて、各障害物kに対する前後方向および左右方向リスクポテンシャルを算出する。ここでは、先行車に対する前後方向リスクポテンシャルRPyk、隣接車両に対する左右方向リスクポテンシャルRPxkをそれぞれ算出する。先行車に対する前後方向リスクポテンシャルRPykは、上述した(式9)を用いて算出する。隣接車両に対する左右方向リスクポテンシャルRPxkは、以下の(式17)を用いて算出することができる。
RPxk=1/TTCxk×Wk (式17)
ここで、Wk:障害物kの重みを示しており、上述したように障害物の種別に応じて設定する。隣接車両の場合は、例えばWk=1とする。
ステップS700では、自車両周囲の総合的な前後方向リスクポテンシャルRPlongitudinalを算出する。障害物k毎に算出した前後方向リスクポテンシャルRPykを加算して、以下の(式18)に表すように総合的な前後方向リスクポテンシャルRPlongitudinalを算出する。
RPlongitudinal=ΣRPyk (式18)
ここでは、前後方向に関しては先行車に対するリスクポテンシャルRPykのみが発生しているので、RPlongitudinal=RPykである。
ステップS800では、自車両周囲の総合的な左右方向リスクポテンシャルRPlateralを算出する。障害物k毎に算出した左右方向のリスクポテンシャルRPxkを加算して、以下の(式19)に表すように総合的な左右方向リスクポテンシャルRPlateralを算出する。
RPlateral=ΣRPxk (式19)
ここでは、左右方向に関しては隣接車両に対するリスクポテンシャルRPxkのみが発生しているので、RPlateral=RPxkである。
ステップS900では、ステップS700で算出した前後方向リスクポテンシャルRPlongitudinalに基づいて、前後方向反力制御指令値、すなわちアクセルペダル反力制御装置80へ出力する反力制御指令値FAと、ブレーキペダル反力制御装置90へ出力する反力制御指令値FBとを算出する。反力制御指令値FA、FBは、上述したように図15および図16のマップを用いてそれぞれ算出する。
ステップS1000では、ステップS800で算出した左右方向リスクポテンシャルRPlateralに基づいて、左右方向反力制御指令値、すなわち操舵反力制御装置60に出力する反力制御指令値FSを算出する。左右方向リスクポテンシャルRPlateralに応じて、リスクポテンシャルRPlateralが大きいほどステアリングホイール62を中立位置へ戻す方向へ促すよう操舵反力を制御する。
図28に、左右方向リスクポテンシャルRPlateralに対する操舵反力制御指令値FSの特性の一例を示す。なお、図28において、左右方向リスクポテンシャルRPlateralがプラスである場合は、右方向のリスクポテンシャルであることを示し、左右方向リスクポテンシャルRPlateralがマイナスの場合は、左方向のリスクポテンシャルであることを示している。図28に示すように、左右方向リスクポテンシャルRPlateralの絶対値が所定値RPmaxよりも小さい場合は、リスクポテンシャルの絶対値が大きくなるほど、ステアリングホイール62を中立位置へ戻す方向の操舵反力が大きくなるように操舵反力制御指令値FSを設定する。左右方向リスクポテンシャルRPlateralの絶対値が所定値RPmax以上の場合は、ステアリングホイール62を迅速に中立位置に戻すように、最大の操舵反力制御指令値FSmaxを設定する。
つづくステップS1100において、ステップS900で算出した前後方向制御指令値FA、FBをアクセルペダル反力制御装置80およびブレーキペダル反力制御装置90にそれぞれ出力し、ステップS1000で算出した左右方向制御指令値FSを操舵反力制御装置60に出力する。アクセルペダル反力制御装置80およびブレーキペダル反力制御装置90は、コントローラ50Aから出力される指令値に応じてアクセルペダル反力およびブレーキペダル反力をそれぞれ制御する。また、操舵反力制御装置60は、コントローラ50Aからの指令値に応じて操舵反力を制御する。これにより、今回の処理を終了する。
このように、以上説明した第2の実施の形態においては、以下の作用効果を奏することができる。
