JP4546006B2 - インクジェット記録ヘッド - Google Patents

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    • B41J2/01Ink jet
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    • B41J2/14016Structure of bubble jet print heads
    • B41J2002/14185Structure of bubble jet print heads characterised by the position of the heater and the nozzle

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インク等の記録液を吐出口から吐出して液滴を形成して記録動作を行う記録装置に用いられるインクジェット記録ヘッドに関する。なお、本発明のインクジェット記録ヘッドは、一般的なプリント装置のほか、複写機、通信システムを有するファクシミリ、プリント部を有するワードプロセッサ等の装置、さらには、各種処理装置と複合的に組み合わされた産業用記録装置に適用することができる。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録装置は、いわゆるノンインパクト記録方式の記録装置であり、記録時に騒音がほとんど生じず、高速な記録と様々な被記録媒体に対する記録とが可能であるという特徴を有している。このようなことから、インクジェット記録装置は、プリンタ、複写機、ファクシミリ、ワードプロセッサ等の記録機構を担う装置として広く採用されている。
【0003】
このようなインクジェット記録装置に搭載される記録ヘッドにおける代表的なインク吐出方式としては、ピエゾ素子等の電気機械変換体を用いたもの、レーザー等の電磁波を照射してインクを発熱させ、この発熱による作用でインク滴を吐出させるもの、あるいは発熱抵抗体を有する電気熱変換素子によってインクを加熱し、膜沸騰の作用によりインク滴を吐出させるものなどが知られている。
【0004】
これらのうち、電気熱変換素子を用いたインクジェット記録ヘッドは、電気熱変換素子を記録液室内に設け、これに記録信号である電気パルスを供給して発熱させることによりインクに熱エネルギーを与え、そのときの記録液の相変化により生じる記録液の発泡時(沸騰時)の気泡圧力を利用して、微小な吐出口からインク液を吐出させて被記録媒体に対し記録を行うものである。電気熱変換素子を用いたインクジェット記録ヘッドは、一般に、インク滴を吐出するための吐出口が開口しているノズルと、このノズルにインクを供給するインク流路および共通液室とを有している。
【0005】
このようなインクジェット記録ヘッドは、通常、記録装置本体のキャリッジに載置されている。記録装置本体は、被記録媒体を、キャリッジに載置されたインクジェット記録ヘッドの吐出口面に対向する位置を通るように搬送する搬送手段を有している。キャリッジは、被記録媒体の搬送方向に対して交差する方向に移動可能に構成されている。
【0006】
このような記録装置での記録動作は、インクジェット記録ヘッドを移動させつつ所定の周期でインクを吐出させる主走査と、被記録媒体を所定幅分だけ搬送する副走査とを繰り返して行われる。
【0007】
図45は、従来のインクジェット記録ヘッドのノズル部分を示す模式図である。同図(a)は、吐出口形成部材を透視した状態で示した平面図、同図(b)は同図(a)のP−P’線に沿って切断した断面図を示している。
【0008】
図45に示すインクジェット記録ヘッドは、インク供給口156に接続された共通液室154を有している。共通液室154を挟んでその両側には、インクを発泡させて吐出させる電気熱変換素子151と、その電気熱変換素子151を収容する、電気熱変換素子151の中心を中心とする円形の圧力室155とが複数並んで設けられている。共通液室154と各圧力室155との間には、それぞれインク流路153が設けられている。電気熱変換素子151に対向する位置には、吐出口152が開口している。
【0009】
このインクジェット記録ヘッドでは、隣り合う吐出口152および電気熱変換素子151の印字方向(キャリッジ移動方向)の位置は、各駆動ブロック間の駆動タイミングのずれ時間の間にキャリッジ(不図示)が移動する距離に相当するオフセット分だけずれている。図45には、表記を簡潔にするため、各ノズルに4つの駆動ブロックを割り当てたインクジェット記録ヘッドを示しており、吐出口152の印字方向の配置は吐出口の並び方向に4ノズルおきに周期的に変化している。
【0010】
そして、駆動ブロックに、駆動されるタイミングが早いものから昇順に番号を付けた場合、図45に示す例では、右上の吐出口152およびそれから左側に4の整数倍のノズル数離れた吐出口152に駆動ブロック1が割り当てられ、その左隣の吐出口152に駆動ブロック2、さらにその左隣の吐出口152に駆動ブロック3、さらにその左隣の吐出口152に駆動ブロック4が割り当てられている。このような構成にすることで、駆動ブロック1〜4を昇順に順次駆動し、インクを吐出させて、これらの吐出口152から吐出されたインクを、記録媒体上に一列に並んで着弾させることができる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
図45に示す構成のノズルでは、インク流路163の中心線と電気熱変換素子151の中心線とが一致しているため、共通液室154からインク流路163を通って圧力室155へ向かうインクの流れが電気熱変換素子151の中心線に対して線対称に生じる。そのため、電気熱変換素子151によってインクを加熱することにより発生した気泡は、電気熱変換素子151上でその中心線に対称に安定して消泡する。場合によっては消泡位置が電気熱変換素子151の発熱域の角部(計4箇所)に分散することもあるが、その場合でもそれぞれの消泡位置は一定になる。
【0012】
気泡の消泡時にはキャビテーションの崩壊による衝撃力が発生する。上述の従来例のように消泡位置が安定しているノズル構成では、電気熱変換素子151のうちの特定の個所がキャビテーションによる衝撃力を受けるため、電気熱変換素子151が損傷を受けやすく耐久寿命が短くなってしまうという問題があった。
【0013】
そこで、本発明の他の目的は、電気熱変換素子のキャビテーションによる損傷を回避し、その寿命を長くすることができるインクジェット記録ヘッドを提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明によるインクジェット記録ヘッドは、円形または長円形または長方形の、インクを吐出する複数の吐出口と、該複数の吐出口に夫々対応して設けられ、インクを吐出するために利用される熱エネルギーを発生する矩形の電気熱変換素子が前記吐出口に対向するように設けられた複数の圧力室と、該複数の圧力室に供給されるインクを貯留する共通液室と、前記複数の圧力室と前記共通液室とを連通させ、前記電気熱変換素子上に発生した気泡が消泡するのに伴い前記共通液室から前記複数の圧力室へインクが流入するための複数のインク流路と、を有するインクジェット記録ヘッドにおいて、前記インク流路は、前記共通液室から前記圧力室へ向かう第一の方向に沿って一組のインク流路壁によって形成された部分を備え、前記圧力室は実質的に円柱形の形状を有し、前記吐出口から該吐出口に対応する前記電気熱変換素子に向かう第二の方向にみて、前記第一の方向に沿った前記部分の中心線に平行で前記電気熱変換素子の中心を通る中心線が前記部分の中心線に対してオフセットしており、前記吐出口の中心が前記電気熱変換素子の中心から前記共通液室側にオフセットしていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、インクを吐出させる気泡の消泡時に、消泡に伴うインクのリフィルの流れによって、気泡を電気熱変換素子の側方に偏った位置に押し流し、この位置で最終的な消泡が行われるようにでき、消泡時のキャビテーションによる電気熱変換素子への影響を小さくできる。
【0016】
特に、圧力室を実質的に円柱形の形状を有するインクジェット記録ヘッドにおいて、インク流路を電気熱変換素子の中心線からオフセットした位置に配置することにより、最終的な消泡が、圧力室の側縁付近で上下に延びた比較的広い領域で生じるようにでき、キャビテーションの発生領域を分散させて、キャビテーションの影響を低減できる。
【0017】
さらに、インク吐出口を、その中心が前記電気熱変換素子の中心からオフセットされて位置するように配置することによって、気泡を発泡させて吐出口からインク液滴を吐出させた後に吐出口と気泡との間に残ったインク(以下、吐出口側インク)が気泡の消泡時の収縮に伴って電気熱変換素子に向かって移動する際の速度ベクトルの方向を不安定に揺らがせたり、電気熱変換素子に対して垂直ではなく傾いた速度ベクトルを持たせたりすることができる。また更に、吐出口側インクが電気熱変換素子に衝突する個所を共通液室側から流入してくるインク(以下、液室側インク)によって吐出口側インクが衝突する前に覆ってしまうことが可能となる。
【0018】
その結果、消泡過程は、吐出口側インクが電気熱変換素子の一部の個所に垂直に集中して衝突することなく終了する。したがって、電気熱変換素子は消泡過程で強い衝撃力を受けることがなくなり、損傷をほとんど受けなくなる。その結果、電気熱変換素子の耐久性能を著しく向上させることが可能になる。
【0019】
また、前記インク吐出口の中心が、前記電気熱変換素子の中心から前記インク流路側にオフセットした位置に配置されている構成とすることにより、吐出口側インクが気泡の消泡時の収縮に伴って電気熱変換素子に向かって移動する際の速度ベクトルの方向を不安定に揺らがせたり、電気熱変換素子に対して垂直ではなく傾いた速度ベクトルを持たせたりすることができる。また更に、吐出口側インクが電気熱変換素子に衝突する個所を共通液室側から流入してくる液室側インクによって吐出口側インクが衝突する前に覆ってしまうことが可能となる。
【0020】
さらに、吐出口のオフセットの量は1μm以上10μm以下である構成とすることが好ましい。また、更に好ましくは前記オフセットの量は3μm以上7μm以下であるのが良い。
【0021】
また、前記電気熱変換素子の中心が前記圧力室の中心からオフセットされて位置するように配置されている構成としてもよい。これにより、圧力室中心からの吐出口中心のオフセット量を小さく保ちつつ、吐出口中心と電気熱変換素子中心とのオフセット量を大きく設定することが可能になる。その結果、インク液滴の吐出方向の適正な維持と圧力室内に発生する泡溜まりの抑制とを達成しつつ、吐出口近傍の外面にインク溜まりが形成されないようにすることができ、記録画像の品位をさらに高く保つことが可能となる。
【0022】
本発明のインクジェット記録ヘッドでは、消泡工程で気泡は、吐出口の、圧力室に連絡する部分の縁より外側に追いやられやすい。そこで、圧力室の、吐出口が連絡している面に平行な面内で見て、電気熱変換素子が占める領域は、吐出口の、圧力室に連絡する部分の縁に囲まれる領域内に含まれている構成にすることも好ましい。すなわち、このような構成にすることによって、消泡がより確実に電気熱変換素子の外側の領域で生じるようにでき、電気熱変換素子へのキャビテーションの影響をさらに低減することができる。
【0023】
この構成の場合、吐出口には、圧力室側に向かって断面積が増加するように、側壁にテーパを付けることが好ましい。このようにすることによって、吐出口の、吐出面での開口の大きさを、所望の小さな大きさに保ちつつ、吐出口の、圧力室に連絡する部分の縁に囲まれる領域内に電気熱変換素子が占める領域が含まれるようにすることができる。
【0024】
さらに、このように吐出口がテーパを有している場合、圧力室の、吐出口が連絡している面に平行な面内で見て、電気熱変換素子の占める領域が、吐出口の、吐出面側の開口の縁からはみ出している部分において、吐出口の、吐出面側の開口の縁から前記電気熱変換素子の縁までの距離は、任意の位置で実質的に等しくすることが好ましい。このようにすることによって、テーパ角を最小限の大きさにすることができる。
【0025】
また、吐出口は、電気熱変換素子からオフセットされている方向に長い形状とすることが好ましい。この際の吐出口の形状としては、長方形、長円形、楕円形のいずれとしてもよい。このようにすることによって、吐出口の大きさ、またはそのテーパ角を最小限の大きさに保ちつつ、吐出口の、圧力室に連絡する部分の縁に囲まれる領域内に電気熱変換素子が占める領域が含まれるようにすることができる。
【0045】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0046】
(記録ヘッドカートリッジの構成)
図28〜図35は、本発明が実施もしくは適用される好適なヘッドカートリッジ、記録ヘッド、インクタンクのそれぞれの構成およびそれぞれの関係を説明する図である。以下、これらの図面を参照して各構成要素の説明を行う。
【0047】
本実施形態の記録ヘッド(インクジェット記録ヘッド)H1001は、図28(a)および図28(b)の斜視図でわかるように、記録ヘッドカートリッジH1000を構成する一構成要素であり、記録ヘッドカートリッジH1000は、記録ヘッドH1001と、記録ヘッドH1001に着脱自在に設けられたインクタンクH1900(H1901,H1902,H1903,H1904)とから構成されている。記録ヘッドH1001は、インクタンクH1900から供給されるインク(記録液)を、記録情報に応じて吐出口から吐出する。
【0048】
この記録ヘッドカートリッジH1000は、インクジェット記録装置本体に載置されているキャリッジ(不図示)の位置決め手段および電気的接点によって固定支持されるとともに、キャリッジに対して着脱可能となっている。インクタンクH1901はブラックのインク用、インクタンクH1902はシアンのインク用、インクタンクH1903はマゼンタのインク用、インクタンクH1904はイエローのインク用である。このようにインクタンクH1901,H1902,H1903,H1904のそれぞれが記録ヘッドH1001に対してシールゴムH1800側に着脱自在であり、それぞれのインクタンクが交換可能となっていることにより、インクジェット記録装置における印刷のランニングコストが低減される。
【0049】
次に、記録ヘッドH1001を構成しているそれぞれの構成要素毎に順を追ってさらに詳しく説明する。
【0050】
(1)記録ヘッド
