JP4518253B2 - 非鉄材料の高速切削加工でダイヤモンド状炭素系被膜がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具の製造方法 - Google Patents
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Description
(a) 図1(a)および(b)にそれぞれ概略平面図および概略正面図で示される通り、装置内の中央部に設置された回転テーブル5の一方側にカソード電極として酸化シリコン(以下、SiO2で示す)焼結体(SiO2粉末のプレス成形圧粉体を焼結してなる)ターゲット9を設けたスパッタリング装置12を設け、さらに側壁外周に沿って所定間隔毎に複数の電磁コイル2を設け、一方側壁内周に沿っては同じくヒーター3を設け、かつ一方側側壁に原料ガス導入口1、他方側側壁に排気口4をそれぞれ設けたプラズマCVDを用い、前記電磁コイル2により超硬基体6の装着部に収束磁場を形成し、かつ前記原料ガス導入口1より原料ガスであるアセチレン(C2H2)などの炭化水素とArを導入し、同時にスパッタリング装置のカソード電極であるSiO2焼結体ターゲットに印加して、これをスパッタする以外は、上記の従来プラズマCVDでのDLC被膜の形成条件と同じ条件で成膜を行うと、この結果上記の従来DLC被膜、すなわち6〜15原子%の水素を含有し、25〜35GPaの硬さを有するDLC被膜と実質的に同じDLCからなる素地に、SiO2微粒が分散分布した組織を有するDLC系被膜が形成されること。
以上(a)〜(c)に示される研究結果を得たのである。
(a)まず、上記電磁コイルにより上記超硬基体の装着部に収束磁場を形成すると共に、装置内を上記ヒーターで加熱し、反応ガスとしてN 2 とAr、または炭化水素とN 2 とArを上記原料ガス導入口より導入し、同時に上記スパッタリング装置のTiターゲットにはスパッタ電力を印加し、一方前記超硬基体にはバイアス電圧を印加した条件でグロー放電を発生させることにより前記超硬基体の表面に、TiN層およびTiCN層のうちのいずれか、または両方の積層からなる密着接合層を0.5〜3μmの平均層厚で形成し、
(b)ついで、同じく上記電磁コイルにより上記超硬基体の装着部に収束磁場を形成すると共に、装置内を上記ヒーターで加熱し、前記超硬基体にはバイアス電圧を印加し、さらに装置内に初期プラズマを発生させた状態で、反応ガスとして炭化水素とArを上記原料ガス導入口より導入して、これを分解・プラズマ化し、同時に上記スパッタリング装置のカソード電極であるSiO 2 焼結体ターゲットにはスパッタ電力を印加して、スパッタすることにより、DLCからなる素地に、透過型電子顕微鏡による観察で最大径が10nm(ナノメーター)以下のSiO2微粒が、X線光電子分光装置(ESCA)による測定で1〜10原子%の割合で分散分布した組織を有し、かつ0.6〜15μmの平均層厚を有するDLC系被膜を蒸着形成してなる、
非鉄材料の高速切削加工でDLC系被膜がすぐれた耐摩耗性を発揮する被覆超硬工具の製造方法に特徴を有するものである。
(a)SiO2微粒の粒径
DLCの素地に微細に分散分布するSiO2微粒に最大径で10nmを越えたSiO2粒が存在すると、高速切削加工では、かかるSiO2粒を中心に局部的に摩耗が急激に進行し、これが全面的に広がって摩耗進行が促進されることから、前記SiO2微粒に10nmを越えた最大径のものが存在しないように定めた。
SiO2微粒には、上記の通り高速切削加工でDLC系被膜の耐摩耗性を向上させる作用があるが、その含有割合が1原子%未満では所望のすぐれた耐摩耗性を確保することができず、一方その含有割合が10原子%を越えると、SiO2微粒に最大径で10nmを越えたSiO2粒が存在するようになり、上記の通り耐摩耗性低下の原因となることから、その含有割合を1〜10原子%と定めた。
その平均層厚が0.6μm未満では、所望の耐摩耗性を長期に亘って確保することができず、一方その平均層厚が15μmを越えると、切刃部にチッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を0.6〜15μmと定めた。
