[実施形態(1)]
以下、実施形態(1)を図1乃至図3に基づいて説明する。
まず、図1に基づいてエンジン制御システム全体の概略構成を説明する。内燃機関であるエンジン11の吸気管12の最上流部には、エアクリーナ13が設けられ、このエアクリーナ13の下流側には、吸入空気量を検出するエアフローメータ14が設けられている。このエアフローメータ14の下流側には、モータ10等のアクチュエータによって駆動されるスロットルバルブ15と、スロットル開度を検出するスロットル開度センサ16とが設けられている。
更に、スロットルバルブ15の下流側には、サージタンク17が設けられ、このサージタンク17に、吸気管負圧(吸気管圧力)を検出する吸気管圧力センサ18(負圧判定手段)が設けられている。また、サージタンク17には、エンジン11の各気筒に吸入空気を導入する吸気マニホールド19が設けられ、各気筒の上部には、それぞれ燃料を筒内に直接噴射する燃料噴射弁20が取り付けられている。エンジン11のシリンダヘッドには、各気筒毎に点火プラグ21が取り付けられ、各点火プラグ21の火花放電によって筒内の混合気に点火される。また、エンジン11のシリンダブロックには、冷却水温を検出する冷却水温センサ22や、エンジン回転速度を検出するためのクランク角センサ23が取り付けられている。
一方、サージタンク17には、逆止弁24を有する負圧導入管25を介してブレーキブースタ26が接続され、吸気管負圧が負圧導入管25を通してブレーキブースタ26内に導入されるようになっている。ブレーキペダル27が踏み込まれていない状態では、ブレーキブースタ26内のダイヤフラムの両側の圧力室に吸気管負圧が導入されて、ブレーキブースタ26は作動しないが、ブレーキペダル27が踏み込まれると、ダイヤフラムの大気側の圧力室に外気を導入して、ダイヤフラムの両側に吸気管負圧と大気圧との圧力差を生じさせ、その圧力差によってブレーキペダル27の踏込み力を増幅して、その力でマスターシリンダ28のピストンを押し込み、ブレーキペダル27の踏込み力に応じたブレーキ制動力を発生させる。ブレーキペダル27には、ブレーキペダル27の踏み込み(ブレーキ操作)の有無を検出するブレーキスイッチ29が設けられている。
一方、エンジン11の排気管30には、排出ガスを浄化する三元触媒等の触媒31が設けられ、この触媒31の上流側に排出ガスの空燃比(又はリッチ/リーン)を検出する空燃比センサ32(又は酸素センサ)が設けられている。
上述した各種センサやスイッチの出力は、エンジン制御回路(以下「ECU」と表記する)33に入力される。このECU33は、マイクロコンピュータを主体として構成され、そのROM(記憶媒体)に記憶された図2の点火時期制御プログラムを実行することで、点火時期を制御し、また、図示しない燃料噴射制御プログラム、スロットル制御プログラム、アイドル回転制御プログラム等を実行して、燃料噴射量、スロットル開度(吸入空気量)、アイドル回転速度(アイドル時の吸入空気量)等を制御する。図2の点火時期制御プログラムは、触媒早期暖機のための点火遅角制御を行う際に、図3に示すように、始動から所定時間kt1経過するまでは、点火時期を初期値に維持して点火時期を遅角せず、始動から所定時間kt1経過した後に点火遅角制御を開始するところに特徴がある。ここで、所定時間kt1は、始動から吸気管負圧Pm(又はブレーキブースタ負圧)が所定値kpm1に低下するまでの時間(つまり始動から適正なブレーキブースタ負圧を確保できる状態になるまでの時間)に相当する。この所定時間kt1は、予めシミュレーションや実験等で測定して、ECU30のROMに記憶しておけば良い。図2の点火時期制御プログラムは、所定時間毎又は所定クランク角毎に繰り返し実行され、特許請求の範囲でいう点火遅角制御手段としての役割を果たす。本プログラムが起動されると、まずステップ101で、イグニッションスイッチ(図示せず)のオン直後か否かを判定し、オン直後であれば、ステップ102に進み、点火時期を初期値にセットする。
そして、次のステップ103で、始動が完了したか否かを、エンジン回転速度が完爆判定値を越えたか否かで判定し、始動完了前であれば、ステップ108に進み、点火時期を前回の点火時期(この場合は初期値)に維持する。
その後、始動が完了した時点で、ステップ103からステップ104に進み、触媒早期暖機のための点火遅角制御の実行条件が成立しているか否かを判定する。ここで、点火遅角制御実行条件としては、例えば、(1)触媒31が活性化していないこと、(2)車速が所定値以下であること(又はアイドル運転状態であること)、(3)自動変速機のシフト位置がニュートラル位置又はパーキング位置であること等であり、これらの条件を全て満した時に、点火遅角制御実行条件が成立し、いずれか1つでも満たさない条件があれば、点火遅角制御実行条件が不成立となる。尚、点火遅角制御実行条件の中から上記(2)と(3)のいずれか一方の条件を省略しても良く、勿論、上記以外の条件を追加しても良いことは言うまでもない。また、触媒31の活性判定は、触媒31の温度とある程度の相関関係のある情報、例えば、始動後の経過時間、始動後の冷却水温上昇量、始動後の燃料噴射量積算値、排気温度等を用いれば良く、勿論、触媒31の温度を温度センサで直接検出するようにしても良いことは言うまでもない。