記録ヘッドH1001は、電気信号に応じて膜沸騰をインクに対して生じさせるための熱エネルギーを生成する電気熱変換体(記録素子)を用いて記録を行うバブルジェット方式のサイドシュータ型の記録ヘッドである。
【0051】
記録ヘッドH1001は、図29の分解斜視図に示すように、記録素子ユニットH1002とインク供給ユニットH1003とタンクホルダーH2000から構成されている。
【0052】
さらに、図30の分解斜視図に示すように、記録素子ユニットH1002は、第1の記録素子基板H1100、第2の記録素子基板H1101、第1のプレート(第1の支持部材)H1200、電気配線テープ(可撓性の配線基板)H1300、電気コンタクト基板H2200、第2のプレート(第2の支持部材)H1400で構成されており、また、インク供給ユニットH1003は、インク供給部材H1500、流路形成部材H1600、ジョイントシール部材H2300、フィルターH1700、シールゴムH1800から構成されている。
【0053】
(1−1)記録素子ユニット(インクジェット記録ヘッド)
図31は、第1の記録素子基板H1100の構成を説明するために一部分解した斜視図である。第1の記録素子基板H1100は、厚さ0.5〜1mmのSi基板H1110の片面に、インクを吐出するための複数の記録素子(電気熱変換素子)H1103と、各電気熱変換素子H1103に電力を供給するAl等の電気配線が、成膜技術により形成されている。そして、この電気熱変換素子H1103に対応する複数のインク流路と複数の吐出口H1107とがフォトリソグラフィ技術により形成されるとともに、複数のインク流路にインクを供給するためのインク供給口H1102が反対側の面(裏面)に開口するように形成されている。また、記録素子基板H1100は第1のプレートH1200に接着され固定されており、ここにインク供給口H1102が形成されている。さらに、第1のプレートH1200には、開口部を有する第2のプレートH1400が接着され固定されており、この第2のプレートH1400を介して、電気配線テープH1300が記録素子基板H1100に対して電気的に接続されるように保持されている。この電気配線テープH1300は、記録素子基板H1100にインクを吐出するための電気信号を印加するものであり、記録素子基板H1100に対応する電気配線と、この電気配線部に位置しプリンタ本体からの電気信号を受け取る外部信号入力端子H1301とを有し、この外部信号入力端子H1301は、インク供給部材H1500の背面側に位置決めされ固定されている。
【0054】
インク供給口H1102は、Siの結晶方位を利用した異方性エッチングやサンドブラストなどの方法で形成されている。すなわち、Si基板H1110が、ウエハー面方向に<100>、厚さ方向に<111>の結晶方位を持つ場合、アルカリ系(KOH,TMAH,ヒドラジン等)による異方性エッチングで、約54.7度の角度でエッチングを進行させ得る。これにより所望の深さにエッチングを行い、長溝状の貫通口からなるインク供給口H1102を形成する。インク供給口H1102を挟んで両側に電気熱変換素子H1103がそれぞれ1列ずつ千鳥状に配列されている。電気熱変換素子H1103と、電気熱変換素子H1103に電力を供給するAl等の電気配線は、成膜技術により形成されている。さらに、前記電気配線に電力を供給するための電極H1104が電気熱変換素子H1103の両外側に配列されており、電極H1104にはAu等のバンプH1105が熱超音波圧着法で形成されている。そして、Si基板H1110上には、電気熱変換素子H1103に対応したインク流路を形成するためのインク流路壁H1106と吐出口H1107が樹脂材料でフォトリソグラフィ技術によりに形成され、吐出口群H1108が形成されている。電気熱変換素子H1103に対向して吐出口H1107が設けられているため、インク供給口H1102から供給されたインクは電気熱変換素子H1103の発熱作用により発生した気泡により吐出口H1107から吐出される。
【0055】
また図32は第2の記録素子基板H1101の構成を説明するために一部分解した斜視図である。第2の記録素子基板H1101は3色のインクを吐出させるための記録素子基板であり、3個のインク供給口H1102が並列して形成されており、それぞれのインク供給口H1102を挟んだ両側に電気熱変換素子H1103とインク吐出口H1107が形成されている。第1の記録素子基板H1100と同じようにSi基板H1110にインク供給口H1102や電気熱変換素子H1103、電気配線、電極H1104などが形成されておりその上に樹脂材料でフォトリソグラフィ技術によりインク流路やインク吐出口H1107が形成されている。そして、第1の記録素子基板H1100と同様に電気配線に電力を供給するための電極H1104にはAu等のバンプH1105が形成されている。
【0056】
次に第1のプレートH1200は、例えば、厚さ0.5〜10mmのアルミナ(Al23)材料で形成されている。なお、第1のプレートH1200の材料は、アルミナに限られることなく、記録素子基板H1100の材料の線膨張率と同等の線膨張率を有し、かつ、記録素子基板H1100材料の熱伝導率と同等もしくは同等以上の熱伝導率を有する材料で作られてもよい。第1のプレートH1200の材料は、例えば、シリコン(Si)、窒化アルミニウム(AlN)、ジルコニア、窒化珪素(Si34)、炭化珪素(SiC)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)のうちいずれであってもよい。第1のプレートH1200には、第1の記録素子基板H1100にブラックのインクを供給するためのインク連通口H1201と、第2の記録素子基板H1101にシアン、マゼンタ、イエローのインクを供給するためのインク連通口H1201が形成されており、記録素子基板のインク供給口H1102が第1のプレートH1200のインク連通口H1201にそれぞれ対応し、かつ、第1の記録素子基板H1100と第2の記録素子基板H1101はそれぞれ第1のプレートH1200に対して位置精度良く接着固定されている。接着に用いられる第1の接着剤は、低粘度で硬化温度が低く、短時間で硬化し、硬化後比較的高い硬度を有し、かつ、耐インク性のあるものが望ましい。その第1の接着剤は、例えば、エポキシ樹脂を主成分とした熱硬化接着剤であり、この第1の接着層H1202の厚みは50μm以下が望ましい。
【0057】
電気配線テープH1300は、第1の記録素子基板H1100と第2の記録素子基板H1101に対してインクを吐出するための電気信号を印加するものである。この電気配線テープH1300は、それぞれの記録素子基板H1100,H1101を組み込むための複数のデバイスホール(開口部)H1,H2と、それぞれの記録素子基板H1100,H1101の電極H1104に対応する電極端子H1302と、この電気配線テープH1300の端部に位置しプリンタ本体装置からの電気信号を受け取るための外部信号入力端子H1301を有する電気コンタクト基板H2200と電気的接続をおこなうための電極端子部を有しており、この電極端子部と電極リードH1302とは連続した銅箔の配線パターンでつながっている。この電気配線テープH1300は、例えば、配線が2層構造をなし表層がレジストフィルムによって覆われているフレキシブル配線基板からなる。この場合、外部信号入力端子H1301の裏面側(外面側)には、補強板が接着され、平面性向上が図られている。補強板としては、例えば0.5〜2mmのガラスエポキシ、アルミニウム等の耐熱性を有する材料が使用される。
【0058】
電気配線テープH1300と第1の記録素子基板H1100と第2の記録素子基板H1101は、それぞれ電気的に接続されており、接続方法は、例えば、記録素子基板の電極H1104上のバンプH1105と、電気配線テープH1300の電極リードH1302とが、熱超音波圧着法により電気接合される。
【0059】
第2のプレートH1400は、例えば、厚さ0.5〜1mmの一枚の板状部材であり、例えばアルミナ(Al23)等のセラミックや、Al、SUSなどの金属材料で形成されている。ただし、第2のプレートH1400の材料は、これらに限定されるものではなく、記録素子基板H1100,H1101および第1のプレートH1200と同等の線膨張率を有し、かつ、それらの熱伝導率と同等以上の熱伝導率を有する材料であってもよい。
【0060】
そして、第2のプレートH1400は、第1のプレートH1200に接着固定された第1の記録素子基板H1100と第2の記録素子基板H1101の外形寸法よりも大きな開口部をそれぞれ有する形状である。また、第1の記録素子基板H1100および第2の記録素子基板H1101と電気配線テープH1300を平面的に電気接続できるように、第1のプレートH1200に第2の接着層H1203により接着されており、電気配線テープH1300の裏面が第3の接着層H1306により接着固定される。
【0061】
第1の記録素子基板H1100および第2の記録素子基板H1101と電気配線テープH1300の電気接続部分は、第1の封止剤(不図示)および第2の封止剤により封止され、電気接続部分をインクによる腐食や外的衝撃から保護している。第1の封止剤は、主に電気配線テープの電極端子H1302と記録素子基板のバンプH1105との接続部の裏面側と記録素子基板の外周部分を封止し、第2の封止剤は、前記接続部の表側を封止している。
【0062】
さらに電気配線テープH1300の端部にプリンタ本体装置からの電気信号を受け取るための外部信号入力端子H1301を有する電気コンタクト基板H2200が、異方性導電フィルム等を用いて熱圧着され電気的に接続されている。
【0063】
そして電気配線テープH1300は、第2のプレートH1400に接着されると同時に、第1のプレートH1200および第2のプレートH1400の一側面に沿って折り曲げられ、第1のプレートH1200の側面に第3の接着層H1306により接着される。第2の接着剤は、粘度が低く、接触面に薄い第2の接着層H1203を形成し得るとともに、耐インク性を有するものが好ましい。また、第3の接着層H1306は、例えば、エポキシ樹脂を主成分とした厚さ100μm以下の熱硬化接着剤層である。
【0064】
(1−2)インク供給ユニット
インク供給部材H1500は、例えば、樹脂成形により形成されている。該樹脂材料には、形状的剛性を向上させるためにガラスフィラーを5〜40%混入した樹脂材料を使用することが望ましい。
【0065】
図30、図33に示すように、インクタンクH1900を着脱自在に保持するインク供給部材H1500は、インクタンクH1900から記録素子ユニットH1002にインクを導くためのインク供給ユニットH1003の一構成部品であり、流路形成部材H1600が超音波溶着されて、インクタンクH1900から第1のプレートH1200に至るインク流路H1501が形成されている。また、インクタンクH1900と係合するジョイント部H1520には、外部からのゴミの進入を防ぐためのフィルターH1700が溶着により接合されており、さらに、ジョイント部H1520からのインクの蒸発を防止するために、シールゴムH1800が装着されている。
【0066】
またインク供給部材H1500は、着脱自在のインクタンクH1900を保持する機能も有しており、インクタンクH1900の第2の爪H1910を係合する第1の穴H1503を有している。
【0067】
また、記録ヘッドカートリッジH1000をインクジェット記録装置本体のキャリッジに装着位置に案内するための装着ガイドH1601、記録ヘッドカートリッジをヘッドセットレバーによりキャリッジに装着固定するための係合部、キャリッジの所定の装着位置に位置決めするためのX方向(キャリッジスキャン方向)の突き当て部H1509、Y方向(記録メディア搬送方向)の突き当て部H1510、Z方向(インク吐出方向)の突き当て部H1511を備えている。また、記録素子ユニットH1002の電気コンタクト基板H2200を位置決め固定する端子固定部H1512を有し、端子固定部H1512およびその周囲には複数のリブが設けられ、端子固定部H1512を有する面の剛性を高めている。
【0068】
(1−3)記録ヘッドユニットとインク供給ユニットの結合
先述の図29に示した通り、記録ヘッドH1001は、記録素子ユニットH1002をインク供給ユニットH1003に結合しさらにタンクホルダーH2000と結合することにより完成する。結合は以下のように行われる。
【0069】
記録素子ユニットH1002のインク連通口(第1のプレートH1200のインク連通口H1201)とインク供給ユニットH1003のインク連通口(流路形成部材H1600のインク連通口H1602)とを、インクがリークしないように連通させるため、ジョイントシール部材H2300を介してそれぞれの部材を圧着するようビスH2400で固定する。この際同時に、記録素子ユニットH1002はインク供給ユニットのX方向、Y方向、Z方向の基準位置に対して正確に位置決めされ固定される。
【0070】
そして記録素子ユニットH1002の電気コンタクト基板H2200はインク供給部材H1500の一側面に、端子位置決めピンH1515(2ヶ所)と端子位置決め穴H1309(2ヶ所)により位置決めされ、固定される。固定方法としては、例えば、インク供給部材H1500に設けられた端子位置決めピンH1515をかしめることにより固定されるが、その他の固定手段を用いて固定しても良い。その完成図を図34に示している。
【0071】
さらにインク供給部材H1500のタンクホルダーとの結合穴および結合部をタンクホルダーH2000に嵌合させ結合することにより、記録ヘッドH1001が完成する。すなわち、インク供給部材H1500、流路形成部材H1600、フィルターH1700、シールゴムH1800から構成されるタンクホルダー部と、記録素子基板H1100,H1101、第1のプレートH1200、配線基板H1300、第2のプレートH1400から構成される記録素子部とを接着等で結合することにより、記録ヘッドが構成されている。その完成図を図35に示している。
【0072】
(2)記録ヘッドカートリッジの説明
先述の図28(a),(b)は、記録ヘッドカートリッジH1000を構成する記録ヘッドH1001とインクタンクH1901、H1902、H1903、H1904の装着を説明する図であり、インクタンクH1901、H1902、H1903、H1904の内部には、対応する色のインクが収納されている。また、図33に示すようにそれぞれのインクタンクには、インクタンク内のインクを記録ヘッドH1001に供給するためのインク連通口H1907が形成されている。例えばインクタンク1901Hが記録ヘッドH1001に装着されると、インクタンクH1901のインク連通口H1907が記録ヘッドH1001のジョイント部H1520に設けられたフィルターH1700と圧接され、インクタンクH1901内のブラックインクがインク連通口H1907から記録ヘッドH1001のインク流路H1501を介して第1のプレートH1200を通り第1の記録素子基板H1100に供給される。
