JP4514333B2 - 炎症および関節炎に関連する症状を緩和軽減するための天然抗炎症薬としてのバラの実処方物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、関節炎を含む炎症に関連する諸症状の治療または予防用処方物の調製に乾燥したバラの実(ローズヒップ)を使用することに関する。本発明はまたこれらの処方物の調製方法にも関連する。
【0002】
【従来の技術】
関節炎等の炎症性の疾病は、様々に異なる広範な症状を発現する。最も周知でありまたよく研究の対象とされる関節炎の種類が慢性関節リュウマチ(RA)である。関節炎の病因には、いくつかの一般的な原則が当てはまる。すなわち、1)多形核白血球、単核白血球/マクロファージおよびT細胞等の異なるタイプの細胞が含まれかつこれらの細胞がこの疾病において相互に作用し合うこと、2)腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)、インターロイキン‐1(IL−1)およびインターロイキン‐6(IL6)等の炎症性サイトカインが、疾病が進行していく過程の多くのポイントでその炎症サイクルを制御し増幅すること、3)炎症が起っている間他の生物学的経路の速度が上下に調節されること、および4)RAなど関節炎のいくつかの種類においては、自然な緩解が珍しくないことなどである。これは、関節炎の進行を活性化したり抑制する調節因子に、わずかな調整を加えてやれば、進行全体を低下させるので、その結果免疫反応が制御され、炎症および組織の損傷が抑えられることを意味する可能性がある。関節炎の病因に含まれる原則に基づき、関節炎の治療を促す真に有効な緩解は、細胞毒性の薬剤や有効な免疫抑制剤を必ずしも必要とせず、むしろより有害性が低く、好ましくは天然の生産物を正しく患者に服用または外用させれば、回復進行の誘因となり、また疾病の進行をくいとめることができる可能性があると結論づけることができる。
【0003】
関節炎の発生率は、世界中の多くの地域においておよそ同じであると思われ、成人女性については、約1%、成人男性については約0.5%と考えられる。世界のいくつかの地域では、より高い発生率の場所も観察されている。しかしながら、疾患の決定要因として性別の果たす役割のほうが他の地域的または人種的要因よりも強いと思われる。欧米諸国では、70歳を超える人口のうちおよそ70%が骨関節症の症状を有すると言われている。
【0004】
この疾病の原因については、いくつか一般的な仮説が存在する。主要組織適合遺伝子複合体(MHC−II)の遺伝的決定基が、関節炎に関連すると考えられる。ストレス、エプスタイン‐バーウィルスおよびパルボウィルス等のウィルスならびに自己免疫原としてのコラーゲン等の環境的要因も、関節炎の進行に関係する要因として挙げられている。この疾病は、T細胞の活性化により開始されると思われる。TNFα等の炎症性サイトカインが、疾病進行の増幅に関係する。リュウマチ様滑膜における内皮細胞の増殖は、関節炎における炎症の重要な要素である。実際の組織の損傷は、PMNや単核白血球/マクロファージ等の炎症性細胞により引き起こされる。蛋白質分解および加水分解酵素の放出ならびに組織および関節で活性化されたこれらの細胞からの有毒反応性酸素ラジカルの放出により損傷が引き起こされる。
【0005】
関節炎の治療には、痛みの緩和、炎症の軽減および運動能力の向上等この疾病に関連する症状の緩解を含む。アスピリン等のアセチルサリチル酸、イブプロヘン、メトトレキサートおよびナプロクサン等の非ステロイド系抗炎症剤、ならびにグルココルチコイドが、関節炎の治療にはこれまで使用されてきた。これらの薬剤で症状を制御するには、長い期間毎日治療を続けることが必要である。これらの薬剤は、胃潰瘍や腎臓、肝臓への悪影響など様々な毒性および他の副作用を有する。これらの薬剤のうちいくつか、特にグルココルチコイドは、感染に対する免疫反応を抑制する。したがって、特に長期間、毎日の使用に適した、伝統的薬剤の必要性をなくしてその副作用を回避することができる、関節炎制御のための代替的治療法が大いに求められている。
