JP4522594B2 - 傾斜配向フィルムおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、傾斜配向フィルムおよびその製造方法に関する。本発明の傾斜配向フィルムは単独でまたは他のフィルムと組み合わせて、位相差フィルム、視角補償フィルム、光学補償フィルム、楕円偏光フィルム等の光学フィルムとして使用できる。特に本発明の傾斜配向フィルムは液晶表示装置の視野角補償に有効である。
【0002】
【従来の技術】
液晶ディスプレイは表示性能の向上とともに電卓、時計等の小型モノクロ表示からノートパソコン、テレビ、モニター等の大型カラー表示へと応用商品領域を拡大してきた。最近では一部の特性、例えば精細度ではCRTを超えるものも現れている。しかしながら,液晶ディスプレイにはCRTに比べて視野角が狭いという短所がある。そこで液晶ディスプレイの広視野角化技術としてこれまでにいくつかの方式か提案されている。前記広視野角化技術としては、たとえば、配向分割法、ハーフトーン方式などにより画素を液晶分子の配向方向が異なる複数の領域に分けて平均化する方法、IPS、MVA、OCBといった液晶動作モードを改良する方法、集光レンズや拡散レンズを用いる方法、光学補償フィルムを用いる方法が知られている。この中で液晶動作モードを改良する方法と光学補償フィルムを用いる方法が実用化されている。
【0003】
光学補償フィルムを用いる方法は、液晶パネルはそのままで偏光板と一体化したものを貼り合わせるだけで済むことから、液晶動作モードを変更して改良する方法に比べて簡易であり、液晶ディスプレイの製造ラインを変更することなく低コストで前記広視野角化を実現できる技術である。光学補償フィルム(視野角補償フィルム)にはディスコチック液晶を傾斜させたものや棒状ネマチック液晶を傾斜させたものが知られている。いずれの場合も液晶ポリマーを傾斜配向させている。たとえば、液晶ポリマーを傾斜配向させたフィルムは特開平8−5838号公報、特開平7−20434公報などが提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、傾斜配向する新たな液晶ポリマーにより、当該液晶ポリマーの傾斜配向状態を固定化させた傾斜配向フィルムを提供することおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す側鎖型液晶ポリマーにより前記目的を達成できることを見出し本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、棒状ネマチック液晶ポリマーが傾斜配向している傾斜配向フィルムにおいて、棒状ネマチック液晶ポリマーが、液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(a)に対応するモノマーと、非液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(b)に対応するモノマーと、を共重合した側鎖型液晶ポリマーであることを特徴とする傾斜配向フィルム、に関する。
【0007】
また、本発明は、配向膜の設けられた基板上に、液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(a)に対応するモノマーと、非液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(b)に対応するモノマーと、を共重合した側鎖型液晶ポリマーを塗工し、当該液晶ポリマーを液晶状態において傾斜配向させた後、配向状態を維持した状態で固定化することを特徴とする傾斜配向フィルムの製造方法、に関する。
【0008】
上記のように、本発明は、前記液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(a)と非液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(b)を含有する側鎖型液晶ポリマーを液晶温度範囲に加熱し配向処理すると、液晶配向層が空気界面に向かって連続的に傾斜角が増大するハイブリッド配向となることを見出したものであり、当該側鎖型液晶ポリマーを傾斜配向フィルムに適用することにより本発明の目的を達成したものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明において傾斜配向させる液晶ポリマーとしては、たとえば、液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(a)と非液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(b)を含有する側鎖型液晶ポリマーが用いられる。
【0010】
前記モノマーユニット(a)はネマチック液晶性を有する側鎖を有するものであり、たとえば、一般式(a):
【化1】
Figure 0004522594
(ただし、R1 は水素原子またはメチル基を、aは1〜6の正の整数を、X1 は−CO2 −基または−OCO−基を、R2 はシアノ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、フルオロ基または炭素数1〜6のアルキル基を、bおよびcは1または2の整数を示す。)で表されるモノマーユニットがあげられる。
