本発明は、超音波走査を行って超音波断層像を作成する超音波診断装置に関する。
生体内へ超音波を送信し、生体組織からの反射波を受信して電気信号に変換し、生体の状態を画像として観察し得るように構成した超音波診断装置は、生体内の様子をリアルタイムで観察することができるために、近年では広く普及している。このような超音波診断装置は、種々の形態のものがあるが、例えば、超音波振動子を先端に設けた超音波プローブが普及しているものの例として挙げられる。この超音波プローブは、口、鼻、肛門から消化管や気管等の体腔へ挿入され、生体内において超音波走査を行い、超音波断層像を取得するものとなっている。
こうした超音波プローブタイプの超音波診断装置の中でも、磁気や加速度等を用いて、取得した超音波断層像の位置の情報と配向の情報とを遠隔的に検出し、検出した位置情報および配向情報を超音波断層像と関連付ける技術が知られている。このような超音波診断装置では、さらに、3次元データを作成し、作成した3次元データを切り出して任意の断面を表示させたり、作成した3次元データから立体的な画像を作成して表示させたりすることが可能となっているものがある。加えて、超音波断層像と、超音波を走査する位置に対応した模式図と、を同一画面に表示する技術も従来より知られている。これによれば、被検体のどの部位を観察しているかが分かり易いために、所望の断層面を簡単に描出することが可能となっている。
例えば、特開2004−113628号公報、およびその関連した国際特許WO2004/028375号公報には、超音波プローブ型の第1の超音波診断装置として、先端に設けた硬性部と、この硬性部に設けた送信コイルと、該硬性部に設けた単一素子の超音波振動子と、を備えるメカニカルラジアル走査型超音波内視鏡が記載され、さらに、超音波プローブ型の第2の超音波診断装置として、先端に設けた硬性部と、この硬性部に設けた送信コイルと、該硬性部の挿入軸に垂直な平面内に設けた円環状の超音波振動子アレイと、を備える電子ラジアル走査型超音波内視鏡が記載されている。
これらの超音波診断装置における送信コイルは、挿入部の軸方向と直交する2方向を軸として導線が巻回された構造となっている。さらに、この送信コイルの位置と方向とを含んだ位置配向データは、位置算出回路により算出されるようになっている。そして、術者がラジアル走査を行いながらこの超音波内視鏡を手引きすることにより、複数回のラジアル走査で得られた複数の超音波断層像に基づく立体的な断層並列像を得ることができるようになっている。
また、上記公報には、超音波プローブ型の超音波診断装置として、先端に設けた硬性部と、この硬性部に設けた送信コイルと、該硬性部の挿入軸を含む面内に設けた超音波振動子アレイと、前記挿入軸に沿った管状のチャンネルと、を備えたコンベックス走査型超音波内視鏡も記載されている。
この超音波診断装置における送信コイルも、上述と同様に、挿入部の軸方向と直交する2方向を軸として導線が巻回された構造となっている。さらに、この送信コイルの位置と方向とを含んだ位置配向データが、位置算出回路により算出されるのも同様である。そして、術者がコンベックス走査を行いながらこの超音波内視鏡を挿入軸の周りに手でねじることにより、複数回のコンベックス走査で得られた複数の超音波断層像に基づく立体的な断層並列像を得ることができるようになっている。
一方、特開平10−248852号公報、およびその関連した米国特許6248074号公報には、超音波プローブ型の超音波診断装置として、超音波を発生する超音波振動子と、カテーテル等を挿通するための挿通部と、を有し、超音波振動子を振動させて走査することにより超音波断層像を得る超音波内視鏡が記載されている。この超音波診断装置は、磁気センサまたは磁気ソースを先端部に設けた位置検出カテーテルを、前記挿通部に挿通して用い、該磁気センサまたは磁気ソースの、位置および傾斜角(X,Y,Z,ψ,φ,θ)を算出するようになっている。
さらに、特開2000−113629号公報には、超音波プローブの挿入端に実装された磁場を発生する送信コイルと、この送信コイルにより発生された磁場を検出するための受信コイルと、この受信コイルに接続された位置配向検出部と、を備え、位置配向検出部が出力する「超音波走査位置を示す信号」に基づいて、模式図データ記憶部から模式図データを抽出する超音波診断装置が記載されている。この超音波診断装置は、超音波断層像と、超音波を走査する位置に対応した模式図と、を同一画面に表示するようになっている。これによれば、術者が被検体のどの部位を観察しているかが分かり易いために、所望の断層面を簡単に描出することが可能となっている。
特開2004−113628号公報
国際特許WO2004/028375号公報
特開平10−248852号公報
米国特許6248074号公報
特開2000−113629号公報
ところで、生体内で超音波を走査し、3次元データを作成して任意の断面を表示させたり、立体的な画像を作成して表示させたり、超音波を走査する位置に対応した模式図を表示させたりする用途の超音波診断装置では、超音波断層像の位置および配向を求めるために、超音波断層像の位置についての3つの自由度と、配向についての3つの自由度と、の合計6つの自由度の情報を検出する必要がある。これに対して、上述した特開2004−113628号公報およびWO2004/028375号公報、特開平10−248852号公報および米国特許6248074号公報、特開2000−113629号公報に記載されている超音波診断装置は、何れも、超音波振動子の近傍にコイルを設けて、磁場により自由度を検出する手段を採用している。しかし、巻線軸が単軸となっているコイルを1個設けるだけでは、上記6つの自由度の全てを検出することは不可能である。何故ならば、単軸のコイルを巻線軸の周りに回転させたとしても、コイルを流れる電流により励起される磁場の磁束、もしくは磁場により誘起される電流が変化することはないために、単軸のコイルでは巻線軸周りの配向を検出することができず、結局、5つの自由度までしか検出することができないためである。
そのために、特開2004−113628号公報、およびWO2004/028375号公報に記載されている種々の超音波診断装置は、硬性部に設ける送信コイルを、挿入部の軸方向と直交する2方向を軸として導線が巻回された構造とするようにしたものとなっている。このような構造の送信コイルを採用すると、上述した6つの自由度を検出することが可能になる反面、送信コイルが大きくなって、以下に説明するような2つの課題が生じていた。
まず、第1の課題は、送信コイルの大型化に伴って超音波プローブの外径が太くなってしまい、術者が超音波プローブを挿入する際に、被検者に苦痛を与える可能性があるということである。
次に、第2の課題は、送信コイルの大型化に伴って超音波プローブの先端の硬性部が長くなってしまい、術者が超音波プローブを挿入する際に、上述と同様に、被検者に苦痛を与える可能性があるということである。加えて、この場合には、術者が被検者の体腔内を観察する際に、超音波プローブ先端に設けた送信コイルが体腔内のあちこちに接触する可能性があり、超音波プローブの操作性が必ずしも良くないということがあった。
また、特開平10−248852号公報、および米国特許6248074号公報に記載されている超音波診断装置は、上述したように、挿通部に挿通する位置検出カテーテルの先端部に磁気センサまたは磁気ソースを設けて、その位置および傾斜角(X,Y,Z,ψ,φ,θ)を算出するよう構成したものとなっているために、上記2つの課題が解決されるかのように思われる。しかし、6つの自由度を検出することができるように、直交する2方向を軸として導線を巻回した磁気センサまたは磁気ソースを、実際に挿通部に挿通することができるようにするためには、極小のサイズに構成する必要があって、実現することは技術的に難しい。従って、実際にはサイズ的にやや大きめの磁気センサまたは磁気ソースを用いることになり、位置検出カテーテルの径がやや太くなってしまう。これに従って、挿通部の径や、この挿通部を備える超音波プローブの外径を太くしなければならなかった。そのために、上述した第1の課題は、現在でも事実上、解決することができていない。
加えて、特開2000−113629号公報に記載されている超音波診断装置は、送信コイルの実装方法や「超音波走査位置を示す信号」の内容、特に自由度についての具体的な言及がないために、同様に、上述した第1、第2の課題を解決することができるものとはなっていない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、超音波プローブの、外径が太くなるのと、先端硬性部が長くなるのと、を極力抑制しながら、超音波断層像の位置および配向に係る6つの自由度の情報を検出することができる超音波診断装置を提供することを目的としている。
上記の目的を達成するために、第1の発明による超音波診断装置は、超音波送受波手段を備え生体内へ挿入された状態で該超音波送受波手段により超音波走査を行い得るように構成された超音波プローブと、前記超音波プローブから得られる超音波信号に基づき超音波断層像を作成する超音波断層像作成手段と、磁場を送信する送信手段と、前記送信手段が送信した前記磁場を受信する受信手段と、前記受信手段が受信した前記磁場に基づき前記超音波断層像の配向を算出する配向算出手段と、を具備した超音波診断装置において、前記送信手段と前記受信手段との少なくとも一方は、複数のコイルを含んで構成されていて、前記複数のコイルの内の少なくとも2つのコイルは、各々の巻線軸同士が斜交するか、または各々の巻線軸同士がねじれの位置にあってかつ一方の巻線軸の方向と他方の巻線軸の方向とが非直角となるように、前記超音波送受波手段に対して固定した位置に設けられ、前記配向算出手段は、前記磁場に基づき前記2つのコイルの配向情報を取得し、該2つのコイルの配向情報に基づいて、前記超音波断層像の前記配向を算出するものである。
また、第2の発明による超音波診断装置は、上記第1の発明による超音波診断装置において、前記2つのコイルが配設された可撓性を有するコイルプローブをさらに具備し、前記超音波プローブは、前記生体内への挿入側の開口である第1の開口と、前記挿入側とは反対側の開口である第2の開口と、を備えた、前記コイルプローブを挿通可能な管状のチャンネルを有して構成されたものであり、前記2つのコイルの、各々の巻線軸同士が斜交すること、または各々の巻線軸同士がねじれの位置にあってかつ一方の巻線軸の方向と他方の巻線軸の方向とが非直角であること、は、前記コイルプローブが前記第2の開口から前記チャンネルへ挿通されることによりなされる。
さらに、第3の発明による超音波診断装置は、上記第2の発明による超音波診断装置において、前記チャンネルは湾曲もしくは屈曲した部分を有して構成されたものであり、前記2つのコイルの、各々の巻線軸同士が斜交すること、または各々の巻線軸同士がねじれの位置にあってかつ一方の巻線軸の方向と他方の巻線軸の方向とが非直角であること、は、該2つのコイルが、前記湾曲もしくは屈曲した部分を挟んで配置されることによりなされたものである。
