JP4545870B2 - 磁気共鳴イメージング装置用受信コイル及び磁気共鳴イメージング装置 - Google Patents

磁気共鳴イメージング装置用受信コイル及び磁気共鳴イメージング装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は磁気共鳴イメージング装置の受信コイル部に関する。
【0002】
【従来の技術】
MRI装置は生体組織を構成する原子核に高周波磁場を照射して磁気共鳴を起こさせ、それによって発生する核磁気共鳴信号を受信コイルで受信し、受信された核磁気共鳴信号にフーリエ変換を行って画像に再構成するもので、被検体の任意個所における断層像を得るために広く利用されている。
【0003】
高周波磁場の受信には、静磁場方向に直行する向きの高周波磁場を発生する受信コイルが使用される。
この受信コイルは受信する高周波磁場の強度が再構成された画像のSN比に直接影響するため、感度向上のための研究、改良がなされており、種々のコイルが考えられている。
【0004】
その中のひとつに図3のようなコイルが考案されている。コイル50,51は独立した同じ形状の二つのコイルを並べて配置したものである。各コイルは図7に示すように個別に増幅回路(16,16a)、直交位相検波器(17,17a )、A/D(18,18a)を持っており、これを最終的に合成して画像を再構成する。これにより1つのコイルで2回撮像した場合よりも、撮像時間を延長せず高SN比のまま大きな撮像野を得ることが出来る。図5は図3のコイル50,51の感度範囲を示したものである。図5(a)のグラフ70はコイル50の感度分布を示したものであり、図5(a)のグラフ71はコイル51の感度を示している。グラフ70,71を合成することにより、SN比を低下させることなく広範囲の感度(グラフ72)を得ることができる。
【0005】
通常の場合、受信コイルを並列に並べると2つのコイル間にカップリングが発生し、コイルの性能を低下させてしまう。これを防止するため図3に示すような斜線部をオーバーラップする配置が考えられている。
図3のようにコイル50,51を配置するとコイル間に磁束Mが発生し、お互いに干渉しあい個々の性能を十分に引き出すことができない状態になる。これをM結合と称す。
【0006】
このM結合を両コイルのオーバーラップ量を増減させ磁束−Mの量を変化させることにより、打ち消すことができる。図6に磁束Mと磁束−Mの関係を示す。図6(a)の曲線80はコイル磁束Mを示しており、図6(b)の曲線81はオーバーラップ部分に発生する磁束−Mを示している。図3の状態で磁束Mは図6(a)中の点82とし、それに対して磁束−Mを図6(b)中の点84だとする。磁束Mが磁束−Mより大きいと相殺することができずアイソレーションが取れずM結合を引き起こしてしまう。そこでオーバーラップ量を増減させ、磁束−Mを増やし点83まで大きくすると磁束Mの点82と絶対値が同じとなり両磁束が相殺して、M結合を引き起こさなくなる。図5(a)はM結合が打ち消されている場合のコイルの感度分布を示している。グラフ70はコイル50、グラフ71はコイル51の個々の感度分布を示す。グラフ72はグラフ70,71の感度を合成したものである。
【0007】
ところで高周波コイルは被検体に対して密着しているほど高信号を得ることが出来る。これは被検体の大きさを一定とした場合、コイルのフィリングファクターが大きければ良い画像が得られるためである。
【0008】
しかし、常に被検体の形状は一定でなく、高信号を得るため被検体の形状に合わせコイルを密着させようとコイル形状を図3から図4の形状に変形させると、コイル50,51内の磁束Mの絶対量が磁束Mから磁束M’に変わるが、オーバーラップ部分は変化しないので磁束−Mは同じ値のままである。このため磁束M’と磁束−Mとバランスが崩れM結合が発生する。
【0009】
これを図6において説明する。図6(a)において曲線80はコイルの磁束Mの絶対量を示している。x軸はコイルの屈折する角度(θ)であり、y軸に磁束Mの絶対量を示す。また、図6(b)において曲線81はオーバーラップ部分に発生する磁束−Mの絶対量を示し、y軸は磁束−Mの絶対量を、x軸はオーバーラップ量を示してある。x軸は右側に行くほどオーバーラップ量が減少する。曲線80よりコイル50,51の屈折角度(θ)が大きくなればなるほどコイル50,51の磁束Mの絶対量が減少する。また、曲線81よりオーバーラップ部分の減少に伴い、磁束−Mの絶対量も減少する。
【0010】
コイル50,51の状態からコイル50a,51aへ形状が変化したとき、両コイルの磁束Mの絶対量は点82から点85に減少してしまう。しかし、磁束−Mはコイル形状が変わってもオーバーラップ量が変わらないので点83のままであり、そのため磁束M’より磁束−Mのほうが大きくなりアイソレーションのバランスが崩れてM結合を引き起こす。
コイル50a,51aのアイソレーションがずれると、コイル50a,51aの共振周波数がMRI装置の共振周波数とずれてしまい、感度低下をまねいてしまう。
【0011】
これを図5(b)に示すとコイル50aの感度分布がグラフ73に、コイル51aの感度分布がグラフ74になり、合成した感度はグラフ75となる。アイソレーションがとれているときの合成波形72に比べ、アイソレーションがとれていない時の合成波形75が小さくなり感度が極端に落ちることとなる。
【0012】
この時、絶対量の大きい磁束−Mと磁束M’の絶対量を同じにするためオーバーラップ量を変化させる。図6において磁束−Mを点83だった値を、オーバーラップ量を減少させ、点86までの値にしてやれば、磁束Mの点85と磁束−Mの点86の絶対量が同じとなり、お互いが相殺しM結合を引き起こさなくなる。