TiN層およびTiCN層のいずれか、または両方の積層からなる密着接合層は、超硬基体とDLC系被膜の間にあって、これら両者と強固に密着接合し、さらに前記超硬基体に対する密着接合性は磁場中成膜によって一層向上したものになるが、その平均層厚が0.5μm未満では、所望のすぐれた密着接合性を確保することができず、一方密着接合性は3μmの平均層厚で十分であることから、その平均層厚が0.5〜3μmと定めた。
原料粉末として平均粒径:1.5μmのSiO2粉末を用い、これをボールミルで16時間湿式混合し、乾燥した後、100MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を6Paの真空中、温度:1200℃に1時間保持の条件で焼結することによりスパッタリング装置のカソード電極として用いるSiO2焼結体を製造した。
(a)まず、装置内を真空排気して0.01Paの真空に保持しながら、ヒーターで装置内を200℃に加熱した後、Arガスを装置内に導入して0.5Paの圧力のAr雰囲気とし、この状態で前記回転テーブル上で自転しながら回転する前記超硬基体に−800Vのバイアス電圧を印加して前記超硬基体表面を20分間Arガスボンバード洗浄し、
(b)ついで、装置の電磁コイル2に、いずれも電圧:50V、電流:10Aの条件で印加して、前記超硬基体の装着部における磁束密度を140(ガウス)とした収束磁場を形成すると共に、前記装置内の加熱温度を400℃とした状態で、反応ガスとしてN2とArを、N2:200cc/min、Ar:300cc/minの割合で導入して、1PaのN2とArの混合ガスからなる反応雰囲気、または反応ガスとしてC2H2とN2とArを、C2H2:40cc/min、N2:200cc/min、Ar:300cc/minmの割合で導入して、1PaのC2H2の分解ガスとN2とArの混合ガスからなる反応雰囲気とし、Tiターゲットのカソード電極(蒸発源)には出力:12kW(周波数:40kHz)のスパッタ電力を印加し、一方上記超硬基体には、−100Vのバイアス電圧を印加した条件でグロー放電を発生させることにより、前記超硬基体の表面に表2に示される目標層厚のTiN層およびTiCN層のいずれか、または両方の積層からなる密着接合層を形成し、
(c)さらに、前記電磁コイルに印加する条件を、電圧:50〜100V、電流:3〜20Aの範囲内の所定の値として、上記超硬基体の装着部における磁束密度を80〜330G(ガウス)の範囲内の所定の値とし、前記装置内の加熱温度は200℃、上記超硬基体のバイアス電圧は−400Vとし、前記装置内に反応ガスとして、C2H2とArを、C2H2:600cc/min、Ar:650cc/minの割合で導入して、反応雰囲気を、1PaのC2H2の分解ガスとArの混合ガスとすると共に、前記スパッタリング装置のSiO2焼結体ターゲット9のカソード電極(蒸発源)には、出力:1.5〜5.5kW(周波数:40kHz)の範囲内の所定のスパッタ電力を印加した条件で、同じく表2に示される目標層厚のDLC系被膜を蒸着形成することにより、本発明被覆超硬工具としての本発明被覆超硬チップ1〜10および比較被覆超硬工具としての比較被覆超硬チップ1,2をそれぞれ製造した。
なお、比較被覆超硬チップ1,2は、DLC系被膜中のSiO2微粒の最大径および含有割合の少なくともいずれかがこの発明の範囲から外れたDLC系被膜を形成したものである。
さらに、上記の密着接合層およびDLC系被膜の厚さを、走査型電子顕微鏡を用いて測定(縦断面測定)したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均層厚(5点測定の平均値)を示した。
被削材:JIS・A7075(組成は、質量%で、Si:0.25%、Fe:0.35%、Cu:1.52%、Mn:0.18%、Mg:2.45%、Cr:0.23%、Alおよび不純物:残り)の丸棒、
切削速度:1300m/min.、
切り込み:15mm、
送り:0.7mm/rev.、
切削時間:90分、
の条件(切削条件Aという)でのAl合金の乾式連続高速切削加工試験(通常の切削速度は600m/min.)、
