JP4524798B2 - 鍵盤楽器のペダルのハーフポイント特定方法及び装置、並びにプログラム - Google Patents

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Description

本発明は、ハーフペダル駆動を行うことができる自動ピアノ等の鍵盤楽器に適用される、鍵盤楽器のペダルのハーフポイント特定方法及び装置、並びにプログラムに関する。
従来、自動ピアノ等の鍵盤楽器には、演奏データに従って、ソレノイドコイルに駆動電流を供給してペダルを駆動することで、ペダル動作を含む自動演奏を行わせることができるものが知られている。また、例えば、ラウドペダルの踏み込み行程においては、一般に、踏み込みの影響がダンパに伝達されない「遊び領域(乃至レスト領域)」と、弦に対するダンパの押接力の減少が開始される状態からダンパが弦に対して非接触状態となるまでの「ハーフペダル領域」と、その後ダンパが弦から完全に離間状態となる「弦開放領域」という3つの領域が存在する。
自動演奏においては、演奏の再現性をより高めるために、ラウドペダル等において上記ハーフペダル領域に合致した適切なペダル動作の制御を行う、いわゆるハーフペダルを適切に再生することが望まれる。例えば、演奏データに基づくペダル動作のフィードバック制御等を行う際、上記ハーフペダル領域を的確に捉えて上記制御に反映させることが重要となる。
しかし、ペダル系の静特性、動特性は、各鍵盤楽器の固有の特性であり、また、ペダルの種類や、ペダルを駆動するソレノイドコイルの特性によっても異なる。従って、ハーフペダル領域乃至該ハーフペダル領域中のハーフポイントの特定が容易でない。
そこで、下記特許文献1では、ラウドペダルを駆動するソレノイドコイルに与えるPWM信号の値を、ラウドペダルの非操作位置から徐々に大きくしていき、それに応じたラウドペダルの変位量を検出し、PWM信号の値の上昇に対してソレノイドコイルのプランジャの上昇率が低い位置(水平部)をハーフペダル領域と判断している。また、測定した変位量からハーフポイント及び遊び領域を特定するようにしている。
特許2606616号公報
しかしながら、実際の鍵盤楽器においては、上記特許文献1で示されるような、PWM値の上昇に対するプランジャの上昇率が低い位置(水平部)が必ずしも明確に現れず、ハーフポイントの特定が困難であった。また、上記特許文献1では、PWM値を単に徐々に変化させるだけで、ラウドペダルの、ある特定の動的特性が測定されるのみであるので、静的特性、あるいは自動演奏におけるあらゆる動作からみて、正確なハーフポイントの特定が的確になされているとはいえなかった。
本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、ハーフペダル領域中のハーフポイントを正確且つ容易に特定することができる鍵盤楽器のペダルのハーフポイント特定方法及び装置、並びにプログラムを提供することにある。
上記目的を達成するために本発明の請求項1の鍵盤楽器のペダルのハーフポイント特定方法は、ペダルと該ペダルを駆動するペダル駆動手段とを有する鍵盤楽器の前記ペダルのハーフペダル領域中のハーフポイントを特定する、鍵盤楽器のペダルのハーフポイント特定方法であって、前記ペダルが目標位置に駆動されるように、前記ペダルの動作を規定するための目標値を前記ペダル駆動手段に供給して前記ペダル駆動手段を制御し、前記ペダル駆動手段の制御によって前記ペダルが前記目標位置に駆動された際の前記ペダルの位置を示す位置情報を取得し、前記ペダル駆動手段の制御によって前記ペダルが前記目標位置に駆動されるために前記ペダル駆動手段にかかる負荷を示す負荷情報を取得し、前記取得された位置情報と前記取得された負荷情報とに基づいて、前記ハーフポイントを特定することを特徴とする。
好ましくは、前記ペダル駆動手段は、前記ペダルが略等速で駆動されるように制御される(請求項2)。
さらに好ましくは、前記ハーフポイントの特定は、前記位置情報に対する前記負荷情報の関係を示す曲線を求め、該曲線の傾きが急変する点に基づいてなされる(請求項3)。