もし、ステップ104で、触媒早期暖機のための点火遅角制御の実行条件が成立していないと判定されれば、ステップ109に進み、通常の点火時期制御を行う。これに対し、ステップ104で、触媒早期暖機のための点火遅角制御の実行条件が成立していると判定されれば、ステップ105に進み、始動後経過時間が所定時間kt1に達したか否かを判定し、所定時間kt1に達していなければ、ステップ108に進み、点火時期を前回の点火時期(この場合は初期値)に維持する。これにより、始動後経過時間が所定時間kt1に達するまでは、点火時期を遅角させずに、初期値に維持する。
その後、始動後経過時間が所定時間kt1に達した時点で、ステップ106に進み、現在の点火時期が目標点火時期より進角している(点火時期>目標点火時期)か否かを判定し、現在の点火時期が目標点火時期より進角していれば、ステップ107に進み、点火時期を所定量kdelだけ遅角させる。これにより、点火遅角制御の開始後は、点火時期が目標点火時期に到達するまで、本プログラムの実行周期で点火時期を所定量kdelずつ遅角させていく。
そして、点火時期が目標点火時期に到達した後は、ステップ106で「No」と判定され、ステップ108に進み、点火時期を前回の点火時期(この場合は目標点火時期)に維持する。
その後、触媒31が活性温度域に昇温したり、或は前述した点火遅角制御実行条件のいずれかの条件が満たされなくなった時点で、ステップ104で、点火遅角制御実行条件が不成立と判定され、ステップ109に進み、点火遅角制御を終了して通常の点火時期制御に移行する。
一般に、始動から吸気管負圧Pm(又はブレーキブースタ負圧)が所定値kpm1に低下するまでの時間は、始動毎に大きく変化することはなく、ほぼ一定の時間となる。
この点に着目し、本実施形態(1)では、始動から吸気管負圧Pmが所定値kpm1に低下するまでの時間を予めシミュレーションや実験等で測定して、これを所定時間kt1のデータとしてECU30のROMに記憶しておき、始動から所定時間kt1経過するまでは、点火時期を初期値に維持して点火時期を遅角せず、始動から所定時間kt1経過した後に点火遅角制御を開始するようにした。このようにすれば、冷間始動当初の燃焼安定性が低い時には、点火時期を遅角させずに、燃焼状態を良くする点火時期(初期値)に設定して、未燃焼ガス成分(HC、CO)の発生を少なくしながら、吸気管負圧Pmを速やかに低下させることができる。これにより、吸気管負圧Pmが適正なブレーキブースタ負圧を確保できる所定値kpm1以下に低下した時点で、点火遅角制御を開始し、点火時期を遅角させて排気温度を上昇させることで、触媒31の暖機を促進して触媒31を早期に活性温度域に昇温させることができる。
この構成では、始動後に適正なブレーキブースタ負圧を確保できる状態になるまで点火遅角制御が開始されないため、従来のように始動当初から点火遅角制御を開始する場合と比較して、始動から触媒31の暖機が完了するまでの時間が少し長くなるかもしれないが、点火遅角制御の開始時期を遅らすことで、始動時のエミッション悪化の主要因となる始動当初の燃焼悪化による未燃焼ガス成分(HC、CO)の発生を抑えることができるため、始動から触媒31の暖機が完了するまでの期間の総エミッション量を低減することができる。これにより、ブレーキブースタ負圧の早期確保と始動時の排気エミッション低減とを両立させることが可能となる。
[実施形態(2)]
上記実施形態(1)では、始動後に適正なブレーキブースタ負圧を確保できる状態になる時期(つまり点火遅角制御の開始時期)を始動後経過時間によって判定するようにしたが、図4に示す実施形態(2)では、吸気管圧力センサ18で検出した吸気管負圧Pmが適正なブレーキブースタ負圧を確保できる所定値kpm1以下に低下したか否かを判定し(ステップ105a)、始動から吸気管負圧Pmが所定値kpm1に低下するまでは、点火時期を初期値に維持して点火時期を遅角せず、吸気管負圧Pmが所定値kpm1以下に低下した後に点火遅角制御を開始するようにしている。その他の処理は、前記実施形態(1)と同じである。
本実施形態(2)では、吸気管圧力センサ18で検出した吸気管負圧Pmによって点火遅角制御の開始時期を判断するため、吸気管負圧Pmが所定値kpm1以下に低下したのを確認してから点火遅角制御を開始することができ、ブレーキブースタ負圧の早期確保をより確実なものとすることができる。
尚、ブレーキブースタ負圧を検出する圧力センサを備えたシステムでは、吸気管負圧Pmの代わりに、該圧力センサで検出したブレーキブースタ負圧が所定値kpm1以下に低下したか否かを判定して、点火遅角制御の開始時期を判断するようにしても良い。
また、ブレーキブースタ負圧を検出する圧力センサを持たないシステムにおいても、エンジン運転条件(例えば吸気管負圧、吸入空気量、エンジン回転速度、ギア位置、ブレーキスイッチ、ブレーキ回数等)に基づいてブレーキブースタ26の負圧を推定して、この推定ブレーキブースタ負圧が所定値kpm1以下に低下したか否かを判定して点火遅角制御の開始時期を判断するようにしても良い。
[実施形態(3)]
前記実施形態(1)、(2)では、始動後に適正なブレーキブースタ負圧を確保できる状態になるまでは、点火時期を初期値に維持して点火時期を遅角させないようにしたが、図5及び図6に示す実施形態(3)では、始動から所定時間kt2経過するまで(又は吸気管負圧Pmが所定値kpm1以下に低下するまで)の期間は、点火時期の遅角速度を遅くし、その後、遅角速度を速くするようにしている。