【0011】
またモノマーユニット(b)は、直鎖状側鎖を有するものであり、たとえば、一般式(b):
【化2】
Figure 0004522594
(ただし、R3 は水素原子またはメチル基を、R4 は炭素数1〜22のアルキル基、炭素数1〜22のフルオロアルキル基、または一般式(c):
【化3】
Figure 0004522594
ただし、dは1〜6の正の整数を、R5 は炭素数1〜6のアルキル基を示す。)で表されるモノマーユニットがあげられる。
【0012】
また、モノマーユニット(a)とモノマーユニット(b)の割合は、特に制限されるものではなく、モノマーユニットの種類によっても異なるが、モノマーユニット(b)の割合が多くなると側鎖型液晶ポリマーの配向性が著しく低下するため、(b)/{(a)十(b)}=0.01〜0.8(モル比)とするのが好ましい。特に0.1〜0.5とするのがより好ましい。
【0013】
前記側鎖型液晶ポリマーの重量平均分子量は、2千〜10万であるのが好ましい。重量平均分子量をかかる範囲に調整することにより液晶ポリマーとしての性能を発揮する。側鎖型液晶ポリマーの重量平均分子量が過少では配向層の成膜性に乏しくなる傾向があるため、重量平均分子量は2.5千以上とするのがより好ましい。一方、重量平均分子量が過多では液晶としての配向性に乏しくなって均一な配向状態を形成しにくくなる傾向があるため、重量平均分子量は5万以下とするのがより好ましい。
【0014】
なお、側鎖型液晶ポリマーは、前記モノマーユニット(a)、モノマーユニット(b)に対応するアクリル系モノマーまたはメタクリル系モノマーを共重合することにより調製できる。なお、モノマーユニット(a)、モノマーユニット(b)に対応するモノマーは公知の方法により合成できる。共重合体の調製は、例えばラジカル重合方式、カチオン重合方式、アニオン重合方式などの通例のアクリル系モノマー等の重合方式に準じて行うことができる。なお、ラジカル重合方式を適用する場合、各種の重合開始剤を用いうるが、そのうちアゾビスイソブチロニトリルや過酸化ベンゾイルなどの分解温度が高くもなく、かつ低くもない中間的温度で分解するものが好ましく用いられる。
【0015】
本発明の側鎖型液晶ポリマーは、配向膜を設けた基板上に塗工して、液晶状態において傾斜配向させる。
【0016】
配向膜としては、従来より知られている各種のものを使用でき、たとえば、透明な基板にポリイミドやポリビニルアルコール等のポリマーからなる薄膜を形成してそれをラビングする方法により形成したもの、酸化珪素を斜め蒸着した膜や、透明なフィルムを延伸処理した延伸フィルム、シンナメート骨格やアゾベンゼン骨格を有するポリマー偏光紫外線等を照射した光配向膜等を用いることができる。光配向膜を用いた場合、例えば、特開平9−222605号公報に記載の方法などを利用すれば,光配向膜界面での液晶ポリマーの傾斜角がラビング配向膜の場合より大きくすることが可能であり、より大きい傾斜を得ることが可能である。
【0017】
なお、配向膜の形成に用いる透明基材は側鎖型液晶ポリマーを配向させる温度で変化しないものであれば特に制限はなく、たとえば、単層または積層の各種プラスチックフィルムやガラス板等を使用できる。
【0018】
プラスチックフィルムは、配向させる温度で変化しないものであれば特に制限はなく、たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー等の透明ポリマーからなるフィルムがあげられる。またポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー等の透明ポリマーからなるフィルムもあげられる。さらにイミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマーや前記ポリマーのブレンド物等の透明ポリマーからなるフィルムなどもあげられる。
【0019】
前記側鎖型液晶ポリマーを基板に塗工する方法は、当該液晶ポリマーを溶媒に溶解した溶液を用いる溶液塗工方法または当該液晶ポリマーを溶融して溶融塗工する方法が挙げられるが、この中でも溶液塗工にて支持基板上に液晶ポリマーを塗工する方法が好ましい。
【0020】
溶液を調製する際に用いられる溶媒としては、液晶ポリマーや基板の種類により異なり一概には言えないが、通常、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類、フェノール、パラクロロフェノールなどのフェノール類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキベンゼンなどの芳香族炭化水素類、その他、アセトン、酢酸エチル、tert−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレンブリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、2−ピロリドン、N−メチル‐2一ピロリドン、ピリジン、トリエチルアミン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ブチロニトリル、二硫化炭素などを用いることができる。溶液の濃度は、用いる液晶材料の溶解性や最終的に目的とする傾斜配向フィルムの膜厚に依存するため一概には言えないが、通常3〜50重量%、好ましくは7〜30重量%の範囲である。