【0006】
【発明の概要】
本発明の目的は、関節炎を含む炎症に関連する症状を治療するための処方物を提供することである。
【0007】
本発明の目的は、関節炎疾病および炎症の予防のための処方物を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、炎症に関連する症状を緩解するために使用される伝統的薬剤に付随する副作用を実質的に回避する天然生産物に基づく処方物を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、関節炎を含む炎症に関連する症状を治療するためバラの実由来の処方物を生成する方法を提供することである。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、関節炎を含む炎症に関連する症状を治療および/または緩解するための方法を提供することである。
【0011】
本発明のこれらの目的および他の目的は、従来の手法で乾燥させたバラの実に比べてビタミン含有量の高いバラの実の濃縮物を含む処方物により達成される。好ましい実施例においては、バラの実の濃縮物は、すりつぶして乾燥させたバラの実を含み、このバラの実は、50℃未満の温度かつ暗所で乾燥させて高いビタミン含有量を維持している。バラの実は、経口投与、好ましくは錠剤またはカプセル状態で処方する。処方物を1服または数服、1日合計約20から200g投与してもよい。
【0012】
発明者らは、バラの実の処方物の抗炎症特性を発見し、予防および/または治療プログラムに同処方物を使用すれば慢性関節リューマチ、骨関節炎、反応性関節炎等の関節炎、および他の種類の炎症に関連する症状が、予防または緩解かつ軽減されることを発見した。本発明に記載のバラの実を毎日摂取すれば、従来の薬物療法の代りとなったり、これを補完することができ、かつ痛みを和らげまた患者の運動能力を高めることにより、関節炎を患う患者の生活の質を向上させることができる。
【0013】
[バラの実と骨関節炎]
股関節部とひざの関節において、重症の骨関節炎を患う患者に義肢を移植するための予備試験に関連して、Abenra病院(Abenra Sygehus)(原文にはAとaの上に°がつきます)の整形外科では、患者30人が試験の前に魚油とバラの実の処方物を組合せたものを2カ月から6カ月にわたって摂取し、関節の痛みがかなり軽減された。患者はすべて重症の骨関節炎を患っており、3つの痛み、すなわち歩行中、休憩中および夜間の痛みという長期間にわたる既往症があり、臨床検査およびX線により重度の関節の崩壊があると判断された。
【0014】
【詳細な説明】
本発明は、ビタミンの含有量が高いバラの実の濃縮物を使用する処方物に関連する。バラの実は、十分熟した時期に一般に知られる方法で収穫される。特に、ロサ・カニナ(rosa canina)、ロサ・ガリカ(rosa gallica)、ロサ・コンディタ(rosa condita)およびロサ・ルゴサ(ハマナス、rosa rugosa)などの野生のバラの木からの実を使用してよいが、ロサ・カニナの実が本発明での使用に特に適している。
【0015】
実は収穫した後、小片に切り刻む。それ以降の処理を延期する場合には、実を冷凍して貯蔵してもよい。いずれにしても、次の工程では、切り刻んだバラの実を水分が約5重量%になるまで乾燥させる。乾燥は、バラの実に含まれるビタミンを保つような形で行うことが重要である。好ましくは、乾燥は、50℃未満の温度で空気を用いて行い、日光を避けるようにする。このようにした粉末は、ビタミンB、EおよびCの含有量が高く、粉末100g当たり約560mgのビタミンCが含まれる。乾燥を容易に行うために低圧低温を利用することが有益かもしれない。50℃を超えると、ビタミン含有量における著しい低下が考えられる。
【0016】
