JP4543939B2 - 補正値算出方法及びプリンタ製造方法 - Google Patents
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Description
そこで、本発明は、モータの個体差に適した補正値をプリンタに設定することを目的とする。
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
前記PID制御系の積分要素の出力値と前記補正値に基づいて、前記モータに流れる電流値を算出する
プリンタの、前記補正値を算出する方法であって、
モータの特性が変動したときの、前記モータが第1の速度にて駆動されるときの前記積分要素の出力値、及び、前記モータが第2の速度にて駆動されるときの前記積分要素の出力値、の和と、前記補正値との関係を予め求め、
製造対象となるプリンタの前記モータを第1の速度にて駆動して、そのときの前記積分要素の出力値を測定し、
そのプリンタの前記モータを第2の速度にて駆動し、そのときの前記積分要素の出力値を測定し、
測定された2つの前記出力値の和と前記関係とに基づいて補正値を決定する
ことを特徴とする補正値算出方法。
このような補正値算出方法によれば、製造対象のプリンタのモータに適した補正値を算出することができる。
前記PID制御系の積分要素の出力値と前記補正値に基づいて、前記モータに流れる電流値を算出する
プリンタを、製造する方法であって、
モータの特性が変動したときの、前記モータが第1の速度にて駆動されるときの前記積分要素の出力値、及び、前記モータが第2の速度にて駆動されるときの前記積分要素の出力値、の和と、前記補正値との関係を予め求め、
製造対象となるプリンタの前記モータを第1の速度にて駆動して、そのときの前記積分要素の出力値を測定し、
そのプリンタの前記モータを第2の速度にて駆動し、そのときの前記積分要素の出力値を測定し、
測定された2つの前記出力値の和と前記関係とに基づいて決定される補正値を、そのプリンタの前記メモリに記録する
ことを特徴とするプリンタ製造方法。
このようなプリンタ製造方法によれば、モータに適した補正値をプリンタに設定することができる。
次に、印刷システム(コンピュータシステム)の実施形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、以下の実施形態の記載には、コンピュータプログラム、及び、コンピュータプログラムを記録した記録媒体等に関する実施形態も含まれている。
<インクジェットプリンタの構成について>
図2は、本実施形態のプリンタの全体構成のブロック図である。また、図3は、本実施形態のプリンタの全体構成の概略図である。また、図4は、本実施形態のプリンタの全体構成の横断面図である。以下、本実施形態のプリンタの基本的な構成について説明する。
図5は、印刷時の処理のフロー図である。以下に説明される各処理は、コントローラ60が、メモリ63内に格納されたプログラムに従って、各ユニットを制御することにより実行される。このプログラムは、各処理を実行するためのコードを有する。
<搬送処理について>
図6は、搬送ユニット20の構成の説明図である。なお、これらの図において、既に説明された構成要素については、同じ符号を付しているので、説明を省略する。
図7は、ロータリー式エンコーダの構成の説明図である。なお、これらの図において、既に説明された構成要素については、同じ符号を付しているので、説明を省略する。
図8Aは、搬送モータ22が正転しているときの出力信号の波形のタイミングチャートである。図8Bは、搬送モータ22が反転しているときの出力信号の波形のタイミングチャートである。
<キャリッジユニット制御回路の構成について>
図9は、キャリッジユニット制御回路70のブロック図である。キャリッジユニット制御回路70は、キャリッジユニット30のCRモータ32(キャリッジモータ)の駆動を制御するものであり、前述のユニット制御回路64に設けられている。
このキャリッジユニット制御回路70は、位置演算部71と、減算器72と、ゲイン73と、速度演算部74と、減算器75と、比例要素76Aと、積分要素76Bと、微分要素76Cと、加算器77と、PWM回路78と、加速制御部79A、タイマ79Bとを有する。
減算器72は、CPU62から送られてくる目標位置と、位置演算部71により検出された検出位置との位置偏差を演算する。ゲイン73は、減算器72から出力される位置偏差にゲインKpを乗算し、目標速度を出力する。ゲインKpは、位置偏差に応じて決定される。なお、このゲインKpの値と位置偏差との関係を示すテーブルは、メモリ63に格納されている。
