以下、本発明の実施の形態に係るインクカートリッジ装着装置について、これを搭載したインクジェット記録装置(以下、「記録装置」と称する)を例にとって図面を参照しつつ説明する。
[記録装置全体の概要]
図1は、本発明を適用した記録装置1の外観構成を示す斜視図であり、本実施の形態では記録装置1としてプリンタ機能、スキャナ機能、コピー機能、及びファクシミリ機能等を備える所謂複合機を図示している。図1に示すように記録装置1は、インクジェット方式によって画像を記録するプリンタ部2を、略直方体形状の筐体1aの下部に備え、且つスキャナ部3を筐体1aの上部に備えて構成されている。
記録装置1のプリンタ部2は、筐体1aの正面(前側)に開口4を有しており、この開口4の内側には、下側の給紙トレイ5と上側の排紙トレイ6とが2段にして設けられている。給紙トレイ5には被記録体として複数枚の記録用紙を収容でき、例えば、A4サイズ以下の各種サイズの記録用紙が複数枚収容できるようになっている。
プリンタ部2の正面の右下部分には扉7が開閉自在に設けられ、該扉7の内方にはカートリッジ装着部8(図2参照)が設けられている。従って、扉7が開かれるとカートリッジ装着部8が正面側に露出し、カートリッジ10(図2参照)が水平方向から着脱可能になっている。カートリッジ装着部8には、使用されるインク色に対応したカートリッジ10の収容ケース9(図2参照)が備えられており、本プリンタ部2では、例えば5色のカラーインク、即ち、染料インクであるシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、フォトブラック(PBk)と、顔料インクであるブラック(Bk)とが使用される。したがって、カートリッジ装着部8には内部が5つに区分けされた収容ケース9が設けられており、区分けされた各スペースに、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、フォトブラック(PBk)、ブラック(Bk)の各色インクを貯留するカートリッジ10が収容される。
記録装置1の上部に設けられたスキャナ部3は、所謂フラットベッドスキャナとして構成されている。即ち、図1に示されるように記録装置1の上面には、該記録装置1の天板として開閉自在に設けられた原稿カバー1bが備えられている。そして、原稿カバー1bの下側に、原稿が載置されるプラテンガラスや原稿の画像を読み取るイメージセンサなどが配設されている。
記録装置1の正面上部には、プリンタ部2やスキャナ部3を操作するための操作パネル11が設けられている。操作パネル11は、各種操作ボタンや情報を出力する出力部としての液晶ディスプレイ11a等から構成されており、記録装置1は、オペレータによる操作パネル11の操作の結果、該操作パネル11から出力される指示に基づいて動作可能になっている。また、記録装置1が外部のコンピュータに接続されている場合には、該コンピュータからプリンタドライバ又はスキャナドライバを介して送信される指示に基づいても記録装置1は動作可能になっている。
記録装置1の正面左上部分にはスロット部12が設けられている。スロット部12には、記憶媒体である各種小型メモリカードが装填可能であり、操作パネル11において所定の操作を行うことにより、スロット部12に装填された小型メモリカードに記憶されたデータが読み出し可能となっている。読み出されたデータは、操作パネル11の液晶ディスプレイに表示させることも可能であり、この表示に基づいて任意に選択された画像をプリンタ部2により記録用紙に記録させることができる。
図2は、記録装置1が有するプリンタ部2の構成を示す模式的断面図である。図2に示すように、記録装置1の底部近傍には給紙トレイ5が設けられており、該給紙トレイ5の上方には、図1の左右方向に長寸を成す平坦な板状のプラテン14が設けられている。このプラテン14の更に上方には画像記録ユニット17が設けられており、この画像記録ユニット17は、図示しないノズル孔からインクを吐出するヘッドユニット15a、該ヘッドユニット15aへインクを供給するサブタンク15b、及びヘッドユニット15aと電気的に接続されたアクチュエータへの駆動信号をヘッドユニット15aに出力するヘッド制御基板15c(例えばCOF:Chip on Film)等から構成されている。この画像記録ユニット17が有するサブタンク15bは、記録装置1のカートリッジ装着部8へ装着されたカートリッジ10との間で、可撓性のチューブ22を介して連通するようになっており、カートリッジ10から供給されたインクを一時的に貯留し、更にこれをヘッドユニット15aへと供給する。
また、給紙トレイ5の後方からは用紙搬送路18が延設されている。この用紙搬送路18は、給紙トレイ5の後方から上方へ向かい更に前方へ向かうように湾曲した湾曲パス18aと、該湾曲パス18aの終点から更に前方へ延びるストレートパス18bとから成り、画像記録ユニット17の配設箇所以外の部分では、所定間隔で対向する外側ガイド面と内側ガイド面とで構成されている。
給紙トレイ5の直上には、該給紙トレイ5内の記録用紙を用紙搬送路18へ供給する給紙ローラ19が設けられている。また、用紙搬送路18における湾曲パス18aの下流部分近傍には、搬送ローラ及びピンチローラから成る一対の搬送ローラ対20が、両ローラによって用紙搬送路18を上下から挟むようにして設けられている。更に、用紙搬送路18におけるストレートパス18bの下流部分近傍には、排紙ローラ及びピンチローラから成る一対の排紙ローラ対21が、両ローラによって用紙搬送路18を上下から挟むようにして設けられている。上述した画像記録ユニット17とプラテン14とは、搬送ローラ対20と排紙ローラ対21との間にて、ストレートパス18bを上下から挟むようにして設けられている。
また、画像記録ユニット17は、図1の左右方向(プラテン14の長手方向)へ延びる図示しないガイドロッドにより、図1の左右方向へのスライド移動可能なように支持されており、更に画像記録ユニット17は、プーリ及びベルト等から成る図示しないヘッド駆動機構に連結されている。従って、該ヘッド駆動機構が駆動することにより、前記ガイドロッドに沿って図1の左右方向へ所定範囲内で走査可能になっている。
このようなプリンタ部2によれば、給紙トレイ5内の記録用紙が、給紙ローラ19によって用紙搬送路18へ供給され、続いて搬送ローラ対20によって用紙搬送路18上を湾曲パス18aからストレートパス18bへと搬送される。ストレートパス18bに到達した記録用紙は、ここで対向配置された画像記録ユニット17が有するヘッドユニット15aから吐出されるインクにより画像が記録され、記録が完了すると排紙ローラ対21によってストレートパス18bから排出されて排紙トレイ6へ収容されるようになっている。
ところで、同じ色のインクを収容するカートリッジ10であっても、市場においてインク容量の異なる2種類のカートリッジ10(カートリッジ10a,10b(図3,図12参照))が流通しているものもある。本実施形態に係る記録装置1は、カートリッジ装着部8に設けられた一つの収容ケース9に2種類のカートリッジ10a,10bのいずれも装着可能なように構成されている。
[一方のカートリッジの構成]
次に、図3〜図11を参照して、一方のカートリッジ10aの構成について説明する。図3は、カートリッジ10aの外観構成を示す斜視図であり、図4は、図3に示すカートリッジ10aの側面図である。なお、本実施の形態に係るカートリッジ10aは、伸縮可能な構成となっており、図3(a)及び図4(a)は収縮したときの構成、図3(b)及び図4(b)は伸長したときの構成をそれぞれ示している。なお、以降の説明では、図3におけるカートリッジ10の手前側を前部または前方とし、奥側を後部または後方として説明する。
図3及び図4に示すように、カートリッジ10aは、ここに図示された起立姿勢で扁平形状の略六面体に構成されており、幅方向(Z方向)の寸法が小さく、高さ方向(Y方向)及び奥行き方向(X方向)の各寸法が幅方向の寸法よりも大きい直方体形状となっている。そして、このような起立姿勢のまま、X方向へ向かって運ばれてカートリッジ装着部8へ装着される。このようなカートリッジ10aは、内部のインク室100(図5参照)にインクを収容するカートリッジ本体30(図4参照)と、該カートリッジ本体30の前部30aをカバーする前側カバー31と、カートリッジ本体30の後部30bをカバーする後側カバー32とから構成されている。本実施の形態では、これらカートリッジ本体30、前側カバー31、及び後側カバー32は、何れもナイロン、ポリエチレン、又はポリプロピレン等の樹脂材料によって形成されている。以下、カートリッジ10aが有するカートリッジ本体30、前側カバー31、及び後側カバー32について順に説明する。
