以下、図示実施形態に基づき本発明を説明する、なお、部材を識別しやすくするために、一部の図面では部材毎に外形線の太さを異ならせたり、線種を異ならせている。また断面図中には、実際には周方向の異なる位置にあるが、作図上、同一断面上に表している箇所もある。
[レンズ鏡筒の全体の説明]
まず、図1ないし図19について、本実施形態のズームレンズ鏡筒71の全体構造を説明する。図6及び図7に示すように、ズームレンズ鏡筒71はデジタルカメラ70に搭載されており、撮影光学系は、物体側から順に、第1レンズ群LG1、シャッタS及び絞りA、第2レンズ群LG2、第3レンズ群LG3、ローパスフィルタ(フィルタ類)LG4及びCCD(固体撮像素子)60からなっている。撮影光学系の光軸はZ1である。この撮影光軸Z1は、ズームレンズ鏡筒71の外観を構成する各環状部材の回動中心軸(以下、鏡筒中心軸Z0と呼ぶ)と平行であり、かつ該鏡筒中心軸Z0に対して下方に偏心している。ズーミングは、第1レンズ群LG1と第2レンズ群LG2を撮影光軸Z1方向に所定の軌跡で進退させることによって行い、フォーカシングは同方向への第3レンズ群LG3の移動で行う。なお、以下の説明中で「光軸方向」という記載は、特に断りがなければ撮影光軸Z1と平行な方向を意味している。
図6及び図7に示すように、カメラボディ72内に固定環22が固定され、この固定環22の後部にCCDホルダ21が固定されている。CCDホルダ21上にはCCDベース板62を介してCCD60が支持され、CCD60の前部に、フィルタホルダ73とパッキン61を介してローパスフィルタLG4が支持されている。フィルタホルダ73は、CCDホルダ21の一部として一体に形成されている。CCDホルダ21の後部には、画像や撮影情報を表示するLCD20が設けられている。
固定環22内には、第3レンズ群LG3を保持するAFレンズ枠(3群レンズ枠)51が光軸方向に直進移動可能に支持されている。すなわち、固定環22とCCDホルダ21には、撮影光軸Z1と平行な一対のAFガイド軸52、53の前端部と後端部がそれぞれ固定されており、このAFガイド軸52、53に対してそれぞれ、AFレンズ枠51に形成したガイド孔51a、51bが摺動可能に嵌まっている。本実施形態では、AFガイド軸52とガイド孔51aのクリアランスよりもAFガイド軸53とガイド孔51bのクリアランス大きくなっている。すなわち、AFガイド軸52が主たる(厳密な精度を出す)ガイド軸で、AFガイド軸53はサブ(回り止め)のガイド軸である。また、AFモータ160のドライブシャフトに形成した送りねじに対し、AFナット54が螺合している。図1に示すように、AFナット54は回転規制突起54aを有し、AFレンズ枠51は光軸方向へのガイド溝51mを有し、回転規制突起54aがガイド溝51mに対して摺動可能に嵌まっている。AFレンズ枠51はさらに、AFナット54の後方に位置するストッパ突起51nを有する。AFレンズ枠51は、AF枠付勢ばね55によって前方へ付勢されており、ストッパ突起51nがAFナット54に当て付くことによってAFレンズ枠51の前方移動端が決定される。そしてAFナット54が光軸方向後方へ移動したときに、AFレンズ枠51はAFナット54に押圧されて後方へ移動される。以上の構造により、AFモータ160のドライブシャフトを正逆に回転させると、AFレンズ枠51が光軸方向に進退される。なお、AFレンズ枠51を直接に(AFナット54によらずに)押圧して、AF枠付勢ばね55に抗して後方へ移動させることも可能である。
図5に示すように、固定環22の上部には、ズームモータ150と減速ギヤボックス74が支持されている。減速ギヤボックス74は内部に減速ギヤ列を有し、ズームモータ150の駆動力をズームギヤ28に伝える。ズームギヤ28は、撮影光軸Z1と平行なズームギヤ軸29によって固定環22に枢着されている。ズームモータ150とAFモータ160は、固定環22の外周面に配設したレンズ駆動制御FPC(フレキシブルプリント回路)基板75を介して、カメラの制御回路140(図19)により制御される。
固定環22の内周面には、雌ヘリコイド22a、撮影光軸Z1と平行な3本の直進案内溝22b、雌ヘリコイド22aと平行な3本の斜行溝22c、及び各斜行溝22cの前端部に連通する周方向への回転摺動溝22dが形成されている。回転摺動溝22dは固定環22の前端部付近に形成され、この回転摺動溝22dの直後の前方環状領域22zには雌ヘリコイド22aが形成されていない(図8参照)。
ヘリコイド環18は、雌ヘリコイド22aに螺合する雄ヘリコイド18aと、斜行溝22c及び回転摺動溝22d内に位置される回転摺動突起18bとを外周面に有している(図4、図9)。雄ヘリコイド18a上には、撮影光軸Z1と平行なギヤ歯を有するスパーギヤ部18cが形成されており、スパーギヤ部18cはズームギヤ28に対して螺合する。従って、ズームギヤ28からスパーギヤ部18cへ回転力が与えられたとき、ヘリコイド環18は、雌ヘリコイド22aと雄ヘリコイド18aが螺合関係にある状態では回転しながら光軸方向へ進退し、ある程度前方に移動すると、雄ヘリコイド18aが雌ヘリコイド22aから外れ、回転摺動溝22dと回転摺動突起18bの係合関係によって鏡筒中心軸Z0を中心とする周方向回転のみを行う。
斜行溝22cは、雌ヘリコイド22aと雄ヘリコイド18aが螺合する段階で回転摺動突起18bと固定環22の干渉を避けるために形成された逃げ溝であり、斜行溝22cは雌ヘリコイド22aの底部よりも深くなっている。雌ヘリコイド22aは、各斜行溝22cを挟む一対のヘリコイド山の周方向間隔が他のヘリコイド山の周方向間隔よりも広くなっており、雄ヘリコイド18aは、この周方向間隔の広いヘリコイド山に係合するべく、回転摺動突起18bの後方に位置する3つのヘリコイド山18a-Wが他のヘリコイド山よりも周方向に幅広になっている。
固定環22にはさらに、その外周面と回転摺動溝22dとを貫通するストッパ挿脱孔22eが形成され、このストッパ挿脱孔22eに対し、撮影領域を越えるヘリコイド環18の回動を規制するための分解ストッパ26が着脱可能となっている。