第4の発明による超音波診断装置は、上記第2の発明による超音波診断装置において、前記超音波プローブは、特定の支点の周りに回動することにより、前記第1の開口から延出されるコイルプローブを湾曲もしくは屈曲させるための起上台を有して構成されたものであり、前記2つのコイルの、各々の巻線軸同士が斜交すること、または各々の巻線軸同士がねじれの位置にあってかつ一方の巻線軸の方向と他方の巻線軸の方向とが非直角であること、は、該2つのコイルが、前記湾曲もしくは屈曲した部分を挟んで配置されることによりなされたものである。
第5の発明による超音波診断装置は、上記第2の発明による超音波診断装置において、前記コイルプローブは、前記チャンネルへの挿通位置が、前記2つのコイルの、各々の巻線軸同士が斜交すること、または各々の巻線軸同士がねじれの位置にあってかつ一方の巻線軸の方向と他方の巻線軸の方向とが非直角であること、が達成され得る所定位置となったこと、を示すための指標を有して構成されたものである。
第6の発明による超音波診断装置は、上記第5の発明による超音波診断装置において、前記指標は、その位置が前記第2の開口の位置と略一致したときに、前記所定位置となったことを示すものである。
第7の発明による超音波診断装置は、上記第1の発明による超音波診断装置において、前記配向算出手段は、前記2つのコイルの巻線軸の方向を、該2つのコイルの配向情報として算出するものである。
第8の発明による超音波診断装置は、上記第7の発明による超音波診断装置において、前記配向算出手段は、前記2つのコイルの巻線軸の方向の外積を算出し、該算出結果に基づき、前記超音波断層像の前記配向を算出するものである。
第9の発明による超音波診断装置は、上記第7の発明による超音波診断装置において、前記超音波送受波手段は、前記生体内へ挿入される前記超音波プローブの挿入軸に垂直な平面内で超音波走査を行うものであり、前記配向算出手段は、前記2つのコイルの巻線軸の方向に基づいて、前記超音波断層像内の特定の方向を算出することにより、前記超音波断層像の前記配向を算出するものである。
第10の発明による超音波診断装置は、上記第7の発明による超音波診断装置において、前記超音波送受波手段は、前記生体内へ挿入される前記超音波プローブの挿入軸に平行な平面内で超音波走査を行うものであり、前記配向算出手段は、前記2つのコイルの巻線軸の方向に基づいて、前記超音波断層像の法線の方向を算出することにより、前記超音波断層像の前記配向を算出するものである。
第11の発明による超音波診断装置は、上記第1の発明による超音波診断装置において、前記超音波断層像作成手段により作成された前記超音波断層像と、前記配向算出手段により算出された前記配向と、を関連付けて、3次元データと3次元画像との少なくとも一方を作成する画像処理手段をさらに具備したものである。
第12の発明による超音波診断装置は、上記第1の発明による超音波診断装置において、前記超音波断層像作成手段により作成された前記超音波断層像と、前記配向算出手段により算出された前記配向と、を関連付けて、前記生体内における配向を案内するガイド画像を作成する画像処理手段をさらに具備したものである。
本発明の超音波診断装置によれば、超音波プローブの、外径が太くなるのと、先端硬性部が長くなるのと、を極力抑制しながら、超音波断層像の位置および配向に係る6つの自由度の情報を検出することができる。
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図1から図9は本発明の実施例1を示したものであり、図1は超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
本実施例1の超音波診断装置は、超音波プローブ1と、超音波断層像作成手段たる超音波観測装置2と、IEEE1394コンバータ3と、配向算出手段たる位置配向データ算出装置4と、受信手段たる受信アンテナ5と、プレート6と、画像処理手段たる超音波画像処理装置7と、マウス8aと、キーボード8bと、表示装置9と、を含み、それぞれを後述するように電気的に接続して構成されている。
超音波プローブ1は、体腔内に挿入される先端側の挿入部11と、この挿入部11を手元側で操作するためのものであり硬性のある材料により形成された操作部12と、を含んで構成されている。
前記挿入部11は、さらに、先端側に設けられていてステンレス等の硬性のある材料により形成された硬性部13と、この硬性部13の手元側に連設されていて可撓性のある材料で形成された可撓部14と、を含んで構成されている。
硬性部13は、その内部に、挿入軸の周りに回転可能となるように設けられた超音波送受波手段たる超音波振動子15と、この超音波振動子15の近傍において該超音波振動子15に対する位置を固定して設けられた送信手段たる送信コイル16と、を備えている。
超音波振動子15は、可撓部14内を挿通された可撓性のある図示しないフレキシブルシャフトの一端側に接続されており、該フレキシブルシャフトの他端側は操作部12に配設されている後述するモータ17に接続されている。そして、超音波振動子15は、モータ17により挿入軸周り(図1の白抜き矢印方向)に回転されながら、超音波の送受を繰り返す、いわゆるラジアル走査を実施することにより、該挿入軸に垂直な平面の超音波断層像を解析するのに必要な超音波信号を取得するようになっている。
前述のように、操作部12は、超音波振動子15を回転させるためのモータ17を内蔵しており、このモータ17には、その回転軸の角度を検出して出力するためのロータリーエンコーダ18が接続されている。また、該モータ17は、制御線を介して超音波観測装置2と接続されており、該超音波観測装置により回転状態を制御されるようになっている。
一方、硬性部13に設けられた送信コイル16は、巻線軸の方向がラジアル走査の走査平面に垂直な方向と一致するように固定されている第1のコイル16aと、巻線軸の方向が前記走査平面に垂直な方向に対して斜めになる方向(非直角の方向)となるように固定されている第2のコイル16bと、を含んで構成されており、これらのコイル16a,16bは、それぞれ独立に、前記位置配向データ算出装置4と接続されている。
ここで、図2は、硬性部13に配設されている送信コイル16の配置を拡大して示す図である。この図2においては、コイル16aの巻線軸Kaとコイル16bの巻線軸Kbとを、それぞれのコイル導線の周回の中心軸として定義し、点線により示している。このとき、これらの巻線軸KaとKbがなす角度はγ1 であり、このγ1 は90°を除く角度となっている。なお、この図2においては、角度γ1 が90°未満である場合を図示しているが、90°よりも大きくかつ180°よりも小さい角度であっても構わない。
また、コイル16aの巻線軸Ka上の、巻線の始端と終端との中点を、コイル16aの中央位置Aと定義する。同様に、コイル16bの巻線軸Kb上の、巻線の始端と終端との中点を、コイル16bの中央位置Bと定義する。
さらに、コイル16aの巻線軸Kaの方向を示す方向ベクトルをVA (なお、ベクトルは、図面や数式においては肉太文字で表示しているが、文章中においては通常の太さの文字で代用している。)、コイル16bの巻線軸Kbの方向を示す方向ベクトルをVB 、としてそれぞれ定義し、これらの各ベクトルVA ,VB は、それぞれ単位ベクトルに正規化されているものとする。なお、各巻線軸Ka,Kbの方向にはそれぞれ正負の2方向があるために、上述したような定義だけでは、方向ベクトルVA ,VB を一意的に定めることはできない。しかし、位置配向データ算出装置4は、コイル16a,16bを構成する導線内に電流を流す際に、正方向の電流を流したときに、コイル導線の周回方向に対して右ネジが進む方向が方向ベクトルVA ,VB の正方向であるとして、算出を行うようになっている。また、コイル16a,16bを構成する導線内に流れる電流の正方向および負方向は、該位置配向データ算出装置4が定義するようになっている。このような構成により、方向ベクトルVA ,VB は、何れも一意的に定義されることになる。
また、図2においては、コイル16aとコイル16bとが同一平面上にあって、各巻線軸Ka,Kbが一点Pで交わるかのように図示している。具体的な構成の一例としては、このようにコイル16aとコイル16bとを構成しても構わないが、本実施例はこれに限定されるものではない。すなわち、本実施例では、より一般的なケース、つまり、巻線軸Kaと巻線軸Kbとが同一平面上には存在せず、かつ3次元空間上の一点で交わることはないケース、すなわち、いわゆるねじれの位置にある場合について説明する。従って、以下の説明においては、図2は、コイル16bの巻線軸Kbが、コイル16aの巻線軸Kaと同一平面上に乗って互いに交わるように、該巻線軸Kbを、巻線軸Kbと巻線軸Kaとの最短距離を与える線分に沿って平行移動して得た図であるものとする。従って、このときには図2は、コイル16b自体と、コイル16bの中央位置Bと、コイル16bの巻線軸Kbの方向ベクトルVB と、が、該巻線軸Kbと同じ分だけ平行移動した状態を図示したものとなっている。
超音波プローブ1の操作部12は、超音波観測装置2と電気的に接続されている。すなわち、超音波観測装置2は、モータ17へ回転制御信号を出力するとともに、超音波振動子15からの超音波信号と、ロータリーエンコーダ18からの回転軸の角度情報と、を受信するようになっている。さらに、この超音波観測装置2には、図示しないアナログビデオ出力端子が設けられている。
一方、IEEE1394コンバータ3には、図示しないアナログビデオ入力端子が設けられており、アナログビデオ信号線を介して、超音波観測装置2のアナログビデオ出力端子と接続されている。さらに、このIEEE1394コンバータ3には、図示しないIEEE1394規格のIEEE1394出力端子が設けられている。
また、位置配向データ算出装置4は、プレート6と、送信コイル16と、受信アンテナ5と、に電気的に接続されている。さらに、この位置配向データ算出装置4には、図示しないRS−232C規格のRS−232C出力端子が設けられている。
受信アンテナ5は、略円盤型をなす筐体の内部に、磁場を検出するための複数のコイルを、巻線軸が異なる向きとなるように内蔵して構成されている。
図3は、プレート6の外形を示す斜視図である。
プレート6は、略楕円形の盤状をなす筐体の内部に、磁場を発生するためのコイルを3個内蔵して構成されており、これら3個のコイルは同一直線上になく、かつ互いに独立した方向となるように(つまり、3個のコイルに係る3つの巻線軸の方向ベクトルが、同一方向ではなく、互いに独立した方向ベクトルとなるように)配置されている。
このプレート6は、図3の下面側が体表接触面6aとなっており、図示しない付属のベルトを用いて、この体表接触面6aが被検者の体表に接するように、該被検者にくくり付けられるようになっている。該プレート6は、被検者に固有の座標系(図3に示すようなx”y”z”座標系)を与えるためのものであり、受信アンテナ5を基準とする座標系(後述する図4に示すようなxyz座標系)をグローバルな座標系であるとすると、ローカルな座標系であると捉えることができる。