(1)アクセルペダル操作速度APO_OMG、ブレーキペダル操作速度BRK_OMGおよびステアリング操舵角STRの少なくともいずれかを用いて自車両と障害物kとの走行状態を判定する。運転者による自車両への操作入力量が所定範囲内である場合には定常走行中であると判定するので、運転者の操作意図を推定して速やかに走行状態を判定することができる。
(2)自車両と障害物kとの距離Dkの関数、相対速度Vrk、障害物の加速度a1k、自車加速度a0、アクセルペダル操作速度APO_OMG、ブレーキペダル操作速度BRK_OMGおよびステアリング操舵角STRの少なくともいずれかを用いて不感帯幅αvry、αvrx、あるいはヒステリシス幅αdy、αdxを設定する。これにより、自車両および障害物kの走行状況に応じて距離Dkあるいは相対速度Vrkの補正を行うことができる。例えばステアリングホイール62を所定範囲よりも大きく操作した場合には、不感帯幅αvrxおよびヒステリシス幅αdxを基準値より小さくして、実際の距離Dxkおよび相対速度Vrxkに応じたリスクポテンシャルRPxkを反力制御に速やかに反映させることができる。
(3)障害物認識信号の車両前後方向成分を用いて、自車両と障害物kとの車両前後方向の走行状態を判定し、前後方向の走行状態が定常である場合に、補正された距離Dy_hoseikと相対速度Vry_hoseikに基づいて前後方向のリスクポテンシャルRPlongitudinalを算出する。これにより、車両前後方向の定常走行中はアクセルペダル82およびブレーキペダル92に発生する操作反力の変動を抑制し、運転者に与える煩わしさを低減することができる。
(4)障害物認識信号の車両左右方向成分を用いて、自車両と障害物kとの車両左右方向の走行状態を判定し、左右方向の走行状態が定常である場合に、補正された距離Dx_hoseikと相対速度Vrx_hoseikに基づいて左右方向のリスクポテンシャルRPlateralを算出する。これにより、車両左右方向の定常走行中はステアリングホイール62に発生する操作反力の変動を抑制し、運転者に与える煩わしさを低減することができる。
以上説明した第1および第2の実施の形態においては、走行状態に応じて自車両と障害物kとの距離Dkおよび相対速度Vrkを補正したが、いずれか一方を補正することもできる。自車両と障害物kとの距離Dkに対してヒステリシス処理を施し、相対速度Vrkに対して不感帯を設けたが、距離Dkに不感帯を設け、相対速度Vrkにヒステリシス処理を行うこともできる。
また、距離Dkあるいは相対速度Vrkをフィルタ処理により補正することもできる。この場合、後述する第3の実施の形態と同様に、自車両と障害物kとの距離Dkの関数、相対速度Vrk、障害物kの加速度a1k、自車両の加速度a0および運転者による自車両への操作入力量に基づいて時定数τを設定し、この時定数τを用いて距離Dkあるいは相対速度Vrkに対して一次遅れのフィルタ処理を行うことができる。これにより、定常走行中は車両操作機器の操作反力の変動が抑制され、運転者の煩わしさを低減することができる。例えば、追従走行中に先行車が所定値以上減速した場合に、フィルタの時定数τを基準値よりも小さくすることにより、先行車に対するリスクポテンシャルを速やかに反力制御に反映させることができる。
《第3の実施の形態》
つぎに、本発明の第3の実施の形態による車両用運転操作補助装置について説明する。上述した第1および第2の実施の形態においては、自車両と障害物との走行状態に応じて障害物認識信号を補正したが、第3の実施の形態においては、走行状態に応じてリスクポテンシャルを補正する。第3の実施の形態による車両用運転操作補助装置の構成は、図17および図18に示した第2の実施の形態と同様である。ここでは、上述した第2の実施の形態との相違点を主に説明する。
以下に、第3の実施形態による車両用運転操作補助装置の動作の概略を説明する。なお、第3の実施の形態においても、上述した第2の実施の形態と同様に車両周囲の障害物kとして先行車と隣接車両とを検出したものとする。
コントローラ50Aは、自車速、運転者による車両機器の操作量、自車両周囲に存在する各障害物kの移動方向および移動速度、自車両と各障害物との相対位置等により車両周囲の障害物状況を認識する。そして、認識した障害物状況に基づいて各障害物kに対するリスクポテンシャルを算出する。また、コントローラ50Aは、認識した障害物状況に基づいて自車両と各障害物kとの走行状態を判定する。そして、障害物kとの走行状態に応じて、各障害物kに対するリスクポテンシャルを補正する。コントローラ50Aは補正したリスクポテンシャルに基づいて前後方向反力制御量および左右方向反力制御量を算出する。
