JP4540155B2 - 光アイソレータ - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光源から出射された光を各種光学素子や光ファイバに導入する際に生じる戻り光を除去するために用いられる光アイソレータに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の光アイソレータ用素子において、レーザー等の光源から出射した光は、各種光学素子や光ファイバに入射されるが、入射光の一部は各種光学素子、光ファイバを透過する際、反射や散乱を起こす。反射や散乱した光の一部は光源側に戻るが、この戻り光を遮断するため、光アイソレータが用いられる。
【0003】
図2(a)にこの種の光アイソレータの外観図、(b)に側断面図を示す。この種の光アイソレータは、偏光子3と検光子4の間に平板状のファラデー回転子2を設置し、これら3つの部品をリング状の磁石5内にホルダ7を介して配置することによって構成されていた。ファラデー回転子2は飽和磁界強度において所定の波長をもつ光の偏光面を45゜回転する厚みを持ち、偏光子3と検光子4はそれぞれの透過方向が45゜回転方向にずれるように回転調整されて構成されている。
【0004】
このような構成の光アイソレータは、ファラデー回転子2と偏光子3と検光子4を部品別にホルダ7に固定する必要があり、このために部品点数が多く、また、製品ごと別個に回転調整作業が必要であり組立工数も多くかかる。また、光アイソレータを半導体レーザーモジュールに組み込む際には、レーザー光の損失を最小にするために、半導体レーザーからの出射光の偏波面と光アイソレータの偏光子3の偏波面を一致させる必要があるが、円筒形状であるため、光を通しながら回転調整する必要があり、光アイソレータの組み込み工数が多くかかっていた。
【0005】
このため、図3に示すように、平板状の基板6上に、正方形のファラデー回転子2、偏光子3、検光子4、直方体の磁石5を設置することにより、偏波面の調整を行うこと無しに半導体レーザーモジュールに組み込める光アイソレータが提案されていた(特開平10−227996号公報参照)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図3に示す従来の光アイソレータでは、光学素子8(ファラデー回転子2、偏光子3および検光子4の総称)と直方体の磁石5が平板状の基板6に取りつけられているが、光学素子8の上部が磁石5に覆われず開放されている構造のため、上部からの他の磁界の影響を受けやすく、光学特性が安定しなかった。しかも平板状の基板6に光学素子8および磁石5の位置を決める構造が無いため、それぞれの位置が安定せず、光学特性が安定しないという課題があった。
【0007】
又、偏光子3、検光子4が正方形であるため、偏波方向が外観から判断できないという問題も生じていた。
【0008】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、平板状のファラデー回転子、偏光子、検光子の各光学素子を基板上に載置するとともに、上記ファラデー回転子を覆うようにアーチ状の磁石を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、前記基板は、前記ファラデー回転子、前記偏光子、および前記検光子の配列方向厚みと同じ長さを有するとともに、前記基板の前記長さ方向の一端から他端にわたって凹部設けられ、該凹部に前記ファラデー回転子、前記偏光子、前記検光子を固定したことを特徴とする。
【0010】
さらに、前記偏光子、ファラデー回転子、検光子を長方形状としたことを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施形態を図を用いて説明する。
【0012】
図1(a)は、半円筒形の磁石を使用した本発明の光アイソレータの実施形態を示す斜視図、(b)は縦断面図である。
【0013】
光アイソレータ1は、平板状ファラデー回転子2、偏光子3、および検光子4を非磁性材からなる基板6上に載置し、これらを覆うように半円筒形状としたアーチ状の磁石5を設置した構造となっている。また、他の実施形態を図1(c)(d)に示すように、磁石5として箱形アーチ状のものを用いることもできる。
【0014】
本発明におけるアーチ状の磁石5とは、上記のような半円筒形状または箱型アーチ状など、ファラデー回転子2の三辺方向を覆うような形状のことを言う。そして、磁石5をアーチ状とし、基板6の材質を非磁性体とすることで、ファラデー回転子2の三辺方向が磁石5に、底面が非磁性体に覆われる構造になり、外部からの磁界の影響を受けず、さらに、半導体レーザーモジュールのパッケージに組み込まれる際に、磁界が外部に漏れず、安定した光学特性を持った光アイソレータ1が実現できる。
【0015】