【0073】
そして、電気熱変換素子H1103と吐出口H1107のある発泡室にインクが供給され、電気熱変換素子H1103に与えられる熱エネルギーによって被記録媒体である記録用紙に向けて吐出される。
【0074】
(インクジェット記録装置の構成)
次に、以上のような記録ヘッドカートリッジが搭載される代表的なインクジェット記録装置装置の構成について、図36に示す模式的平面図を参照して説明する。
【0075】
この記録装置には、記録ヘッドカートリッジH1001がキャリッジ102に位置決めして交換可能に搭載されており、キャリッジ102には、記録ヘッドカートリッジH1001上の外部信号入力端子H1301を介して各吐出口列の電気熱変換素子H1103に駆動信号などを伝達するための電気接続部が設けられている。
【0076】
キャリッジ102は、主走査方向に延在して装置本体に設置されたガイドシャフト103に沿って往復移動可能に案内支持されている。そして、キャリッジ102は主走査モータ104によりモータプーリ105、従動プーリ106およびタイミングベルト107などの駆動機構を介して駆動されるとともにその位置および移動が制御される。キャリッジ102には、ホームポジションセンサ130が設けられており、キャリッジ102上のホームポジションセンサ130が、所定の位置に配置されている遮蔽板136の位置を通過した際に、それを検知し、キャリッジ102がホームポジション位置にあることを検出可能である。
【0077】
用紙やプラスチック薄板などの被記録媒体108は、給紙モータ135によってギアを介してピックアップローラ131が回転駆動されることによりオートシートフィーダ(以後ASF)132から一枚ずつ分離される。さらに搬送ローラ109が、LFモータ134によってギアを介して回転駆動されることによって、被記録媒体108が記録ヘッドカートリッジH1001の吐出口面と対向する位置(プリント部)を通して搬送される。その際、給紙されたかどうかの判定と、給紙時の頭出しの確定は、ペーパーエンドセンサ133上を被記録媒体108が通過した時点で行われる。さらに、ペーパーエンドセンサ133は、記録媒体108の後端が実際どこに有るかを検出し、実際の後端から現在の記録位置を最終的に割り出すためにも使用される。
【0078】
なお、被記録媒体108は、記録部において平坦な記録面を形成するように、その裏面をプラテン(不図示)により支持されている。キャリッジ102に搭載された記録ヘッドカートリッジH1001は、その吐出口面がキャリッジ102から下方へ突出するように2組の搬送ローラ対(図36では、このうちの1つの搬送ローラ109のみを示している)の間で被記録媒体108と平行になるように保持されている。ヘッドカートリッジH1001は、各吐出口列の吐出口H1107の並び方向が、キャリッジの主走査方向に対して交差する方向になるようにキャリッジ102に搭載されている。
【0079】
この記録装置による記録動作は、被記録媒体108を、ヘッドカートリッジH1001の吐出口面に対向する所定の位置に搬送した後、キャリッジ102を主走査方向に移動させつつ、ヘッドカートリッジH1001からインクを吐出させることによって、被記録媒体108の所定の位置にインクを着弾させて行われる。
【0080】
(インクジェット記録ヘッドの駆動方法)
本実施形態のインクジェット記録ヘッドの駆動方法では、駆動電源の容量が小さくで済み、また記録画像にむらが生じないように、複数の電気熱変換素子H1103が一斉に駆動されないように駆動を行っている。すなわち、各電気熱変換素子H1103に複数の駆動ブロックを割り当て、同じ駆動ブロックに割り当てられた各ノズルを同時に、そして各駆動ブロックの駆動タイミングをずらして駆動を行っている。
【0081】
このことについて、図37を参照して説明する。図37(a)は、インクジェット記録ヘッドの、吐出口H1107と電気熱変換素子H1103とを備えるノズルの並び(ノズル列500)、図37(b)は各ノズルの駆動信号300、図37(c)は各ノズルから吐出された飛翔インク滴100を模式的に示している。この図では、説明を簡単にするために、ノズル列500として、32個のノズルが一列に並んだものを示しており、図37の上から順に1〜32のノズル番号を付けている。
【0082】
図37に示す例では、各ノズルを、上から順に8個単位で第1セクション〜第4セクションまでの4つのセクションに分けている。そして、各セクション内の8個の各ノズルに、8つの駆動ブロックの1つを割り当てている。この例では、各セクションのノズルに、上から順に1〜8の駆動ブロックを、すなわち表1に示すように各駆動ブロックを割り当てている。
【0083】
【表1】
Figure 0004546006
【0084】
そして、図37(b)に示すように、第1駆動ブロックから第8駆動ブロックまでが、各駆動ブロックの周期的なパルス状の駆動信号300によって昇順に順次駆動され、図37(c)に示すようにインク滴100が吐出される。
【0085】
また、各ノズルは基本的に同様に作られているが、その配置位置や形成工差などの違いのために、インクの吐出方向や吐出量などがそれぞれ微妙に異なる。このような各ノズルの特性の違いは、記録画像に悪影響を与え、スジやムラなどを生じる要因となる危惧がある。そこで、本実施系形態では、このような悪影響を低減するため、同一のラスタに2つ以上の異なるノズルからのインク滴を着弾させるマルチパス記録方法を行っている。すなわち、一回の主走査で、ノズル列500の幅に相当する幅の記録を行った後、被記録媒体108を一定幅分だけ搬送する副走査を行ってから次ぎの主走査を行うが、この際、被記録媒体108をノズル列500の全幅分送るのではなく、数ノズル幅分だけ搬送する。このようにすることによって、次ぎの主走査では、前の主走査時にあるラスタに記録を行ったノズルから数ノズルずれたノズルによってそのラスタに記録を行う。
【0086】
例えば、図37に示すように32個のノズルを有するインクジェット記録ヘッドで記録を行う場合、1回の副走査で8ノズル幅分だけ被記録媒体108を送り、1つのラスタに対して4回の主走査で記録を行う。
【0087】
ところで、インク吐出においては、インク吐出に起因する圧力の変動が共通液室を介して隣接するノズル内のインクを振動させることがある。このようなインクの振動が生じた場合、吐出口H1107に形成されるメニスカスが凸になっている状態でインクを吐出させると吐出量が比較的多くなり、メニスカスが凹になっている状態で吐出させると吐出量が比較的少なくなるために、記録画像に濃淡ムラが生じる危惧がある。このような吐出量の変化は、同時駆動されるノズルの数が多いほど顕著になる。
【0088】
そして、前述のように周期的にインク吐出を行った場合、メニスカス面には、各駆動ブロックの駆動周期と同様の周期で生じる、各ノズル間で共通の振動が現れる。図38は、このことを示す実験結果であり、全てのノズルからインク滴を一定間隔で周期的に吐出させた時の駆動信号と、その時のメニスカス面の振動とを示している。このように、振動周期が各駆動ブロックの駆動周期とほぼ同様のメニスカス面の振動が生じると、各駆動ブロック毎のインク吐出量に差が生じる。すなわち、図38に示す例では、前半に駆動されるブロック(BLK)1,2,3では、インク吐出時にメニスカス面が凸になっているために吐出量が比較的多く、後半に駆動されるBLK6,7では、メニスカス面が凹になっているために吐出量が比較的少ない。
【0089】
そこで、前述のように、1回の副走査で、駆動ブロックと同じ数分だけ、すなわち8ノズル分だけ被記録媒体108を送ってマルチパス記録を行った場合には、あるラスタに記録を行うノズルが全て同じ駆動ブロックに属することになるので、前述のような駆動ブロック毎の吐出量の差が重ね合わされて記録画像に大きく影響し、濃度ムラを生じてしまう危惧がある。そこで、本発明の実施形態の液体吐出方法では、副走査でのノズル送りを、駆動ブロック数とは異なるノズル数分だけ行うようにしている。
【0090】
このような方法として、まず6ノズル分の送りと10ノズル分の送りとを交互に行う方法について説明する。この際の、各ラスタへの、4回の各主走査での記録に用いられる駆動ブロックの番号とその平均値を、8ノズル分づつ均等に送りを行った場合の平均値と共に表2に示す。また、これら平均値の、各ラスタ毎の違いを表すグラフを図39に示す。
【0091】
【表2】
Figure 0004546006
【0092】
表2および図39に示すように、10ノズル−6ノズル交互送りを行った場合には、各ラスタに用いられる駆動ブロックの番号平均の変動幅が、均等送りを行った場合に比べて小さくなる。すなわち、均等送りでの変動は1から8までであるのに対し、10ノズル−6ノズル交互送りでの変動は2から7までであり、変動幅が約25%小さくなっている。前述のように各駆動ブロックからのインク吐出量には差があるので、駆動ブロック番号がインク吐出量をほぼ表していると評価することができ、駆動ブロック番号平均が、4回の主走査でのインク吐出の吐出量の平均量をほぼ示していると考えてやることができる。実際には、駆動ノズル番号がインク吐出量に比例するわけではないので、4回の主走査での吐出量平均の各ラスタ間での変動は図39に示すものよりも小さなものとなるが、駆動ブロック番号平均の、各ラスタ間の変動幅が小さくなるということは、4回の主走査での吐出量平均が、各ラスタ間で均等化されるということを示している。すなわち、本実施形態の液体吐出方法によれば、記録画像の濃度ムラを小さくできる。
【0093】
また、記録方法の他の例として、4ノズル−12ノズル交互送りを行った場合について、各ラスタの駆動ブロック番号平均値を表3に、そのグラフを図40に示す。
【0094】
【表3】
Figure 0004546006
【0095】
4ノズル−12ノズル交互送りを行った場合の駆動ブロック番号平均値の各ラスタ間の変動は3から6であり、変動幅は、10ノズル−6ノズル交互送りを行った場合よりさらに約25%、均等送りを行った場合より約50%小さくなっている。このように、4ノズル−12ノズル交互送りを行った場合のほうが、10ノズル−6ノズル交互送りを行った場合よりもさらに濃度ムラを小さくできる。
【0096】
このように、駆動ブロックの全数を、1つのラスタに記録を行う主走査の回数で割った数に対して、駆動ブロックの半数を引いたノズル数の送りと、足したノズル数の送りとを交互に行うようにすることで、濃度ムラを小さくする作用をより効果的に得られる。このことは、1つのラスタに2回の主走査で記録を行う場合でも同様である。
【0097】
次に、ノズル数が320ノズルのインクジェット記録ヘッドについて、このノズルを16ブロック×20セクションに割り当てて駆動を行い、1つのラスタに対して4回の主走査で記録を行う場合について説明する。
【0098】
セクションについては、ノズルをその並び列の端から16個ずつに分割して1つのセクションとし、この各セクション内の各ノズルに対して、駆動ブロックを、端から昇順に、表4に示すように割り当てる。
【0099】
【表4】
Figure 0004546006
【0100】
なお、表4には、320ノズルのうちのノズル番号32までを記載しており、残りはこの32ノズルと同様の関係が繰り返されるため、表記を省略している。
【0101】
そして、76ノズル−84ノズル交互送りを行った場合について、各ラスタの駆動ブロック番号平均値を表5に、そのグラフを図41に示す。
【0102】
【表5】
Figure 0004546006
【0103】
また、72ノズル−88ノズル交互送りを行った場合について、各ラスタの駆動ブロック番号平均値を表6に、そのグラフを図42に示す。
【0104】
【表6】
Figure 0004546006
【0105】
表5,6および図41,42から、均等ノズル送りを行う場合に比べて、駆動ブロック数とは異なるノズル数分の送りを行った場合のほうが、駆動ブロック番号平均値の変動幅を小さくでき、すなわち記録画像の濃度むらを小さくできることがわかる。また、前述したように、駆動ブロックの全数を、1つのラスタに記録を行う主走査の回数で割った数に対して、駆動ブロックの半数を引いたノズル数の送りと、足したノズル数の送りとを交互に行うようにした、すなわち72ノズル−88ノズル交互送りを行った場合に、駆動ブロック番号平均値の変動幅をより小さくでき、すなわち記録画像の濃度むらをより小さくできることがわかる。
【0106】
次に、各セクション内の各ノズルに対して、駆動ブロックを、表7に示すように、分散させて割り当てた場合について説明する。
【0107】
【表7】
Figure 0004546006
【0108】
なお、表7には、320ノズルのうちのノズル番号64までを記載しており、残りはこの32ノズルと同様の関係が繰り返されるため、表記を省略している。
【0109】
この場合に76ノズル−84ノズル交互送りを行った場合について、各ラスタの駆動ブロック番号平均値を表8に、そのグラフを図43に示す。
【0110】
【表8】
Figure 0004546006
【0111】
また、各ノズルに対して駆動ブロックを表9に示すように割りあて、72ノズル−88ノズル交互送りを行った場合について、各ラスタの駆動ブロック番号平均値を表10に、そのグラフを図44に示す。
【0112】
【表9】
Figure 0004546006
【0113】
【表10】
Figure 0004546006
【0114】
表8,9および図43,44から、均等ノズル送りを行う場合に比べて、駆動ブロック数とは異なるノズル数分の送りを行った場合のほうが、駆動ブロック番号平均値の変動幅を小さくでき、すなわち記録画像の濃度むらを小さくできることがわかる。また、前述したように、駆動ブロックの全数を、1つのラスタに記録を行う主走査の回数で割った数に対して、駆動ブロックの半数を引いたノズル数の送りと、足したノズル数の送りとを交互に行うようにした、すなわち72ノズルー88ノズル交互送りを行った場合には、76ノズルー84ノズル交互送りを行った場合に比べて、駆動ブロック番号平均値の変動の周期がより高周波数化される。このことは、記録画像の濃度ムラの周期をより高周波数化できることにほぼ対応しており、これにより濃度ムラが目立たないようにすることができる。
【0115】
(インクジェット記録ヘッドのノズルの構成)