速度演算部74は、リニア式エンコーダ51の出力パルスに基づいて、CRモータ32の回転速度を演算する。すなわち、速度演算部74は、リニア式エンコーダ51の出力パルスのパルス周期を計時し、このパルス周期に基づいてCRモータ32の回転速度を演算する。
減算器75は、ゲイン73から出力される目標速度と、速度演算部74により検出された検出速度との速度偏差を演算する。
図10Aは、PWM回路78に入力されるデューティ信号の時間変化のグラフである。図10Bは、モータの速度変化のグラフである。以下、これらの図を用いて、CRモータの駆動について説明する。
コントローラ60は、1回のドット形成処理当たりのCRモータ32の発熱量Qpass[Y][V]を算出し、この発熱量Qpass[Y][V]に基づいてCRモータ32の温度を推定し、推定温度に応じてCRモータ32に対して発熱制限制御を行う。
Qpass[Y][V]=(Ibase[Y][V]+Ifuka)2・tpass[Y][V]
定速時にCRモータ32に流れる電流Ifukaは、CRモータ32の負荷によって異なるので、電源ON時に計測される(「負荷メジャメント」の項で後述する)。
一般に、発熱量は以下の式で求められる。
Q=K・W (Kは、ある仕事Wを発熱に換算する係数である)
ここで、W=I2・R・tである。つまり、Q=I2・R・t・Kとなる。CRモータ32の動作に伴う発熱を考えると、RはCRモータの巻線の抵抗であり、定数である。RとKは定数なので、Q∝I2・tの関係がある。そこで、以下の説明では、I2・tを発熱量と呼ぶ(実際には発熱相当量である)。
図11Aは、モータ負荷の小さいときの時間と電流値との関係のグラフである。図11Bは、モータ負荷の大きいときの時間と電流値との関係のグラフである。
図14は、tpassテーブルの説明図である。このtpassテーブルは、移動速度Vと移動距離Yとに関連付けて、1回のドット形成処理当たり(1パス当たり)のCRモータ32の駆動時間tpass[Y][V]を記憶したテーブルである。各移動速度Vと移動距離Yの全ての組み合わせについて予め実験で計測し、これによりtpassテーブルを完成させる。そして、作成されたtpassテーブルは、メモリ63に記憶される。
CRモータ32が一定速度で回転するために必要な電流値は、CRモータ32にかかる負荷によって異なる。そこで、電源ON時などの印刷処理前に、プリンタは、以下に説明する負荷メジャメントを行い、CRモータ32が一定速度V1で移動するときにCRモータ32に流れる電流値Ifukaを計測している。
図15は、負荷メジャメント処理のフロー図である。図16は、負荷メジャメント処理時の積分要素76Bのデューティ信号値(出力値)とCRモータ回転速度の時間変化のグラフである。コントローラ60は、電源ON時又はインクカートリッジ交換時に、メモリ63に格納されているプログラムに従ってキャリッジユニット制御回路を制御して、以下の処理を行う。
次に、CRモータ32の回転速度が目標速度V1に近づいたら、オープン制御からPID制御に移行する(S102)。PID制御によりCRモータ32の駆動を続けると、CRモータ32の回転速度と目標速度V1との差が小さくなっていく。
CRモータ32の回転速度と目標速度V1との差が所定値以下となり、積分要素76Bの出力信号値DXIがほぼ一定値になったら、コントローラ60は、積分要素76Bの出力信号値DXIをサンプリング間隔Δtにて記録する(S103)。
サンプリングを開始してからN個の出力信号値を記録したら(S104でYES)、コントローラ60は、サンプリングしたN個の出力信号値に基づいて、その平均値DXI_v1を算出する(S105)。
Ifuka={Vp×(DXI_v1/2000)−kE×V1}/R
という関係式が成立する。
したがって、この負荷メジャメントにより、積分要素76Bの出力値DXI_v1が分かれば、一定速度V1でキャリッジを駆動するときにCRモータ32に流れる電流値Ifukaを求めることができる(S106)。
そこで、本実施形態では、電流値Ifukaを求める際に、上記の関係式にて求められた電流値Ifukaに、計算誤差分の補正値Ifuka_subを加算する。この補正値Ifuka_subの算出方法については、後述する。
<1回のドット形成処理当たり(1パス当たり)の発熱量Qpassについて>
図17は、Qpassテーブルの説明図である。このQpassテーブルは、移動速度Vと移動距離Yとに関連付けて、1回のドット形成処理当たり(1パス当たり)のCRモータの発熱量Qpass[Y][V]を記憶したテーブルである。各発熱量Qpass[Y][V]は、次式により、算出される。