M結合は磁束Mと磁束−Mの絶対量が同じで無くなったときに発生する。
【0013】
このため、形状を変えたコイル50a,51aのM結合を打ち消すためには、再度オーバーラップ量を調整しなければならない。しかし、実際に被検体に合わせコイル形状を変える毎に、オーバーラップ量を調整するのは困難なため、コイルは形状が変化しないようにコイル本体・オーバーラップ量ともに固定され、磁束Mと磁束−Mの絶対量が常に同じになるように固定されている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
このため本発明ではコイル形状が変化しても磁束Mと磁束−Mの絶対量が常に同じ値となりM結合を引き起こさず、性能を劣化させない高周波コイルを提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の磁気共鳴イメージング装置用受信コイルは、被検体からの核磁気共鳴信号を受信するための第1の受信コイルと第2の受信コイルとを有して成り、前記第1の受信コイルの変形に対応して、前記第1の受信コイルと前記第2受信コイルとの間のアイソレーションを保持するように、前記第2の受信コイルを変形させるアイソレーション保持手段を備えていることを特徴とする。
また、本発明の磁気共鳴イメージング装置は、被検体からの核磁気共鳴信号を受信するための第1の受信コイルと第2の受信コイルとを有して成る受信手段を備え、前記受信手段は、前記第1の受信コイルの変形に対応して、前記第1の受信コイルと前記第2受信コイルとの間のアイソレーションを保持するように、前記第2の受信コイルを変形させるアイソレーション保持手段を備えていることを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図7は本発明による磁気共鳴イメージング装置の一実施例を示すブロック図である。
【0017】
本発明による磁気共鳴イメージング装置は、中央処理装置(CPU)8と、シーケンサ7と、送信系4、静磁場発生回路2と、受信系5、信号処理系6とを備えて構成されている。前記中央処理装置8は、あらかじめ定められたプログラムに従いシーケンサ7、送信系4、受信系5、信号処理系6の各々を制御するものである。
シーケンサ7は中央処理装置8からの制御指令に基づいて動作し、被検体1の断層像のデータ収集に必要な種々の命令を送信系4、静磁場発生回路2の傾斜磁場発生系3、受信系5に送っている。
【0018】
静磁場発生回路2は、被検体1の周りに任意の方向に均一な静磁場を発生させるためのものである。
この静磁場発生回路2の内部には、傾斜磁場を発生させる傾斜磁場コイル9と受信系5の高周波コイル(受信コイル)15、送信系4の高周波コイル(照射コイル)31が設置されている。傾斜磁場発生系3は互いに直交するデカルト座標軸方向、すなわちX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向にそれぞれ独立に傾斜磁場を印加できる構成を有する傾斜磁場コイル9と、この傾斜磁場コイル9に電流を供給する傾斜磁場電源10と、この傾斜磁場電源10を制御するシーケンサ7により構成する。
【0019】
送信系4は高周波発振器11と変調器12と高周波コイル(照射コイル)31を有し、シーケンサ7の指令により高周波発振器11からの高周波パルスを高周波増幅器13を介して増幅して照射コイル31に供給することにより、所定のパルス状の電磁波を被検体1に照射している。受信系5は、前記受信コイル5と、オペアンプ16と、直交位相検波器17とA/D変換器18とを有し、被検体1からの磁場共鳴信号を受信コイル15が検出すると、その信号をオペアンプ16、直交位相検波器17を介してA/D変換器18でデジタル量に変換するとともに、シーケンサ7の指令のタイミングで直交位相検波器17によってサンプリングされた2系列の収集データに変換して中央処理装置CPU8に送っている。
【0020】
さらに、信号処理系6は、磁気ディスク20a、磁気テープ20bなどの外部記憶装置20と、CRTなどからなるディスプレイ21、キーボード22とを有している。
受信系5からのデータが中央処理装置CPU8に入力されると、この中央処理装置CPU8が信号処理、画像再構成処理などを実行し、その結果の被検体1の所望の断面像を前記ディスプレイ21に表示するとともに、前記外部記憶装置20のたとえば磁気ディスク20aに記憶する。
【0021】
図1は高周波コイル15,15aの詳細な図を示したものである。
図1において高周波コイル30,31は同じ形状、感度範囲、感度を持つ受信コイルであり、被検体の近傍に配置されているものである。コイル30,31はおのおの独立した増幅回路(16,16a)、直交位相検波器(17,17a)、A/D(18,18a)を持っている。
【0022】
コイル30,31について説明する。コイル30にボス32,33,35が取り付けられている。ライン38はボス32とボス35で固定されており、ボス33には固定されていない。コイル31にはボス34,36,37が取り付けてあり、ライン39はボス34とボス37で固定されており、ボス36には固定されていない。また図中の斜線部42は両コイルのオーバーラップ部を示している。
【0023】
