本発明の第1の実施形態に係る水素燃料供給システム12が適用された燃料電池システム10について、図面に基づいて説明する。先ず、本発明の燃料電池システム10の全体構成を説明し、次いで本発明の要部である反応器18の改質工程から再生工程への切り換え時の制御について説明することとする。
(燃料電池システム構成)
図1には、燃料電池システム10のシステム構成図(システムフローシート)が示されている。この図に示される如く、燃料電池システム10は、水素燃料供給システム12と、水素燃料供給システム12から水素燃料の供給を受けて発電を行う燃料電池14と、水素燃料供給システム12と燃料電池との間で熱交換を行う熱交換器16とを主要構成要素として構成されている。
水素燃料供給システム12は、一対の反応器18を備えている。一対の反応器18は、それぞれ筒状に形成されたハウジングの内部に図示しない改質触媒を配設して構成されており、それぞれ供給される炭化水素ガス(ガソリン、メタノール、天然ガス等)と改質用ガス(水蒸気、酸素)を触媒反応させることで、水素ガスを含む燃料ガスを生成する(改質反応を行う)ようになっている。改質反応は、以下の式(1)乃至(4)で表される各反応を含む。したがって、改質工程で得た燃料ガスには、水素(H2)、一酸化炭素(CO)、メタン(CH4)、分解炭化水素や未反応の原料炭化水素(CxHy)等の可燃性ガス、二酸化炭素(CO2)、水(H2O)等の不燃性ガスを含むようになっている。
CnHm+nH2O → nCO +(n+m/2)H2 … (1)
CnHm+n/2O2 → nCO + m/2H2 … (2)
CO+H2O ⇔ CO2+H2 … (3)
CO+3H2 ⇔ CH4+H2O … (4)
この改質反応は、所定の温度以上(本実施形態では、700℃)で行われるようになっている。そして、各反応器18は、改質反応によって低下した触媒温度を上昇するために、改質反応とは独立して、供給された再生用ガスと酸素とを反応させて触媒を加熱すると共に該触媒に蓄熱する再生反応を行うようになっている。この実施の形態では、再生用ガス(後述するアノードオフガス)を燃焼することで、各反応器18の触媒を上記した改質反応を行い得る温度まで昇温する構成としている。したがって、各反応器18は、改質反応と再生反応とを選択的に行い得る構成である。
燃料電池14は、水素燃料供給システム12からアノード電極(水素極)に供給される上記改質反応によって得た燃料ガス(水素、一酸化炭素、及び未反応の炭化水素を含むガス)と、カソード電極(酸素極)に供給される酸素とを電気化学的反応させることで発電を行う構成とされている。この実施形態では、燃料電池14は、アノード電極とカソード電極との間に水素分離膜が設けられた水素分離膜式燃料電池(HMFC)とされており、上記燃料ガスのうち水素分離膜を透過した水素のみをカソード極の酸素と反応させる(すなわち、燃料ガスのうち水素ガスのみを発電に用いる)ようになっている。このため、燃料電池14のアノードオフガスは、主に一酸化炭素及び炭化水素(水素を含む場合もある)が混合した可燃性ガスである。一方、燃料電池14のカソードオフガスは、酸素と水素との反応によって生成された水(水蒸気)及び酸素を含む空気である。
そして、各種ガスの流れについては後述するが、燃料電池システム10では、上記アノードオフガスを反応器18の再生用ガスとして利用するようになっている。また、燃料電池システム10では、カソードオフガスが含む水蒸気及び酸素を、上式(1)、(2)の如く改質反応ガスである炭化水素ガスと反応させるようになっている。さらに、燃料電池14は、その反応温度を略一定(この実施形態では略500℃)に保つために冷却用空気にて冷却される構成とされている。燃料電池14を冷却して昇温された冷却用空気は、再生反応の支燃ガス(酸素)として利用されるようになっている。したがって、燃料電池システム10は、基本的には炭化水素原料と、カソード用及び冷却用の空気とを供給するだけで作動するようになっている。
熱交換器16は、燃料電池14のアノード電極に供給される高温ガスとしての燃料ガス(700℃)と、低温ガスとしてのカソードオフガス(500℃)との熱交換を行い、燃料電池システムの熱効率を向上するようになっている。
水素燃料供給システム12は、一対の反応器18への改質反応ガス(炭化水素ガス、水蒸気、酸素)の流路、改質反応によって生成された燃料ガスの流路、再生用ガス(アノードオフガス、冷却用空気)の流路、及び再生排ガスの流路を切り換えるための切換装置20を備えている。以下の説明では、2つの反応器18を区別する場合に、各図の紙面上側に示す一方の反応器18を第1反応器18A、他方の反応器18を第2反応器18Bということとする。
切換装置20は、第1反応器18Aに改質反応ガスを供給して改質反応を行わせている期間に第2反応器18Bに再生用ガス及び酸素を供給して再生反応を行わせる状態と、第1反応器18Aに再生用ガス及び酸素を供給して再生反応を行わせている期間に第2反応器18Bに改質反応ガスを供給して改質反応を行わせる状態とを切り換える構成とされている。以下、切換装置20の具体的構成例を説明する。なお、以下の説明では、反応器18が改質反応を行っている状態(期間)を改質工程、反応器18が再生反応を行っている状態(期間)を再生工程という場合がある。
図1に示される如く、水素燃料供給システム12は、原料供給ライン21備えており、原料供給ライン21上には、図示しない燃料タンクから液体の炭化水素原料を供給する燃料ポンプ22が配置されている。原料供給ライン21における燃料ポンプ22の下流には、蒸発器(気化器)24が配置されており、例えば燃料電池システム10の排ガスとの熱交換によって炭化水素原料を蒸発させるようになっている。また、原料供給ライン21における蒸発器24の下流には、混合器26が配置されている。混合器26は、炭化水素燃料と後述するカソードオフガス(式(1)の水蒸気及び式(2)の酸素)とを混合して、改質反応ガスとして下流に排出するようになっている。なお、カソードオフガスが高温であることから、液体の炭化水素原料を混合器26内に噴射する構成(インジェクション)を採用することで、蒸発器24を備えない構成とすることも可能である。さらに、蒸発器24と混合器26との間には、炭化水素原料遮断手段としてのバルブV0が配設されている。
原料供給ライン21の下流端には、環状のブリッジ管路28が接続されている。このブリッジ管路28には、4つのバルブV1A、V1B、V2B、V2Aが各図において反時計回りにこの順で直列に配置されている。原料供給ライン21の下流端は、ブリッジ管路28におけるバルブV1AとバルブV1Bとの間に接続されている。ブリッジ管路28におけるバルブV2AとバルブV2Bとの間には、排気ライン30の上流端が接続されている。排気ライン30上には、排気処理器32が配置されている。排気処理器32は、ハウジング内に酸化触媒を内蔵して構成されており、再生反応で燃焼しなかった再生用ガスを酸化処理(浄化)するようになっている。排気ライン30の下流端は、排気口30Aとされている。また、排気ライン30における排気処理器32の下流からは、排気戻しライン34が分岐しており、排気戻しライン34は混合器26に排ガスを導入可能に接続されている。排気戻しライン34にはバルブV3が配設されている。なお、この基本構成に係る燃料電池システム10では、排気処理器32を備えなくても良い。