Qpass[Y][V]=(Ibase[Y][V]+Ifuka[Y][V])2×tpass[Y][V]
次に、プリンタの電源投入時のQpassテーブル作成後に行われる温度推定処理について説明する。
そして、プリンタの印刷処理時、キャリッジ31は往動と復動を繰り返し、CRモータは発熱を繰り返すので、コントローラ60は、逐次取得した発熱量Qpassを積算する。
ここでは、1分間を単位時間Tboxとし、単位時間内の発熱量Qpassを積算し、単位時間内の発熱量Qsigmaを計算する。発熱量Qsigmaの計算前初期値は「0」であり、単位時間Tbox経過する毎にリセットされる。従って、キャリッジ31が1分間1度も駆動されなかったときの発熱量Qsigmaは「0」となる。
ΔTnew =(ΔTo /Io2)・Irms2
∴ΔTnew ={ ΔTo /(Io2・Tbox )}×Qsigma
ここで、{ ΔTo /(Io2・Tbox )} をKaとおくと、ΔTnew =Ka・Qsigma となる。実効電流値Io をt秒通電したときのモータの発熱温度ΔTを測定した予備実験から、例えばIo =200 mAでΔTo =20deg.が測定されたとすると、単位時間Tbox =60秒であることから、Ka=0.0000083 になる。よって、単位時間Tbox 当たりの発熱温度ΔTnew は、上記の値をもつ定数(変換係数)Kaを用いて、ΔTnew =Ka・Qsigma により表される。
exp (−(t+60)/T)=K・exp (−t/T)
よって、60秒での放熱係数Kは、次式で表される。
K=exp (−60/T)
上式において、時定数Tとして実験で求めた発熱時定数T1sinkを使用すると、発熱系における放熱係数K=exp (−60/T1sink)が求められる。また、上式において、時定数Tとして実験で求めた放熱時定数T2sinkを使用すると、放熱系における放熱係数K=exp (−60/T2sink)が求められる。
図21Aは、通常時(発熱制限制御を行う前)のCRモータ32の電流の時間変化の説明図である。図21Bは、発熱制限制御時のCRモータ32の電流の時間変化の説明図である。なお、CRモータ32の電流値がプラスとマイナスを交互に反転するのは、キャリッジ31が往動と復動とを交互に繰り返すためである。
CRモータ32の間欠的な駆動を続けると、CRモータ32の温度が高くなる。しかし、CRモータ32が高温になると、CRモータ32に品質上の問題が生じる恐れがある。一方、CRモータ32の間欠的な駆動を続けると、CRモータ32の温度を推定するための総発熱温度ΔTsumも高くなる。
発熱制限制御とは、CRモータ32の間欠的な駆動の間に休止時間を挿入し、CRモータ32の間欠的な駆動の間隔を広げる制御である。この発熱制限制御によれば、単位時間Tbox(=60秒)当たりの発熱量Qsigmaが小さくなり、発熱制限制御中の最新の1分間の発熱温度ΔTnewが小さくなり、ΔTsum =K・ΔTsum +ΔTnewより、総発熱温度ΔTsumが時間の経過と共に小さく変化する。すなわち、発熱制限制御により、CRモータの発熱を抑え、CRモータが高温になるのを防いでいる。
特に、CRモータの電圧値Vp、抵抗値R及びモータ逆起電圧係数kEは個体差によるバラツキがあるため、標準的なVp、R、kEを用いてIfukaを算出して発熱量を求めたのでは、推定温度と実際の温度との間に大きな誤差が生じてしまい、不必要な発熱制限制御が行われてしまう。
そこで、本実施形態では、電流値Ifukaを算出する際に、モータ個体差による誤差が小さくなるように補正値Ifuka_subを算出し、標準的なVp、R、kEを用いて算出された電流値Ifukaに計算誤差分の補正値Ifuka_subを加算している。
以下の説明において、CRモータの標準の電圧値をVpとし、CRモータの実際の電圧値をVp’と表す(抵抗値R及びモータ逆起電圧係数kEも同様である)。電圧値等の標準の値は、既知である。一方、電圧値等の実際の値は、設計上の範囲内で、個々のモータ毎にバラツキがある。
CRモータ32を一定速度Vで駆動するとき、CRモータ32に流れる電流Ifukaは、次式の通りである。
Ifuka={Vp×(DXI/2000)−kE×V}/R (式1)
上述の負荷メジャメントによる計測では、個々のモータのバラツキを反映したものになるので、CRモータ32に流れる電流値がIfuka_v1のとき、積分要素76Bの出力信号値は、DXI_v1’であり、次式のように表される。