次に、インクジェット記録ヘッドのノズルの構成について説明する。最初に、インク流路の流抵抗の差を無くすことによって、形成画像の濃度ムラの発生を低減できるインクジェット記録ヘッドの構成例を示す参考例を示す。
【0116】
(第1の参考例)
図1に、本参考例のインクジェット記録ヘッドのノズル部分の模式図を示す。
図1(a)は、吐出口形成部材を外した状態で示した平面図、図1(b)は、吐出口形成部材の上方から見た平面図、図1(c)は図1(a)のP−P’線に沿って切断した断面図を示している。
【0117】
このインクジェット記録ヘッドは、インク供給口56に接続された共通液室54を有している。共通液室54を挟んでその両側には、インクを発泡させて吐出させる電気熱変換素子51と、その周りに形成された、電気熱変換素子51の中心を中心とする円形の圧力室55とが複数並んで設けられている。共通液室54と各圧力室55との間には、それぞれインク流路53が設けられている。電気熱変換素子51に対向する位置には、吐出口52が開口している。
【0118】
このインクジェット記録ヘッドでは、隣り合う吐出口52および電気熱変換素子51の、印字方向(キャリッジ移動方向)の位置は、各駆動ブロック間の駆動タイミングのずれ時間の間にキャリッジ102が移動する距離に相当するオフセット分だけずれている。図1には、表記を簡潔にするため、各ノズルに4つの駆動ブロックを割り当てたインクジェット記録ヘッドを示しており、吐出口52の、印字方向の配置は、吐出口の並び方向に4ノズルおきに周期的に変化している。
【0119】
そして、駆動ブロックに、駆動されるタイミングが早いものから昇順に番号を付けた場合、図1に示す例では、右上の吐出口52およびそれから左側に4の整数倍のノズル数離れた吐出口52に駆動ブロック1が割り当てられ、その左隣の吐出口52に駆動ブロック2、さらにその左隣の吐出口52に駆動ブロック3、さらにその左隣の吐出口52に駆動ブロック4が割り当てられている。このような構成にすることで、駆動ブロック1〜4を昇順に順次駆動し、インクを吐出させて、これらの吐出口52から吐出されたインクを、被記録媒体上に一列に並んで着弾させることができる。
【0120】
このように、吐出口52および電気熱変換素子51の、印字方向の位置が隣接するノズル間で異なっているため、隣接するノズルのインク流路53の長さが異なっている。本参考例のインクジェット記録ヘッドは、このようにインク流路53の長さが異なるノズル間で流抵抗が同じになるように構成されていることを特徴とする。以下にこのことを、図1(a)に示すインク流路Aと、インク流路Bを例にとって説明する。
【0121】
インク流路Bの長さLBは、インク流路Aの長さLAに比べて長い。そこで、本実施形態では、インク流路Bの幅WBをインク流路Aの幅WAよりも広くすることで、インク流路Aの流抵抗Raとインク流路Bの流抵抗Rbとが等しくなるように構成している。
【0122】
この際、インク流路Aの流抵抗Raとインク流路Bの流抵抗Rbとは以下の(式1)〜(式4)で求められる
【0123】
【数9】
Figure 0004546006
【0124】
【数10】
Figure 0004546006
【0125】
【数11】
Figure 0004546006
【0126】
【数12】
Figure 0004546006
【0127】
但し、ここで
x : 共通液室からの距離
Sa(x):距離xの位置のインク流路Aの断面積[μm2
Sb(x):距離xの位置のインク流路Bの断面積[μm2
Da(x):距離xの位置のインク流路Aの断面係数
Db(x):距離xの位置のインク流路Bの断面係数
a1(x):距離xの位置のインク流路Aの高さ
b1(x):距離xの位置のインク流路Aの幅
a2(x):距離xの位置のインク流路Bの高さ
b2(x):距離xの位置のインク流路Bの幅
η :インク粘度[N・Pa・s]
である。
【0128】
本実施形態のインク流路A,Bは、共通液室54から電気熱変換素子51の端まで実質的に直方体形状であるので、直方体近似を行う。すなわち、式1〜4において、Da(x)およびDb(x)は、 xに関して定数とみなすことができ、これをそれぞれDa、Dbとする。また、Sa(x)=WA・H、Sb(x)=WB・Hとなるので、
【0129】
【数13】
Figure 0004546006
【0130】
【数14】
Figure 0004546006
【0131】
となる。そこで、
【0132】
【数15】
Figure 0004546006
【0133】
とすることにより、Ra=Rbとすることができる。
【0134】
したがって、インク流路Aの幅WAとインク流路Bの幅WBを式7の関係を満たすように設定することで、インク流路Aとインク流路Bの流抵抗を実質的に等しくすることができ、2つのインク流路53のリフィル特性を実質的に等しくすることができる。
【0135】
このようにして、全てのインク流路53の流抵抗が等しくなるようにすることで、全てのノズルのリフィル特性を揃えることができる。そうすることで、所定の周波数で繰り返しインクを吐出させた際、各インク流路53間でリフィル特性に差があるために、インク吐出量に差が生じ記録画像に濃度ムラが生じることを抑止できる。したがって、本発明によれば、濃度ムラのない高品位な画像記録を行うことができる。
【0136】
なお、このように濃度ムラのない高品位な画像記録を行えるようにするためには、複数のインク流路53の流抵抗の差は、10%以内にすることが望ましい。
【0137】
また、本参考例ではインク流路53の幅を変化させることにより、長さの異なる複数のインク流路53の流抵抗を揃えているが、流抵抗を変化させるにはインク流路53の断面積を変化させればよいので、インク流路53の高さを変化させて、または幅と高さの両方を変化させて、またはインク流路53中にリブを設けるなどして流抵抗を揃えるようにしてもよい。
【0138】
また、本参考例では、流抵抗の算出を、連続的な積分を行う式1〜4を用いて算出する方法を示したが、インク流路35を、断面形状が変化しない複数の区画に分けて、それぞれの区画の流抵抗を加算して算出してもよい。この場合、流抵抗Rの算出式は、式8,9のようになる。
【0139】
【数16】
Figure 0004546006
【0140】
【数17】
Figure 0004546006
【0141】
但し、ここで
k :インク流路の分割数
xn :k分割したときの共通液室からn番目の分割位置までの距離
S(xn):共通液室から距離xnの位置のインク流路断面積[μm2]
D(xn):距離xnの位置のインク流路断面係数
a(xn):距離xnの位置のインク流路高さ
b(xn):距離xnの位置のインク流路幅
η :インク粘度[N・Pa・s]
また、式1〜4と式8,9とを組み合わせて、すなわちインク流路53の一部の流抵抗は式1〜4に基づいて算出し、他の部分の流抵抗は式8,9に基づいて算出し、両者を加算して流抵抗を求めてもよい。
【0142】
(第2の参考例)
図2に、本参考例のインクジェット記録ヘッドのノズル部分の模式図を示す。
図2(a)は、吐出口形成部材を外した状態で示した平面図、図2(b)は、吐出口形成部材の上方から見た平面図、図2(c)は図2(a)のP−P’線に沿って切断した断面図を示している。同図において第1の参考例と同様の部分については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0143】
本参考例のインクジェット記録ヘッドでは、インク流路63が、共通液室54側に、共通液室54に向うにしたがって幅が広くなっている部分を有している。
本実施形態においても、隣接するインク流路63の長さが異なっており、式1〜4または式8,9に示すように複数のインク流路63の流抵抗を算出して、複数のインク流路63の流抵抗が同じになるようにインク流路63の幅、高さを調整している。
【0144】
この構成では、インク流路54の幅が広くなっている部分での流抵抗が、幅が狭くなっている部分の流抵抗より小さい。このため、幅が広くなっている部分の流抵抗はインク流路54全体の流抵抗にあまり影響せず、インク流路54全体の流抵抗は、幅が狭くなっている部分の流抵抗によってほぼ決まる。
【0145】
ところで、このインクジェット記録ヘッドでは、インク供給口56の上方に位置している部分が共通液室54になっている。インク供給口56は、異方性エッチングなどによって形成されるが、その製造のばらつきのために、インク供給口56の共通液室54に面する開口の幅には多少のばらつきが生じ、すなわち共通液室54の幅に多少のばらつきが生じる場合がある。このように共通液室54の幅にばらつきが生じると、インク流路63の長さが変化する。
【0146】
このようにインク流路63の長さが変化すると、インク流路63が、幅が広くなっている部分を有していない場合、インク流路63の流抵抗が大きく変化し、インクのリフィル特性が変化してしまう。このため、所定の周波数で繰り返しインクを吐出させる際、インク吐出時のリフィル状態が、設計した所望の状態とは異なってしまい、インク吐出量が増減するなどして記録品位に悪影響を与えてしまう危惧がある。
【0147】
また、長さが短いインク流路Aと長いインク流路Bとで長さが同じだけ変化したとしても、インク流路Bの長さの変化率よりインク流路Bの長さの変化率のほうが大きいことになり、インク流路Bの流抵抗の変化率よりも、インク流路Aの流抵抗の変化率のほうが大きくなる。このため、インク流路Aとインク流路Bとの流抵抗が同じになるように設計したとしても、製造上のばらつきのために、インク流路Aとインク流路Bとの流抵抗に差が生じてしまう危惧ある。このように流抵抗にノズル間で差が生じると、ノズル間でインク吐出量に差が生じる問題が再び生じてしまう。
【0148】
これに対して、本参考例においては、このインク流路63の長さの変化は、インク流路63の幅が広くなっている部分で生じる。このため、インク流路63の長さの変化によって、幅が広くなっている部分の流抵抗が多少変化するが、この変化は、インク流路63全体の流抵抗にはほとんど影響せず、インクのリフィル特性はほとんど変化しない。また、複数のインク流路63の流抵抗の差もほとんど生じることはない。
【0149】
このように、本参考例によれば、インク流路63の共通液室54側に、幅が広くなっている部分を設けることにより、製造のばらつきにより共通液室54の幅がずれ、インク流路63の長さが多少ずれても、各ノズルのインクのリフィル特性がほとんど変化しないようにでき、各ノズル間でのインクのリフィル性のばらつきが生じないようにできる。このため、高品位の画像形成が可能である。
【0150】
(第3の参考例)
図3に、本参考例のインクジェット記録ヘッドのノズル部分の模式図を示す。図3(a)は、吐出口形成部材を外した状態で示した平面図、図3(b)は、吐出口形成部材の上方から見た平面図、図3(c)は図3(a)のP−P’線に沿って切断した断面図を示している。同図において第1、第2の参考例と同様の部分については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0151】
本参考例のインクジェット記録ヘッドでは、第2の参考例と同様に、インク流路73が、共通液室54側の部分に、共通液室54に向うにしたがって幅が広くなっている部分を有している。本参考例では、インク流路73の幅が狭くなっている部分の幅は、隣り合うノズル間で同じ、すなわちWA=WBになっており、この部分の長さL’A,L’Bを変化させることにより、長さの異なるインク流路Aとインク流路Bの流抵抗が同じになるようにしている。
【0152】
ところで、インクジェット記録ヘッドでは、製造のばらつきによりインク流路73の形成幅が設計した所望の幅から多少ずれてしまうことがある。そこで、インク流路Aの幅WAとインク流路Bの幅WBとが異なる場合には、インク流路73の形成幅のずれがインク流路Aとインク流路Bとで同様に生じたとしても、形成幅のずれによるインク流路73の幅の変化率に関しては、幅の広いインク流路73での変化率より、幅の狭いインク流路73での変化率のほうが大きいことになる。したがって、インク流路の形成幅のずれによるインク流抵抗およびリフィル性への影響は、幅の狭いインク流路73のほうが生じやすい。
【0153】
一方、本参考例では、インク流路73の流抵抗に対する影響が支配的な狭い部分の幅が、全てのノズル間で同じになっている。このため、製造のばらつきによるインク流路73の形成幅のずれの影響は全てのノズル間で同様に生じ、したがって形成幅のずれのために、ノズル間で流抵抗に差が生じることを抑止できる。
【0154】
次に、電気熱変換素子のキャビテーションによる損傷を回避する構成を有するインクジェット記録ヘッドについて説明する。
【0155】
(第参考例
図4に、本参考例のインクジェット記録ヘッドのノズル部分の模式図を示す。図4(a)は、吐出口形成部材を外した状態で示した平面図、図4(b)は図4(a)のB−B’線に沿って切断した断面図を示している。同図において第1〜3の参考例と同様の部分については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0156】
このインクジェット記録ヘッドでは、吐出口52の中心の鉛直線上に中心が位置するように配置されている電気熱変換素子51と圧力室55とに対し、インク流路83が、圧力室へのインク供給方向においてその中心線が電気熱変換素子51と圧力室55との中心線からオフセットした位置に位置するように配置されている。
【0157】
参考例は、インク流路83をこのように配置することにより、消泡時のインクのリフィルの流れに、回転する流れ成分を生じさせ、キャビテーションの影響、特に電気熱変換素子51への影響を低減しようとするものである。このことについて、消泡工程を示す図5を参照して説明する。図5は、ノズルの模式的平面図であり、消泡工程の各推移状態を図5(a)〜図5(f)の順に示している。
【0158】
図5(a)は、気泡87が最大の大きさになる最大発泡時を示しており、この時点から消泡が開始される。すると、図5(b)に示すように、消泡とともに共通液室54からのインクの流れが生じ、気泡87はインク流路83に張り出した部分が引っ込むように小さくなっていく。
【0159】
インクの流れが圧力室55に達すると、圧力室55の中心方向は急に空間が広くなっているため流速が遅くなる。その結果、インクの流れは圧力室55中心方向に曲がる。これにより、気泡87は、図5(c)、図5(d)に示すように、インクの流れ方向に、インクに押されるようにして小さくなっていく。
【0160】
