JP4518607B2 - 耐食性に優れたアルミめっき鋼板 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、腐食性の強い高温雰囲気に曝される構造部材として好適なアルミめっき鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルミめっき鋼板は、溶融アルミめっき層の表層が緻密な酸化皮膜で覆われることから優れた耐酸化性,耐熱性を呈する。しかし、緻密な酸化皮膜を安定させるための溶融アルミめっき層組成が十分に解明されておらず、そのためアルミめっき鋼板本来の耐酸化性,耐食性が安定して発現しない場合がある。
一方、耐酸化性,耐食性を活用した各種構造部材としてアルミめっき鋼板の用途展開が進められており、最近では自動車用燃料タンク材としても注目されている。このようなことから、緻密な酸化皮膜を安定させるため、溶融アルミめっき層の組成を解明することが急務になっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
アルミめっき鋼板は、溶融アルミめっき層の表層が緻密な酸化皮膜で覆われ、優れた耐熱性,耐酸化性,耐食性を呈する。しかし、Clイオンが存在する湿度の高い雰囲気では、溶融アルミめっき層の表層にある酸化皮膜が破壊されやすい。酸化皮膜が破壊されると、酸化皮膜の欠陥部を起点としてアルミめっき層の腐食生成物である白錆の発生が著しく促進されるため、結果としてアルミめっき鋼板自体も早期に腐食する。また、劣化ガソリンを収容した燃料タンクのように低pHの酸性雰囲気に曝されることによっても、内面腐食が進行しやすい。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、鋼板表面に形成される溶融アルミめっき層に含まれるNi及びCuを規制することにより、溶融アルミめっき層表層の酸化皮膜を強化し、耐食性に優れたアルミめっき鋼板を提供することを目的とする。
本発明のアルミめっき鋼板は、その目的を達成するため、Si:3〜13質量%,Ni:0.03質量%以下,Cu:0.05質量%以下,残部がAlと不可避的不純物からなる組成をもち、NiとCuとの合計量が0.07質量%以下に規制された溶融アルミめっき層が鋼板表面に形成されていることを特徴とする。
【0005】
【作用】
以下、燃料タンクの腐食環境を例にとって説明するが、優れた耐食性は酸性環境で使用される他の用途でも有効なことは勿論である。
酸性度の高い雰囲気に溶融アルミめっき層が曝されると、表層の酸化皮膜が溶解して溶融アルミめっき層の犠牲防食作用が短期間に消失し、内面腐食が進行する。また、海塩粒子が飛散する海岸地帯や融雪剤が撒布される寒冷地等を走行する自動車は、Clイオンを含む雰囲気に曝される。溶融アルミめっき層が湿度の高いClイオン含有雰囲気に接触すると、表層の酸化皮膜が破壊され、酸化皮膜の欠陥部を起点とする外面腐食が進行しやすくなる。
【0006】
本発明者等は、このように溶融アルミめっき層表層にある酸化皮膜の欠陥部を起点として腐食が進行することを前提とし、欠陥部の発生しがたい酸化皮膜が生成される溶融アルミめっき層について種々調査・研究した。その結果、溶融アルミめっき層に含まれているNi及びCuが酸化皮膜の強度に大きな影響を及ぼしていることを見出し、Ni及びCuの含有量を規制することにより酸化皮膜が破壊されがたく、換言すると溶融アルミめっき層の耐食性が改善されることを解明した。
【0007】
本発明にしたがって鋼板表面に形成される溶融アルミめっき層は、3〜13質量%のSiを含み、Niが0.03質量%以下,Cuが0.05質量%以下,NiとCuとの合計量が0.07質量%以下に規制された組成をもっている。
Siは、下地鋼と溶融アルミめっき層との間に生成しやすいFe−Al−Si合金相の生成を抑え、アルミめっき鋼板の加工性を確保する上で有効な成分である。Fe−Al−Si合金相の抑制効果は、3質量%以上のSi含有量で顕著になる。しかし、13質量%を超える過剰量のSiが含まれると、溶融アルミめっき層の凝固冷却過程で初晶Siが晶出し、溶融アルミめっき層の密着性やアルミめっき鋼板の加工性が劣化しやすくなる。
【0008】
Niは、Al地金から溶融アルミめっき層に混入する不純物元素であるが、Alと反応してNi3Alを生成する。生成したNi3Alは、Alとの間に局部電池を形成し、塩害腐食環境下で溶融アルミめっき層表層にある酸化皮膜を早期に破壊する。酸化皮膜が破壊されると、酸化皮膜の欠陥部を起点としてアルミめっき層の腐食である白錆の発生が著しく促進されるため、結果としてアルミめっき鋼板自体の腐食も早期化されてしまう。このようなNiによる酸化皮膜の劣化は、溶融アルミめっき層に含まれるNiの含有量を0.03質量%以下に規制することによって抑えられる。