DXI_v1’=(R’×Ifuka_v1’+kE’×V1)×2000/Vp’(式2)
個々のモータのVp’、kE’及びR’は分からないため、標準的な値(Vp、kE、R)を用いて電流値を算出するため、CRモータ32に流れている電流Ifuka_v1’を次式のように計算する。
Ifuka_v1’={Vp’×(DXI_v1’/2000)−kE’×V1}/R’(式3)
このように、個々のモータのVp’、kE’及びR’は分からないため、Ifuka_v1’を直接算出することはできない。そのため、上記の式3のVp’、kE’及びR’の代わりに標準的な値(Vp、kE、R)を用いて電流値を算出した場合、算出された電流値には、誤差が含まれている。
そこで、本実施形態では、以下のように補正値Ifuka_subを用いて、実際の電流値Ifuka_v1’に近似するIfuka_v1を算出している。
Ifuka_v1={Vp×(DXI_v1’/2000)−kE×V1}/R+Ifuka_sub (式4)
(1)補正値算出関数の作成
図22Aは、本実施形態の補正値算出関数の説明図である。本実施形態では、この補正値算出関数に基づいて、補正値Ifuka_subを算出している。ここでは、この補正値算出関数の作成方法について説明する。
標準的なCRモータの場合、積分要素76Bの出力値DXIは、以下のようになる。
CRモータの速度V1での負荷電流値をIfuka_v1、CRモータの速度V2での負荷電流値をIfuka_v2とする。それぞれの負荷電流値の値は、プリンタの設計上、予め所定の範囲内であることが分かっている。ここでは、CRモータに対する負荷が最も大きい場合での負荷電流値Ifuka_v1及び負荷電流値Ifuka_v2を使って、以下の計算を行う。
DXI_v1=(R×Ifuka_v1+kE×V1)×2000/Vp (式6)
DXI_v2=(R×Ifuka_v2+kE×V2)×2000/Vp (式7)
上の2つの式を加算すると、以下のようになる。
DXI_v1+DXI_v2={R×(Ifuka_v1+Ifuka_v2)+kE×(V1+V2)}
×2000/Vp (式8)
モータの特性のバラツキを考慮した場合、負荷電流値Ifuka_v1及び負荷電流値Ifuka_v2に対する積分要素76Bの出力信号値DXI_v1’及び出力信号値DXI_v2’の和は、以下のように表される。
DXI_v1’+DXI_v2’={R’×(Ifuka_v1+Ifuka_v2)
+kE’×(V1+V2)}×2000/Vp’ (式9)
標準的なモータの場合の積分要素76Bの出力信号値DXI_v1及び出力信号値DXI_v2の和と、モータの特性のバラツキを考慮した場合の積分要素76Bの出力信号値DXI_v1’及び出力信号値DXI_v2’の和との差を、DXI_subと称することにする。つまり、DXI_subは、次式の通りになる。
DXI_sub=(DXI_v1+DXI_v2)−(DXI_v1’+DXI_v2’)
={R×(Ifuka_v1+Ifuka_v2)+kE×(V1+V2)}×2000/Vp
−{R’×(Ifuka_v1+Ifuka_v2)+kE’×(V1+V2)}
×2000/Vp’ (式10)
DXI_v1’=(R’×Ifuka_v1+kE’×V1)×2000/Vp’ (式11)
前述の負荷メジャメントでは、積分要素76Bの出力信号がDXI_v1’である場合、標準的なモータの特性値(Vp、kE、R)を用いて、負荷電流値が算出される。このときの負荷電流値をIfuka_v1’とすると、算出される負荷電流値Ifuka_v1’は、次式の通りである。
Ifuka_v1’={Vp×(DXI_v1’/2000)−kE×V1}/R (式12)
そこで、Ifuka_v1と、このIfuka_v1に基づいて算出される上式のIfuka_v1’との差を、Ifuka_subと称することにする。つまり、Ifuka_subは、次式の通りになる。
Ifuka_sub=Ifuka_v1−Ifuka_v1’ (式13)
=Ifuka_v1−({Vp×(DXI_v1’/2000)−kE×V1}/R)
そこで、電圧値Vp’について3通り(95%、100%、105%)、逆起電圧定数kE’について3通り(90%、100%、110%)、抵抗値R’について3通り(90%、100%、110%)、計27通りの組み合わせによりDXI_sub(式10)及びIfuka_sub(式13)を算出する(なお、式13中のDXI_v1’には、式11により算出されるDXI_v1’が用いられる)。そして、X軸をDXI_subとし、Y軸をIfuka_subとするグラフに、27個の点をプロットする。
