JP4522662B2 - 液晶配向膜用組成物、液晶配向膜、液晶配向膜の製造方法、及びマレイミド化合物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示素子等に使用される液晶配向膜に関し、さらに詳しくは、光を照射することにより、ラビングを行うことなく液晶分子を配向させることのできる液晶配向膜用組成物、該液晶配向膜用組成物を用いた液晶配向膜、液晶配向膜の製造方法、及び新規なマレイミド化合物に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置においては、液晶の分子配列の状態を電場等の作用によって変化させ、これに伴う光学的特性の変化を表示に利用している。多くの場合、液晶は二枚の基板の間隙に挟んだ状態で用いられるが、ここで液晶分子を特定の方向に配列させるために、基板の内側に配向処理が行われる。
従来、配向処理には、ガラス等の基板にポリイミド等の高分子の膜を設け、これを一方向に布等で摩擦(ラビング)し、該高分子の長軸を基板に平行に配列するラビング法という方法が用いられていた。
しかし近年、液晶表示素子に使用する液晶配向膜として、従来のラビング法によるポリイミド配向膜に代わり、ラビングせずに液晶分子を配向させることのできる配向膜が注目されている。中でも、基板上に形成された膜に偏光を照射することで膜に液晶配向能を生じさせる光配向法は、製造が簡便であり、大型の基板や高精細の液晶表示素子に対応できる技術として、実用化に向けて多くの研究が行われている。
【0003】
この光配向法には、液晶配向機能を発現させる基を有する化合物の光反応や、光による分子の再配列が利用されており、例えば、アゾベンゼンの光異性化反応や再配列を利用したもの、桂皮酸エステル、クマリン、ベンゾフェノン等の光二量化反応を利用したもの、あるいはポリイミド樹脂の光分解反応等を利用したもの等が報告されている。
【0004】
これらの光配向法の中でも、アゾベンゼンを使用した光配向法は、高感度であり、優れた液晶配向能を有している。アゾベンゼンを使用した液晶配向膜としては、低分子アゾ化合物を使用したものが知られており(例えば、非特許文献1参照。)、該低分子アゾ化合物からなる膜に偏光照射を行うと、膜中の分子が偏光方向に対して一定方向に再配列し、膜面内に大きな異方性が誘起される。その結果、液晶に対する大きな配向規制力が得られ、優れた液晶配向膜となり得る。
しかし、この低分子アゾ化合物は、一旦光配向した後も依然として光の照射により分子の向きを再び変える可能性を有している。そのため、該低分子アゾ化合物からなる液晶配向膜を用いた液晶表示素子には、長期の自然光の照射に対する安定性(耐光性)に懸念があった。さらに、該低分子アゾ化合物は水溶性であるため、環境の湿度に対する安定性(耐湿性)にも問題があった。
【0005】
このような低分子アゾ化合物の配向の安定性における問題点を解決する方法として、末端にアクリロイル基を有するアゾ化合物のモノマーを光配向させた後、光照射もしくは加熱によりアクリロイル基を重合させることで、配向を固定化する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
しかし、この方法では、アクリロイル基を重合させるために重合開始剤を使用するため、得られる液晶配向膜中に重合開始剤の分解生成物や未反応物が不純物として残存し、これらの不純物が電圧保持率の低下や残留DCの増加をもたらすことで、液晶表示素子特性が低下する可能性があった。また、アクリロイル基は、空気中の酸素の存在により重合阻害をうけるため、窒素等の不活性ガス雰囲気下で重合させる必要があり、液晶配向膜の製造工程が煩雑となる問題もあった。
【0006】
一方、アクリロイル基とは異なり、重合の際に重合開始剤を必要とせず、且つ空気中の酸素により重合阻害をうけにくい重合性基としてマレイミド基がある。例えば、芳香族環及び複数のマレイミド基を有するマレイミド化合物を光配向させた後、光照射もしくは加熱によって重合を行うことで、液晶配向膜を得る方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
しかし、該液晶配向膜は、光配向後において、液晶に対する配向規制力が小さく、配向性は不十分であった。
【0007】
これに対し、マレイミド基と、光二量化反応により光照射により液晶配向機能を発現することのできる基とを有する化合物を使用して、光配向法により液晶配向膜を得る方法も知られている(例えば、特許文献3参照。)。例えば、特許文献3では光二量化反応する基としてベンゾフェノン基等を使用しており、得られた液晶配向膜は比較的小さな光照射エネルギーで一様な液晶配向性が得られるといった特長を有する。
しかし、これらベンゾフェノン基等の光二量化反応による液晶配向膜は、液晶に対する配向規制力はラビング配向膜に較べ依然として不十分であった。
【0008】
【非特許文献1】
ホイシンコク,他7名,「液晶配向膜用のアゾ染料」(Azo Dye Materials for the Alignment of Liquid Crystal),SID 01 DIGEST,2001年,p.1170
【特許文献1】
特開2002−250924号公報
【特許文献2】
特開2001−122981号公報
【特許文献3】