以下に、上述した車両用運転操作補助装置の動作の詳細を、図29を用いて説明する。図29は、第3の実施の形態によるコントローラ50Aにおける運転操作補助制御処理の処理手順を示すフローチャートである。なお、本処理内容は一定間隔、例えば50msec毎に連続的に行われる。
ステップS100A〜ステップS300Aにおける処理は、上述した図19のステップS100A〜ステップS300Aと同様である。
つづくステップS500Bでは、認識した自車両周囲の各障害物kに対する余裕時間TTCkを算出する。障害物kに対する余裕時間TTCkは、以下の(式20)により算出する。
TTCk=Dk/Vrk (式20)
ここで、Dk:自車両と障害物kとの車間距離、Vrk:自車両と障害物kとの相対速度である。自車両と先行車との余裕時間TTCkは車間距離Dykおよび相対速度Vrykを用いて算出し、自車両と隣接車両との余裕時間TTCkは車間距離Dxkおよび相対速度Vrxkを用いて算出する。
ステップS600Bでは、ステップS500Bで算出した各障害物kとの余裕時間TTCkを用いて、各障害物kに対するリスクポテンシャルRPkを算出する。障害物kに対するリスクポテンシャルRPkは、以下の(式21)により算出する。なお、Wk:障害物の種別に応じた重みである。
RPk=1/TTCk×Wk (式21)
つづくステップS650では、ステップS300Aで判定した走行状態に応じて、各障害物kに対するリスクポテンシャルRPkに補正を加える。具体的には、自車両と障害物kとの走行状態が定常状態である場合には、障害物kに対するリスクポテンシャルRPkに対してフィルタ処理を行う。また、障害物状況に応じてフィルタの時定数を変更する。これにより、定常走行中における運転操作装置、すなわちステアリングホイール62,アクセルペダル82およびブレーキペダル92の反力変動を抑える。一方、障害物kとの走行状態が非定常状態である場合には、フィルタ処理を行わずに実際のリスクポテンシャルを反力制御に反映させる。
以下に、ステップS650において各障害物kのリスクポテンシャルRPkに対して行うフィルタ処理について説明する。なお、リスクポテンシャルRPkのフィルタ処理は、車両前後方向成分と車両左右方向成分に分けて行う。
リスクポテンシャルRPkの前後方向成分は、自車両に対する障害物kの存在方向θkを用いて、RPk×cosθkと表され、リスクポテンシャルRPkの左右方向成分は、RPk×sinθkと表すことができる。障害物kの存在方向θkは、自車両正面を0[deg]とする。従って、先行車の存在方向θk=0[deg]、隣接車両が自車両の右側に存在する場合はその存在方向θk=+90[deg]、隣接車両が自車両の左側に存在する場合はその存在方向θk=−90[deg]である。これにより、先行車に対するリスクポテンシャルRPkの前後方向成分RPk×cosθk=RPk、左右方向成分RPk×sinθk=0となる。また、隣接車両に対するリスクポテンシャルRPkの前後方向成分RPk×cosθk=0、左右方向成分RPk×sinθk=RPkとなる。そこで、以下では、リスクポテンシャルRPkの前後方向成分のフィルタ処理は、先行車に対するリスクポテンシャルRPkに対して行い、左右方向成分のフィルタ処理は、隣接車両に対するリスクポテンシャルRPkに対して行うとして説明する。
まず、リスクポテンシャルの前後方向成分の補正処理について、図30のフローチャートを用いて説明する。
ステップS651では、ステップS300Aにおいて先行車について判定した前後方向の走行状態フラグflgSTATEykが1であるか否かを判定する。前後方向の走行状態が非定常状態である場合には、ステップS660へ進む。
ステップS660では先行車に対するリスクポテンシャルRPkの前後方向成分の補正値RPy_hoseikを、以下の(式22)によって算出する。
RPy_hoseik=RPk×cosθk (式22)
このように、自車両と障害物kとの走行状態が非定常状態である場合は、リスクポテンシャルRPkのフィルタ処理は行わず、実際のリスクポテンシャルRPkを速やかに反力制御に反映させる。
一方、前後方向の走行状態が定常状態である場合には、リスクポテンシャルRPkのフィルタ処理を行うためにステップS652へ進む。ステップS652〜S657では、フィルタの時定数τykを設定するための補正係数を算出する。
