以下、画像形成装置としてプリンタを例にとり、本発明を図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明が適用されるプリンタの主要構成を示す模式図である。
プリンタ1は、パソコンやワープロ等のホストコンピュータに接続され、それらのホストコンピュータから出力される信号(制御コマンド及び画像データ等)に応じて被記録媒体である転写紙上に画像を形成する。
プリンタ1は、ホストコンピュータからの信号を受けるメインコントローラ基板38と、ホストコンピュータからの信号をメインコントローラ基板38を介して受けるエンジン制御基板36と、被記録媒体である転写紙を収納する給紙カセット24と、転写紙を後述するドラムユニット15に供給する給紙ユニット28と、ホストコンピュータからの画像データに関する信号をメインコントローラ基板38を介して入力する光学ユニット12と、光学ユニット12に入力された画像データに応じた静電潜像を形成して転写紙に転写するドラムユニット15と、その静電潜像をトナーパウダーを用いて現像する現像ユニット20と、トナーパウダーを転写紙に定着させる定着ユニット30とから概略構成される。
更に、ドラムユニット15は、メインチャージャ11と、図中時計方法に回転する感光体ドラム14と、感光体ドラム14の表面に残留するトナーパウダーを除去するクリーニング装置13と、転写ローラー22とを有する。また、現像ユニット20は、現像ローラー16及びトナーコンテナ18を有する。更にまた、定着ユニット30は、ヒートローラー32と、プレスローラー34と、サーミスタ等から成る温度検出センサー35とを有する。尚、図中の破線は転写紙が搬送される経路を示している。
次に、上記のように構成されたプリンタ1が転写紙上に画像を形成する動作、即ち画像形成動作について説明する。感光体ドラム14が図中時計方法に回転をし、メインチャージャ11により帯電させられた後、光学ユニット12によって感光走査されて感光体ドラム14の表面に原稿画像の静電潜像が形成される。そして、さらに回転をすることで、その静電潜像はトナーコンテナ18より供給されるトナーパウダーを用いて現像ローラー16により現像される。
感光体ドラム14はさらに回転し、感光体ドラム14と転写ローラー22の間を通る転写紙に、その現像したトナー画像が転写される。その後、転写紙は感光体ドラム14と転写ローラー22の間を通過して定着ユニット30に搬送される。ここで、転写紙は給紙ユニット28に備えられた給紙ローラー26により取り出されて、感光体ドラム14と転写ローラー22の間に搬送されるようになっている。あるいは、転写紙は、プリンタ1の側部開口部に設けられた手差しトレイ(不図示)から給紙されて、感光体ドラム14と転写ローラー22の間に搬送されるようになっている。
定着ユニット30に搬送された転写紙は、ヒーター31を内蔵したヒートローラー32とプレスローラー34の間を通過する。この時、上記転写されたトナー画像を形成しているトナーパウダーが転写紙に定着するようになっており、定着後、転写紙は定着ユニット30から排出される。
ここで、ヒートローラ32の表面温度は、その表面温度を検知する温度検出センサー35の出力信号に基づいてエンジン制御基板36がヒーター31の作動を制御することにより、予め定めた温度で安定化されるようになっている。この予め定めた温度とは、印字可能温度、即ちトナーパウダーを転写紙に定着させるのに適した温度であり、具体的に言えば、例えば165℃近辺の温度であるが、必ずしも単一の温度である必要はなく、例えば160℃〜170℃等の幅を持たせた温度であってもよい。
尚、転写紙の排出方式としては、印字面を上にしてそのまま転写紙を排出するフェイスアップ方式と、印字面を下にして(即ち、転写紙を裏返しにして)排出するフェイスダウン方式があり、いずれか一方の排出方法を自由に選択することができる。
また、光学ユニット12、ドラムユニット15、現像ユニット20、給紙ユニット28及び定着ユニット30は、エンジン制御基板36からの制御信号によって制御されて上述した画像形成動作を行うようになっており、このエンジン制御基板36は、メインコントローラ基板38を介してホストコンピュータからの信号を受けて制御動作を行う。
次に、図2を参照してエンジン制御基板36及びメインコントローラ基板38に関する説明を行う。図2は、図1におけるプリンタ1の電気的構成を示すブロック図であり、図1と同一の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
エンジン制御基板36には、上述した画像形成動作を実行するための制御動作に用いるMPU(Micro Processing Unit)41と制御ロジックゲートアレイ42とともに、記憶内容を書き換え可能なフラッシュROM40が設けられている。このフラッシュROM40は、プリンタ1全体への電源の供給が途絶えても、記憶内容が消滅せず且つ再び該電源の供給を行うと使用可能になる不揮発性メモリとなっている。
エンジン制御基板36から、光学ユニット12、ドラムユニット15、現像ユニット20、給紙ユニット28及び定着ユニット30に対して制御信号が与えられており、またエンジン制御基板36は定着ユニット30からヒートローラー32の表面温度に関する信号を受けて、後述するように「ヒーター31の良否判定」、即ちヒーター31に断線等の異常の発生がないか否かの判定を行うようになっている。また、MPU41は、制御ロジックゲートアレイ42との間で信号を双方向に伝達しあうとともに、フラッシュROM40に記憶されている内容の読み書きを行う。
メインコントローラ基板38には、液晶パネル等が設けられた表示部(不図示)とユーザーがキー入力を行うための操作入力部(不図示)とからなるフロントパネル51と制御ロジックゲートアレイ52が備えられており、ユーザーがフロントパネル51を操作することで入力された信号が、この制御ロジックゲートアレイ52に伝達されるとともに、フロントパネル51の表示部に表示される内容に関するデータが制御ロジックゲートアレイ52からフロントパネル51に伝達される。また、エンジン制御基板36とメインコントローラ基板38との間で制御信号が双方向に伝達されるとともに、画像データに関する信号がメインコントローラ基板38と光学ユニット12の間で双方向に伝達される。
次に、図3を参照してプリンタ1のヒートローラー32の表面温度を印字可能温度に安定化させる動作について説明する。図3は、プリンタ1の電源投入開始後におけるヒートローラー32の表面温度の変化を示す概略図であり、横軸は時間、縦軸は温度、実線で表された曲線60はヒートローラー32の表面温度を表す。