また、ブリッジ管路28におけるバルブV1AとバルブV2Aとの間からは、一端が第1反応器18Aの第1出入口18Cに接続された第1ライン36Aの他端が接続されている。さらに、ブリッジ管路28におけるバルブV1BとバルブV2Bとの間からは、一端が第2反応器18Bの第1出入口18Dに接続された第2ライン36Bの他端が接続されている。第1ライン36A、第2ライン36Bは、それぞれ改質反応を行う第1反応器18A、第2反応器18Bへの上記改質反応ガスの供給用、再生反応を行う第1反応器18A、第2反応器18Bからの再生排ガスの排出用として、選択的に用いられるようになっている。
さらに、第1反応器18Aにおける第1出入口18Cと反対側(ガス流れ方向の反対側)に配置された第2出入口18Eには、第3ライン38Aの一端が接続されており、第2反応器18Bにおける第1出入口18Dと反対側に配置された第2出入口18Fには、第4ライン38Bの一端が接続されている。第3ライン38A、第4ライン38Bの各他端は、それぞれ環状のブリッジ管路40に接続されている。このブリッジ管路40には、4つのバルブV5A、V5B、V6B、V6Aが各図において反時計回りにこの順で直列に配置されている。第3ライン38Aの他端は、ブリッジ管路40におけるバルブV5AとバルブV6Aとの間に接続されており、第4ライン38Bの他端は、ブリッジ管路40におけるバルブV5BとバルブV6Bとの間に接続されている。
このブリッジ管路40におけるバルブV6AとバルブV6Bとの間には、燃料ガス供給ライン42の一端が接続されている。燃料ガス供給ライン42の他端は、熱交換器16の高温ガス入口16A(燃料電池14の燃料ガス入口14A)に接続されている。また、ブリッジ管路40におけるバルブV5AとバルブV5Bとの間には、再生用ガス導入ライン44の一端が接続されている。再生用ガス導入ライン44の他端は、燃料電池14のアノードオフガス出口14Bに接続されている。
また、燃料ガス供給ライン42からは、下流端が排気口46Aである排気ライン46が分岐しており、排気ライン46上には、排気処理器48が配置されている。排気処理器48は、ハウジング内に酸化触媒を内蔵して構成されており、基本的には水素燃料供給システム12のスタートアップ時の排ガス(燃焼ガス)を浄化するようになっている。排気ライン46における排気処理器48の上流にはバルブV7が配設されている。
さらに、切換装置20は、一端が混合器26に接続され、該混合器26に水蒸気及び酸素を供給する水蒸気供給ライン50を備えている。水蒸気供給ライン50は、その他端が熱交換器16の低温ガス出口16Dに接続されており、燃料電池14のカソードオフガスを混合器26に送給するようになっている。水蒸気供給ライン50上にはバルブV9が配設されている。
また、切換装置20は、一端が第1反応器18Aにおける第2出入口18Eに接続された燃焼用空気供給ライン52A、及び一端が第2反応器18Bにおける第2出入口18Fに接続された燃焼用空気供給ライン52Bを備えている。燃焼用空気供給ライン52A上にはバルブV4Aが配設されており、燃焼用空気供給ライン52B上にはバルブV4Bが配設されている。燃焼用空気供給ライン52A、52Bの各他端(上流端)は、それぞれ一端が燃料電池14の冷却用空気出口14Fに接続された冷却用空気排出ライン54の他端に接続されている。
この冷却用空気排出ライン54からは、下流端が排気口56Aである排気ライン56が分岐しており、排気ライン56上にはバルブV8が配設されている。バルブV8は、任意の弁開度を取り得る構成とされており、この弁開度に応じて、排気ライン56による排気量、すなわち燃焼用空気供給ライン52A、52Bを通じて反応器18に供給する燃焼用空気の供給量を調整可能とされている。
さらに、切換装置20は、一端が第3ライン38Aから分岐すると共に他端が第1反応器18Aの筒壁における第2出入口18E側に配置された再生用ガス入口18Gに接続された再生用ガスライン55Aと、一端が第4ライン38Bから分岐すると共に他端が第2反応器18Bの筒壁における第2出入口18F側に配置された再生用ガス入口18Hに接続された再生用ガスライン55Bとを備えている。第3ライン38Aにおける再生用ガスライン55Aの分岐部38Cと、第1反応器18Aとの間には、該分岐部38C側から第2出入口18Eへのガス流入を阻止する逆止弁CV1Aが配設されている。また、再生用ガスライン55Aにおける分岐部38Cと再生用ガス入口18Gとの間には、該再生用ガス入口18G側から分岐部38C側へのガス流入を阻止する逆止弁CV2Aが配設されている。同様に、第4ライン38Bにおける再生用ガスライン55Bの分岐部38Dと、第2反応器18Bとの間には、該分岐部38D側から第2出入口18Fへのガス流入を阻止する逆止弁CV1Bが配設されている。また、再生用ガスライン55Bにおける分岐部38Dと再生用ガス入口18Hとの間には、該再生用ガス入口18H側から分岐部38D側へのガス流入を阻止する逆止弁CV2Bが配設されている。
これらにより、第1反応器18Aからブリッジ管路40側に排出されるガスは、第2出入口18E、第3ライン38A(逆止弁CV1A)を経由してブリッジ管路40に至り、ブリッジ管路40側から第1反応器18A側に流れるガス(再生用ガス)は、第3ライン38A、再生用ガスライン55A(逆止弁CV2A)、再生用ガス入口18Gを経由して第1反応器18Aに至るようになっている。同様に、第2反応器18Bからブリッジ管路40側に排出されるガスは、第2出入口18F、第4ライン38B(逆止弁CV1B)を経由してブリッジ管路40に至り、ブリッジ管路40側から第1反応器18A側に流れるガスは、第4ライン38B、再生用ガスライン55B(逆止弁CV2B)、再生用ガス入口18Hを経由して第2反応器18Bに至るようになっている。このため、改質工程で生成された燃料ガスは第2出入口18E、18Fから排出され、再生工程の燃料となる再生用ガスは、反応器18内における燃焼用空気供給ライン52A、52Bから第1出入口18C、18D側に向かう燃焼用空気の流れに対し交差する方向から供給される構成とされている。したがって、再生用ガスと燃焼用空気とは反応器18よりも上流で予混合されないようになっている。
以上説明した切換装置20は、バルブV1A、V1Bの開閉に応じて一対の反応器18への改質反応ガス(炭化水素ガス、水蒸気、酸素)の流路を切り換え、バルブV6A、V6Bの開閉に応じて改質反応によって生成された燃料ガスの流路を切り換え、バルブV5A、V5Bの開閉に応じて再生用ガス(アノードオフガス)の流路を切り換え、バルブV4A、V4Bの開閉に応じて燃焼用空気(冷却用空気)の流路を切り換え、バルブV2A、V2Bの開閉に応じて再生排ガスの流路を切り換えるようになっている。各バルブは電磁弁とされており、後述する制御装置70からの作動信号に基づいて開閉する(バルブV8は弁開度の調節)を行う構成である。切換装置20のバルブ開閉による切り換え動作、すなわち水素燃料供給システム12の具体的な動作については、燃料電池システム10の基本動作として後述する。なお、上記した各逆止弁CV1A、CV1B、CV2A、CV2Bに代えて、制御装置70の作動信号に基づいて開閉する電磁開閉弁を備える構成としても良い。
燃料電池14の燃料ガス入口14Aと熱交換器16の高温ガス出口16Bとは燃料ガスライン58によって接続されている。これにより、燃料電池14の燃料ガス入口14Aには、改質工程を行う反応器18、第3ライン38A又は第4ライン38B、ブリッジ管路40のバルブV6A又はバルブV6B、燃料ガス供給ライン42、熱交換器16内の高温ガス流路、燃料ガスライン58を通過した燃料ガスが送給される構成である。燃料ガス入口14Aから燃料電池14内に導入された燃料ガスは、アノード電極に供給されて上記の通り水素ガスのみが発電に使用され、残余の可燃性ガス成分はアノードオフガスとして燃料電池14のアノードオフガス出口14Bから排出されるようになっている。アノードオフガスは、再生用ガス導入ライン44、バルブV5A又はバルブV5B、第3ライン38A又は第4ライン38Bを通じて、再生用ガスとして反応器18に供給される構成である。