[カートリッジ本体]
図5は、カートリッジ本体30の外観形状を示す斜視図であり、(a)は斜め前方から見たときの構成、(b)は斜め後方から見たときの構成をそれぞれ示している。また、図6は、図5に示すカートリッジ本体30の側面図、図7は、図5におけるVII-VII線でカートリッジ本体30を切断したときの断面図、図8は、カートリッジ本体30の前部30aの構成を拡大して示す拡大断面図である。
図5及び図6に示すように、カートリッジ本体30はカートリッジ10aと同様の扁平形状の略六面体として構成されており、上下方向に長寸を成してカートリッジ10aの挿入方向(X方向)の前側に位置する前面41および後側に位置する後面42と、カートリッジ10aの挿入方向へ長寸を成す上面43及び下面44と、挿入方向の左右に位置して正方形状を成し後面42から見て左側の左側面45及び右側の右側面46とを有している。そして、このカートリッジ本体30は、その筐体を成すフレーム50と、インクの残量を検出するためのアーム70と、大気連通バルブ80と、インク供給バルブ90と、フレーム50と共にインク室100を形成する図示しない透明なフィルムとによって主に構成されている。
このうちフレーム50は、上記の通りカートリッジ本体30の筐体を成すものであって、上述した各面41〜46を形成する。また、フレーム50は透光性のある透明又は半透明の樹脂材料で構成されており、例えば、ポリアセタール、ナイロン、ポリエチレン、又はポリプロピレンなどの樹脂材料を射出成形することによって形成されている。
図5及び図6に示すように、フレーム50は、カートリッジ本体30の前面41、上面43、後面42、下面44に沿うように側面視で環状に形成された外周壁51と該外周壁51の内側に設けられた内壁52とを有し、これら外周壁51及び内壁52は一体的に形成されている。また、外周壁51の上面43には下方へ窪んだ凹部59が形成され、下面44には上方へ窪んだ凹部60が形成されている。そして、このように環状を成す外周壁51の左右の周縁部(側面45、46側)には、透明な樹脂で構成された薄肉状のフィルムが溶着されて左右の開口57a,57bが閉塞され、これによって外周壁51とフィルムとで囲まれる空間がインク室100として区画される。
外周壁51内に設けられた内壁52は、外周壁51と略同様の幅方向寸法を有し、その左右の縁部(側面45、46側)にも上記フィルムが溶着される。従って、フィルムの弛みを抑制できると共に、前側カバー31及び後側カバー32に対してカートリッジ本体30側への外力が加えられても、これらのカバー31,32を内側から支持し、その変形を規制している。
一方、図5に示すように、フレーム50の後側下部にはインク注入部150が一体的に形成されている。インク注入部150は、フレーム50の後面42からインク室100へ向かって穿設された孔を有する筒状体であって、インク室100にインクを注入する際に該インクの注入路を成す。
また、フレーム50の前部であって上下方向の略中央部分には、フレーム50と一体的に形成された検知窓140が、前面41から前方へ突出するようにして設けられている。この検知窓140は、インク室100に収容されているインク残量を視覚的又は光学的に検知するためのものであり、フレーム50と同様に透光性のある透明又は半透明の樹脂材料で構成されている。検知窓140には、記録装置1のカートリッジ装着部8に取り付けられた後述するフォトインタラプタなどの光学式センサ230から出射された光が側方(Z方向)から照射される。図5に示すように検知窓140は、左右の側面140a,140aを有する中空のボックス形状を成しており、その内部空間142はインク室100に連通している。
次に、アーム70は、図7に示すようにフレーム50内にあって前方へ延びるインジケータ部72と後方へ延びるフロート部73とを有し、これらの中間部分に位置する支持軸77が、外周壁51の内面に突設されたリブ74によって揺動可能に支持されている。このうちインジケータ部72は、アーム70が揺動することによって上記検知窓140に対して進入又は退出し、進入している状態では外側方からの入射光が検知窓140を透過できず、退出している状態では透過可能になる。また、フロート部73は中空に形成されており、インク室100に収容されるインクに対して浮力体の役割を担う。
このようなアーム70は、インク室100にインクが満載された状態では、フロート部73が上方に位置し、インジケータ部72は反対に下方に位置して検知窓140の内部空間142に進入した状態となっている。この状態からインクが所定量を超えて減少していくと、フロート部73が下降しはじめ、これに伴ってアーム70が支持軸77を中心に揺動する。すると、インジケータ部72は検知窓140から上昇し、最終的には検知窓140から退出することとなる。そして、インジケータ部72が検知窓140から退出した状態では、外側方からの入射光は検知窓140を透過可能になる。従って、後述するように検知窓140を光が透過可能か否かを光学式センサで検知することにより、インク室100内のインク残量を検出することができる。
次に、大気連通バルブ80は、図7に示すように検知窓140の上方であってフレーム50の前面41の上部に形成された第1バルブ収容室54に収容されている。図8に拡大して示すように、第1バルブ収容室54はインク室100に連通する開口82を有し、大気連通バルブ80はこの開口82に装着されて該開口82を開閉するバルブ機構を成している。
より詳しく説明すると、大気連通バルブ80は、バルブ本体87、バネ86、シール部材83、及びキャップ85等の部材で構成されている。バルブ本体87は棒状を成し、その前端が開口82から前方へ突出するようにして配設されている。シール部材83及びキャップ85は共に円筒状を成し、シール部材83にキャップ85が外嵌した状態で該キャップ85が第1バルブ収容室54の開口82に装着され、上記バルブ本体87はシール部材83の内側を挿通して且つ前後方向(X方向)へスライド可能に設けられている。更に、バネ86は第1バルブ収容室54内に配設されて、バルブ本体87を後方から前方へ向けて付勢している。
このような大気連通バルブ80は、バルブ本体87がバネ86に付勢されて前方に位置する状態(図8の状態)では、第1バルブ収容室54の開口82を閉塞する一方、バルブ本体87がバネ86の付勢力に抗って後方へ位置すると、開口82とバルブ本体87との隙間に大気連通口81が形成され、インク室100はこの大気連通口81を介して大気に開放された状態となる。
次に、インク供給バルブ90は、図7に示すように検知窓140の下方であってフレーム50の前面41の下部に形成された第2バルブ収容室55に収容されている。図8に拡大して示すように、第2バルブ収容室55はインク室100に連通する開口92を有し、インク供給バルブ90はこの開口92に装着されて該開口92を開閉するバルブ機構を成している。
より詳しく説明すると、インク供給バルブ90は、バルブ本体97、バネ96、シール部材93、キャップ95等の部材で構成されている。バルブ本体97は、軸芯を前後方向へ向けた円筒状を成し、第2バルブ収容室55の開口92内に配設されている。シール部材93及びキャップ95は共に前後方向への貫通孔を有する略円筒状を成し、シール部材93にキャップ95が外嵌した状態で該キャップ95が開口92に装着されており、上記バルブ本体97はシール部材93よりも開口92の内方(即ち、第2バルブ収容室55の内方)にて前後方向へスライド可能に設けられている。更に、バネ96は第2バルブ収容室55内に配設されて、バルブ本体97を後方から前方へ向けて付勢している。
このようなインク供給バルブ90は、バルブ本体97がバネ96に付勢されて前方に位置する状態(図8の状態)では、第2バルブ収容室55の開口92を閉塞している。一方で、カートリッジ装着部8には、これにカートリッジ10が装着されたときのインク供給バルブ90に対応する位置にインクニードル(図示せず)が備えられており、該インクニードルは、カートリッジ10が装着されたときにバルブ本体97を後方へ押動する。そして、インクニードルに押動されたバルブ本体97が、バネ96の付勢力に抗って後方へ位置すると、開口92とバルブ本体97との隙間にインク供給口91が形成される。その結果、インク室100はカートリッジ装着部8に接続されたチューブ22にインク供給口91を介して連通し、インク室100内のインクがチューブ22を通じてサブタンク15b(図2参照)へ供給される。