2つの座標系がある場合に、一方の座標系で測定した、他方の座標系の原点の位置が分かる必要がある。そこで、プレート6の基準位置Lを、例えば以下に示す第1から第3の基準位置の何れかに定義しておくものとする。なお、本実施例においては、これら3つの定義の何れを採用しても構わない。
第1の基準位置は、3つのコイル位置の重心を採用するものである。
第2の基準位置は、第1のコイル位置と第2のコイル位置との中点と、第3のコイル位置と、を結ぶ直線の中点を採用するものである。
第3の基準位置は、1つのコイルをプレート6の中央に配置して、この中央に配置されたコイル位置を採用するものである。
超音波画像処理装置7は、IEEE1394取込回路21と、RS−232C取込回路22と、画像記憶部23と、画像処理回路24と、表示回路25と、制御回路26と、を有して構成されている。
これらの内のIEEE1394取込回路21と、RS−232C取込回路22と、画像記憶部23と、画像処理回路24と、表示回路25と、の各回路は、それぞれ、IC(Integrated Circuit)チップを搭載した印刷基板(PCB:Printed Circuit Board)の形態で構成されている。
また、制御回路26は、マザーボード(mother board)と呼ばれるやはり印刷基板の形態で構成されており、この印刷基板上には、中央演算ユニット(Central Processing Unit、図1では単にCPU)と呼ばれる高速演算用のICチップと、タイマと、メモリと、バス(bus)と呼ばれる信号線の中央幹線と、が搭載されている。
超音波画像処理装置7を構成する上記各回路の内、制御回路26以外の各回路は、制御回路26上のCPUと、あるいは他の回路と、の間でプログラム、コマンド、データを送受することができるように、制御回路26上のバス(bus)と接続されている。そして、制御回路26上のCPUは、バスを制御しながら、各回路へ各種の指令を発するようになっている。さらに、制御回路26は、超音波観測装置2、キーボード8b、マウス8aと、各々個別の制御線を介して直接接続されている。このように超音波画像処理装置7は、いわゆるパーソナルコンピュータの形態で構成されたものとなっている。
IEEE1394取込回路21は、図示しないIEEE1394入力端子を有して構成されており、IEEE1394信号線を介して、IEEE1394コンバータ3の上述したIEEE1394出力端子と接続されている。
RS−232C取込回路22は、図示しないRS−232C入力端子を有して構成されており、RS−232C信号線を介して、位置配向データ算出装置4の上述したRS−232C出力端子と接続されている。
画像記憶部23は、ハードディスクドライブ、光磁気ディスクドライブ、フラッシュメモリ等の公知のデバイス(複数種類を組み合わせたものでも可)により構成されていて、大容量の電子データを記憶することができるものとなっている。
画像処理回路24は、複数の超音波断層像のデータや、複数の超音波断層像の補間を行って得られるデータなどを格納することができるように、内部に大容量の画像メモリを有して構成されている。
次に、このような超音波診断装置の作用について説明する。
なお、図1においては、実線が超音波断層像の位置、配向に関わる信号・データの流れ、点線が超音波に関わる信号・データの流れ、2点鎖線が3次元画像に関わる信号・データの流れ、1点鎖線がそれ以外の制御に関わる信号・データの流れ、をそれぞれ示している。
術者は、挿入部11を被検者の消化管や気管等の体腔内の関心領域まで挿入した後に、キーボード8bの所定のキーを押すか、または表示装置9の画面上のメニューをマウス8aで選択することにより、超音波走査の開始を指示する。
制御回路26は、この指示を受けると、超音波走査のオン/オフ制御を指令するための走査制御信号を超音波観測装置2へ出力する。
超音波観測装置2は、この走査制御信号を受けると、モータ17に回転のオン/オフを制御する回転制御信号を出力する。
モータ17は、この回転制御信号を受けて、超音波振動子15を回転させる。
超音波振動子15は、体腔内で回転しながら、超音波の送信と反射波の受信とを繰り返して、各反射波を電気的な超音波信号に変換する。すなわち、超音波振動子15は、挿入部11の挿入軸と垂直な平面内で放射状に超音波の送受信を行う、いわゆるラジアル走査を行う。
このとき、超音波観測装置2は、超音波振動子15を駆動するとともに、超音波振動子15により反射波から変換された超音波信号と、ロータリーエンコーダ18から出力されるモータ17の回転軸の角度の出力値と、を受信する。そして、超音波観測装置2は、受信した超音波信号と回転軸の角度値とに基づいて、超音波振動子15の1回転のラジアル走査に対する、挿入部11の挿入軸に垂直な超音波断層像を作成する。
そして、超音波観測装置2は、挿入軸に対するどの方向を超音波断層像の12時方向として超音波断層像を作成するかを、このロータリーエンコーダ18からの角度の出力値に基づいて決定するようになっている。
その後、超音波観測装置2は、作成した超音波断層像を、アナログビデオ信号の形式でアナログビデオ出力端子からIEEE1394コンバータ3のアナログビデオ入力端子へ出力する。
IEEE1394コンバータ3は、アナログビデオ信号の形式で入力された1枚の超音波断層像を、高速でアナログ/デジタル変換してデジタル化し、超音波断層像の各画素の輝度値をデータとするIEEE1394規格の形式の1枚の超音波断層像データを作成する。そして、IEEE1394コンバータ3は、変換した超音波断層像データを、IEEE1394データの形式でIEEE1394出力端子から超音波画像処理装置7に設けられたIEEE1394取込回路21のIEEE1394入力端子へ出力する。
このように、超音波振動子15がラジアル走査を繰り返す度に、逐次、超音波観測装置2が、走査により得られた超音波断層像をアナログビデオ信号の形式でIEEE1394コンバータ3へ出力し、IEEE1394コンバータ3が、IEEE1394規格の形式で超音波断層像データに変換し、超音波画像処理装置7が、変換後の超音波断層像データを入力することになる。
一方、位置配向データ算出装置4は、コイル16aと、コイル16bと、プレート6に設けられたコイルと、をそれぞれ異なる周波数で励磁する。
受信アンテナ5は、コイル16aと、コイル16bと、プレート6のコイルと、からの交番磁場を電流として検出し、電気的な位置配向信号に変換して位置配向データ算出装置4に出力する。
位置配向データ算出装置4は、受信アンテナ5から入力した位置配向信号を、周波数毎に分解することにより、どのコイルの磁場を検出して得た位置配向信号なのかを分離する。そして、位置配向データ算出装置4は、分離された各位置配向信号に基づいて、送信コイル16の位置および配向の値と、プレート6の位置および配向の値と、を位置配向データとして算出する。
そして、位置配向データ算出装置4は、位置配向データをRS−232C出力端子からRS−232C規格の形式で超音波画像処理装置7に設けられたRS−232C取込回路22のRS−232C入力端子へ出力する。
位置配向データ算出装置4による各コイルの励磁は、逐次、実施されるために、位置配向データも、逐次、RS−232C規格の形式で超音波画像処理装置7へ入力されることになる。
ここで、本実施例においては、原点Oを受信アンテナ5上に定義して、術者が被検者を検査する実際の空間上に、直交座標軸O-xyzと、その正規直交基底(各軸方向の単位ベクトル)i,j,kと、を図4に示すように定義する。なお、図4は、受信アンテナ5上に定義した直交座標軸O-xyzと正規直交基底i,j,kとを示す図である。
このとき、前記位置配向データの内容は、以下の(1)〜(5)に示すようになっている。
(1) コイル16aの中央位置Aの位置ベクトルOAの、直交座標軸O-xyzにおける各方向成分
(2) コイル16aの方向ベクトルVA の、直交座標軸O-xyzにおける各方向成分
(3) コイル16bの方向ベクトルVB の、直交座標軸O-xyzにおける各方向成分
(4) プレート6の基準位置Lの位置ベクトルOLの、直交座標軸O-xyzにおける各方向成分
(5) プレート6の配向を示す3行3列の回転行列T
ここで、周囲の空間に磁場を発生する2つの送信コイル16の一方のコイル16aは、図1に示すように、超音波振動子15の近傍に固定されているために、上記位置ベクトルOAは、超音波振動子15の回転中心位置を示すベクトル、すなわち超音波断層像の中心の位置ベクトルと考えて、実用上差し支えない。
さらに、コイル16aは、巻線軸の方向がラジアル走査の走査平面に垂直な方向となるように固定されているために、上記ベクトルVA の方向は、超音波断層像の法線方向である。
なお、位置配向データ算出装置4は、方向ベクトルVA とVB の直交座標軸O-xyzにおける各方向成分を算出する際に、方向ベクトルVA とVB の長さを予め単位長に正規化して算出するようになっている。
また、回転行列Tは、図4の直交座標軸O-xyzに対するプレート6の配向を示す3行3列の回転行列である。この回転行列Tの(m,n)成分tmnは、厳密には、次の数式1により定義される。
[数1]
ここに、右辺の記号「・」は、内積を意味している。
また、数式1の右辺におけるen は、説明の都合上便宜的に導入したベクトルで、直交座標軸O-xyzの基底ベクトルi,j,kの何れかであり、次の数式2により定義される。
[数2]
さらに、数式1の右辺におけるe”m は、説明の都合上便宜的に導入したベクトルで、図3に示すプレート6に固定された直交座標軸O"-x"y"z"の基底ベクトル(正規直交基底)i”,j”,k”の何れかであり、次の数式3により定義される。
[数3]
プレート6は、上述したように、ベルトで被検者にくくり付けられるようになっているために、この直交座標軸O"-x"y"z"は、結局、被検者の体表に固定されていることになる。なお、原点O”は、プレート6との位置関係が固定されている場所であればどこに取っても構わないが、本実施例ではプレート6の基準位置Lに取っている。ただし、図3においては、分かり易くするために、直交座標軸O"-x"y"z"とその正規直交基底i”,j”,k”とを、プレート6から離した位置に記載している。
そして、各基底ベクトルと回転行列Tとには、次の数式4が成り立つ。
[数4]
さらに、回転行列Tは、いわゆるオイラー角θ,φ,ψを用いて、z軸の周りの角度ψの回転、y軸の周りの角度φの回転、x軸の周りの角度θの回転を、この順序で、直交座標軸O-xyzに対して施したときに、プレート6上に仮想的に固定された直交座標軸O"-x"y"z"と一致することを想定した行列である。従って、回転行列Tは、次の数式5により表現することもできる。
超音波画像処理装置7のIEEE1394取込回路21は、IEEE1394入力端子から入力された超音波断層像データを、上述したバスを経由して、制御回路26へ出力する。
また、超音波画像処理装置7のRS−232C取込回路22は、RS−232C入力端子から入力された位置配向データを、前記バスを経由して、制御回路26へ出力する。
次に、図5は、制御回路26と画像処理回路24との作用を示すフローチャートである。