Cuも、Al地金から溶融アルミめっき層に混入する不純物元素であるが、溶融アルミめっき層内で局部電池を形成しやすく、酸化皮膜に欠陥を導入する原因ともなる。なかでも、劣化ガソリンを使用している燃料タンクのように、導電率が高くpHの低い水溶液に接触する環境下では溶融アルミめっき層を急速に溶解させ、内面腐食を促進させる。このような耐食性を劣化させるCuの悪影響は、溶融アルミめっき層に含まれるCuの含有量を0.05質量%以下に規制することによって抑えられる。
Ni,Cuが溶融アルミめっき層に共存すると、それぞれの作用が複合され腐食の進行が一層顕著になる。具体的には、Niの含有量が0.03質量%近傍で、Cuの含有量が0.05質量%近傍では、酸化皮膜の劣化が助長される。そこで、Ni及びCuの合計含有量0.07質量%以下に規制することにより耐食性を向上させる。
【0009】
【実施例】
めっき原板として板厚0.8mmの普通鋼板を使用し、還元焼鈍した後、ライン速度90m/分で浴温660℃の溶融アルミめっき浴に導入し、ガスワイピングによって付着量を80g/m2に調整したアルミめっき鋼板を製造した。溶融アルミめっき浴の組成を変えることにより、鋼板表面に形成される溶融アルミめっき層のNi及びCu含有量を種々変化させた。
得られたアルミめっき鋼板から平板状の試験片を切り出し、腐食試験及び加工性試験に供した。
【0010】
〔腐食試験〕
濃度5質量%の塩水を試験片表面に継続噴霧し、噴霧開始から240時間経過した時点で試験片の表面を観察した。試験片の表面に発生した白錆の面積率でClイオン含有雰囲気における耐食性を評価した。
また、蟻酸添加でpHを3に調整した試験液を用い、試験片を10週間浸漬した時点で試験液から引き上げ、腐食部の板厚減少率で高酸性雰囲気における耐食性を評価した。
〔加工性試験〕
半径20mm,肩アール5mmのポンチを用い、ブランク径84mmの試験片を絞り比2で平底円筒状に絞り加工した。絞り加工された試験片の最も過酷な加工を受けた部位に感圧接着テープを貼り付けた後、感圧接着テープを引き剥がし、アルミめっき鋼板から剥離される溶融アルミめっき層の程度を調査した。テープ剥離後にも溶融アルミめっき層の残存率が高いものほど、密着性が良好なものといえる。
【0011】
調査結果を、溶融アルミめっき層の組成と関連させて表1に示す。表1から明らかなように、Ni:0.03質量%以下,Cu:0.05質量%以下,Ni+Cu:0.07質量%以下に規制した本発明例では、何れも優れた耐食性を呈した。また、Si含有量が3〜13質量%の範囲にあるとき、溶融アルミめっき層の密着性が優れ、必要形状に加工できることが判った。
これに対し、0.03質量%を超えるNiを含む溶融アルミめっき層や0.05質量%を超えるCuを含む溶融アルミめっき層が形成された比較例では、何れも耐食性に劣っていた。Ni及びCu共に本発明で規定した量を超えた場合でも耐食性が劣化した。また、3質量%未満又は13質量%を超える量のSiが含まれる場合は、何れも加工によって多量の溶融アルミめっき層が剥離した。
Ni含有量が白錆発生に及ぼす影響及びCu含有量が板厚減少に及ぼす影響をそれぞれ図1及び2に示す。これら図からも明らかなようにNi:0.03質量%以下,Cu:0.05質量%以下,Si:3〜13質量%とすることにより、アルミめっき鋼板の耐食性及び加工性が改善されることが判る。
【0012】
Figure 0004518607
【0013】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明のアルミめっき鋼板は,溶融アルミめっき層に含まれるNi及びCuをNi:0.03質量%以下,Cu:0.05質量%以下,Ni+Cu:0.07質量%以下に規制することにより、溶融アルミめっき層の表層に生成する酸化皮膜が強化され、過酷な雰囲気においても優れた耐食性が付与されている。このアルミめっき鋼板は、耐食性に加えて加工性にも優れているため、高度のプレス成形で製品化される燃料タンク用途を初め、過酷な腐食雰囲気に晒される構造材として広範な分野で使用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 Ni含有量が白錆発生に及ぼす影響を表したグラフ
【図2】 Cu含有量が板厚減少に及ぼす影響を表したグラフ

Claims (1)

  1. Si:3〜13質量%,Ni:0.03質量%以下,Cu:0.05質量%以下,残部がAlと不可避的不純物からなる組成をもち、NiとCuとの合計量が0.07質量%以下に規制された溶融アルミめっき層が鋼板表面に形成されていることを特徴とする耐食性に優れたアルミめっき鋼板。
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