ヘリコイド環18の前端部内周面に形成した回転伝達凹部18d(図4、図10)に対し、第3外筒15の後端部から後方に突設した回転伝達突起15a(図11)が嵌入されている。回転伝達凹部18dと回転伝達突起15aはそれぞれ、周方向に位置を異ならせて3箇所設けられており、周方向位置が対応するそれぞれの回転伝達突起15aと回転伝達凹部18dは、鏡筒中心軸Z0に沿う方向への相対摺動は可能に結合し、該鏡筒中心軸Z0を中心とする周方向には相対回動不能に結合されている。すなわち、第3外筒15とヘリコイド環18は一体に回転する。また、ヘリコイド環18には、回転摺動突起18bの内径側の一部領域を切り欠いて嵌合凹部18eが形成されており、該嵌合凹部18eに嵌合する嵌合突起15bは、回転摺動突起18bが回転摺動溝22dに係合するとき、同時に回転摺動溝22dに係合する(図6の鏡筒上半断面参照)。
第3外筒15とヘリコイド環18の間には、互いを光軸方向での離間方向へ付勢する3つの離間方向付勢ばね25が設けられている。離間方向付勢ばね25は圧縮コイルばねからなり、その後端部がヘリコイド環18の前端部に開口するばね挿入凹部18fに収納され、前端部が第3外筒15のばね当付凹部15cに当接している。この離間方向付勢ばね25によって、回転摺動溝22dの前側壁面に向けて嵌合突起15bを押圧し、かつ回転摺動溝22dの後側壁面に向けて回転摺動突起18bを押圧することで、固定環22に対する第3外筒15とヘリコイド環18の光軸方向のバックラッシュが除去される。
第3外筒15の内周面には、内径方向に突設された爪状の相対回動案内突起15dと、鏡筒中心軸Z0を中心とする周方向溝15eと、撮影光軸Z1と平行な3本のローラ嵌合溝15fとが形成されている(図4、図11)。相対回動案内突起15dは、周方向に位置を異ならせて複数設けられている。ローラ嵌合溝15fは、回転伝達突起15aに対応する周方向位置に形成されており、その後端部は、回転伝達突起15aを貫通して後方へ向け開口されている。また、ヘリコイド環18の内周面には鏡筒中心軸Z0を中心とする周方向溝18gが形成されている(図4、図10)。この第3外筒15とヘリコイド環18の結合体の内側には直進案内環14が支持される。直進案内環14の外周面には光軸方向の後方から順に、外径方向へ突出する3つの直進案内突起14aと、それぞれ周方向に位置を異ならせて複数設けた爪状の相対回動案内突起14b及び14cと、鏡筒中心軸Z0を中心とする周方向溝14dとが形成されている(図4、図12)。直進案内環14は、直進案内突起14aを直進案内溝22bに係合させることで、固定環22に対し光軸方向に直進案内される。また第3外筒15は、周方向溝15eを相対回動案内突起14cに係合させ、相対回動案内突起15dを周方向溝14dに係合させることで、直進案内環14に対して相対回動可能に結合される。周方向溝15eと相対回動案内突起14c、周方向溝14dと相対回動案内突起15dはそれぞれ、光軸方向には若干相対移動可能なように遊嵌している。さらにヘリコイド環18も、周方向溝18gを相対回動案内突起14bに係合させることで、直進案内環14に対して相対回動可能に結合される。周方向溝18gと相対回動案内突起14bは光軸方向には若干相対移動可能なように遊嵌している。
直進案内環14には、内周面と外周面を貫通する3つのローラ案内貫通溝14eが形成されている。各ローラ案内貫通溝14eは、図12に示すように、周方向へ向け形成された平行な前後の周方向溝部14e-1、14e-2と、この両周方向溝部14e-1及び14e-2を接続するリード溝部14e-3とを有する。それぞれのローラ案内貫通溝14eに対し、カム環11の外周面に設けたカム環ローラ32が嵌まっている。カム環ローラ32は、ローラ固定ねじ32aを介してカム環11に固定されており、周方向へ位置を異ならせて3つ設けられている。カム環ローラ32はさらに、ローラ案内貫通溝14eを貫通して第3外筒15内周面のローラ嵌合溝15fに嵌まっている。各ローラ嵌合溝15fの前端部付近には、ローラ付勢ばね17に設けた3つのローラ押圧片17aが嵌っている(図11)。ローラ押圧片17aは、カム環ローラ32が周方向溝部14e-1に係合するときに該カム環ローラ32に当接して後方へ押圧し、カム環ローラ32とローラ案内貫通溝14e(周方向溝部14e-1)との間のバックラッシュを取る。
以上の構造から、固定環22からカム環11までの繰り出しの態様が理解される。すなわち、ズームモータ150によってズームギヤ28を鏡筒繰出方向に回転駆動すると、雌ヘリコイド22aと雄ヘリコイド18aの関係によってヘリコイド環18が回転しながら前方に繰り出される。ヘリコイド環18と第3外筒15はそれぞれ、周方向溝14d、15e及び18gと相対回動案内突起15d、14c及び14bの係合関係によって、直進案内環14に対して相対回動可能かつ回転軸方向(鏡筒中心軸Z0に沿う方向)へは共に移動するように結合されているため、ヘリコイド環18が回転繰出されると、第3外筒15も同方向に回転しながら前方に繰り出され、直進案内環14はヘリコイド環18及び第3外筒15と共に前方へ直進移動する。また、第3外筒15の回転力はローラ嵌合溝15fとカム環ローラ32を介してカム環11に伝達される。カム環ローラ32はローラ案内貫通溝14eにも嵌まっているため、直進案内環14に対してカム環11は、リード溝部14e-3の形状に従って回転しながら前方に繰り出される。前述の通り、直進案内環14自体も第3外筒15及びヘリコイド環18と共に前方に直進移動しているため、結果としてカム環11には、リード溝部14e-3に従う回転繰出分と、直進案内環14の前方への直進移動分とを合わせた光軸方向移動量が与えられる。
以上の繰出動作は雄ヘリコイド18aと雌ヘリコイド22aが螺合している間行われ、このとき回転摺動突起18bは斜行溝22c内を移動している。ヘリコイド環18と第3外筒15が所定量繰り出されると、雄ヘリコイド18aと雌ヘリコイド22aの螺合が解除されて、やがて回転摺動突起18bと嵌合突起15bが斜行溝22cから回転摺動溝22d内へ入る。すると、ヘリコイドによる回転繰出力が作用しなくなるため、ヘリコイド環18及び第3外筒15は、回転摺動突起18b及び嵌合突起15bと回転摺動溝22dとの係合関係によって光軸方向の一定位置で回動のみを行うようになる。また、回転摺動突起18bが斜行溝22cから回転摺動溝22d内へ入るのとほぼ同時に、カム環ローラ32はローラ案内貫通溝14eの周方向溝部14e-1に入る。するとカム環11に対しても前方への移動力が与えられなくなり、カム環11は第3外筒15の回転に応じて一定位置で回動のみ行うようになる。