そして、さらに気泡87が小さくなっていく過程で、気泡87は、インクの流れによって圧力室55の、図5の左側に偏った位置に押し流される。この際、流れてくるインクは、共通液室54から圧力室55に向う方向、すなわち図5の上方に向う方向の運動量を有しているので、圧力室55の下方を回り込む流れは小さい。このため、気泡87は下方に長く延びたようになり、消泡の直前には、気泡87は、図5(e)に示すように上下に長く延びた三日月状の形状になる。そして、図5(f)に示す最終的な消泡工程は、このように上下に長い領域で生じる。
【0161】
以上のように、本参考例のインクジェット記録ヘッドでは、消泡時に圧力室55内のインク流れに回転成分が発生するため流体的に不安定で消泡位置がゆらぎやすい。また、消泡が上下に長い領域に分散されて生じるため、キャビテーションの衝撃も連続した領域内に対して広範囲に分散される。その結果、キャビテーションの衝撃は一点に集中せず電気熱変換素子51の受ける衝撃力を小さくできる。
【0162】
図5の消泡位置は電気熱変換素子51に電力を供給するAl電極(不図示)が電気熱変換素子51に接続している位置である。この部分はAl電極から電気熱変換素子51へ向って段差状になっており構造的には弱い部分ではあるが、耐久試験ではこの近傍にキャビテーションが一点に集中した跡は形成されず上下に長く浅く亀裂が形成されたのみで耐久性が著しく延びたことが確認された。
【0163】
参考例のインクジェット記録ヘッドにおいても、隣接するノズル間の駆動タイミングをずらしているため、隣接するノズルの吐出口52の、印字方向の位置はずれており、図6に示すように、インク流路83の長さにノズル間で差が生じている。そして、このように長さが異なるインク流路83間の流抵抗を揃えるために、本参考例においても、インク流路83の幅や高さを変化させている。
【0164】
この際、インク流路83が圧力室55の中心線からオフセットして配置されているため、インク流路83の幅が異なると(例えば図6のWAとWB)、電気熱変換素子51とインク流路83との位置関係に差が生じてくる。このため、本参考例では、電気熱変換阻止51の中心位置までの流抵抗を算出して、この流抵抗を全てのノズル間で揃えるようにすることが好ましい。
【0165】
電気熱変換素子51の中心位置までの流抵抗は、図7に示すように、インクの主要な流れの中心位置に沿った中心軸88に沿って、式1〜4に示す積分または式8.9に示す加算を行うことで求めることができる。この際、各点でのインク流路の高さ、幅、面積などは、中心軸に垂直な断面(例えば図7の断面Aや断面B)についてのものを用いる。
【0166】
このようにして各ノズルの流抵抗を揃えることにより、各ノズルのインクのリフィル特性を揃え、所定の周波数でインクを吐出させる際に、各ノズル間でインクのリフィル状態が実質的に同様になるようにでき、濃度ムラのない、良好な画像形成を行うようにできる。
【0167】
また、このようにインク流路83を、圧力室55および電気熱変換素子51の中心線に対してオフセットさせて配置する場合、図8(a)のノズル全体図および図8(b)の拡大図に示すように、1つのノズル列に含まれるノズルの全てについて、電気熱変換素子51の中心線に対するインク流路83のオフセット方向を揃えることが好ましい。
【0168】
このことについて、ノズルの平面図を示す図9を参照して説明する。電気熱変換素子51が形成された記録素子基板上にインク流路83および圧力室55を構成する部材をパターニングする際、パターニング用のマスクがノズル列方向にずれ、インク流路83および圧力室55が、図9に実線で示す本来の位置からずれ、破線で示す位置に形成される場合がある。
【0169】
このような場合、図9(a)に示すように、電気熱変換素子51に対するインク流路83のオフセット方向が異なるノズルがあると、電気熱変換素子51とインク流路83との位置関係が、両ノズル間で異なる方向にずれてしまう。すなわち、図9(a)の左側のノズルでは、インク流路83が電気熱変換素子51に近づく方向にずれるのに対して、右側のノズルでは、インク流路83が電気熱変換素子51から離れる方向にずれる。また、このことは、電気熱変換素子51に対向する位置に配置される吐出口52とインク流路83との位置関係についても同様である。このため、インク吐出特性に両ノズル間で差が生じてしまい、記録画像が乱れる危惧がある。また、両ノズル間で流抵抗を揃えるようにインク流路の幅や高さを調整したとしても、両ノズル間の流抵抗に差が生じてしまう危惧がある。
【0170】
これに対して、図9(b)に示すように、電気熱変換素子51に対するインク流路83のオフセット方向が同じである場合には、インク流路83および圧力室55の形成位置がずれると、電気熱変換素子51および吐出口52とインク流路83との位置関係のずれが両ノズルで同様に生じるので、両ノズルのインク吐出特性は同じ様に変化する。そこで、例えばインクの吐出方向や吐出量が多少変化したとしても、複数のノズルで同様の変化が生じるので、記録画像に与える影響は小さい。
【0171】
このように、電気熱変換素子51に対するインク流路83のオフセット方向を、1つのノズル列内の各ノズルで同様にすることで、製造のばらつきによる記録画像への影響を低減できる。また同様に、ノズル列が共通液室54を挟んで2列ある場合、2列のノズル列での電気熱変換素子51に対するインク流路83のオフセット方向は、ノズル列に平行な中心軸89(図8(b)参照)に対して線対称な方向にすることが好ましい。すなわち、このようにすることで、製造のばらつきによる電気熱変換素子51とインク流路83との位置関係のずれが両ノズル列間で同様に生じるようにでき、記録画像に与える影響を低減できる。
【0172】
(第の実施形態)
図10は、本発明のインクジェット記録ヘッドの第の実施形態におけるノズル部分を示す模式図である。同図(a)は、吐出口形成部材を透視した状態で示した平面図、同図(b)は同図(a)のB−B’線に沿って切断した断面図を示している。
【0173】
本実施形態のインクジェット記録ヘッドは、インク流路83が、その中心線が電気熱変換素子51の中心線からオフセットした位置に位置するように配置されているとともに、吐出口52が、その中心が電気熱変換素子51の中心からインク流路側である共通液室54に向かう方向にオフセット量Xだけオフセットした位置に位置するように配置されている。本実施形態のインクジェット記録ヘッドのその他の構成は、第参考例に示したインクジェット記録ヘッドと同様であるので、詳しい説明は省略する。
【0174】
図11は、図10に示したインクジェット記録ヘッドのノズルからインク液滴が吐出された後の気泡の消泡工程を同図(a)から(e)の順に示している。図11(a)〜(e)に示す状態は、図5(a)〜(e)に示す状態にそれぞれ対応している。
【0175】
ここで、本実施形態における消泡工程について説明する前に、比較のために、本実施形態におけるように、吐出口52の中心が電気熱変換素子51の中心からオフセットして配置されておらず、吐出口52と電気熱変換素子51の中心が実質的に同じ位置に配置されている場合の消泡工程について説明する。
【0176】
図45に示した従来例のインクジェット記録ヘッドでは、インク流路163を形成するインク流路壁163aから最も離れているインク流路中心線近傍のインクがインク流路壁163aからの流体摩擦抵抗を受け難く動きやすい。そのため、消泡過程が始まると極く短時間でインク流路中心線近傍のインクが圧力室155内へ向かって流れ、気泡はその中心が圧力室155の奥側へ凹んだ形となる。
その結果、吐出口152と気泡との間に残されたインクが消泡時に電気熱変換素子151の方向へ引き寄せられる際の流れは、圧力室155の奥側方向への速度ベクトルを持ち、電気熱変換素子151に垂直に衝突することなく圧力室155の奥側へ流れ込んでいくことになる。
【0177】
これに対して、インク流路の中心線が電気熱変換素子の中心線からオフセットした位置に位置するように配置されているインクジェット記録ヘッドでは、下記のような現象が生じる場合がある。
【0178】
図12は、図11(a)〜(c)に示した消泡工程に対応する図であり、さらにそれぞれの状態のときのノズル断面図を示している。
【0179】
図12(a)は最大発泡時の状態を示している。電気熱変換素子151の上に発生した気泡が吐出口152の方向に大きく膨らみ、インク液滴が吐出口152から飛び出している。
【0180】
図12(b)は気泡が収縮を開始した状態を示している。このとき、吐出口152と気泡との間のインクが収縮する気泡の負圧によって引っ張られ、そのインクの中央部が電気熱変換素子151の方向に向かって凸形状になり始めている。
このときのインクの速度ベクトルの方向を同図(ii)中に矢印で示している。
【0181】
図12(c)は、さらに気泡の収縮が進み、気泡が電気熱変換素子と同程度の大きさにまで小さくなったときの状態を示している。吐出口152と気泡との間のインクは、電気熱変換素子151へ向かう方向の速度ベクトルを持ったまま電気熱変換素子151のほぼ中心に衝突する。
【0182】
このように、インク流路の中心線が電気熱変換素子の中心線からオフセットした位置に位置するように配置されている形状のノズルにおいては、消泡時に圧力室155内のインクの流れに回転成分が発生するため、気泡の収縮の初期の過程ではインク流路中心線近傍のインクが気泡の中心へ一方向に流れ込むことはなく、気泡は大きくは凹まない。その結果、気泡がまだ電気熱変換素子151を覆っている大きさのときに、気泡よりも吐出口152側にあるインクは電気熱変換素子151に、それに向かってほぼ垂直に落下し、電気熱変換素子151のほぼ中心に衝突する。この衝突による衝撃は、キャビテーションによる衝撃ほど大きなののではないが、このような衝突がインク吐出動作が行われる毎に繰り返されると、ついにはその衝突位置が損傷して電気熱変換素子151が破壊される場合がある。この現象によって電気熱変換素子151が破壊されるまでの寿命は、気泡が消滅した際のキャビテーションによって電気熱変換素子151が破壊される際の寿命よりは長いが、この現象は電気熱変換素子151の耐久性能をさらに延ばそうとするときには障害となる。
【0183】
またさらに、下記のような現象も生じる。まず、図35に示した従来例のインクジェット記録ヘッドでは、上述したように、インク流路163の中心線と電気熱変換素子151の中心線とが一致しているため、共通液室154からインク流路163を通って圧力室155へ向かうインクの流れが電気熱変換素子151の中心線に対して線対称に生じる。そのため、電気熱変換素子151によってインクを加熱することにより発生した気泡は、電気熱変換素子151上でその中心線に対称に安定して消泡する。
【0184】
その結果、消泡時のキャビテーションによる衝撃力によって、インク流路163の中心線上のインクのメニスカス面から微小液滴が発生する。この微小液滴は吐出口152のほぼ中央に多く発生するので、吐出口152の縁で遮られることなく安定して吐出口152から吐出する。
【0185】
これに対して、インク流路の中心線が電気熱変換素子の中心線からオフセットした位置に位置するように配置されているインクジェット記録ヘッドでは、下記のような現象が生じる場合がある。
【0186】
図13は、インク流路の中心線が電気熱変換素子の中心線からオフセットした位置に位置するように配置されているインクジェット記録ヘッドのノズルからインク液滴が吐出されていく様子を同図(I)から(III)の順に示している。なお、同図(a)は、吐出口形成部材を透視した状態で示した平面図、同図(b)は同図(a)のC−C’線に沿って切断した断面図を示している。
【0187】
図13(I)は、電気熱変換素子151上に発生した気泡が消泡した直後の状態を示している。主滴およびそれに続くサテライト滴が、吐出口中心軸に沿って吐出口152から吐出されている。上述のように、インク流路183の中心線が電気熱変換素子151と圧力室155との中心線からオフセットしており、ノズル形状がインク流路183の中心線に対して非対称になっているため、消泡は同図(a)中の点線で示した消泡領域で行われる。そして、消泡時の衝撃によって、微小液滴がその消泡領域の上方に発生する。発生した微小液滴は発生位置が吐出口152の中心から偏っているため、図13(II)に示すように吐出口152の縁付近を飛翔することになる。
【0188】
このような非対称ノズルは消泡位置がゆらぎ易いため、微小液滴の吐出方向は不安定である。そのため、図13(III)に示すように吐出口152を通り抜けて吐出する場合もあるが、多くの場合は吐出口152の縁に衝突して吐出口近傍の外面に付着し、インク溜まりを形成する。
【0189】
吐出口近傍の外面にインク溜まりが形成され、そのインク溜まりがある程度以上の大きさになると、吐出口から吐出するインク液滴と干渉してインク液滴の吐出状態に影響を与える。
【0190】
図14は、吐出口近傍の外面にインク溜まりが形成されている状態のインクジェット記録ヘッドのノズルからインク液滴が吐出されていく様子を、同図(I)から(III)の順に示している。なお、同図(a)は、吐出口形成部材を透視した状態で示した平面図、同図(b)は同図(a)のC−C’線に沿って切断した断面図を示している。
【0191】
図14(I)は、微小液滴が吐出口152近傍の外面に付着してインク溜まりが形成された状態を示している。
【0192】
図14(II)は吐出口152近傍の外面にインク溜まりが形成された状態でインク液滴が吐出されようとしている状態を示している。吐出口152の近傍にインク溜まりが形成されていると、インク液滴が吐出口152から吐出される際にインク溜まりに接触し、表面張力によってインク溜まりの方に引き寄せられる。
すると、インク液滴は吐出口中心軸からずれた方向に吐出されることとなる。
【0193】
図14(III)は、その後インク液滴の形成が終了し、吐出口中心軸からずれた方向に主滴およびサテライト滴が飛翔していく様子を示している。このように吐出口152の近傍にインク溜まりが形成された状態で吐出動作が行われると、インク液滴の吐出方向がずれるだけでなく、吐出速度の低下や吐出量の低下等も同時に発生し易い。その結果、記録媒体上におけるインク液滴の着弾位置が本来の位置からずれてしまい、記録画像に「スジ」や「ムラ」等が発生し、記録画像の品位が劣化するという問題が発生する場合がある。
【0194】
次に、図11に戻って本実施形態のインクジェット記録ヘッドにおける消泡工程について説明する。
【0195】
図11(a)は最大発泡時状態を示している。気泡が吐出方向に大きく膨らみ、インク液滴が吐出口52から吐出し始めている。
【0196】