特開2002−317013号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、配向規制力に優れ、且つ耐湿性及び耐光性に優れる液晶配向膜用組成物、液晶配向膜、光配向法による液晶配向膜の製造方法、及び、新規なマレイミド化合物を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った結果、アゾベンゼン骨格を有し、分子の両末端に2個のマレイミド基を有するマレイミド化合物が、液晶配向に対する配向規制力が大きいことを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
即ち、本発明は、下記一般式(1)
【化3】
[式中、R1は−(A−B−A)m−(D)n−で表される連結基を表し;R2は−(D)n−(A−B−A)m−で表される連結基を表し;R1及びR2においてmは1〜3の整数を表し、nは0又は1を表し、Aは二価の炭化水素基を表し、Bは−O−、−CO−O−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−NHCO−O−又は−OCONH−を表し、Dは、mが1〜3の整数のとき−O−、−CO−O−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−NHCO−O−又は−OCONH−を表し;R3及びR4は各々独立して、ハロゲン原子、アルカリ金属と塩を形成していてもよいカルボキシ基、ハロゲン化メチル基、ハロゲン化メトキシ基、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基又はメトキシカルボニル基を表し;R5及びR6は各々独立して、アルカリ金属と塩を形成していてもよいカルボキシ基、アルカリ金属と塩を形成していてもよいスルホ基、ニトロ基、アミノ基又はヒドロキシ基を表す。]
で表されるマレイミド化合物を含有することを特徴とする液晶配向膜用組成物を提供する。
また、本発明は、前記液晶配向膜用組成物を用いてなる液晶配向膜を提供する。
また、本発明は、前記液晶配向膜用組成物を基板上に塗布し、偏光、又は該基板の表面に対して斜め方向からの非偏光の紫外線を照射した後、光照射又は加熱によりマレイミド基を重合させることを特徴とする液晶配向膜の製造方法を提供する。
また、本発明は、下記一般式(2)
【化4】
[式中、R7は−(CH2)p−CO−O−(CH2)q−O−又は−(CH2)p−O−CO−(CH2)q−O−を表し;R8は−O−(CH2)s−CO−O−(CH2)t−又は−O−(CH2)s−O−CO−(CH2)t−を表し;R7及びR8においてp、q、s及びtは各々独立して1〜4の整数を表し;R9及びR10は各々独立して、ハロゲン原子、カルボキシ基、ハロゲン化メチル基又はハロゲン化メトキシ基を表し;R11及びR12は各々独立して、スルホ基又はそのアルカリ金属塩を表す。]
で表されることを特徴とするマレイミド化合物を提供する。
【0012】
本発明で使用する、一般式(1)で表されるマレイミド化合物の分子は、上述した光配向法において従来用いられている低分子アゾ化合物の分子と同様、偏光や、斜め方向から入射する非偏光の紫外線に対して、その偏光面や入射面に対し一定の方向に容易に配向する。そのため、該マレイミド化合物を含有する本発明の液晶配向膜用組成物は、配向規制力の高い、面内での異方性が高い膜を形成することができる。
また、本発明の液晶配向膜の製造方法においては、光配向させた後、更に、光照射もしくは加熱によりマレイミド基を重合させることにより、光配向した膜を重合固定化でき、光や熱、さらには水分に対して安定な液晶配向膜が得られる。また、一般式(2)で表されるマレイミド化合物は、今までに知られていない新規な化合物であり、本発明の液晶配向膜用組成物及び液晶配向膜の製造方法において好適に用いられる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をより詳細に説明する。
≪液晶配向膜用組成物及びマレイミド化合物≫
本発明の液晶配向膜用組成物は、少なくとも一般式(1)で表されるマレイミド化合物を含有することを特徴とするものである。
一般式(1)で表されるマレイミド化合物は、アゾ基が吸収する波長の偏光を照射すると、偏光方向に対して一定の方向に再配列する。従って、前記一般式(1)で表されるマレイミド化合物を含有する組成物を基板上に塗布後、偏光や基板面に対して斜め方向からの非偏光を照射して得られた膜は、液晶分子をホモジニアス配向させることのできる液晶配向膜となる。
【0014】
<マレイミド化合物>
一般式(1)において、両末端の2個のマレイミド基はそれぞれ、R1及びR2で表される連結基を介して、隣接する4,4’−ビス(フェニルアゾ)ビフェニル骨格のフェニレン基と連結されている。ここで、4,4’−ビス(フェニルアゾ)ビフェニル骨格とは、4,4’−ビス(フェニルアゾ)ビフェニルの両端のフェニル基が水素原子1つが取り除かれてフェニレン基となったものを意味する。
【0015】
連結基R1及びR2はそれぞれ、−(A−B−A)m−(D)n−及び−(D)n−(A−B−A)m−で表される。
R1及びR2において、mは0〜3の整数を表し、nは0又は1を表す。