ズームギヤ28を鏡筒収納方向に回転駆動させると、以上と逆の動作が行われる。カム環ローラ32がローラ案内貫通溝14eの周方向溝部14e-2に入るまでヘリコイド環18に回転を与えると、以上の各鏡筒部材が図7に示す位置まで後退する。
続いて、カム環11より先の構造を説明する。直進案内環14の内周面には、撮影光軸Z1と平行な3つの第1直進案内溝14f及び6つの第2直進案内溝14gが、それぞれ周方向に位置を異ならせて形成されている。第1直進案内溝14fは、6つのうち3つの第2直進案内溝14gの両側に位置する一対の溝部からなっており、この3つの第1直進案内溝14fに対し、2群直進案内環10に設けた3つの股状突起10a(図3、図15)が摺動可能に係合している。一方、第2直進案内溝14gに対しては、第2外筒13の後端部外周面に突設した6つの直進案内突起13a(図2、図17)が摺動可能に係合している。したがって、第2外筒13と2群直進案内環10はいずれも、直進案内環14を介して光軸方向に直進案内されている。
2群直進案内環10は、第2レンズ群LG2を支持する2群レンズ移動枠8を直進案内するための部材であり、第2外筒13は、第1レンズ群LG1を支持する第1外筒12を直進案内するための部材である。
まず第2レンズ群LG2の支持構造を説明する。2群直進案内環10は、3つの股状突起10aを接続するリング部10bから前方へ向けて、3つの直進案内キー10cを突出させている(図3、図15)。図6及び図7に示すように、リング部10bの外縁部は、カム環11の後端部内周面に形成した周方向溝11eに対し相対回転は可能で光軸方向の相対移動は不能に係合しており、直進案内キー10cはカム環11の内側に延出されている。各直進案内キー10cは、撮影光軸Z1と平行な一対のガイド面を側面に有しており、このガイド面を、カム環11の内側に支持された2群レンズ移動枠8の直進案内溝8aに係合させることによって、2群レンズ移動枠8を軸方向に直進案内している。直進案内溝8aは、2群レンズ移動枠8の外周面側に形成されている。
なお、2群直進案内環10には周方向に位置を異ならせて直進案内キー10cが3つ設けられているが、そのうちひとつの直進案内キー10c-Wは、後述する露出制御用のFPC(フレキシブルプリント回路)基板77の支持部材を兼ねるために、残る2つの直進案内キー10cよりも周方向に幅広になっている。幅広の直進案内キー10c-Wには、リング部10bとの接続部分近傍を一部切り欠いて径方向へ貫通するFPC通し孔10dが形成されており、図6に示すように、露出制御FPC基板77は、該FPC通し孔10dを通してリング部10bの後方から直進案内キー10c-Wの外周面側へ延出され、直進案内キー10c-Wの先端部で後方に折り曲げられている。これに対応して、3つの直進案内溝8aのうちひとつは、幅広の直進案内キー10c-Wが係合可能な幅広の直進案内溝8a-Wとなっている。該直進案内溝8a-Wの中央部は、露出制御FPC基板77を通すことが可能な貫通部になっており、この貫通部の両側に直進案内キー10c-Wを支持するための有底部が形成されている。これに対し、残る2つの直進案内溝8aはいずれも、2群レンズ移動枠8の外周面側に形成された有底溝となっている。2群レンズ移動枠8と2群直進案内環10は、直進案内キー10c-Wが直進案内溝8a-Wに係合可能な特定の回転位相でのみ組み合わせることができる。
カム環11の内周面には2群案内カム溝11aが形成されている。図14に示すように、2群案内カム溝11aは、光軸方向及び周方向に位置を異ならせた前方カム溝11a-1と後方カム溝11a-2からなっている。前方カム溝11a-1と後方カム溝11a-2はいずれも、同形状の基礎軌跡αをトレースして形成されたカム溝であるが、それぞれが基礎軌跡α全域をカバーしているのではなく、前方カム溝11a-1と後方カム溝11a-2では基礎軌跡α上に占める領域の一部が異なっている。基礎軌跡とは、ズーム領域及び収納用領域を含む全ての鏡筒使用領域(使用領域)と、鏡筒の組立分解用領域とを含む概念上のカム溝形状である。つまり、鏡筒使用領域とはこのカム溝形状によって2群レンズ移動枠8の移動が制御されうる領域のことであり、組立分解領域と区別する意味で用いられている。また、ズーム領域とは、鏡筒使用領域の中でも特にワイド端とテレ端の間の移動を制御するための領域であり、収納用領域と区別する意味で用いられている。カム環11には、一対の前方カム溝11a-1と後方カム溝11a-2を1グループとした場合、周方向に等間隔で3グループの2群案内カム溝11aが形成されている。
2群案内カム溝11aに対して、2群レンズ移動枠8の外周面に設けた2群用カムフォロア8bが係合している。2群案内カム溝11aと同様に2群用カムフォロア8bも、光軸方向及び周方向に位置を異ならせた一対の前方カムフォロア8b-1と後方カムフォロア8b-2を1グループとして周方向に等間隔で3グループが設けられており、各前方カムフォロア8b-1は前方カム溝11a-1に係合し、各後方カムフォロア8b-2は後方カム溝11a-2に係合するように光軸方向及び周方向の間隔が定められている。
2群レンズ移動枠8は2群直進案内環10を介して光軸方向に直進案内されているため、カム環11が回転すると、2群案内カム溝11aに従って、2群レンズ移動枠8が光軸方向へ所定の軌跡で移動する。
2群レンズ移動枠8の内側には、第2レンズ群LG2を保持する2群レンズ枠6が支持されている。2群レンズ枠6は、一対の2群レンズ枠支持板36、37に対し、2群回動軸33を介して軸支されており、2群枠支持板36、37が支持板固定ビス66によって2群レンズ移動枠8に固定されている。2群回動軸33は撮影光軸Z1と平行でかつ撮影光軸Z1に対して偏心しており、2群レンズ枠6は、2群回動軸33を回動中心として、第2レンズ群LG2の光軸を撮影光軸Z1と一致させる撮影用位置(図6)と、第2レンズ群LG2の光軸を撮影光軸Z1から偏心した退避光軸Z2へと変位させる収納用退避位置(図7)とに回動することができる。2群レンズ移動枠8には、2群レンズ枠6を上記撮影用位置で回動規制する回動規制ピン35が設けられていて、2群レンズ枠6は、2群レンズ枠戻しばね39によって該回動規制ピン35との当接方向へ回動付勢されている。軸方向押圧ばね38は、2群レンズ枠6の光軸方向のバックラッシュ取りを行う。