被削材:JIS・ADC14(組成は、質量%で、Cu:4.05%、Si:17.2%、Mg:0.48%、Zn:1.31%、Fe:0.80%、Mn:0.18%、Ni:0.21%、Sn:0.11%、Alおよび不純物:残り)の丸棒、
切削速度:1200m/min.、
切り込み:10mm、
送り:0.6mm/rev.、
切削時間:90分、
の条件(切削条件Bという)でのAl合金の乾式連続高速切削加工試験(通常の切削速度は600m/min.)、さらに、
被削材:JIS・C6280(組成は、質量%で、Fe:2.39%、Al:9.13%、Mn:1.18%、Ni:5.67%、Cuおよび不純物:残り)の丸棒、
切削速度:800m/min.、
切り込み:4mm、
送り:0.4mm/rev.、
切削時間:90分、
の条件(切削条件Cという)でのCu合金の乾式連続高速切削加工試験(通常の切削速度は300m/min.)を行なった。いずれの切削加工試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表2に示した。
なお、比較被覆超硬エンドミル1〜6は、DLC系被膜中のSiO2微粒の最大径および含有割合の少なくともいずれかがこの発明の範囲から外れたDLC系被膜を形成したものである。
さらに、上記の密着接合層およびDLC系被膜の厚さを、走査型電子顕微鏡を用いて測定(縦断面測定)したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均層厚(5点測定の平均値)を示した。
被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・A6061(組成は、質量%で、Si:0.61%、Fe:0.73%、Cu:0.32%、Mn:0.15%、Mg:1.02%、Cr:0.12%、Zn:0.20%、Alおよび不純物:残り)の板材、
切削速度:350m/min.、
切り込み(溝深さ):14mm、
テーブル送り:1000mm/分、
の条件でのAl合金の乾式高速溝加工試験(通常の切削速度は150m/min.)、本発明被覆超硬エンドミル4〜6および比較被覆超硬エンドミル3,4については、
被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・ADC12(組成は、質量%で、Cu:2.9%、Si:12.5%、Mg:0.23%、Alおよび不純物:残り)の板材、
切削速度:330m/min.、
切り込み(溝深さ):12mm、
テーブル送り:2000mm/分、
の条件でのAl合金の乾式高速溝加工試験(通常の切削速度は150m/min.)、本発明被覆超硬エンドミル7,8および比較被覆超硬エンドミル5,6については、
被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・C2801(Cu:61.14%、Pb:0.03%、Fe:0.03%、Znおよび不純物:残り)の板材、
切削速度:210m/min.、
切り込み(溝深さ):32mm、
テーブル送り:1100mm/分、
の条件での銅合金の乾式高速溝加工試験(通常の切削速度は75m/min.)、をそれぞれ行い、いずれの溝加工試験でも切刃部の外周刃の逃げ面摩耗幅が0.35mmに至るまでの切削溝長を測定した。この測定結果を表4に示した。
なお、比較被覆超硬ドリル1〜6は、DLC系被膜中のSiO2微粒の最大径および含有割合の少なくともいずれかがこの発明の範囲から外れたDLC系被膜を形成したものである。
さらに、上記の密着接合層およびDLC系被膜の厚さを、走査型電子顕微鏡を用いて測定(縦断面測定)したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均層厚(5点測定の平均値)を示した。
被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・AC9B−T5(組成は、質量%で、Cu:0.9%、Si:18.8%、Ni:1.1%、Alおよび不純物:残り)の板材、
切削速度:210m/min.、
送り:0.5mm/rev、
穴深さ:13mm、
の条件でのAl合金の湿式高速穴あけ切削加工試験(通常の切削速度は120m/min.)、本発明被覆超硬ドリル4〜6および比較被覆超硬ドリル3,4については、