また、燃料電池14のカソード用空気入口14Cには、一端が空気ポンプ60の吐出側に接続されたカソード用空気供給ライン62の他端が接続されている。カソード用空気供給ライン62上にはバルブV10が配設されている。カソード用空気入口14Cから燃料電池14内に導入された空気(酸素)は、カソード電極に導入されて、上記の通り水素分離膜を透過してきた水素と反応するようになっている。この反応によって生成された水蒸気、未反応の空気は、カソードオフガスとしてカソードオフガス出口14Dから排出されるようになっている。
燃料電池14のカソードオフガス出口14Dと熱交換器16の低温ガス入口16Cとは、低温ガスライン64にて接続されている。したがって、カソードオフガス出口14Dから排出されたカソードオフガスは、低温ガスライン64、熱交換器16内の低温ガス流路、水蒸気供給ライン50を通じて混合器26に導入され、混合器26内で炭化水素原料と混合されるようになっている。この混合ガスが、原料供給ライン21、ブリッジ管路28のバルブV1A又はバルブV1B、第1ライン36A又は第2ライン36Bを通じて改質反応ガスとして反応器18に供給される構成である。
さらに、燃料電池14の冷却用空気入口14Eは、一端が空気ポンプ66の吐出側に接続された冷却用空気供給ライン68の他端が接続されている。冷却用空気供給ライン68上にはバルブV11が配設されている。冷却用空気入口14Eから燃料電池14内に導入された空気は、図示しない冷却空気流路を流動しつつ該燃料電池14を冷却して運転温度を略一定温度に保つようになっている。燃料電池14を冷却した後の冷却用空気は、冷却用空気出口14Fから排出され、冷却用空気排出ライン54、燃焼用空気供給ライン52A又は燃焼用空気供給ライン52Bを通じて再生工程の支燃ガスとして反応器18に送給されるようになっている。
再生工程で発生した再生排ガス(燃焼ガス)は、第1ライン36A又は第2ライン36B、ブリッジ管路28のバルブV2A又はバルブV2B、排気ライン30を通じて排気口30Aからシステム外に排出されるようになっている。
また、燃料電池システム10は、制御装置70を備えている。図2に示される如く、制御装置70は、メインコントローラ72と逆火防止用サブコントローラ74とを含んで構成されている。メインコントローラ72は、切換装置20の各バルブ(バルブV0、V1A、V1B、V2A、V2B、V3、V4A、V4B、V5A、V5B、V6A、V6B、V7、V8、V9)、燃料電池14への空気供給用の各バルブV10、V11、燃料ポンプ22、及び各空気ポンプ60、66に電気的に接続されており、各バルブの開閉(バルブV8については弁開度の調節)及び各ポンプの作動、停止(燃料又は空気の供給量の制御)を行う構成とされている。このメインコントローラ72は、図6に示すフローチャートに示す如き動作を行うようになっている。この動作については、燃料電池システム10の基本動作と共に説明する。また、逆火防止用サブコントローラ74は、後述する本発明の要部である逆火防止制御を行うようになっている。
(基本動作)
次に、燃料電池システム10の基本的な運転動作を説明する。図4には、第1反応器18Aが改質工程を行うと共に第2反応器18Bが再生工程を行う状態がシステム構成図にて示されており、図5には、第1反応器18Aが再生工程を行うと共に第2反応器18Bが改質工程を行う状態がシステム構成図にて示されている。なお、燃料電池システム10の動作を表す各図において、開放状態のバルブを白抜きで示すと共に閉止状態のバルブを黒塗りで示し、かつバルブが閉じて流体の流れが遮断されている流路を想像線にて示すこととする。
図4に示される状態では、バルブV0、V1A、V2B、V4B、V5B、V6A、V9、V10、V11が開放されている。一方、バルブV1B、V2A、V4A、V5A、V6Bが閉止されている。これにより、炭化水素原料は、原料供給ライン21(バルブV0)を通じて混合器26に至り、混合器26にて水蒸気、空気(酸素)と混合され改質反応ガスとなる。混合器26から排出された改質反応ガスは、ブリッジ管路28(バルブV1A)、第1ライン36Aを経由して第1反応器18A内に供給される。第1反応器18A内では、触媒と改質反応ガスとの接触により上式(1)、(2)の改質反応が行われ、水素、一酸化炭素等を含む燃料ガスが生成される。
この燃料ガスは、第3ライン38A、ブリッジ管路40(バルブV6A)を通じて熱交換器16に導入され、該熱交換器16にて改質用ガスであるカソードオフガスと熱交換を行って冷却される。このとき、燃料ガスの上流である第1反応器18A内が分岐部38C側のよりも高圧であるため、分岐部38Cから第1反応器18Aへのガス逆流が逆止弁CV2Aによって阻止されている。熱交換器16にて冷却された燃料ガスは、燃料ガスライン58、燃料電池14の燃料ガス入口14Aを通じて燃料電池14内のアノード電極に導入される。燃料電池14には、カソード用空気供給ライン62、カソード用空気入口14Cを通じて、カソード電極に空気すなわち酸素が常時供給されている。アノード電極からは、水素分離膜を通じて水素ガスのみがプロトンとなってカソード電極に移動し、この水素とカソード電極に供給された酸素との反応によって発電が行われる。また、燃料電池14には、冷却用空気供給ライン68、冷却用空気入口14Eを通じて、冷却用空気が常時供給されており、運転温度が略500℃に保たれている。
燃料電池14のカソードオフガス出口14Dから排出された水蒸気、酸素を含むカソードオフガスは、熱交換器16の低温ガス流路に導入されて上記の通りアノード電極に導入される燃料ガスと熱交換を行う。その後、このカソードオフガスは、水蒸気供給ライン50を通じて混合器26に導入され、上記の通り炭化水素原料と混合して改質反応ガスとなり、第1反応器18Aに導入される。
燃料電池14のアノードオフガス出口14Bから排出された一酸化炭素、炭化水素原料を含むアノードオフガスは、再生用ガス導入ライン44、ブリッジ管路40(バルブV5B)、第4ライン38B、再生用ガスライン55Bを通じて再生用ガス入口18Hから第2反応器18Bに導入される。このとき、再生用ガスの上流である分岐部38D側の方が第2反応器18B内よりも高圧であるため、第2反応器18Bから分岐部38Dへのガス逆流が逆止弁CV1Bによって阻止されている。一方、燃料電池14の冷却用空気出口14Fから排出された冷却用空気は、冷却用空気排出ライン54、燃焼用空気供給ライン52B(バルブV4B)を通じて第2出入口18Fから第2反応器18Bに導入される。この第2反応器18B内では、支燃ガスである酸素を含む冷却用空気と共に触媒に接触した可燃性ガスであるアノードオフガスが燃焼する。これにより、第2反応器18Bの触媒温度が改質反応を行い得る温度まで上昇すると共に改質に必要な蓄熱が行われる。この燃焼によって生じた燃焼ガスである再生排ガスは、第2ライン36B、ブリッジ管路28(バルブV2B)、排気ライン30を通じてシステム外に排出される。
