JP4518736B2 - 画像表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、クーロン力等を利用した粒子の飛翔移動に伴い、画像を繰り返し表示したり、消去したりすることができる画像表示板を具備した画像表示装置であって、特に、中間調の表示を行うようにした画像表示装置に関するものである。
【従来の技術】
【0002】
従来より、液晶(LCD)に代わる画像表示装置として、電気泳動方式、エレクトロクロミック方式、サーマル方式、2色粒子回転方式等の技術を用いた画像表示装置が提案されている。
【0003】
これら従来技術は、LCDと比較すると、通常の印刷物に近い広い視野角が得られる、消費電力が小さい、メモリ機能を有している等のメリットがあることから、次世代の安価な画像表示装置に使用可能な技術として考えられており、携帯端末用画像表示、電子ペーパー等への展開が期待されている。特に最近では、分散粒子と着色溶液から成る分散液をマイクロカプセル化し、これを対向する基板間に配置して成る電気泳動方式(例えば、非特許文献1参照)が提案され、期待が寄せられている。
【0004】
しかしながら、電気泳動方式では、液中を粒子が泳動するために液の粘性抵抗により応答速度が遅くなるという問題がある。さらに、低比重の溶液中に酸化チタン等の高比重の粒子を分散させているため沈降しやすくなっており、分散状態の安定性維持が難しく、画像繰り返し安定性に欠けるという問題を抱えている。また、マイクロカプセル化にしても、セルサイズをマイクロカプセルレベルにして、見かけ上、上述した欠点が現れにくくしているだけであって、本質的な問題は何ら解決されていない。
【0005】
一方、溶液中での挙動を利用する電気泳動方式に対し、溶液を使わず、導電性粒子と電荷輸送層とを基板の一部に組み入れる方式も提案され始めている。しかし、電荷輸送層、さらには電荷発生層を配置するために構造が複雑化するとともに、導電性粒子に電荷を一定に注入することは難しいため、安定性に欠けるという問題もある。
【0006】
【非特許文献1】
趙 国来、外3名、“新しいトナーディスプレイデバイス(I)”、1999年7月21日、日本画像学会年次大会(通算83回)“Japan Hardcopy’99”、p.249-252
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述した種々の問題を解決するための一方法として、少なくとも一方が透明な2枚の基板の間に色および帯電特性の異なる2種類以上の粒子を封入し、前記基板の一方または両方に設けた電極からなる電極対から前記粒子に電界を与えて、クーロン力により前記粒子を飛翔移動させて画像を表示する画像表示板を具備する画像表示装置が知られている。
【0008】
この画像表示装置は、ミクロ的視点で捉えると2値表示を行っていると見なせるが、意図的に粒子の特性にばらつきを生じさせて飛翔しやすい一部の粒子のみが移動した中間状態を取らせることによって、画素単位での中間調表示を実現するようにしている。
しかし、この方法による中間調表示は、画像表示板内でのセルギャップやITO透明電極の抵抗値等のばらつき、粒子成分による電極表面の汚染の程度、粒子に含有される内添剤/外添剤等の付着量や付着状態の経時変化等に応じて、粒子が付着力を振り切って電極表面から離脱する際のしきい値電圧が変化するため、再現性良く中間調を表示することができない、という問題を有している。そのため、特に、急峻なしきい値を必要とするマトリクス駆動を行う構成においては、表示可能な階調数が制限されてしまうことになる。
【0009】
本発明は、上述した問題に着目してなされたものであり、乾式で応答性能が速く、単純な構造で安価かつ安定性に優れるとともに、再現性良く中間調を表示可能な画像表示装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の画像表示装置は、少なくとも一方が透明な2枚の基板の間に色および帯電特性の異なる2種類以上の粒子を封入し、前記基板の一方または双方に設けた電極からなる電極対から前記粒子に電界を与えて、クーロン力等により前記粒子を飛翔移動させて画像を表示する画像表示板を具備した画像表示装置であって、表示しようとする画像を構成する各画素の階調レベルに応じて、当該画素内の粒子の飛翔移動の際に発生する飛翔移動電流の積分値が予め設定した目標値になるように、前記電極間に印加する電圧の電圧値、波形、印加時間、印加回数の少なくとも1つを調整するようにしたことを特徴とする。