以下では、超音波振動子15によりラジアル走査を行いながら、術者が被検者の体腔内に挿入した挿入部11を関心領域から用手的に手前に手引きしていくケースについて、説明する。
この処理を開始すると、まず、IEEE1394取込回路21から超音波断層像データが、RS−232C取込回路22から位置配向データが、制御回路26にそれぞれ入力される(ステップS1)。
次に、ステップS2aおよびステップS2b(これらをまとめて、適宜、ステップS2という。)において、制御回路26は、位置配向データに基づき、超音波断層像データの12時方向の単位ベクトル(以下では、12時方向ベクトルV12という。)の直交座標軸O-xyz上における各方向成分を算出する。
この算出の手順を、図6および図7を参照して説明する。図6はコイル16aとコイル16bと超音波断層像との位置関係を示す図、図7は体腔に挿入された挿入部11の超音波振動子15がラジアル走査して得られた超音波断層像を図6の矢印Gの方向から示した図である。なお、図7においては、消化管や気管等の体腔の内壁が描出されている様子を図示している。
12時方向ベクトルV12の成分を算出する際の着目点として、次の2つが挙げられる。
まず、第1の着目点は、コイル16bが、硬性部13内において、挿入軸に対し斜めとなる(非直角の)特定の方向に巻線軸が固定されていることである。
次に、第2の着目点は、超音波断層像の12時方向が挿入軸に対してどの方向に向くかは、ロータリーエンコーダ18からの角度の出力値に基づいて決定される(つまり、ロータリーエンコーダ18が決定すると言い換えることもできる)ことである。
これら2つの着目点を考慮すると、12時方向ベクトルV12と、「コイル16bの方向ベクトルVB の超音波断層像への射影成分VB'」と、のなす角度γ2 は、可撓部14のねじれの向きや形状によることなく既知であると言える。従って、この角度γ2 の値は、制御回路26のメモリ内に、設計値として既に格納されているものとする。
次に、コイル16aの方向ベクトルVA の方向は、超音波断層像の法線方向であるために、方向ベクトルVA ,VB の外積VA ×VB と、12時方向ベクトルV12とがなす角度γ3 は、図7を見れば分かる(つまり、ベクトルVB の射影成分VB'と外積VA ×VB とは直交することが分かる)ように、次の数式6により表される。
[数6]
前記外積VA ×VB を正規化すると(VA ×VB )/|VA ×VB |となるが、この正規化された外積ベクトルを、方向ベクトルVA の周りにγ3 だけ回転させたものが、12時方向ベクトルV12となる。
正規化された外積ベクトル(VA ×VB )/|VA ×VB |の直交座標軸O-xyz上における各方向成分は、方向ベクトルVA とVB の直交座標軸O-xyz上における各方向成分に基づき算出することができる。すなわち、制御回路26は、超音波断層像データの12時方向ベクトルV12の直交座標軸O-xyz上における各方向成分を算出するために、以下のステップS2aおよびステップS2bの処理を実行する。
まず、(VA ×VB )/|VA ×VB |の直交座標軸O-xyz上における各方向成分を算出する(ステップS2a)。
次に、(VA ×VB )/|VA ×VB |を方向ベクトルVA の周りに前記角度γ3 だけ回転させ、12時方向ベクトルV12の直交座標軸O-xyz上における各方向成分を算出する(ステップS2b)。
その後、制御回路26は、内蔵するタイマで計測している時刻がほぼ同時刻となっているときに入力してきた、超音波断層像データと、位置配向データと、を同時刻のものとして関連付ける(ステップS3)。ここに、超音波断層像データと関連付けられる位置配向データは、超音波断層像の中心の位置ベクトルOAの直交座標軸O-xyz上における各方向成分と、超音波断層像の法線方向であるコイル16aの方向ベクトルVA の直交座標軸O-xyz上における各方向成分と、プレート6の基準位置Lの位置ベクトルOLの直交座標軸O-xyz上における各方向成分と、プレート6の配向を示す3×3の回転行列Tと、上述した方法で求めた12時方向ベクトルV12の直交座標軸O-xyz上における各方向成分と、を含んでいる。
そして、制御回路26は、関連付けた超音波断層像データと、ベクトルOA,VA ,OL ,V12および回転行列Tとを、バスを経由して、逐次、画像処理回路24と画像記憶部23とへ出力する。
画像処理回路24は、超音波断層像の中心の位置ベクトルOAと、コイル16aの方向ベクトルVA と、12時方向ベクトルV12と、の直交座標軸O"-x"y"z"上における各方向成分を算出する。これにより、これら3つのベクトルは、被検者に設定された直交座標軸O"-x"y"z"で表現されることになる。
具体的には、画像処理回路24は、以下のステップS4aおよびステップS4b(これらをまとめて、適宜、ステップS4という。)により処理を行う。
まず、直交座標軸O"-x"y"z"の原点O”は、上述したようにプレート6の基準位置Lにとっているために、次の数式7が成立する。
[数7]
従って、画像処理回路24は、この数式7を用いて、ベクトルO”Aの直交座標軸O-xyz上における各方向成分を算出する(ステップS4a)。
次に、画像処理回路24は、プレート6の配向を示す3×3の回転行列Tと、ベクトルO”A,VA ,V12の直交座標軸O-xyz上における各方向成分と、の積をそれぞれ算出する(ステップS4b)。この積が、ベクトルO”A,VA ,V12の直交座標軸O"-x"y"z"上における各方向成分となる。
ここで、画像処理回路24は、内部に搭載されたメモリに、図8(B)に示されるようなボクセルというメモリセルを単位とするデータ領域(以下、ボクセル空間)を予め用意する。ここに図8は、超音波断層像データとボクセル空間と3次元画像とを示す図である。各ボクセルのアドレスには直交座標軸O"-x"y"z"上における各方向成分が割り当てられており、各ボクセルのデータには輝度値が割り当てられる。なお、データを書き込む前に、各ボクセルのデータは予め0に初期化されるようになっている。
画像処理回路24は、ベクトルO”A,VA ,V12の直交座標軸O"-x"y"z"上における各方向成分に基づいて、超音波断層像データの各画素に対応するボクセルを特定し、その画素の輝度値を特定したボクセルに書き込む(ステップS5)。
その後、術者が、キーボード8bの所定のキーを押すか、または表示装置9の画面上のメニューをマウス8aで選択することにより、ラジアル走査の終了を指示したか否かを判断する(ステップS6)。ここで、ラジアル走査の終了が指示されていない場合には、ステップS1へ戻って上述したような処理を繰り返して行う。
こうして、超音波振動子15がラジアル走査を行いながら、術者が被検者の体腔内に挿入した挿入部11を関心領域から用手的に手前へ手引きして行くにつれて、図8(A)に示すように、超音波断層像データと、この超音波断層像データに関連付けられた位置配向データと、が手引きの軌跡に沿って制御回路26へ順次入力されて行く。なお、図8(A)に示す例では、超音波断層像データに、手引きで得られた順番を示す番号が付されている。制御回路26と画像処理回路24とは、順次入力される超音波断層像データに対して、上述したようなステップS1からステップS6の処理を繰り返して行うことにより、手引きに沿って得られた超音波断層像データをボクセル空間へ書き込んで行く。これにより、ボクセル空間内には、データが蓄積され、体腔内の3次元データとして形成されて行く。
また、上述のステップS6において、ラジアル走査の終了が指示された場合には、画像処理回路24は、超音波断層像データ間の重複部分を平均化したり、あるいは疎の部分を補間したりして、ボクセル空間内の全てのボクセルにデータを書き込む(ステップS7)。上述のように、各ボクセルのデータの初期値は0となっているために、超音波断層像データ上もしくは超音波断層像データ間に相当するボクセルには超音波断層像データの輝度値またはその補間値が書き込まれるが、それ以外のボクセルのデータは0のままである。
続いて、画像処理回路24は、0以外のデータを持つボクセルを抽出することにより、図8(C)に示すような3次元画像のデータを作成する(ステップS8)。
そして、画像処理回路24は、作成した3次元画像のデータを、表示回路25へ出力する(ステップS9)。
表示回路25は、入力された3次元画像のデータを、表示装置9に表示可能なアナログビデオ信号に変換して、変換したアナログビデオ信号を表示装置9へ出力する。
表示装置9は、入力されたアナログビデオ信号に基づいて、3次元画像を画面に表示する。
なお、この後、術者は、キーボード8bの所定のキーを押すか、または表示装置9の画面上のメニューをマウス8aで選択することにより、制御回路26および表示回路25を介して、図9(A)に示すようなポインタPTおよび切断面指定線を、表示装置9の画面に表示された3次元画像と一緒に表示させる。ここに、図9は、3次元画像における切断面指定線とボクセル空間における切断面と切断面が表示される新たな3次元画像との関係を示す図である。
次に、術者は、マウス8aを用いてポインタPTを操作することにより、切断面指定線を、3次元画像上で所望の位置、大きさ、形状に変更するように指示する。
画像処理回路24は、切断面指定線で設定された切断面を、対応するボクセル空間内の位置、配向に設定し、図9(B)に示すようにボクセル空間内で3次元画像のデータを切断して、切断面の画像を生成する。
続いて、画像処理回路24は、この切断面の画像を用いて新たな3次元画像のデータを作成し、表示回路25へ出力する。
表示回路25は、この新たな3次元画像のデータを表示装置9に表示可能なアナログビデオ信号に変換して、変換したアナログビデオ信号を表示装置9へ出力する。
表示装置9は、入力されたアナログビデオ信号に基づいて、図9(C)に示すような新たな3次元画像を画面に表示する。
なお、図9(C)においては、図9(A)との対比を明確にするために、元の3次元画像の内の、切断面で切断されて表示装置9上に表示されない部分を点線で示している。
このような実施例1によれば、コイル16aとコイル16bとを互いの巻線軸が斜交またはねじれの位置となるように硬性部13内に配設し、各コイル16a,16bの巻線軸の方向を示す方向ベクトルVA ,VB を求め、これらの方向ベクトルVA ,VB に基づき、超音波断層像の中心の位置ベクトルOAと12時方向ベクトルV12との直交座標軸O-xyz上における各方向成分を各3つずつ算出して、計6つの自由度の情報を検出するように構成したために、巻線軸同士が直交するように2つのコイルを配設する従来の構成に比して、超音波プローブ1の外径を太くすることなく、かつ先端側の硬性部13を長くすることなく、6つの自由度の情報を検出することが可能となる。