被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・C2100(組成は、質量%で、Fe:4.9%、Al:8.9%、Mn:1.1%、Ni:1.3%、Cuおよび不純物:残り)の板材、
切削速度:280m/min.、
送り:0.6mm/rev、
穴深さ:15mm、
の条件でのCu合金の湿式高速穴あけ切削加工試験(通常の切削速度は90m/min.)、本発明被覆超硬ドリル7,8および比較被覆超硬ドリル5,6については、
被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・A5652(組成は、質量%で、Mg:2.5%、Cr:0.21%、Alおよび不純物:残り)の板材、
切削速度:220m/min.、
送り:0.6mm/rev、
穴深さ:34mm、
の条件でのAl合金の湿式高速穴あけ切削加工試験(通常の切削速度は100m/min.)、をそれぞれ行い、いずれの湿式穴あけ切削加工試験(水溶性切削油使用)でも先端切刃面の逃げ面摩耗幅が0.25mmに至るまでの穴あけ加工数を測定した。この測定結果を表5に示した。
上述のように、この発明の方法によれば、被覆超硬工具は、通常の条件での切削加工は勿論のこと、特に各種の被削材の切削加工を、高速切削条件で行なった場合にも、すぐれた耐摩耗性を発揮する被覆超硬工具を製造することができ、切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。
2 電磁コイル
3 ヒ―ター
4 排気口
5 回転テーブル
6 超硬基体
7 バイアス電源
8 支持体
9 SiO2焼結体ターゲット
10 Tiターゲット
11 収束磁場
12,13 スパッタリング装置(スパッタ電源)
Claims (1)
- 装置内の中央部に炭化タングステン基超硬合金で構成された超硬基体の装着用回転テーブルを設け、装置側壁内面に、それぞれスパッタリング装置のカソード電極として酸化シリコン焼結体ターゲットおよびTiターゲットを別個に配置し、装置側壁外周に沿って所定間隔毎に複数の電磁コイル、装置側壁内周に沿っては同じく複数のヒーターをそれぞれ設けると共に、装置側壁には原料ガス導入口および排気口を設け、さらに前記回転テーブル上の中心軸から半径方向に所定距離離れた位置に外周部に沿って配置され、かつ自転する支持体に複数の超硬基体を装着したプラズマ化学蒸着装置を用い、
(a)まず、上記電磁コイルにより上記超硬基体の装着部に収束磁場を形成すると共に、装置内を上記ヒーターで加熱し、反応ガスとして窒素とAr、または炭化水素と窒素とArを上記原料ガス導入口より導入し、同時に上記スパッタリング装置のTiターゲットにはスパッタ電力を印加し、一方前記超硬基体にはバイアス電圧を印加した条件でグロー放電を発生させることにより前記超硬基体の表面に、窒化チタン層および炭窒化チタン層のうちのいずれか、または両方の積層からなる密着接合層を0.5〜3μmの平均層厚で形成し、
(b)ついで、同じく上記電磁コイルにより上記超硬基体の装着部に収束磁場を形成すると共に、装置内を上記ヒーターで加熱し、前記超硬基体にはバイアス電圧を印加し、さらに装置内に初期プラズマを発生させた状態で、反応ガスとして炭化水素とArを上記原料ガス導入口より導入して、これを分解・プラズマ化し、同時に上記スパッタリング装置のカソード電極である酸化シリコン焼結体ターゲットにはスパッタ電力を印加して、スパッタすることにより、ダイヤモンド状炭素(DLC)からなる素地に、透過型電子顕微鏡による観察で最大径が10nm(ナノメーター)以下の酸化シリコン微粒が、X線光電子分光装置(ESCA)による測定で1〜10原子%の割合で分散分布した組織を有し、かつ0.6〜15μmの平均層厚を有するダイヤモンド状炭素系被膜を蒸着形成すること、
を特徴とする非鉄材料の高速切削加工でダイヤモンド状炭素系被膜すぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具の製造方法。
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