【0011】
上記構成の本発明の画像表示装置では、粒子に直接的に静電界を与えてクーロン力により粒子を飛翔移動させることができる画像表示素子をマトリックス状に配置して新規な画像表示装置を構成することにより、乾式で応答速度が速く、単純な構造で安価かつ安定性に優れる画像表示装置を提供することができる。さらに、中間調を表示する方法として、表示しようとする画像を構成する各画素の階調レベルに応じて、当該画素内の粒子の飛翔移動の際に発生する飛翔移動電流の積分値が予め設定した目標値(例えば目標とする階調レベルに対応する表示濃度値)になるように、前記電極対を構成する電極間に印加する電圧の電圧値、波形、印加時間、印加回数の少なくとも1つを調整する方法を用いるから、再現性良く中間調を表示することが可能になる。
【0012】
本発明の画像表示装置において、前記飛翔移動電流を検出する飛翔移動電流検出部と、前記飛翔移動電流を積分する積分器と、前記飛翔移動電流の積分値と前記階調レベルに対応する階調指示電圧とを比較する比較器とを具備するようにするのが、前記電極対を構成する電極間に印加する電圧の電圧値、波形、印加時間、印加回数の少なくとも1つを調整する調整回路を単純な構造かつ安価に構成する上で好ましい。
【0013】
また、本発明の画像表示装置において、前記比較器の出力を粒子駆動制御回路の出力電圧発生部にフィードバックすることにより、前記飛翔移動電流の積分値と前記階調レベルに対応する階調指示電圧との間のずれを補正するようにするのが、表示しようとする画像を構成する各画素を、再現性良く所望の階調レベルで表示する上で好ましい。
また、本発明の画像表示装置において、前記粒子が飛翔移動するしきい値電圧未満の電圧を印加した場合に発生する第1の電流波形および前記しきい値電圧以上の電圧を印加した場合に発生する第2の電流波形を観測し、前記第1の電流波形に基づいて前記第2の電流波形を補正するのが、飛翔移動電流の演算に用いる電流波形を最適化する上で好ましい。
【0014】
本発明の画像表示装置における粒子としては、平均粒子径が0.1〜50μmであることが好ましい。また、前記粒子のキャリアを用いてブローオフ法により測定した表面電荷密度が絶対値で5μC/m2 以上150μC/m2 以下であることが好ましい。また、前記粒子が、その表面と1mmの間隔をもって配置されたコロナ放電器に、8KVの電圧を印加してコロナ放電を発生させて表面を帯電させた場合に、0.3秒後における表面電位の最大値が300Vより大きい粒子であることが好ましい。また、前記粒子の色が白色および黒色であることが好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は本発明の画像表示装置を構成する画像表示板の画像表示素子の一例およびその表示駆動原理を説明するための図であり、図1(a)〜(c)に示す例において、1は透明基板、2は対向基板、3は表示電極(透明電極)、4は対向電極、5は負帯電粒子、6は正帯電粒子、7は隔壁である。
【0016】
図1(a)は対向する基板(透明基板1および対向基板2)の間に負帯電粒子5および正帯電粒子6を配置した状態を示す。この状態のものに、表示電極3側が低電位、対向電極4側が高電位となるように電圧を印加すると、図1(b)に示すように、クーロン力によって、正帯電粒子6は表示電極3側に飛翔移動し、負帯電粒子5は対向電極4側に飛翔移動する。この場合、透明基板1側から見たときの表示面は、正帯電粒子6の色に見える。次に、電位を切り換えて、表示電極3側が高電位、対向電極4側が低電位となるように電圧を印加すると、図1(c)に示すように、クーロン力によって、負帯電粒子5は表示電極3側に飛翔移動し、正帯電粒子6は対向電極4側に飛翔移動する。この場合、透明基板1側から見たときの表示面は、負帯電粒子5の色に見える。
【0017】