プリンタ1が十分長い時間(例えば3時間以上)、電源投入がなされていないとすると、ヒートローラー32の表面温度は、プリンタ1の設置されている周囲温度と略同じ(例えば23℃)となっている。今、時刻t0でプリンタ1全体に対する電源投入が開始されると、プリンタ1は、画像形成を可能とするべく、ヒートローラー32の表面温度が予め定められた温度、即ち印字可能温度(例えば165℃近辺)になるようにヒートローラー32に内蔵されたヒーター31を作動(ON)する。
時刻t1で、ヒートローラー32の表面温度が印字可能温度に到達すると、エンジン制御基板36はヒーター31の作動を停止(OFF)させるが、ヒーター31の余熱及びヒーター31とヒートローラー32表面間との熱伝導の時間等の影響があるため、ヒートローラー32の表面温度は暫く上昇した後、下降を始める。以下、プリンタ1の電源投入開始時刻である時刻t0から時刻t1までの時間を「時間A」という。
尚、上述したように、ヒーター31の作動停止後もヒートローラー32の表面温度が暫く上昇することを見込んで、該表面温度が印字可能温度になる以前(時刻t1以前)に、ヒーター31を停止させるようにしてもよい。これにより、より速く該表面温度を印字可能温度に安定化させることができる。
時刻t2で、ヒートローラー32の表面温度が下降して再び印字可能温度に到達すると、エンジン制御基板36はヒーター31の作動を再開させるが、ヒーター31の余熱及びヒーター31とヒートローラー32表面間との熱伝導の時間等の影響があるため、ヒートローラー32の表面温度は、暫く下降した後、上昇を始め、時刻t3で印字可能温度に達する。以下、時刻t1から時刻t2までの時間を「時間B」、時刻t2から時刻t3までの時間を「時間C」という。
尚、上述したように、ヒーター31の作動再開後もヒートローラー32の表面温度が暫く下降することを見込んで、該表面温度が印字可能温度になる以前(時刻t2以前)に、ヒーター31を作動を再開させるようにしてもよい。これにより、より速く該表面温度を印字可能温度に安定化させることができる。
以後、時刻t3、t4、t5・・・で、それぞれヒーター31を停止、作動、停止・・・するように制御することで、ヒートローラー32の表面温度は曲線60で示されるように印字可能温度を中心に振動しながら安定する。尚、時刻t0と時刻t1の間の時間、時刻t1と時刻t2の間の時間、時刻t2と時刻t3の間の時間は、ヒーターが発生する単位時間当たりの熱量やヒーターの制御方法等によって異なるが、プリンタ1が設置されている周囲温度が23℃程度であれば、それぞれ30秒、5秒、1秒程度である。また、印字可能温度を中心としたヒートローラー32の表面温度の振動の幅は、徐々に小さくなってゆき、最終的には一定の幅で安定する。
次に、図4を参照してプリンタ1のフラッシュROM40の記憶内容について詳細に説明する。図4は、プリンタ1に備えられたフラッシュROM40の記憶内容の一部を示した模式図である。フラッシュROM40は、INITフラグ、限界値1、限界値2、限界値3、基準値1、基準値2、基準値3を記憶しており、これらは全てヒーター31の良否判定を行う際に用いられる。
INITフラグは、後述するプリンタ1の動作説明で示されるように、プリンタ1がユーザーの下で初めて電源を投入(以下、「初回電源投入」と言う)されたか否かを示すフラグであり、初期値はセット(ON)となっている。即ち、プリンタ1が製造されてプリンタ1のユーザー(プリンタ1の使用者)へ出荷される時には、INITフラグはセットとなっている。
以下、限界値1、限界値2及び限界値3について詳しく説明する。プリンタ1は、プリンタ1の使用可能周囲温度(例えば、0℃〜40℃)及び使用可能電源電圧(例えば、商用交流電圧AC85V〜AC264V)の範囲内において使用されることとなるが、プリンタ1の設置周囲温度が使用可能周囲温度範囲内で最も低温(例えば0℃)で、且つ投入する商用交流電圧が使用可能電源電圧範囲内で最も低電圧(例えばAC85V)で動作する場合が、ヒートローラー32の表面温度の昇温に最も適さないため、「時間A」は最も長くなる。これは、周囲温度が低温であればあるほどヒートローラー32の表面温度の熱が奪われやすく、投入する商用交流電圧が低電圧であればあるほどヒーター31作動による温度の立ち上がりが鈍くなるためである。
そして、限界値1は、「時間A」が最も長くなる環境で動作する場合、即ちプリンタ1の設置周囲温度が使用可能周囲温度範囲内で最も低温(例えば0℃)で、且つ投入する商用交流電圧が使用可能電源電圧範囲内で最も低電圧(例えばAC85V)で動作する場合において、ヒーター31が正常であるならば必要となる「時間A」の最大値が記憶されている。逆に言えば、プリンタ1の電源投入後、限界値1に相当する時間が経過してもヒートローラー32の表面温度が印字可能温度に達しない場合は、ヒーター31には必ず異常が発生していることを意味し、後述するヒーター31の良否判定においてもヒーター31に異常が発生していると判定する。
実際には、この限界値1は、プリンタ1の設置周囲温度が使用可能周囲温度範囲内で最も低温(例えば0℃)で、且つ投入する商用交流電圧が使用可能電源電圧範囲内で最も低電圧(例えばAC85V)で動作する場合において、ヒーター31が正常であるならば必要となる「時間A」の実測値に、「余裕(マージン)を見た値1」を加えた値となっている。この「余裕を見た値1」を加えるのは、ヒーター31の単位時間当たりに発生する熱量等の特性の個体差間ばらつきや、その他様々な要因が「時間A」の実測値に影響を与えるため、後述するヒーター31の良否判定の際、ヒーター31が正常であるのに拘らず異常と判断されることがないようにするためである。
この「余裕を見た値1」は、プリンタ1の設置周囲温度が使用可能周囲温度範囲内で最も低温(例えば0℃)で、且つ投入する商用交流電圧が使用可能電源電圧範囲内で最も低電圧(例えばAC85V)で動作する場合における「時間A」の実測値や、ヒーター31の特性の個体差間ばらつき等を考慮して決定される。
「時間B」については、「時間A」と異なり、プリンタ1の設置周囲温度が使用可能周囲温度範囲内で最も高温(例えば40℃)で、且つ投入する商用交流電圧が使用可能電源電圧範囲内で最も高電圧(例えばAC264V)で動作する場合が、ヒートローラー32の表面温度の降温に最も適さないため、最も長くなる。これは、周囲温度が高温であればあるほどヒートローラー32の表面温度の熱が奪われにくく、投入する商用交流電圧が高電圧であればあるほどヒーター31作動停止による温度の立ち下がりが鈍くなるためである。