2群レンズ枠6は、光軸方向には2群レンズ移動枠8と一体に移動する。CCDホルダ21には2群レンズ枠6に係合可能な位置にカム突起21a(図4)が前方に向けて突設されており、図7のように2群レンズ移動枠8が収納方向に移動してCCDホルダ21に接近すると、該カム突起21aの先端部に形成したカム面が、2群レンズ枠6に係合して上記の収納用退避位置に回動させる。
続いて第1レンズ群LG1の支持構造を説明する。直進案内環14を介して光軸方向に直進案内された第2外筒13の内周面には、周方向に位置を異ならせて3つの直進案内溝13bが光軸方向へ形成されており、各直進案内溝13bに対し、第1外筒12の後端部付近の外周面に形成した3つの係合突起12aが摺動可能に嵌合している(図2、図17及び図18参照)。すなわち、第1外筒12は、直進案内環14と第2外筒13を介して光軸方向に直進案内されている。また、第2外筒13は後端部付近の内周面に、周方向へ向かう内径フランジ13cを有し、この内径フランジ13cがカム環11の外周面に設けた周方向溝11cに摺動可能に係合することで、第2外筒13は、カム環11に対して相対回転可能かつ光軸方向の相対移動は不能に結合されている。一方、第1外筒12は、内径方向に突出する3つの1群用ローラ(カムフォロア)31を有し、それぞれの1群用ローラ31が、カム環11の外周面に3本形成した1群案内カム溝11bに摺動可能に嵌合している。
第1外筒12内には、1群調整環2を介して1群レンズ枠1が支持されている。1群レンズ枠1には第1レンズ群LG1が固定され、その外周面に形成した雄調整ねじ1aが、1群調整環2の内周面に形成した雌調整ねじ2aに螺合している。この調整ねじの螺合位置を調整することよって、1群レンズ枠1は1群調整環2に対して光軸方向に位置調整可能となっている。
1群調整環2は外径方向に突出する一対の(図2には一つのみを図示)ガイド突起2bを有し、この一対のガイド突起2bが、第1外筒12の内周面側に形成した一対の1群調整環ガイド溝12bに摺動可能に係合している。1群調整環ガイド溝12bは撮影光軸Z1と平行に形成されており、該1群調整環ガイド溝12bとガイド突起2bの係合関係によって、1群調整環2と1群レンズ枠1の結合体は、第1外筒12に対して光軸方向の前後移動が可能になっている。第1外筒12にはさらに、ガイド突起2bの前方を塞ぐように、1群抜止環3が抜止環固定ビス64によって固定されている。1群抜止環3のばね受け部3aとガイド突起2bとの間には、圧縮コイルばねからなる1群付勢ばね24が設けられ、該1群付勢ばね24によって1群調整環2は光軸方向後方に付勢されている。1群調整環2は、その前端部付近の外周面に突設した係合爪2cを、1群抜止環3の前面(図2に見えている側の面)に係合させることによって、第1外筒12に対する光軸方向後方への最大移動位置が規制される(図6の上半断面参照)。一方、1群付勢ばね24を圧縮させることによって、1群調整環2は光軸方向前方に若干量移動することができる。
第1レンズ群LG1と第2レンズ群LG2の間には、シャッタSと絞りAを有するシャッタユニット76が支持されている。シャッタユニット76は、2群レンズ移動枠8の内側に支持されており、シャッタSと絞りAは、第2レンズ群LG2との空気間隔が固定となっている。シャッタユニット76を挟んだ前後位置には、シャッタSと絞りAを駆動する2つのアクチュエータ131、132(図19)が、それぞれ一つずつ配置されており、シャッタユニット76からはこれらアクチュエータをカメラの制御回路140と接続するための露出制御FPC基板77が延出されている。なお、露出制御FPC基板77は、実際には図6における下半断面(ワイド端)の位置には存在しないが、他の部材との位置関係を分かりやすくするために図示している。
第1外筒12の前端部には、シャッタSとは別に、非撮影時に撮影開口を閉じて撮影光学系(第1レンズ群LG1)を保護するためのレンズバリヤ機構が設けられる。レンズバリヤ機構は、鏡筒中心軸Z0に対して偏心した位置に設けた回動軸を中心として回動可能な一対のバリヤ羽根104及び105と、該バリヤ羽根104、105を閉じ方向に付勢する一対のバリヤ付勢ばね106と、鏡筒中心軸Z0を中心として回動可能で所定方向の回動によってバリヤ羽根104、105に係合して開かせるバリヤ駆動環103と、該バリヤ駆動環103をバリヤ開放方向に回動付勢するバリヤ駆動環付勢ばね107と、バリヤ羽根104、105とバリヤ駆動環103の間に位置するバリヤ押さえ板102とを備えている。バリヤ駆動環付勢ばね107の付勢力はバリヤ付勢ばね106の付勢力よりも強く設定されており、ズームレンズ鏡筒71がズーム領域(図6)に繰り出されているときには、バリヤ駆動環付勢ばね107がバリヤ駆動環103をバリヤ開放用の角度位置に保持して、バリヤ付勢ばね106に抗してバリヤ羽根104、105が開かれる。そしてズームレンズ鏡筒71がズーム領域から収納位置(図7)へ移動する途中で、カム環11のバリヤ駆動環押圧面11d(図3、図13)がバリヤ駆動環103をバリヤ開放方向と反対方向に強制回動させ、バリヤ駆動環103がバリヤ羽根104、105に対する係合を解除して、該バリヤ羽根104、105がバリヤ付勢ばね106の付勢力によって閉じられる。レンズバリヤ機構の前部は、バリヤカバー101(化粧板)によって覆われている。
以上の構造のズームレンズ鏡筒71の全体的な繰出及び収納動作を、図6、図7及び図19を参照して説明する。図19は、ズームレンズ鏡筒71の主要な部材の関係を概念的に示したものであり、各部材の符号の後の括弧内の「S」は固定部材、「L」は光軸方向の直線移動のみ行う部材、「R」は回転のみ行う部材、「RL」は回転しながら光軸方向に移動する部材であることをそれぞれ意味している。また、括弧内に二つの記号が併記されている部材は、繰出時及び収納時にその動作態様が切り換わることを意味している。