Ifuka_sub=a×DXI_sub+b
例えば、図中の補正値算出関数の場合、a=0.7、b=53.9である。プリンタ製造業者は、プリンタ製造ラインを管理するコンピュータのデータベースに、作成された補正値算出関数を保存する。
次に、プリンタの製造ラインにおいて、個々のプリンタ毎に補正値Ifuka_subを決定する。ここでは、個々のプリンタのCRモータの特性値(Vp’、kE’、R’)は、分からない状態である。なお、負荷電流値Ifuka_v1及びIfuka_v2は、プリンタの設計上所定の範囲内であることが分かっているので、ここでは、CRモータに対する負荷が最も大きい場合での負荷電流値Ifuka_v1及び負荷電流値Ifuka_v2の値を用いる。
DXI_v1+DXI_v2={R×(Ifuka_v1+Ifuka_v2)+kE×(V1+V2)}
×2000/Vp (式14)
そして、次式の通り、式14により算出された出力信号DXI_v1及び出力信号DXI_v2の和と、測定された出力信号値DXI_v1’及び出力信号値DXI_v2’の和との差を算出し、DXI_subを算出する。
DXI_sub=(DXI_v1+DXI_v2)−(DXI_v1’+DXI_v2’) (式15)
プリンタがユーザーの下で印刷を行うとき、コントローラ60は、CRモータ32をPWM制御にて駆動する。PWM制御を行っているので、CRモータ32に流れる電流値Ifukaは、直接分からない状態である。そこで、電源投入時に、ユーザーの下で前述の負荷メジャメントが行われ、積分要素76Bの実際の出力信号値DXI’を測定し、この測定値に基づいてCRモータ32に流れる電流値Ifukaを算出する。但し、負荷メジャメントでは、標準的なモータの特性値(Vp、kE、R)を利用して演算するので、モータの個体差によるバラツキのため、誤差を含んでいる。
Ifuka_v1={Vp×(DXI_v1’/2000)−kE×V1}/R+Ifuka_sub
そして、本実施形態では、コントローラ60は、補正値Ifuka_subを加算して得られた電流値Ifukaに基づいて、前述の温度推定処理及び発熱制限制御を行っている。これにより、CRモータの実際の温度を精度良く推定することができる。また、CRモータの実際の温度に応じて発熱制限制御が行われるので、不要な発熱制限制御が行われずに済み、印刷速度を高めることができる。
図22Bは、比較例の補正値算出関数の説明図である。同図の比較例では、「出力信号値DXI_v1及び出力信号値DXI_v2の差」と「出力信号値DXI_v1’及び出力信号値DXI_v2’の差」との差に基づいて、DXI_subを算出している。なお、本実施形態では、「出力信号値DXI_v1及び出力信号値DXI_v2の和」と「出力信号値DXI_v1’及び出力信号値DXI_v2’の和」との差に基づいて、DXI_subを算出している。
比較例によれば、本実施形態と比較して、プロットされる点がバラバラになる。
一実施形態としてのプリンタ等を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
前述の実施形態は、プリンタの実施形態だったので、染料インク又は顔料インクをノズルから吐出していた。しかし、ノズルから吐出する液体は、このようなインクに限られるものではない。例えば、金属材料、有機材料(特に高分子材料)、磁性材料、導電性材料、配線材料、成膜材料、電子インク、加工液、遺伝子溶液などを含む液体(水も含む)をノズルから吐出しても良い。このような液体を対象物に向かって直接的に吐出すれば、省材料、省工程、コストダウンを図ることができる。
前述の実施形態では、圧電素子を用いてインクを吐出していた。しかし、液体を吐出する方式は、これに限られるものではない。例えば、熱によりノズル内に泡を発生させる方式など、他の方式を用いてもよい。
前述の実施形態では、CRモータ32が加速・定速・減速する間のうち、CRモータ32が定速駆動されるときだけ、PID制御が行われていた。しかし、これに限られるものではない。例えば、CRモータ32が加速・定速・減速する間、ずっとPID制御が行われていてもよい。
前述の実施形態では、1回のドット形成処理当たりのCRモータの発熱量Qpassは、CRモータ32の加速・減速時の電流値であるIbaseと、CRモータ32の定速時の電流値であるIfukaとを加算して得られる実効電流値Ipassに基づいて、算出されていた。しかし、1回のドット形成処理当たりのCRモータの発熱量は、このようにして算出されるものに限られない。