あるいは、前記ハーフポイントの特定は、前記ペダル駆動手段の制御によって前記ペダルが前記目標位置に駆動されるときの時間経過に対する前記負荷情報の関係を示す曲線を求め、該曲線の傾きが急激に小さくなる点に基づいてなされる(請求項4)。具体的には例えば、前記ペダル駆動手段の制御によって前記ペダルが往方向に駆動されるときは、時間経過に伴い前記負荷の増加度合いが急激に小さくなる時刻に対応する前記ペダルの位置が、前記ハーフポイントとされる。一方、前記ペダル駆動手段の制御によって前記ペダルが復方向に駆動されるときは、時間経過に伴い前記負荷の減少度合いが急激に大きくなる時刻に対応する前記ペダルの位置が、前記ハーフポイントとされる。
上記目的を達成するために本発明の請求項5の鍵盤楽器のペダルのハーフポイント特定装置は、ペダルと該ペダルを駆動するペダル駆動手段とを有する鍵盤楽器の前記ペダルのハーフペダル領域中のハーフポイントを特定する、鍵盤楽器のペダルのハーフポイント特定装置であって、前記ペダルが目標位置に駆動されるように、前記ペダルの動作を規定するための目標値を前記ペダル駆動手段に供給して前記ペダル駆動手段を制御する駆動制御手段と、前記駆動制御手段による前記ペダル駆動手段の制御によって前記ペダルが前記目標位置に駆動された際の前記ペダルの位置を示す位置情報を取得する位置情報取得手段と、前記駆動制御手段による前記ペダル駆動手段の制御によって前記ペダルが前記目標位置に駆動されるために前記ペダル駆動手段にかかる負荷を示す負荷情報を取得する負荷情報取得手段と、前記位置情報取得手段により取得された位置情報と前記負荷情報取得手段により取得された負荷情報とに基づいて、前記ハーフポイントを特定するハーフポイント特定手段とを有することを特徴とする。
上記目的を達成するために本発明の請求項6のプログラムは、請求項1〜4のいずれか1項に記載の鍵盤楽器のペダルのハーフポイント特定方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
本発明によれば、ハーフペダル領域中のハーフポイントを正確且つ容易に特定することができる。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るペダルのハーフポイント特定装置が適用される鍵盤装置の構成を、ある1つの鍵に着目して示した部分断面図である。本鍵盤装置30は、自動演奏ピアノとして構成される。鍵盤装置30は、通常のアコーステックピアノと同様、鍵31の運動をハンマ32に伝達するアクションメカニズム33と、ハンマ32により打撃される弦34と、弦34の振動を止めるためのダンパ36とを備えている。以降、鍵31の奏者側を「前方」と称する。なお、ハーフポイント特定装置は、鍵盤装置30に一体に組み込まれているが、鍵盤装置30と通信可能に、鍵盤装置30とは別体に構成してもよい。
鍵盤装置30において、不図示のソレノイドコイルを有するキードライブユニット20が、鍵31ごとに設けられ、鍵31の後端部側の下方に配置されている。また、キーセンサユニット37が各鍵31に対応して設けられる。キーセンサユニット37は、各鍵31の前部下方に配置され、鍵31が押下された状態になると、その鍵31の押下位置を示す信号を出力する。
演奏データ中の発音イベントデータで規定される音高に対応するキードライブユニット20に駆動信号が供給されると、そのプランジャが上昇して対応する鍵31の後端部を突き上げる。これにより鍵31が押下され、弦34がハンマ32により叩かれることによりピアノ音が発音されるようになっている。
鍵盤装置30にはまた、ダンパ36を駆動するためのラウドペダルであるペダルPDが設けられる。また、ペダルPDを駆動するためのペダルアクチュエータ26と、ペダルPDの位置を検出する位置センサ27とが設けられている。ペダルアクチュエータ26は、ソレノイドコイルと、ペダルPDに連結されたプランジャとを有し(いずれも図示せず)、駆動信号が供給されると、上記プランジャが移動してペダルPDが駆動されるようになっている。
鍵盤装置30はまた、ピアノコントローラ40、モーションコントローラ41及びサーボコントローラ42を備える。ピアノコントローラ40は、モーションコントローラ41に演奏データを供給する。この演奏データは、例えば、MIDI(Musical Instrument Digital Interface)コードで構成され、鍵31及びペダルPDの動作を規定する。モーションコントローラ41は、供給された演奏データに基づいて、各時刻tにおけるペダルPD及び鍵31の各位置に対応した位置制御データrp、rkをそれぞれ生成し、サーボコントローラ42に供給する。一方、位置センサ27の検出信号が、フィードバック信号ypとしてサーボコントローラ42に供給され、また、キードライブユニット20のソレノイドコイルからも、同様にフィードバック信号ykがサーボコントローラ42に供給される。