ところで、図7に示すように、フレーム50における第1バルブ収容室54の上方には第1バネ収容室110が形成され、第2バルブ収容室55の下方には第2バネ収容室111が形成されている。これらのバネ収容室110,111は、フレーム50の前面41から後方(インク室100側)へ穿設された有底の孔であり、カートリッジ本体30の前部に装着される前側カバー31を前方へ付勢するためのコイルバネ23,24が収容されるようになっている(図9参照)。
更に、フレーム50の上面43の前端部には第1カバー支持部材115が形成され、下面44の前端部には第2カバー支持部材116が形成されている。これらのカバー支持部材115,116は、前方へ延びる棒状部材の前端にかぎ爪状の突起115a,116aを設けた如くに形成されており、次に説明する前側カバー31をスライド可能に支持しつつ、該前側カバー31がカートリッジ本体30から脱落しないように規制する。
[前側カバー]
図9は、図3(a)に示すカートリッジ10aをIX-IX線で切断したときの構成を示す断面図であり、図10は、図3(b)に示すカートリッジ10aをX-X線で切断したときの構成を示す断面図である。また、図11は、図9に示すカートリッジ10aの部分的な拡大図であり、(a)は図9にて二点鎖線XIaで囲んだ上部を拡大して示し、(b)は図9にて二点鎖線XIbで囲んだ下部を拡大して示している。
図9に示すように、前側カバー31は、カートリッジ本体30の前部30aを収容可能な容器形状に形成されており、カートリッジ本体30の前部30aの形状に対応して扁平に形成されている。そして、カートリッジ本体30の前面41に対応する前壁161と、上面43に対応する上壁163と、下面に対応する下壁164と、左側面45に対応する左側壁165と、右側面46に対応する右側壁166とを有し、これらに囲まれて後方に開いた空間に、カートリッジ本体30の前部30aを収容可能になっている。また、前側カバー31には、後述する光学式センサ230,235による検知対象となる第1被検知部185及び第2被検知部186が設けられ、更に、切欠部187を形成されている。
図3及び図4に示すように、切欠部187は、前側カバー31の前壁161における上下方向の略中央位置にて、前壁161が後方へ窪むようにして形成されており、前側カバー31の左右の空間を連通している。そして、前側カバー31がカートリッジ本体30に装着された状態で、カートリッジ10aがカートリッジ装着部9へ装着されると、該切欠部187を介して検知窓140が外部へ露出されるようになっている。
第1被検知部185は、切欠部187の前方の位置に設けられており、切欠部187の上下の前壁161から前方へ突出したブリッジ部189を有している。このブリッジ部189は、光を透過させない樹脂部材によって前後方向の厚み寸法が小さい平板状に構成されており、ブリッジ部189と切欠部187との間(即ち、切欠部187の前方)には隙間190(図3参照)が形成されている。この隙間190は、切欠部187と同様に、前側カバー31の左右の空間を連通している。
第2被検知部186は、前壁161の上部から前方へ突出するように設けられている。この第2被検知部186は、左右方向(X方向)へ面を向けた平板状を成し、上記第1被検知部185と同様に光を透過させない樹脂部材によって形成されている。
また、前側カバー31には、カートリッジ10aをカートリッジ装着部9へ装着する過程で、該カートリッジ装着部9の奥面に対して最初に当接する突出部181と、前側カバー31のカートリッジ本体30に対するスライド動作を案内するガイドロッド168,169とが設けられている。このうち、突出部181は、前側カバー31の前壁161の下部から前方へ突出するようにして、前側カバー31と一体的に形成されている。
ガイドロッド168,169は、前壁161の裏面(即ち、カートリッジ本体30の前面41に対向する後面)の上部及び下部から後方へ向かって棒状に延びている。上側のガイドロッド168は、カートリッジ本体30の第1バネ収容室110内のコイルバネ23の内孔に前方から挿通され、下側のガイドロッド169は、第2バネ収容室111内のコイルバネ24の内孔に前方から挿通されている。
また、前側カバー31には、上記ガイドロッド168,169と同様に、前側カバー31のカートリッジ本体30に対するスライド動作を案内する摺動溝171,172が、上壁163の前部および下壁164の前部に夫々設けられている。このうち上側の摺動溝171は、前側カバー31の上壁163が正面視で逆向きの略U字形状に形成されることで構成されており、下側の摺動溝172は、前側カバー31の下壁164が正面視でU字形状に形成されることで構成されている。これらの摺動溝171,172の奥部(即ち、後方)には、摺動溝171,172の溝面から突出した突起片171a,172aが設けられている。
更に、図9及び図10に示すように、前側カバー31には、第1被検知部185とその上方の第2被検知部186との間に押圧部174が設けられ、また、第1被検知部185と突出部181との間には開口180が形成されている。このうち押圧部174は、前側カバー31が有する前壁161の裏面にて、カートリッジ本体30の大気連通バルブ80に対応する位置に設けられており、前側カバー31とカートリッジ本体30とが近接したときに、大気連通バルブ80が有するバルブ本体87の前端を後方へ押圧する。また、開口180は、前側カバー31の前壁161にてインク供給バルブ90に対応する位置に設けられている。
次に、このような前側カバー31をカートリッジ本体30に装着する場合について説明する。前側カバー31の後方にカートリッジ本体30を位置させた状態から、両者を接近させて装着するに際し、まず、第1カバー支持部材115を上側の摺動溝171に挿入し、同時に第2カバー支持部材116を下側の摺動溝172に挿入する。すると、第1カバー支持部材115の前端に設けられた突起115aが、突起片171aを超えて摺動溝171の奥へ進入し、第2カバー支持部材116の前端に設けられた突起116aが、突起片172aを超えて摺動溝172の奥へ進入する。これにより、前側カバー31をカートリッジ本体30から前方へ引き抜こうとしても、突起115a,116aと突起片171a,172aとが引っ掛かり、引き抜けないようになっている。
このように前側カバー31をカートリッジ本体30に装着すると、前側カバー31に設けられた2つのガイドロッド168,169が、カートリッジ本体30に設けられた第1バネ収容室110内のバネ23の内孔と第2バネ収容室111内のバネ24の内孔とに挿通される。そして、前側カバー31は、ガイドロッド168,169によってカートリッジ本体30に対するスライド方向が前後方向に規制されつつ、バネ23,24によって前方へと付勢される。従って、外力が付与されていないときには、前側カバー31はカートリッジ本体30から前方へ離隔した状態(図10に示す状態:以下、「第1位置」と称する)で維持される。一方、前側カバー31をカートリッジ本体30へ接近させるように外力が付与されると、前側カバー31はカートリッジ本体30に近接した状態(図9に示す状態:以下、「第2位置」と称する)になる。
また、前側カバー31が第1位置から第2位置へスライドすると、前側カバー31が有する押圧部174が大気連通バルブ80のバルブ本体87を後方へ押圧する。これにより、バルブ本体87はバネ86の付勢力に抗って第1バルブ収容室54へ埋没し、インク室100内が大気開放される。他方、このときカートリッジ本体30が有するインク供給バルブ90は、前側カバー31が有する開口180を通じて前方へ突出する。これにより、インク供給バルブ90のバルブ本体97は、カートリッジ装着部8に設けられたインクニードル(図示せず)によってバネ96の付勢力に抗って後方へ押動され、インク室100内のインクがインク供給口91及びチューブ22を経てサブタンク15b(図2参照)へと供給される。
[後側カバー]
図9に示すように、後側カバー32は、カートリッジ本体30の後部30bを収容可能な容器形状に形成されており、カートリッジ本体30の後部30bの形状に対応して扁平に形成されている。そして、カートリッジ本体30の後面42に対応する後壁212と、上面43に対応する上壁213と、下面44に対応する下壁214と、左側面に対応する左側壁215と、右側面46に対応する右側壁216とを有し、これらに囲まれて前方に開いた空間に、カートリッジ本体30の後部を収容可能になっている。
この後側カバー32における上壁213及び下壁214の内面には突起片210,211が夫々設けられている。この突起片210,211は、カートリッジ本体30が有するフレーム50の上面43及び下面44に夫々設けられた凹部59,60に対応して設けられている。そして、カートリッジ本体30の後部30bに後側カバー32が装着されると、上記突起片210,211が凹部59,60に嵌合することとなり、カートリッジ本体30と後側カバー32とが確実に係合されるようになっている。