乾燥させ、切り刻んだバラの実を、今度は、分離ステップに通して、収穫の際にバラの実に付着した可能性がある他の植物の実、毛髪および他の異物を取り除く。異物を取り除いた後の果肉を粉砕機で粉砕する。粉末または顆粒の材料が得られ、その粒径は、1mm未満、好ましくは、約0.1から0.5mmである。説明を簡単にするため、「粉末」という用語は、どんな形態であろうと乾燥したバラの実が取る個体の形態をすべて包含する意味に使用することにする。ここでは、粉末は、場合に応じて「濃縮物」または「抽出物」と呼ばれることもあり、粉末を溶液、懸濁液またはエマルションとして使用することもできることはもちろんで、本発明は、固体に限定されるものではない。
【0017】
粉末は、従来通りのやり方で袋に詰めるか、ペレット化するかまたは生理学的に許容可能な担体のカプセルの中に直接入れるかし、単位服容量に処方することができる。バラの実の粉末の利点は、特別の処理なしで、焼いたもの、焼かれていないもの、果物や他の飲料など食品や飲み物に入れることができ、またビタミン、ミネラルおよび抗酸化剤など相補的に有効な効果を与えることが可能な他の物質とともに処方することができる点にある。このことで、関節炎を含む炎症を患う人が有益な結果を得るために1日に必要とする量のバラの実を摂取し、続けることがより簡単にできるようになる。
【0018】
単位服用量は、毎日一回の投与(例えば経口または腸溶性治療食の管に供給するなど)について、治療的に有効な量のバラの粉末を含むことが可能で、またはより量を少なく処方して、日に数回服用するようにすることもできる。いずれの場合も、本発明の処方物は、錠剤、カプセル、キャプレッツ、エリクシル剤、腸溶性処方物に製造するかまたはゆっくり放出される担体に組込むこともできる。生物学的に許容可能な賦形剤としては、水、オイルエマルション、アルコールまたはここに記載する食品/飲料の処方物のいずれかが例として挙げられる。
【0019】
上記に記載の単位服用量は、患者の年齢、条件および疾病の状態ならびにその単位服用量を1日に何回摂取するかを含む多くの要素に依存する。いずれにしても、1日に摂取する全服用量は、患者個人にとって生理学的に許容可能であって、毎日長期間にわたって投与することができるものになる。
【0020】
本件の粉末の好ましい単位服用量は、約0.25から約2.0g/kg/日の範囲になる。たとえば、合計の量は、おそらく約20から約200g/日となり、約40から120g/日が好ましい。
【0021】
これ以外では、この処方物を毎日取ることができる食品や飲料の多くに入れたり使用したりすることができる。作ることが可能な適当な食品および飲料としては、(これらに限られるわけではないが)、栄養飲料、ソフトドリンク、フルーツ飲料およびジュース、電解質含有飲料、プリン、焼いた食品(すなわち、クッキー、ブラウニー、ファッジ、ケーキ、パン)、焼いていない成形食品(すなわちバー状のもの)、サラダドレッシング、香辛料、菓子(すなわちキャンディー)、スナック食品(すなわち、チップス、プレッツェル、トルティヤ)、たれおよび塗るもの、アイスクリーム、氷菓子およびノベルティ食品、ヨーグルトなどの乳製品、マーガリン状のスプレッド、肉、鶏肉、魚介類およびサラダなどのに使う調味料が含まれる。これらの食品を無脂肪、減脂肪および低カロリーにしたものも本件の範囲に包含される。処方物を食品/飲料に入れることで、患者が長期間の使用も受け入れやすく、薬剤の形よりも消費者により望ましいか形であるという利点がある。
【0022】
本発明の粉末は、従来の方法により測定すると様々なビタミンとミネラルとを含む。それらについて、以下の表1に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
[成分の分析]
表1に示す通り、本件のバラの実粉末は、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンEおよびビタミンK等の数種のビタミンと数種のミネラルを含む。
【0025】