図1(b)および図1(c)の間は電源の電位を反転させるだけで繰り返し表示することができ、このように電源の電位を反転させることで可逆的に色を変化させることができる。粒子の色は、随意に選定できる。例えば、負帯電粒子5を白色とし、正帯電粒子6を黒色とするか、負帯電粒子5を黒色とし、正帯電粒子6を白色とすると、表示は白色および黒色間の可逆表示となる。この方式では、一旦表示を行うと、各粒子は鏡像力により電極に付着した状態になるので、電圧印加を中止した後も表示画像は長期に保持されることになり、メモリ保持性が良い。
【0018】
本発明では、各帯電粒子は気体中を飛翔するため、画像表示の応答速度が速く、応答速度を1msec以下にすることができる。また、液晶表示素子のように配向膜や偏光板等が不要で、構造が単純で、低コストかつ大面積とすることが可能である。温度変化に対しても安定しており、低温から高温まで使用可能である。さらに、視野角がなく、高反射率、反射型で明るいところでも見易く、低消費電力である。メモリ性もあるので、画像保持する場合に電力を消費しない。
【0019】
本発明の画像表示装置は、上記画像表示素子がマトリックス状に配置された画像表示板から構成される。図2(a)、(b)にその模式図の一例を示す。この例では説明の都合上3×3のマトリックスを示す。各電極の数をn個とすることで、任意のn×nのマトリックスを構成することができる。
【0020】
図2(a)、(b)に示す例において、ほぼ平行に配置した表示電極(走査電極)3−1〜3−3と同じくほぼ平行に配置した対向電極(データ電極)4−1〜4−3とは、互いにほぼ直交した状態で、透明基板1上および対向基板2上に設けられている。表示電極3−1〜3−3のそれぞれには、ロウドライバ回路8が接続されている。同様に、対向電極4−1〜4−3のそれぞれには、カラムドライバ回路9を介してフレームバッファ10が接続されている。各カラムドライバ回路9は、図2(b)に示すように、電圧発生回路11、電流/電圧変換回路12、反転電流検出器13、積分器14、比較器15を具備して成る。このカラムドライバ回路9は、電極間に印加する階調電圧の電圧値を調整する、単純な構造かつ安価な調整回路となる。
【0021】
表示電極側に接続されロウドライバ回路8は、表示電極3−1〜3−3を順次走査するための走査信号を発生する機能を有している。また、対向電極側に接続されたフレームバッファ10は、選択された対向電極上の階調指示電圧をカラムドライバ回路9に出力する機能を有しており、カラムドライバ回路9は、入力された階調指示電圧に対応する階調電圧を当該対向電極に出力する機能および後に詳述する飛翔移動電流補正機能を有している。これらロウドライバ回路8、カラムドライバ回路9、フレームバッファ10の全体がマトリックスドライブ回路を構成する。なお、本例では、隔壁7によりお互いを隔離して3×3個の画像表示素子を構成しているが、この隔壁7は必須ではなく、省くこともできる。
【0022】
上述した表示電極3−1〜3−3と対向電極4−1〜4−3とからなるマトリックス電極に対する駆動制御では、表示しようとする画像に応じて、図示しないシーケンサの制御によりロウドライバ回路8、カラムドライバ回路9およびフレームバッファ10の動作を制御して、3×3個の画像表示素子を順に表示させる動作が実行される。この動作は、基本的には、従来から知られているものとほぼ同一の画像表示動作であるが、本発明では、この動作に加えて、後に詳細に説明する、中間調表示(階調表示)のための動作を行う。
【0023】
マトリックス電極を構成する各電極は、透明基板上に設ける表示電極の場合には、透明かつパターン形成可能である導電材料で形成される。このような導電材料としては、アルミニウム、銀、ニッケル、銅、金等の金属やITO、導電性酸化スズ、導電性酸化亜鉛等の透明導電金属酸化物をスパッタリング法、真空蒸着法、CVD法、塗布法等で薄膜状に形成したもの、あるいは、導電剤を溶媒あるいは合成樹脂バインダーに混合して塗布したものが用いられる。
【0024】
導電剤としては、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムパークロレート等のカチオン性高分子電解質、ポリスチレンスルホン酸塩、ポリアクリル酸塩等のアニオン性高分子電解質や導電性の酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム微粉末等が用いられる。なお、電極の厚みは、導電性が確保でき光透過性に支障がなければどのような厚さでも良いが、3〜1000nm、好ましくは5〜400nmが好適である。対向基板上には、上記表示電極と同様に透明電極材料を使用することもできるが、アルミニウム、銀、ニッケル、銅、金等の非透明電極材料も使用できる。