そして、限界値2は、「時間B」が最も長くなる環境で動作する場合、即ちプリンタ1の設置周囲温度が使用可能周囲温度範囲内で最も高温(例えば40℃)で、且つ投入する商用交流電圧が使用可能電源電圧範囲内で最も高電圧(例えばAC264V)で動作する場合において、ヒーター31が正常であるならば必要となる「時間B」の最大値が記憶されている。逆に言えば、図3における時刻t1から、限界値2に相当する時間が経過してもヒートローラー32の表面温度が印字可能温度に達しない場合は、ヒーター31には必ず異常が発生していることを意味し、後述するヒーター31の良否判定においてもヒーター31に異常が発生していると判定する。
実際には、この限界値2は、プリンタ1の設置周囲温度が使用可能周囲温度範囲内で最も高温(例えば40℃)で、且つ投入する商用交流電圧が使用可能電源電圧範囲内で最も高電圧(例えばAC264V)で動作する場合において、ヒーター31が正常であるならば必要となる「時間B」の実測値に、「余裕(マージン)を見た値2」を加えた値となっている。この「余裕を見た値2」を加えるのは、ヒーター31の単位時間当たりに発生する熱量等の特性の個体差間ばらつきや、その他様々な要因が「時間B」の実測値に影響を与えるため、後述するヒーター31の良否判定の際、ヒーター31が正常であるのに拘らず異常と判断されることがないようにするためである。
この「余裕を見た値2」は、プリンタ1の設置周囲温度が使用可能周囲温度範囲内で最も高温(例えば40℃)で、且つ投入する商用交流電圧が使用可能電源電圧範囲内で最も高電圧(例えばAC264V)で動作する場合における「時間B」の実測値や、ヒーター31の特性の個体差間ばらつき等を考慮して決定される。
「時間C」については、「時間A」と同様に、プリンタ1の設置周囲温度が使用可能周囲温度範囲内で最も低温(例えば0℃)で、且つ投入する商用交流電圧が使用可能電源電圧範囲内で最も低電圧(例えばAC85V)で動作する場合が、ヒートローラー32の表面温度の昇温に最も適さないため、最も長くなる。
そして、限界値3は、「時間C」が最も長くなる環境で動作する場合、即ちプリンタ1の設置周囲温度が使用可能周囲温度範囲内で最も低温(例えば0℃)で、且つ投入する商用交流電圧が使用可能電源電圧範囲内で最も低電圧(例えばAC85V)で動作する場合において、ヒーター31が正常であるならば必要となる「時間C」の最大値が記憶されている。逆に言えば、図3における時刻t2から、限界値3に相当する時間が経過してもヒートローラー32の表面温度が印字可能温度に達しない場合は、ヒーター31には必ず異常が発生していることを意味し、後述するヒーター31の良否判定においてもヒーター31に異常が発生していると判定する。
実際には、この限界値3は、プリンタ1の設置周囲温度が使用可能周囲温度範囲内で最も低温(例えば0℃)で、且つ投入する商用交流電圧が使用可能電源電圧範囲内で最も低電圧(例えばAC85V)で動作する場合において、ヒーター31が正常であるならば必要となる「時間C」の実測値に、「余裕(マージン)を見た値3」を加えた値となっている。この「余裕を見た値3」を加えるのは、ヒーター31の単位時間当たりに発生する熱量等の特性の個体差間ばらつきや、その他様々な要因が「時間C」の実測値に影響を与えるため、後述するヒーター31の良否判定の際、ヒーター31が正常であるのに拘らず異常と判断されることがないようにするためである。
この「余裕を見た値3」は、プリンタ1の設置周囲温度が使用可能周囲温度範囲内で最も低温(例えば0℃)で、且つ投入する商用交流電圧が使用可能電源電圧範囲内で最も低電圧(例えばAC85V)で動作する場合における「時間C」の実測値や、ヒーター31の特性の個体差間ばらつき等を考慮して決定される。
具体的に一例を挙げれば、電源投入前のヒートローラー32の表面温度及びプリンタ1の設置周囲温度が23℃、投入される商用交流電圧がAC100Vである場合において、平均的な「時間A」、「時間B」、「時間C」の実測値がそれぞれ30秒、5秒、1秒だとすると、限界値1、限界値2、限界値3は、それぞれ3分、30秒、5秒程度に相当する値に決定される。尚、この限界値1、限界値2、限界値3は、一度設定されるとユーザーによる通常のプリンタ1の使用によって書き換えられることはない。
基準値1、基準値2、基準値3は、それぞれ、プリンタ1のユーザ−がプリンタ1を使用する際に、ヒーター31の良否判定を行うための「時間A」、「時間B」、「時間C」の閾値であって、その設定内容の詳細については後述するが、初期値としては、それぞれ限界値1、限界値2、限界値3が与えられている。
次に、図5及び図6を参照してプリンタ1の動作について説明する。図5及び図6はプリンタ1の動作を説明するためのフローチャートである。尚、図5において、点線で囲んだステップS10〜S15、S20〜S24及びS30〜S34の部分を以下、「ヒーター良否判定部」と言う。「ヒーター良否判定部」は、ヒーター31に異常が発生してないかの良否判定が行われる部分である。
プリンタ1に電源が投入されると、プリンタ1がユーザーの下で初めて電源を投入されたか否か、即ち「初回電源投入」であるか否かが判定される(ステップS1)。実際には、INITフラグは「初回電源投入」であるか否かを示すフラグであるため、INITフラグがセットであるか否かを判定する。そして、INITフラグは上述したように初期値がセットであるため、「初回電源投入」時は、この判定結果が肯定となって後述するステップS2に移行し(ステップS1のY)、判定結果が否定である場合は後述するステップS3に移行する(ステップS1のN)。
<<初回電源投入>>
まず、「初回電源投入」である場合について説明する。この場合は、フラッシュROM40の記憶内容は、初期値となっているので、上述したようにINITフラグはセットであり、基準値1、基準値2、基準値3の値はそれぞれ限界値1、限界値2、限界値3と同じとなっている。
「初回電源投入」である場合にステップS1から移行するステップS2では、INITフラグの内容がセットからリセットに変更されるようにフラッシュROM40の内容が書き換えられて、後述するステップS10に移行する。
ステップS10では、ヒーター31を作動(ON)すると共に、その作動をしてからの時間を計測する計測タイマをスタートさせる。この計測タイマは、例えば、エンジン制御基板36が備える水晶振動子が発生するクロック信号等を用いて構成し、MPU41がこの計測タイマを有するようにすれば良い。
ステップS10終了後に移行するステップS11では、ヒートローラー31の表面温度が図1や図3の説明において述べた印字可能温度に達したかどうかを判定し、印字可能温度に達していれば、後述するステップS13に移行し(ステップS11のY)、印字可能温度に達していなければ後述するステップS12に移行する(ステップS11のN)。このステップS13に移行するタイミングは、図3における時刻t1に相当することとなる。