非磁性体の基板6の材質としては、非磁性合金、セラミック、ガラス基板などがあげられる。ただし、応力緩和の為に、基板6の材質と光学素子8の線膨張係数をできるだけ近づける必要がある。
【0016】
また、光学素子8を基板6上に整列させて固定する際、基板6の凹部9に光学素子8を配列し、底面もしくは側面の片側もしくは両側にて接合材を用いて固定することが好ましい。凹部9を設けることにより、各光学素子8の配列において光軸のずれが無くなり、また、光軸の回転方向への各光学素子8のずれも無くなり、偏光子3と検光子4の偏波方向の角度差を正確に45度に保ったまま固定することが可能となる。
【0017】
なおファラデー回転子2の側面は全て磁石5で覆われる必要は無いが、磁気特性上、側面の一部でも磁石5で覆われることが望ましい。その理由としては、ファラデー回転子2の側面の一部にでも磁石5に覆われることにより、磁石5の磁力がファラデー回転子2の底面である基板6の凹部9に接触している部分にまで飽和磁界強度を与えることが出来るからである。
【0018】
また、光の集光などを行う非球面レンズ、ロッドレンズなどを、本発明の光アイソレータ1と一体化することも応用例として可能であるが、その際、各レンズの光軸が光学素子8の光軸と一致するように、予め基板6の凹部9に段差を設けておけば、容易に光アイソレータと各レンズを一列状に配置でき、半導体レーザモジュールに組み立てる際のレンズと光アイソレータの光学的な位置調整の工程を削減できる。
【0019】
光学素子8、磁石5と基板6との接合材としては、半田、低融点ガラスなどの無機材料、接着剤などの有機材料がある。
【0020】
無機材料を使用する場合は、各光学素子8は個別に基板6に接合する。底面もしくは側面にて固定し、光路上に接合材が存在しないようにする。
【0021】
接着剤を使用する場合は、各光学素子8は個別に基板6に接合するか、もしくは、予め接着剤にて接着一体化してチップ状にし、そのチップを基板6に接合するかのどちらかの手段で接合する。前者の場合は光路上に接着剤が存在しないが、後者の場合は光路上に接着剤が存在するため、接着剤と各光学素子8の屈折率の整合が必要となる。そのためには、接着剤には屈折率が約1.5のものを選定し、各光学素子の接着面には屈折率整合のための反射防止膜を付けるとよい。ただし、光学素子の屈折率が接着剤の屈折率と非常に近い場合は、反射防止膜を付ける必要は無い。
【0022】
偏光子3と検光子4の偏波方向は、ファラデー回転子2を挟んで正確に45度である必要がある。このため、偏光子3、検光子4はともに矩形であることが望ましいが、正方形であると、その偏波方向がどの辺を基準にしているか外観からは判別不可能となるため、長方形状であることが望ましい。偏光子3としては、長方形状に切り出す長辺をその偏波方向に平行もしくは垂直にしておくとよい。この偏光子3、検光子4を、同様に長方形状に切り出したファラデー回転子2を挟んで基板6の凹部9に固定することで、容易に光アイソレータの光学素子配置が実現できる。
【0023】
【実施例】
ここで、以下に示す方法で実験を行った。
【0024】
本発明の光アイソレータ1と、図3に示す従来の光アイソレータ1をそれぞれ10個ずつ作製し、光学特性を測定した。
【0025】
まず、本発明の光アイソレータ1については、偏光子3、検光子4にはコーニング社製の偏光ガラス(商品名ポーラコア1310HC)を用い、ファラデー回転子2には希土類鉄ガーネット単結晶を使用した。偏光子3は偏波方向を長方形の長辺方向に一致させて切り出し、検光子4は偏波方向を長方形の長辺方向と45°の方向にして切り出した。各光学素子8は長方形とし、光学素子8の短辺の長さは1mm、長辺の長さは1.1mmとした。光学素子8の加工はダイシングソーを用いて行った。各光学素子8の表面には、反射防止膜を施し、側面には、金の薄膜層を形成して、半田固着が可能であるようにした。
【0026】
取り付け用の基板6には、縦2mm×横4mm×厚さ0.5mmのステンレス(SUS304)を用い、この平板の上面に、幅1.1mm、深さ0.3mmの矩形の溝をつけて凹部9とし、表面にニッケル、金をメッキし、半田固定が可能であるようにした。
【0027】
また、磁石5としては、縦1.2mm×横3.8mm×厚さ2mmのサマリウムコバルト磁石に幅1.1mm、深さ0.8mmの矩形の凹部を付け、表面にニッケル、金をメッキし、半田固定が可能であるようにした。
【0028】
これらの光学素子8を基板6上の凹部9にはめ込むようにして配列し、各光学素子8の両側面に金80%、錫20%を含む半田泊をのせ、さらにその上から、光学素子8の上にかぶせるように磁石5を基板6に乗せ、290℃に加熱し、光学素子8及び磁石5を取り付け基板6に固着した。なお、予め基板6に形成した矩形の凹部9の幅と、光学素子8の長辺の長さとを一致させ、凹部9の幅方向と光学素子8の長辺方向が一致するように光学素子8を配列した。その後、磁石5を20000Gの磁界で着磁し、10台の光アイソレータ1を作製した。