また、制御回路26が、超音波断層像データと、この超音波診断像データに関連付けられたベクトルOA,VA ,OL ,V12および回転行列Tとを、画像処理回路24へ出力するだけでなく、画像記憶部23へも逐次出力するように構成したために、術者は、被検者の体腔内から挿入部11を抜去した後に、キーボード8bの所定のキーを押すか、表示装置9の画面上のメニューをマウス8aで選択して、関連付けた超音波断層像データと、ベクトルOA,VA ,OL ,V12および回転行列Tと、を画像処理回路24に読み込ませ、3次元画像や切断面の画像を再度作成させることができる。そのために、術者は、被検者の再検査の前やその後の手術等の前に、画像処理回路24に再度作成させた3次元画像や切断面の画像をレビューして、再検査や手術の方針を決定することが可能となる。
なお、上述した実施例1においては、超音波断層像の位置および配向についての計6つの自由度の情報として、超音波断層像の中心の位置ベクトルOAの直交座標軸O-xyz上における3つの方向成分と、12時方向ベクトルV12の直交座標軸O-xyz上における3つの方向成分と、を算出するように構成している。しかし、位置ベクトルOAのような超音波断層像の中心を算出するに限るものではなく、超音波断層像の端点や、その他の特定点を算出するようにしても構わない。同様に、12時方向ベクトルV12を算出するに限るものではなく、例えば3時方向ベクトルや、それ以外の斜め方向のベクトルなど、超音波断層像に対する他の特定の方向を算出するようにしても構わない。
また、上述した実施例1においては、光学的な観察手段を備えていない超音波プローブ1を例に挙げたが、CCDカメラを備えた光学観察窓と照明光を照射する照明窓とを硬性部13に備える超音波内視鏡を、超音波プローブ1として用いても良い。
さらに、上述した実施例1では、挿入部11の先端側の硬性部13内に送信コイル16を設けて、受信アンテナ5内に磁場を検出するための複数の受信コイルを設けたが、送信コイルと受信コイルの配置を逆にしても構わない。すなわち、挿入部11の先端側の硬性部13内に送信コイルに代えて受信コイルを設けるとともに、受信アンテナ5の位置に該受信アンテナ5に代えて磁場を送信するための複数の送信コイルを備えた送信アンテナを設けるように構成しても良い。
図10および図11は本発明の実施例2を示したものであり、図10は超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
この実施例2において、上述の実施例1と同様である部分については同一の符号を付して説明を省略し、主として異なる点についてのみ説明する。
この実施例2の超音波診断装置は、上述した実施例1の図1に示した超音波診断装置と、以下の点が異なっている。
超音波プローブ1は、管状をなし、該管状の内部が中空となっている鉗子チャンネル31を備えている。この鉗子チャンネル31は、手元側の操作部12において一端が開口し、挿入部11の可撓部14を経由して、先端側の硬性部13において他端が開口している。以下では、鉗子チャンネル31の操作部12側の開口(第2の開口)を鉗子口31a、鉗子チャンネル31の硬性部13側の開口(第1の開口)を突出口31bと呼ぶことにする。この鉗子チャンネル31は、突出口31b付近の硬性部13内において、側方(硬性部13の外径方向)へ向けて湾曲または屈曲するように形成されたものとなっている。
さらに、この実施例2においては、送信コイル16を超音波プローブ1自体に設ける代わりに、コイルプローブ32に設けるようにしている。このコイルプローブ32は、前記鉗子チャンネル31に挿通されるものであり、可撓性のある材料により構成された外筒32aを備えている。そして、このコイルプローブ32の外筒32aの内部には、送信コイル16を構成するコイル16aとコイル16bとが、それぞれの巻線軸をコイルプローブ32に沿わせるように、配設されている。これら2つのコイル16a,16bの内の、一方のコイル16bは、図10に示すように、他方のコイル16aよりも先端側となるように配設されており、各コイル16a,16bは、コイルプローブ32の先端からの距離がそれぞれ決められて固定されている。
また、コイルプローブ32の基端側には、硬性のコネクタ32bが設けられており、コイル16a,16bを励磁するための信号線が、該コイル16a,16bから外筒32aの内部を挿通された後に、コネクタ32bへ接続されている。このコネクタ32bは、前記信号線に接続される図示しない端子を備えており、この端子に、位置配向データ算出装置4からの図示しないケーブルが接続されるようになっている。
さらに、コイルプローブ32の外筒32aの表面の、コネクタ32bに近い基端側の所定位置には、目視によって確認することができる指標たる環状の鉗子口マーカ32cが設けられている。この鉗子口マーカ32cを設ける所定位置は、コイルプローブ32の先端から計った所定距離の位置となっている。
また、鉗子口31aには、術者が鉗子チャンネル31内にコイルプローブ32を挿通した後に、該コイルプローブ32を着脱可能に固定するための図示しない固定治具が設けられている。
その他の構成については、上述した実施例1と同様である。
次に、この実施例2において、上述した実施例1と異なる作用について説明する。簡潔に述べれば、この実施例2においては、コイル16aとコイル16bとを所定の位置に配置させるときの作用が異なっている。
術者は、挿入部11を被検者の消化管や気管等の体腔内の関心領域まで挿入する。
その後に、術者は、図10に示すように、コイルプローブ32を鉗子口31aから鉗子チャンネル31内へ挿入する。このときに、術者は、鉗子口マーカ32cが、ちょうど鉗子口31aの位置に達することを目視で確認し、その状態になるまでコイルプローブ32を挿入して行く。鉗子口マーカ32cがちょうど鉗子口31aの位置に達すると、コイルプローブ32の先端付近は鉗子チャンネル31の突出口31b付近の硬性部13内で湾曲もしくは屈曲する。その後に、術者は、鉗子口31aの固定治具を用いて、コイルプローブ32が鉗子チャンネル31内を動くことがないように固定する。
このとき、コイル16aとコイル16bとは、図10に示すように、鉗子チャンネル31の湾曲もしくは屈曲する部分を挟んで、互いの巻線軸が斜交するように固定される状態となる。さらにこのときには、コイル16aの位置は超音波振動子15の近傍となり、かつコイル16aの巻線軸Kaがラジアル走査の走査平面に垂直な方向に向く状態となる。一方、コイル16bは、突出口31bから突出して固定された状態となる。すなわち、コイル16aとコイル16bとがこのような状態で固定されるように、コイル16aと、コイル16bと、鉗子口マーカ32cと、のコイルプローブ32の先端からの距離が決められている。
図11は、硬性部13に配設されている送信コイル16の配置を拡大して示す図である。この図11においても、実施例1と同様に、コイル16aの巻線軸Kaとコイル16bの巻線軸Kbとを、それぞれのコイル導線の周回の中心軸として定義し、点線により示している。
術者が鉗子口31aの固定治具を用いてコイルプローブ32が鉗子チャンネル31内を動くことがないように固定すると、コイル16aと、コイル16bと、コイル16aの巻線軸の方向を示す方向ベクトルVA と、コイル16bの巻線軸の方向を示す方向ベクトルVB と、コイル16aの中央位置Aと、コイル16bの中央位置Bと、の位置関係は、図11に示すようになる。
この後に、術者は、キーボード8bの所定のキーを押すか、または表示装置9の画面上のメニューをマウス8aで選択することにより、ラジアル走査の開始を指示する。
その他の作用については、上述した実施例1と同様である。
このような実施例2によれば、硬性部13内の突出口31b付近で湾曲もしくは屈曲している鉗子チャンネル31を超音波プローブ1に設けて、この湾曲を利用してコイル16aとコイル16bとを超音波プローブ1の挿入部11の先端部で互いの巻線軸が斜交またはねじれの位置となるように固定し、実施例1と同様に、各コイル16a,16bの巻線軸の方向を示す方向ベクトルVA ,VB を求め、これらの方向ベクトルVA ,VB に基づき、超音波断層像の中心の位置ベクトルOAと12時方向ベクトルV12との直交座標軸O-xyz上における各方向成分を各3つずつ算出して、計6つの自由度の情報を検出するように構成したために、巻線軸同士が直交するように2つのコイルを配設する従来の構成に比して、超音波プローブ1の外径を太くすることなく、かつ先端側の硬性部13を長くすることなく、6つの自由度の情報を検出することが可能となる。
さらに、この実施例2によれば、鉗子チャンネル31内に挿通され、鉗子口31aで着脱可能に固定されるコイルプローブ32内に、コイル16aとコイル16bとを設けたために、3次元画像を得る必要がない場合にはコイルプローブ32を引き抜くことができる。従って、このときには、鉗子チャンネル31をその他の用途、例えば、処置を行うために処置具を挿通する用途や、超音波の伝播に必要な水を注水する用途などに用いることが可能となる。このようにコイルプローブ32は、鉗子チャンネル31の多目的な使用を禁止するものとはなっていないために、鉗子チャンネル31を備える超音波プローブ1の外径を太くすることなく、かつ先端側の硬性部13を長くすることなく、必要な自由度の情報を検出することが可能となっている。
そして、この実施例2によれば、コイル16aとコイル16bとがこの鉗子チャンネル31の湾曲もしくは屈曲する部分を挟んで互いの巻線軸が斜交またはねじれの位置となるように固定される際に、コイル16bが突出口31bから突出するようにしたために、斜交したコイル16bを全て硬性部13内に設けた実施例1よりも、より一層、超音波プローブ1の外径を太くすることなく、かつ先端側の硬性部13を長くすることなく、自由度の情報を検出することができる。
加えて、この実施例2によれば、コイルプローブ32の外筒32aの表面の、先端から決まった位置に、目視で確認することができる環状の鉗子口マーカ32cを設けて、この鉗子口マーカ32cがちょうど鉗子口31aの位置に達したところで、コイルプローブ32の先端付近が鉗子チャンネル31の突出口31b付近の硬性部13内で湾曲もしくは屈曲し、コイル16aとコイル16bとがこの鉗子チャンネル31の湾曲もしくは屈曲する部分を挟んで互いの巻線軸が斜交またはねじれの位置となるように固定されるよう構成したために、術者は、コイル16aの巻線軸とコイル16bの巻線軸とが互いに適切に斜交する位置を目視で確認することができる。
本実施例2によれば、その他、実施例1と同様の効果を奏することができる。
なお、上述した実施例2においては、光学的な観察手段を備えていない超音波プローブ1を例に挙げたが、CCDカメラを備えた光学観察窓と照明光を照射する照明窓とを硬性部13に備える超音波内視鏡を、超音波プローブ1として用いても良い。このような構成を採用することにより、光学観察窓により撮像した光学像の視野下で、鉗子チャンネル31に生検鉗子や薬剤注入用の針を挿通して各種の処置を実施することが可能となる。さらに、この処置の前後で、コイルプローブ32を鉗子チャンネル31に挿通して挿入部11を用手的に手引きすることにより、消化管壁や気管壁などの外側の処置前後における様子の変化や薬剤の注入量等を、3次元画像やボクセル空間内のデータにより確認することが可能となる。