ステップS12では、上述した計測タイマの計測値が、基準値1以上の値になっていないかが判定される。ここで、基準値1は、プリンタ1が「初回電源投入」された場合なら、初期値である限界値1と同じ値となっている。この計測タイマの計測値が基準値1(限界値1)以上となっている場合は(ステップS12のY)、ヒーター31が正常であるならば必要となる「時間A」の最大値、即ち限界値1に相当する時間が経過しても、ヒーター31は、ヒートローラー32の表面温度を印字可能温度に昇温できないことを意味することとなるので、ヒーター31が異常であるとして、ステップS15に移行する。一方、計測タイマの計測値が基準値1(限界値1)未満の場合は、前述したステップS11に戻る(ステップS12のN)。
ステップS15では、ヒーター31に異常が発生していることがステップS12で判断されたので、エンジン制御基板36は、ヒーター31の作動を停止させる。これにより、ヒーター31の温度が過剰に上昇する等の不具合を未然に防止することができる。また、フロントパネル51にヒーター31に不良が発生していることを表示、またはメインコントローラ基板38を介してプリンタ1に接続されているホストコンピュータにヒーター31に異常が発生していることを示す信号を送信することにより、ユーザーやプリンタ1の修理・点検を行う保守担当者(サービスマン)は、ヒーター31に異常が発生していることを容易に知ることができるため、速やかに不良箇所を特定して修理等を行うことで迅速にヒーター31を正常な状態に戻すことができる。
前述したステップS11の判定結果が肯定の場合(ステップS11のY)に移行するステップS13では、まず、計測タイマをストップさせる。この計測タイマはステップS10におけるヒーター31の作動開始と同時にスタートしているので、このストップした計測タイマの計測値は、ステップS10におけるヒーター31の作動開始の時を基準として、ヒートローラー32の表面温度が印字可能温度に達する(ステップS11の判定結果がYになる)までの到達時間を表すこととなるし、図3における「時間A」の実測値を表すとも言える。
更に、ステップS13では、このストップした計測タイマの「時間A」の計測値に「余裕値A」を加えた値で、フラッシュROM40の基準値1の内容を書き換える。つまり、基準値1は、プリンタ1が実際に設置された周囲温度及び投入される商用交流電圧下における「時間A」(図3)の実測値に基づいて書き換え、即ち再設定される。
ここで、「余裕値A」を加えるのは、「時間A」の実測値はプリンタ1の設置される環境における日々の周囲温度、投入される商用交流電圧の変化の影響をうけ、仮にそれらの変化がなくとも計測する度に若干変動するものであるため、ステップS13で基準値1を書き換えた後に再びステップS10より始まる「ヒーター良否判定部」の処理を実行した時に、ヒーター31が正常であるにも拘らず、前記「変動」によりステップS12の判定結果が肯定となってヒーターの作動を停止等(ステップS15の処理)してしまわないようにするためである。
実際には、「余裕値A」は、前記「変動」を考慮した「時間A」の複数の実験値等から決定される。また「余裕値A」は、予め定めた一定値(例えば、30秒に相当する値)としても良いし、「時間A」の実測値に基づいて算出される(例えば、「時間A」の実測値の半分とする)ようにしても良いが、「時間A」の実測値に「余裕値A」を加えた値が、限界値1以上となる場合は、基準値1を限界値1の値で書き換えるようにする。即ち、基準値1が限界値1より大きくなることがないように書き換える。
尚、電源ON後、ステップS1〜S2を経てステップS10に至る時間(数msec〜数100msec程度)は、プリンタ1の実現しようとするヒーター31の良否判定に用いる基準値1(例えば、30秒程度)に比べ十分小さいと言えるので、プリンタ1の電源投入開始の時を基準としてヒートローラー32の表面温度が印字可能温度に達するまでの到達時間が、この計測タイマの計測値に相当すると考えることもできる。
また、ヒーター31の良否判定を行うか否かに拘らず、画像形成を行うためにはプリンタ1の電源投入を開始してからヒートローラー32の表面温度を印字可能温度に昇温する必要があるため、その表面温度が印字可能温度に達するまでの到達時間を、プリンタ1の電源投入開始の時を基準として計測タイマが計測すれば、ヒーター31の良否判定を行うために別途時間や手間が必要とならないと言える。仮に、ヒーター31の良否判定を行うために特別な時間が必要となれば、その良否判定の間、プリンタ1が使用できなくなるし、フロントパネル51に対する操作等が必要となれば手間がかかり使い勝手が悪くなってしまう。
前述したステップS13を終えて移行するステップS14で、計測タイマの計測値をリセット、即ち0とし、続いて移行するステップS20では、再度計測タイマが計測をスタートすると共に、ヒーター31の作動を停止する。但し、ヒーター31の作動を停止させても、ヒートローラー32の表面温度は、図3における説明(「時間B」に相当する部分の説明)で述べたように、暫く上昇した後、下降を始めることとなる。
ステップS20終了後に移行するステップS21では、ヒートローラー31の表面温度が下降することで再び印字可能温度に達したかどうかを判定し、印字可能温度に達していれば、後述するステップS23に移行し(ステップS21のY)、印字可能温度に達していなければ後述するステップS22に移行する(ステップS21のN)。このステップS23に移行するタイミングは、図3における時刻t2に相当することとなる。
ステップS22では、上述した計測タイマの計測値が、基準値2以上の値になっていないかが判定される。ここで、基準値2は、プリンタ1が「初回電源投入」された場合なら、初期値である限界値2と同じ値となっている。計測タイマの計測値が基準値2(限界値2)以上となっている場合は(ステップS22のY)、ヒーター31が正常であるならば必要となる「時間B」の最大値、即ち限界値2に相当する時間が経過しても、ヒーター31は、ヒートローラー32の表面温度を印字可能温度に降温できないことを意味することとなるので、ヒーター31が異常であるとして、ステップS15に移行する。一方、計測タイマの計測値が基準値2(限界値2)未満の場合は、前述したステップS21に戻る(ステップS22のN)。