燃料電池システム10のメインコントローラ72は、図6に示すフローチャートのステップS10において、第1反応器18Aを改質工程から再生工程へ切り換えるタイミングでないと判断すると、ステップS16に進んで、上記の通りバルブV1A、V2B、V4B、V5B、V6Aが開放されると共にバルブV1B、V2A、V4A、V5A、V6Bが閉止された状態を維持する。一方、メインコントローラ72は、改質反応を行っていた第1反応器18Aの触媒温度が低下し、改質反応を維持できなくなる場合(所定時間の経過、触媒温度が閾値を下回る等の制御パラメータにより判断される)、切換装置20を切り換えることで、第1反応器18Aを改質工程から再生工程に切り換える。また、この切り換えとほぼ同時に、第2反応器18Bを再生工程から改質工程に切り換える。すなわち、メインコントローラ72は、第1反応器18Aを改質工程から再生工程へ切り換えるタイミングであると判断すると、ステップS12に進み、バルブV1A、V2B、V4B、V5B、V6Aを閉止すると共に、バルブV1B、V2A、V4A、V5A、V6Bを開放する。これにより、燃料電池システム10は、図4に示す状態から図5に示す状態に切り換わる。
図4の状態と異なる部分を説明すると、混合器26から排出された改質反応ガスは、ブリッジ管路28(バルブV1B)、第2ライン36Bを経由して第2反応器18B内に供給され、触媒との接触により改質反応が行われ、水素、一酸化炭素を含む燃料ガスが生成される。この燃料ガスは、第4ライン38B、ブリッジ管路40(バルブV6B)を通じて熱交換器16・燃料電池14内のアノード電極に導入される。燃料電池14から排出されたカソードオフガスは、熱交換器16を通過した後、混合器26に導入され、上記の通り炭化水素原料と混合して改質反応ガスとなり、第2反応器18Bに導入される。
燃料電池14から排出されたアノードオフガスは、再生用ガス導入ライン44、ブリッジ管路40(バルブV5A)、第3ライン38A、再生用ガスライン55Aを通じて再生用ガス入口18Gから第1反応器18Aに導入される。一方、燃料電池14から排出された冷却用空気は、冷却用空気排出ライン54、燃焼用空気供給ライン52A(バルブV4A)を通じて第2出入口18Eから第1反応器18Aに導入される。この第1反応器18A内では、冷却用空気と共に触媒に接触したアノードオフガスの燃焼によって、触媒温度が改質反応を行い得る温度まで上昇すると共に改質に必要な蓄熱が行われる。この燃焼によって生じた燃焼ガスである再生排ガスは、第1ライン36A、ブリッジ管路28(バルブV2A)、排気ライン30を通じてシステム外に排出される。
また、メインコントローラ72は、図6に示すフローチャートのステップS14において、第2反応器18Bを改質工程から再生工程へ切り換えるタイミング(第1反応器18Aを再生交代から改質工程へ切り換えるタイミング)でないと判断すると、ステップS12に戻って、上記の通りバルブV1B、V2A、V4A、V5A、V6Bが開放されると共にバルブV1A、V2B、V4B、V5B、V6Aが閉止された状態を維持する。一方、メインコントローラ72は、第2反応器18Bを改質工程から再生工程へ切り換えるタイミングであると判断すると、ステップS16に進み、バルブV1B、V2A、V4A、V5A、V6Bを閉止すると共に、バルブV1A、V2B、V4B、V5B、V6Aを開放する。これにより、燃料電池システム10は、図5に示す状態から図4に示す状態に切り換わる。
そして、メインコントローラ72は、上記各反応器18の改質工程と再生工程との切り換え制御を行いつつ、燃料電池14の負荷に応じて燃料ガスの供給量(改質工程を行う反応器18に対する原料供給量)を調整する制御、再生工程を行う際の触媒燃焼温度を所定温度範囲に保持する制御を行うようになっている。この実施形態では、メインコントローラ72は、再生工程での空気過剰率(燃焼ストイキ)を予め設定した制御目標λc(この実施形態では1.1)となるように燃焼用空気(燃料電池14の冷却後の空気)の反応器18への供給量、すなわちバルブV8の弁開度や空気ポンプ66の吐出量を制御して、触媒燃焼温度を800℃乃至900℃に保つようになっている。
なお、空気過剰率とは、再生用ガスを完全燃焼するのに必要な最小量の酸素を含有する空気量に対する空気供給量の比率であり、空気過剰率を増大することが本発明における酸素含有ガス量(再生用ガスの単位量あたりで、かつ反応器18への単位時間あたりの燃焼用空気供給量)を増大することに対応する。この実施形態では、例えば、排気ライン30(ブリッジ管路28)等に配設された図示しない流量計の検出結果や燃料電池システム10の運転用の他の制御パラメータ等から空気過剰率を算出するようになっている。
以上により、燃料電池システム10では、各反応器18が改質工程と再生工程とを交互に繰り返し断続的(バッチ的)に燃料ガスを生成する構成でありながら、燃料電池14に対し連続的に燃料ガスを供給して連続的に安定して発電を行うことができる構成を実現している。また、燃料電池システム10では、燃料電池14が水素分離膜によって燃料ガスから水素のみを分離して発電に用い、残余のガスを再生工程の燃料として用いるため、改質工程にて得た燃料ガス中の一酸化炭素を、さらに水と反応させて水素及び二酸化炭素を得るシフト反応を行う必要がない。シフト反応は反応速度が遅く大型の反応器を必要とするが、このシフト反応を行う必要がないため、燃料電池システム10をコンパクトに構成することができる。
(改質工程から再生工程への切り換え時の制御)
また、図1及び図3にもに示される如く、燃料電池システム10は、各反応器18A、18B内に配設された検出器としての温度センサ76A、76Bを備えている。図2に示される如く、温度センサ76A、76Bは、制御装置70を構成する逆火防止用サブコントローラ74に電気的に接続されており、対応する反応器18内の温度に対応する信号を逆火防止用サブコントローラ74に出力するようになっている。逆火防止用サブコントローラ74は、温度センサ76A、76Bから所定の温度(閾値)以上の温度を検出したことに対応する信号が入力された場合には、再生用ガスが自己着火する温度条件が成立したと判断して、後述する逆火防止制御を行うようになっている。この実施形態では、逆火防止用サブコントローラ74には、再生用ガスの自己着火が生じ易い温度条件として閾値Tc(=1000℃)が予め設定されている。すなわち、温度センサ76A、76Bは、反応器18内に局所的に高温部(後述)が生じた場合に、1000℃以上の温度を検出すべき該反応器18内の位置(再生用ガス入口18G、18H近傍)に配置されている。
また、逆火防止用サブコントローラ74は、切換装置20を構成するバルブV5A、V5B、V8、及び燃料電池14に冷却用空気を送給するための空気ポンプ66と電気的に接続されており、各バルブの開閉(バルブV8については弁開度の調節)及び空気ポンプ66の作動・停止(空気の供給量の制御)を行う構成とされている。なお、この実施形態では、狭義には切換装置20が本発明における切換装置に相当するが、広義には制御装置70による制御対象全て(切換装置20を構成するバルブ、燃料ポンプ22の他、空気ポンプ60、66、バルブV10、V11)を含む流路・流量切換装置が本発明における切換装置に相当する。
次に、反応器18の改質工程から再生工程への切り換え時の逆火防止制御について、図7、図8にそれぞれ示すフローチャートを参照しつつ説明する。なお、2つの反応器18A、18Bについて、改質工程から再生工程への切り換え時に同様の逆火防止制御を行うので、以下、第1反応器18Aについて説明し、第2反応器18Bについての説明は省略する。