具体的な処理は、図5のステップ103、104で、始動完了後、触媒早期暖機のための点火遅角制御の実行条件が成立していると判定されれば、ステップ105bに進み、始動後経過時間が所定時間kt2に達したか否か(又は吸気管負圧Pmが所定値kpm1以下に低下したか否か)を判定し、始動後経過時間が所定時間kt2に達していない場合(又は吸気管負圧Pmが所定値kpm1まで低下していない場合)は、ステップ110に進み、点火時期を第1所定量kdel1だけ遅角させる。この第1所定量kdel1は、後述する第2所定量kdel2よりも小さい値に設定されている。これにより、始動から所定時間kt2経過するまで(又は吸気管負圧Pmが所定値kpm1以下に低下するまで)の期間は、点火時期の遅角速度を遅くする。
その後、始動後経過時間が所定時間kt2に達した時点(又は吸気管負圧Pmが所定値kpm1以下に低下した時点)で、ステップ106に進み、現在の点火時期が目標点火時期より進角している(点火時期>目標点火時期)か否かを判定し、現在の点火時期が目標点火時期より進角していれば、ステップ107aに進み、点火時期を第2所定量kdel2だけ遅角させる。この第2所定量kdel2は、上記第1所定量kdel1よりも大きい値に設定されている。これにより、始動から所定時間kt2経過した後(又は吸気管負圧Pmが所定値kpm1以下に低下した後)は、点火時期の遅角速度を速くして、点火時期を速やかに目標点火時期まで遅角させる。その他の処理は前記実施形態(1)と同じである。
以上説明した本実施形態(3)では、始動当初から点火遅角制御が開始されるが、始動から所定時間kt2経過するまで(又は吸気管負圧Pmが所定値kpm1以下に低下するまで)の期間は、点火時期の遅角速度が遅く、遅角量が少ないため、点火時期の遅角が吸気管負圧Pmに与える影響が小さく、吸気管負圧Pmの低下があまり遅くならず、しかも、燃焼状態も悪化しない。このため、始動から所定時間kt2経過するまで(又は吸気管負圧Pmが所定値kpm1以下に低下するまで)の期間に、未燃焼ガス成分の発生を少なくしながら、吸気管負圧Pmを速やかに低下させることができる。そして、始動から所定時間kt2経過した後(又は吸気管負圧Pmが所定値kpm1以下に低下した後)は、点火時期の遅角速度が速くなるため、点火時期の遅角による触媒暖機効果を高めることができて、触媒31を早期に活性温度域に昇温させることができ、始動時の排気エミッション低減とブレーキブースタ負圧の早期確保とを両立させることができる。しかも、本実施形態(3)では、始動当初から点火遅角制御を開始するため、前記実施形態(1)、(2)の場合と比較して、始動から触媒31の暖機が完了するまでの時間を短くすることができる利点もある。
尚、吸気管負圧Pmが所定値kpm1以下に低下したか否かで、点火時期の遅角速度を切り換える場合は、吸気管負圧Pmに代えて、ブレーキブースタ負圧の検出値又は推定値を用いるようにしても良い。
[実施形態(4)]
図7及び図8に示す実施形態(4)では、触媒早期暖機のための点火遅角制御を行う際に、吸気管圧力センサ18で検出した吸気管負圧Pmに応じて図8のマップによって点火時期の遅角速度(演算周期当たりの遅角量kdel)を算出する。図8のマップの特性は、吸気管負圧Pmが高くなるほど(吸気管負圧Pmが大気圧に近付くほど)、点火時期の遅角速度が遅くなる(演算周期当たりの遅角量kdelが小さくなる)ように設定されている。これにより、吸気管負圧Pmがまだ高い始動当初は、点火時期の遅角速度が遅くなり、その後、吸気管負圧Pmが低下するに従って、点火時期の遅角速度が徐々に速くなるように設定される。
本実施形態(4)の点火遅角制御は、図7の点火時期制御プログラムによって実行される。図7のプログラムは、図2のプログラムのステップ105の処理を省略し、ステップ106とステップ107との間にステップ111を追加したものであり、その他の各ステップの処理は図2のプログラムと同じである。
図7のプログラムでは、ステップ103、104で、始動完了後、触媒早期暖機のための点火遅角制御の実行条件が成立していると判定されれば、ステップ106に進み、現在の点火時期が目標点火時期より進角している(点火時期>目標点火時期)か否かを判定する。このステップ106で、現在の点火時期が目標点火時期より進角していると判定されれば、ステップ111に進み、吸気管圧力センサ18で検出した吸気管負圧Pmに応じて図8のマップにより演算周期当たりの遅角量kdel(遅角速度)を算出する。そして、次のステップ107で、点火時期を上記ステップ111で算出した遅角量kdelだけ遅角させる。
このようにして、点火遅角制御中に、吸気管負圧Pmに応じて点火時期の遅角速度を設定し、点火時期が目標点火時期に到達した後は、ステップ106で「No」と判定され、ステップ108に進み、点火時期を前回の点火時期(この場合は目標点火時期)に維持する。その他の各ステップの処理は図2のプログラムと同じである。