カム環11が収納位置から定位置回転状態に繰り出される段階までは既に説明しているので簡潔に述べる。図7の鏡筒収納状態では、ズームレンズ鏡筒71はカメラボディ72内に完全に格納されており、カメラ70の前面は、カメラボディ72からズームレンズ鏡筒71が突出しないフラット形状になっている。この鏡筒収納状態からズームモータ150によりズームギヤ28を繰出方向に回転駆動させると、ヘリコイド環18と第3外筒15の結合体がヘリコイド(雄ヘリコイド18a、雌ヘリコイド22a)に従って回転繰出される。直進案内環14は、第3外筒15及びヘリコイド環18と共に前方に直進移動する。このとき、第3外筒15により回転力が付与されるカム環11は、直進案内環14の前方への直進移動分と、該直進案内環14との間に設けたリード構造(カム環ローラ32、リード溝部14e-3)による繰出分との合成移動を行う。ヘリコイド環18とカム環11が前方の所定位置まで繰り出されると、それぞれの回転繰出構造(ヘリコイド、リード)の機能が解除されて、鏡筒中心軸Z0を中心とした周方向回転のみを行うようになる。
カム環11が回転すると、その内側では、2群直進案内環10を介して直進案内された2群レンズ移動枠8が、2群用カムフォロア8bと2群案内カム溝11aの関係によって光軸方向に所定の軌跡で移動される。図7の鏡筒収納状態では、2群レンズ移動枠8内の2群レンズ枠6は、CCDホルダ21に突設したカム突起21aの作用によって撮影光軸Z1から上方へ偏心した収納用退避位置に保持されており、第2レンズ群LG2が退避光軸Z2位置にあった。そして、該2群レンズ枠6は、2群レンズ移動枠8がズーム領域まで繰り出される途中でカム突起21aから離れて、2群レンズ枠戻しばね39の付勢力によって第2レンズ群LG2の光軸を撮影光軸Z1と一致させる撮影用位置(図6)に回動する。以後、ズームレンズ鏡筒71を再び収納位置に移動させるまでは、2群レンズ枠6は撮影用位置に保持される。
また、カム環11が回転すると、該カム環11の外側では、第2外筒13を介して直進案内された第1外筒12が、1群用ローラ31と1群案内カム溝11bの関係によって光軸方向に所定の軌跡で移動される。
すなわち、撮像面(CCD受光面)に対する第1レンズ群LG1と第2レンズ群LG2の繰出位置はそれぞれ、前者が、固定環22に対するカム環11の前方移動量と、該カム環11に対する第1外筒12のカム繰出量との合算値として決まり、後者が、固定環22に対するカム環11の前方移動量と、該カム環11に対する2群レンズ移動枠8のカム繰出量との合算値として決まる。ズーミングは、この第1レンズ群LG1と第2レンズ群LG2が互いの空気間隔を変化させながら撮影光軸Z1上を移動することにより行われる。図7の収納位置から鏡筒繰出を行うと、まず図6の下半断面に示すワイド端の繰出状態になり、さらにズームモータ150を鏡筒繰出方向に駆動させると、同図の上半断面に示すテレ端の繰出状態となる。図6から分かるように、本実施形態のズームレンズ鏡筒71は、ワイド端では第1レンズ群LG1と第2レンズ群LG2の間隔が大きく、テレ端では、第1レンズ群LG1と第2レンズ群LG2が互いの接近方向に移動して間隔が小さくなる。このような第1レンズ群LG1と第2レンズ群LG2の空気間隔の変化は、2群案内カム溝11aと1群案内カム溝11bの軌跡によって与えられるものである。このテレ端とワイド端の間のズーム領域(ズーミング使用領域)では、カム環11、第3外筒15及びヘリコイド環18は、前述の定位置回転のみを行い、光軸方向へは進退しない。
ズーム領域では、被写体距離に応じてAFモータ160を駆動することにより、第3レンズ群LG3(AFレンズ枠51)が撮影光軸Z1に沿って移動してフォーカシングがなされる。
ズームモータ150を鏡筒収納方向に駆動させると、ズームレンズ鏡筒71は、前述の繰り出し時とは逆の収納動作を行い、カメラボディ72の内部に完全に格納される収納位置(図7)まで移動される。この収納位置への移動の途中で、2群レンズ枠6がカム突起21aによって収納用退避位置に回動され、2群レンズ移動枠8と共に後退する。ズームレンズ鏡筒71が収納位置まで移動されると、第2レンズ群LG2は、光軸方向において第3レンズ群LG3やローパスフィルタLG4と同位置に格納される(鏡筒の径方向に重なる)。この収納時の第2レンズ群LG2の退避構造によってズームレンズ鏡筒71の収納長が短くなり、図7の左右方向におけるカメラボディ72の厚みを小さくすることが可能となっている。
デジタルカメラ70は、ズームレンズ鏡筒71に連動するズームファインダを備えている。ズームファインダは、ファインダギヤ30をスパーギヤ部18cに噛合させてヘリコイド環18から動力を得ており、該ヘリコイド環18がズーム領域において前述の定位置回転を行うと、その回転力を受けてファインダギヤ30が回転する。ファインダ光学系は、対物窓81a、第1の可動変倍レンズ81b、第2の可動変倍レンズ81c、プリズム81d、接眼レンズ81e、接眼窓81fを有し、第1と第2の可動変倍レンズ81b、81cをファインダ対物系の光軸Z3に沿って所定の軌跡で移動させることで変倍を行う。ファインダ対物系の光軸Z3は、撮影光軸Z1と平行である。可動変倍レンズ81b及び81cの保持枠83、84は、ガイドシャフト85、86(図6及び図7では重なって一本に見えている)によって光軸Z3方向に移動可能に直進案内され、かつ光軸Z3と平行な回動中心軸で回動可能なカムギヤ90(図5)によって移動力が与えられるようになっている。このカムギヤ90とファインダギヤ30の間に減速ギヤ列が設けられており、ファインダギヤ30が回転するとカムギヤ90が回転され、その結果として可動変倍レンズ81b、81cが進退する。以上のズームファインダの構成要素は、図5に示すファインダユニット80としてサブアッシされ、固定環22の上部に取り付けられる。
[本発明の特徴部分の説明]
カム環11と第1外筒(可動部材、可動環)12は鏡筒中心軸Z0を中心とした同心状に配置されており、第1外筒12は、その内径方向に突出する1群用ローラ(カムフォロア)31と、カム環11の外周面に形成した1群案内カム溝11bとの係合関係によって、光軸方向に所定の軌跡で移動される。この1群用ローラ31と1群案内カム溝11bの関係を図20ないし図30に展開図として示した。なお、図20ないし図30では、第1外筒12を一点鎖線、第2外筒13を二点鎖線で表している。