図11(b)は、その後に気泡が収縮し始めた状態を示している。吐出口52と気泡との間に残ったインクは、気泡消泡時の負圧によって電気熱変換素子51の方へ引っ張られ、電気熱変換素子51の方向に向かって凸形状になっている。
このとき、吐出口52と気泡との間のインク(吐出口側インク)の速度ベクトルは、同図中の矢印で示すように、電気熱変換素子51に対してほぼ垂直な方向に向いている。
【0197】
図11(c)は、その後、気泡の収縮がさらに進んだ状態を示している。本実施形態の構成では、吐出口52が電気熱変換素子51よりも相対的に共通液室54側に配置されているので、吐出口側インクは、気泡が収縮する過程で、電気熱変換素子51の中心線に沿って圧力室55の奥側方向に向く力を受ける。そのため、気泡が電気熱変換素子51と同程度の大きさになったときの速度ベクトルは、電気熱変換素子51に対して垂直ではなく、図11(c)中の矢印で示すように圧力室55の奥側方向に傾いている。その結果、消泡がさらに進んで図11(d)に示す状態、さらには図11(e)に示す状態になっても、消泡工程は、吐出口側インクが電気熱変換素子51の一部の個所に対して垂直に集中して衝突することなく終了する。
【0198】
また、本実施形態のごとく吐出口52を共通液室54側にオフセットさせた構成では消泡時に吐出口側インクの運動方向を圧力室55奥側に傾かせない系においても下記の状態を作り出せる。すなわち、吐出口側インクの重心が共通液室54側に近くなるので消泡時に吐出口側インクが電気熱変換素子51に衝突する位置が共通液室54側に近づく。そのため、共通液室54側から流入する液室側インクが上記の吐出口側インクの衝突位置に到達するタイミングが早まる。その結果、消泡時に吐出口側インクが電気熱変換素子51に到達する前に共通液室54側から流入する液室側インクが吐出口側インクの衝突する位置を覆ってしまい、吐出口側インクが電気熱変換素子51に衝撃を与えることが無くなり電気熱変換素子51が損傷を受けることがなくなる。
【0199】
この場合の消泡工程を図15(a)〜(e)、図16(a)〜(e)に示す。
【0200】
図15は図5と同様に発泡〜消泡までの気泡の平面図を示してある。図16(a)〜(e)までの各図は、この場合の、図11の(a)〜(e)にそれぞれ対応する図である。図15の構成ではインク流路183の狭部の長さLと幅Wが図10の構成とは異なっている。具体的には図10の構成よりもWを狭く、Lを長くしてある。こうすることによって消泡時に共通液室54から流入してくる液室側インクの流速を速くすることができ、消泡時の気泡を図に示すようにより三日月状にできる。この状態では図16に示すような状態を作り出せる。図16(a)〜(e)は図15に示す消泡過程のK−K’断面図で、消泡過程での液室側インクと吐出口側インクの関係がわかりやすいように示してある。図16(a)、(b)は図11(a)、(b)とほぼ同じ状態であるが、図16(c)〜(e)までの過程での状態は図11とは異なる。図16(c)は吐出口側インクが電気熱変換素子51に到達する前に、液室側インクが、吐出口側インクが電気熱変換素子51に衝突する位置に到達している様子を示している。図16(d)は電気熱変換素子51の上に流入した液室側インクに吐出口側インクが接触し合体した状態を示している。図20(e)は液室側インクと吐出口側インクが合体した後の更に消泡過程が進んだ状態を示している。このようにして上記構成においては吐出口側インクが電気熱変換素子51に直接衝突することを回避できる。
【0201】
また、更に本実施形態のごとく消泡時に吐出口側インクと液室側インクの相互作用を強くした構成では、そもそも吐出口側インクの運動が不安定になり吐出口側インクが電気熱変換素子51に衝突する状態の構成でも衝突位置がランダムになるので、衝突が特定箇所で毎回起こる場合におけるように損傷が発生するのを防止できる。
【0202】
このように、本実施形態によれば、電気熱変換素子51は消泡過程で強い衝撃力を受けることがなくなり、損傷をほとんど受けなくなる。その結果、電気熱変換素子51の耐久性能を著しく向上させることが可能になる。
【0203】
また、図17は、図10に示したインクジェット記録ヘッドのノズルからインク液滴が吐出されていく様子を同図(I)から(III)の順に示している。なお、同図(a)は、吐出口形成部材を透視した状態で示した平面図、同図(b)は同図(a)のC−C’線に沿って切断した断面図を示している。
【0204】
図15(I)は、電気熱変換素子51上に発生した気泡が消泡した直後の状態を示している。主滴およびそれに続くサテライト滴が、吐出口52中心軸に沿って吐出口52から吐出されている。
【0205】
上述のように、吐出口52の中心が電気熱変換素子51の中心から共通液室54方向にオフセットしているので、吐出口52は微小液滴のエネルギー発生源である消泡領域(同図(a)参照)に対して相対的にその方向にオフセットした位置に配置されている。したがって、図13を参照して説明した場合と比較して、吐出口52の中心と消泡位置との相対的な距離が長くなっている。そのため、消泡時には、メニスカス面はキャビテーションの衝撃によって吐出口テーパ部(ノズル)の壁面の近傍で同図(b)の矢印Aで示すように少し盛り上がるだけであり、微小液滴がほとんど発生しなくなる。また、たとえ微小液滴が発生した場合でも、吐出口52の壁面にはテーパが付けられており、吐出方向前方に向かうにつれて狭くなっているので、微小液滴は吐出口テーパ部の壁面に衝突し、吐出口52の外に吐出されるに至らない。
【0206】
このように、本実施形態の記録ヘッドでは、微小液滴が吐出口52の縁に衝突することがなく、吐出口52近傍の外面にインク溜まりが形成されない。そのため、図14を参照して説明した場合のように、インク液滴が吐出口52から吐出される際にインク溜まりに接触し、表面張力によってインク溜まりの方に引き寄せられることがない。したがって、吐出口52から吐出されたインク液滴は、図17(II)および(III)に示すように吐出口中心軸に沿って真っ直ぐに安定して飛翔するので、インク液滴の着弾位置が安定し、記録画像の品位を高く保つことが可能となる。共通液室54方向への吐出口52のオフセット量に対する印字品位の変化を下記の表11に示す。同表において「△」は、ヌレよれが目立つこと、「○’」は、ヌレよれが少ないこと、「○」は、品位かなり良であること、「◎」は、非常に品位が良好であることを示している。
【0207】
【表11】
Figure 0004546006
【0208】
表11から、吐出口52の位置をオフセットしない場合はヌレよれが目立つが、吐出口52のオフセット量をふやすに従って、ヌレよれが減りオフセット量3μm〜7μmでは非常に高品位な印字が達成されることが分かる。
【0209】
電気熱変換素子51中心に対する吐出口52中心のオフセット量X(図1参照)が1μmよりも小さいと、吐出口52と気泡との間のインクに対して圧力室55の奥側に傾いた速度ベクトルを十分に持たせることができない。また、液室側インクが到達する前に吐出口側インクが電気熱変換素子51に衝突してしまいやすくなる。この場合、吐出口52側のインクの衝突位置も固定的になり電気熱変換素子51は損傷を受けやすくなり、その結果、耐久寿命は短くなってしまう。
また、吐出口52の中心と消泡位置との相対的な距離が短くなるので、消泡時に発生する微小液滴が吐出口テーパ部の壁面に衝突せずに吐出口52の外に吐出されてしまう可能性が高くなる。すると吐出口52の外側の縁にインク溜まりができやすくなり、液滴の吐出方向がインク溜まりによる影響を受けやすくなる。一方、オフセット量Xが10μmよりも大きいと、発泡時の吐出圧力の作用方向が吐出口52中心軸から大きく傾いてしまい、インク液滴の吐出方向がずれてしまう場合がある。そのため、このオフセット量Xは、1μm≦X≦10μmの範囲であることが好ましい。
【0210】
また、更に好ましくはオフセット量Xは3μmから7μmが良い。
【0211】
また、特に本構成に対して、前述した第3の参考例に示した構成、すなわち長さの異なるインク流路の流抵抗を支配的に決めている個所の断面積を同一にし、同部分のインク流れ方向の長さを調節することによって流抵抗を略同一にした構成を用いると、気泡消泡時に圧力室に流入するインクの流速を長さの異なるインク流路間で実質的に同一にできる。そのため、長さが異なるインク流路においても消泡時の吐出口側インクと液室側インクの関係を一定に維持でき、電気熱変換素子の耐久寿命のインク流路間のバラつきを無くし、耐久寿命を安定的に高く維持することが可能となる。
【0212】
(第の実施形態)
図18は、本発明のインクジェット記録ヘッドの第の実施形態におけるノズル部分を示す模式図である。同図(a)は、吐出口形成部材を透視した状態で示した平面図、同図(b)は同図(a)のC−C’線に沿って切断した断面図を示している。
【0213】
本実施形態のインクジェット記録ヘッドは、インク流路83が、その中心線が電気熱変換素子51の中心線からオフセットした位置に位置するように配置されているとともに、吐出口52が、その中心が電気熱変換素子51の中心からインク流路側であるインク流路83の中心線の方向にオフセット量Yだけオフセットした位置に位置するように配置されている。本実施形態のインクジェット記録ヘッドのその他の構成は、第4の参考例および第1の実施形態のインクジェット記録ヘッドと同様であるので、詳しい説明は省略する。
【0214】
図19は、図18に示したインクジェット記録ヘッドのノズルからインク液滴が吐出された後の気泡の消泡工程を同図(a)から(c)の順に示している。図19(a)〜(c)に示す状態は、図11(b)〜(d)に示す状態にそれぞれ対応している。
【0215】
図19(a)は、最大発泡状態の後に気泡が収縮し始めた状態を示している。
【0216】
この状態では、吐出口52と気泡との間のインクは気泡の消泡時の負圧によって引っ張られ、電気熱変換素子51の方向に凸形状になっている。このときのインクの速度ベクトルは、図中の矢印で示すように、電気熱変換素子51に対してほぼ垂直な方向に向いている。
【0217】
図19(b)は、その後、気泡の収縮がさらに進んだ状態を示している。
【0218】
本実施形態の構成では、吐出口52が電気熱変換素子51よりも相対的にインク流路83の中心線側に配置されているので、吐出口52と気泡との間の吐出口側インクは、気泡が収縮する過程で、インク流路83中心線から電気熱変換素子51の中心線へ向いた力を受ける。そのため、気泡が電気熱変換素子51と同程度の大きさになったときの速度ベクトルは、電気熱変換素子51に対して垂直ではなく、図19(b)中の矢印で示すように圧力室55の奥側方向に傾いている。その結果、消泡がさらに進んで図19(c)の状態になっても、消泡過程は、吐出口側インクが電気熱変換素子51の一部の個所に対して垂直に集中して衝突することなく終了する。
【0219】
また、本実施形態のごとく吐出口52をインク流路83中心線側にオフセットさせた構成では消泡時に吐出口側インクの運動方向を圧力室55奥側に傾かせない系においても下記の状態を作り出せる。すなわち、吐出口側インクの重心がインク流路83中心線側に近くなるので消泡時に吐出口側インクが電気熱変換素子51に衝突する位置が共通液室54側に近づく。そのため、共通液室54側から流入する液室側インクが上記の吐出口側インクの衝突位置に到達するタイミングが早まる。その結果、消泡時に吐出口側インクが電気熱変換素子51に到達する前に共通液室54側から流入する液室側インクが吐出口側インクの衝突する位置を覆ってしまい、吐出口側インクが電気熱変換素子51に衝撃を与えることが無くなり電気熱変換素子51が損傷を受けることがなくなる。
【0220】
この場合の消泡過程における吐出口側インクと液室側インクの相互作用の状態は、ほぼ図15(a)〜(e)、図16(a)〜(e)と同様となる。
【0221】
また、更に本実施形態のごとく消泡時に吐出口側インクと液室側インクの相互作用を強くした構成では、そもそも吐出口側インクの運動が不安定になり吐出口側インクが電気熱変換素子51に衝突する状態の構成でも衝突位置がランダムになるので、衝突が特定箇所で毎回起こる場合におけるように損傷が発生するのを防止できる。このように、本実施形態によれば、電気熱変換素子51は消泡過程で強い衝撃力を受けることがなくなり、損傷をほとんど受けなくなる。その結果、電気熱変換素子51の耐久性能を著しく向上させることが可能になる。
【0222】
また、図20は、図18に示したインクジェット記録ヘッドのノズルからインク液滴が吐出されていく様子を同図(I)から(III)の順に示している。なお、同図(a)は、吐出口形成部材を透視した状態で示した平面図、同図(b)は同図(a)のC−C’線に沿って切断した断面図を示している。
【0223】
図20(I)は、電気熱変換素子51上に発生した気泡が消泡した直後の状態を示している。主滴およびそれに続くサテライト滴が、吐出口52中心軸に沿って吐出口52から吐出されている。
【0224】
上述のように、吐出口52の中心が電気熱変換素子51の中心からインク流路83中心側にオフセットしているので、吐出口52は前述の実施例1よりも微小液滴のエネルギー発生源である消泡領域(同図(a)参照)に対して相対的に離れる方向にオフセットした位置に配置されている。したがって、図13を参照して説明した場合と比較して、吐出口52の中心と消泡位置との相対的な距離が更に長くなっている。そのため、消泡時には、メニスカス面はキャビテーションの衝撃をほとんど受けなくなり、微小液滴がほとんど発生しなくなる。また、たとえ微小液滴が発生した場合でも、吐出口52の壁面にはテーパが付けられており、吐出方向前方に向かうにつれて狭くなっているので、微小液滴は吐出口テーパ部の壁面に衝突し、吐出口52の外に吐出されるに至らない。
【0225】
このように、本実施形態のインクジェット記録ヘッドでは、微小液滴が吐出口52の縁に衝突することがなく、吐出口52近傍の外面にインク溜まりが形成されない。そのため、図14を参照して説明した場合のように、インク液滴が吐出口52から吐出される際にインク溜まりに接触し、表面張力によってインク溜まりの方に引き寄せられることがない。したがって、吐出口52から吐出されたインク液滴は、図20(II)および(III)に示すように吐出口52中心軸に沿って真っ直ぐに安定して飛翔するので、インク液滴の着弾位置が安定し、記録画像の品位を高く保つことが可能となる。 電気熱変換素子51中心に対する吐出口52中心のオフセット量Y(図3参照)が1μmよりも小さいと、吐出口52と気泡との間のインクに対して圧力室55の奥側に傾いた速度ベクトルを十分に持たせることができない。その一方で、オフセット量Yが10μmよりも大きいと、発泡時の吐出圧力の作用方向が吐出口52中心軸から大きく傾いてしまい、インク液滴の吐出方向に悪影響を与えてしまう。そのため、このオフセット量Yは、1μm≦Y≦10μmの範囲であることが好ましい。