前述したステップS21の判定結果が肯定の場合(ステップS21のY)に移行するステップS23では、まず、計測タイマをストップさせる。計測タイマはステップS20におけるヒーター31の作動停止と同時にスタートしているので、このストップした計測タイマの計測値は、ステップS20におけるヒーター31の作動停止の時を基準として、ヒートローラー32の表面温度が印字可能温度に達する(ステップS21の判定結果がYになる)までの到達時間を表すこととなるし、図3における「時間B」の実測値を表すとも言える。
更に、ステップS23では、このストップした計測タイマの「時間B」の計測値に「余裕値B」を加えた値で、フラッシュROM40の基準値2の内容を書き換える。つまり、基準値2は、プリンタ1が実際に設置された周囲温度及び投入される商用交流電圧下における「時間B」(図3)の実測値に基づいて書き換え、即ち再設定される。
ここで、「余裕値B」を加えるのは、「時間B」の実測値はプリンタ1の設置される周囲温度の変化や投入される商用交流電圧の変化の影響をうけ、仮にそれらの変化がなくとも計測する度に若干変動するものであるため、ステップS23で基準値2を書き換えた後に再びステップS10より始まる「ヒーター良否判定部」の処理を実行した時に、ヒーター31が正常であるにも拘らず、前記「変動」によりステップS22の判定結果が肯定となってヒーターの作動を停止等(ステップS15の処理)してしまわないようにするためである。
実際には、「余裕値B」は、前記「変動」を考慮した「時間B」の複数の実験値等から決定される。また「余裕値B」は、予め定めた一定値(例えば、5秒に相当する値)としても良いし、「時間B」の実測値に基づいて算出される(例えば、「時間B」の実測値の半分とする)ようにしても良いが、「時間B」の実測値に「余裕値B」を加えた値が、限界値2以上となる場合は、基準値2を限界値2の値で書き換えるようにする。即ち、基準値2が限界値2より大きくなることがないように書き換える。
尚、ステップS20においてヒーター31の作動の停止を実行しているが、この作動停止はステップS13において実行しても良い。そして、この作動停止をステップS13で実行する場合は、ステップS13がヒートローラー32の表面温度が上昇して印字可能温度に達した(ステップS11のY)直後に実行されるため、ヒートローラー32の表面温度が印字可能温度より低い状態から高い状態になる時を基準として、前記表面温度が再び印字可能温度に達するまでの到達時間が、この計測タイマの計測値に相当すると考えることもできる。
前述したステップS23を終えて移行するステップS24で、計測タイマの計測値をリセット、即ち0とし、続いて移行するステップS30では、再度計測タイマが計測をスタートすると共に、ヒーター31の作動を開始(再開)する。但し、ヒーター31の作動を開始させても、ヒートローラー32の表面温度は、図3における説明(「時間C」に相当する部分の説明)で述べたように、暫く下降した後、上昇を始めることとなる。
ステップS30終了後に移行するステップS31では、ヒートローラー31の表面温度が上昇することで再び印字可能温度に達したかどうかを判定し、印字可能温度に達していれば、後述するステップS33に移行し(ステップS31のY)、印字可能温度に達していなければ後述するステップS32に移行する(ステップS31のN)。このステップS33に移行するタイミングは、図3における時刻t3に相当することとなる。
ステップS32では、上述した計測タイマの計測値が、基準値3以上の値になっていないかが判定される。ここで、基準値3は、プリンタ1が「初回電源投入」された場合なら、初期値である限界値3と同じ値となっている。計測タイマの計測値が基準値3(限界値3)以上となっている場合は(ステップS32のY)、ヒーター31が正常であるならば必要となる「時間C」の最大値、即ち限界値3に相当する時間が経過しても、ヒーター31は、ヒートローラー32の表面温度を印字可能温度に昇温できないことを意味することとなるので、ヒーター31が異常であるとして、ステップS15に移行する。一方、計測タイマの計測値が基準値3(限界値3)未満の場合は、前述したステップS31に戻る(ステップS32のN)。
前述したステップS31の判定結果が肯定の場合(ステップS31のY)に移行するステップS33では、まず、計測タイマをストップをさせる。計測タイマはステップS30におけるヒーター31の作動開始と同時にスタートしているので、このストップした計測タイマの計測値は、ステップS30におけるヒーター31の作動開始した時を基準として、ヒートローラー32の表面温度が印字可能温度に達する(ステップS31の判定結果がYになる)までの到達時間を表すこととなるし、図3における「時間C」の実測値を表すとも言える。
更に、ステップS33では、このストップした計測タイマの「時間C」の計測値に「余裕値C」を加えた値で、フラッシュROM40の基準値3の内容を書き換える。つまり、基準値3は、プリンタ1が実際に設置された周囲温度及び投入される商用交流電圧下における「時間C」(図3)の実測値に基づいて書き換え、即ち再設定される。
ここで、「余裕値C」を加えるのは、「時間C」の実測値はプリンタ1の設置される周囲温度の変化や投入される商用交流電圧の変化の影響をうけ、仮にそれらの変化がなくとも計測する度に若干変動するものであるため、ステップS33で基準値3を書き換えた後に再びステップS10より始まる「ヒーター良否判定部」の処理を実行した時に、ヒーター31が正常であるにも拘らず、前記「変動」によりステップS32の判定結果が肯定となってヒーターの作動を停止等(ステップS15の処理)してしまわないようにするためである。
実際には、「余裕値C」は、前記「変動」を考慮した「時間C」の複数の実験値等から決定される。また「余裕値C」は、予め定めた一定値(例えば、1秒に相当する値)としても良いし、「時間C」の実測値に基づいて算出される(例えば、「時間C」の実測値の半分とする)ようにしても良いが、「時間C」の実測値に「余裕値C」を加えた値が、限界値3以上となる場合は、基準値3を限界値3の値で書き換えるようにする。即ち、基準値3が限界値3より大きくなることがないように書き換える。
尚、ステップS30においてヒーター31の作動の開始(再開)を実行しているが、この作動開始(再開)はステップS23において実行しても良い。そして、この作動停止をステップS23で実行する場合は、ステップS23がヒートローラー32の表面温度が下降して印字可能温度に達した(ステップS21のY)直後に実行されるため、ヒートローラー32の表面温度が印字可能温度より高い状態から低い状態になる時を基準として、前記表面温度が再び印字可能温度に達するまでの到達時間が、該計測タイマの計測値に相当すると考えることもできる。