また、上述した実施例2においては、送信コイル16を構成するコイル16aとコイル16bとを、それぞれの巻線軸がコイルプローブ32に沿うように、コイルプローブ32の外筒32aの内部に設けているために、コイルプローブ32を細く構成することができる。これにより、現在普及している、鉗子チャンネル31を設けた汎用の超音波内視鏡を、改造することなく用いることが可能となる。
さらに、実施例1の変形例で述べたような変形例を、この実施例2においてもほぼ同様に採用することが可能である。
図12は本発明の実施例3を示したものであり、超音波診断装置の構成を示すブロック図である。この実施例3において、上述の実施例1,2と同様である部分については同一の符号を付して説明を省略し、主として異なる点についてのみ説明する。
この実施例3の超音波診断装置は、上述した実施例2の図10に示した超音波診断装置と、以下の点が異なっている。
図12に示すように、本実施例の操作部12には、モータ17とロータリーエンコーダ18とが設けられていない。
そして、本実施例の硬性部13には、図12に示すように、超音波振動子アレイ41が設けられている。この超音波振動子アレイ41は、挿入軸の周囲に、該挿入軸に沿った短冊状をなすように切断された極小の超音波振動子群が、該挿入軸を略中心とする環状に配列されて構成されたものである。この超音波振動子アレイ41を構成する各超音波振動子は、それぞれ超音波信号線42を介して、操作部12を経由し超音波観測装置2と接続されている。
その他の構成については、上述した実施例2と同様である。
次に、この実施例3において、上述した実施例2と異なる作用について説明する。簡潔に述べれば、この実施例3においては、超音波観測装置2が超音波断層像を作成する作用が異なっている。
超音波観測装置2は、超音波振動子アレイ41を構成する超音波振動子の内の、一部かつ複数の超音波振動子にのみ、パルス電圧状の励起信号を送信する。励起信号を受け取った超音波振動子は、該信号を、媒体の疎密波である超音波に変換する。
このとき、超音波観測装置2は、各励起信号がそれぞれの超音波振動子に到着する時刻が異なるように、各励起信号に遅延をかけている。より具体的には、この遅延は、各超音波振動子が励起する超音波が被検者の生体内で重ね合わせられたときに、一本の超音波のビームを形成するようにかけられる。こうしてビームとして形成された超音波は、被検者の生体内へ照射される。この照射によって発生する生体内からの反射波は、照射したときと逆の経路を辿って、各超音波振動子へ到達する。各超音波振動子は、この反射波を電気的なエコー信号に変換し、前記励起信号とは逆の経路により超音波観測装置2へ送信する。
次に、超音波観測装置2は、超音波のビームが挿入部11の挿入軸に垂直な平面内をラジアル走査するように、超音波のビームの形成に関与する複数の超音波振動子を選択し直して、選択した超音波振動子へ向けて再び励起信号を送信する。これにより、超音波のビームの照射方向の角度が変化する。このような処理を繰り返して行うことにより、いわゆる、電子ラジアル走査が行われる。
なお、超音波観測装置2が超音波断層像の12時方向を挿入軸に対してどの方向に向けて超音波断層像を作成するかは、該超音波観測装置2による超音波振動子の選択方法により決定されることになる。
その他の作用については、上述した実施例2と同様である。
上述した実施例1および実施例2では、機械的なラジアル走査を採用して、モータ17の回転角度位置を該モータ17に隣接して設けたロータリーエンコーダ18によって検出するように構成しているために、例えばフレキシブルシャフトにねじれが生じて、このねじれが複数のラジアル断層像間で一様にならないことが原因で、3次元画像や切断面の画像上に若干の歪みが現れる懸念がある。
これに対して、この実施例3によれば、超音波観測装置が超音波のビームの形成に関与する複数の超音波振動子を選択することにより、超音波のビームの角度が反復的に変更されて電子ラジアル走査が行われるように構成したために、超音波断層像の12時方向を挿入軸に対してどの方向にするかが超音波観測装置による超音波振動子の選択方法により決定され、歪みのない3次元画像や切断面の画像を作成することが可能となる。
本実施例3によれば、その他、実施例2と同様の効果を奏することができる。
なお、実施例3においては、上述した実施例2と同様に、硬性部13内の突出口31b付近で湾曲または屈曲する鉗子チャンネル31を超音波プローブ1に設けて、この湾曲または屈曲を利用して、コイル16aとコイル16bとを超音波プローブ1の挿入部11の先端部で斜交またはねじれの位置に固定するように構成したが、上述した実施例1と同様に、コイル16aとコイル16bとを超音波プローブ1の挿入部11における硬性部13の内部で斜交させて設けるようにしても良い。
また、実施例3においては、挿入部11の挿入軸に垂直な平面内をラジアル走査するように構成しているが、このラジアル走査は、360°全周でなくとも良く、例えば300°程度であっても構わない。
さらに、実施例1の変形例や実施例2の変形例で述べたような変形例を、この実施例3においてもほぼ同様に採用することが可能である。
図13および図14は本発明の実施例4を示したものであり、図13は超音波診断装置の挿入部11の先端部の構成と、超音波プローブのねじりにより得られる超音波断層像データ群と、を示す図である。
この実施例4において、上述の実施例1〜3と同様である部分については同一の符号を付して説明を省略し、主として異なる点についてのみ説明する。
まず、本実施例における超音波診断装置の挿入部11の先端部(硬性部13と、可撓部14の一部)の構成が、実施例3の図12に示したものと異なる部分について、図13(A)を参照して説明する。
図13(A)に示すように、本実施例の硬性部13には、挿入軸に沿ってある曲率をもった略凸円状の超音波振動子アレイ41Bが、該硬性部13の周面から突出するように設けられている。この超音波振動子アレイ41Bは、挿入軸に直交する軸に沿った短冊状をなすように切断された極小の超音波振動子群が、挿入軸方向の前記略凸円状に沿って配列して構成されたものとなっている。
この超音波振動子アレイ41Bを構成する各超音波振動子は、それぞれ超音波信号線42を介して、操作部12を経由し超音波観測装置2と接続されている。
さらに、鉗子チャンネル31は、硬性部13内の突出口31b付近において湾曲もしくは屈曲するように構成されている。この鉗子チャンネル31は、前記湾曲もしくは屈曲の方向と、突出口31bの開口方向とが、超音波振動子アレイ41Bによる後述するコンベックス走査の走査範囲内に該鉗子チャンネル31に挿通した処置具等が突出する方向となるように構成されている。
その他の構成については、上述した実施例3と同様である。
次に、この実施例4において、上述した実施例3と異なる作用について説明する。簡潔に述べれば、この実施例4においては、超音波観測装置2が超音波断層像を作成する作用と、制御回路26の作用と、術者の挿入部11の動かし方と、が異なっている。
以下では、超音波振動子アレイ41Bにより後述するコンベックス走査を行いながら、術者が被検者の体腔内に挿入した挿入部11を挿入軸の周りに用手的にねじっていくケースについて、説明する。
超音波振動子を凸状に配列してなる超音波振動子アレイ41Bは、上述した実施例3と同様の方法により、超音波のビームを形成する。
超音波観測装置2は、このビームにより、挿入部11の挿入軸を含む平面内の一方向の走査を行う。その後、超音波のビームの形成に関与する複数の超音波振動子を選択し直して、再び励起信号を送信することにより、超音波のビームの角度が前記平面内において矢印CVに示すような方向へ変化する。これを反復的に繰り返すことにより、いわゆるコンベックス走査が実現する。
また、制御回路26の作用は、上述した実施例1の図5において説明したステップS2以降の作用が異なっている。これについて、図14を参照して説明する。図14は、2つのコイルとコンベックス走査によって得られた超音波断層像との位置関係と、該位置関係の一部を簡略化して模式的に示した位置関係と、を示す図である。
まず、図14(A)は、コイル16aとコイル16bとコンベックス走査によって得られた超音波断層像との位置関係を示す図である。
前述のように、鉗子チャンネル31の湾曲もしくは屈曲の方向と、突出口31bの開口方向とは、コイルプローブ32がコンベックス走査の走査範囲内に突出する方向となっているために、超音波振動子アレイ41Bの曲率中心Qと、コイル16aの巻線軸の方向を示す方向ベクトルVA と、コイル16bの巻線軸の方向を示す方向ベクトルVB とは、超音波断層像と同一平面内にある。
次に、図14(B)は、図14(A)に示した位置関係に基づいて、超音波断層像の曲率中心Qと、コイル16aの中央位置Aと、コイル16aの巻線軸の方向を示す方向ベクトルVA と、方向ベクトルの外積VA ×VB を正規化した単位ベクトル(VA ×VB )/|VA ×VB |と、の相互の位置関係をより簡略化して模式的に示した図である。
この図14(B)においては、横方向の単位ベクトルをVA 、紙面に鉛直上方向の単位ベクトルを(VA ×VB )/|VA ×VB |にとっている。それ故に、図14(B)における縦方向の単位ベクトルは、VA ×{(VA ×VB )/|VA ×VB |}である。従って、図14(B)に示すように、コイル16aの中央位置Aと超音波断層像の曲率中心Qとの間の距離を、横方向にε、縦方向にδであると定義すると、次に示すような数式8が成り立つ。
[数8]
術者が、鉗子口マーカ32cがちょうど鉗子口31aの位置に達することを目視で確認し、その状態になるまでコイルプローブ32を挿入して行くと、コイル16aとコイル16bと超音波振動子アレイ41Bとの相互の位置関係が一意的に決定される。これにより、このときのεとδの値も、一意的に決定される。このときのεとδとは、設計値として、制御回路26のメモリ内に格納されているものとする。
超音波断層像の縦方向の単位ベクトルVA ×{(VA ×VB )/|VA ×VB |}の直交座標軸O-xyz上における各方向成分は、方向ベクトルVA とVB の直交座標軸O-xyz上における各方向成分に基づき算出することができる。また、超音波断層像の曲率中心Qの位置ベクトルOQの直交座標軸O-xyz上における各方向成分は、方向ベクトルVA とVB の直交座標軸O-xyz上における各方向成分と、数式8と、を用いて算出することができる。
本実施例では、制御回路26は、上述した実施例1において超音波断層像の中心の位置ベクトルとして用いたOAの代わりに、超音波断層像の曲率中心Qの位置ベクトルOQを用いている。また、本実施例では、制御回路26は、実施例1のステップS2で説明した超音波断層像の12時方向ベクトルV12を算出する代わりに、超音波断層像の上方を示す単位ベクトルVA ×{(VA ×VB )/|VA ×VB |}を用いている。
こうして、超音波振動子アレイ41Bがコンベックス走査を行いながら、術者が被検者の体腔内に挿入した挿入部11を、関心領域の近傍において、挿入軸周り(図13の矢印RTの方向)に用手的にねじっていくにつれて、図13(B)に示すように、超音波断層像データと関連付けられた位置配向データとがねじりの軌跡に沿って制御回路26へ順次入力されて行く。なお、この図13(B)においては、ねじりで得られた順番に、超音波断層像データに番号が付されている。