上記の通り、改質工程から再生工程への切換タイミングであると判断したメインコントローラ72は、バルブV1A、V2B、V4B、V5B、V6Aを閉止すると共に、バルブV1B、V2A、V4A、V5A、V6Bを開放する。これにより、燃料電池システム10は、図4に示す状態から図5に示す状態に切り換わる。この切換に伴って逆火防止用サブコントローラ74は、メインコントローラ72から切換信号が入力されて図7のフローチャートに示す空気過剰率増大制御を開始する。
逆火防止用サブコントローラ74は、ステップS20で温度センサ76Aからの入力信号に基づいて、再生用ガスが供給される反応器18A内の温度Trを検出する。次いでステップS22へ進み、温度Trを上記閾値Tcと比較する。第1反応器18A内の温度Trが閾値Tcすなわち1000℃未満である場合には、換言すれば、第1反応器18A内が再生用ガスの自己着火を生じにくい環境であると判断された場合には、空気過剰率増大制御を終了し、ステップS24にて空気過剰率減少制御に進む。なお、次述するステップS26乃至ステップS32を経ることなく空気過剰率増大制御を終了する場合には、空気過剰率減少制御に進むことなくメインコントローラ72による再生工程の定常制御に戻るようにしても良い。
ステップS22で第1反応器18A内の温度Trが閾値Tc以上であると判断されると、換言すれば、図3(A)に示される如く第1反応器18A内が再生用ガスの自己着火を生じ易い環境になっている(現実に自己着火が生じている場合も含む)と判断されると、ステップS26へ進み、空気過剰率を現在の空気過剰率の1.5倍(50%増)にする設定を行う。逆火防止用サブコントローラ74は、この設定に基づいて図3(B)に示される如く切換装置20を制御する(図3における各ラインの太さは、ガス流量の大きさに対応している)。
具体的には、ステップS26からステップS28へ進み、排気ライン56上のバルブV8が全閉であるか否かを判断する。バルブV8が全閉でないと判断された場合にはステップS30へ進んでバルブV8を全閉にし、燃料電池14を冷却した後の冷却用空気を全て燃焼用空気として第1反応器18Aに供給するようにする。その後ステップS32に進む。また、ステップS28でバルブV8が全閉であると判断された場合にもステップS32に進む。ステップS32では、冷却用空気を駆動するための空気ポンプ66の吐出量を増大する制御を行う。これらによって空気過剰率λを上記ステップS26における空気過剰率λの1.5倍まで増大すると、ステップS22に戻る。
そして、ステップS22で第1反応器18A内の温度Trが閾値Tc未満である、すなわち第1反応器18A内が再生用ガスの自己着火を生じにくい環境になったと判断されるまで、以上のフローを繰り返す。ステップS22で第1反応器18A内の温度Trが閾値Tc未満であると判断されると、上記の通りステップS24で図8に示す空気過剰率減少制御に進む。空気過剰率減少制御では、空気過剰率増大制御で増大した空気過剰率λを徐々に減少させるようになっている。また、空気過剰率減少制御では、空気過剰率λを徐々に減少させる過程で、再生ガスを反応器18に間欠的に供給するようになっている。以下、具体的に説明する。
図8に示す空気過剰率減少制御では、逆火防止用サブコントローラ74は、ステップS40で現在の空気過剰率λを検知する。次いでステップS42へ進み、ステップS40で検知した現在の空気過剰率λを定常の再生工程における制御目標λc(=1.1)と比較する。空気過剰率λが制御目標λcを超えている場合、ステップS44へ進み、空気過剰率を現在の空気過剰率の0.8(20%減)にする設定を行う。次いでステップS46へ進み、ステップS44にて設定した空気過剰率λが制御目標λc以下になるか否かを判断する。ステップS44にて設定した空気過剰率λが制御目標λc以下になる場合には、ステップS48へ進み、空気過剰率λを制御目標λcと一致するように再設定を行う。その後ステップS50へ進む。また、ステップS46で、ステップS44にて設定した空気過剰率λが制御目標λcを超えると判断された場合は、ステップS48を経ることなくステップS50へ進む。
ステップS50では、第1反応器18Aへの再生用ガスの3秒ごとの供給停止期間Cbを設定する。この実施形態では、Cbを1秒とする。したがって、再生用ガスが2秒だけ反応器18Aに供給された後に1秒間だけ供給が停止されるサイクルを繰り返しながら、空気過剰率が減少される。なお、本制御による制御対象の空気過剰率は、反応器18に再生用ガスが供給されている間のリアルタイムの空気過剰率であり、再生用ガスの供給停止期間に供給される酸素は空気過剰率の制御について考慮されない。
ステップS50の後にはステップS52へ進み、空気過剰率λを減少し、かつ再生用ガスを第1反応器18Aに間欠的に供給する現実の制御が行われる。すなわち、逆火防止用サブコントローラ74は、空気過剰率λを減少するために空気ポンプ66の吐出量を定常の再生工程における吐出量に近づくように低減し、又はバルブV8の弁開度を定常の再生工程における弁開度に近づくように増加する(バルブV8は全閉のままでも良い)。また、逆火防止用サブコントローラ74は、再生用ガスを間欠的に第1反応器18Aに供給するために、バルブV5Aを2秒間だけ開放した後に1秒間だけ閉止する。
逆火防止用サブコントローラ74は、ステップS52の後にステップS40に戻る。ステップS42にて、ステップS40で検知した現在の空気過剰率λが制御目標λc以下である判断されるまで以上のステップを繰り返す。そして、ステップS42にて、ステップS40で検知した現在の空気過剰率λが制御目標λc以下である判断されると、すなわち、空気過剰率減少工程が完了したと判断されると、ステップS54へ進み、空気過剰率減少工程を完了した完了時刻Cfを記録する。
次いでステップS56へ進み、完了時刻Cfから現在時刻Cnまでの経過時間が設定時間ΔCfに至ったか否かが判断される。完了時刻Cfからの経過時間が設定時間ΔCf以下である場合は、ステップS58へ進み、第1反応器18Aへの再生用ガスの供給停止期間Cbを0.5秒に設定する。逆火防止用サブコントローラ74は、次いでステップS60に進み、バルブV5Aを2.5秒間だけ開放した後に0.5秒間だけ閉止するサイクルを繰り返す。
また、逆火防止用サブコントローラ74は、ステップS60の後にステップS56に戻る。そして、ステップS56にて完了時刻Cfからの経過時間が設定時間ΔCfを超えたと判断されるまで、ステップS56乃至ステップS60を繰り返す。ステップS56にて完了時刻Cfからの経過時間が設定時間ΔCfを超えたと判断されると、ステップS62へ進み、バルブV5Aの閉止期間Cbを0、すなわちバルブV5Aを連続的に開放する。これにより、再生工程を行っている第1反応器18Aに再生用ガスが連続的に供給される状態になる。ステップS62の後、空気過剰率減少制御を終了し、メインコントローラ72による定常の制御に移行する。
ところで、再生用ガスが触媒燃焼する再生工程の反応器18内では、上記の通り触媒燃焼温度がメインコントローラ72にて制御されるようになっているが、改質工程から再生工程への切換時には部分的に再生用ガス濃度が高い(空気過剰率が小さい)燃焼領域が生じる場合があり、この燃焼領域では触媒燃焼温度が制御目標である800℃乃至900℃よりも著しく高くなる。この高温燃焼の輻射熱によって反応器18内の温度が局所的に著しく高温になると、該高温部に接触した再生用ガスが自己着火して気相燃焼を生じる可能性が高まる。