図13に示すように、カム環11の外周面に形成した1群案内カム溝11bは、その一端部をカム環11の前端面に開口する前方開放領域11b-Xとし、他端部をカム環11の後端面に開口する後方開放領域(開放端部、撮影待機領域、収納領域)11b-Yとした、いわば両端開放カム溝となっている。1群案内カム溝11bは、後方開放領域11b-Yから光軸方向前方に向かう直線状の傾斜リード領域11b-Lと、該傾斜リード領域11b-Lと前方開放領域11b-Xの間に位置する山形領域11b-Zとを有している。1群案内カム溝11bにおいて撮影時に用いるズーム領域(撮影制御領域)は、山形領域11b-Zに含まれている。
図24及び図30に示すように、1群用ローラ31は前方開放領域11b-Xを通して1群案内カム溝11b内に組み入れられ、取り外しの際も前方開放領域11b-Xを通して前方へ抜き取られる。1群用ローラ31は、テレ端では、山形領域11b-Zのうち前方開放領域11b-Xの近傍(図23及び図29)に位置し、ワイド端では、山形領域11b-Zのうち傾斜リード領域11b-Lの近傍(図22及び図28)に位置する。
図20及び図25の鏡筒収納状態(撮影待機状態)では、1群用ローラ31は後方開放領域11b-Y内に移動する。後方開放領域11b-Yは、傾斜リード領域11b-Lや山形領域11b-Zに比べて周方向に幅広であり、後方開放領域11b-Y内では1群用ローラ31の周方向への移動が許容される。また、後方開放領域11b-Yはカム環11の後端面側に開放されているが、1群用ローラ31及び1群案内カム溝11bとは別に、カム環11に対する第1外筒12の後方への移動を制限する移動規制部が設けられており、1群用ローラ31は後方開放領域11b-Yから後方へ脱落しないようになっている。
すなわち、カム環11には、図13に示すように、光軸方向前方に突出する前方突出部11fと、1群案内カム溝11bが形成されている外周面から外径方向に突出する外径突出部(径方向突出部)11gが、それぞれ周方向に位置を異ならせて3つ設けられている。外径突出部11gは、その外周面に、前述の周方向溝11cとカム環ローラ32が設けられた凸部である。前方突出部11fと外径突出部11gはそれぞれ、撮影光学系の光軸Z1に対して直交する平面内に形成された前方ストッパ面(移動規制部)11s-1と後方ストッパ面(移動規制部)11s-2を有している。一方、図18に示すように、第1外筒12の内周面には、内径方向へ突出する凸部として3箇所の前方ストッパ面(移動規制部)12s-1が形成され、各前方ストッパ面12s-1は、カム環11側の前方ストッパ面11s-1に対向している。また、第1外筒12の後端側には、カム環11側の後方ストッパ面11s-2に対向する3箇所の後方ストッパ面(移動規制部)12s-2が形成されている。第1外筒12の前後のストッパ面12s-1、12s-2はそれぞれ、カム環側の前後のストッパ面11s-1、11s-2と平行な面である。また、カム環11における前方ストッパ面11s-1と後方ストッパ面11s-2の光軸方向の間隔は、第1外筒12の前方ストッパ面12s-1と後方ストッパ面12s-2の光軸方向間隔と等しい。
鏡筒収納状態では、図20及び図25に示すように、前方ストッパ面12s-1が前方ストッパ面11s-1の直近まで接近し、同時に後方ストッパ面12s-2が後方ストッパ面11s-2の直近まで接近し、各ストッパ面によって、第1外筒12は図示位置よりも後方への移動が規制されている。後方とはすなわち1群案内カム溝11bにおける後方開放領域11b-Yの開放方向(図13、図20及び図25に矢印Jで示す)と同じであるから、後方開放領域11b-Y内に位置する1群用ローラ31は、該後方開放領域11b-Yの開放方向へそれ以上進むことがなく、後方開放領域11b-Yからの離脱が防止される。換言すれば、各ストッパ面12s-1、11s-1、11s-2及び12s-2は、ズームレンズ鏡筒71の収納状態でのカム環11に対する第1外筒12の後方(後方開放領域11b-Yの開放方向)移動端を決める移動規制部として機能する。
なお、本実施形態では、後方開放領域11b-Yが幅広に形成されているため、鏡筒収納動作時には、1群用ローラ31が後方開放領域11b-Yに入った時点で第1外筒12に対する光軸方向への移動力が作用しなくなり、各ストッパ面が当接する直前に第1外筒12の後退移動が停止するようになっている。このときの前方ストッパ面11s-1、12s-1の間隔と、後方ストッパ面11s-2、12s-2の間隔はそれぞれ0.1mmに設定されている。但し、仮に、第1外筒12が惰性によって前方ストッパ面11s-1、12s-1、後方ストッパ面11s-2、12s-2を接触させる位置まで後退しても構わない。
また、第1外筒12の内周面には、1群調整環ガイド溝12b(図2参照)を有する内径フランジ(径方向突出部)12cが形成されており、前方ストッパ面12s-1は内径フランジ12cよりも前方に位置している。内径フランジ12cには、カム環11の前方突出部11fが通過可能なフランジ開口部12dが形成されており、前方ストッパ11面11s-1が前方ストッパ面12s-1に接近するときには、前方突出部11fが該フランジ開口部12d内に進入する。
本実施形態ではカム環11と第1外筒12のそれぞれに、前後方向に位置を異ならせて2箇所のストッパ面(11s-1、11s-2、12s-1及び12s-2)を設けているが、少なくとも一箇所のストッパ部があれば第1外筒12の移動規制を行うことが可能であるから、例えば、実施形態の前後いずれか一方のストッパ面のみを使用する態様も可能である。逆に、実施形態よりも多くのストッパ部を用いてもよい。例えば、本実施形態では使用していないが、カム環11において前方突出部11fの間に位置する3箇所の前方端面11hと、第1外筒12の内径フランジ12cのフランジ後方面12eとを当接させて第1外筒12の移動規制を行うことも可能である。
1群案内カム溝11bでは、組立分解用の前方開放領域11b-Xを除いた領域、すなわち図20及び図25における1群用ローラ31の収納位置(後方開放領域11b-Y)から図23及び図29における1群用ローラ31のテレ端位置までが、ズーム動作時及び収納時に用いられる使用領域である。この使用領域の一端部である後方開放領域11b-Yをカム環11後方への開放部とすることで、該後方開放領域11b-Yの後方にカム溝を閉じるための肉厚(壁面)が不要となり、その分、カム環11を光軸方向に小型化することが可能になっている。すなわち、従来の概念のカム溝では、使用領域の終端部(カムフォロア組込用の開放端部がある場合、その反対側の端部)は閉じられているべきものであり、そのためにカム溝の終端部より先に所定の肉厚が必要であったが、この肉厚分を不要とした本実施形態の構造によれば、それだけカム環の小型化を図ることができる。