【0025】
各電極には、帯電した粒子の電荷が逃げないように絶縁性のコート層を形成することが好ましい。コート層は、負帯電粒子に対しては正帯電性の樹脂を、正帯電粒子に対しては負帯電性の樹脂を用いると、粒子の電荷が逃げ難いので特に好ましい。
【0026】
以下、本発明の画像表示装置で用いる基板について述べる。基板の少なくとも一方は装置外側から粒子の色が確認できる透明基板であり、可視光の透過率が高くかつ耐熱性の良い材料が好適である。可撓性の有無は用途により適宜選択され、例えば、電子ペーパー等の用途には可撓性のある材料が好適であり、携帯電話、PDA、ノートパソコン類の携帯機器の表示装置等の用途には可撓性のない材料が好適である。
【0027】
基板の材料を例示すると、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、アクリル等のポリマーシートや、ガラス、石英等の無機シートが挙げられる。対向基板は透明でも不透明でもかまわない。基板の厚みは、2〜5000μmが好ましく、特に5〜1000μmが好適である。厚みが薄すぎると、強度、基板間の間隔均一性を保ちにくくなり、厚みが厚すぎると、表示機能としての鮮明さ、コントラストの低下が発生し、特に、電子ペーパー用途の場合にはフレキシビリティー性に欠ける。
【0028】
また、図2(a)に示すように、隔壁7を各表示素子の四周に設けるのが好ましい。隔壁を平行する2方向に設けることもできる。これにより、基板平行方向の余分な粒子移動を阻止し、耐久繰り返し性、メモリ保持性を介助するとともに、基板間の間隔を均一にかつ補強し、画像表示板の強度を上げることもできる。隔壁の形成方法としては、特に限定されないが、例えば、スクリーン版を用いて所定の位置にペーストを重ね塗りするスクリーン印刷法や、基板上に所望の厚さの隔壁材をベタ塗りし、隔壁として残したい部分のみレジストパターンを隔壁材上に被覆した後、ブラスト材を噴射して隔壁部以外の隔壁材を切削除去するサンドブラスト法や、基板上に感光性樹脂を用いてレジストパターンを形成し、レジスト凹部へペーストを埋め込んだ後レジストを除去するリフトオフ法(アディティブ法)や、基板上に隔壁材料を含有した感光性樹脂組成物を塗布し、露光・現像により所望のパターンを得る感光性ペースト法や、基板上に隔壁材料を含有するペーストを塗布した後、凹凸を有する金型等を圧着・加圧成形して隔壁形成する鋳型成形法等、種々の方法が採用される。さらに、鋳型成形法を応用し、鋳型として感光性樹脂組成物により設けたレリーフパターンを使用する、レリーフ型押し法も採用される。
【0029】
以下、本発明の画像表示装置で用いる粒子について述べる。本発明では、表示のための粒子は負帯電性または正帯電性の着色粒子で、クーロン力により飛翔移動するものであればいずれでも良いが、特に、球形で比重の小さい粒子が好適である。粒子の平均粒子径は0.1〜50μmが好ましく、特に1〜30μmが好ましい。粒径がこの範囲より小さいと、粒子の電荷密度が大きすぎて電極や基板への鏡像力が強すぎ、メモリ性はよいが、電界を反転した場合の追随性が悪くなる。反対に粒径がこの範囲より大きいと、追随性は良いが、メモリ性が悪くなる。
【0030】
粒子を負または正に帯電させる方法は、特に限定されないが、コロナ放電法、電極注入法、摩擦法等の粒子を帯電する方法が用いられる。粒子のキャリアを用いてブローオフ法により測定した表面電荷密度が絶対値で5μC/m2 以上150μC/m2 以下であることが好ましい。表面電荷密度の絶対値がこの範囲より低いと、電界の変化に対する応答速度が遅くなり、メモリ性も低くなる。表面電荷密度の絶対値がこの範囲より高いと、電極や基板への鏡像力が強すぎ、メモリ性はよいが、電界を反転した場合の追随性が悪くなる。
本発明において用いた、表面電荷密度を求めるのに必要な、帯電量の測定および粒子比重の測定は、以下によって行った。
<ブローオフ測定原理および測定方法>