制御回路26と画像処理回路24とは、順次入力される超音波断層像データに対して、実施例1で説明した作用に一部の変更を加えた上記作用を繰り返すことにより、ねじりに沿って得られた超音波断層像データをボクセル空間へ書き込んでいく。これにより、体腔内の3次元データが形成されていくことになる。
その他の作用については、上述した実施例3と同様である。
このような実施例4によれば、コンベックス走査用の超音波振動子アレイ41Bを備えたために、走査を行いながら、術者が超音波プローブ1を用手的にねじるだけで、コンベックス走査を行うことが可能となる。さらに、鉗子チャンネル31に挿通した処置具等がコンベックス走査の走査範囲内に突出する方向になるように、鉗子チャンネル31の、湾曲もしくは屈曲と、突出口31bと、を構成したために、超音波振動子アレイの曲率中心Qと、各コイルの巻線軸の中心と、各コイルの巻線軸の方向ベクトルと、が同一平面状に存在することになり、自由度の算出を容易に行うことが可能となる。そして、鉗子チャンネル31内にコイルプローブ32を挿通する構成を採用しているために、3次元画像を得る必要がないときには該コイルプローブ32を鉗子チャンネル31から引き抜けば、該鉗子チャンネル31を他の用途に、例えば、穿刺吸引生検を行うために穿刺針を挿通したり、超音波の伝播に必要な水を注水したりするために、用いることが可能となる。しかも、このような操作を、超音波画像によるガイドをともなって行うことが可能である。
さらに、鉗子チャンネル31を多目的に使用することができるために、鉗子チャンネル31を設けた超音波プローブ1の外径を太くすることなく、かつ先端側の硬性部13を長くすることなく、自由度の情報を検出することができる。
加えて、こうした処置の前後に、コイルプローブ32を挿通してコンベックス走査を行うことにより、例えば穿刺吸引生検の前後における、消化管壁や気管壁などの外側の関心領域の様子の変化や吸引量を、3次元画像やボクセル空間内のデータにより確認することも可能となる。
また、本実施例では、送信コイル16を構成するコイル16aとコイル16bとを、それぞれの巻線軸がコイルプローブ32に沿うように、コイルプローブ32の外筒32aの内部に設けているために、コイルプローブ32を細く構成することができる。これにより、現在普及している、鉗子チャンネル31を設けた汎用のコンベックス走査型超音波プローブ、または硬性部13にCCDカメラを備えた光学観察窓と照明光を照射する照明窓とをさらに備える汎用のコンベックス走査型超音波内視鏡を、改造することなく用いることが可能となる。
その他の効果については、上述した実施例3と同様である。
なお、実施例4においては、上述した実施例3と同様に、硬性部13内の突出口31b付近で湾曲または屈曲する鉗子チャンネル31を超音波プローブ1に設けて、この湾曲または屈曲を利用して、コイル16aとコイル16bとを超音波プローブ1の挿入部11の先端部で斜交またはねじれの位置に固定するように構成したが、上述した実施例1と同様に、コイル16aとコイル16bとを超音波プローブ1の挿入部11の先端側に設けた硬性部13の内部で斜交させて設けるようにしても良い。
さらに、実施例1から実施例3の変形例で述べたような変形例を、この実施例4においてもほぼ同様に採用することが可能である。
図15および図16は本発明の実施例5を示したものであり、図15は超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
この実施例5において、上述の実施例1〜4と同様である部分については同一の符号を付して説明を省略し、主として異なる点についてのみ説明する。
この実施例5の超音波診断装置は、上述した実施例3の図12に示した超音波診断装置と、以下の点が異なっている。
超音波画像処理装置7は、図12に示した各構成に加えて、通信モデムを含む通信回路27を備えている。この通信回路27は、大容量のデータを高速に通信することができるものとなっている。
通信回路27は、本超音波診断装置の外部に設けられているX線3次元ヘリカルCT(Computer Tomography)装置52や3次元MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置53などの外部機器と、光通信やADSL等の高速なネットワーク51を介して、通信可能に接続されている。そして、通信回路27は、画像記憶部23と接続されていて、こうした外部機器から受信したデータを、該画像記憶部23へ転送するようになっている。加えて、通信回路27は、バスを介して制御回路26と接続されており、各種の指令により制御されるようになっている。
なお、その他の構成については、上述した実施例3と同様である。
次に、この実施例5において、上述した実施例3と異なる作用について説明する。
上述した実施例1から実施例4までは、3次元画像や切断面の画像を作成していたが、本実施例ではこれらに代えて、超音波断層像の被検者の体内での位置を案内するガイド画像を作成するようになっている。
なお、図15においては、実線が超音波断層像の位置、配向に関わる信号・データの流れ、点線が超音波に関わる信号・データの流れ、太点線がX線3次元ヘリカルCT装置52や3次元MRI装置53により撮像された外部機器断層像(後述の説明参照)に関わる信号・データの流れ、2点鎖線が表示装置9の最終的な表示画面に関わる信号・データの流れ、1点鎖線がそれ以外の制御に関わる信号・データの流れ、をそれぞれ示している。
まず、第1の作用として、複数枚の外部機器断層像上で特徴点を指定する作用について説明する。
術者は、事前に3次元ヘリカルCT装置52や3次元MRI装置53を用いて、被検者の頭部から足までの体軸に垂直な断層像(上述および以下では、外部機器断層像という。)を身体全体にわたって連続して取得する。
次に、術者は、キーボード8bの所定のキーを押すか、または表示装置9の画面上のメニューをマウス8aで選択することにより、外部機器断層像のデータ(以下では、外部機器断層像データ23a(図15参照)という。)の取得を指示する。このときに術者は、入手先も同時に指示する。この指示により、制御回路26は、通信回路27に対して外部機器断層像データ23aの取り込みとその入手先とを指令する。例えば、入手先がX線3次元ヘリカルCT装置52であった場合には、通信回路27は、外部機器断層像データ23aとしてネットワーク51から複数枚の2次元CT画像のデータを取り込み、画像記憶部23に記憶させる。
続いて、術者は、キーボード8bの所定のキーを押すか、または表示装置9の画面上のメニューをマウス8aで選択することにより、複数枚の外部機器断層像から解剖学的に特徴となる点(以下、特徴点)が写っている外部機器断層像を選択するように制御回路26に指示する。制御回路26は、この指示を受けて、画像記憶部23から外部機器断層像データ23aを読み込むように、画像処理回路24へ指令を出力する。画像処理回路24は、選択された外部機器断層像データ23aを画像記憶部23から読み込んで、表示回路25へ出力する。表示回路25は、外部機器断層像データ23aを表示装置9に表示可能なアナログビデオ信号に変換して、外部機器断層像を表示装置9へ出力する。
そして、術者は、表示装置9の画面に出力された外部機器断層像上で、マウス8aを用いて特徴点を指定する。
術者は、複数枚の外部機器断層像から特徴点が写っている外部機器断層像を選択し、特徴点を指定する作用を4回繰り返す。この作用により、複数枚の外部機器断層像データ23a上で計4点の特徴点が指定される。なお、特徴点としては、硬性部13が直接接触することのできる体腔表面の点が選ばれる。具体的な例としては、関心領域が消化管である場合には、十二指腸下降脚最下端、十二指腸乳頭、幽門輪、噴門等が選ばれる。
次に、第2の作用として、被検者の体腔表面上で特徴点を指定する作用について説明する。
術者は、挿入部11を被検者の消化管や気管等の体腔内の関心領域まで挿入する。
そして、術者は、鉗子口マーカ32cがちょうど鉗子口31aの位置に達することを目視で確認し、その状態になるまでコイルプローブ32を挿入していく。
その後、術者は、外部機器断層像上で指定した特徴点に対応した被検者の体腔表面上の点に、硬性部13を接触させる。
続いて、術者は、キーボード8bの所定のキーを押すか、または表示装置9の画面上のメニューをマウス8aで選択することにより、接触した時点でのコイル16aの中央位置Aを取得するように制御回路26へ指示する。制御回路26は、この指示を受けて、RS−232C取込回路22からコイル16aの中央位置Aの位置ベクトルOAの直交座標軸O-xyz上における各方向成分を取り込み、取り込んだ値を画像処理回路24へ出力する。
術者は、被検者の体腔表面上の点に硬性部13を接触させて、コイル16aの中央位置Aを取得する作用を4回繰り返す。これにより、複数枚の外部機器断層像上で選ばれた計4点の特徴点に対応する被検者の体腔表面上の点が指定される。例えば複数枚の外部機器断層像上で選ばれた計4点の特徴点が、上述したような十二指腸下降脚最下端、十二指腸乳頭、幽門輪、噴門である場合には、術者は、被検者の体腔表面上のこれらの点に、硬性部13を順次接触させ、接触の度に、制御回路26がコイル16aの中央位置Aの位置ベクトルOAの直交座標軸O-xyz上における各方向成分を体腔表面上の実際の位置として取り込み、取り込んだ値を画像処理回路24へ出力する。
続いて、第3の作用として、ガイド画像を作成し、超音波断層像と、超音波断層像の被検者体内での位置を案内するガイド画像と、を表示装置9へ出力する作用について説明する。
画像処理回路24は、術者が外部機器断層像上で指定して得た4つの特徴点と、術者が被検者の体腔表面上の点に硬性部13を接触させて得た各特徴点に対応する位置と、をそれぞれ照合して、直交座標軸O-xyzと、画像記憶部23に記憶された被検者の複数の外部機器断層像データ23aと、の位置関係を算出する。
次に、術者は、挿入部11を被検者の消化管や気管等の体腔内の関心領域まで挿入した状態で、キーボード8bの所定のキーを押すか、または表示装置9の画面上のメニューをマウス8aで選択することにより、超音波走査の開始を指示する。このとき、制御回路26に、IEEE1394取込回路21から超音波断層像データが入力され、RS−232C取込回路22から位置配向データが順次入力される。
続いて、制御回路26は、上述した実施例1のステップS2からステップS3で説明した作用と同様の作用を実施して、関連付けた超音波断層像データと、超音波断層像の中心の位置ベクトルOA、超音波断層像の法線方向の方向ベクトルVA 、12時方向ベクトルV12とを、逐次、バスを経由して、画像処理回路24へ出力する。これらの内の超音波断層像データは、画像処理回路24を経て、表示回路25へスルーで出力される。
その後、画像処理回路24は、画像記憶部23に記憶された複数の外部機器断層像データ23aとベクトルOA、VA 、V12とに基づいて、超音波断層像の平面に対応する切断面の画像をガイド画像データとして作成する。