【0021】
塗工された前記液晶ポリマーからなる傾斜配向フィルム層の厚みは0.1〜10μm程度とするのが好ましい。なお、特に傾斜配向フィルムの膜厚を精密に制御する必要がある場合には、膜厚が基板に塗工する段階でほぼ決まるため、溶液の濃度、塗工膜の膜厚などの制御は特に注意を払う必要がある。
【0022】
上記の溶媒を用いて所望の濃度に調整した側鎖型液晶ポリマー溶液を、基板上に塗工する方法としては、例えばスピンコート法、バーコート法などを採用することができる。塗工後、溶媒を除去し、基板上に液晶ポリマー層を形成させる。溶媒の除去条件は、特に限定されず、溶媒をおおむね除去でき、液晶ポリマー層が流動したり、流れ落ちたりさえしなければ良い。通常、室温での乾燥、乾燥炉ての乾燥、ホットプレート上での加熱などを利用して溶媒を除去する。
【0023】
次いで、支持基板上に形成された側鎖型液晶ポリマー層を液晶状態とし、傾斜配向させる。たとえば液晶ポリマーが液晶温度範囲になるように熱処理を行い、液晶状態において傾斜配向させる。熱処理方法としては、上記の乾燥方法と同様の方法で行うことができる。熱処理温度は、使用する側鎖型液晶ポリマーと支持基板の種類により異なるため一概には言えないが、通常60〜300℃、好ましくは70〜200℃の範囲において行う。また熱処理時間は、熱処理温度および使用する側鎖型液晶ポリマーや基板の種類によって異なるため一概には言えないが、通常10秒〜2時間、好ましくは20秒〜30分の範囲で選択される。10秒より短い場合、配向形成が十分に進行しないおそれがある。
【0024】
熱処理終了後、冷却操作を行う。冷却操作としては、熱処理後の傾斜配向フィルムを、熱処理操作における加熱雰囲気中から、室温中に出すことによって行うことができる。また空冷、水冷などの強刺冷却を行ってもよい。前記液晶ポリマーの傾斜配向層は,液晶ポリマーのガラス転移温度以下に冷却することにより配向が固定化される。
【0025】
このようにして、側鎖型液晶ポリマーの薄膜が生成され、配向性を維持したまま固定化することにより、液晶配向層が空気界面に向かって連続的に傾斜角が増大するハイブリッド配向している傾斜配向フィルムが得られる。
【0026】
こうして得られた傾斜配向フィルムは、光学フィルムとして用いられる。前記傾斜配向フィルムは基板から剥離して用いてもよいし、剥離することなく基板上に形成された配向液晶層としてそのまま用いてもよい。
【0027】
【実施例】
以下に実施例をあげて本発明の一態様について説明するが、本発明は実施例に限定されないことはいうまでもない。
【0028】
実施例1
ガラス基板にポリビニルアルコールの5重量%水溶液をスピンコートし、約170℃で乾燥させた後、レーヨン布でポリビニルアルコール表面をラビングすることにより配向膜とした。続いて、配向膜上に側鎖型液晶コポリマーとして、下記の化4(式中のn=35であり、モノマーユニットのモル%を示し、便宜的にブロック体で表示している、重量平均分子量:5.0×103 )に示される液晶ポリマーをシクロヘキサノンに溶解し30重量%に調整した溶液を、2000rpmでスピンコート塗工した。次いで、150℃で1分間加熱し、その後室温まで直ちに空冷することにより、前記液晶ポリマー層を傾斜配向させ、かつ配向を維持したままガラス化し配向液晶層(2μm)を固定化した傾斜配向フィルムを得た。
【0029】
【化4】
Figure 0004522594
(位相差測定)
得られた傾斜配向フィルムの位相差の視角依存性を評価した。正面の位相差を△nd(0)、遅相軸方向に±30゜傾斜したときの位相差をそれぞれ△nd(+30)、△nd(−30)とするとき、傾斜配向フィルムの傾斜度合いの指標として下記の値を定義した。
傾斜度=(△nd(−30)−△nd(+30)/△nd(0)
傾斜していない水平配向のとき傾斜度=0となり、傾斜が大きくなるに従い、この傾斜度の数値も増大する。傾斜配向フィルムの傾斜度は53であり、傾斜配向フィルムが得られていることを確認した。

Claims (2)

  1. 棒状ネマチック液晶ポリマーが傾斜配向している傾斜配向フィルムにおいて、棒状ネマチック液晶ポリマーが、液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(a)に対応するモノマーと、非液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(b)に対応するモノマーと、を共重合した側鎖型液晶ポリマーであることを特徴とする傾斜配向フィルム。
  2. 配向膜の設けられた基板上に、液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(a)に対応するモノマーと、非液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(b)に対応するモノマーと、を共重合した側鎖型液晶ポリマーを塗工し、当該液晶ポリマーを液晶状態において傾斜配向させた後、配向状態を維持した状態で固定化することを特徴とする傾斜配向フィルムの製造方法。
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