[他方のカートリッジの構成]
次に、上記カートリッジ10aと同様にカートリッジ装着部8へ装着される、他方のカートリッジ10bの構成について説明する。図12は、他方のカートリッジ10bの構成を示す図面であり、(a)は前側カバー31を実線としその他の外形状を破線とした斜視図を示し、(b)は前側カバー31の側面図を示している。なお、カートリッジ10bは、前側カバー31において、既に説明したカートリッジ10aの第1被検知部185とは異なる形態の第1被検知部195を有する点でカートリッジ10aと相違する。従って、以下では、この第1被検知部195の構成について説明し、その他のカートリッジ10aと共通する構成については説明を省略する。また、カートリッジ10bの前側カバー31においても、カートリッジ10aの前側カバー31と同様の構成については、同一の符号を付すこととしてその一部の説明は省略する。
図12に示すように、カートリッジ10bが有する第1被検知部195は、既に説明した第1被検知部185と同様に、光を透過させない樹脂材料で形成されており、前側カバー31の前壁161における上下方向の略中央位置に設けられている。この第1被検知部195は、切欠部187の上下の前壁161から前方へ突出したブリッジ部199を有している。このブリッジ部199は、カートリッジ10aのブリッジ部189とは異なり、左右方向の端部に側壁198が設けられている。従って、カートリッジ10aの第1被検知部185のように、ブリッジ部189と切欠部187との間に光を透過させる隙間190は形成されておらず、この隙間190に換わって光を透過させない側壁198が存在している。
[カートリッジ装着部の構成]
図13は、カートリッジ装着部8の構成を示す模式的断面図である。図13に示すように、カートリッジ装着部8は、本実施の形態においては既に説明した5色のインクを収容するカートリッジ10(カートリッジ10a,10b)が装着されるべく、5つの収容室9aに区分けされた収容ケース9と、該収容ケース9の開口9bを開閉するロックレバー220とを備えている。収容ケース9は、後方(図13で右側)に前記開口9bを有する略直方体形状を成しており、その上壁221の後端部にてロックレバー220の基端部が回動自在に枢支され、該ロックレバー220は収容ケース9の開口9bを覆う矩形状の蓋体となっている。従って、ロックレバー220をその基端部を中心に上方へ回動させ、開口9bを開いた状態にすると、該開口9bを通じて収容室9aへカートリッジ10を装着可能となる。そして、各収容室9aに装着されるカートリッジ10に関する情報を検出すべく、各収容室9aの奥側(図13で左側)には、第1光学式センサ230と第2光学式センサ235とがそれぞれ設けられている。
図14は、第1光学式センサ230の構成を示す図面であり、(a)は1つの第1光学式センサ230の模式的断面図を示し、(b)はその検出回路を示している。この図14(a)に示すように、本実施の形態では、第1光学式センサ230として透過型光学式センサであるフォトインタラプタが採用されており、アーム状に平行に延びてペアを成す樹脂製中空の発光素子ケース232a及び受光素子ケース232bを有している。また、これらの発光素子ケース232a及び受光素子ケース232bの基部は、同じく樹脂製部材232cによって連結されており、第1光学式センサ230は全体的に略U字状の外観形状となっている。
発光素子ケース232aの先端内には発光ダイオード(図14(b)参照)から成る発光素子233が配設され、これら発光素子ケース232aと発光素子233とで発光部240が構成されている。一方、受光素子ケース232bの先端内にはフォトダイオード(図14(b)参照)から成る受光素子234が配設されており、これら受光素子ケース232bと受光素子234とで、上記発光部240と共にペアを形成する受光部241が構成されている。
そして、ペアを成す発光素子ケース232a及び受光素子ケース232bは、互いに所定間隔を空けて設けられており、発光素子ケース232aの先端部には、内外を貫通する2つのスリット242,243が形成され、受光素子ケース232bの先端部には、同様に内外を貫通する2つのスリット244,245が形成されている。このうち、発光素子ケース232aが有する一方のスリット242は、ペアを成す受光素子ケース232bとは反対方向へ向かって開口しており、他方のスリット243は、前記受光素子ケース232bへ向かって開口している。また、受光素子ケース232bが有する一方のスリット244は、ペアを成す発光素子ケース232aへ向かって開口しており、他方のスリット245は、前記発光素子ケース232aとは反対方向へ向かって開口している。従って、発光素子233が駆動して光を照射すると、その光はスリット242,243を介して射出される。また、受光素子234は、2つのスリット244,245からの入射光を受光可能になっている。更に、発光素子233からスリット243を介して射出された光は、スリット244を介してペアを成す受光素子234にて受光されるようになっている。
また、図14(b)の検出図では、第1光学式センサ230の出力は、受光素子234を成すフォトダイオードへ光が入射していない状態では、該フォトダイオードがOFFとなって相対的にHIGHレベルの信号を出力し、光が入射している状態では前記フォトダイオードがONとなって相対的にLOWレベルの信号を出力するようになっている。
図13に示すように、このような第1光学式センサ230は、収容ケース9の奥壁面222における上下方向の略中央位置に設けられており、該奥壁面222から開口9bの方向(即ち、後方)へ向かって発光素子ケース232a及び受光素子ケース232bを伸ばした状態で、且つ発光素子233及び受光素子234が左右(図13のZ方向)に位置するようにして取り付けられている。そして、これら発光素子233と受光素子234との間(即ち、発光素子ケース232a及び受光素子ケース232bの間)には、発光素子233が駆動することによってペアを成す発光素子233から受光素子234へ向かう光の光路となる領域231が形成されている。また、このような第1光学式センサ230は、その発光素子233および受光素子234がセンサ基板240にハンダ付けされることで、基部の樹脂性部材232c(図4参照)がセンサ基板240に固定され、センサ基板240を介して記録装置1本体側と電気的に接続されている。センサ基板240は、横長の略長方形状で、その長手方向に各インクカートリッジごとの5つの第1光学式センサ230がZ方向に一列に並設されている。収容ケース9の外側奥壁面222には、奥壁面222側から開口9bの方向(即ち、後方)に貫通する開口222aが、5つの第1光学式センサの配置位置に対応して形成されていて、その開口222aを介して各ケース232a,232bが開口9bの方向へ延びた状態で設置されている。
図15は、カートリッジ装着部8に設けられた第1光学式センサ230のうち、隣接する2つの第1光学式センサ230(230a,230b)を模式的に示す断面図である。図15に示すように、隣接する2つの第1光学式センサ230a,230bは、夫々においてペアを成す発光部240及び受光部241が、交互に位置すると共にZ方向に沿って一列を成すように配設されている。即ち、第1光学式センサ230aが有する発光素子233及び受光素子234と、第1光学式センサ230bが有する発光素子233及び受光素子234とは、Z方向に沿う同軸上(図15中の一点鎖線参照)に配設され、且つ、第1光学式センサ230aの受光素子234が、第1光学式センサ230bの発光素子233に隣接するように配設されている。
このような構成により、第1光学式センサ230aの受光部241が有する受光素子234は、ペアを成す発光部240が有する発光素子233からの光を、スリット243,244を介して受光可能であると共に、隣接して他のペアを成す第1光学式センサ230bの発光部240が有する発光素子233からの光を、スリット242,245を介して受光可能になっている。そして、第1光学式センサ230bの発光部240と第1光学式センサ230aの受光部241との間の領域は、第1光学式センサ230bの発光素子233から第1光学式センサ230aの受光素子234へ向かう光の光路となる領域246を成し、この領域246は、ここを通る光を遮蔽したり輝度を低下させるような介在物が存在しない空間となっている。