サーボコントローラ42は、位置制御データrp、rkに応じた励磁電流として電流指示値up(t)、uk(t)を生成し、それぞれペダルアクチュエータ26、キードライブユニット20に供給する。これら電流指示値up(t)、uk(t)は、実際には、ペダルアクチュエータ26、キードライブユニット20のそれぞれのソレノイドコイルに流すべき平均電流の目標値に応じたデューティ比となるようにパルス幅変調を施したPWM信号である。
演奏データに基づく自動演奏においては、サーボコントローラ42は、位置制御データrp、rkとフィードバック信号yp、ykとをそれぞれ比較し、両者がそれぞれ一致するように電流指示値up(t)、uk(t)を随時更新して出力することでサーボ制御を行う。これにより、演奏データに従って、ペダルPD及び鍵31が駆動されて、自動演奏がなされる。
図2は、鍵盤装置30の制御機構の構成を示すブロック図である。
鍵盤装置30の制御機構は、CPU11に、バス15を通じて、上記キードライブユニット20、ペダルアクチュエータ26、位置センサ27、キーセンサユニット37のほか、鍵盤部KB、ROM12、RAM13、MIDIインターフェイス(MIDII/F)14、タイマ16、表示部17、外部記憶装置18、操作部19、音源回路21、効果回路22及び記憶部25が接続されて構成される。音源回路21には効果回路22を介してサウンドシステム23が接続されている。
CPU11は、本装置30全体の制御を司る。ROM12は、CPU11が実行する制御プログラムやテーブルデータ等の各種データを記憶する。RAM13は、演奏データ、テキストデータ等の各種入力情報、各種フラグやバッファデータ及び演算結果等を一時的に記憶する。MIDII/F14は、不図示のMIDI機器等からの演奏データをMIDI信号として入力する。タイマ16は、タイマ割り込み処理における割り込み時間や各種時間を計時する。表示部17は、例えばLCDを含んで構成され、楽譜等の各種情報を表示する。外部記憶装置18は、フレキシブルディスク等の不図示の可搬記憶媒体に対してアクセス可能に構成され、これら可搬記憶媒体に対して演奏データ等のデータを読み書きすることができる。操作部19は、不図示の各種操作子を有し、自動演奏のスタート/ストップの指示、曲選択等の指示、各種設定等を行う。記憶部25は、フラッシュメモリ等の不揮発メモリで構成され、演奏データ等の各種データを記憶することができる。鍵盤部KBには、上記鍵31が含まれる。
音源回路21は、演奏データを楽音信号に変換する。効果回路22は、音源回路21から入力される楽音信号に各種効果を付与し、DAC(Digital-to-Analog
Converter)やアンプ、スピーカ等のサウンドシステム23が、効果回路22から入力される楽音信号等を音響に変換する。
なお、上記モーションコントローラ41及びサーボコントローラ42の機能は、実際には、CPU11、タイマ16、ROM12、RAM13等の協働作用によって実現される。
ペダルPDのハーフペダル領域、及び該ハーフペダル領域中のハーフポイントHPは、鍵盤装置毎に微妙に異なるため、ハーフペダルを適切に再生するために、事前に当該鍵盤装置のペダルPDのハーフポイントHPを同定しておく必要がある。ここで、ハーフポイントHPは、ペダルPDのレスト位置(非操作位置)からの操作方向(往方向)の距離(mm)で表現される。ハーフポイントHPの同定は次のようにして行うことができる。
図3は、本実施の形態におけるハーフポイント同定処理の手順を示すフローチャートである。まず、後述する図6の負荷特性曲線算出処理を実行して、ペダルPDを駆動した際のペダルPDのストロークに対するペダルアクチュエータ26の負荷を示す負荷特性曲線を求める(ステップS101)。
図4は、この負荷特性曲線CAとその近似直線L1〜L3を示す図である。同図横軸には、ペダルPDのストローク、すなわち、踏み込み量0からの踏み込み方向(往方向)の位置stをとり、同図縦軸には、ペダルアクチュエータ26にかかる負荷(後述する電流指示値up(st))をとる。図5は、負荷特性曲線算出処理のためのサーボ駆動の流れを示すブロック図である。図6は、図3のステップS101で実行される負荷特性曲線算出処理のフローチャートである。