【0029】
次に、図3に示す従来の光アイソレータ1についても、本発明の光アイソレータ1と同じ材質、同じ形状で、同じ処置を施した光学素子8を用いた。
【0030】
取り付け用基板6は、縦2mm×横4mm×厚さ0.5mmのステンレス(SUS304)平板を使用し、表面にニッケル、金をメッキし、半田固定が可能であるようにした。
【0031】
磁石5としては、縦1.2mm×横1.2mm×厚さ2mmの直方体形状のサマリウムコバルト磁石を二つ使用し、それぞれ表面にニッケル、金をメッキし、半田固定が可能であるようにした。
【0032】
これらの部品を図3に示すように組み立て、金80%、錫20%を含む半田箔を用いて固定した。組み立て方法は、本発明の光アイソレータ1と同様であるが、取り付け用基板6が平板状であり、光学素子8と磁石5の位置決め用構造を持たないため、それぞれの部品の基板への取り付けの際は、仮押さえができるような固定用の冶具を使用した。
【0033】
本発明の光アイソレータ1と従来の光アイソレータ1の光学特性を表1に示す。
【0034】
この結果より、図3に示す従来の光アイソレータ1では、順方向損失、逆方向損失共に平均値が悪く、ばらつきも大きな値を示した。これは、取り付け用基板6が平板状であり、位置決め用の構造が無かったため、各光学素子8の整列および固定において、光軸に対して回転方向への微小なずれが起こったためである。
【0035】
これに対して、本発明の光アイソレータ1は、順方向損失の平均値及び逆方向損失の平均値は共に安定した値を示しており、ばらつきも共に小さかった。
【0036】
【表1】
Figure 0004540155
【0037】
次に、前記サンプルに、4000Gの磁界を印加し、外部磁界に対する影響を確認した。本発明の光アイソレータ1と従来の光アイソレータ1の4000G外部磁界を受けた状態での光学特性を表2に示す。
【0038】
図3に示す従来の光アイソレータ1では、およそ2〜5dBの逆方向損失の劣化が起こった。これは、光学素子8上部が磁石に覆われず開放されているため、上部からの磁界の影響を受けて、ファラデー回転子2に飽和磁界が加わらなくなったためである。
【0039】
これに対し、本発明の光アイソレータ1は、順方向損失及び逆方向損失共に安定した値を示した。
【0040】
【表2】
Figure 0004540155
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、平板状のファラデー回転子、偏光子、検光子の各光学素子を基板上に載置するとともに、上記ファラデー回転子を覆うようにしてアーチ状の磁石を備えたことにより、基板の材質を非磁性体とすれば、ファラデー回転子の三辺方向が磁石に、底面が非磁性体に覆われる構造になり、外部からの磁界の影響を受けず、安定した光学特性をもった光アイソレータが実現できる。
【0042】
また本発明によれば、基板に凹部を設け、該凹部にファラデー回転子、偏光子、検光子を固定することにより、光学素子の配列において光軸のずれがなくなり、また、光軸の回転方向への各光学素子のずれもなくなり、偏光子と検光子の偏波方向の角度差を正確に45度に保ったまま固定することが可能となり、安定した光学特性をもった光アイソレータが実現できる。
【0043】
さらに、本発明によれば、偏光子、ファラデー回転子、検光子を長方形状とし、偏光子、検光子の偏波面を長辺を基準として設定することで、外観から偏光子、検光子の偏波面が判別可能となり、容易に光アイソレータの組立を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の光アイソレータの斜視図、(b)は同じく縦断面図、(c)は本発明の光アイソレータの他の実施形態を示す斜視図、(d)は同じく縦断面図である。
【図2】(a)は従来の円筒型光アイソレータの斜視図であり、(b)は縦断面図である。
【図3】従来の平板型の光アイソレータの斜視図である。
【符号の説明】
1:光アイソレータ
2:ファラデー回転子
3:偏光子
4:検光子
5:永久磁石
6:基板
7:ホルダー
8:光学素子(ファラデー回転子2、偏光子3、検光子4の総称)
9:凹部

Claims (2)

  1. 平板状のファラデー回転子、偏光子、検光子の各光学素子を基板上に載置するとともに、上記ファラデー回転子を覆うようにアーチ状の磁石を備えた光アイソレータであって、前記基板は、前記ファラデー回転子、前記偏光子、および前記検光子の配列方向厚みと同じ長さを有するとともに、前記基板の前記長さ方向の一端から他端にわたって凹部が設けられ、該凹部に前記ファラデー回転子、前記偏光子、前記検光子を固定したことを特徴とする光アイソレータ。
  2. 前記偏光子、ファラデー回転子、検光子を長方形状としたことを特徴とする請求項1記載の光アイソレータ。
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