ここで、燃料電池システム10(水素燃料供給システム12)では、温度センサ76A、76Bを備えているため、換言すれば、反応器18内に局所的な高温部が生じると閾値Tc(1000℃)以上の信号を出力する温度センサ76A、76Bを設けたため、反応器18内が再生用ガスの自己着火を生じ易い環境であるか否か(自己着火条件の成立の可否)を検知することができる。そして、本燃料電池システム10では、温度センサ76A、76Bから入力する信号に基づいて逆火防止制御を行う逆火防止用サブコントローラ74を備えるため、再生用ガスの自己着火に伴う逆火減少を防止することができる。
すなわち、燃料電池システム10では、温度センサ76A、76Bからの信号に基づいて反応器18内の温度Trが1000℃以上である(再生用ガスの自己着火を生じ易い環境である)と判断した場合に、空気過剰率を増加させるため、反応器18内では再生燃料である再生用ガスに対し余剰の燃焼用空気(窒素)量が増して、この燃焼用空気による冷却効果で反応器18の内部温度を速やかに低減することができる。特に、再生用ガスの供給量がほぼ一定の場合には、空気過剰率の増大により反応器18内に供給される燃焼用空気量が増大するので、該燃焼用空気による冷却効果が大きく、反応器18の内部温度を一層速やかに低減することができる。しかも、燃料電池システム10では、反応器18内の温度Trが1000℃未満になるまで空気過剰率すなわち燃焼用空気量を増加し続けるため、冷却効果が一層大きくなり、反応器18の内部温度をより一層速やかに低減することができる。さらに、余剰の燃焼用空気による希釈効果によって、局所的に生成された再生用ガスの高濃度部位が解消され、また新たな高濃度部位が生成されることが防止される。この希釈効果も空気過剰率、燃焼用空気量の増大に伴って大きくなる。以上の通り、空気過剰率の増大制御によって、再生用ガスの自己着火を生じ易くする反応器18内の温度及び再生用ガス濃度の条件が解消される。
また、改質工程から再生工程への切換時に仮に再生用ガスの自己着火が生じたとしても、この自己着火による1000℃以上の温度への温度上昇が温度センサ76A、76Bによって検出されるので、逆火防止用サブコントローラ74は、空気過剰率増大制御を行う。すると、反応器18内への供給空気量の増加に伴い反応器18内のガス流速が増加するため、この流速増加に伴う失火効果によって再生用ガスの気相燃焼を消火することができる。そして、逆火防止用サブコントローラ74は、上記の通り温度センサ76A、76Bの検出温度が1000℃未満になるまで空気過剰率を増加し続けるため、再生用ガスの気相燃焼が生じた場合でも該気相燃焼を速やかに消火することができる。
またここで、燃料電池システム10(水素燃料供給システム12)では、逆火防止用サブコントローラ74が、空気過剰率増大制御によって増大した空気過剰率を、空気過剰率減少制御によって定常の再生工程の空気過剰率(制御目標λc)まで徐々に低減するため、反応器18内に局部的に高温なる領域が再度生成されたり、気相燃焼が再発したりすることが防止される。すなわち、空気過剰率を急激に減少すると、反応器18内には上記の通り内部温度を局所的に上昇させる原因となる再生用ガス濃度が局所的に高い(空気過剰率が局所的に低い)部分が生じ易いが、空気過剰率を徐々に低減することで、再生用ガスの局所的な高濃度部位が生成されることが防止される。したがって、反応器18の内部温度が局所的に上昇して再生用ガスの気相燃焼を生じることが防止される。特に、空気過剰率を一定の減少率で減少させているため、換言すれば、空気過剰率が低減されるほど該低減幅(空気供給量の減少幅)が小さくなるので、空気過剰率減少過程で再生用ガスの気相燃焼を生じることが効果的に防止される。
しかも、逆火防止用サブコントローラ74は、空気過剰率の低減過程で反応器18への再生用ガスの供給を間欠的に行うようにしているため、換言すれば、反応器18内に空気だけが流れる期間があるため、仮に反応器18内に局所的に高温となる部分が生じた場合でも、空気による冷却によって該高温部分を速やかに解消することができる。したがって、空気過剰率増大制御にて増大した空気過剰率を、安全に定常時の空気過剰率(制御目標λc)まで低減することができる。
このように、第1の実施形態に係る燃料電池システム10では、改質工程から再生工程への切り換え時に逆火現象が生じることを防止して、再生工程を行う反応器18や周辺機器・部材等が逆火現象によって損傷を被ることを防止することができる。
なお、上記第1の実施形態では、温度センサ76A、76Bが反応器18の内部温度を直接的に検出する例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、温度センサ76A等が反応器18の該表面温度を検出するようにし、内部温度が1000℃であることに対応する該表面温度(例えば800℃)を閾値Tcとして設定しても良い。また、空気過剰率を増大する反応器18の内部温度Trは1000℃に限定されることはない。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。なお、本第2の実施形態では、基本的に逆火防止用サブコントローラ74による制御が第1の実施形態とは異なるのみであるので、第1の実施形態における構成部品・部分と同一の部品・部分については、図示及び説明を省略する。
第2の実施形態における逆火防止用サブコントローラ74は、反応器18が改質工程から再生工程に切り換えられる際に、該反応器18の空気過剰率を所定時間だけ(一時的に)定常の再生工程の空気過剰率(制御目標λc)よりも増大する制御を行う構成とされている。具体的には、逆火防止用サブコントローラ74は、図9に示される制御を行うようになっている。以下、第1反応器18Aが改質工程から再生工程に切り換えられた場合を例に説明する。
逆火防止用サブコントローラ74は、ステップS70で改質工程から再生工程への切り換え信号が入力されると、ステップS72へ進み、再生工程の開始時刻Csを記録する。次いでステップS74へ進み、開始時刻Csから現在時刻Cnまでの経過時間が設定時間ΔCsに至ったか否かが判断される。開始時刻Csからの経過時間が設定時間ΔCsを超えている場合は、換言すれば、第1反応器18A内が再生用ガスの自己着火を生じ易い時間帯を過ぎたと判断された場合には、空気過剰率増大制御を終了し、ステップS76にて空気過剰率減少制御に進む。なお、次述するステップS78乃至ステップS84を経ることなく空気過剰率増大制御を終了する場合には、空気過剰率減少制御に進むことなくメインコントローラ72による再生工程の定常制御に戻るようにしても良い。
ステップS74で開始時刻Csからの経過時間が設定時間ΔCs以下であると判断されると、換言すれば、第1反応器18A内が再生用ガスの自己着火を生じ易い時間帯であると判断されると、ステップS78へ進み、空気過剰率を増加する。具体的には、空気過剰率λを、定常の再生工程における空気過剰率(制御目標λc)よりも大奇異制御目標であるλoとして設定する。この実施形態では、空気過剰率λoは、予め設定された値とされており、例えば1.5から3.0までの範囲内にある値が選択されている。逆火防止用サブコントローラ74は、この制御目標λoに基づいて切換装置20を制御する。
具体的には、ステップS78からステップS80へ進み、排気ライン56上のバルブV8が全閉であるか否かを判断する。バルブV8が全閉でないと判断された場合にはステップS82へ進んでバルブV8を全閉にし、燃料電池14を冷却した後の冷却用空気を全て燃焼用空気として第1反応器18Aに供給するようにする。その後ステップS84に進む。また、ステップS80でバルブV8が全閉であると判断された場合にもステップS84に進む。ステップS84では、冷却用空気を駆動するための空気ポンプ66の吐出量を増大する制御を行う。これらによって空気過剰率λを上記ステップS26における制御目標の空気過剰率λoまで増大すると、ステップS74に戻る。