Aは二価の炭化水素基を表し、Aで表される二価の炭化水素基としては、エチレン基、メチレン基、プロピレン基、ペンタメチレン基、へプチレン基等の炭素原子数1〜20アルキレン基;シクロプロピレン基、シクロヘキシレン基等の炭素原子数3〜20のシクロアルキレン基;フェニレン基、ナフチレン基等の炭素原子数6〜20のアリーレン基等が挙げられる。これらの中でも、アルキレン基が好ましく、炭素原子数1〜4のアルキレン基がより好ましい。
Bは−O−、−CO−O−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−NHCO−O−又は−OCONH−を表す。
Dは、mが0のときは二価の炭化水素基を表し、二価の炭化水素基としては、Aで表される二価の炭化水素基と同様の基が挙げられる。また、Dは、mが1〜3の整数のときは−O−、−CO−O−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−NHCO−O−又は−OCONH−を表す。
【0016】
一般式(1)において、R3及びR4は各々独立して、ハロゲン原子、カルボキシ基、ハロゲン化メチル基、ハロゲン化メトキシ基、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基又はメトキシカルボニル基を表す。
ハロゲン原子としては、フッ素原子や塩素原子が挙げられる。ハロゲン化メチル基としては、トリクロロメチル基やトリフルオロメチル基等が挙げられる。ハロゲン化メトキシ基としては、クロロメトキシ基やトリフルオロメトキシ基等が挙げられる。カルボキシ基は、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属と塩を形成していても良い。
これらの中でも、ハロゲン原子、カルボキシ基、ハロゲン化メチル基、又はハロゲン化メトキシ基が好ましく、カルボキシ基、又はトリフルオロメチル基が、大きな液晶のプレチルトが得られることから特に好ましい。
また、R3及びR4は、4,4’−ビス(フェニルアゾ)ビフェニル骨格の両端のフェニレン基のメタ位に置換していると、優れた光配向性が得られ、特に好ましい。
【0017】
一般式(1)において、R5及びR6は各々独立して、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、アミノ基又はヒドロキシ基を表す。
R5及びR6のうち、カルボキシ基及びスルホ基は、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属と塩を形成していても良い。
これらの中でも、R5及びR6がカルボキシ基又はその塩、スルホ基又はその塩、又はヒドロキシ基であると、得られる液晶配向膜の基板に対する付着性が高く、特に大きな液晶配向規制力が得られるため好ましい。特に、スルホ基またはそのアルカリ金属塩が好ましい。
また、R5及びR6は、4,4’−ビス(フェニルアゾ)ビフェニル骨格の2、2’位に置換していると、優れた光配向性が得られ、特に好ましい。
【0018】
一般式(1)で表されるマレイミド化合物としては、特に、前記一般式(2)で表されるマレイミド化合物が好ましい。この一般式(2)で表されるマレイミド化合物は、今まで知られていない新規な化合物であり、ガラスやITO等の基板に対しての成膜性や付着性に優れ、偏光、もしくは基板面に対して斜め方向からの平行光を照射することで容易に配向させることができる。
【0019】
一般式(2)において、R7は−(CH2)p−CO−O−(CH2)q−O−又は−(CH2)p−O−CO−(CH2)q−O−を表す。
R8は−O−(CH2)s−CO−O−(CH2)t−又は−O−(CH2)s−O−CO−(CH2)t−を表す。
R7及びR8においてp、q、s及びtは各々独立して、1〜4、好ましくは1〜2の整数を表す。
R9及びR10は各々独立して、ハロゲン原子、カルボキシ基、ハロゲン化メチル基又はハロゲン化メトキシ基を表し、これらの中でも、カルボキシ基、ハロゲン化メチル基が好ましい。
R11及びR12は各々独立して、スルホ基又はそのアルカリ金属塩を表す。
【0020】
一般式(2)で表されるマレイミド化合物として、より具体的には、例えば下記式(1−1)、(1−2)で表される化合物を例示することができる。
【0021】
【化5】
【0022】
【化6】
【0023】
一般式(2)で表されるマレイミド化合物は、常法により、例えば以下のようにして製造することができる。
まず、亜硝酸ナトリウム等を用いて、下記一般式(a)で表されるベンジジン化合物のジアゾ化を行う。
【0024】
【化7】
【0025】
次いで、得られたジアゾニウム化合物と、下記一般式(b)で表される化合物とをアゾカップリング反応させる。
【0026】
【化8】
(式中、R13は上述した基R9又はR10を表す。)
【0027】
次いで、例えば下記一般式(c)で表される炭酸アルキレン等を反応させることにより、下記一般式(d)で表される化合物を得る。
【0028】
【化9】
(式中、rは上述したq又はsを表す。)
【0029】
【化10】
(式中、R14は、HO−(CH2)q−O−又はHO−CO−(CH2)q−O−を表し、R15は、−O−(CH2)s−CO−OH又は−O−(CH2)s−OHを表す。)
【0030】
次いで、得られた化合物と、下記一般式(e)及び(f)で表されるマレイミド化合物とを反応させる。
【化11】
(式中、R16は、−(CH2)p−CO−OH又は−(CH2)p−OHを表し、R14と結合して上述した基R7を形成する)