以上説明した本実施形態(4)では、前記実施形態(3)と同じく、始動当初から点火遅角制御が開始されるが、吸気管負圧Pmがある程度低下するまでは、点火時期の遅角速度が遅く、遅角量が少ないため、吸気管負圧Pmの低下があまり遅くならず、しかも、燃焼状態も悪化しない。このため、吸気管負圧Pmが適正値付近に近付くまでは、未燃焼ガス成分の発生を少なくしながら、吸気管負圧Pm(ブレーキブースタ負圧)を速やかに低下させることができる。そして、吸気管負圧Pmが低下するに従って、図8のマップにより点火時期の遅角速度が徐々に速くなるように設定されるため、吸気管負圧Pm(ブレーキブースタ負圧)が適正値付近に低下する頃には、点火時期の遅角速度がかなり速くなっている。これにより、点火時期の遅角による触媒暖機効果を高めることができて、触媒31を早期に活性温度域に昇温させることができ、始動時の排気エミッション低減とブレーキブースタ負圧の早期確保とを両立させることができる。しかも、本実施形態(4)では、始動当初から点火遅角制御を開始するため、前記実施形態(1)、(2)の場合と比較して、始動から触媒31の暖機が完了するまでの時間を短くすることができる利点もある。
尚、本実施形態(4)では、点火遅角制御中に吸気管負圧Pmに応じて点火時期の遅角速度を設定するようにしたが、ブレーキブースタ負圧の検出値又は推定値に応じて点火時期の遅角速度を設定するようにしても良い。
また、点火遅角制御中に吸気管負圧Pm(又はブレーキブースタ負圧)に応じて点火時期の遅角量(目標点火時期)を設定するようにしても良く、勿論、吸気管負圧Pm(又はブレーキブースタ負圧)に応じて点火時期の遅角速度と遅角量の両方を設定するようにしても良い。
或は、点火遅角制御中に始動後経過時間に基づいて点火時期の遅角量及び/又は遅角速度を設定するようにしても良い。つまり、始動から触媒31の暖機に至るまでの点火時期、吸気管負圧Pm(ブレーキブースタ負圧)、触媒温度等の望ましい挙動は、予めシミュレーションや実験等で推定することができるため、その推定結果に基づいて、始動後経過時間と点火時期の望ましい遅角量や遅角速度との関係を表すテーブルデータ又は数式等を作成して、それをECU33のROMに記憶しておき、実際の始動時にその記憶データを用いて始動後経過時間に応じて点火時期の遅角量及び/又は遅角速度を設定すれば、望ましい点火遅角制御を行うことができ、ブレーキブースタ負圧の早期確保と始動時の排気エミッション低減とを両立させることができる。
[実施形態(5)]
図9乃至図11に示す実施形態(5)では、吸気管圧力センサ18で検出した吸気管負圧Pmと所定値kpm3との差分ΔPmの積算値ΣΔPmに基づいて点火時期の遅角量(目標点火時期)を設定する。ここで、所定値kpm3は、例えば、適正なブレーキブースタ負圧を確保するのに必要な吸気管負圧Pmに相当する値又はその付近の値に設定されている。
本実施形態(5)では、図11に示すように、始動当初に目標点火時期をベース値に設定して点火遅角制御を開始し、所定周期で点火時期を目標点火時期(ベース値)に向かって所定量kdel1ずつ遅角させていく。そして、始動から所定時間kt3が経過するまでの期間は、所定周期で吸気管負圧Pmと所定値kpm3との差分ΔPmを積算する(但しPm≦kpm3の場合のみ積算する)。
その後、始動から所定時間kt3が経過した時点で、吸気管負圧Pmと所定値kpm3との差分ΔPmの積算値ΣΔPmが所定値以下であるか否かを判定し、積算値ΣΔPmが所定値以下であれば、ブレーキブースタ負圧の確保が不十分であると判断して、目標点火時期を所定の進角補正量だけ進角補正する(目標点火時期=ベース値+進角補正量)。この後は、進角補正後の目標点火時期に向かって所定周期で点火時期を所定量kdel2ずつ進角させていく。これにより、吸気管負圧Pmを低下させて適正なブレーキブースタ負圧を速やかに確保する。
以上説明した本実施形態(5)の点火時期制御は、図9及び図10の点火時期制御プログラムによって実行される。本プログラムは、所定時間毎又は所定クランク角毎に繰り返し実行され、まずステップ201で、イグニッションスイッチ(図示せず)のオン直後か否かを判定し、オン直後であれば、ステップ202に進み、点火時期を初期値にセットし、次のステップ203で、目標点火時期をベース値に設定する。
そして、次のステップ204で、始動が完了したか否かを判定し、始動完了前であれば、ステップ205に進み、点火時期を前回の点火時期(この場合は初期値)に維持する。
その後、始動が完了した時点で、ステップ204からステップ206に進み、前記図2のステップ104と同様の方法で、触媒早期暖機のための点火遅角制御の実行条件が成立しているか否かを判定し、点火遅角制御実行条件が成立していなければ、ステップ207に進み、通常の点火時期制御を行う。
これに対し、ステップ206で、点火遅角制御実行条件が成立していると判定されれば、ステップ208に進み、始動後経過時間が所定時間kt3以内であるか否かを判定し、所定時間kt3以内であれば、ステップ209に進み、吸気管圧力センサ18で検出した吸気管負圧Pmが適正なブレーキブースタ負圧を確保できる所定値kpm3以下であるか否かを判定する。このステップ209で、吸気管負圧Pmが所定値kpm3以下と判定されれば、ステップ210に進み、今回の吸気管負圧Pmと所定値kpm3との差分ΔPmを前回までの差分ΔPmの積算値ΣΔPmに加算し、差分ΔPmの積算値ΣΔPmを更新する。
この後、ステップ211に進み、現在の点火時期が目標点火時期(ベース値)より進角している(点火時期>目標点火時期)か否かを判定し、現在の点火時期が目標点火時期より進角していれば、ステップ212に進み、点火時期を所定量kdel1だけ遅角させる。これにより、点火時期が目標点火時期に到達するまで、本プログラムの実行周期で点火時期を所定量kdel1ずつ遅角させていく。