そして、ステップS74で開始時刻Csからの経過時間が設定時間ΔCsを超えている、すなわち第1反応器18A内が再生用ガスの自己着火を生じにくい環境になったと判断されるまで、以上のフローを繰り返す。ステップS74で開始時刻Csからの経過時間が設定時間ΔCsを超えていると判断されると、上記の通りステップS76で図8に示す空気過剰率減少制御に進む。この空気過剰率減少制御は、上記第1の実施形態と同じであるため説明を省略する。
ところで、再生用ガスを触媒燃焼する再生工程を行う反応器18内では、上記の通り触媒燃焼温度がメインコントローラ72にて制御されるようになっているが、改質工程から再生工程への切換時(切り換え初期)には部分的に再生用ガス濃度が高い(空気過剰率が小さい)燃焼領域が生じる場合があり、この燃焼領域では触媒燃焼温度が制御目標である800℃乃至900℃よりも著しく高くなる。この高温燃焼の輻射熱によって反応器18内の温度が局所的に著しく高温になると、該高温部に接触した再生用ガスが自己着火して気相燃焼を生じる可能性が高まる。
ここで、第2の実施形態に係る燃料電池システム10(水素燃料供給システム12)では、改質工程から再生工程への切り換え開始から所定時間(ΔCs)を経過するまでの期間に、反応器18内の空気過剰率を、定常の再生工程における空気過剰率λc(1.1)よりも大であるλo(1.5から3.0)にする。これにより、再生工程初期の反応器18内に再生用ガスの濃度が部分的に高い領域が生じることが防止され、反応器18内に再生用ガスの自己着火の原因となる局所的な高温部が生成されることがない。すなわち、第2の実施形態では、改質工程から再生工程への切り換え初期において、再生用ガスが自然発火するための一条件が成立することが防止され、したがって反応器内での再生用ガスの自己着火、逆火現象の発生が防止される。
また、定常の再生工程の空気過剰率λcよりも大となった空気過剰率を該定常空気過剰率λcまで減少する際には、上記した図8のフローに基づき空気過剰率を徐々に減少するため、第1の実施形態の場合と同様に、この空気過剰率減少過程で再生用ガスの自己着火が生じることが防止される。
このように、第2の実施形態に係る燃料電池システム10では、改質工程から再生工程への切り換え時に逆火現象が生じることを防止して、再生工程を行う反応器18や周辺機器・部材等が逆火現象によって損傷を被ることを防止することができる。
なお、第2の実施形態では、逆火防止用サブコントローラ74が温度センサ76A、76Bからの信号に基づく制御を行わない例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、図9又は図8に示す制御を行いつつ温度センサ76A、76Bからの信号(反応器18の温度)を監視しておき、該信号が反応器18内の温度が1000℃以上であることに対応すると判断した場合には図7に示すフローに移行するようにしても良い。同様に、第1の実施形態において、図8の空気過剰率減少制御を行っている過程で温度センサ76A、76Bからの信号が反応器18内の温度が1000℃以上であることに対応すると判断した場合には、図7に示すフローに移行するようにしても良い。
また、上記各実施形態では、逆火防止用サブコントローラ74が空気過剰率増加制御、空気過剰率減少制御等による逆火防止制御を行う例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、これらの制御をメインコントローラ72による主制御に組み込んでも良い。また、改質工程と再生工程との切り換え制御を温度センサ76A、76Bの出力信号に基づく(切替パラメータを温度とする)制御とし、逆火防止用の出力信号を切り換え制御用の出力信号とを共通化することも可能である。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係る水素燃料供給システム92が適用された燃料電池システム90について、図10乃至図15に基づいて説明する。なお、上記第1の実施形態と基本的に同一の部品・部分については上記第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
図10には、燃料電池システム90のシステム構成図が示されている。この図に示される如く、燃料電池システム90及び水素燃料供給システム92は、温度センサ76A、76Bを備えない(又は逆火防止の制御に用いない)点で、燃料電池システム10及び水素燃料供給システム12とは異なる。また、図11に示される如く、燃料電池システム90は、制御装置70に代えて制御装置94を備えている。制御装置94による基本的な制御は、上記第1の実施形態の基本動作で説明した制御装置70による制御(図6のフローチャートに示す制御)と同様であるので、説明を省略する。制御装置94による逆火防止のための制御については後述する。
先ず、第3の実施形態の逆火防止制御を説明する前に、反応器18内のより具体的な構造を説明する。図12(A)に示される如く、各反応器18の内部には、再生工程の酸化触媒としても機能する改質触媒を担持した触媒担持基材80が配設されている。触媒担持基材80は、反応器18内における再生用ガス入口18G、18Hよりも第1出入口18C、18D側に配置されている。一方、各反応器18内における再生用ガス入口18G、18Hよりも第2出入口18E、18F側には、触媒担持基材80と同様の構造を有し触媒を担持しない多孔体82が配設されている。各反応器18における触媒担持基材80と多孔体との間には混合用空間84が形成されており、再生用ガス入口18G、18Hは、混合用空間84に再生用ガスを噴出するようになっている。この実施形態では、触媒担持基材80、多孔体82は、ハニカム構造を有するセラミック製の多孔体にて構成されている。
したがって、再生工程では、第2出入口18E、18Fから反応器18内に供給され多孔体82を通過して混合用空間84に導入された燃焼用空気と、再生用ガス入口18G、18Hから混合用空間84に導入された再生用ガスとが、上記空気過剰率の混合ガスとなるように混合用空間84にて混合されるようになっている。そして、この混合ガスが触媒担持基材80に導入されて触媒燃焼することで、該触媒担持基材80に担持した改質触媒が昇温されると共に、該触媒への蓄熱が行われるようになっている。このように構成することで、再生工程後(改質工程開始直前)の反応器18の軸線方向に沿う温度分布Dtが、図12(B)に示す如く中央部で高くなると共に両端部で低くなる好ましい分布を得ることができる。
そして、水素燃料供給システム92では、第1反応器18Aが改質工程から再生工程へ切り換えられる際には、第1反応器18Aに燃焼用空気供給ライン52Aからの空気供給が開始された後に該第1反応器18Aへの再生用ガス供給を開始するようになっている。同様に、水素燃料供給システム92では、第2反応器18Bが改質工程から再生工程へ切り換えられる際には、第2反応器18Bに燃焼用空気供給ライン52Bからの空気供給が開始された後に該第2反応器18Bへの再生用ガス供給を開始するようになっている。