例えば、1回のドット形成処理当たりのCRモータ32の発熱量Qpassが、CRモータ32の加速時の発熱量である加速時発熱量Qbaseと、CRモータ32の定速時の発熱量である定速時発熱量Qcとを加算して算出されても良い。
この場合、加速時発熱量Qbaseとキャリッジの移動量(目標位置)とを対応づけたテーブルが、メモリ63に予め記憶されている。目標位置が定まれば、コントローラ60は、テーブルに基づいて、加速時発熱量Qbaseを求めることができる。また、定速時発熱量Qcは、定速時にCRモータ32に流れる電流Ifukaと、定速で回転する間の時間tcとに基づいて、算出することができる。定速時にCRモータ32に流れる電流Ifukaは、前述の負荷メジャメントにより計測される。定速で回転する間の時間tcは、実際の印刷時に計測される。
以下、発熱量Qpassの算出方法の別の実施形態について詳述する。
まず、実際の印刷時と同じ駆動モードにて、CRモータ32を駆動する。そして、CRモータ32に流れる電流値Iを微小時間Δt毎に逐次測定する。そして、測定された電流値Iの2乗に微小時間Δtを乗算した値I2・tを逐次積算する。この積算結果は、加速時発熱量Qbaseに相当する。そして、キャリッジの移動量と加速時発熱量Qbaseとを対応づけた加速時発熱量テーブルを作成する。
加速時発熱量Qbaseは、移動量が定まれば、加速時発熱量テーブルを参照して求めることができる。定速時発熱量Qcは、定速時にCRモータ32に流れる電流値Ifukaと、定速で回転する間の時間tcとに基づいて、Ifuka2×tcとして算出できる。なお、電流値Ifukaは、印刷前に行う負荷メジャメントにより計測されている。定速で回転する間の時間tcは、ドット形成処理時のCRモータの駆動時間trを実測し、この駆動時間から加速期間taを引けばよい。なお、加速期間taは、搬送量が定まれば、加速時発熱量テーブルを参照して求めることができる。
Qpass=Qb1+Ifuka2×(tr−ta1)
(=Qbase+Qc)
前述の実施形態では、単位時間内の発熱量Qsigmaを計算し、1分間の発熱量Qsigmaを発熱温度ΔTnewに換算し、前回の総発熱温度ΔTsum に放熱係数Kを掛けた値に、最新の発熱温度ΔTnew を加えることによって、最新のモータの総発熱温度ΔTsumを算出していた。しかし、単位時間毎に計算するものに限られるものではない。
電源投入後、まず、コントローラ60は、ΔTsumの値を初期値に設定する(S201)。
ドット形成処理があったとき、コントローラ60は、そのドット形成処理の際の発熱量Qpassを算出する(S202)。この算出方法については、既に説明した通りである。
次に、コントローラ60は、発熱量Qpassを発熱温度ΔTに換算する(S203)。ΔTは、ΔT=Ka×Qpassにより求まる。ここで、Kaは、発熱量Qから発熱温度ΔTへの変換係数であり、予備実験により求められた値であり、メモリ63に記憶されている。
次に、コントローラ60は、自然放熱を考慮して、既存の総発熱温度ΔTsumに放熱係数Kを乗算した値と発熱温度ΔTとを加算して、総発熱温度ΔTsum(ΔTsum=K・ΔTsum+ΔT)を算出する(S204)。
以上のような処理でも、CRモータの温度を推定することができる。
前述の実施形態によれば、CRモータ32の推定温度が閾値を越えたか否かに基づいて、発熱制限制御を行うか否かを決定している。しかし、CRモータ32の推定温度に応じて、発熱制限制御における休止時間の長さを決定するようにしても良い。
(1)前述の実施形態のプリンタは、CRモータ32と、CRモータ32を制御するためのPID制御系(比例要素76A、積分要素76B、微分要素76C)と、補正値を記録するためのメモリ63とを備えている。そして、このプリンタは、プリンタを購入したユーザー先で印刷を行う前に、負荷メジャメントを行い、積分要素76Bの出力信号値に基づいて電流値を算出し、この電流値に補正値Ifuka_subを加算して、CRモータ32に流れる電流値Ifukaを算出している。
このようなプリンタを製造する工場では、CRモータ32の特性に適した補正値を各プリンタに設定する必要がある。
仮に、出力信号値DXI_v1及び出力信号値DXI_v2の和と補正値との関係ではなく、出力信号値DXI_v1及び出力信号値DXI_v2の差と補正値との関係から補正値算出関数を求めると、図23Bに示すような状態になる。図23Bに示すような補正値算出関数から各プリンタの補正値を算出すると、補正値に含まれる計算誤差が大きくなる。