まず、ステップS652においては、自車両と先行車との相対速度Vrykに応じた補正係数τvryを算出する。図31に、相対速度Vrykに対する補正係数τvryのマップを示す。このマップは予め適切に設定され、コントローラ50Aのメモリに記憶されている。図31に示すように、相対速度Vrykが所定範囲内(−Vry0<Vryk<Vry0)の場合は、相対速度Vrykが0に近づくにつれて補正係数τvryが大きくなり、相対速度Vrykが0近傍で補正係数τvry=1となる。相対速度Vrykが所定値範囲外の場合は、補正係数τvry=0とする。
ステップS653では、先行車に対する車間時間THWykに応じた補正係数τthwを算出する。図32に、車間時間THWykに対する補正係数τthwのマップを示す。このマップは予め適切に設定され、コントローラ50Aのメモリに記憶されている。図32に示すように、車間時間THWykが所定範囲内(THWd0<THWyk<THWd1)の場合は、車間時間THWykが所定範囲の中間値(THWd1−THWd0)/2に近づくにつれて補正係数τthwが大きくなり、車間時間THWykが中間値近傍で補正係数τthw=1となる。車間時間THWykが所定範囲外の場合は、補正係数τthw=0とする。
ステップS654では、自車加速度a0に応じた補正係数τa0を算出する。図33に、自車加速度a0に対する補正係数τa0のマップを示す。このマップは予め適切に設定され、コントローラ50Aのメモリに記憶されている。図33に示すように、自車加速度a0が所定範囲内(−ad0<a0<ad0)の場合は、自車加速度a0が0に近づくにつれて補正係数τa0が大きくなり、自車加速度a0が0近傍で補正係数τa0=1となる。
ステップS655では、先行車加速度a1kに応じた補正係数τa1を算出する。図34に、先行車加速度a1kに対する補正係数τa1のマップを示す。このマップは予め適切に設定され、コントローラ50Aのメモリに記憶されている。図34に示すように、先行車加速度a1kが所定範囲内(−ad1<a1k<ad1)の場合は、先行車加速度a1kが0に近づくにつれて補正係数τa1が大きくなり、先行車加速度a1kが0近傍で補正係数τa1=1となる。
ステップS656では、アクセルペダル操作速度APO_OMGに応じた補正係数τapoを算出する。図35に、アクセルペダル操作速度APO_OMGに対する補正係数τapoのマップを示す。このマップは予め適切に設定され、コントローラ50Aのメモリに記憶されている。図35に示すように、アクセルペダル操作速度APO_OMGが所定範囲内(−APO_OMGd<APO_OMG<APO_OMGd)の場合は、アクセルペダル操作速度APO_OMGが0に近づくにつれて補正係数τapoが大きくなり、操作速度APO_OMGが0近傍で補正係数τapo=1となる。
ステップS657では、ブレーキペダル操作速度BRK_OMGに応じた補正係数τbrkを算出する。図36に、ブレーキペダル操作速度BRK_OMGに対する補正係数τbrkのマップを示す。このマップは予め適切に設定され、コントローラ50Aのメモリに記憶されている。図36に示すように、ブレーキペダル操作速度BRK_OMGが所定範囲内(−BRK_OMGd<BRK_OMG<BRK_OMGd)の場合は、ブレーキペダル操作速度BRK_OMGが0に近づくにつれて補正係数τbrkが大きくなり、操作速度BRK_OMGが0近傍で補正係数τbrk=1となる。
ステップS658では、ステップS652〜S657で算出した補正係数τvry、τthw、τa0、τa1、τapo、τbrkと、時定数基準値τy_baseとを用いて、時定数τykを算出する。時定数基準値τy_baseは、例えば2[sec]とする。時定数τykは、以下の(式23)によって表される。
τyk=τy_base×τvry×τthw×τa0×τa1×τapo×τbrk (式23)
ステップS659では、先行車に対するリスクポテンシャルRPkの前後方向成分に対して時定数τykによる一次遅れのフィルタ処理を行い、リスクポテンシャルRPkの前後方向成分補正値RPy_hoseikを算出する。前後方向成分補正値RPy_hoseikは、以下の(式24)によって表される。
RPy_hoseik={1/(τyk×s+1)}×(RPk×cosθk) (式24)