【0226】
(第の実施形態)
図21は、本発明のインクジェット記録ヘッドの第の実施形態におけるノズル部分を示す模式図である。同図(a)は、吐出口形成部材を透視した状態で示した平面図、同図(b)は同図(a)のB−B’線に沿って切断した断面図、同図(c)は同図(a)のC−C’線に沿って切断した断面図を示している。
【0227】
本実施形態のインクジェット記録ヘッドは、インク流路83が、その中心線が電気熱変換素子51の中心線からオフセットした位置に位置するように配置されていることに加え、吐出口52が、その中心が電気熱変換素子51の中心から共通液室54に向かう方向にオフセット量Xだけオフセットした位置に位置するように配置されているとともに、その中心が電気熱変換素子51の中心からインク流路83の中心線の方向にオフセット量Yだけオフセットした位置に位置するように配置されている。本実施形態のインクジェット記録ヘッドのその他の構成は、第4の参考例および第1、2の実施形態に示したインクジェット記録ヘッドと同様であるので、詳しい説明は省略する。
【0228】
本実施形態の構成によっても、上述の第および第の実施形態と同様に、吐出口52と気泡との間のインクが、気泡の消泡時の収縮に伴って電気熱変換素子51の方向に移動する際に、電気熱変換素子51に対して垂直ではなく圧力室55の奥側に傾いた速度ベクトルを持つ。そのため、消泡過程は、インクが電気熱変換素子51の一部の個所に垂直に集中して衝突することなく終了する。
【0229】
また、本実施形態のごとく吐出口52を共通液室54側にオフセットさせた構成では消泡時に吐出口側インクの運動方向を圧力室奥側に傾かせない系においても下記の状態を作り出せる。すなわち、吐出口側インクの重心が共通液室54側に近くなるので消泡時に吐出口側インクが電気熱変換素子51に衝突する位置が共通液室54側に近づく。そのため、共通液室54側から流入する液室側インクが上記の吐出口側インクの衝突位置に到達するタイミングが早まる。その結果、消泡時に吐出口側インクが電気熱変換素子51に到達する前に共通液室側から流入する液室側インクが吐出口側インクの衝突する位置を覆ってしまい、吐出口側インクが電気熱変換素子51に衝撃を与えることが無くなり電気熱変換素子51が損傷を受けることがなくなる。
【0230】
また、更に本実施形態のごとく消泡時に吐出口側インクと液室側インクの相互作用を強くした構成では、そもそも吐出口側インクの運動が不安定になり吐出口側インクが電気熱変換素子に衝突する状態の構成でも衝突位置がランダムになるので、衝突が特定箇所で毎回起こる場合におけるように損傷が発生するのを防止できる。
【0231】
したがって、電気熱変換素子51は消泡過程で強い衝撃力を受けることがなくなり、損傷をほとんど受けなくなる。その結果、電気熱変換素子51の耐久性能を著しく向上させることが可能になる。
【0232】
また、吐出口52の中心が電気熱変換素子51の中心から共通液室54方向にオフセットしているので、吐出口52は微小液滴のエネルギー発生源である消泡領域(同図(a)参照)に対して相対的に離れる方向にオフセットした位置に配置されている。したがって、図13を参照して説明した場合と比較して、吐出口52の中心と消泡位置との相対的な距離が長くなっている。そのため、消泡時には、メニスカス面はキャビテーションの衝撃によって吐出口テーパ部(ノズル)の壁面の近傍で少し盛り上がるだけであり、微小液滴がほとんど発生しなくなる。また、たとえ微小液滴が発生した場合でも、吐出口テーパ部は吐出方向前方に向かうにつれて狭くなっているので、微小液滴は吐出口テーパ部の壁面に衝突し、吐出口52の外に吐出されるに至らない。
【0233】
このように、本実施形態のインクジェット記録ヘッドでは、微小液滴が吐出口52の縁に衝突することがなく、吐出口52近傍の外面にインク溜まりが形成されない。そのため、図14を参照して説明した場合のように、インク液滴が吐出口52から吐出される際にインク溜まりに接触し、表面張力によってインク溜まりの方に引き寄せられることがない。したがって、吐出口52から吐出されたインク液滴は吐出口中心軸に沿って真っ直ぐに安定して飛翔するので、インク液滴の着弾位置が安定し、記録画像の品位を高く保つことが可能となる。
【0234】
なお、本実施形態のように吐出口52を2つの方向にオフセットさせた場合には、電気熱変換素子51の中心からの吐出口52の中心のオフセット量をZとすると、オフセット量ZはZ=√(X2+Y2)と表すことができる。したがって、本実施形態におけるオフセット量Zを図10に示す第の実施形態や図18に示す第の実施形態におけるオフセット量と同程度にする場合には、図21に示す各オフセット量X,Yは、第の実施形態または第の実施形態におけるオフセット量X,Yよりも小さくなる。したがって、本実施形態は、第および第の実施形態に比べて、電気熱変換素子51の中心からの吐出口52の中心のオフセット量X,Yを相対的に小さく保ちながらも、第および第の実施形態の場合と同じように、吐出口52と気泡とのインクの速度ベクトルを圧力室55の奥側へ向かわせることができるという利点がある。
【0235】
(第の実施形態)
図22は、本発明のインクジェット記録ヘッドの第の実施形態におけるノズル部分を示す模式図である。同図(a)は、吐出口形成部材を透視した状態で示した平面図、同図(b)は同図(a)のB−B’線に沿って切断した断面図を示している。
【0236】
本実施形態のインクジェット記録ヘッドは、インク流路83が、その中心線が電気熱変換素子51の中心線からオフセットした位置に位置するように配置されている。さらに、吐出口52が、その中心が圧力室55の中心から共通液室54に向かう方向にオフセットした位置に位置するように配置されているとともに、電気熱変換素子51が、その中心が圧力室55の中心から、圧力室55の奥側に向かう方向にオフセットした位置に位置するように配置されている。本実施形態での吐出口52と電気熱変換素子51との相対的な位置関係は、図10示したものと同じである。本実施形態の特徴は、電気熱変換素子51の中心を圧力室55の中心に対してオフセット配置したことにある。その他の構成は、第の実施形態のインクジェット記録ヘッドと同様であるので、詳しい説明は省略する。
【0237】
図10、図18および図21に示した構成において、圧力室55の中心に対する吐出口52の中心の位置のオフセット量が過度に大きくなると、圧力室55内の流抵抗バランスが崩れてインク液滴の吐出方向が変化し易くなるという問題や、圧力室55内にデッドペースが増えるために圧力室55内に泡溜まりが発生し易くなるという問題が発生する。ここで「泡溜まり」とは、インク中に溶存する気泡が集合することによって形成された気泡が滞留することをいう。
【0238】
これに対し、本実施形態の構成によれば、圧力室55中心からの吐出口52中心のオフセット量を小さく保ちつつ、吐出口52中心と電気熱変換素子51中心とのオフセット量を大きく設定することができる。そのため、インク液滴の吐出方向の適正な維持と圧力室55内の泡溜まりの抑制を達成しつつ、電気熱変換素子51が消泡過程で強い衝撃力を受けて損傷を受けることをほぼ無くすことができる。
【0239】
また、吐出口52の中心が電気熱変換素子51の中心から共通液室54方向にオフセットしているので、吐出口52は微小液滴のエネルギー発生源である消泡領域に対して相対的に離れる方向にオフセットした位置に配置されている。したがって、図13を参照して説明した場合と比較して、吐出口52の中心と消泡位置との相対的な距離が長くなっている。そのため、消泡時には、メニスカス面はキャビテーションの衝撃によって吐出口テーパ部(ノズル)の壁面の近傍で少し盛り上がるだけであり、微小液滴がほとんど発生しなくなる。また、たとえ微小液滴が発生した場合でも、吐出口テーパ部は吐出方向前方に向かうにつれて狭くなっているので、微小液滴は吐出口テーパ部の壁面に衝突し、吐出口52の外に吐出されるに至らない。
【0240】
このように、本実施形態の記録ヘッドでは、微小液滴が吐出口52の縁に衝突することがなく、吐出口52近傍の外面にインク溜まりが形成されない。そのため、図14を参照して説明した場合のように、インク液滴が吐出口52から吐出される際にインク溜まりに接触し、表面張力によってインク溜まりの方に引き寄せられることがない。したがって、吐出口52から吐出されたインク液滴は、図17(II)および(III)に示すように吐出口52中心軸に沿って真っ直ぐに安定して飛翔するので、インク液滴の着弾位置が安定し、記録画像の品位を高く保つことが可能となる。
【0241】
その結果、記録画像を高品位に保ちながら電気熱変換素子51の耐久性能を著しく向上させることが可能になる。
【0242】
なお、本実施形態が適用できるのは上記のような構成に限られない。例えば、図18や図21に示した構成においても、電気熱変換素子51の中心を圧力室55の中心から、電気熱変換素子51の中心から吐出口52の中心に向かう方向とは反対の方向にオフセットさせることにより、上記と同様の効果を得ることができる。
【0243】
(第の実施形態)
図23は、本発明のインクジェット記録ヘッドの第の実施形態におけるノズル部分を示す模式図である。同図(a)は、吐出口形成部材を透視した状態で示した平面図、同図(b)は同図(a)のB−B’線に沿って切断した断面図を示している。
【0244】
本実施形態のインクジェット記録ヘッドは、インク流路83が、その中心線が電気熱変換素子51の中心線からオフセットした位置に位置するように配置されている。さらに、吐出口52が、その中心が圧力室55の中心から共通液室54に向かう方向にオフセット量Xだけオフセットした位置に位置するように配置されている。吐出口52は、圧力室55内に向かって断面積が増えるように、側壁にテーパが付けられている。図23(a)には、吐出口52の圧力室55に連絡する部分の縁、すなわち吐出口テーパ下端60を破線で示している。図から明らかなように、本実施形態のインクジェット記録ヘッドでは、圧力室55の、吐出口52が連絡している面に平行な面内で見て、電気熱変換素子51が占める領域は、吐出口テーパ下端60に囲まれる領域内に含まれている。本実施形態のインクジェット記録ヘッドのその他の構成は、第4の参考例および第1〜の実施形態に示したインクジェット記録ヘッドと同様であるので、詳しい説明は省略する。
【0245】
次に、図24,25を参照して、このインクジェット記録ヘッドにおける消泡工程での、インク、気泡の状態について説明する。図24,25は消泡工程を同図(a)から(f)の順に示しており、図24は、吐出口形成部材を透視した状態で示した平面図、図25はインク流路83方向に沿って切断した断面図である。図24の(a)から(f)と、図25の(a)から(f)はそれぞれ対応するタイミングでの状態を示している。
【0246】
図24(a)、図25(a)は、最大発泡状態を示している。この状態から、消泡が開始され、図24(b)、図25(b)に示すように、共通液室54側からインクが流入し始めるとともに、吐出口52と気泡との間の吐出口側インクが電気熱変換素子51方向に移動し始める。
【0247】
本実施形態においても、吐出口52は、その中心が圧力室55の中心より共通液室54側にオフセットして配置されているため、図25(c)に示すように、吐出口側インクが電気熱変換素子51に到達する前に、液室側インクが吐出口側インクの衝突する位置を覆う。このため、吐出口側インクは電気熱変換素子51には衝突せず、共通液室側インクに合流する。この際、吐出口側インクは、吐出口55の中央部では動きやすく、吐出口55のテーパ壁面に接しているインクは動きにくい。このため、合流する吐出口側インクによって、インクには、吐出口52が連絡している面に平行な面内で見て、吐出口52の中心から吐出口テーパ下端60に向かう流れを生じさせようとする力が作用する。このため、図24,25の(d),(e)に示すように、気泡はインクに押しやられ、吐出口52が連絡している面に平行な面内で見て、吐出口52の中心から吐出口テーパ下端60より、圧力室55の奥側に偏在するようになり、この位置で消泡が生じ、図24(f)、図25(f)に示す状態になる。
【0248】
本実施形態では、吐出口52が連絡している面に平行な面内で見て、吐出口テーパ下端60は、電気熱変換素子51より外側に位置しており、したがって、消泡は、より確実に電気熱変換素子51の外側で生じる。このため、本実施形態によれば、電気熱変換素子51にインク消泡時の衝撃が加わることをより確実に防止でき、電気熱変換素子51の耐久寿命をさらに延ばすことができる。
【0249】
(第の実施形態)
図26は、本発明のインクジェット記録ヘッドの第の実施形態におけるノズル部分を示す模式図である。同図(a)は、吐出口形成部材を透視した状態で示した平面図、同図(b)は同図(a)のB−B’線に沿って切断した断面図を示している。
【0250】
本実施形態のインクジェット記録ヘッドは、吐出口52が、吐出口52の中心の、電気熱変換素子51の中心からのオフセット方向に長い長方形の形状を有している点が、第の実施形態の構成と異なる。その他の構成は、第の実施形態と同様であり詳しい説明は省略する。
【0251】
本実施形態のインクジェット記録ヘッドでは、吐出口52が上述のような形状であるため、その壁面のテーパ角θをあまり大きくしなくても、吐出口テーパ下端60が、電気熱変換素子51を囲むように構成することができる。このため、吐出口52を形成するのが容易になる。また、圧力室55の大きさを小さくすることができ、したがって、吐出口52の配列ピッチを小さくして、解像度を上げることができる。
【0252】
なお、本実施形態において、吐出口52のオフセット方向の反対方向に見た、吐出口52の、インク吐出面側の開口の縁の端部から電気熱変換素子1の端部までの距離αは、吐出口52のオフセット方向に直交する方向に見た、インク吐出口52の、インク吐出面側の開口の縁の端部から電気熱変換素子1の端部までの距離βと等しくすることが望ましい。このようにすることによって、吐出口55のテーパ角θを最小限の大きさで済ませることができる。
【0253】
また、本実施形態では、吐出口52の形状を長方形とした例を示したが、長円形状や楕円形状としてもよい。
【0254】
(第の実施形態)
図27は、本発明のインクジェット記録ヘッドの第の実施形態におけるノズル部分を示す模式図である。同図(a)は、吐出口形成部材を透視した状態で示した平面図、同図(b)は同図(a)のB−B’線に沿って切断した断面図、同図(c)は同図(a)のC−C’線に沿って切断した断面図を示している。