【0031】
【化12】
(式中、R17は、HO−CO−(CH2)t−又はHO−(CH2)t−を表し、R15と結合して上述した基R8を形成する)
【0032】
例えば、前記式(1−1)で表されるマレイミド化合物は、2,2’−ベンジジンジスルホン酸とo−トリフルオロメチルフェノールとのアゾカップリング反応の後、上記と同様の反応により得られる。
また、前記式(1−2)で表されるマレイミド化合物は、2,2’−ベンジジンジスルホン酸とサリチル酸とのアゾカップリングの後、エチレンカーボネートを付加し、マレイミド酢酸を反応させて得られる。
【0033】
<その他の成分>
本発明の液晶配向膜用組成物は、一般式(1)で表されるマレイミド化合物を含有すること以外は特に限定はなく、一般式(1)で表されるマレイミド化合物のみからなるものであってもよく、また、その他の成分、例えば、基板に対する塗布性を上げるための溶媒や、該組成物の粘度を調整するための高分子材料等を含有するものであってもよい。
【0034】
溶媒としては、特に限定されないが、N−メチルピロリドン(以下、NMPと略す。)、ブチルセロソルブ、フェニルセロソルブ、N,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略す。)、γ―ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド(以下、DMSOと略す。)、エチレングリコール、プロピレングリコール、トルエン、テトラヒドロフラン、クロロベンゼン、ジメチルアセトアミド等が挙げられる。中でも、NMP、ブチルセロソルブ、DMFの溶液はガラス等の基板に対する塗布性が良好で、均一な膜が得られることから特に好ましい。これらの溶媒は、塗布性や、塗布後の溶剤の揮発速度を考慮して選択することが好ましく、2種類以上を混合して使用することもできる。
溶媒は、基板に塗布した後揮発除去されるので、使用する場合は、一般式(1)で表されるマレイミド化合物の濃度が少なくとも0.2質量%以上となることが必要である。中でも、0.5〜10質量%の範囲が特に好ましい。
【0035】
本発明の液晶配向膜用組成物の粘度を調整するための高分子材料としては、基板上に成膜でき、溶媒に対する溶解性が高く、かつ一般式(1)で表されるマレイミド化合物が吸収する光の波長領域に吸収を持たない材料があげられる。具体的には、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリマレイミド、ポリエステル、ポリアミド等が挙げられる。中でもポリイミドが、耐熱性や基板上への成膜性が良好で、特に好ましい。一般式(1)で表されるマレイミド化合物による光配向性を劣化させないために、これらの高分子材料の含有量は液晶配向膜組成物の固形分重量に対して60%以下であることが好ましく、30%以下であると特に好ましい。
【0036】
本発明の液晶配向膜用組成物は、一般式(1)で表されるマレイミド化合物が重合開始能を有するので、重合開始剤を必要とはしないが、重合速度を高める目的で、少量の光重合開始剤や熱重合開始剤を添加してもよい。これらの重合開始剤は公知のものを使用することができる。添加量は、多すぎると液晶表示素子特性が劣化する可能性があるので、固形分濃度に対し5%以下にとどめておくのが好ましい。
【0037】
本発明の液晶配向膜用組成物は、一般式(1)で表されるマレイミド化合物の配向性を損なわない範囲で、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基等の、重合性官能基を有する化合物を含有することもできる。
【0038】
≪液晶配向膜≫
本発明の液晶配向膜は、上述した本発明の液晶配向膜用組成物を用いてなるものである。
上述した一般式(1)又は(2)で表されるマレイミド化合物は、偏光や膜面に対して斜め方向からの入射光のような異方性を有する光の照射によって、偏光面や入射面に対し一定の方向に容易に配向し、特に面内での異方性が高く配向規制力の高い膜が得られる。更に、マレイミド基も有しているため、重合開始剤を使用しなくても、大気中で光照射もしくは加熱により重合させることができ、配向状態を容易に固定することができる。従って、本発明の液晶配向膜用組成物を使用することで、光や熱、さらには水分に対して安定な液晶配向膜が得られる。
【0039】
また、一般式(1)又は(2)で表されるマレイミド化合物は、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、アミノ基、又はヒドロキシ基等を有するので、ガラス基板やITO等の酸化物透明電極に対し高い親和性を示す。従って、本発明の液晶配向膜用組成物の溶液を基板に塗布し、溶媒を乾燥させることで均一な塗膜を得ることができる。
【0040】
≪液晶配向膜の製造方法≫
本発明の液晶配向膜の製造方法は、前記液晶配向膜用組成物を、必要に応じて前述の溶媒や高分子材料等で粘度等を調整した後、基板上に塗布し、偏光、又は該基板の表面に対して斜め方向からの非偏光の紫外線を照射した後、光照射又は加熱によりマレイミド基を重合させて液晶配向膜を得ることを特徴とする。
【0041】
本発明に使用する基板は、液晶配向膜を有する液晶表示素子に通常使用する基板であって、特に液晶表示素子製造時の加熱に耐えうる耐熱性を有するものが好ましい。そのような基板としてはガラスや耐熱性のポリマーからなる基板が挙げられる。