そして、点火時期が目標点火時期に到達した後は、ステップ211で「No」と判定されて、ステップ205に進み、点火時期を前回の点火時期(この場合は目標点火時期)に維持する。
その後、始動後経過時間が所定時間kt3に達した時点で、ステップ208で「No」と判定されて、図10のステップ213に進み、吸気管負圧Pmと所定値kpm3との差分ΔPmの積算値ΣΔPmが所定値以下であるか否かを判定する。このステップ213で、積算値ΣΔPmが所定値以下と判定されれば、ステップ214に進み、目標点火時期が進角補正済みであるか否かを判定し、まだ、進角補正されていなければ、ステップ215に進み、目標点火時期を所定の進角補正量だけ進角補正する(目標点火時期=ベース値+進角補正量)。この進角補正量は、演算処理の簡略化のために固定値としても良いが、積算値ΣΔPmに応じてマップ又は数式により変化させるようにしても良い。
尚、前回までの本プログラムの実行時に、ステップ215で目標点火時期が進角補正されていれば、今回の本プログラムの実行時には、ステップ214で、「Yes」と判定され、目標点火時期の進角補正(ステップ215)の処理は行われない。
この後、ステップ216に進み、現在の点火時期が進角補正後の目標点火時期より遅角している(点火時期<目標点火時期)か否かを判定し、現在の点火時期が目標点火時期より遅角していれば、ステップ217に進み、点火時期を所定量kdel2だけ進角させる。これにより、点火時期が進角補正後の目標点火時期に到達するまで、本プログラムの実行周期で点火時期を所定量kdel2ずつ進角させていく。
そして、点火時期が進角補正後の目標点火時期に到達した後は、ステップ216で「No」と判定されて、ステップ218に進み、点火時期を前回の点火時期(この場合は進角補正後の目標点火時期)に維持する。
尚、ステップ213で、吸気管負圧Pmと所定値kpm3との差分ΔPmの積算値ΣΔPmが所定値よりも大きいと判定された場合は、適正なブレーキブースタ負圧が確保されていると判断して、目標点火時期を進角補正せず、前述したステップ211以降の処理を実行し、点火時期を目標点火時期(ベース値)に制御する。
以上説明した本実施形態(5)では、吸気管負圧Pmと所定値kpm3との差分ΔPmの積算値ΣΔPmが小さい時は、ブレーキブースタ負圧の確保が不十分であると判断して、点火時期を進角補正するようにしたので、吸気管負圧Pmを速やかに低下させて適正なブレーキブースタ負圧を確実に確保することができる。
尚、吸気管負圧Pmと所定値kpm3との差分ΔPmの積算値ΣΔPmが大きい時は、ブレーキブースタ負圧が十分に確保されていると判断して、燃焼性を悪化させない範囲で点火時期を遅角補正するようにしても良い。このようにすれば、点火時期の遅角による触媒早期暖機効果を高めることができ、触媒暖機時間を短くすることができる。
また、吸気管負圧Pmと所定値kpm3との差分ΔPmの積算値ΣΔPmの代わりに、吸気管負圧Pmと所定値kpm3との差分ΔPmの最大値を検出して、この差分ΔPmの最大値に基づいて点火時期の遅角量(目標点火時期)を設定するようにしても良い。
また、吸気管負圧Pmと所定値kpm3との差分ΔPmの積算値ΣΔPmの代わりに、ブレーキブースタ負圧(検出値又は推定値)と所定値との差分の積算値を用いるようにしても良い。また、積算値に応じて遅角速度を変化させるようにしても良い。
[実施形態(6)]
図12乃至図14に示す実施形態(6)では、吸気管圧力センサ18で検出した吸気管負圧Pmと所定値kpm3との差分ΔPmの積算値ΣΔPmを算出し、所定の判定タイミング(t1,t2,t3)毎に、それまでの積算値ΣΔPmを所定値と比較し、ΣΔPm≧所定値の場合は、ブレーキブースタ負圧が十分に確保されていると判断して、目標点火時期を遅角補正し、ΣΔPm<所定値の場合は、ブレーキブースタ負圧の確保が不十分であると判断して、目標点火時期を進角補正する。ここで、判定タイミング(t1,t2,t3)は、例えば、吸気管負圧Pmが所定値kpm3を横切るタイミングとしたり、或は、所定時間毎としても良い。
図14の例では、1回目の判定タイミングt1で、ΣΔPm1を所定値と比較し、2回目の判定タイミングt2で、ΣΔPm1+ΣΔPm2を所定値と比較し、3回目の判定タイミングt3で、ΣΔPm1+ΣΔPm2+ΣΔPm3を所定値と比較する。その結果、1回目の判定タイミングt1で、目標点火時期を進角補正し、2回目の判定タイミングt2で、目標点火時期を遅角補正し、3回目の判定タイミングt3で、目標点火時期を進角補正する。
以上説明した本実施形態(6)の点火時期制御は、図12及び図13の点火時期制御プログラムによって実行される。本プログラムは、所定時間毎又は所定クランク角毎に繰り返し実行され、まずステップ301で、イグニッションスイッチ(図示せず)のオン直後か否かを判定し、オン直後であれば、ステップ302に進み、点火時期を初期値にセットし、次のステップ303で、目標点火時期をベース値に設定する。そして、次のステップ304で、始動が完了したか否かを判定し、始動完了前であれば、ステップ305に進み、点火時期を前回の点火時期(この場合は初期値)に維持する。
その後、始動が完了した時点で、ステップ304からステップ306に進み、前記図2のステップ104と同様の方法で、触媒早期暖機のための点火遅角制御の実行条件が成立しているか否かを判定し、点火遅角制御実行条件が成立していなければ、ステップ307に進み、通常の点火時期制御を行う。