本実施の形態においては、ペダルPDが略等速で駆動されるための「ハーフポイント同定用駆動データ」を予め用意し、該同定用駆動データを上記演奏データと同様にピアノコントローラ40からモーションコントローラ41に供給し、上記同定用駆動データに応じた位置制御データがサーボコントローラ42に供給されるようにする。そして、サーボコントローラ42では、フィードバック制御によって、上記同定用駆動データに応じた位置制御データに基づく電流指示値up(t)(以下、これを特に「電流指示値up(st)」と称する)をペダルアクチュエータ26に供給する。すると、ペダルPDは、ペダルアクチュエータ26により駆動されて、ほぼ等速で踏み込み方向に動作する。
すなわち、図5及び図6を参照して説明すると、まず、モーションコントローラ41が、上記同定用駆動データに基づく軌道リファレンスを獲得し(ステップS601)、一定サンプリング時間(例えば4msec)の経過を待ってから(ステップS602)、現在時刻tに対応した目標位置(位置制御データrp)を生成し、サーボコントローラ42に出力する(ステップS603)。
そして、サーボコントローラ42は、位置センサ27からのフィードバック信号ypを得て、上記出力された目標位置とこのフィードバック信号ypとの差epをとり(ステップS604)、この差epを増幅して電流指示値upを得て(ステップS605)、さらにこの電流指示値upをPWM化してペダルアクチュエータ26のソレノイドコイルに出力する(ステップS606)。これに基づき、ペダルPDが駆動され、その位置stも位置センサ27によって検出されて、サーボコントローラ42にフィードバック(フィードバック信号yp)される。
次に、サーボコントローラ42は、上記出力した電流指示値upを、現在位置における値、すなわち、現在のフィードバック信号ypが示すペダルPDの位置stに対応する電流指示値up(st)としてRAM13等の記憶手段に記憶させる(ステップS607)。前記ステップS602〜S607の処理を、軌道区間が終了するまで繰り返し(ステップS608)、最後に、複数記憶された電流指示値up(st)の並びから、負荷特性曲線CAを算出して(ステップS609)、図6の負荷特性曲線算出処理を終了する。
なお、上記のような負荷特性曲線算出処理を複数回(例えば10回)行い、同じ目標位置に対して複数の負荷情報(電流指示値up(st))を記憶しておいてもよい。あるいは、同じ目標位置における複数の負荷情報の値の平均値をとって、これを電流指示値up(st)としてもよい。
本実施の形態では、ペダルPDの位置stは、位置センサ27の検出信号であるフィードバック信号ypに基づく値である。また、同図縦軸の、ペダルアクチュエータ26にかかる負荷は、同定処理時におけるサーボコントローラ42からの出力である電流指示値up(st)である。図4に示す負荷特性曲線CAは、特に、ハーフポイント同定用駆動データに基づき、ペダルPDを「約4秒間/1ストローク」というゆっくりとした略一定速度で駆動した場合における、ペダルPDの位置stに対する電流指示値up(st)の変化を示している。
次に、図3のステップS102では、上記求めた負荷特性曲線CAを、3本の折れ線で近似する直線近似処理を行う。その結果、図4に示すように、負荷特性曲線CAが第1〜第3の直線L1〜L3で近似される。第1の直線L1と第2の直線L2の交点をpS、第2の直線L2と第3の直線L3の交点をpEで示す。
次に、図3のステップS103で、交点pS、pEに基づき、ハーフ域開始点、終了点を特定する。すなわち、交点pS、pEは、負荷特性曲線CAの傾きが急変する点に相当するため、それぞれ、弦34に対するダンパ36の押接力の減少が開始される時点と、ダンパ36が弦34に対して非接触状態となる時点とに対応すると見なすことができる。従って、本実施の形態では、交点pSに対応するペダルPDの位置をハーフ域開始点stS、交点pEに対応するペダルPDの位置をハーフ域終了点stEとして特定する。