通常は、その表面にITO等の透明電極や薄膜トランジスタ等を設けて使用する。
【0042】
本発明においては、まず、基板上に、スピンコーティング法、印刷法、ダイコーティング法、ディッピング法等の方法によって本発明の液晶配向膜用組成物の溶液を塗布し、乾燥後、得られた塗膜の光配向操作を行う。中でも、印刷法は量産性に優れており、特に好ましい。
【0043】
次いで、本発明の液晶配向膜用組成物を塗布、乾燥して得られる塗膜の光配向を行う。光配向は、塗膜に直線偏光や楕円偏光等の偏光、もしくは膜面に対して斜めの方向から非偏光を照射することによって行う。
偏光は、直線偏光、楕円偏光のいずれでも良いが、効率よく光配向を行うためには、消光比の高い直線偏光を用いることが好ましい。
また、偏光は、偏光フィルタを使用するので、膜面に照射される光強度が減少する恐れがあるが、膜面に対して斜め方向から非偏光を照射する方法では、照射装置に偏光フィルタを必要とせず、大きな照射強度が得られ、光配向のための照射時間を短縮することができるという利点がある。このときの非偏光の入射角は、ガラス基板法線に対して10°〜80°の範囲が好ましく、照射面における照射エネルギーの均一性、得られるプレチルト角、配向効率等を考慮すると、20°〜60°の範囲が最も好ましい。
【0044】
照射する光は、一般式(1)で表されるマレイミド化合物が吸収を有する波長領域の光であり、具体的には、アゾベンゼンのπ→π*遷移による強い吸収がある、波長350〜500nmの範囲の紫外線が特に好ましい。
照射光の光源としては、キセノンランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、KrF、ArF等の紫外光レーザー等があげられる。特に超高圧水銀ランプは、一般式(1)で表されるマレイミド化合物の吸収極大波長に近い、365nmの紫外線の発光強度が大きいことから特に好ましい。
前記光源からの光を偏光フィルタやグラントムソン、グランテーラー等の偏光プリズムを通すことで紫外線の直線偏光を得ることができる。
また、偏光、非偏光のいずれを使用する場合でも、照射する光は、ほぼ平行光であることが特に好ましい。
【0045】
前述の方法により、本発明の液晶配向膜用組成物を塗布乾燥させ、光配向操作をしたのち、光照射又は加熱によりマレイミド基を重合させる。
マレイミド基を光重合させる場合は、一般式(1)で表されるマレイミド化合物のアゾベンゼン構造が吸収せず、かつ、マレイミド基の吸収がある領域の光を照射することが好ましい。具体的には320nm以下の紫外光を照射することが好ましく、200〜250nmの波長の光を照射することが最も好ましい。この光は、既に得られた液晶配向膜の配向を乱さないために、拡散光で、かつ偏光していない光であることが好ましい。
【0046】
マレイミド基を熱重合させる場合は、加熱温度は60〜300℃が好ましく、80〜200℃がさらに好ましい。
【0047】
本発明の液晶配向膜用組成物からなる配向膜は、ねじれネマティック(TN)、超ねじれネマティック(STN)、強誘電性(FLC)、面内スイッチング(IPS)方式等、いずれの液晶表示素子にも使用することができる。
【0048】
このようにして得られる液晶配向膜は、液晶表示素子等の製造に用いることができる。この液晶配向膜を使用することで、湿度、光や熱により液晶表示素子特性が低下しない、安定な素子が得られる。
以下に、本発明の製造方法により液晶配向膜を作製し、該液晶配向膜を使用して液晶表示素子を得る方法の一例を以下に述べる。例えば、偏光膜、位相差膜、反射膜、ITO電極等を設けた透明基板上の、電極面に、本発明の液晶配向膜用組成物の有機溶媒溶液を塗布し、乾燥させ、光配向操作を行う。続いて、光照射もしくは加熱によるマレイミド基の重合を行うことで液晶配向膜を作製する。次に、得られた基板の、該液晶配向膜を設けた面を内側にし、光配向のために照射した偏光または非偏光の偏光面または入射面が互いに直交するように対向させ、スペーサーを介して公知の方法により貼り合わせて、液晶セルを作製する。得られた液晶セルの二枚の基板の間隙に液晶を注入する。必要に応じて液晶セルの外側に偏光フィルムを貼付することで液晶表示素子を製造することができる。
【0049】
【実施例】
以下、合成例、実施例および比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。
【0050】
[合成例1]
a.マレイミド酢酸の合成
撹拌器、温度計、滴下ロート、ディーンスターク分留器及び冷却管を備えた容量500ミリリットルの4つ口フラスコに、トルエン140g、p−トルエンスルホン酸一水和物5.2gおよびトリエチルアミン2.8gを順次仕込み、撹拌しながら無水マレイン酸30gを加えた後、70℃で3時間反応させた。その後、トルエン50g、トリエチルアミン60gを加え、溶媒を加熱還流させて生成する水を除去しながら、1時間反応させた。得られた反応混合物から溶媒を留去して得られた残留物に、4モル/dm3の塩酸を加えてpH2に調整した後、加熱―再結晶して、式(3)で表されるマレイミド酢酸の淡黄色固体7.3gを得た。
【0051】
【化13】
【0052】
b.式(4)で表される化合物の合成