ここで、s:ラプラス演算子を示す。前後方向成分補正値RPy_hoseikを算出して今回の処理を終了する。
つぎに、リスクポテンシャルの左右方向成分の補正処理について、図37のフローチャートを用いて説明する。
ステップS671では、ステップS300Aにおいて隣接車両について判定した左右方向の走行状態フラグflgSTATExkが1であるか否かを判定する。左右方向の走行状態が非定常状態である場合には、ステップS677へ進む。
ステップS677では隣接車両に対するリスクポテンシャルRPkの左右方向成分の補正値RPx_hoseikを、以下の(式25)によって算出する。
RPx_hoseik=RPk×sinθk (式25)
このように、自車両と障害物kとの走行状態が非定常状態である場合は、リスクポテンシャルRPkのフィルタ処理は行わず、実際のリスクポテンシャルRPkを速やかに反力制御に反映させる。
一方、左右方向の走行状態が定常状態である場合には、リスクポテンシャルRPkのフィルタ処理を行うためにステップS672へ進む。ステップS672〜S674では、フィルタの時定数τxkを設定するための補正係数を算出する。
ステップS672においては、自車両と隣接車両との左右方向相対速度Vrxkに応じた補正係数τvrxを算出する。図38に、相対速度Vrxkに対する補正係数τvrxのマップを示す。このマップは予め適切に設定され、コントローラ50Aのメモリに記憶されている。図38に示すように、相対速度Vrxkが所定範囲内(−Vrx0<Vrxk<Vrx0)の場合は、相対速度Vrxkが0に近づくにつれて補正係数τvrxが大きくなり、相対速度Vrxkが0近傍で補正係数τvrx=1となる。相対速度Vrxkが所定範囲外の場合は、補正係数τvrx=0とする。
ステップS673では、隣接車両との車間距離Dxkに応じた補正係数τdxを算出する。図39に、車間距離Dxkの絶対値に対する補正係数τdxのマップを示す。このマップは予め適切に設定され、コントローラ50Aのメモリに記憶されている。図39に示すように、車間距離の絶対値|Dxk|が所定範囲内(Dd0<|Dxk|<Dd1)の場合は、車間距離の絶対値|Dxk|が所定範囲の中間値(Dd1−Dd0)/2に近づくにつれて補正係数τdxが大きくなり、車間距離の絶対値Dxkが中間値近傍で補正係数τdx=1となる。車間時間Dxkが所定範囲外の場合は、補正係数τdx=0とする。
ステップS674では、操舵角STRに応じた補正係数τstrを算出する。図40に、操舵角STRに対する補正係数τstrのマップを示す。このマップは予め適切に設定され、コントローラ50Aのメモリに記憶されている。図40に示すように、操舵角STRが所定範囲内(−STRd<STR<STRd)の場合は、操舵角STRが中立位置0に近づくにつれて補正係数τstrが大きくなり、操舵角STRが中立位置0近傍で補正係数τstr=1となる。
ステップS675では、ステップS672〜S674で算出した補正係数τvrx、τdx、τstrと、時定数基準値τx_baseとを用いて、時定数τxkを算出する。時定数基準値τx_baseは、例えば1[sec]とする。時定数τxkは、以下の(式26)によって表される。
τxk=τx_base×τvrx×τdx×τstr (式26)
ステップS676では、隣接車両に対するリスクポテンシャルRPkの左右方向成分に対して時定数τxkによる一次遅れのフィルタ処理を行い、リスクポテンシャルRPkの左右方向成分補正値RPx_hoseikを算出する。左右方向成分補正値RPx_hoseikは、以下の(式27)によって表される。
RPx_hoseik={1/(τxk×s+1)}×(RPk×sinθk) (式27)
ここで、s:ラプラス演算子を示す。これにより、今回の処理を終了する。
以上説明したリスクポテンシャルRPkの前後方向成分および左右方向成分の補正処理は、ステップS650においてパラレルに実行される。これらの補正処理を終了すると、ステップS700Bへ進む。
ステップS700Bでは、ステップS650で算出した各障害物kのリスクポテンシャルRPkの前後方向成分補正値RPy_hoseikを加算して、車両周囲の障害物kに対する総合的な前後方向リスクポテンシャルRPlongitudinalを算出する。総合的な前後方向リスクポテンシャルRPlongitudinalは、以下の(式28)で表される。