ここで、上記介在物とは、受光素子234がスリット245を介して受光した光に基づいて、発光素子233が射出する光の輝度を判別する際に、この判別が困難となる程度に光を遮蔽したりその輝度を低下させるものを意味しており、例えば、空気や透明ガラスなどは含まない概念である。
なお、上述した説明では隣接した2つの第1光学式センサ230a,230bについてのみ言及したが、5つの第1光学式センサ230のうち、隣接する任意の2つの第1光学式センサ230,230において上述したのと同様の構成となっている。また、5つの第1光学式センサ230のうち、最も端(Z方向の一端及び他端)に位置するものについては、図15に示したものとは異なる構成を有することができる。より詳説すると、図15に示す第1光学式センサ230aを、Z方向の一端に配設されたものとすると、この第1光学式センサ230aでは発光部240に隣接して他のペアを形成する受光部241が存在しない。従って、このような発光部240においては、発光素子ケース232aにスリット242は必要なく、これを備えない構成としてもよい。また、図15に示す第1光学式センサ230bを、Z方向の他端に配設されたものとすると、この第1光学式センサ230bでは受光部241に隣接して他のペアを形成する発光部240が存在しない。従って、このような受光部241においては、受光素子ケース232bにスリット245は必要なく、これを備えない構成としてもよい。
一方、第2光学式センサ235は、上述したように第1光学式センサ230と同様の構成を備えているためここでの詳細な説明は省略するが、図13に示すように、収容ケース9の上壁面221における奥側の部分に設けられており、該上壁面221から下方へ向かって発光素子ケース232a及び受光素子ケース232bを伸ばした状態で、且つ発光素子233及び受光素子234が左右(Z方向)に位置するようにして取り付けられている。そして、これら発光素子233と受光素子234との間には、発光素子233が駆動することによって発光素子233から受光素子234へ向かう光の光路となる領域236が形成されている(図14(a)も参照)。また、この第2光学式センサ235も上記第1光学式センサ230と同様に、センサ基板241にカートリッジ装着部8に装着されるカートリッジ10の数に応じて、Z方向(図13参照)に沿って5つ設けられ、収容ケース9の上壁面221に貫通する各開口221aを介して設置されている。その配設態様については、図15を用いて説明した第1光学式センサ230と同様であるため、ここでの説明は省略する。
なお、詳細は後に説明するが、このような第1光学式センサ230は、カートリッジ10がカートリッジ装着部8へ装着されたときに、このカートリッジ10の種類を検知する役割と、カートリッジ10内のインク残量を検知する役割とを担う。また、第2光学式センサ235は、カートリッジ10がカートリッジ装着部8へ装着される過程で、カートリッジ10が装着過程にあるか否かを検知する役割を担う。
一方、収容ケース9の奥壁面222の下部には、カートリッジ10のインク供給口91と連結する連結部223が設けられている。この連結部223は円筒形状を成し、奥壁面222から開口9b側(即ち、後方)へ突出しており、その内孔223aを通じて収容ケース9の内外を連通している。この内孔223aには、サブタンク15b(図2参照)に一端が接続されたチューブ22の他端が接続される。また、この連結部223の内孔223aの内側には図示しないインクニードルが設けられており、カートリッジ10が装着されると、このインクニードルがカートリッジ10のインク供給バルブ90のバルブ本体97を押し込む。その結果、インク供給口91と連結部223の内孔223aとが連通し、インク室100内のインクがチューブ22を通じてサブタンク15bへ供給可能となる。
また、収容ケース9の奥壁面222の上部と下部とには、それぞれ当接部225,226が設けられている。このうち上側の当接部225は、カートリッジ10の上側の第2被検知部186(図10参照)に対応して設けられており、該カートリッジ10が装着される過程で第2被検知部186の前端を受け止める。下側の当接部226は、カートリッジ10の下側に設けられた突出部181(図10参照)に対応して設けられており、該カートリッジ10が装着される過程で突出部181の前端を受け止める。
また、収容ケース9に枢支されたロックレバー220は、上述したように収容ケース9の開口9bの蓋体として開閉するだけでなく、収容室9a内にカートリッジ10を確実に装着し固定する役割も果たす。より詳しく説明すると、ロックレバー220の先端部には、オペレータが把持すべく外方へ突設されたグリップ220aと、収容ケース9に係合すべく内方へ突設された係合爪220bとが設けられている。一方、収容ケース9の開口9bの下方の縁部には、前記係合爪220bと係合するための係合溝227が形成されている。そして、グリップ220aを把持してロックレバー220を回動して開口9bを閉じると、係合爪220bと係合溝227とが互いに係合し、ロックレバー220は収容ケース9の開口9bを確実に閉鎖する。また、ロックレバー220の枢支箇所には開閉センサ228が設けられており、ロックカバー220の開閉状態が検知可能になっている。
[カートリッジの装着]
次に、図16〜図18を参照しつつ、カートリッジ10aをカートリッジ装着部8に装着する場合の動作について説明する。ここで、図16〜図18は何れもカートリッジ10aがカートリッジ装着部8へ装着される過程を示す模式的断面図であり、図16は、第2被検知部186が第2光学式センサ235によって検知された状態を示し、図17は、第2被検知部186及び突出部181の前端が収容ケース9の奥壁面222に当接した状態を示し、図18は、収容ケース9にカートリッジ10aが完全に装着された状態を示している。
まず、図16に示すように、カートリッジ10aが後端部を除いてその大部分が収容ケース9内に挿入されると、第1被検知部185のブリッジ部189が第1光学式センサ230の領域231に進入する(図14(a)も参照)。その後、更にカートリッジ10aが奥へ挿入されることにより、第2被検知部186が第2光学式センサ235の領域236へ進入する。そして、このとき、第1光学式センサ230の発光素子233からの光は、第1被検知部185が有する隙間190(図3参照)を通過して受光素子234へ到達する状態となっている。
次に、図17に示すように、カートリッジ10aが、前側カバー31がカートリッジ本体30から離隔した第1位置にある状態で、収容ケース9の最奥部まで挿入されると、カートリッジ10aの突出部181が当接部225に当接すると共に、第2被検知部186の前端が当接部226に当接し、前側カバー31はそれ以上は前方へ進入できない状態となる。このとき、第1被検知部185は、第1光学式センサ230の領域231よりも前方へ位置し、隙間190に換わって切欠部187が領域231に進入している。
図17に示す状態から、ロックレバー220を開口9bが閉じられる方向へ回動させると、ロックレバー220の内面がカートリッジ10aの後端に当接し、これを前方へと押圧する。すると、コイルバネ23,24が収縮して前側カバー31に対して接近するように、カートリッジ本体30及び後側カバー32が前方へ更に進入する。この進入過程で、カートリッジ10aのインク供給口91が連結部223に連結され、他方では、カートリッジ本体30の検知窓140が前進して切欠部187から露出し、この検知窓140が第1光学式センサ230の領域231に進入する。
図18に示すように、ロックレバー220が開口9bに対して完全に閉じられて、係合爪220bが係合溝227に嵌め込まれると、開口9bに対してロックレバー220がロックされると共に、開口9bはロックレバー220によって完全に閉塞される。このとき、前側カバー31に対してカートリッジ本体30は、最も近接する第2位置に到達しており、前側カバー31の押圧部174によって大気連通バルブ80のバルブ本体87が後方へ押動され、インク室100内は大気開放される。その結果、インク室100内のインクは、背圧が大気圧と等しくなり、インク供給口91からインクを供給可能な状態となる。
[記録装置の機能的構成]
図19は、記録装置1が備える主な機能を示すブロック図である。図19に示すように、記録装置1は、その全ての動作を制御するための制御部200を備えており、該制御部200は、プロセッサ201、ROM202、RAM203、EEPROM204、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)205から主として構成されている。