また、ヒーター31の良否判定を行うか否かに拘らず、プリンタ1を印字可能な状態に保つためには、ヒートローラー32の表面温度が印字可能温度で安定化するようにヒーター31の作動の制御を行う必要があるが、図3を用いて説明したように、その制御によりヒーターを作動/停止しても前記表面温度が上昇/下降するには時間差があるため、必然的にヒートローラー32の表面温度は印字可能温度を中心に変動する。
この変動を積極的に利用し、その表面温度が印字可能温度より低い状態から高い状態になる時(図3における時刻t1に相当する時)、またはその表面温度が印字可能温度より高い状態から低い状態になる時(図3における時刻t2に相当する時)を基準として、その表面温度が印字可能温度に達するまでの到達時間を計測タイマが計測すれば、ヒーター31の良否判定を行うために別途時間や手間が必要とならないと言える。仮に、ヒーター31の良否判定を行うために特別な時間が必要となれば、その良否判定の間、プリンタ1が使用できなくなるし、フロントパネル51に対する操作等が必要となれば手間がかかり使い勝手が悪くなってしまう。
前述したステップS33を終えて移行するステップS34で、計測タイマの計測値をリセット、即ち0とし、ステップS4に移行する。
ステップS4では、ヒートローラー32の表面温度が印字可能温度で安定化するべくヒーター31の作動/停止の制御を、図3を参照して説明したように行い、以後、この制御は継続されて、常にプリンタ1は印字可能な状態に保たれる。
<<2回目以降の電源投入>>
上述したように、「初回電源投入」の場合(ステップS1のY)は、ステップS13、S23、S33でそれぞれ基準値1、基準値2、基準値3がそれぞれの初期値である限界値1、限界値2、限界値3から書き換えられることとなる。この書き換えがなされた後、一旦プリンタ1の電源供給を遮断し、再度電源を投入(以下、「2回目以降の電源投入」と言う)した場合の動作について、以下、説明する。
プリンタ1に、「2回目以降の電源投入」がなされると、「初回電源投入」時におけるステップS2の処理によりINITフラグはリセットとなっているため、ステップS1の判定結果は否定(ステップS1のN)となり、ステップS3でヒートローラー32の表面温度が所定温度範囲内であるか否か判定される。そして、所定温度範囲内である場合は前述したステップS10に移行し(ステップS3のY)、所定温度範囲外である場合は、後述するステップS4に移行する(ステップS3のN)。
ここにおける「所定温度範囲」について以下、説明する。「2回目以降の電源投入」においても、ステップS3の判定結果が肯定(ステップS3のY)であれば、ステップS10に移行して、上述した動作と同様にステップS10〜S15、S20〜S24、S30〜S34の「ヒーターの良否判定部」が実行されることとなる。ところが、例えば「初回電源投入」してヒートローラー32の表面温度が印字可能温度に到達してからプリンタ1の電源を遮断し、引き続いて直ぐに「2回目以降の電源投入」をした場合は、ヒートローラー32の表面温度はほぼ印字可能温度(例えば165℃)を維持しているため、「2回目以降の電源投入」時に実行されるステップS13においてストップした計測タイマの計測値は非常に小さい値(例えば、通常は30秒であるのに対して1秒)となってしまい、基準値1も非常に小さい値が設定(ステップS13)されることとなる。
そうすると、次回、ヒートローラー32の表面温度が周囲温度と同等(例えば23℃)になっている状態でプリンタ1の電源を再投入をした場合にステップS12の処理がなされると、基準値1の値が小さすぎるためヒーター31が正常であるのに拘らずステップS12の判定結果が肯定となって、ヒーター31の作動を停止してしまう(ステップS15)危険性が増大する。
このような危険性の増大を回避するべく、「2回目以降の電源投入」時においてヒートローラー32の表面温度が所定温度範囲内でない場合(ステップS3のN)はステップS10に移行せず、ステップS4に移行することとしている。従って、前記「所定温度範囲」は、ステップS13で基準値1を設定する上で上述したような危険性の増大が許容できる程度の温度範囲が設定される。具体的に例を挙げれば、プリンタ1の使用可能周囲温度範囲(例えば0℃〜40℃)と同程度に設定される。
ステップS3の判定結果が肯定である場合は、ステップS10に移行し、その後は、上述した動作と同様に「ヒーター良否判定部」の処理が実行されることとなるが、ステップS12の判定において、「初回電源投入」時では、基準値1の初期値である限界値1と計測タイマの計測値が比較されるのに対して、「2回目以降の電源投入」時では「初回電源投入」時におけるステップS13で設定された基準値1と計測タイマの計測値が比較されることとなる。
同様に、ステップS22、S32の判定において「初回電源投入」時では、基準値2、基準値3はそれぞれの初期値である限界値2、限界値3とそれぞれの計測タイマの計測値が比較されるのに対して、「2回目以降の電源投入」時では「初回電源投入」時におけるステップS23、ステップS33でそれぞれ設定された基準値2、基準値3とそれぞれの計測タイマの計測値が比較されることとなる。
プリンタ1が「初回電源投入」された場合は、基準値1は初期値である限界値1と同じ値(同様に基準値2、基準値3はそれぞれの初期値である限界値2、限界値3と同じ値)であり、実際にプリンタ1が使用されるような典型的な設置周囲温度(例えば23℃)及び投入する商用交流電圧(例えばAC100V)下においては、基準値1はヒーター31の良否判定をする上で必要以上に大きな値となっている。
これは、プリンタ1の使用可能周囲温度範囲及び使用可能電源電圧範囲内において、ユーザーがどのような周囲温度及び使用電源電圧でプリンタ1を使用するか不明であるため、「時間A」が最も長くなる環境で動作する場合、即ちプリンタ1の設置周囲温度が使用可能周囲温度範囲(例えば0℃〜40℃)内で最も低温(例えば0℃)で、且つ投入する商用交流電圧が使用可能電源電圧範囲(例えばAC85V〜AC264V)内で最も低電圧(例えばAC85V)で動作する場合を考慮して基準値1の初期値が設定されているためである。
このように基準値1の初期値を設定することで、設置周囲温度が使用可能周囲温度範囲内、且つ投入する商用交流電圧が使用可能電源電圧範囲内であれば、ヒーター31が正常であるのにも拘らずヒーター31に異常があると判断して、ヒーターの作動を停止等してしまう(ステップS15の処理)ことがない。