RPlongitudinal=ΣRPy_hoseik (式28)
ステップS800Bでは、ステップS650で算出した各障害物kのリスクポテンシャルRPkの左右方向成分補正値RPx_hoseikを加算して、車両周囲の障害物kに対する総合的な左右方向リスクポテンシャルRPlateralを算出する。総合的な左右方向リスクポテンシャルRPlateralは、以下の(式29)で表される。
RPlateral=ΣRPx_hoseik (式29)
つづくステップS900〜S1100での処理は、上述した図19のステップS900〜S1100での処理と同様であるので説明を省略する。
このように、以上説明した第3の実施の形態においては、以下の様な作用効果を奏することができる。
(1)自車両と障害物kとの走行状況を検出し、障害物状況認識信号に基づいて自車両と障害物kとの走行状態を判定する。走行状態が定常である場合は、障害物kに対するリスクポテンシャルRPkを補正し、補正したリスクポテンシャルRP_hoseikに基づいて車両操作機器の操作反力を決定する。これにより、定常走行中に車両操作機器の操作反力が必要以上に変動することを抑制し、運転者に与える煩わしさを低減することができる。
(2)障害物認識信号に基づいて算出したリスクポテンシャルRPkにフィルタ処理を行うことにより、リスクポテンシャルRPkを補正する。これにより、定常走行中において車両操作機器の操作反力が必要以上に変動することを抑制し、運転者に与える煩わしさを低減することができる。
(3)自車両と障害物kとの距離Dkの関数、相対速度Vrk、障害物の加速度a1k、自車加速度a0、アクセルペダル操作速度APO_OMG、ブレーキペダル操作速度BRK_OMGおよびステアリング操舵角STRの少なくともいずれかを用いてフィルタの時定数τを設定する。これにより、自車両および障害物の走行状況および運転者による操作量に応じて、リスクポテンシャルRPkの補正を行うことができる。例えば追従走行中に先行車が所定値以上減速し、定常走行から非定常走行に移行した場合に、フィルタの時定数τyを基準値τy_baseよりも小さく設定することにより、先行車に対するリスクポテンシャルRPy_hoseikを車両操作機器の反力制御に速やかに反映することができる。また、ステアリングホイール62を所定範囲以上操作した場合に、フィルタ時定数τxを基準値τx_baseよりも小さくすることにより、車両左右方向のリスクポテンシャルRPx_hoseikを車両操作機器の反力制御に速やかに反映することができる。
(4)障害物認識信号の車両前後方向成分を用いて、自車両と障害物kとの車両前後方向の走行状態を判定し、前後方向の走行状態が定常である場合に、補正されたリスクポテンシャルの前後方向成分RPlongitudinalを用いてアクセルペダル82およびブレーキペダル92に発生する操作反力を決定する。これにより、前後方向の定常走行中はアクセルペダル82およびブレーキペダル92の操作反力の変動を抑制し、運転者に与える煩わしさを低減することができる。
(5)障害物認識信号の車両左右方向成分を用いて、自車両と障害物kとの車両左右方向の走行状態を判定し、左右方向の走行状態が定常である場合に、補正されたリスクポテンシャルの左右方向成分RPlateralを用いてステアリングホイール62に発生する操作反力を決定する。これにより、車両左右方向の定常走行中はステアリングホイール62の操作反力の変動を抑制し、運転者に与える煩わしさを低減することができる。
以上説明した第3の実施の形態においては、走行状態に応じてリスクポテンシャルRPkに対してフィルタ処理を行ったが、ヒステリシス処理を行うこともできる。この場合、上述した第1および第2の実施の形態と同様に、自車両と障害物kとの距離Dkまたは車間時間THWk、相対速度Vrk、障害物kの加速度a1k、自車両の加速度a0および運転者による自車両への操作入力量に基づいてヒステリシス幅を設定することができる。これにより、定常走行中は車両操作機器の操作反力の変動が抑制され、運転者の煩わしさを低減することができる。例えば、追従走行中に先行車が所定値以上減速した場合に、ヒステリシス幅を基準値よりも小さくすることにより、先行車に対するリスクポテンシャルRPykを速やかに反力制御に反映させることができる。