ROM202には、プロセッサ201が記録装置1の各種の動作を実行するために必要なプログラムが格納されている。RAM203は、プロセッサ201が上記プログラムを実行する際に用いる各種データを一時的に記録する記憶領域として、又は上記プログラムを実行する際の作業領域として使用される。EEPROM204には、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等が格納される。
また、ASIC205には、制御部200の外部に設けられたヘッド制御基板15c、第1光学式センサ230、第2光学式センサ235、開閉センサ228、及び液晶ディスプレイ11a等が接続されている。なお、図19には示していないが、これらの他にも給紙ローラ19、搬送ローラ対20、排紙ローラ対21などを駆動させる駆動回路などもASIC205に接続されている。
ヘッド制御基板15cは、ヘッドユニット15aと電気的に接続され、ASIC205から入力された信号に基づいてヘッドユニット15aを駆動する。これにより、ヘッドユニット15aのノズルから、所定のタイミングで所定の色のインクが選択的に吐出され、記録用紙に画像が形成される。
第1光学式センサ230は、受光素子で受けた光の輝度(受光量)に応じた信号(以下「受光信号」と称する)を出力する。詳細には、第1光学式センサ230の発光素子233で出射されて受光素子234で受けた光の輝度に応じたアナログの電気信号(電圧信号又は電流信号)が、受光信号として第1光学式センサ230から出力される。出力された受光信号は、制御部200に入力され、該主制御部200において、その電気的レベル(電圧値又は電流値)が所定の閾値Va(図20参照)以上の場合にLOWレベル信号と判定され、この閾値Va未満の場合にHIGHレベル信号と判定される。本実施の形態では、上記受光信号は、第1光学式センサ230の領域231において光が遮蔽されている場合に閾値Va未満となってHIGHレベル信号と判定され、遮蔽されていない場合に閾値Va以上となってLOWレベル信号と判定される。なお、閾値は、一定値であってもよいし、例えば、閾値VH以上であればLOWレベル信号、閾値VL未満であればHIGHレベル信号とするといったように閾値は異なる値を基準としてもよい。
第2光学式センサ235は、上述の第1光学式センサ230と同じ原理に基づいて動作し、受光素子で受けた光の輝度(受光量)に応じた受光信号を出力するものである。従って、ここでの詳細な説明は省略する。なお、本実施の形態に係る第2光学式センサ235は、第1光学式センサ230と同様に閾値Vaを基準として信号レベルがHIGHかLOWかを判断するが(図20参照)、異なる値の閾値を基準としてもよい。
開閉センサ228は、ロックレバー220が所定の開度にまで開かれたときに所定の信号を出力する。この信号は制御部200へ入力され、制御部200はこの信号に基づいてロックレバー220が開いた状態であることを判別する。また、液晶ディスプレイ装置11aは、ASIC205から入力された信号に基づいて文字列やシンボルマーク等のオペレータによって認識可能な情報を出力する。
本実施の形態では、このような記録装置1における制御部200、第1光学式センサ230、及び第2光学式センサ235により、カートリッジ10に関する情報の検出と、第1光学式センサ230及び第2光学式センサ235の劣化の検出とを実行可能なカートリッジ装着装置300が構成されている。
[光学式センサの出力波形]
図20は、上記第1光学式センサ230及び第2光学式センサ235から制御部200へ入力される受光信号の信号レベルを示す図面であり、時系列的に波形の変化を示している。また、(a),(b)はカートリッジ10aが装着されたときの波形変化を示しており、このうち(a)は第2光学式センサ235からの受光信号の波形変化を、(b)は第1光学式センサ230からの受光信号の波形変化を示している。また、(c),(d)はカートリッジ10bが装着されたときに波形変化を示しており、このうち(c)は第2光学式センサ235からの受光信号の波形変化を、(d)は第1光学式センサ230からの受光信号の波形変化を示している。
この図20に示されるように、カートリッジ装着部8にカートリッジ10a,10bのいずれが装着された場合であっても、第2光学式センサ235は同じ波形の受光信号を出力する。つまり、第2光学式センサ235の領域236に第2被検知部186が進入して光を遮蔽すると、時刻T1において、信号レベルがLOWからHIGHに変化し、その後、カートリッジ10a,10bが完全に装着されるまでこの状態が維持される。なお、制御部200では、第2光学式センサ235からの受光信号の信号レベルがLOWからHIGHに変化したことをもって、後述する判定処理(図21参照)を開始するトリガ信号としている。
これに対し、カートリッジ装着部8にカートリッジ10aが装着される場合とカートリッジ10bが装着される場合とでは、第1光学式センサ230から出力される受光信号の波形変化は相違する。
まず、カートリッジ装着部8にカートリッジ10aが装着された場合は、その装着過程において、ブリッジ部189が領域231に進入して光を遮蔽する(図20(b)の時刻T0)。このとき、第1光学式センサ230の信号レベルがLOWからHIGHに変化する。しかしながら、ブリッジ部189は平板部材で形成されていて光を遮蔽する時間は短いため、本実施形態では少なくとも時刻T1に達するまでにブリッジ部189が領域231を外れ、そして、時刻T1の時点では、隙間190(図1参照)が領域231に進入した状態となる。従って、時刻T1では、第1光学式センサ230の信号レベルはHIGHからLOWに復帰している(図20(b)参照)。
その後、インクカートリッジ10aが更に奥部まで挿入されると、領域231に切り欠き187が進入する。そして、カートリッジ10aがカートリッジ装着部8に完全に装着されると(図18の状態)、領域231に、切り欠き187及び検知窓140が進入した状態となる(図20(b)の時刻T3参照)。この状態のときに、つまり、時刻T3のときに、検知窓140に対して進退するインジケータ部72の動きを検知することができる。なお、図20(b)では、領域231にインジケータ部72が進入して光を遮蔽している場合の信号レベルが実線(HIGHレベル)で示され、領域231からインジケータ部72が退出している場合の信号レベルが破線(LOWレベル)で示されている。
一方、カートリッジ装着部8にカートリッジ10bが装着された場合は、その装着過程において、ブリッジ部199が領域231に進入して光を遮蔽する(図20(d)の時刻T0)。このとき、第1光学式センサ230の信号レベルがLOWからHIGHに変化する。ここで、カートリッジ10bの場合は、ブリッジ部199が側壁198を有するため、光を遮蔽する時間はカートリッジ10aのブリッジ部189の場合に比べて長くなる。そして、本実施形態では、時刻T0を過ぎて時刻T1になっても、側壁198が領域231に進入した状態で維持されている。従って、時刻T1においても、第1光学式センサ230の信号レベルはHIGHを維持している(図20(d)参照)。
その後、カートリッジ10aが更に奥部まで挿入されると、時刻T2の時点で、側壁198は領域231を外れ、代わりに、領域231に切り欠き187が進入する。このとき、第1光学式センサ230の信号レベルがHIGHからLOWに復帰する。そして、カートリッジ10bがカートリッジ装着部8に完全に装着されると、領域231に、切り欠き187及び検知窓140が進入した状態となる(図20(d)の時刻T3参照)。この状態のときに、つまり、時刻T3のときに、検知窓140に対して進退するインジケータ部72の動きを検知することができる。なお、図20(d)では、領域231にインジケータ部72が進入して光を遮蔽している場合の信号レベルが実線(HIGHレベル)で示され、領域231からインジケータ部72が退出している場合の信号レベルが破線(LOWレベル)で示されている。
このように、カートリッジ10a,10bでは、第1光学式センサ230にて出力される受光信号の信号レベルが、第2光学式センサ235からの受光信号がLOWからHIGHへと変化する時刻T1より以前にHIGHからLOWへ復帰するか、又はこの時刻T1以降に復帰するかという違いがある。
[カートリッジの種類判別]
本実施の形態に係る記録装置1では、第1光学式センサ230及び第2光学式センサ235からの夫々の受光信号に基づき、カートリッジ装着部8に装着されたカートリッジ10の種類を判別することが可能である。図21は、制御部200によって行われる種類判別処理の手順の一例を示すフローチャートであり、以下では、これを参照しつつカートリッジ10の種類判別を実行する処理手順について説明する。