これに対し、ステップ306で、点火遅角制御の実行条件が成立していると判定されれば、図13のステップ308に進み、始動から吸気管負圧Pmが所定値kpm3以下に低下したか否かを判定する。そして、始動から吸気管負圧Pmが所定値kpm3以下に低下するまでの期間は、点火時期を目標点火時期(ベース値)に向かって遅角させていく(ステップ317、319、321)。
そして、始動から吸気管負圧Pmが所定値kpm3以下に低下した後は、ステップ308からステップ309に進み、吸気管負圧Pmと所定値kpm3との差分ΔPmの積算値ΣΔPmを算出する。この後、ステップ310に進み、判定タイミングであるか否かを判定し、判定タイミングであれば、ステップ311に進み、吸気管負圧Pmと所定値kpm3との差分ΔPmの積算値ΣΔPmが所定値以上であるか否かを判定する。その結果、積算値ΣΔPmが所定値以上と判定されれば、ブレーキブースタ負圧が十分に確保されていると判断して、ステップ313に進み、目標点火時期を所定の遅角補正量だけ遅角補正する。この遅角補正量は、演算処理の簡略化のために固定値としても良いが、積算値ΣΔPmに応じてマップ又は数式により変化させるようにしても良い。
この後、ステップ315に進み、遅角フラグを目標点火時期の遅角補正済みを意味する「1」にセットして、点火時期を所定量kdel1だけ遅角させる(ステップ317、319)。
目標点火時期の遅角補正後は、次の判定タイミングになるまで、前記ステップ310で、「No」と判定されて、ステップ312に進み、遅角フラグが目標点火時期の遅角補正済みを意味する「1」であるか否かを判定し、遅角フラグ=1(遅角補正済み)であれば、ステップ317に進み、現在の点火時期が遅角補正後の目標点火時期より進角している(点火時期>目標点火時期)か否かを判定し、現在の点火時期が遅角補正後の目標点火時期より進角していれば、ステップ319に進み、点火時期を所定量kdel1だけ遅角させる。これにより、点火時期が遅角補正後の目標点火時期に到達するまで、本プログラムの実行周期で点火時期を所定量kdel1ずつ遅角させていく。
そして、点火時期が遅角補正後の目標点火時期に到達した後は、ステップ317で「No」と判定されて、ステップ321に進み、点火時期を前回の点火時期(この場合は遅角補正後の目標点火時期)に維持する。
また、前記ステップ311で、吸気管負圧Pmと所定値kpm3との差分ΔPmの積算値ΣΔPmが所定値よりも小さいと判定された場合は、ブレーキブースタ負圧の確保が不十分であると判断して、ステップ314に進み、目標点火時期を所定の進角補正量だけ進角補正する。この進角補正量は、演算処理の簡略化のために固定値としても良いが、積算値ΣΔPmに応じてマップ又は数式により変化させるようにしても良い。
この後、ステップ316に進み、遅角フラグを目標点火時期の進角補正済みを意味する「0」にセットして、点火時期を所定量kdel2だけ進角させる(ステップ318、320)。
目標点火時期の進角補正後は、次の判定タイミングになるまで、前記ステップ310で「No」と判定され、且つ、前記ステップ312で「No」と判定されて、ステップ318に進み、現在の点火時期が進角補正後の目標点火時期より遅角している(点火時期<目標点火時期)か否かを判定し、現在の点火時期が進角補正後の目標点火時期より遅角していれば、ステップ320に進み、点火時期を所定量kdel2だけ進角させる。これにより、点火時期が進角補正後の目標点火時期に到達するまで、本プログラムの実行周期で点火時期を所定量kdel2ずつ進角させていく。
そして、点火時期が進角補正後の目標点火時期に到達した後は、ステップ318で「No」と判定されて、ステップ321に進み、点火時期を前回の点火時期(この場合は進角補正後の目標点火時期)に維持する。
以上説明した本実施形態(6)では、吸気管負圧Pmと所定値kpm3との差分ΔPmの積算値ΣΔPmが所定値より小さい時は、ブレーキブースタ負圧の確保が不十分であると判断して、点火時期を進角補正して吸気管負圧Pmを低下させ、積算値ΣΔPmが所定値以上である時は、ブレーキブースタ負圧が十分に確保されていると判断して、点火時期を遅角補正して排気温度を上昇させるようにしたので、ブレーキブースタ負圧を確保しつつ、触媒暖機時間を短くすることができる。
尚、吸気管負圧Pmと所定値kpm3との差分ΔPmの積算値ΣΔPmの代わりに、ブレーキブースタ負圧(検出値又は推定値)と所定値との差分の積算値を用いるようにしても良い。また、積算値に応じて遅角速度を変化させるようにしても良い。
[実施形態(7)]
図15乃至図17に示す実施形態(7)では、所定の判定タイミング(t1,t2,t3,t4)毎に、吸気管圧力センサ18で検出した吸気管負圧Pmと所定値kpm3との差分ΔPm(=kpm3−Pm)を検出し、その差分ΔPmに応じて図17のマップから目標点火時期の補正量を算出し、その補正量によって前回の目標点火時期を補正する。ここで、判定タイミング(t1,t2,t3,t4)は、例えば、所定時間毎としたり、ブレーキスイッチ29のオン/オフの切り替わりから所定時間後としたり、|ΔPm|が所定値以上になった時としても良い。