ベンジジン−3,3’−ジスルホン酸0.69g(0.002モル)に亜硝酸ナトリウム0.28g(0.004モル)の水溶液を加え、これを撹拌しながら3%塩酸3.0ml(0.0024モル)を滴下して、ジアゾ化反応を行った。次に、5%の炭酸ナトリウム水溶液10mlおよびトリフルオロメチルフェノール0.65g(0.004モル)を混合し、水浴で冷却し、かつ撹拌しながら上記の方法で得られたジアゾニウム塩混合物を徐々に滴下し、4時間反応させた。反応終了後、沈殿物を濾別し、これを熱したクロロホルムおよびアセトンで洗浄することにより、式(4)で表される化合物を得た。
【0053】
【化14】
【0054】
c.式(5)で表される化合物の合成
式(4)で表される化合物4.4g、エチレンカーボネート2.1g、臭化テトラブチルアンモニウム0.4g、及びDMF70mlを混合し、140℃で5時間撹拌した。生成混合物から溶媒を減圧留去した後、アセトンを加え、1〜2時間還流を行った。この混合物を冷却した後、沈殿物を濾別することで、式(5)で表される化合物3.76gを得た。
【0055】
【化15】
【0056】
d.式(6)で表される化合物の合成
100mlのフラスコに式(5)で表される化合物0.73g、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボイミド・塩酸塩(以下、WSCと略す。)0.48g、4−ジメチルアミノピリジン0.1g、をDMFに溶解した。この混合物を氷浴中で撹拌し、温度が5℃となったところで、式(2)で表されるマレイミド酢酸0.31gをDMFに溶解させた溶液を滴下した。90分後、氷浴からフラスコを取り出し、2gの水を加えて反応を停止した。得られた混合物を多量のメタノール中に注ぎ、得られた沈殿物を濾別し、乾燥することで、式(6)で表される化合物0.50gを得た。
【0057】
【化16】
【0058】
FT−IR
699cm−1(w)、720cm−1(w)、1040cm−1(m)、1138cm−1(s)、1200cm−1(vs)、1421cm−1(s)、1570cm−1(m)、1611cm−1(m)、1720cm−1(vs)、1742cm−1(s)、2920cm−1(m)
【0059】
[合成例2]
a.式(7)で表される化合物の合成
3%の希塩酸にベンジジン−2,2’−ジスルホン酸3.6gを溶解し、これに亜硝酸ナトリウム1.0gを溶解した水溶液を加え、0〜5℃で90分間ジアゾ化反応させた。その後、得られた反応混合物を、サリチル酸エチル2.4g、水60g、エタノール30g、炭酸ナトリウム3gを混合した溶液に滴下し、カップリング反応させた。反応終了後、該反応液に、pHが3となるまで塩酸を加えた。得られた沈殿物を濾過し、アセトンで洗浄することで、式(7)で表される化合物2.4gを得た。
【0060】
【化17】
【0061】
b.式(8)で表される化合物の合成
式(7)で表される化合物2.2g、炭酸エチレン1.5g、臭化テトラブチルアンモニウム0.3gをDMF150gに溶解し、フラスコ中で約140℃5時間半撹拌した。溶媒を減圧留去した後、アセトンで、過剰の炭酸エチレン、および臭化テトラブチルアンモニウムを除去した後、得られた沈殿物を濾別し、4%の水酸化ナトリウム水溶液に溶解させた。これを70℃で3時間攪拌して、加水分解反応させた。その後、塩酸でpHを約3に調整し、水を減圧留去した。最後に、アセトン及びメタノールで洗浄して、式(8)で表される化合物1.42gを得た。
【0062】
【化18】
【0063】
c.、式(9)で表される化合物の合成
式(8)で表される化合物0.7g、式(3)で表されるマレイミド酢酸2.0g、4−ジメチルアミノピリジン0.1gをDMF50mlに溶解し、フラスコ中で氷浴下で撹拌し、5℃になったところで、WSC0.66gを加えた。30分後、温度を室温に戻し、さらに2時間反応を継続後、5gの水を加えることで過剰のWSCを除き、反応を停止させた。その後、DMFを減圧留去し、得られた固形物を水およびアセトンで洗浄することで、式(9)で表される化合物0.4gを得た。
【0064】
【化19】
【0065】
1H−NMR (300MHz、(CD3)2SO)
δ=4.27(s)、4.38(s)、4.43(s)、7.03(s)、7.06(d)、7.28(d)、7.53(d)、7.80(d)、8.13(s)、8.33(s)
【0066】
[比較合成例]
式(4)で表される化合物0.2g(0.0003モル)を10mlのピリジンに加え、攪拌した。ここに、0.19g(0.0006モル)のp−(アクリロイル−n−ヘキシルオキシ)安息香酸クロライドと0.005gのハイドロキノンを加え、60℃で5時間攪拌して反応させた。反応後冷却し、沈殿物を濾別して、30mlのエタノールで洗浄し、空気中で乾燥して、式(10)で表される化合物0.20g(収率58%)を得た。
【0067】
【化20】
【0068】
[実施例1]
a.液晶配向膜用組成物の作製
合成例1で得られた前記式(6)で表される化合物をDMSOに溶解させ、1質量%溶液とした。それを0.5μmのフィルターで濾過し、液晶配向膜用組成物(A)とした。
【0069】
b.液晶配向膜の作製
液晶配向膜用組成物(A)をスピンコーターでITO電極付ガラス基板に均一に塗布し、100℃で1分間加熱して溶媒を除去し、膜を得た。該膜面に、超高圧水銀ランプを光源とする波長365nm、エネルギー密度40mW/cm2の紫外光を、コリメーターミラーで平行光とし、バンドパスフィルターで不要な波長の光を除いた後、該膜面に対して45°の方向から、積算光量が5J/cm2となるように照射し、光配向操作を行った。次に、超高圧水銀ランプを光源とする、波長313nmの紫外光(拡散光)を、積算光量が500mJ/cm2となるように大気下で照射して、マレイミド基の光重合を行い、液晶配向膜(A)付きの基板を作製した。