ここで、ペダルPDのストロークをハーフ域開始点stS、終了点stEで3つの区間に分けたとき、そのうちハーフ域開始点stSからハーフ域終了点stEまでの区間が「ハーフペダル領域」である。また、ペダルPDの0位置からハーフ域開始点stSまでの区間が「レスト領域」、ハーフ域終了点stEから押し切り位置までの区間が「弦開放領域」である。
次に、図3のステップS104では、交点pS及び交点pE、乃至ハーフ域開始点stS及びハーフ域終了点stEに基づいて、ハーフポイントHPを決定する。すなわち、ハーフ域開始点stS、終了点stEを所定の内分比で分ける点をハーフポイントHPとする。本実施の形態では、所定の内分比として、2:1を採用しており、従って、図4に示すように、ハーフポイントHPとして位置stHが決定される。この位置stHは、交点pSと交点pEとを上記所定の内分比で分ける点pHに対応するペダルPDの位置でもある。その後、本処理を終了する。
サーボコントローラ42は、このようにして決定されたハーフポイントHPの値(stH)を、演奏データに基づく自動演奏処理におけるペダル動作のフィードバック制御に反映させる。具体的には、サーボコントローラ42が位置制御データrpに応じて電流指示値up(t)を設定する際、演奏データ中のペダルPDの深さを規定する深さデータ値‘64’に対して、ペダルPDがハーフポイントHPである位置stHに位置するように演算処理を行う。これにより、演奏の再現性を的確に高めることができる。
本実施の形態によれば、負荷特性曲線CAの直線近似を経て求めたハーフ域開始点stS、終了点stEの内分比からハーフポイントHPを決定するので、ハーフペダル領域中のハーフポイントHPを正確且つ容易に特定することができる。しかも、負荷特性曲線CAは、ペダルPDをゆっくりとした略等速で駆動した結果として求めるので、ハーフ域開始点stS、終了点stEの特定精度が高く、従って、ハーフポイントHPの特定精度も高い。
なお、本実施の形態では、ハーフポイントHPを決定する際、内分比を2:1としたが、これに限定されない。特に、適切な内分比は、アップライトピアノとグランドピアノとでも異なるので、鍵盤装置の機種等によって、予め実験等で求めた値を採用すればよい。
なお、本実施の形態では、交点pS及び交点pEの2交点に基づいてハーフポイントHPを決定したが、これに限られず、例えば、交点pEに対応するハーフ域終了点stEから所定距離手前のペダルPDの位置をハーフポイントHPとする等、いずれか一方の交点のみに基づいてハーフポイントHPを決定するようにしてもよい。その場合、上記交点からの、所定の距離、所定の負荷及び所定のMIDI値の少なくとも1つを用いてハーフポイントHPを決定する。
なお、本実施の形態では、負荷特性曲線CAを直線近似して2交点を求めた上でハーフポイントHPを決定したが、直線近似処理を経る必要は必ずしもない。例えば、負荷特性曲線CAの傾きが急変する点(少なくとも1点、好ましくは2点)を求め、その点からHPを求めるようにしてもよい。
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態では、第1の実施の形態に対してハーフポイント同定処理が異なり、その他の構成は第1の実施の形態と同様である。第1の実施の形態では、ペダルPDの位置stに対する電流指示値up(st)の変化を示す負荷特性曲線CAからハーフポイントHPを求めたが、本第2の実施の形態では、ペダルPDを略一定速度で駆動した場合の経過時間に対する電流指示値up(st)の変化を示す負荷特性曲線(CC)に基づきハーフポイントHPを求める。従って、図3、図6に代えて図7、図4に代えて図8をそれぞれ用いて第2の実施の形態を説明する。
図7は、本実施の形態におけるハーフポイント同定処理の手順を示すフローチャートである。
まず、図6のステップS601〜S606の処理を実行した後、ステップS701に進み、現在時刻tにおけるペダルPDの位置stと電流指示値up(st)とを求めて記憶する。そして、前記ステップS602〜S606及びステップS701の処理を、軌道区間が終了するまで繰り返し(ステップS702)、軌道区間が終了した場合は、後述する時刻−位置曲線CBと共に負荷特性曲線CCを算出する(ステップS703)。