カム溝中の使用領域でありながら後方開放領域11b-Yのような開放部を形成することが可能となっているのは、1群案内カム溝11bと1群用ローラ31とは別に設けたストッパ面(11s-1、11s-2、12s-1及び12s-2)によって、カム環11に対する第1外筒12の後方移動の限界位置が別途定められているためである。1群案内カム溝11b及び1群用ローラ31とは別に機能するこのような移動規制部を設けておくことで、1群用ローラ31が後方開放領域11b-Yから脱落して再度係合できなくなるおそれがなくなる。
また、後方開放領域11b-Y内に1群用ローラ31が位置するときは鏡筒収納状態、すなわち撮影を行わない状態であり、撮影状態とは違って光学要素の厳密な位置精度が要求されない。そのため、後方開放領域11b-Yを幅広の開放端部として形成して1群用ローラ31との係合関係をルーズにしても、実用上の問題はない。逆に言えば、1群案内カム溝11bの使用領域のうち1群用ローラ31との遊嵌が許される収納領域を1群案内カム溝11bの終端部に設定し、かつ、このカム溝終端部が光軸方向の最後方に位置するように1群案内カム溝11b全体の軌跡を設定したことによって、収納領域を後方開放領域11b-Yのような開放端部とすることが可能になった。
収納状態からズーム領域(撮影可能位置)に第1外筒12を繰り出す際に、後方開放領域11b-Yに遊嵌している1群用ローラ31を確実に傾斜リード領域11b-L内に移動させるために、カム環11と第1外筒12にはそれぞれ周方向に位置を異ならせて3箇所のリード斜面(カムフォロア進入補助部)11t、12tが形成されている。カム環11のリード斜面11tは、前述の前方ストッパ面11s-1に連続する傾斜面として前方突出部11fに形成されている。第1外筒12には、係合突起12aを外周面に有する三角状の後方突出部12fが周方向に位置を異ならせて3箇所設けられており、リード斜面12tは該三角状の後方突出部12fの一辺部として形成されている。図25ないし図30に示すように、各リード斜面11t、12tは、1群案内カム溝11bの傾斜リード領域11b-Lと平行な面である。
図20及び図25の収納状態では、カム環11のリード斜面11tに対し、第1外筒12の内径フランジ12cにおけるエッジ部(カムフォロア進入補助部、摺動当接部)ED1が対向している。また、第1外筒12のリード斜面12tに対し、カム環11の外径突出部11gのエッジ部(カムフォロア進入補助部、摺動当接部)ED2が対向している。図20及び図25の状態では、これらエッジ部ED1、ED2は、リード斜面11t、12tから若干離間している。そして、カム環11が繰出方向(図21及び図26の上方向)に回転すると、その回動初期段階(図25から図26の間)は1群用ローラ31が後方開放領域11b-Y内を周方向にのみ移動し、図21及び図26に示すように、リード斜面11tがエッジ部ED1に接近し、リード斜面12tがエッジ部ED2に接近する。この状態では、第1外筒12に対して光軸方向への移動力は作用しない。
各リード斜面11t、12tがそれぞれエッジ部ED1、ED2にごく近接した図21及び図26の状態では、1群用ローラ31が傾斜リード領域11b-Lの入口部に達している。ここでカム環11の繰出方向の回転が継続されると、1群用ローラ31が傾斜リード領域11b-Lの一側面に当て付き、該傾斜リード領域11b-Lに進入していく。このとき、各エッジ部ED1、ED2と各リード斜面11t、12tは、1群用ローラ31を傾斜リード領域11b-L内に進入させるための補助部として機能する。すなわち、エッジ部ED1がリード斜面11tに当接し、エッジ部ED2がリード斜面12tに当接した状態でカム環11が繰出方向に回転すると、各エッジ部ED1、ED2がリード斜面11t、12t上を摺動し、第1外筒12は、カム環11に対してリード斜面11t、12tに沿う軌跡で前方に押圧移動される。リード斜面11t、12tはカム溝11bの傾斜リード領域11b-Lと平行であるため、第1外筒12に与えられる当該移動力は、1群用ローラ31を後方開放領域11b-Yから傾斜リード領域11b-Lに進入させるように作用する。なお、設計上は、各エッジ部ED1、ED2がリード斜面11t、12t上に当接する前に1群用ローラ31を傾斜リード領域11b-Lの一側面に当接させ、傾斜リード領域11b-L自体の形状によって1群用ローラ31を該傾斜リード領域11b-L内に引き込むようにしてもよい。この場合でも、エッジ部ED1、ED2及びリード斜面11t、12tのような補助部を設けることが好ましい。例えば、部材間のバックラッシュなどが原因で収納状態における1群用ローラ31と傾斜リード領域11b-Lの位置関係がわずかにずれることがあっても、次の鏡筒繰り出し時に各エッジ部ED1、ED2と各リード斜面11t、12tを係合させて確実に1群用ローラ31を傾斜リード領域11b-L内に導くことができる。いずれの場合も、1群用ローラ31が傾斜リード領域11b-L内に完全に進入した後は、図27に示すように、リード斜面11t、12tとエッジ部ED1、ED2の係合関係によらずに、各リード斜面11t、12tは対応するエッジ部ED1、ED2から離れて、1群用ローラ31と1群案内カム溝11bの関係のみによって第1外筒12を光軸方向に移動させることができる。
以上のように、収納状態からの鏡筒繰出動作において1群案内カム溝11bの傾斜リード領域11b-L及び1群用ローラ31と実質的に同様に機能する、リード斜面11t、12tとエッジ部ED1、ED2を設けたことによって、1群用ローラ31が後方開放領域11b-Y内に遊嵌している状態からであっても、該1群用ローラ31を傾斜リード領域11b-L内(山形領域11b-Z側)へ確実に進入させることができ、動作不良のおそれがない。
なお、本実施形態ではカム環11と第1外筒12の両方にリード斜面11t、12tを設けているが、リード斜面を設けるのはカム環11と第1外筒12のいずれか一方だけとしてもよい。あるいは、実施形態よりも多くのリード斜面を設けることも可能である。