【0070】
c.液晶表示素子の作製(電圧−透過率特性、電圧保持率試験、温湿度試験用素子)
液晶配向膜(A)付きの基板の外縁部に、直径5μmのスチレンビーズを含んだ熱硬化性接着剤を液晶注入口が残るように塗布し、もう1枚の液晶配向膜(A)付きの基板を、各々の液晶配向膜(A)面が相対し、かつ光配向のために照射した斜め方向からの非偏光の照射面が互いに直交するように重ね合わせて圧着し、150℃で90分間加熱して接着剤を硬化させた。次いで、液晶注入口から大日本インキ化学工業(株)製の液晶組成物「11−3323」を室温で注入した。その後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止し、液晶表示素子(A−1)を得た。
【0071】
d.電圧−透過率特性(コントラスト比)
液晶表示素子(A−1)を二枚の直交ニコル配置の偏光板間に配置し、この状態において液晶表示素子の電極間に電圧を印加した場合としない場合との白色光の透過率をCCDにより測定することでコントラスト比の測定を行った。ここで、電圧無印加時と5V印加時との光透過率の比をコントラスト比とした。コントラスト比が大きいほど、配向規制力に優れることを示す。
この結果、コントラスト比は1017であった。
【0072】
e.電圧保持率(VHR)試験
温度80℃において、液晶表示素子(A−1)のITO電極間に5Vの電圧を64μsec印加し、200msec経過したときの電極間の電圧を測定し、印加電圧5Vに対する百分率を求めた。
その結果、VHRは97.2%であった。
【0073】
f.温湿度試験
液晶表示素子(A−1)を温度60℃、湿度90%の条件下で1000時間放置した。その後、上記c.に従い電圧−透過率特性の測定を行った。
その結果、温湿度試験前との違いは認められなかった。
【0074】
g.液晶表示素子の作製(二色比試験、耐光性試験用素子)
上記cと同様の方法で、二枚の液晶配向膜(A)付きの基板を、光配向のために照射した斜め方向からの無偏光の照射面が互いに反平行となるように重ねあわせることで液晶セルを作製し、これに液晶組成物「11−3323」に、大日本インキ化学工業(株)製のアントラキノン系二色性染料「M−137」を添加した組成物を注入し、液晶表示素子(A−2)を作製した。
【0075】
h.二色比試験
液晶表示素子(A−2)の、波長625nmの直線偏光に対する光吸収の二色比Dを、日立製作所製の「U−4100形偏光可視・紫外分光光度計」を用い、下記式(I)により求めた。
D=(A⊥−A//)/(A⊥+A//) …(I)
(式中、A⊥、およびA//はそれぞれ、光配向のために照射した斜め方向からの非偏光の、照射面と垂直方向の電気ベクトルを有する偏光に対する吸光度、および照射面と平行方向の電気ベクトルを有する偏光に対する吸光度を表す。)
計算の結果、液晶表示素子(B)の二色比は0.73であった。
【0076】
i.耐光性試験
液晶表示素子(A−2)に、東洋精機製の耐光性試験機「サンテストCPS」を用い、放射照度550W/m2で100時間の光照射を行った。光照射後、再度二色比を測定したところ二色比は0.70で、ほとんど変化は認められなかった。
【0077】
[実施例2]
実施例1において、光配向操作を行った後マレイミド基の光重合を行う代わりに、光配向操作を行った後の配向膜付き基板を150℃のホットプレートで1時間加熱することでマレイミド基の熱重合を行った他は、実施例1と同様にして、液晶配向膜(B)を作製した。液晶配向膜(B)付きの基板を使用し、実施例1のc.液晶表示素子の作製と同様にして液晶表示素子(B−1)を作製した。
液晶表示素子(B−1)について、実施例1と同様に電圧−透過率特性の測定を行ったところ、良好な液晶配向を確認でき、コントラスト比は953であった。電圧−透過率特性は、温湿度試験後もほとんど変化は認められなかった。また、VHRは97.5%であった。
次に、実施例1のg.液晶表示素子の作製と同様にして液晶表示素子(B−2)を作製した。液晶表示素子(B−2)について、実施例1と同様に二色比を測定したところ、0.69であった。また、耐光性試験後もほとんど変化は認められなかった。
【0078】
[実施例3]
液晶配向膜用組成物の作製
合成例2で得られた前記式(9)で表される化合物をDMFに溶解させ、1質量%溶液とした。それを0.5μmのフィルターで濾過し、液晶配向膜用組成物(C)とした。
【0079】
実施例2の液晶配向膜(B)の作製において、液晶配向膜用組成物(A)の代わりに液晶配向膜用組成物(C)を使用した他は、実施例2と同様にして、液晶配向膜(C)を作製した。得られた液晶配向膜(C)付きの基板を使用し、実施例1のc.液晶表示素子の作製と同様にして液晶表示素子(C−1)を作製した。液晶表示素子(C−1)について、実施例1と同様に電圧−透過率特性の測定を行ったところ、良好な液晶配向を確認でき、得られたコントラスト比は982であった。電圧−透過率特性は、温湿度試験後もほとんど変化は認められなかった。また、VHRは95.8%であった。