ブローオフ法においては、両端に網を張った円筒容器中に粉体とキャリアの混合体を入れ、一端から高圧ガスを吹き込んで粉体とキャリアとを分離し、網の目開きから粉体のみをブローオフ(吹き飛ばし)する。このとき、粉体が容器外に持ち去った帯電量と等量で逆の帯電量がキャリアに残る。そして、この電荷による電束の全てはファラデーケージで集められ、この分だけコンデンサは充電される。そこでコンデンサ両端の電位を測定することにより、粉体の電荷量Qは、
Q=CV(C;コンデンサ容量、V;コンデンサ両端の電圧)
として求められる。
ブローオフ粉体帯電量測定装置としては東芝ケミカル社製の TB-200を用いた。本発明ではキャリアとして正帯電性・負帯電性の2種類のものを用い、それぞれの場合の単位表面積あたり電荷密度(単位;μC/m2 )を測定した。すなわち、正帯電性キャリア(相手を正に帯電させ自らは負になりやすいキャリア)としてはパウダーテック社製の F963-2535を、負帯電性キャリア(相手を負に帯電させ自らは正に帯電しやすいキャリア)としてはパウダーテック社製の F921-2535を用いた。
<粒子比重測定方法>
粒子比重は、株式会社島津製作所製比重計、マルチボリウム密度計 H1305にて測定した。
【0031】
粒子は、その帯電電荷を保持する必要があるので、体積固有抵抗が1×1010Ω・cm以上の絶縁粒子が好ましく、特に体積固有抵抗が1×1012Ω・cm以上の絶縁粒子が好ましい。また、以下に述べる方法で評価した電荷減衰性の低い粒子がさらに好ましい。
【0032】
すなわち、粒子を、別途、プレス、加熱溶融、キャスト等により、厚み5〜100μmのフィルム状にする。そして、そのフィルム表面と1mmの間隔をもって配置されたコロナ放電器に、8KVの電圧を印加してコロナ放電を発生させて表面を帯電させ、その表面電位の変化を測定し判定する。この場合、0.3秒後における表面電位の最大値が300Vより大きく、好ましくは400Vより大きくなるように、粒子構成材料を選択、作成することが肝要である。
【0033】
なお、上記表面電位の測定は、例えば図3に示した装置(QEA社製CRT2000)により行うことができる。この装置の場合は、前述したフィルムを表面に配置したロールのシャフト両端部をチャック21にて保持し、小型のスコロトロン放電器22と表面電位計23とを所定間隔離して併設した計測ユニットを上記フィルムの表面と1mmの間隔を持って対向配置し、上記フィルムを静止した状態のまま、上記計測ユニットをフィルムの一端から他端まで一定速度で移動させることにより、表面電荷を与えつつその表面電位を測定する方法が好適に採用される。なお、測定環境は温度25±3℃、湿度55±5RH%とする。
【0034】
粒子は、帯電性能等が満たされれば、いずれの材料から構成されても良い。例えば、樹脂、荷電制御剤、着色剤、無機添加剤等から、あるいは、着色剤単独等で形成することができる。
【0035】
樹脂の例としては、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、アクリルフッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられ、2種以上混合することもできる。特に、基板との付着力を制御する観点から、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、アクリルフッ素樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂が好適である。
【0036】
荷電制御剤としては、特に制限はないが、負荷電制御剤としては例えば、サリチル酸金属錯体、含金属アゾ染料、含金属(金属イオンや金属原子を含む)の油溶性染料、4級アンモニウム塩系化合物、カリックスアレン化合物、含ホウ素化合物(ベンジル酸ホウ素錯体)、ニトロイミダゾール誘導体等が挙げられる。正荷電制御剤としては例えば、ニグロシン染料、トリフェニルメタン系化合物、4級アンモニウム塩系化合物、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体等が挙げられる。その他、超微粒子シリカ、超微粒子酸化チタン、超微粒子アルミナ等の金属酸化物、ピリジン等の含窒素環状化合物及びその誘導体や塩、各種有機顔料、フッ素、塩素、窒素等を含んだ樹脂等も荷電制御剤として用いることもできる。
【0037】