したがって、本実施形態によれば、補正値に含まれる計算誤差を小さくできる補正値算出関数を利用できるのである。
本実施形態で製造されるプリンタは、このような補正値をメモリ63に記憶しているので、各プリンタは、負荷メジャメントの際に、CRモータ32に流れる電流値を精度良く算出することができる。
この所定範囲内でVp’、kE’及びR’を変えてDXI_subとIfuka_subを算出し、横軸をDXI_subとし縦軸をIfuka_subとするグラフにプロットしていく。なお、DXI_subとIfuka_subの算出には、CRモータ32の標準的な特性値(Vp、kE、R)と、所定範囲内で変動するモータの特性値(Vp’、kE’、R’)とが用いられる。本実施形態では、計算誤差が少ないので、プロットされた点は、ほぼ1直線上に並ぶ。そして、プロットされた点よりも上になるようにして、Ifuka_sub=a×DXI_sub+bで表される補正値算出関数を作成する。
このような補正値算出関数により補正値を算出すれば、算出された補正値は、各モータの特性に適した値になる。
なお、DXI_v1+DXI_v2は、設計上の値から算出可能なので、予め算出し、算出結果を定数として保存しても良い。
このような横軸DXI_subと補正値Ifuka_subの関係を示す補正値算出関数によれば、各モータの特性に適した補正値を算出することが可能になる。
但し、本実施形態によれば、たとえ大きい値の補正値が算出されたとしても、比較例(図23B)と比べて、計算誤差を小さくできる。
なお、モータにかかる負荷の変化が予め分かっていれば、負荷の大きさに応じて補正値算出関数を変えても良い。例えば、負荷の大きい場合の補正値算出関数と、負荷の小さい場合の補正値算出関数とをデータベースに記憶させていても良い。このようにすれば、計算誤差をより小さくすることができる。
本実施形態では、このようなCRモータに対する補正値の算出に特に有効である。但し、これに限られるものではなく、搬送モータに対して、前述の実施形態と同様に補正値を求めても良い。
20 搬送ユニット、21 給紙ローラ、22 搬送モータ(PFモータ)、
23 搬送ローラ、24 プラテン、25 排紙ローラ、
30 キャリッジユニット、31 キャリッジ、
32 キャリッジモータ(CRモータ)、
40 ヘッドユニット、41 ヘッド、
50 検出器群、51 リニア式エンコーダ、52 ロータリー式エンコーダ、
521 スケール、 522 検出部、
53 紙検出センサ、54 光学センサ、
60 コントローラ、61 インターフェース部、62 CPU、
63 メモリ、64 ユニット制御回路、
70 キャリッジユニット制御回路、71 位置演算部、72 減算器、
73 ゲイン、74 速度演算部、75 減算器、
76A 比例要素、76B 積分要素、76C 微分要素、
77 加算器、78 PWM回路、79A 加速制御部、79B タイマ、
100 印刷システム、110 コンピュータ、120 表示装置、
130 入力装置、130A キーボード、130B マウス、
140 記録再生装置、
140A フレキシブルディスクドライブ装置、
140B CD−ROMドライブ装置
Claims (8)
- (1)モータと、前記モータを制御するためのPID制御系と、補正値を記録するためのメモリとを備え、
前記PID制御系の積分要素の出力値と前記補正値に基づいて、前記モータに流れる電流値を算出する
プリンタの、前記補正値を算出する方法であって、
(2)前記モータの特性値は、所定範囲内で変動するものであり、
(3)前記モータの特性が標準であるときの、前記モータが第1の速度にて駆動されるときの前記積分要素の出力値、及び、前記モータが第2の速度にて駆動されるときの前記積分要素の出力値、の和に相当する値と、
モータの特性が変動したときの、前記モータが第1の速度にて駆動されるときの前記積分要素の出力値、及び、前記モータが第2の速度にて駆動されるときの前記積分要素の出力値、の和、
の差と前記補正値との関係を予め求め、
(4)製造対象となるプリンタの前記モータを第1の速度にて駆動して、そのときの前記積分要素の出力値を測定し、
そのプリンタの前記モータを第2の速度にて駆動し、そのときの前記積分要素の出力値を測定し、
測定された2つの前記出力値の和と前記関係とに基づいて補正値を決定する
ことを特徴とする補正値算出方法。 - 請求項1に記載の補正値算出方法であって、
前記プリンタは、印刷を行うとき前記モータにかかる負荷が変化することを特徴とする補正値算出方法。 - 請求項2に記載の補正値算出方法であって、
前記プリンタは、インクカートリッジを装着するためのキャリッジを備え、