基準値1の初期値を限界値1とするのと同様の理由から、基準値2、基準値3の初期値はそれぞれ限界値2、限界値3となっているが、この基準値2及び基準値3の初期値も、実際にプリンタ1が使用されるような典型的な設置周囲温度(例えば23℃)及び投入する商用交流電圧(例えばAC100V)下においては、ヒーター31の良否判定をする上で必要以上に大きな値となっている。
一方、「2回目以降の電源投入」時では、基準値1は「初回電源投入」時におけるステップS13で設定された値、即ち、プリンタ1が実際に設置された周囲温度及び投入される商用交流電圧下における「時間A」(図3)の実測値に基づいて設定された値となっている。つまり、基準値1はヒーター31の良否判定する上で、最適な値となっている(基準値2、基準値3も同様に最適な値となっている)。
従って、仮にヒーター31に異常が発生していたとしても、計測タイマが、限界値1より小さい基準値1を超えた時点(ステップS12のY)でヒーター31の作動を停止(ステップS15)させるため、既にヒーター31の温度が過剰に上昇し過ぎてヒートローラーを構成するテフロンを溶融させてしまったり等する結果、ヒートローラー32を含む定着ユニット30全体を交換せざるを得なくなるような不具合が極めて生じにくくなる。このことは、基準値2、基準値3もそれぞれ限界値2、限界値3より小さいため、同様である。
また、ステップS13で設定される基準値1は、限界値1以下の値を有するものの、ステップS13の説明で述べたように、ヒーター31が正常であるにも拘らずヒーター31に異常があると判断して、ヒーターの作動を停止等してしまう(ステップS15の処理)ことはない。基準値2、基準値3についても、それぞれステップS23、S33の説明で述べたように、同様のことが言える。
尚、「2回目以降の電源投入」時でも、基準値1(基準値2、基準値3)にはその上限である限界値1(限界値2、限界値3)が記憶されている場合も理論上ありえるが、限界値1(限界値2、限界値3)は、設置周囲温度、使用電源電圧、ヒーター31の特性の個体差間ばらつき等あらゆる条件を加味して決定されている値であるため、殆どの場合は、基準値1(基準値2、基準値3)は限界値1(限界値2、限界値3)より小さいと言える。
<<フラグ等の初期化>>
また、フロントパネル51に対する操作、またはプリンタ1に接続されているホストコンピュータからメインコントローラ基板38を介して予め定めた信号を送信することにより、INITフラグ及び基準値1、基準値2、基準値3のそれぞれの記憶内容を初期値に、即ちセット、限界値1、限界値2、限界値3に設定できるようにしてもよい。
このように初期化することにより、次回プリンタ1の電源投入時には、ステップS1の判定結果が肯定となって、ステップS2を経た後「ヒーター良否判定部」の処理が実行されるため、ヒーター31の良否判定がなされる(ステップS12等)とともに、プリンタ1が実際に設置された周囲温度及び投入された商用交流電圧下における「時間A」、「時間B」、「時間C」(図3)の実測値に基づいてそれぞれ基準値1、基準値2、基準値3を書き換え、即ち再設定することができる。
例えば、プリンタ1を当初設置していた場所から、設置周囲温度または投入される商用交流電圧が異なる場所に移動させて使用する場合に、INITフラグ及び基準値1、基準値2、基準値3を初期化してからプリンタ1の電源投入を開始すれば、その移動後の設置周囲温度及び投入される商用交流電圧下で、ヒーター31の良否判定をする上で最適な値が基準値1、基準値2、基準値3に再設定される。
従って、仮にヒーター31に異常が発生していたとしても、計測タイマが、限界値1より小さい基準値1を超えた時点(ステップS12のY)でヒーター31の作動を停止(ステップS15)させるため、既にヒーター31の温度が過剰に上昇し過ぎてヒートローラーを構成するテフロンを溶融させてしまったり等する結果、ヒートローラー32を含む定着ユニット30全体を交換せざるを得なくなるような不具合が極めて生じにくくなる。このことは、基準値2、基準値3もそれぞれ限界値2、限界値3より小さいため、同様である。
尚、上述したINITフラグ等を初期化してプリンタ1の電源投入し「ヒーター良否判定部」の処理実行を終えた後でも、基準値1(基準値2、基準値3)にはその上限である限界値1(限界値2、限界値3)が記憶されている場合も理論上ありえるが、限界値1(限界値2、限界値3)は、周囲温度、使用電源電圧、ヒーター31の個体差等あらゆる条件を加味して決定されている値であるため、殆どの場合は、基準値1(基準値2、基準値3)は限界値1(限界値2、限界値3)より小さいと言える。
<<S1―S2間に判定処理追加>>
また、ステップS1の判定結果が肯定(ステップS1のY)である場合において(「初回電源投入」時において)、直接ステップS2に移行しないでヒートローラー32の表面温度が所定温度範囲内である場合にのみステップS2に移行し、所定温度範囲外である場合はステップS4に移行させて「ヒーター良否判定部」を実行させないようにする判定処理ステップを設けてもよい。この判定処理ステップはステップS3を設ける目的と同様の目的で設けるものであり、ここにおける「所定温度範囲」は、ステップS3におけるものと同様である。
「初回電源投入」時において、ヒートローラー32の表面温度が、印字可能温度付近の高温になっていたりすることは生じ難いが、この判定処理ステップを追加することで、該表面温度が高温であることに起因して基準値1に非常に小さい値が設定(ステップS13)されることを防止することができる。これにより、ヒーター31が正常であるのに拘らずステップS12の判定結果が肯定となって、ヒーター31に異常が発生していると判断してヒーター31の作動を停止してしまう(ステップS15)といったことを、より確実に防止することができる。
<<S1、S2の削除>>
また、図5におけるステップS1及びステップS2を削除し、プリンタ1に電源が投入されると例外なくステップS3に移行するようにしてもよい。尚、この場合はINITフラグがプリンタ1の動作をする上で必要がなくなるので、フラッシュROM40はINITフラグを記憶する必要がない。
INITフラグがフラッシュROM40に記憶されず、ステップS1及びステップS2が削除されれば、プリンタ1が「初回電源投入」であるか否かが判断できないこととなるが、そもそも「初回電源投入」時において、ヒートローラー32の表面温度が、印字可能温度付近の高温になっていることは生じ難く、通常、この表面温度はプリンタ1の設置周囲温度程度になっているので、ステップS3の判定結果は肯定となってステップS10に移行する(ステップS3のY)。