着色剤としては、以下に例示するような、有機または無機の各種、各色の顔料、染料が使用可能である。
【0038】
黒色顔料としては、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭等がある。黄色顔料としては、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ等がある。橙色顔料としては、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGK等がある。赤色顔料としては、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B等がある。
【0039】
紫色顔料としては、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等がある。青色顔料としては、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファストスカイブルー、インダスレンブルーBC等がある。緑色顔料としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等がある。白色顔料としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等がある。
【0040】
体質顔料としては、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等がある。また、塩基性、酸性、分散、直接染料等の各種染料として、ニグロシン、メチレンブルー、ローズベンガル、キノリンイエロー、ウルトラマリンブルー等がある。これらの着色剤は、単独或いは複数組み合わせて用いることができる。特に黒色着色剤としてカーボンブラックが、白色着色剤として酸化チタンが好ましい。
【0041】
粒子の製造方法については特に限定されないが、例えば、電子写真のトナーを製造する場合に準じた粉砕法および重合法が使用出来る。また、無機または有機顔料の粉体の表面に樹脂や荷電制御剤等をコートする方法も用いられる。
【0042】
透明基板と対向基板の間隔は、粒子が飛翔移動でき、コントラストを維持できれば良いが、通常10〜5000μm、好ましくは30〜500μmに調整される。粒子充填量は、基板間の空間体積に対して、10〜90%、好ましくは30〜80%を占める体積になるように充填するのが良い。
【0043】
本発明の画像表示装置に用いる表示板においては、上記の表示素子を複数使用してマトリックス状に配置して表示を行う。白黒の場合は、1つの表示素子が1つの画素となる。白黒以外の任意の色表示をする場合は、粒子の色の組み合わせを適宜行えばよい。フルカラーの場合は、3種の表示素子、すなわち、各々R(赤色)、G(緑色)及びB(青色)の色の粒子を持ちかつ各々黒色の粒子を持つ表示素子を1組とし、それらを複数組配置して表示板とするのが好ましい。
【0044】
本発明の画像表示装置は、ノートパソコン、PDA、携帯電話等のモバイル機器の画像表示部、電子ブック、電子新聞等の電子ペーパー、看板、ポスター、黒板等の掲示板、電卓、家電製品、自動車用品等の画像表示部等に用いられる。
【0045】
次に、本発明の第1実施形態に係る画像表示装置において実行される中間調表示(階調表示)動作およびその動作に用いる階調指示電圧について説明する。本実施形態の画像表示装置においては、粒子が表示電極3および対向電極4間を飛翔移動する際に飛翔移動電流が流れることに着目して、実際に飛翔移動した粒子の総電荷量に対応する飛翔移動電流の積分値が求まれば、この積分値を予め測定しておいた粒子の平均電荷量と比較することによりどれだけの量の粒子が移動したかが求まり、この移動した粒子の量を当該電極面積で除算することにより単位面積当たりの粒子密度が求まるので、この粒子密度に基づく光学計算により表示濃度が求まる。なお、表示濃度は、光学計算ではなく実測して求めてもよい。
【0046】
上記に鑑み、本実施形態の画像表示装置では、実際に使用する電極面積における表示濃度と飛翔移動電流の積分値との関係を予めマップ化したデータを図2(b)に示すフレームバッファ10内に格納しておく。このマップ化したデータとしては、粒子の飛翔移動の際に発生する飛翔移動電流の積分値が目標とする階調レベルの表示濃度に対応する値となるように予め設定された階調指示電圧データを用いるものとする。