[胃腸管からの摂取]
ビタミンC25mg当量を有する本件の粉末45gを健康な志願者の被験者に経口で投与する一方、対照グループには500mgのビタミンCを与えた。ビタミンCの血中濃度は、摂取後、0、5、10、15、20および25時間目に測定した。別の研究では、本件の粉末を異なる量、6人の健康な志願者の被験者に投与し、摂取後0、2および4時間後にビタミンCの血中濃度を測定した。
【0026】
[バラの実の抽出物の調製]
バラの実粉末20mg/mlを、最小必須媒質(MEM)4mlと混合して、5℃で19時間インキュベートした。インキュベートに引き続き、混合物を4000rpmで10分間遠心分離にかけた。上澄みを採取し、さらに希釈して白血球機能検定を行った。
【0027】
[多形核白血球と単球]
多形核白血球(PMN)と単球を含む単核白血球を、クエン酸化のガラスにおいて健康な個体の末梢血から分離した。細胞は、デキストラン密度勾配とリンフォプレップ(lymphoprep)分離法により分離した。PMNの純度は、98%を超え、トリパンブルーによる色素排除試験で判定した細胞の生存能力は、98%を超えた。単球フラクションにおける単核白血球の割合は、15%から35%で、細胞の生存能力は98%を超えた。
【0028】
[走化性]
走化性検定を、P.JensenおよびA.Kharazmiの、Computerasisted image analysis assay of human neutrophil Chemotaxis in vitro. J. Immunol. Methods. 144:43, 1991年(インビトロでのヒト好中球走化性のコンピュータ支援画像分析検定)、において記載される修正ボイデン(modified Boyden)チャンバ技術を用いて、走化性検定をおこなった。精製したPMNまたは単球をバラの実抽出物の様々な希釈物で、37℃で30分間あらかじめインキュベートした。このインキュベートに続いて、f−Met−Leu−Phe(fMLP)の走化性ペプチドまたは生物学的に活性な誘引物質C5aを含むチモサン活性血清(ZAS)に対する細胞の走化性をテストした。移動した細胞は、コンピュータ支援画像分析システムで計数した。
【0029】
[化学ルミネセンス]
活性化したPMNによる酸素ラジカルの発生を測定法として、化学ルミネセンス検定を採用した。この方法を、A.Kharazmi、N.Hoiby、G.DoringおよびN.H.ValeriusのPseudomonas aeruginosa exoprotease inhibit human neutrophil chemiluminescence. Infect. Immun. 44:587, 1984年(緑膿菌エキソプロテアーゼによるヒト好中球化学ルミネセンスの阻害)に記載されるように行った。PMNは、本件のバラの実抽出物の様々な濃縮物で予めインキュベートし、その後fMLPかまたはオプソニン作用させたチモサンで刺激を与えた。活性化した細胞の酸化バースト反応は、1250ウォレスルミノメータで測定した。
【0030】
[インビボでの研究]
[対象被験者]
男女両方で18名の、平均年齢48歳、年齢30歳から62歳までの健康な志願者がこの研究に含まれる。志願者のうち1人が治療3日後に、仕事のスケジュールが変更できないことを理由に参加を取りやめたため、血液採取の日に、本研究に残った志願者の数は17人であった。被験者全員が、心臓血管、免疫系、腎臓、肝臓、アレルギー、リューマチまたは血液の既知の疾患はなかった。被験者のうち、すべて男性の3名が軽い骨関節炎を患っていたが、これについては、薬物を摂取していなかった。
【0031】
[インビボでの研究の設計]