具体的には、制御装置94は、図6に示すフローチャートのステップS10で第1反応器18Aの改質工程から再生工程への切り換えタイミングであると判断した場合には、ステップS14から戻る場合と異なり、ステップS12でバルブV1B、V2A、V4A、V5A、V6Bをほぼ同時に開放するのではなく、図13(A)に示されるステップS12の如くバルブV5Aの開放タイミングを遅らせるようになっている。より具体的には、制御装置94は、第1反応器18Aの改質工程から再生工程への切り換えタイミングであると判断した場合には、ステップS90で、バルブV1A、V2B、V4B、V5B、V6Aを閉止すると共に、バルブV1B、V2A、V4A、V6Bを開放する。また、バルブV5Aの閉止状態を維持する。これにより、燃料電池システム10(切換装置20)は、図15に示される如く、燃焼用空気供給ライン52Aから第1反応器18Aに燃焼用空気を供給しながら、再生用ガスを供給しない状態に切り換わる。
次いでステップS92に進みバルブV4Aを開放した空気供給開始時刻Ca1を記録し、ステップS94へ進む。ステップS94では、空気供給開始時刻Ca1から現在時刻Cnまでの経過時間が設定時間ΔCaに至ったか否かを判断する。空気供給開始時刻Caからの経過時間が設定時間ΔCa以下である場合は、ステップS94に戻りこれを繰り返す。そして、ステップS94にて空気供給開始時刻Ca1からの経過時間が設定時間ΔCaを超えたと判断すると、ステップS96に進みバルブV5Aを開放する。これにより、図8に示すように第1反応器18Aに再生用ガス供給ライン55Aから再生用ガスが供給される再生工程に移行する。
同様に、制御装置94は、図6に示すフローチャートのステップS14で第2反応器18Bの改質工程から再生工程への切り換えタイミングであると判断した場合には、ステップS12から移行する場合と異なり、図13(B)に示すステップS16を行うようになっている。すなわち、制御装置94は、第2反応器18Bの改質工程から再生工程への切り換えタイミングであると判断した場合には、ステップS100で、バルブV1B、V2A、V4A、V5A、V6Bを閉止すると共に、バルブV1A、V2B、V4B、V6Aを開放する。また、バルブV5Bの閉止状態を維持する。これにより、燃料電池システム10(切換装置20)は、燃焼用空気供給ライン52Bから第2反応器18Bに燃焼用空気を供給しながら、再生用ガスを供給しない状態に切り換わる(図示省略)。
次いでステップS102に進みバルブV4Bを開放した空気供給開始時刻Ca2を記録し、ステップS104へ進む。ステップS104では、空気供給開始時刻Ca2から現在時刻Cnまでの経過時間が設定時間ΔCaに至ったか否かを判断する。空気供給開始時刻Ca2からの経過時間が設定時間ΔCa以下である場合は、ステップS104に戻りこれを繰り返す。そして、ステップS104にて空気供給開始時刻Ca2からの経過時間が設定時間ΔCaを超えたと判断すると、ステップS106に進みバルブV5Bを開放する。これにより、図7に示すように第2反応器18Bに再生用ガス供給ライン55Bから再生用ガスが供給される再生工程に移行する。
制御装置94に予め設定されている設定時間ΔCaは、反応器18に再生用ガスが供給されて再生工程が開始される前に該反応器18に供給される燃焼用空気によって、該反応器18内における混合用空間84の温度が所定温度以下に低下するのに要する時間として設定されている。この所定温度は、上記のとおり、一酸化炭素、水素、メタンなどの可燃性ガスを含む混合ガスである再生用ガスの自己着火が生じる恐れのある下限温度未満の温度として設定されており、この実施形態では、500℃として設定されている。したがって、上記設定時間ΔCaは、改質工程後の反応器18内における混合用空間84の温度が燃焼用空気の供給によって500℃以下まで低下するのに要する時間として、実験的に又は数値解析等によって求められている。すなわち、この第3の実施形態では、制御装置94自体が本発明に係る検出器を兼ねる構成である。
次に、この第3の実施形態における上記基本動作とは異なる作用について、図14に示す反応器内の温度分布の変化過程を参照しつつ説明する。
図14(A)に示される如く、改質工程後期(終了直前)の反応器18内の温度分布は、主に改質反応によって触媒部(触媒担持基材80)で熱を消費することで、混合用空間84内でピークになるような分布となっている。この状態から改質工程が終了すると、先ず、反応器18には上記の通り第2出入口18E又は18Fから燃焼用空気のみが供給されるようになる(第1反応器18Aについて図15参照)。この燃焼用空気の供給によって、先ず図14(B)に示される如く多孔体82の温度が低下する。バルブV4A又はV4Bの開放すなわち反応器18への燃焼用空気の供給から設定時間ΔCaが経過すると、この反応器18内では、図14(C)に示される如く混合用空間84の温度が低下し、再生用ガスの自己着火が生じる下限温度未満の温度になる。
この設定時間ΔCaの経過後に、バルブV5A又はV5Bが開放されて再生用ガス入口18G、18Hから再生用ガスが供給される。再生用ガスは混合用空間84内で燃焼用空気と混合され、この混合ガスが触媒担持基材80に担持された触媒に接触すると触媒燃焼が生じる。この触媒燃焼に伴う発熱によって、図14(D)に示される如く触媒担持基材80に担持された触媒が徐々に昇温されると共に、該触媒(触媒担持基材80)に改質に要する熱が蓄えられる。このとき、供給され続ける燃焼用空気によって、混合用空間84の温度は、再生用ガスの自己着火が生じない温度に維持される。そして、再生工程が終了して燃焼用空気が供給されなくなると、燃焼用空気による顕熱冷却効果がなくなった反応器18内は、図12(B)に示す如き温度分布となる。
ここで、燃料電池システム10を構成する水素燃料供給システム92では、反応器18が改質工程から再生工程に切り換わる際に、制御装置94が切換装置20を制御して反応器18内に再生用ガスが供給される前に燃焼用酸素のみが供給される期間が設定されるため、この期間に反応器18内における再生用ガスが供給される混合用空間84が燃焼用空気によって冷却される。このため、反応器18内における再生用ガスが供給される混合用空間84は、該再生用ガスの自己着火が生じ難い環境になる。
特に、反応器18が改質工程から再生工程に切り換わる際における上記燃焼用空気のみが反応器18に供給される期間が、該燃焼用空気の供給によって混合用空間84内の温度を再生用ガスの自己着火を生じる恐れのある下限温度未満まで低下するのに要する時間として設定されているため、再生用ガスが供給される混合用空間84内は、再生用ガスの自己着火を生じる恐れのある下限温度未満まで低下しており、再生用ガスの自己着火が生じることが効果的に抑制(予防)される。
そして、再生用ガスの自己着火すなわち反応速度の速い気相燃焼が抑制されることで、混合与空間84内で再生用ガスと燃焼用空気とが十分に混合され(十分な混合時間が確保され)、安定的な再生工程での触媒燃焼反応が形成される。安定的な燃焼反応が形成された後においては、供給される燃焼用空気による顕熱冷却によって図14(D)に示される如く混合用空間84の温度上昇が抑えられ、安定的な燃焼反応すなわち再生工程が維持される。換言すれば、再生用ガスと燃焼用空気とが十分に混合されることで、部分的に再生用ガスが高濃度に(空気過剰率が小さく)になった混合気が触媒燃焼して触媒担持基材80に局所的な高温部位が形成されることが防止され、該高温部位からの輻射熱によって再生用ガスの自己着火が生じる恐れもなくなり、安定的な再生工程を維持可能となる。
このように、本実施形態に係る燃料電池システム90では、改質工程から再生工程への切り換え時に逆火現象が生じることを防止して、再生工程を行う反応器18や周辺機器・部材等が逆火現象によって損傷を被ることを防止することができる。