まず、ステップS1において、第1光学式センサ230の領域231が遮光されたかどうかが制御部200によって判断される。具体的には、第1光学式センサ230の信号レベルがLOWからHIGHに変化したかどうかによって判断する(図20(b),(d)参照)。ここで、領域231が遮光されたと判断されると(S1のYES)、次のステップS2の判断処理が行われる。なお、本実施形態では、このステップS1において領域231の遮光が判断されない限り、カートリッジ10の種類判別処理は実行されない。
次のステップS2では、上述したトリガ信号の有無が制御部200によって判断される。即ち、第2光学式センサ235の信号レベルがLOWからHIGHに変化したかどうかが判断される。ステップS2においてこのようなトリガ信号が検知されると、ステップS3では、このトリガ信号が検知された時点(図20の時刻T1)における第1光学式センサ230の信号レベルがLOWであるかHIGHであるかが判断される。例えば、図20を参照すると、時刻T1における信号レベルがLOWである場合は、カートリッジ10aがカートリッジ装着部8に挿入されていると判定できる。また、時刻T1における信号レベルがHIGHである場合は、カートリッジ10bがカートリッジ装着部8に挿入されていると判定できる。
ステップS3において、第1光学式センサ230の信号レベルがLOWであると判断された場合は、カートリッジ10aを示すビットフラグがプロセッサ201のレジスタ等にセットされる。一方、ステップS3において、第1光学式センサ230の信号レベルがHIGHであると判断された場合は、カートリッジ10bを示すビットフラグがプロセッサ201のレジスタ等にセットされる。なお、セットされたビットフラグは、例えば、記録装置1にネットワーク接続された情報処理装置(パーソナルコンピュータ)や、記録装置1が具備する表示部などに出力される。
このように、本実施の形態に係る記録装置1では、カートリッジ10が装着される過程において上記トリガ信号を検知したときに、第1光学式センサ230の信号レベル及び第2光学式センサ235の信号レベルの変化のタイミングに基づいてカートリッジ10の種類が判定される。従って、カートリッジ装着部8に対するカートリッジ10の装着時の作業速度にかかわらず、カートリッジ10の種類を確実に且つ正確に判定することができる。
[センサの劣化検出]
ところで、本実施の形態に係る記録装置1では、カートリッジ装着装置300において、第1光学式センサ230及び第2光学式センサ235が有する発光素子233の劣化を、カートリッジ10がカートリッジ装着部8に装着された状態で検出することができるようになっている。以下、第1光学式センサ230を例に、発光素子233の劣化検出について説明する。なお、第2光学式センサ235における発光素子233についても、以下の説明と同様にして劣化検出を行うことができる。
図22は、発光素子233の劣化と受光素子234の出力との関係を示すグラフである。ここで、当該グラフの横軸は、発光素子233の劣化の進行を示しており、劣化のない状態である原点から矢印方向へ向かうに従って劣化が進行することを示している。また、縦軸は、受光素子234の出力信号のレベルを示しており、矢印方向へ向かうに従って信号レベルが高いことを示している。
本実施の形態に係る第1光学式センサ230のうち、図15の隣接する2つの第1光学式センサ230a,230bは、前者(230a)の受光素子234と後者(230b)の発光素子233との間に介在物が存在せず、カートリッジ10が装着されている状態であっても、発光素子233からスリット242を介して射出された光は、隣接する後者の第1光学式センサ230bのスリット245を介して受光素子234にて受光される。この受光による受光素子234からの出力信号が、図22の縦軸のレベルを示し、出力信号は、図22に示すように、発光素子233の劣化と共に信号レベルが右上がりに高くなっていくという傾向を有している。
そして、本実施の形態では、この受光素子234の出力信号に対して2つの閾値Va(Va1,Va2)が設定されている。これらの閾値Va1,Va2は、受光素子234の出力信号がHIGHかLOWかを判別するために、選択的に基準とされるもの(図20及び図21参照)であり、Va1<Va2の関係を設定されている。また、この他にも、受光素子234の出力信号に対して閾値Vbが設定されており、本実施の形態では、閾値Vbは、Vb<Va1の関係に設定されている。なお、閾値Vbは、必ずしもVb<Va1でなくとも適用することができる。
図23は、第1光学式センサ230bの発光素子233の劣化を判別し、更にはその劣化に応じて閾値Vaを変更設定する手順を示すフローチャートの一例である。図23に示すように、一方の第1光学式センサ230bの発光に先がけて、他方の第1光学式センサ230aは発光素子233が発光しない状態(オフ状態)にされると共に閾値Va=Va1に設定される(S11)。第1光学式センサ230aの発光素子233をオフ状態とするのは、第1光学式センサ230aの受光素子234での受光が、第1光学式センサ230a,230bの何れの発光素子233からの光かを区別するためである。
この状態で第1光学式センサ230bの発光素子233を発光させると(S12)、その光はスリット242,スリット245を介して他方の第1光学式センサ230aの受光素子234にて受光され(S13)、該受光素子234は、受光した光の輝度に応じたレベルを有する信号を出力する(S14)。カートリッジ装着装置300が有する制御部200は、この信号を受信し(S15)、そのレベルを閾値Vbよりも小さいか否かを判断する(S16)。その結果、閾値Vbより小さいと判断した場合は(S16:YES)、所定時間経過した後、または他の所定タイミングで、再びステップ11からの動作を繰り返す。そして、ステップ16での判断後からステップ1の動作を再開するまでの間に行うカートリッジ10に関する情報の検出(図20,21参照)においては、閾値Va=Va1のままとして、受光素子234からの信号レベルのHIGH,LOWを判断する。なお、ステップ16の判断において、信号レベルが閾値Vbより小さい状態とは、発光素子233からの光の輝度が比較的高く、従って発光素子233の劣化がまださほど進行していないことを意味している。
一方、ステップ16において閾値Vb以上と判断した場合は(S16:NO)、発光素子233の劣化がある程度進行した状態(輝度が比較的低下した状態)であると判断し、閾値Va=Va2に変更設定する(S17)。そして、所定時間経過した後、または他の所定のタイミングで、再びステップ11からの動作を繰り返す。従って、ステップ17での変更設定後からステップ11の動作を再開するまでの間は、閾値Vaとして、Va1より高いレベルのVa2に設定された状態でカートリッジ10に関する情報の検出が行われる。即ち、発光素子233が発する光の輝度の低下に応じて、閾値Vaについても、より低い輝度に対応するレベル(Va2)に変更設定される。従って、受光素子234からの信号を、このように変更設定された閾値Va2に基づいて判別することにより、信号レベルがHIGHかLOWかを適切に判別することができる。
なお、上述した説明では、ステップ17での変更設定の後に再びステップ11からの動作を行うこととしているが、ステップ17での変更設定の後は発光素子233の劣化検出をせず、閾値Va=Va2のままに固定的に設定するようにしてもよい。但し、上記のようにステップ11からの動作を繰り返し行った場合には、例えば、領域246(図15参照)への異物の飛来等に起因する光路の遮蔽によってステップ16での判断に誤りが生じたとしても、次回に行うステップ16での判断により、この誤りを正して適切に判断することができるという利点がある。また、閾値VaとしてはVa1,Va2の2つに限られず3つ以上設定することも可能であり、3つ以上設定した場合には、それに応じて閾値Vbも増設すればよい。
以上に説明したように、本実施の形態に係る記録装置1が備えるカートリッジ装着装置300によれば、カートリッジ装着部8にカートリッジ10が装着されている状態であっても、発光素子233の劣化を検出することができる。更に、その劣化状態に応じて、受光素子234からの信号レベルを判別する閾値Vaを変更設定し、適切な信号レベルの判断を行うことができる。
[反射型光学式センサ]
上述では、第1光学式センサ230及び第2光学式センサ235として透過型光学式センサを採用した場合について説明したが、これに換えて反射型光学式センサを採用した場合であっても、同様にして劣化検出を行うことが可能である。図24は、上記記録装置1に適用可能な反射型光学式センサ310とカートリッジ311とを平面視したときの構成を示す模式図である。