図8(a)は、時刻−位置曲線CB、同図(b)は負荷特性曲線CC、同図(c)は、負荷特性曲線CCの一部をそれぞれ示す図である。同図(a)、(b)の横軸には、上記したように、ハーフポイント同定用駆動データに基づき、ペダルPDを「約4秒間/1ストローク」というゆっくりとした略一定速度で踏み込み量0から等速で踏み込み方向に駆動した場合における経過時間をとる。同図(a)の縦軸には、ペダルPDの位置stをとり、同図(b)の縦軸には、ペダルアクチュエータ26にかかる負荷(電流指示値up(st))をとる。
時刻−位置曲線CB、負荷特性曲線CCは、サンプリング時間(4msec毎)の間隔で前記ステップS701で複数記憶された、現在時刻tに対するペダルPDの位置stの並び、電流指示値up(st)の並びからそれぞれ算出される。
次に、ステップS704では、負荷特性曲線CC上の評価点Aにおける傾き差Dを算出し、これを記憶する。ここで、サンプリング間隔が4msecであるとして、最初の評価点Aは、ペダルPDの駆動開始時刻から400msec経過後の時刻に対応する点とする。図8(c)に示すように、評価点Aに対して、前後に同じ時間t2(400msec)だけ離れた点を点A1、A2とする。そして、評価点Aから点A2までの傾きと点A1から評価点Aまでの傾きとの差を、傾き差Dとして下記数式1により算出する。
[数1]
D={(A2でのup(st)値)−(Aでのup(st)値)}/t2−{(Aでのup(st)値)−(A1でのup(st)値)}/t2
次に、全評価点に関して傾き差Dの算出が終了したか否かを判別する。最終の評価点Aは、ペダルPDの往方向への駆動終了時刻より400msec前の時刻に対応する点とする。そして、全評価点に関して傾き差Dの算出が終了していない場合は、次の評価点Aに処理を進めるべく、今回の評価点Aに対して、図8(c)に示すように、サンプリング間隔と同じ時間t1(4msec)だけ時間的に後方の時刻に対応する負荷特性曲線CC上の点を新たな評価点Aとして(ステップS706)、前記ステップS704に戻る。このように、ステップS704〜S706を繰り返して、全評価点Aにおける傾き差Dを算出、記憶する。
次に、ステップS707では、上記記憶された複数の傾き差Dのうち、負の値で且つ最小の(負の程度が大きい)傾き差Dを生じさせた評価点Aを特定し、該評価点Aに対応するペダルPDの位置stを、ハーフポイントHPとして決定し、本処理を終了する。
すなわち、図8(b)の例でいえば、時刻tHにおける評価点Aである点pCにおいて、負荷特性曲線CCの上昇度合いが最も急激に減少、すなわち、時間経過に伴い電流指示値up(st)の増加度合いが最も急激に小さくなるとすると、その時刻tHにおける時刻−位置曲線CB上の点pBに対応する位置stH(図8(a)参照)が、ハーフポイントHPとして決定される。上記点pCは、傾き差Dが負の値であって且つ最も小さい値となる点であり、負荷特性曲線CCが最も上側に凸形状となる点でもある。
本実施の形態によれば、ハーフペダル領域中のハーフポイントHPを正確且つ容易に特定することに関し、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
なお、本実施の形態において特定されるハーフポイントHPは、第1の実施の形態において、図4で説明した、第2の直線L2と第3の直線L3との交点pEに対応するペダルPDの位置stに相当し、すなわち、ハーフ域開始点stS、終了点stEを10:0の内分比で分けた位置に相当することになる。ハーフポイントHPは、これら、第1、第2の実施の形態で例示したものに限定されるものではなく、ハーフ域開始点stS〜終了点stEまでの領域の範囲内であればハーフポイントHPとすることは可能である。
なお、第2の実施の形態において、評価点Aは、評価が可能な全範囲で行ったが、ハーフポイントHPが存在しそうな範囲は限られているので、範囲を限定して評価を行うようにしてもよい。
なお、図7のハーフポイント同定処理によるハーフポイントHPの決定を複数回行って、それらの平均値を最終的なハーフポイントHPとしてもよい。仮に、複数のハーフポイントHPの値が互いに大きく異なっていた場合は、それらの最大値と最小値との中間値をハーフポイントHPと仮決定すると共に、エラーを報知するようにしてもよい。