【0255】
本実施形態のインクジェット記録ヘッドは、吐出口52が、電気熱変換素子51の配線62が接続された方向に長い長方形状を有している点が、第の実施形態の構成と異なる。その他の構成は、第の実施形態と同様であり詳しい説明は省略する。
【0256】
この構成によれば、電気熱変換素子51と配線62の接続部が、吐出口テーパ下端60に囲まれる領域内に位置するようにすることができる。したがって、接続部にインク消泡時の衝撃がより加わりにくくなるようにすることができる。接続部は、通常、配線62と電気熱変換素子51の間に物理的に段差があるため衝撃に比較的弱い。本実施形態によれば、この衝撃に弱い部分に衝撃が加わらないようにできるので、この部分の耐久性を向上させ、インクジェット記録ヘッドの電気的信頼性を向上させることができる。
【0257】
なお、本実施形態においても、吐出口52の形状は長方形に限られず、長円形状、楕円形状でもよいのはもちろんである。
【0258】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、インク流路を、その中心線が電気熱変換素子の中心線からオフセットして位置するように配置することで、キャビテーションによる電気熱変換素子への影響を低減できる。
【0259】
またさらに、インク吐出口の中心が電気熱変換素子の中心からオフセットされて位置するように配置することによって、ノズル内の吐出口と気泡との間のインクが気泡の消泡時に電気熱変換素子に垂直に衝突することを抑え、もって電気熱変換素子が損傷することを防止して電気熱変換素子の耐久性能をさらに飛躍的に向上させることができる。
【0260】
また、吐出口の断面積が圧力室側に向かうにしたがって増えるように吐出口壁面にテーパを付け、吐出口の、圧力室側の接続面に平行な面内で見て、吐出口の圧力室側の開口の縁に囲まれる領域内に電気熱変換素子が位置するように構成することによって、ほぼ確実に電気熱変換素子の外側の領域で消泡が生じるようにすることができる。それによって、電気熱変換素子の耐久性能をさらに飛躍的に向上させることができる。
【0261】
また、インク流路の長さが異なる複数のノズルについて、その幅や高さなどを変化させて流抵抗を揃えることにより、濃度ムラの少ない高品位な画像記録を行うことができるインクジェット記録ヘッドを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の参考例のインクジェット記録ヘッドのノズル部分の模式図であり、図1(a)は、吐出口形成部材を外した状態で示した平面図、図1(b)は、吐出口形成部材の上方から見た平面図、図1(c)は図1(a)のP−P’線に沿って切断した断面図である。
【図2】第2の参考例のインクジェット記録ヘッドのノズル部分の模式図であり、図2(a)は、吐出口形成部材を外した状態で示した平面図、図2(b)は、吐出口形成部材の上方から見た平面図、図2(c)は図2(a)のP−P’線に沿って切断した断面図である。
【図3】第3の参考例のインクジェット記録ヘッドのノズル部分の模式図であり、図3(a)は、吐出口形成部材を外した状態で示した平面図、図3(b)は、吐出口形成部材の上方から見た平面図、図3(c)は図3(a)のP−P’線に沿って切断した断面図である。
【図4】 第4の参考例のインクジェット記録ヘッドのノズル部分の模式図であり、図4(a)は、吐出口形成部材を透視した状態で示した平面図、図4(b)は図(a)のB−B’線に沿って切断した断面図である。
【図5】図4のインクジェット記録ヘッドのノズル部分の平面図であり、消泡工程を模式的に示している。
【図6】図4のインクジェット記録ヘッドのノズル部分の模式的平面図であり、複数のノズルの配置を示している。
【図7】図4のインクジェット記録ヘッドのノズル部分の平面図であり、流抵抗を求める方法を模式的に示している。
【図8】図8(a)は、図4のインクジェット記録ヘッドのノズル部分の全体の平面図、図8(b)は図8(a)のA部拡大図である。
【図9】図4のインクジェット記録ヘッドのノズル部分の平面図であり、ノズル形成部材の形成位置にずれが生じた場合を示している。
【図10】 本発明のインクジェット記録ヘッドの第の実施形態におけるノズル部分を示す模式図である。
【図11】図10に示したインクジェット記録ヘッドのノズルからインク液滴が吐出された後の気泡の消泡工程を示す図である。
【図12】図11(a)〜(c)に示した消泡工程の各推移状態を抜粋し、さらにそれぞれの状態のときのノズル断面を示す図である。
【図13】 第の実施形態に対する比較例のインクジェット記録ヘッドの消泡工程を示す図であり、図13(a)は、吐出口形成部材を透視した状態で示す平面図、図13(b)は、図13(a)のC−C’線に沿って切断した断面図を示している。
【図14】第2の実施例に対する比較例のインクジェット記録ヘッドのインク吐出工程を示す図であり、図14(a)は、吐出口形成部材を透視した状態で示す平面図、図14(b)は、図14(a)のC−C’線に沿って切断した断面図を示している。
【図15】 本発明のインクジェット記録ヘッドの第の実施形態の変形例の消泡工程を示す、吐出口形成部材を透視した状態で示す平面図である。
【図16】図15と同様の消泡工程を示す、図15(c)のK−K’線に沿って切断した断面図である。
【図17】図15のインクジェット記録ヘッドにおけるインク吐出工程を示す図であり、図17(a)は、吐出口形成部材を透視した状態で示す平面図、図17(b)は、図17(a)のC−C’線に沿って切断した断面図を示している。
【図18】 本発明のインクジェット記録ヘッドの第の実施形態におけるノズル部分を示す模式図である。
【図19】図18に示したインクジェット記録ヘッドのノズルからインク液滴が吐出された後の気泡の消泡工程を示す図である。
【図20】図18に示したインクジェット記録ヘッドのインク吐出工程を示す模式図であり、図20(a)は、吐出口形成部材を透視した状態で示す平面図、図20(b)は、図20(a)のC−C’線に沿って切断した断面図を示している。
【図21】 本発明のインクジェット記録ヘッドの第の実施形態におけるノズル部分を示す模式図である。
【図22】 本発明のインクジェット記録ヘッドの第の実施形態におけるノズル部分を示す模式図である。
【図23】 本発明のインクジェット記録ヘッドの第の実施形態におけるノズル部分を示す模式図である。
【図24】図23のインクジェット記録ヘッドの消泡工程を示す、吐出口形成部材を透視した状態で示す平面図である。
【図25】図23のインクジェット記録ヘッドの消泡工程を示す、図24のB−B’線に沿って切断した断面図である。
【図26】 本発明のインクジェット記録ヘッドの第の実施形態におけるノズル部分を示す模式図である。
【図27】 本発明のインクジェット記録ヘッドの第の実施形態におけるノズル部分を示す模式図である。
【図28】図28(a)は本発明のインクジェット記録ヘッドを搭載可能な、好適な記録ヘッドカートリッジの斜視図、図28(b)はその分解斜視図である。
【図29】図28に示す記録ヘッドの構成を示す分解斜視図である。
【図30】図28に示す記録ヘッドをさらに細かく分解した分解斜視図である。
【図31】図28の記録ヘッドカートリッジの記録素子基板の構成を示す一部切りかき説明斜視図である。
【図32】図28の記録ヘッドカートリッジの他の記録素子基板の構成を示す一部切りかき説明斜視図である。
【図33】図28の記録ヘッドカートリッジの要部断面図である。
【図34】図28の記録ヘッドカートリッジの記録素子ユニットとインク供給ユニットを組み立てたものを示す斜視図である。
【図35】図28の記録ヘッドカートリッジの底面側を示す斜視図である。
【図36】図28の記録ヘッドカートリッジを搭載可能な、好適なインクジェット記録装置の模式的平面図である。
【図37】ノズル列、各ノズルの駆動信号および各ノズルから吐出されたインク滴を模式的に示す図である。
【図38】全ノズルからインク滴を周期的に吐出させる駆動信号と、その時のメニスカス面の状態の時間変化を示す模式図である。
【図39】複数のノズルに複数の駆動ブロックを割り当て、1つのラスタに対して複数回の主走査で記録を行う記録方法において、各ラスタへの記録に用いられる駆動ブロックの平均値を示すグラフである。
【図40】複数のノズルに複数の駆動ブロックを割り当て、1つのラスタに対して複数回の主走査で記録を行う他の記録方法において、各ラスタへの記録に用いられる駆動ブロックの平均値を示すグラフである。
【図41】複数のノズルに複数の駆動ブロックを割り当て、1つのラスタに対して複数回の主走査で記録を行うさらに他の記録方法において、各ラスタへの記録に用いられる駆動ブロックの平均値を示すグラフである。
【図42】複数のノズルに複数の駆動ブロックを割り当て、1つのラスタに対して複数回の主走査で記録を行うさらに他の記録方法において、各ラスタへの記録に用いられる駆動ブロックの平均値を示すグラフである。
【図43】複数のノズルに複数の駆動ブロックを割り当て、1つのラスタに対して複数回の主走査で記録を行うさらに他の記録方法において、各ラスタへの記録に用いられる駆動ブロックの平均値を示すグラフである。
【図44】複数のノズルに複数の駆動ブロックを割り当て、1つのラスタに対して複数回の主走査で記録を行うさらに他の記録方法において、各ラスタへの記録に用いられる駆動ブロックの平均値を示すグラフである。
【図45】従来のインクジェット記録ヘッドのノズル部分を示す模式図である。
【符号の説明】
51,1001 電気熱変換素子
52,1002 吐出口
53,63,73,83,1003 インク流路
54,1004 共通液室
55,1005 圧力室
56 インク供給口
60 吐出口テーパ下端
62 配線
87 気泡
100 インク滴
102 キャリッジ
103 ガイドシャフト
104 主走査モータ
105 モータプーリ
106 従動プーリ
107 タイミングベルト
108 被記録媒体
109 搬送ローラ
130 ホームポジションセンサ
131 ピックアップローラ
132 オートシートフィーダ
133 ペーパーエンドセンサ
134 LFモータ
135 給紙モータ
136 遮蔽版
300 駆動信号
500 ノズル列
H1000 記録ヘッドカートリッジ
H1001 記録ヘッド(インクジェット記録ヘッド)
H1002 記録素子ユニット
H1003 インク供給ユニット
H1100 第1の記録素子基板
H1101 第2の記録素子基板
H1102 インク供給口(供給口)
H1103 電気熱変換素子(記録素子)
H1104 電極
H1105 バンプ
H1106 インク流路壁
H1107 吐出口
H1108 吐出口群
H1110 Si基板
H1200 第1のプレート(第1の支持部材)
H1201 インク連通口
H1202 第1の接着層
H1203 第2の接着層
H1300,H1300W 電気配線テープ(可撓性の配線基板)
H1301 外部信号入力端子
H1302 電極リード
H1306 第3の接着層
H1309 端子位置決め穴
H1400,H1400A,H1400B,H1400C 第2のプレート
H1500 インク供給部材
H1501 インク流路
H1503 第1の穴
H1509 X突き当て部
H1510 Y突き当て部
H1511 Z突き当て部
H1512 端子固定部
H1515 端子位置決めピン
H1520 ジョイント部
H1600 流路形成部材
H1601 装着ガイド
H1602 インク連通口
H1700 フィルター
H1800 シールゴム
H1900 インクタンク
H1901 ブラックインクタンク
H1902 シアンインクタンク
H1903 マゼンタインクタンク
H1904 イエローインクタンク
H1907 インク連通口
H1910 第2の爪
H2000 タンクホルダー
H2300 ジョイントシール部材
H2400 ビス

Claims (8)

  1. 円形または長円形または長方形の、インクを吐出する複数の吐出口と、
    該複数の吐出口に夫々対応して設けられ、インクを吐出するために利用される熱エネルギーを発生する矩形の電気熱変換素子が前記吐出口に対向するように設けられた複数の圧力室と、
    該複数の圧力室に供給されるインクを貯留する共通液室と、
    前記複数の圧力室と前記共通液室とを連通させ、前記電気熱変換素子上に発生した気泡が消泡するのに伴い前記共通液室から前記複数の圧力室へインクが流入するための複数のインク流路と、
    を有するインクジェット記録ヘッドにおいて、
    前記インク流路は、前記共通液室から前記圧力室へ向かう第一の方向に沿って一組のインク流路壁によって形成された部分を備え、
    前記圧力室は実質的に円柱形の形状を有し、
    前記吐出口から該吐出口に対応する前記電気熱変換素子に向かう第二の方向にみて、前記第一の方向に沿った前記部分の中心線に平行で前記電気熱変換素子の中心を通る中心線が前記部分の中心線に対してオフセットしており、
    前記吐出口の中心が前記電気熱変換素子の中心から前記共通液室側にオフセットしていることを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
  2. 前記吐出口の前記電気熱変換素子に対する前記オフセットの量は1μm以上10μm以下である、請求項1に記載のインクジェット記録ヘッド。
  3. 前記吐出口の前記電気熱変換素子に対する前記オフセットの量は3μm以上7μm以下である、請求項1または2に記載のインクジェット記録ヘッド。
  4. 前記電気熱変換素子の中心が前記圧力室の中心からオフセットされて位置するように配置されている、請求項に記載のインクジェット記録ヘッド。
  5. 前記圧力室の、前記吐出口が連絡している面に平行な面内で見て、前記電気熱変換素子が占める領域は、前記吐出口の、前記圧力室に連絡する部分の縁に囲まれる領域内に含まれている、請求項1からのいずれか1項に記載のインクジェット記録ヘッド。
  6. 前記吐出口は、前記圧力室側に向かって断面積が増加するように、側壁にテーパが付けられている、請求項に記載のインクジェット記録ヘッド。
  7. 前記吐出口は、前記電気熱変換素子の中心から前記共通液室側にオフセットされている方向に長い形状を有している、請求項5または6に記載のインクジェット記録ヘッド。
  8. 前記電気熱変換素子の中心を通る中心線の前記部分の中心線に対するオフセット方向が、一列に並んで配置されている複数の前記インク流路について同じ方向である、請求項1からのいずれか1項に記載のインクジェット記録ヘッド。
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