以上説明した第1から第3の実施の形態においては、走行状態を検出する際に、自車両と障害物kとの距離Dkまたは車間時間THWk、相対速度Vrk、障害物の加速度a1k、自車加速度a0および運転者による操作入力量を全て用いたが、本発明はこれには限定されず、これらのパラメータのいずれかを用いて走行状態を判定することができる。
上述した第2および第3の実施の形態においては、自車両周囲の障害物kとして自車線前方の先行車と隣接車線を走行する隣接車両を検出した場合について説明したが、これには限定されない。例えば、第2の実施の形態において先行車および自車両左右両側の隣接車両が存在する場合は、先行車、自車両右側の隣接車両、および自車両左側の隣接車両に対する障害物認識信号の補正をそれぞれ行い、補正した障害物認識信号に基づいて各障害物kに対するリスクポテンシャルRPkを算出する。左右方向のリスクポテンシャルRPlateralは、上述した(式19)を用いて左右両側の隣接車両に対するリスクポテンシャルを加算することにより算出できる。第3の実施の形態においては、自車両と障害物kとの存在方向θkを用いてリスクポテンシャルRPkの前後方向成分および左右方向成分を分けるので、障害物kが自車両に対して斜め前方に存在する場合も、前後方向および左右方向のリスクポテンシャルの補正を行うことができる。
自車両周囲の障害物kは4輪車両には限定されず、二輪車あるいは歩行者を障害物として検出することもできる。この場合、上述したように各障害物kに対するリスクポテンシャルRPkを算出する際の重みWkを障害物の種別に応じて設定する。
上述した実施の形態で用いた補正係数マップおよび反力制御マップは一例であり、変更が可能である。例えば、図7に示す相対速度Vrykに対する補正係数Svryのマップは、相対速度Vrykが0に近づくにつれて補正係数Svryが1に近づくように設定されれば、放物線形状とすることもできる。
上記実施の形態においては、走行状況検出手段としてレーザレーダ10、前方カメラ20,後側方カメラ21,車速センサ30および加速度センサ31を用いた。リスクポテンシャル算出手段、操作反力決定手段、走行状態判定手段、信号補正手段、リスクポテンシャル補正手段、変動制御手段として、コントローラ50,50Aを用いた。また、車両操作機器制御手段としてアクセルペダル反力制御装置80,ブレーキペダル反力制御装置90、操舵反力制御装置60を用い、操作入力量検出手段として、アクセルペダルストロークセンサ83,ブレーキペダルストロークセンサ93,操舵角センサ63およびコントローラ50,50Aを用いた。例えば走行状況検出手段としてレーザレーダ10の代わりに別方式のミリ波レーダ等を用いることもできる。また、操作入力量検出手段として、アクセルペダル82,ブレーキペダル92およびステアリングホイール62の操作速度を検出する操作速度検出器を用いることもできる。
なお、本発明による車両用運転操作補助装置は、走行状態判定手段によって走行状態が定常であると判定された場合に、車両操作機器に発生する操作反力の変動を抑制するよう制御できれば、上述した実施の形態には限定されない。例えば、算出したリスクポテンシャルRPに応じた反力制御指令値を算出した後、走行状態に応じて反力制御指令値を補正することもできる。
本発明の第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置のシステム図。 第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置を搭載した車両の構成図。 第1の実施の形態による反力制御の処理手順を示すフローチャート。 第1の実施の形態における前後方向の走行状態判定処理の処理手順を示すフローチャート。 車両前後方向の車間距離に対する車間距離補正値の特性を示す図。 車両前後方向の車間距離補正制御の処理手順を示すフローチャート。 相対速度に対する補正係数の特性を示す図。 車間時間に対する補正係数の特性を示す図。 自車加速度に対する補正係数の特性を示す図。 先行車加速度に対する補正係数の特性を示す図。 アクセルペダル操作速度に対する補正係数の特性を示す図。 ブレーキペダル操作速度に対する補正係数の特性を示す図。 車両前後方向の相対速度に対する相対速度補正値の特性を示す図。 車両前後方向の相対速度補正制御の処理手順を示すフローチャート。 前後方向リスクポテンシャルに対するアクセルペダル反力制御指令値の特性を示す図。 前後方向リスクポテンシャルに対するブレーキペダル反力制御指令値の特性を示す図。 