そして、表示回路25は、スルーで入力してきた超音波断層像データと、ガイド画像のデータと、を表示装置9に表示可能なアナログビデオ信号に変換して、両者を並べて表示装置9へ出力する。
超音波走査によって超音波断層像が順次入力する度に、上述したように、制御回路26が、関連付けた超音波断層像データとベクトルOA,VA ,V12とを画像処理回路24へ出力し、画像処理回路24が、画像記憶部23に記憶された複数の外部機器断層像データ23aとベクトルOA,VA ,V12とに基づいて超音波断層像の平面に対応する切断面の画像をガイド画像データとして作成し、表示回路25が、スルーで入力してきた超音波断層像データとガイド画像のデータとを並べて表示装置9へ出力する、といった作用を反復的に繰り返す。そのために、表示装置9の表示画面上では、超音波断層像と、超音波断層像の被検者体内での位置を案内するガイド画像と、が超音波走査に合わせてリアルタイムに更新される。
図16は、超音波断層像56とガイド画像55とを並べて表示した表示装置9の表示画面9aの様子を示す図である。
表示画面9a内の右側には、超音波走査に合わせてリアルタイムに更新される超音波断層像56が表示されている。この図16に示す超音波断層像56は、挿入部11を消化管や気管等の体腔に挿入した状態で、超音波振動子15がラジアル走査して得た超音波断層像であり、超音波断層像56上には体腔の内壁が描出されている。
表示画面9aの左側の子画面には、超音波断層像56に合わせて同様にリアルタイムに更新されるガイド画像55が表示されている。このガイド画像55は、被検者の体表までを含んだ広い領域の画像である。
上述したように、画像処理回路24は、術者が外部機器断層像上で指定して得た4つの特徴点と、術者が被検者の体腔表面上の点に硬性部13を接触させて得た特徴点に対応する点の位置と、をそれぞれ照合して、直交座標軸O-xyzと画像記憶部23に記憶された被検者の複数の外部機器断層像データ23aとの位置関係を算出し、画像記憶部23に記憶された複数の外部機器断層像データ23aとベクトルOA,VA ,V12とに基づいて、超音波断層像56の平面に対応する切断面の画像をガイド画像データとして作成するために、超音波断層像56とガイド画像55の法線方向および12時方向が、互いに解剖学的に一致した方向となる。さらに、画像処理回路24は、広い領域を示すガイド画像55上に、超音波断層像56の位置を示す超音波断層像マーカ55aを重畳して表示するようになっている。
その他の作用については、上述した実施例3と同様である。
このような実施例5によれば、鉗子チャンネル31内に挿通され、鉗子口31aで着脱可能に固定されるコイルプローブ32内に、コイル16a,16bを設けたために、ガイド画像を観察する必要のあるときにのみ鉗子チャンネル31内にコイルプローブ32を挿通し、処置の際に処置具を挿通したり、超音波の伝播に必要な水を注水したりするときにはコイルプローブ32を鉗子チャンネル31から引き抜いて鉗子チャンネル31を処置や注水等の他の用途に用いることができる。さらに、このように鉗子チャンネル31を多目的に使用することができるために、鉗子チャンネル31を設けた超音波プローブ1の外径を太くすることなく、かつ先端側の硬性部13を長くすることなく、自由度の情報を検出することができる。
なお、実施例5では、上述した実施例3に示したような電子ラジアル走査を行うタイプの超音波プローブ1を用いて構成したが、実施例1や実施例2に示したような機械的なラジアル走査を行うタイプの超音波プローブ1を用いても構わないし、あるいは実施例4に示したようなコンベックス走査を行うタイプの超音波プローブ1を用いるようにしても良い。
さらに、実施例5では、外部機器断層像データとして、複数枚の外部機器断層像のデータを用いるように構成しているが、これに代えて、本実施例で説明したような超音波振動子15を内蔵した超音波プローブ1を用いて事前に被検者から取得した3次元画像データを、外部機器断層像データとして用いることも可能である。また、外部機器断層像データとして用いるのは、PET(Positron Emission Tomography)のような他の外部診断機器を用いて事前に取得した3次元画像データであっても良い。さらに、体外から超音波を照射する方式の、いわゆる体外式の超音波診断装置を用いて事前に取得した3次元画像データを用いても構わない。
さらに、上述した実施例5においては、光学的な観察手段を備えていない超音波プローブ1を例に挙げたが、CCDカメラを備えた光学観察窓と照明光を照射する照明窓とを硬性部13に備える超音波内視鏡を超音波プローブ1として用いても良い。このように構成することで、被検者の体腔表面上で特徴点を指定する作用を光学観察窓による視野下で行うことができ、より簡単かつ正確に特徴点を指定することができる。
図17は本発明の実施例6を示したものであり、超音波プローブの構成を示す図である。
この実施例6において、上述の実施例1〜5と同様である部分については同一の符号を付して説明を省略し、主として異なる点についてのみ説明する。
この実施例6の超音波診断装置は、上述した実施例2の図10に示した超音波診断装置と、以下の点が異なっている。
鉗子チャンネル31は、硬性部13内において湾曲も屈曲もしておらず、直線状をなしている。また、突出口31bは、挿入部11の挿入軸と平行な方向へ開口している。そして、この突出口31bには、鉗子起上台61が設けられている。この鉗子起上台61は、起上支点61a周りに回動可能に設けられている。
一方、操作部12には、鉗子起上ハンドル62が設けられている。この鉗子起上ハンドル62は、図示しないワイヤを介して鉗子起上台61と接続されている。そして、鉗子起上ハンドル62を図17の矢印の方向へ起こすと、鉗子起上台61がやはり図17の起上支点61aの周りに矢印の方向へ起上するよう構成されている。さらに、操作部12には、鉗子起上台61を任意の角度で起上させたまま保持することができるように、鉗子起上ハンドル62をロックする図示しないロック機構が設けられている。
なお、実施例2において設けられていたモータ17およびロータリーエンコーダ18は、この実施例6においても同様に設けられているが、図17においてはその図示を省略している。
また、その他の構成については、上述した実施例2と同様である。
次に、このような実施例6において、上述した実施例2と異なる作用について説明する。
術者は、鉗子口マーカ32cがちょうど鉗子口31aの位置に達することを目視で確認し、その状態になるまでコイルプローブ32を挿入して行く。その後に、術者は、鉗子口31aの固定治具を用いてコイルプローブ32が鉗子チャンネル31内を動かないように固定する。このとき、コイル16aとコイル16bとは、図17に示すように、起上支点61aを挟んだ位置に配設されるようになっている。
ここで、術者が、鉗子起上ハンドル62を図17の矢印の方向へ起こしてその位置でロックすると、コイル16aとコイル16bとは、該図17に示すように、互いの巻線軸が斜交して固定された状態となる。さらに、このときには、コイル16aが超音波振動子15の近傍に配置され、かつ巻線軸がラジアル走査の走査平面に垂直な方向へ向くように固定された状態となる。一方、コイル16bは、突出口31bから突出して固定された状態となる。
すなわち、コイル16aとコイル16bとがこのような状態で固定されるように、コイル16aと、コイル16bと、鉗子口マーカ32cと、のコイルプローブ32の先端からの距離が決められている。
その他の作用については、上述した実施例2と同様である。
このような実施例6によれば、上述した実施例2とほぼ同様の効果を奏することができる。
なお、この実施例6においては、実施例2に示したような機械的なラジアル走査を行うタイプの超音波プローブ1を用いたが、実施例3に示したような電子ラジアル走査を行うタイプの超音波プローブ1や、あるいは実施例4に示したようなコンベックス走査を行うタイプの超音波プローブ1を用いても構わない。
なお、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることは勿論である。
本発明は、超音波走査を行って超音波断層像を作成する超音波診断装置に好適に利用することができる。
本発明の実施例1における超音波診断装置の構成を示すブロック図。
上記実施例1において、硬性部に配設されている送信コイルの配置を拡大して示す図。
上記実施例1におけるプレートの外形を示す斜視図。
上記実施例1において、受信アンテナ上に定義した直交座標軸O-xyzと正規直交基底i,j,kとを示す図。
上記実施例1において、制御回路と画像処理回路との作用を示すフローチャート。
上記実施例1において、2つのコイルと超音波断層像との位置関係を示す図。
上記実施例1において、体腔に挿入された挿入部の超音波振動子がラジアル走査して得られた超音波断層像を図6の矢印Gの方向から示した図。
上記実施例1において、超音波断層像データとボクセル空間と3次元画像とを示す図。
上記実施例1において、3次元画像における切断面指定線とボクセル空間における切断面と切断面が表示される新たな3次元画像との関係を示す図。
本発明の実施例2における超音波診断装置の構成を示すブロック図。
上記実施例2において、硬性部に配設されている送信コイルの配置を拡大して示す図。
本発明の実施例3における超音波診断装置の構成を示すブロック図。
本発明の実施例4における超音波診断装置の挿入部の先端部の構成と、超音波プローブのねじりにより得られる超音波断層像データ群と、を示す図。
上記実施例4において、2つのコイルとコンベックス走査によって得られた超音波断層像との位置関係と、該位置関係の一部を簡略化して模式的に示した位置関係と、を示す図。
本発明の実施例5における超音波診断装置の構成を示すブロック図。
上記実施例5において、外部機器断層像とガイド画像とを並べて表示した表示装置の表示画面の様子を示す図。
本発明の実施例6における超音波プローブの構成を示す図。
符号の説明
1…超音波プローブ
2…超音波観測装置(超音波断層像作成手段)
3…コンバータ
4…位置配向データ算出装置(配向算出手段)
5…受信アンテナ(受信手段)
6…プレート
6a…体表接触面
7…超音波画像処理装置(画像処理手段)
8a…マウス
8b…キーボード
9…表示装置
9a…表示画面
11…挿入部
12…操作部
13…硬性部
14…可撓部
15…超音波振動子(超音波送受波手段)
16…送信コイル(送信手段)
16a,16b…コイル
17…モータ
18…ロータリーエンコーダ
21…IEEE1394取込回路
22…RS−232C取込回路
23…画像記憶部
24…画像処理回路
25…表示回路
26…制御回路
27…通信回路
31…鉗子チャンネル
31a…鉗子口(第2の開口)
31b…突出口(第1の開口)
32…コイルプローブ
32a…外筒
32b…コネクタ
32c…鉗子口マーカ(指標)
41…超音波振動子アレイ
51…ネットワーク
52…X線3次元ヘリカルCT装置
53…3次元MRI装置
55…ガイド画像
55a…超音波断層像マーカ
56…超音波断層像
61…鉗子起上台
61a…起上支点
62…鉗子起上ハンドル
代理人 弁理士 伊 藤 進