また、図17の目標点火時期補正マップの特性は、ΔPmがマイナス値の範囲では、ブレーキブースタ負圧が十分に確保されていないと判断して、|ΔPm|が大きくなるほど、目標点火時期の進角側への補正量を大きくして、吸気管負圧Pmを低下させる。ΔPmがプラス値で、所定値以下の範囲では、適正なブレーキブースタ負圧が確保されていると判断して、目標点火時期は補正しない。また、ΔPmがプラス値で、所定値より大きい範囲では、吸気管負圧Pm(ブレーキブースタ負圧)が下がり過ぎて、吸気管負圧Pmが少し上昇しても、まだ適正なブレーキブースタ負圧を確保できると判断して、ΔPmが大きくなるほど、目標点火時期の遅角側への補正量を大きくして、触媒暖機効果を高める。
以上説明した点火時期制御は、図12及び図15の点火時期制御プログラムによって実行される。前記実施形態(6)で用いた図12のプログラムのステップ301〜307の処理は、本実施形態(7)でも同様に用いられる。
本実施形態(7)では、触媒早期暖機のための点火遅角制御の実行条件が成立すると、ステップ331に進み、判定タイミングであるか否かを判定し、判定タイミングであれば、ステップ332に進み、吸気管圧力センサ18で検出した吸気管負圧Pmと所定値kpm3との差分ΔPm(=kpm3−Pm)を算出する。この後、ステップ333に進み、図17の目標点火時期補正マップを検索して、差分ΔPmに応じた目標点火時期の補正量を算出し、次のステップ334で、その補正量によって前回の目標点火時期を補正する(目標点火時期=前回目標点火時期+補正量)。
この後、ステップ335に進み、現在の点火時期が目標点火時期より進角している(点火時期>目標点火時期)か否かを判定し、現在の点火時期が目標点火時期より進角していれば、ステップ336に進み、点火時期を所定量kdel3だけ遅角させる。これにより、点火時期が目標点火時期に到達するまで、本プログラムの実行周期で点火時期を所定量kdel3ずつ遅角させていく。
一方、ステップ335で、点火時期>目標点火時期ではないと判定された場合は、ステップ337に進み、現在の点火時期が目標点火時期に一致しているか否かを判定し、現在の点火時期が目標点火時期に一致していれば、ステップ338に進み、点火時期を前回の点火時期(目標点火時期)に維持する。
これに対し、ステップ335、337でいずれも「No」と判定された場合、つまり現在の点火時期が目標点火時期より遅角している(点火時期<目標点火時期)と判定された場合は、点火時期を所定量kdel4だけ進角させる。これにより、点火時期が目標点火時期に到達するまで、本プログラムの実行周期で点火時期を所定量kdel4ずつ進角させていく。
以上説明した本実施形態(7)では、吸気管負圧Pmと所定値kpm3との差分ΔPmに応じて目標点火時期を補正するようにしたので、適正なブレーキブースタ負圧を確保できる範囲内で目標点火時期を進角補正することができて、ブレーキブースタ負圧を確保しつつ、触媒暖機時間を短くすることができる。
尚、吸気管負圧Pmと所定値kpm3との差分ΔPmの代わりに、ブレーキブースタ負圧(検出値又は推定値)と所定値との差分を用いるようにしても良い。また、差分に応じて遅角速度を変化させるようにしても良い。
或は、吸気管負圧Pm(又はブレーキブースタ負圧)に応じて目標点火時期の補正量を算出し、その補正量によって前回の目標点火時期を補正するようにしても良い。
[実施形態(8)]
図18及び図19に示す実施形態(8)では、所定の判定タイミング(t1,t2,t3)毎に、吸気管圧力センサ18で検出した吸気管負圧Pmと所定値kpm3との差分ΔPm(=kpm3−Pm)を検出し、最初は、図19のマップAを用いて差分ΔPmに応じて目標点火時期の補正量を算出する。そして、始動から、マップAを用いて目標点火時期を補正する処理を所定回数繰り返しても、まだ吸気管負圧Pmが所定値kpm3以下に低下しない場合は、マップBに切り換えて、差分ΔPmに応じて目標点火時期の補正量を算出する。このマップBは、マップAよりも補正量が多くなるように設定されている。その他の事項は、前記実施形態(7)と同じである。
以上説明した本実施形態(8)では、始動から、マップAを用いて目標点火時期を補正する処理を所定回数繰り返しても、まだ吸気管負圧Pmが所定値kpm3以下に低下しない場合は、マップBに切り換えて、目標点火時期の進角補正量を大きくするようにしたので、何等かの原因で吸気管負圧Pm(ブレーキブースタ負圧)が適正値まで低下しにくい状態になっている場合でも、マップBへの切り換えにより、吸気管負圧Pm(ブレーキブースタ負圧)を適正値まで速やかに低下させることができる。
尚、図19のマップBの代わりに、マップAの補正量に増加係数(>1)を乗算したり、或は、マップAの補正量に所定量を加算するようにしても良い。
[実施形態(9)]
図20乃至図22に示す実施形態(9)では、吸気管圧力センサ18で検出した吸気管負圧Pmに応じて、図22のマップにより点火時期の制御範囲の遅角側ガード値を算出する。図22のマップの特性は、吸気管負圧Pmが大気圧に近くなるほど、遅角側ガード値を進角側に変化させるように設定されている。これにより、吸気管負圧Pm(ブレーキブースタ負圧)が不足するほど、遅角側ガード値を進角側に変化させて点火時期を進角側に設定し、吸気管負圧Pm(ブレーキブースタ負圧)を低下させる。反対に、吸気管負圧Pm(ブレーキブースタ負圧)が下がり過ぎて、吸気管負圧Pmが少し上昇しても、まだ適正なブレーキブースタ負圧を確保できる場合は、遅角側ガード値を遅角側に変化させて点火時期を遅角側に設定し、触媒暖機効果を高める。