本発明の第2の実施の形態による車両用運転操作補助装置のシステム図。 第2の実施の形態による車両用運転操作補助装置を搭載した車両の構成図。 第2の実施の形態による反力制御の処理手順を示すフローチャート。 第2の実施の形態における左右方向の走行状態判定処理の処理手順を示すフローチャート。 車両左右方向の車間距離に対する車間距離補正値の特性を示す図。 車両左右方向の車間距離補正制御の処理手順を示すフローチャート。 相対速度に対する補正係数の特性を示す図。 車間距離に対する補正係数の特性を示す図。 操舵角に対する補正係数の特性を示す図。 車両左右方向の相対速度に対する相対速度補正値の特性を示す図。 車両左右方向の相対速度補正制御の処理手順を示すフローチャート。 左右方向リスクポテンシャルに対する操舵反力制御指令値の特性を示す図。 第3の実施の形態による反力制御の処理手順を示すフローチャート。 車両前後方向のリスクポテンシャル補正制御の処理手順を示すフローチャート。 相対速度に対する補正係数の特性を示す図。 車間時間に対する補正係数の特性を示す図。 自車加速度に対する補正係数の特性を示す図。 先行車加速度に対する補正係数の特性を示す図。 アクセルペダル操作速度に対する補正係数の特性を示す図。 ブレーキペダル操作速度に対する補正係数の特性を示す図。 車両左右方向のリスクポテンシャル補正制御の処理手順を示すフローチャート。 相対速度に対する補正係数の特性を示す図。 車間距離に対する補正係数の特性を示す図。 操舵角に対する補正係数の特性を示す図。
符号の説明
10:レーザレーダ
20:前方カメラ
21:後側方カメラ
30:車速センサ
31:加速度センサ
50,50A:コントローラ
60:操舵反力制御装置
63:操舵角センサ
80:アクセルペダル反力制御装置
83:アクセルペダルストロークセンサ
90:ブレーキペダル反力制御装置
93:ブレーキペダルストロークセンサ

Claims (4)

  1. 自車両の走行状況および自車両周囲に存在する障害物の走行状況を検出する走行状況検出手段と、
    前記走行状況検出手段からの信号に基づいて、前記自車両の障害物に対するリスクポテンシャルを算出するリスクポテンシャル算出手段と、
    前記リスクポテンシャル算出手段からの信号に基づいて、車両操作機器に発生する操作反力を決定する操作反力決定手段と、
    前記操作反力決定手段によって決定される操作反力を発生するように前記車両操作機器を制御する車両操作機器制御手段と、
    前記自車両と前記障害物との走行状態が定常であるか否かを判定する走行状態判定手段と、
    前記走行状態判定手段によって走行状態が定常であると判定された場合、前記リスクポテンシャル算出手段によって算出されるリスクポテンシャルにヒステリシスを設けるリスクポテンシャル補正手段とを有し、
    記操作反力決定手段は、前記走行状態判定手段によって走行状態が定常であると判定された場合、前記リスクポテンシャル補正手段によって前記ヒステリシスが設けられたリスクポテンシャルに基づいて操作反力を決定することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
  2. 請求項1に記載の車両用運転操作補助装置において、
    前記走行状況検出手段は、前記自車両と前記障害物との距離の関数と相対速度、前記障害物の加速度、および前記自車両の加速度のうち、少なくとも一つを検出し、さらに、自車両への操作入力量として、運転者によるアクセルペダル操作速度、ブレーキペダル操作速度、およびステアリング操舵角の少なくとも一つを検出し、
    前記リスクポテンシャル補正手段は、前記走行状況検出手段によって検出された信号に基づいて、ヒステリシス幅を設定することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載の車両用運転操作補助装置において、
    前記走行状態判定手段は、前記自車両と前記障害物との相対位置関係が略一定である場合に、前記走行状態が定常であると判定することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両用運転操作補助装置を備えることを特徴とする車両。
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