前記モータは、前記キャリッジを移動させる
ことを特徴とする補正値算出方法。 - 請求項1〜3のいずれかに記載の補正値算出方法であって、
前記モータは、PWM制御により駆動されることを特徴とする補正値算出方法。 - 請求項1〜4のいずれかに記載の補正値算出方法であって、
前記プリンタが印刷を行うとき、前記プリンタは、前記モータに流れる電流値に基づいて、前記モータの発熱量を算出することを特徴とする補正値算出方法。 - 請求項1〜5のいずれかに記載の補正値算出方法であって、
前記プリンタが印刷を行うとき、前記プリンタは、前記モータに流れる電流値に基づいて、前記モータの停止時間を決定することを特徴とする補正値算出方法。 - モータと、前記モータを制御するためのPID制御系と、補正値を記録するためのメモリとを備え、
前記PID制御系の積分要素の出力値と前記補正値に基づいて、前記モータに流れる電流値を算出する
プリンタの、前記補正値を算出する方法であって、
モータの特性が変動したときの、前記モータが第1の速度にて駆動されるときの前記積分要素の出力値、及び、前記モータが第2の速度にて駆動されるときの前記積分要素の出力値、の和と、前記補正値との関係を予め求め、
製造対象となるプリンタの前記モータを第1の速度にて駆動して、そのときの前記積分要素の出力値を測定し、
そのプリンタの前記モータを第2の速度にて駆動し、そのときの前記積分要素の出力値を測定し、
測定された2つの前記出力値の和と前記関係とに基づいて補正値を決定し、
前記モータの特性値は、所定範囲内で変動するものであり、
前記モータの標準的な特性値と、前記所定範囲内で変動する前記モータの特性値とに基づいて、前記関係を求め、
前記関係は、
前記モータの特性が標準であるときの、前記モータが第1の速度にて駆動されるときの前記積分要素の出力値、及び、前記モータが第2の速度にて駆動されるときの前記積分要素の出力値、の和に相当する値と、
モータの特性が変動したときの、前記モータが第1の速度にて駆動されるときの前記積分要素の出力値、及び、前記モータが第2の速度にて駆動されるときの前記積分要素の出力値、の和と、
の差と前記補正値との関係であり、
前記プリンタは、印刷を行うとき前記モータにかかる負荷が変化するものであり、
前記プリンタは、インクカートリッジを装着するためのキャリッジを備えるものであり、
前記モータは、前記キャリッジを移動させ、PWM制御により駆動されるものであり、
前記プリンタは、前記プリンタが印刷を行うとき、前記モータに流れる電流値に基づいて、前記モータの発熱量を算出するものであり、
前記プリンタは、前記プリンタが印刷を行うとき、前記モータに流れる電流値に基づいて、前記モータの停止時間を決定するものであり、
前記プリンタは、
印刷を行うとき、前記モータにより移動対象物を加速させ、一定速度で前記移動対象物を移動させて、目標位置まで前記移動対象物を移動させるものであり、
前記印刷を行う前に、前記一定速度で前記移動対象物を移動させる際の前記積分要素の出力値を測定するものであり、
印刷を行うときに、前記一定速度で前記移動対象物を移動させる際に前記モータに流れる電流を、前記積分要素の出力値と前記補正値に基づいて、算出するものである
ことを特徴とする補正値算出方法。 - (1)モータと、前記モータを制御するためのPID制御系と、補正値を記録するためのメモリとを備え、
前記PID制御系の積分要素の出力値と前記補正値に基づいて、前記モータに流れる電流値を算出する
プリンタを、製造する方法であって、
(2)前記モータの特性値は、所定範囲内で変動するものであり、
(3)前記モータの特性が標準であるときの、前記モータが第1の速度にて駆動されるときの前記積分要素の出力値、及び、前記モータが第2の速度にて駆動されるときの前記積分要素の出力値、の和に相当する値と、
モータの特性が変動したときの、前記モータが第1の速度にて駆動されるときの前記積分要素の出力値、及び、前記モータが第2の速度にて駆動されるときの前記積分要素の出力値、の和、
の差と前記補正値との関係を予め求め、
(4)製造対象となるプリンタの前記モータを第1の速度にて駆動して、そのときの前記積分要素の出力値を測定し、
そのプリンタの前記モータを第2の速度にて駆動し、そのときの前記積分要素の出力値を測定し、
測定された2つの前記出力値の和と前記関係とに基づいて決定される補正値を、そのプリンタの前記メモリに記録する
ことを特徴とするプリンタ製造方法。
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