なお、本第2の実施の形態において、上記数式1を用いて傾き差Dを求めたのと同様の手法を、第1の実施の形態において、交点pS、pE(図4参照)を求めるのに利用してもよい。その場合において、例えば、交点pSを求めるときは、傾き差Dが正の値で且つ最大となる評価点を、交点pSとすればよい。また、交点pS、pEの双方を求めるときは、傾き差Dの絶対値が極大となる評価点を、交点pS、pEとすればよい。
なお、第1、第2の実施の形態において、負荷特性曲線CA、CCを求める際のペダルPDの駆動は、上記のような等速駆動に限られず、ペダルPDが常に目標位置に位置するような管理された駆動態様であればよい。従って、ペダルPDを駆動する手段はペダルアクチュエータ26に限定されず、ペダルPDを目標位置に駆動制御するための構成も、ハーフポイント同定用駆動データを用いたモーションコントローラ41及びサーボコントローラ42等による制御に限定されるものではない。
また、第1、第2の実施の形態において、上記のような動的な駆動による負荷特性曲線CA、CCの測定に限定されず、静的乃至準静的な駆動により負荷特性曲線CA、CCを求めてもよい。例えば、ペダルPDの複数の各位置において、ペダルPDの静止状態を維持するために出力された電流指示値up(st)をプロットして負荷特性曲線CA、CCを求めるようにしてもよい。
なお、第1、第2の実施の形態では、ペダルPDを0位置から押し切り位置まで往方向に駆動して負荷特性曲線CA、CCを求めたが、これに限られず、逆に、ペダルPDを、押し切り位置から0位置まで、管理された速度で復方向に駆動して負荷特性曲線CA、CCを求めてもよいし、往方向と往方向の両方向から求めた2曲線に基づき、例えば、両者を平均する等によって、1つの負荷特性曲線CA、CCを求めてもよい。
例えば、第2の実施の形態において、ペダルPDを復方向に等速駆動して負荷特性曲線CCを求める場合は、時間経過に伴い電流指示値up(st)の減少度合いが最も急激に大きくなる時刻に対応するペダルPDの位置stが、ハーフポイントHPとされる。ちなみに、このハーフポイントHPは、ペダルPDを往方向に等速駆動した場合に求められるハーフポイントHPと、理想的には同じとなる。
なお、第1、第2の実施の形態では、図4、図8(b)に示す負荷特性曲線CA、CCにおいて、横軸の値には、ペダルPDの位置stであって位置センサ27の検出信号、すなわち、観測値を採用したが、ペダルPDの位置の目標値と観測値との誤差が小さくなるように制御できるならば、ペダルPDの位置を示す情報として、観測値でなく、目標値乃至指示値を用いてもよい。例えば、演奏データ中のペダルPDの動作を規定するMIDI値(例えば深さ値)であってもよい。また、縦軸の値は、ペダルPDを所望位置に駆動するためにペダルアクチュエータ26にかかる負荷を示す負荷情報であればよく、電流指示値up(st)に限定されるものではない。従って、コイル電流等の負荷に対応する物理情報を観測し、その観測値を縦軸の値に採用してもよい。
なお、第1、第2の実施の形態では、ハーフポイントHPを求める対象としてラウドペダルを例示したが、これに限られず、例えば、シフトペダルにも同様に適用することができる。
また、本発明の目的は、実施の形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPU11やMPU等)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出して実行することによっても達成される。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施の形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
また、プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。または、プログラムコードをネットワークを介してダウンロードしてもよい。
さらに、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、上記実施の形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)等が実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれる。
更に、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれる。