本発明の異なる実施形態を図31に示す。図31は先の実施形態の図25に対応する鏡筒収納状態であり、図25と同様に機能する部材や部位に関しては説明を省略する。
図31におけるカム環11′の1群案内カム溝11b′は、図25の後方開放領域11b-Yに相当する領域を有しておらず、傾斜リード領域11b-L′の終端部が、カム環11′の後端面に開放されたリード領域開放端部11b-Kとなっている。1群用ローラ31′は、ワイド端からの鏡筒収納動作が行われると傾斜リード領域11b-L′内を後方(図31の右手方向)に移動し、収納状態になった時点でリード領域開放端部11b-Kを通って1群案内カム溝11b′から外れてしまう。1群用ローラ31′が1群案内カム溝11b′から外れると、第1外筒12′に対しては光軸方向への移動力が作用しなくなるので、該第1外筒12′は停止する。このとき、第1外筒12′に形成した前方ストッパ面12s-1′と後方ストッパ面12s-2′がそれぞれ、カム環11′の前方突出部11f′に形成した前方ストッパ面11s-1′と外径突出部11g′に形成した後方ストッパ面11s-2′の直近位置に達するため、第1外筒12′はそれ以上の後方への移動が規制される。先の実施形態と同様に、後方とはすなわち1群案内カム溝11b′におけるリード領域開放端部11b-Kの開放方向(図31に矢印J′で示す)と同じであるから、1群用ローラ31′が1群案内カム溝11b′から離脱しても、第1外筒12′がリード領域開放端部11b-Kから離間する方向へ無制限に移動してしまうおそれがなくなる。換言すれば、各ストッパ面12s-1′、11s-1′、11s-2′及び12s-2′は、鏡筒収納状態でのカム環11′に対する第1外筒12′の後方移動端(リード領域開放端部11b-Kの開放方向への移動端)を決める移動規制部として機能する。なお、先の実施形態と同様に、鏡筒収納状態では、カム環11′と第1外筒12′の前後の各ストッパ面が0.1mm程度のクリアランスをもって対向していることが望ましいが、第1外筒12′が惰性によって前方ストッパ面11s-1′、12s-1′、後方ストッパ面11s-2′、12s-2′を接触させる位置まで後退しても構わない。
本実施形態のように鏡筒収納状態(撮影待機状態)で1群用ローラ31′が1群案内カム溝11b′から離脱する構造にすると、当該状態における1群用ローラ31′の収納領域を1群案内カム溝11b′から省略できるので、カム環11′をさらに小型化することが可能になる。
この実施形態では、1群用ローラ31′が1群案内カム溝11b′が離脱する構造であるため、次の鏡筒繰り出し時に1群用ローラ31′を1群案内カム溝11b′に再嵌合させるための進入補助部を設けることが特に効果的である。図31の収納状態では、カム環11′の前方突出部11f′に形成したリード斜面11t′に対して、第1外筒12′の内径フランジ12c′のエッジ部ED1′が当接し、第1外筒12′の後方突出部12f′に形成したリード斜面12t′に対して、カム環11′の外径突出部11g′のエッジ部D2′が当接している。各リード斜面11t′、12t′は傾斜リード領域11b-L′と平行な傾斜面である。したがって収納状態から繰出方向へカム環11′を回転させると、第1外筒12′が光軸方向前方に押圧され、1群案内カム溝11b′からの離脱状態にあった1群用ローラ31′が、リード領域開放端部11b-Kを通って傾斜リード領域11b-L′内に進入する。それ以降は、カム環11′の繰出方向への回転に応じて1群用ローラ31′が1群案内カム溝11b′内を移動し、先の実施形態と同様に山形領域11b-Z′を用いてズーミングを行い、さらには1群用ローラ31′を前方開放領域11b-X′まで移動させて分解することができる。
このように、鏡筒収納時に1群用ローラ31′が1群案内カム溝11b′から外れるようにしても、本実施形態の構造によれば、収納方向への第1外筒12の移動限界位置を確実に定め、かつ繰出時に1群用ローラ31′を1群案内カム溝11b′に確実に進入させることができる。
以上の実施形態の説明から分かるように、本発明の進退カム機構では、カム溝(1群案内カム溝11b、11b′)による厳密なガイドが必要とされないレンズ鏡筒の収納状態などにおいて、カム環(11)の回転に応じて、カムフォロア(1群用ローラ31、31′)をカム溝の開放端部(後方開放領域11b-Y)内に位置させる、あるいはカム溝の開放端部(リード領域開放端部11b-K)から離脱させるようにしている。そして、この状態からカム環(11)の逆方向の回転に応じてカム溝内方の制御領域(11b-Z)へ向けてカムフォロアを確実に戻す進入補助部(11t(′)、12t(′)、ED1(′)、ED2(′))を、カム環と直進移動部材(第1外筒12、12′)に設けている。これにより、カム溝による可動部材の駆動精度を損なうことなく、該可動部材を所定量移動させるためのカム環の大きさを従来に比して小さくすることが可能になった。
但し、本発明は実施形態に限定されるものではない。例えば、実施形態では、カム環11は収納位置からズーム域までの間に回転しながら光軸方向に移動する回転進退環であるが、本発明は、カム環が回転軸方向には進退せずに常に定位置回転するタイプの進退カム機構に適用することもできる。
また実施形態の1群案内カム溝11b(11b′)は、その両端部がカム環11(11′)の前後端に開放され、前方の前方開放領域11b-X(11b-X′)を1群用ローラ31(31′)の挿脱用開口とし、後方の後方開放領域11b-Y(11b-Y′)を使用領域の一部としているが、レンズ鏡筒の組立作業性などを考慮しない場合には、後方開放領域11b-Yまたはリード領域開放端部11b-K側から1群用ローラ31(31′)を挿脱するようにして前方開放領域11b-X(11b-X′)を省略することも可能である。
また実施形態では、カム環11(11′)の外周面に1群案内カム溝11b(11b′)が形成され、該1群案内カム溝11b(11b′)に対して鏡筒外径側から1群用ローラ31(31′)が係合しているが、本発明は、カム環の内周面にカム溝が形成され、該カム溝に対して鏡筒内径側からカムフォロアが係合するタイプの進退カム機構にも適用可能である。