次に、実施例1のg.液晶表示素子の作製と同様にして液晶表示素子(C−2)を作製した。液晶表示素子(C−2)について、実施例1と同様に二色比を測定したところ、0.74であった。また、耐光性試験後もほとんど変化は認められなかった。
【0080】
[比較例1]
液晶配向膜用組成物の作製
合成例1で得られた前記式(4)で表される化合物をDMFに溶解させ、1質量%溶液とした。それを0.5μmのフィルターで濾過し、液晶配向膜用組成物(D)とした。
【0081】
実施例1において、マレイミド基の光重合を行わない以外は実施例1と同様にして、液晶配向膜(D)を作製した。液晶配向膜(D)付きの基板を使用し、実施例1のc.液晶表示素子の作製と同様にして液晶表示素子(D−1)を作製した。液晶表示素子(D−1)について、実施例1と同様に電圧−透過率特性の測定を行ったところ、良好な液晶配向を確認でき、得られたコントラスト比は1005であった。VHRは97.3%であった。しかし、温湿度試験後に再度配向性を確認したところ、液晶表示素子周辺部に配向膜の吸湿によると思われる液晶配向の乱れが観察され、VHRは44.5%まで低下していた。
次に、実施例1のg.液晶表示素子の作製と同様にして液晶表示素子(D−2)を作製した。液晶表示素子(D−2)について、実施例1と同様に二色比を測定したところ0.78であった。しかし、耐光性試験後に再度二色比を測定したところ、0.52にまで低下していた。
【0082】
[比較例2]
比較合成例1で得られた前記式(10)で表される化合物をDMFに溶解させ、1質量%溶液とした。このとき、チバスペシャリティケミカルズ社製の光重合開始剤「イルガキュア184」を前記式(10)で表される化合物に対して2質量%となるように加えた。それを0.5μmのフィルターで濾過し、液晶配向膜用組成物(E)とした。
【0083】
実施例1と同様にして液晶配向膜(E)を作製した。液晶配向膜(E)付きの基板を使用し、実施例1のc.液晶表示素子の作製と同様にして液晶表示素子(E−1)を作製した。液晶表示素子(E−1)について、実施例1と同様に電圧−透過率特性の測定を行ったところ、良好な液晶配向を確認でき、得られたコントラスト比は902であった。VHRは97.0%であった。
次に、実施例1のg.液晶表示素子の作製と同様にして液晶表示素子(E−2)を作製した。液晶表示素子(E−2)について、実施例1と同様に二色比を測定したところ0.75であった。しかし、耐光性試験後に再度二色比を測定したところ、0.60にまで低下していた。これは、大気中で光重合させたためにアクリル基が酸素阻害を受け、アゾ基を完全に固定化できなかったものと考えられる。
【0084】
[比較例3]
下記式(11)および式(12)で表されるマレイミド化合物(KI化成(株)製)をDMFに溶解し、1質量%溶液とした。これを0.5μmのフィルタで濾過したものをスピンコーターでガラス基板に塗布し、100℃で1分間加熱することで溶媒を除去した。得られた膜の面に、実施例1のb.と同様の方法で偏光を照射し、光配向操作を行った。その後実施例1のc.と同様の方法で液晶表示素子を作製した。目視および偏光顕微鏡観察を行った結果、液晶の配向は殆ど認められなかった。
【0085】
【化21】
【0086】
【化22】
【0087】
【発明の効果】
一般式(1)で表されるマレイミド化合物(一般式(2)で表されるマレイミド化合物を含む)は、偏光や膜面に対して斜め方向からの入射光のような異方性を有する光の照射によって、偏光面や入射面に対し一定の方向に容易に配向し、特に面内での異方性が高く配向規制力の高い膜が得られる。更に、マレイミド基も有しているため、重合開始剤を使用しなくても、大気中で光照射もしくは加熱により重合させることができ、配向状態を容易に固定することができる。従って、一般式(1)で表されるマレイミド化合物を含有する本発明の液晶配向膜用組成物を使用することで、光や熱、さらには水分に対して安定な液晶配向膜が得られる。
【0088】
また、一般式(1)マレイミド化合物は、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、アミノ基、又はヒドロキシ基等を有するので、本発明の液晶配向膜用組成物は、ガラス基板やITO等の酸化物透明電極に対し高い親和性を示す。従って、本発明の液晶配向膜の製造方法においては、本発明の液晶配向膜用組成物の溶液を基板に塗布し、溶媒を乾燥させることで均一な塗膜を得ることができる。また、光配向させた後、更に、光照射もしくは加熱によりマレイミド基を重合させることにより、光配向した膜を重合固定化でき、光や熱、さらには水分に対して安定な液晶配向膜が得られる。
【0089】
また、本発明の液晶配向膜用組成物及び液晶配向膜の製造方法を用いて得られる液晶配向膜を使用することで、湿度、光や熱により液晶表示素子特性が低下しない、安定な素子が得られる。
Claims (4)
- 下記一般式(1)
で表されるマレイミド化合物を含有することを特徴とする液晶配向膜用組成物。 - 請求項1に記載の液晶配向膜用組成物を用いてなる液晶配向膜。
- 請求項1に記載の液晶配向膜用組成物を基板上に塗布し、偏光、又は該基板の表面に対して斜め方向からの非偏光の紫外線を照射した後、光照射又は加熱によりマレイミド基を重合させることを特徴とする液晶配向膜の製造方法。
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