図24に示すように、カートリッジ311は、インクを収容するインク室312aを内部に形成する中空箱状のインクケース312を備え、該インクケース312は、カートリッジ装着部8に装着された状態で反射型光学式センサ310に対向する側壁313を有している。この側壁313は、反射型光学式センサ310に対向する外表面314が平坦に形成されている一方、インクに接触する内表面315は2種類の斜度を有する傾斜面315a,315bによって凹凸に形成されている。より正確には、側壁313のインク室312a側の部分は、断面が三角形状を成す複数のプリズム316が配設された構成となっており、各プリズム316におけるインク室312a側の2つの面が、傾斜面315a,315bを形成している。また、この側壁313は、インクと同様の屈折率を有する光透過性の素材によって形成されている。
一方、このカートリッジ311の外表面314に対向配置される反射型光学式センサ310は、直方体形状のセンサケース320内にペアを成す発光素子233と受光素子234とを収容しており、各色のカートリッジ311に応じて5つの反射型光学式センサ310が設けられている。なお、図24では、このうち隣接する2つの反射型光学式センサ310a,310bを示している。また、各反射型光学式センサ310は、それぞれの発光素子233と受光素子234とが互いに同軸上(図24中の一点鎖線参照)に配設されており、且つ、隣接する2つの反射型光学式センサ310(310a,310b)のうち、一方の反射型光学式センサ310aの受光素子234が、他方の反射型光学式センサ310bの発光素子233に隣接するようにして配設されている。
更に、各反射型光学式センサ310のセンサケース320には、各素子233,234の配設方向(図24中の矢印参照)に直交する方向へ開口するようにして内外へ貫通する発光透過用のスリット321と受光透過用のスリット322とが形成されており、発光素子233からの光は、一方のスリット321を介してカートリッジ311の側壁313へ照射され、側壁313からの反射光は、他方のスリット322を介して受光素子234に入射されるようになっている。
また、センサケース320には、各素子233,234の配設方向に向かって開口して内外へ貫通する発光透過用のスリット323及び受光透過用のスリット324も形成されている。これらのスリット323,324は、センサケース320の外方へ向かって互いに逆向きに開口しており、一の反射型光学式センサ310においてスリット323を介して発光素子233から射出された光は、途中に介在物の存在しない領域326を通り、隣接する他の反射型光学式センサ310の受光素子234へスリット324を介して入射されるようになっている。
従って、一の反射型光学式センサ310が有する発光素子233の劣化状態は、隣接する他の反射型光学式センサ310が有する受光素子234からの出力信号レベルを検出することによって判別可能となっている。なお、その判別手順については、透過型光学式センサである第1光学式センサ230について既に説明した劣化の判別手順と同様であるため、ここでの詳説は省略する。
また、このような反射型光学式センサ310及びカートリッジ311においても、以下のようにしてカートリッジ311内のインク残量を検出することができる。即ち、インク残量が所定量以上の場合(図24の反射型光学式センサ310aに対向するカートリッジ311の状態)は、インクケース312の側壁313の内表面315側にインクが存在する状態となっている。このとき、カートリッジ311のインクケース312の側壁313とインクとが同様の屈折率を有することから、発光素子233からスリット321を介して射出された光は、図24中の軌跡E1に沿って進み、側壁313の内表面315にてあまり屈折せずにインク室312a内へと進入する。その結果、受光素子234ではほとんど受光されず、受光素子234の出力信号のレベルはHIGHとなる。
一方で、インク残量が所定量未満の場合は、インクケース312の側壁313の内表面315側にインクが存在しない状態(図24の反射型光学式センサ310bに対向するカートリッジ311の状態)となっている。このとき、発光素子233からスリット321を介して射出された光は、図24中の軌跡E2に沿って進み、即ち、側壁313の内表面315にて屈折され、スリット322を介して受光素子234へ入射されるため、受光素子234の出力信号のレベルはLOWとなる。このように、反射型光学式センサ310においても、受光素子234からの出力信号のレベルを比較することにより、インク残量を検出することが可能である。
なお、このような反射型光学式センサ310を用いたインクの残量検出装置については、例えば、特開2002−292892号公報(出願人:ブラザー工業株式会社)において詳しく説明されているため、ここでは当該公報の説明を参照することとして、これ以上の詳細な説明は省略する。
[反射型光学式センサの他の例]
次に、反射型光学式センサを用いた他の構成について説明する。図25は、記録装置1に適用可能な反射型光学式センサ340とカートリッジ311とを平面視したときの構成を示す模式図である。なお、カートリッジ311の構成は図24に示したものと同様であるため、対応する部分に同一の符号を付してその説明は省略する。
図25に示すように、反射型光学式センサ340は、直方体形状のセンサケース350内にペアを成す発光素子233と受光素子234とを収容しており、各色のカートリッジ311に応じて5つの反射型光学式センサ340が設けられている。なお、図25では、このうち隣接する2つの反射型光学式センサ340a,340bを示している。また、各反射型光学式センサ340は、それぞれの発光素子233と受光素子234とが互いに同軸上(図25中の一点鎖線参照)に配設されており、且つ、隣接する2つの反射型光学式センサ340(340a,340b)のうち、一方の反射型光学式センサ340aの受光素子234が、他方の反射型光学式センサ340bの発光素子233に隣接するようにして配設されている。
また、各反射型光学式センサ340のセンサケース350には、各素子233,234の配設方向(図25中の矢印参照)に直交する方向へ開口するようにして内外へ貫通する発光透過用のスリット351と受光透過用のスリット352とが形成されている。更に、反射型光学式センサ340とカートリッジ311との間であって、これらのスリット351,352の開口に対向する夫々の位置にハーフミラー353,354が配設され、両ハーフミラー353,354の間には遮光板355が配設されている。
このうち発光透過用のスリット351に対応するハーフミラー353は、発光素子233からの光の約半分をカートリッジ311へ向けて透過すると共に、残りの半分についてはペアを成す受光素子234とは反対側へ向けて略直角に(即ち、配設方向へ)屈曲するように反射する。また、受光透過用のハーフミラー352は、カートリッジ311側からの光を真っ直ぐに透過してスリット352を介して受光素子234にて受光可能にすると共に、ペアを成す発光素子233とは反対側から配列方向に沿って入射された光を略直角に屈曲するよう反射し、この光もスリット352を介して受光素子234にて受光可能にする。なお、一の反射型光学式センサ340aの受光透過用のハーフミラー354と、隣接する他の反射型光学式センサ340bの発光透過用のハーフミラー354との間は、介在物の存在しない領域356となっている。
また、2つのハーフミラー351,352の間に設けられた遮光板355は、光を透過させない素材によって形成されており、受光透過用のハーフミラー352に対して上述のように配列方向に沿って入射された光のうち、ハーフミラー352を配列方向へ透過したものを遮蔽し、この光がもう1つのハーフミラー351へ到達しないようにしている。
このような反射型光学式センサ340においても、図24に示した反射型光学式センサ310と同様に、発光素子233からの光の約半分は、カートリッジ311の側壁313を経由してペアを成す受光素子234にて受光される。従って、受光素子234からの出力信号のレベルを比較することにより、カートリッジ311のインク残量を検出することができる。
また、発光素子233からの光の残り半分は、介在物の存在しない領域356を通りハーフミラー351,352を介して、隣接して他のペアを形成する受光素子234にて受光される。従って、既に説明した透過型光学式センサである第1光学式センサ230及び第2光学式センサ235、又は反射型光学式センサ310と同様にして、発光素子233の劣化を検出することが可能である。