図3のコイルに被検体45をセットするが、被検体45に対してコイルが大きいため、これでは良好な画像を得ることが出来ない。そこでコイル形状を図4の様にコイル30,31上部を被検体45に密着させてより良好な画像を得ようとする。変形させる前のコイル30,31の絶対量は図6(a)で点82であり、その時の磁束−Mは図6(b)で点83となっており、M結合を引き起こさない状態となっていたが、コイル形状がコイル30,31からコイル30a,31aに形状が変化したことにより、磁束Mの絶対量が減少し点85になる。この時の磁束−Mはオーバーラップ量が変化しなければ点83のままであり、磁束Mと磁束−Mの絶対量のアイソレーションが崩れM結合を引き起こす。
【0024】
しかしコイル形状を変化させた際、ライン38はボス32とボス35に固定されているため、コイル30上部が下方に下げられると、それと共にボス32も下方に移動するため、ボス32に固定されているライン38が下方に引かれる。ライン38が引かれるとボス33を経由してライン38が固定されているボス35が引かれることとなる。ボス35はコイル直線部41に固定されているため、ボス35がボス33側に引かれると共にコイル直線部分41もボス33側に移動することになる。
【0025】
また、コイル31上部も下方に下げられるため、それと共にボス37も下方に移動し、それに固定されているライン39が下方に引かれ、ボス36を経由してライン39が取り付けられているボス34が引かれることとなる。ボス34はコイル直線部40に取り付けられているため、ボス34が引かれると共にコイル直線部40もボス36側に移動することとなる。
【0026】
このことにより、コイル形状が変わる前の図3のオーバーラップ量42もコイル形状が変わると共にコイル直線部40,41の位置が移動したことにより、オーバーラップ量42が変化する。オーバーラップ量42の磁束−Mは図6(b)の点86になる様に調節されているため、コイル形状が変化によって変わった点85と絶対量が同じとなりM結合を打ち消すことができる。また、更にコイル形状を下方に変形させても、磁束Mの変化に対して、常に同じ絶対量の磁束−Mを発生させるようにコイル直線部40,41の移動量を調整してあるので、コイル形状が変化しても常にM結合が発生しないようになっている。
上記の機構を利用すれば2つのコイルのみならず、3つ以上のコイルの場合にも適用できる。
【0027】
【発明の効果】
本発明のMRI装置は、独立した二つのコイルに発生したM結合をコイル形状が変わっても、常にアイソレーションが最適の状態にし、独立したコイルの性能を引き出すことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の受信系の一実施例を示した図である。
【図2】図1の受信系に被検体を入れ形状を変化させた図である。
【図3】独立した二つのコイルに発生する磁束を示した図である。
【図4】二つのコイルの形状を変化させたときに発生する磁束を示した図である。
【図5】個々のコイルの感度分布と合成した際の感度分布を示した図である。
【図6】磁束Mと磁束−Mの関係を示した図である。
【図7】本発明のRFコイルが適用されるMRI装置の1実施例を示す概略構成図。
【符号の説明】
2 静磁場発生回路、3 傾斜磁場発生系、4 送信系、5 受信系 6 信号処理系、8 中央処理装置(CPU)、15,15a 受信コイル、30,31,30a,31a 一実施例の受信コイル

Claims (4)

  1. 被検体からの核磁気共鳴信号を受信するための第1の受信コイルと第2の受信コイルとを有して成る磁気共鳴イメージング装置用受信コイルにおいて、
    前記第1の受信コイルの変形に対応して、前記第1の受信コイルと前記第2受信コイルとの間のアイソレーションを保持するように、前記第2の受信コイルを変形させるアイソレーション保持手段を備えていることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置用受信コイル。
  2. 請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置用受信コイルにおいて、
    前記アイソレーション保持手段は、前記第1の受信コイルと前記第2の受信コイルとを結ぶ結合部材を有し、
    前記結合部材は、前記第1の受信コイルの変形に対応して、前記第2の受信コイルを変形させることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置用受信コイル。
  3. 請求項1又は2記載の磁気共鳴イメージング装置用受信コイルにおいて、
    前記第1の受信コイルと前記第2の受信コイルは、互いにオーバーラップして配置され、
    前記アイソレーション保持手段は、前記第1の受信コイルと前記第2の受信コイルの内の少なくとも一方の変形に対応して、前記オーバーラップ量を変化させることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置用受信コイル。
  4. 被検体からの核磁気共鳴信号を受信するための第1の受信コイルと第2の受信コイルとを有して成る受信手段を備えた磁気共鳴イメージング装置において、
    前記受信手段は、前記第1の受信コイルの変形に対応して、前記第1の受信コイルと前記第2受信コイルとの間のアイソレーションを保持するように、前記第2の受信コイルを変形させるアイソレーション保持手段を備えていることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
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