【0047】
したがって、本実施形態の画像表示装置において中間調表示を行う際には、フレームバッファ10からカラムドライバ回路9の電圧発生回路11に、表示しようとする画素の階調レベルに対応する階調指示電圧を出力し、この階調指示電圧に応じて電圧発生回路11で階調電圧を発生させ、この階調電圧を電流/電圧変換回路12で電流に変換したものを当該電極に出力することにより、飛翔移動電流の積分値が目標とする階調レベルに対応する表示濃度値となるようにしたから、所望の中間調濃度を再現性良く表示することが可能になる。
【0048】
また、その際、図2(b)に示すカラムドライバ回路9内では、電流/電圧変換回路12から出力される飛翔移動電流を反転電流検出器13で検出した後に積分器14で積分し、得られた積分値を、比較器15でフレームバッファ10から入力される階調指示電圧と比較するフィードバック制御を行うから、飛翔移動電流の積分値と前記階調レベルに対応する階調指示電圧との間のずれが補正されることになり、画素表示時の再現性がさらに向上する。
【0049】
次に、本発明の第1実施形態に係る画像表示装置において実行される、中間調表示(階調表示)における飛翔移動電流の補正方法について、図4(a),(b)を用いて説明する。
【0050】
図4(a),(b)はそれぞれ、第1実施形態の画像表示装置において中間調表示を行う際の飛翔移動電流の補正方法を説明するための図である。本実施形態では、画像表示装置の画像表示板の電極間に電圧を印加したときには、粒子の飛翔移動に伴い流れる飛翔移動電流のみならず、電極間の静電容量を充電する充電電流も流れることを考慮して、まず、電極間に電圧を印加したときに流れる電流を単純に観測し、それにより上記飛翔移動電流および上記充電電流の和である観測電流を得る。
【0051】
上記充電電流は、電極間距離や電極間に充填した気体や粒子の誘電率等を用いた演算により予め求まるので、このような演算値を用いて観測電流値から飛翔移動電流波形を求めるようにしてもよいが、このような演算値をそのまま用いると、パネル面内のセルギャップのばらつき等により充電電流波形自体にばらつきが生じている等の場合には、表示濃度のばらつきを補正することができない。
【0052】
そこで、本実施形態では、表示対象とする画素またはその画素に隣接する画素に対し、図4(a)に示すように粒子が飛翔移動するしきい値電圧未満の電圧Aを印加した場合に発生する充電電流である第1の電流波形(図4(b)の左側の電流波形)および前記しきい値電圧以上の電圧Bを印加した場合に発生する観測電流である第2の電流波形(図4(b)の右側の電流波形)を観測し、上記充電電流波形に基づいて上記観測電流波形を補正する。具体的には、上記電圧Bとして実際に表示する所望の中間調に対応する印加電圧を用いて、(飛翔移動電流)=(観測電流)−(充電電流×B/A)の演算を行うことにより、補正した飛翔移動電流を求める。この場合、粒子飛翔移動電流の積分値に基づいて補正が行われることになる。
【0053】
したがって、本発明の画像表示装置において中間調表示を行う際には、飛翔移動電流の演算に用いる電流波形が最適化されるので、表示濃度のばらつきが補正されることになる。
【0054】
なお、上述した例では、電極間に印加する電圧の電圧値を調整することにより中間調表示を実現するようにしているが、この電圧値の調整に代えて、あるいはこの電圧値の調整に加えて、電極間に印加する電圧の波形、印加時間、印加回数の何れか1つまたは2つ以上の調整を行うようにしてもよい。