以上説明した本実施形態(9)の点火時期制御は、図20の点火時期制御プログラムによって実行される。本プログラムは、所定時間毎又は所定クランク角毎に繰り返し実行される。ステップ101〜104、108、109の処理は、前記実施形態(1)で実行する図2のプログラムのステップ101〜104、108、109と同じである。
始動後、ステップ104で、触媒早期暖機のための点火遅角制御の実行条件が成立していると判定された場合は、ステップ106に進み、現在の点火時期が目標点火時期より進角している(点火時期>目標点火時期)か否かを判定し、現在の点火時期が目標点火時期より進角していれば、ステップ107に進み、点火時期を所定量kdelだけ遅角させる。
この後、ステップ111に進み、吸気管圧力センサ18で検出した吸気管負圧Pmに基づいて図22のマップにより遅角側ガード値を算出する。そして、次のステップ112で、ステップ107で遅角補正した点火時期が遅角側ガード値より遅角している(点火時期<遅角側ガード値)か否かを判定し、点火時期が遅角側ガード値より遅角していれば、ステップ113に進み、点火時期を遅角側ガード値に設定する。これに対し、ステップ107で遅角補正した点火時期が遅角側ガード値より遅角していなければ、その点火時期をそのまま用いる。
以上説明した本実施形態(9)では、吸気管負圧Pmに応じて遅角側ガード値を算出するようにしたので、吸気管負圧Pm(ブレーキブースタ負圧)に応じて点火時期の遅角量を望ましい値にガード処理することができ、ブレーキブースタ負圧の早期確保と始動時の排気エミッション低減とを両立させることができる。
尚、吸気管負圧Pmの代わりに、ブレーキブースタ負圧(検出値又は推定値)に基づいて遅角側ガード値を算出するようにしても良い。また、図21に示すように、エアコン等の補機類の負荷が増大した時に、吸気管負圧Pmが上昇する点に着目して、エアコン等の補機類の負荷(エンジン負荷)に応じて遅角側ガード値を算出するようにしても良い。
[実施形態(10)]
図23及び図24に示す実施形態(10)では、始動から所定時間が経過するまでは、触媒早期暖機のための通常の点火遅角制御を実行し、始動から所定時間経過後は、エンジン運転状態がアイドル状態であれば、吸気管負圧Pmが上限ガード値と下限ガード値との範囲に収まるように、点火時期を遅角又は進角させる。ここで、上限ガード値と下限ガード値は、適正なブレーキブースタ負圧を確保できる吸気管負圧Pmの範囲の上限値と下限値に相当し、予めシミュレーション又は実験により設定される。また、始動から所定時間が経過するまでに実施する点火遅角制御は、従来の点火遅角制御又は前記各実施形態の点火遅角制御のいずれを用いても良い。
本実施形態(10)の点火時期制御は、図23の点火時期制御プログラムによって実行される。本プログラムは、所定時間毎又は所定クランク角毎に繰り返し実行される。本プログラムが起動されると、まずステップ401で、始動から所定時間経過したか否かを判定し、始動から所定時間経過していなければ、ステップ402に進み、触媒早期暖機のための通常の点火遅角制御を実行する。
その後、始動から所定時間経過した時点で、ステップ403に進み、エンジン運転状態がアイドル状態であるか否かを判定し、アイドル状態でなければ、ステップ402に進み、通常の点火遅角制御を実行する。但し、点火遅角制御実行条件が不成立の場合は点火遅角制御は実施されない。
一方、始動から所定時間経過後に、エンジン運転状態がアイドル状態であれば、ステップ404に進み、吸気管圧力センサ18で検出した吸気管負圧Pmが上限ガード値より低いか否かを判定し、吸気管負圧Pmが上限ガード値以上であれば、吸気管負圧Pm(ブレーキブースタ負圧)の低下が不十分であると判断して、ステップ407に進み、点火時期を所定量kdel6だけ進角させる。これにより、吸気管負圧Pmが上限ガード値より低くなるまで、本プログラムの実行周期で点火時期を所定量kdel6ずつ進角させていく。
これに対し、上記ステップ404で、吸気管負圧Pmが上限ガード値より低いと判定された場合は、ステップ405に進み、吸気管負圧Pmが下限ガード値より低いか否かを判定し、吸気管負圧Pmが下限ガード値より低ければ、吸気管負圧Pm(ブレーキブースタ負圧)が下がり過ぎていると判断して、ステップ406に進み、点火時期を所定量kdel5だけ遅角させる。これにより、吸気管負圧Pmが下限ガード値以上になるまで、本プログラムの実行周期で点火時期を所定量kdel5ずつ遅角させていく。また、吸気管負圧Pmが上限ガード値と下限ガード値との範囲内であれば、ステップ408に進み、点火時期を前回の点火時期に維持する。
以上説明した本実施形態(10)では、始動から所定時間経過後は、エンジン運転状態がアイドル状態であれば、吸気管負圧Pmが上限ガード値と下限ガード値との範囲に収まるように、点火時期を遅角又は進角させるようにしたので、ブレーキブースタ負圧を確保できる範囲内で、点火時期の遅角量を小さくすることができ、ブレーキブースタ負圧を確保しながら、触媒暖機時間を短くすることができる。
尚、吸気管負圧Pmの代わりに、ブレーキブースタ負圧(検出値又は推定値)を用いて、ブレーキブースタ負圧が上限ガード値と下限ガード値との範囲に収まるように、点火時期を遅角又は進角させるようにしても良い。以上説明した各実施形態(19〜(10)は、筒内噴射エンジンに限らず、吸気ポート噴射エンジンにも適用して実施できる。