本発明の第1の実施の形態に係るペダルのハーフポイント特定装置が適用される鍵盤装置の構成を、ある1つの鍵に着目して示した部分断面図である。 鍵盤装置の制御機構の構成を示すブロック図である。 本実施の形態におけるハーフポイント同定処理の手順を示すフローチャートである。 負荷特性曲線とその近似直線を示す図である。 負荷特性曲線算出処理のためのサーボ駆動の流れを示すブロック図である。 図3のステップS101で実行される負荷特性曲線算出処理のフローチャートである。 第2の実施の形態におけるハーフポイント同定処理の手順を示すフローチャートである。 時刻−位置曲線(図(a))、負荷特性曲線(図(b))、及び負荷特性曲線の一部(図(c))をそれぞれ示す図である。
符号の説明
11 CPU(駆動制御手段、位置情報取得手段、負荷情報取得手段、ハーフポイント特定手段)、 26 ペダルアクチュエータ(ペダル駆動手段)、 27 位置センサ、 30 鍵盤装置(鍵盤楽器)、 41 モーションコントローラ、 42 サーボコントローラ、 PD ペダル、 CA、CC 負荷特性曲線、 HP ハーフポイント、 st 位置(位置情報)、 up(st) 電流指示値(負荷情報)、 L1〜L3 第1〜第3の直線

Claims (6)

  1. ペダルと該ペダルを駆動するペダル駆動手段とを有する鍵盤楽器の前記ペダルのハーフペダル領域中のハーフポイントを特定する、鍵盤楽器のペダルのハーフポイント特定方法であって、
    前記ペダルが目標位置に駆動されるように、前記ペダルの動作を規定するための目標値を前記ペダル駆動手段に供給して前記ペダル駆動手段を制御し、
    前記ペダル駆動手段の制御によって前記ペダルが前記目標位置に駆動された際の前記ペダルの位置を示す位置情報を取得し、
    前記ペダル駆動手段の制御によって前記ペダルが前記目標位置に駆動されるために前記ペダル駆動手段にかかる負荷を示す負荷情報を取得し、
    前記取得された位置情報と前記取得された負荷情報とに基づいて、前記ハーフポイントを特定することを特徴とする鍵盤楽器のペダルのハーフポイント特定方法。
  2. 前記ペダル駆動手段は、前記ペダルが略等速で駆動されるように制御されることを特徴とする請求項1記載の鍵盤楽器のペダルのハーフポイント特定方法。
  3. 前記ハーフポイントの特定は、前記位置情報に対する前記負荷情報の関係を示す曲線を求め、該曲線の傾きが急変する点に基づいてなされることを特徴とする請求項1または2記載の鍵盤楽器のペダルのハーフポイント特定方法。
  4. 前記ハーフポイントの特定は、前記ペダル駆動手段の制御によって前記ペダルが前記目標位置に駆動されるときの時間経過に対する前記負荷情報の関係を示す曲線を求め、該曲線の傾きが急激に小さくなる点に基づいてなされることを特徴とする請求項2記載の鍵盤楽器のペダルのハーフポイント特定方法。
  5. ペダルと該ペダルを駆動するペダル駆動手段とを有する鍵盤楽器の前記ペダルのハーフペダル領域中のハーフポイントを特定する、鍵盤楽器のペダルのハーフポイント特定装置であって、
    前記ペダルが目標位置に駆動されるように、前記ペダルの動作を規定するための目標値を前記ペダル駆動手段に供給して前記ペダル駆動手段を制御する駆動制御手段と、
    前記駆動制御手段による前記ペダル駆動手段の制御によって前記ペダルが前記目標位置に駆動された際の前記ペダルの位置を示す位置情報を取得する位置情報取得手段と、
    前記駆動制御手段による前記ペダル駆動手段の制御によって前記ペダルが前記目標位置に駆動されるために前記ペダル駆動手段にかかる負荷を示す負荷情報を取得する負荷情報取得手段と、
    前記位置情報取得手段により取得された位置情報と前記負荷情報取得手段により取得された負荷情報とに基づいて、前記ハーフポイントを特定するハーフポイント特定手段とを有することを特徴とする鍵盤楽器のペダルのハーフポイント特定装置。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の鍵盤楽器のペダルのハーフポイント特定方法をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
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