そうすると、結局「ヒーター良否判定部」の処理は実行されることとなり、「2回目以降の電源投入」時では、基準値1は「初回電源投入」時におけるステップS13で設定された値、即ち、プリンタ1が実際に設置された周囲温度及び投入される商用交流電圧下における「時間A」(図3)の実測値に基づいて設定された値となっている。つまり、ヒーター31の良否判定する上で、最適な値となっている(基準値2、基準値3も同様に最適な値となっている)。
従って、上述のようにステップS1及びS2を削除しても、仮にヒーター31に異常が発生していたとすれば、計測タイマが、限界値1より小さい基準値1を超えた時点(ステップS12のY)でヒーター31の作動を停止(ステップS15)させるため、既にヒーター31の温度が過剰に上昇し過ぎてヒートローラーを構成するテフロンを溶融させてしまったり等する結果、ヒートローラー32を含む定着ユニット30全体を交換せざるを得なくなるような不具合が極めて生じにくくなる。このことは、基準値2、基準値3もそれぞれ限界値2、限界値3より小さいため、同様である。
また、上述のようにステップS1及びS2を削除した場合で、仮に「初回電源投入」時にステップS3の判定が否定であったとしても、次回のプリンタ1の電源投入時にステップS3の判定が肯定になれば「ヒーター良否判定部」の処理が実行される。つまり、基準値1はプリンタ1が実際に設置された周囲温度及び投入される商用交流電圧下における「時間A」(図3)の実測値に基づいて設定されるのであり、結局、基準値1はヒーター31の良否判定する上で、最適な値になる(基準値2、基準値3も同様に最適な値になる)。
尚、「2回目以降の電源投入」時でも、基準値1(基準値2、基準値3)にはその上限である限界値1(限界値2、限界値3)が記憶されている場合も理論上ありえるが、限界値1(限界値2、限界値3)は、設置周囲温度、使用電源電圧、ヒーター31の特性の個体差間ばらつき等あらゆる条件を加味して決定されている値であるため、殆どの場合は、基準値1(基準値2、基準値3)は限界値1(限界値2、限界値3)より小さいと言える。
<<S4(温度安定化制御)以降の動作>>
次に、ステップS4移行の動作について説明する。ステップS4では、ヒートローラー32の表面温度が印字可能温度で安定化するべくヒーター31の作動/停止の制御を、図3を参照して説明したように行い、以後、この制御は継続されて、常にプリンタ1は印字可能な状態に保たれる。
ステップS4を終えて移行するステップS50では、フロントパネル51に対してユーザーが何らかの操作を行うか、又はプリンタ1に接続されているホストコンピュータからメインコントローラ基板38を介して何らかの信号を送信するまでの時間を計測する操作タイマをスタートさせる。続いて、ステップS51でフロントパネル51に対して何からの操作等があったか否かを判定し、何らかの操作等があった場合は(ステップS51のY)、その操作に応じた動作をプリンタ1は行い(ステップS53)、更に該操作タイマをリセット(ステップS54)してからステップS50に戻る。
一方、ステップS51にて、何らかの操作等がなかったと判定された場合は(ステップS51のN)、操作タイマの値が所定の猶予時間と比較される(ステップS52)。操作タイマの値が所定の猶予時間より小さい場合は(ステップS52のN)ステップS51に戻るが、操作タイマの値が所定の猶予時間より大きい場合は(ステップS52のY)ヒーター31の作動を停止する(ステップS55)。つまり、所定の猶予時間たっても、フロントパネル51に対する操作等が何らされない場合は、プリンタ1は現在必要とされていないと判断して、ヒーター31の作動を停止する。これにより無駄な電力消費を節約することができる。
尚、上記所定の猶予時間は、予め定められた固定の値であっても良いし、ユーザーがフロントパネル51に対する操作、またはプリンタ1に接続されているホストコンピュータからメインコントローラ基板38を介して予め定めた信号を送信することで自由に設定できるようにしても良い。
ステップS55を終えて移行するステップS56では、再びフロントパネル51に対してユーザーが何らかの操作を行うか、又はプリンタ1に接続されているホストコンピュータからメインコントローラ基板38を介して何らかの信号を送信されていないかを判定する。フロントパネル51に対して何らかの操作等がない場合は(ステップS56のN)、再度ステップS56の判定処理が繰り返される。従って、何らかの操作等がない限り、ヒーター31は作動(ON)しないこととなる。
一方、フロントパネル51に対して何らかの操作等があった場合は(ステップS56のY)、上述したステップS3に移行してヒートローラー32の表面温度が所定の温度範囲内であるか否かを判定する。ステップS55の処理の後、フロントパネル51に対して何らかの操作等があり、ステップS56の判定結果が肯定となるまでは、ヒーター31の作動停止状態は継続されるため、ヒートローラー32の表面温度はプリンタ1の設置されている周囲温度近辺まで下がり続けることとなるが、未だその表面温度が所定温度範囲外である場合は(ステップS3のN)上述したステップS4に移行し、所定温度範囲内である場合は(ステップS3のY)上述したステップS10に移行して「ヒーター良否判定部」の処理を実行するのである。
このように、プリンタ1の電源投入後、所定の猶予時間が経過してもプリンタ1のフロントパネル51対する操作等がない場合にヒーター31の作動を停止させ、何らかの操作等があった際、ヒートローラー32の表面温度が下がって所定の温度範囲内になっていれば「ヒーター良否判定部」の処理を実行する。これにより、プリンタ1の電源を遮断することなく投入し続けていたとしても、ヒーター31の良否判定がなされる(ステップS12等)とともに、プリンタ1が実際に設置された周囲温度及び投入された商用交流電圧下における「時間A」、「時間B」、「時間C」(図3)の実測値に基づいてそれぞれ基準値1、基準値2、基準値3が書き換え、即ち再設定されるため、基準値1、基準値2、基準値3は常にそのプリンタ1のヒーター31を良否判定する上で最適な値を維持することができる。
<<その他>>
上述した実施形態においては、「時間A」、「時間B」、「時間C」の3つの時間を用いてヒーター31の良否判定を行っているが、いずれか1つの時間または任意の2つの時間を利用してヒーター31の良否判定を行っても良い。また、図3における時刻t4から時刻t5までの時間を「時間D」とし、この「時間D」を用いてヒーター31の良否判定を行っても良いし、それ以降の時刻tnから時刻tn+1(n;5以上の整数)までの時間を用いてヒーター31の良否判定を行っても良い。
また、上述した実施形態においては、プリンタ1に投入する駆動電圧源を商用交流電圧として説明したが、直流電圧を駆動電圧源としてもよいのは勿論である。