また、上述した例では、電極(表示電極、対向電極)を基板(透明基板、対向基板)上に設けるようにしているが、この場合の「基板上に設ける」とは、「電極を基板上に設ける」場合と、「電極を基板とは離して設ける」場合とを含むものとする。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の画像表示装置によれば、粒子に直接的に静電界を与えてクーロン力により粒子を飛翔移動させることができる画像表示素子をマトリックス状に配置して新規な画像表示装置を構成することにより、乾式で応答速度が速く、単純な構造で安価かつ安定性に優れる画像表示装置を提供することができる。さらに、中間調を表示する方法として、表示しようとする画像を構成する各画素の階調レベルに応じて、当該画素内の粒子の飛翔移動の際に発生する飛翔移動電流の積分値が予め設定した目標値(例えば目標とする階調レベルに対応する表示濃度値)になるように、前記電極対を構成する電極間に印加する電圧の電圧値、波形、印加時間、印加回数の少なくとも1つを調整する方法を用いるから、再現性良く中間調を表示することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)〜(c)はそれぞれ、本発明の画像表示装置に用いる画像表示板の表示素子の一例およびその表示駆動原理を説明するための図である。
【図2】 (a),(b)はそれぞれ、本発明の画像表示装置の画像表示板を例示する模式図である。
【図3】 本発明の画像表示装置に用いる粒子の表面電位の測定要領を示す図である。
【図4】 (a),(b)はそれぞれ、第1実施形態の画像表示装置において中間調表示を行う際の飛翔移動電流の補正方法を説明するための図である。
【符号の説明】
1 透明基板
2 対向基板
3 表示電極(走査電極)
4 対向電極(データ電極)
5 負帯電粒子
6 正帯電粒子
7 隔壁
8 ロウドライバ回路
9 カラムドライバ回路
10 フレームバッファ
11 電圧発生回路
12 電流/電圧変換回路
13 反転電流検出器
14 積分器
15 比較器
21 チャック
22 スコロトロン放電器
23 表面電位計
Claims (8)
- 少なくとも一方が透明な2枚の基板の間に色および帯電特性の異なる2種類以上の粒子を封入し、前記基板の一方または双方に設けた電極からなる電極対から前記粒子に電界を与えて、前記粒子を飛翔移動させて画像を表示する画像表示板を具備した画像表示装置であって、
表示しようとする画像を構成する各画素の階調レベルに応じて、当該画素内の粒子の飛翔移動の際に発生する飛翔移動電流の積分値が予め設定した目標値になるように、前記電極間に印加する電圧の電圧値、波形、印加時間、印加回数の少なくとも1つを調整するようにしたことを特徴とする画像表示装置。 - 前記飛翔移動電流を検出する飛翔移動電流検出部と、前記飛翔移動電流を積分する積分器と、前記飛翔移動電流の積分値と前記階調レベルに対応する階調指示電圧とを比較する比較器とを具備して成ることを特徴とする請求項1記載の画像表示装置。
- 前記比較器の出力を粒子駆動制御回路の出力電圧発生部にフィードバックすることにより、前記飛翔移動電流の積分値と前記階調レベルに対応する階調指示電圧との間のずれを補正するようにしたことを特徴とする請求項2記載の画像表示装置。
- 前記粒子が飛翔移動するしきい値電圧未満の電圧を印加した場合に発生する第1の電流波形および前記しきい値電圧以上の電圧を印加した場合に発生する第2の電流波形を観測し、前記第1の電流波形に基づいて前記第2の電流波形を補正するようにしたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載の画像表示装置。
- 前記粒子の平均粒子径が0.1〜50μmであることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項記載の画像表示装置。
- 前記粒子のキャリアを用いてブローオフ法により測定した表面電荷密度が絶対値で5μC/m2 以上150μC/m2 以下であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項記載の画像表示装置。
- 前記粒子が、その表面と1mmの間隔をもって配置されたコロナ放電器に、8KVの電圧を印加してコロナ放電を発生させて表面を帯電させた場合に、0.3秒後における表面電位の最大値が300Vより大きい粒子であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項記載の画像表示装置。
- 前記粒子の色が白色および黒色であることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項記載の画像表示装置。
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