志願者らは、毎日45g、28日間本件のバラの実粉末で治療され、かつその後28日間は、バラの実粉末を摂取しなかった。参加前、志願者全員がスクリーニング過程を経て、上記の疾患がいずれも存在しないことを確認した。そのうえ、参加前に、血液サンプルを採取してC反応性蛋白(CRP)測定を行って、参加した志願者がいずれも知らずに感染症にかかっていないことを確認した。さらに、治療を開始する前に、血液のカリウム、ナトリウム、血清クレアチニン、アラニン‐アミノ転移酵素、アルカリホスファターゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、ビリルビン、ヘモグロビンおよび総コレステロール定量も測定した。すべての測定は、従来技術の実験ルーチンで行われた。血清クレアチニンとCRPを除く上記のパラメータはすべて、治療を始めて5日後、10日後、21日後、および28日後に繰り返され、バラの実による治療を止めてから28日後にも測定された。血清クレアチニンとC反応性蛋白(CRP)は、治療前、治療開始10日後と28日後、および最後は治療を止めてから28日後にテストされた。バラの実は、正午に食事とともに摂取された。血液採取の日には、血液採取の2時間前の午前9時に軽い食事とともにバラの実粉末を摂取した。血液採取は、常にいすに座って15分間休憩した後に行った。バラの実治療の28日後、血液のサンプルを特別の試験管に採取して、先に説明したボイデンチャンバ技術を使用して、多形核白血球走化性について分析した。PMN走化性は、その後、被験者がバラの実を摂取しなかった時期、先の28日間に得られた値と比較した。
【0032】
[統計的分析]
一致する対についてウィルコクソンテストを用いて、データを統計的に分析した。0.05を下回るP値が有効であると考えた。
【0033】
[結果]
[胃腸管からの摂取]
図1に示す通り、本件の粉末に存在するビタミンCは、錠剤で摂取する場合のビタミンCと同等かまたはより良好に摂取された。本件のバラの実粉末における250mg当量のビタミンCの胃腸管からの摂取の濃度と速度は、錠剤の場合における500mgのビタミンCと同様であった。バラの実粉末におけるビタミンCの吸収が良いのは、ビタミンCの錠剤に比べて、バラの実粉末の表面積が大きいことに起因すると考えられる。
【0034】
[走化性]
変形ボイデンチャンバ検定により測定したヒト末梢血多形核白血球(PMN)の走化性応答に対するバラの実抽出物の効果を表2に示す。バラの実抽出物は、バラの実粉末をMEM内で、5℃で19時間インキュベートして調製した。インキュベートの後、調製物を4000rpmで10分間遠心分離にかけ、上澄みをMEMで適当な濃度に希釈した。細胞を37℃で30分間、抽出物の濃度を様々にして予めインキュベートした。予めインキュベートした後、細胞の走化性ペプチドfMLPまたはC5aを含むチモサン活性化血清(ZAS)に対する細胞の走化性を測定した。データは、同じものを3回行った2つの代表的な実験からのもので、緩衝液のみで予めインキュベートした対照の細胞反応に対比させた走化性阻害の割合として提示する。
【0035】
【表2】
【0036】
表2に示す通り、濃度が100(g/mlと低いバラの実抽出物が、ヒト末梢血好中球の走化性を阻害した。100(g/mlより高い濃度では、走化性の阻害は、100%であった。pHを調節したバラの実抽出物で濃度が100(g/ml以上のものは、pHを調節していないバラの実の抽出物と同じぐらい強い阻害作用があった。
【0037】
変形ボイデンチャンバ検定により測定した人抹消血単核白血球(PBMC)走化性反応に対するバラの実抽出物の効果について表3に示す。バラの実抽出物は、バラの実粉末をMEMで5℃で19時間インキュベートして調製した。インキュベートの後、調製物を4000rpmで10分間遠心分離にかけ、上澄みを適切な濃度でMEM内で希釈した。バラの実抽出物のpHは、pH7.0に調節された。細胞は、37℃で30分間、抽出物の濃度を様々にして予めインキュベートした。予めインキュベートした後、走化性ペプチドfMLPまたはC5aを含むチモサン活性化血清(ZAS)に対して細胞の走化性を測定した。データは、同じことを3回行った1つの代表的実験からのもので、緩衝液のみで予めインキュベートした、対照の細胞反応に対比させた走化性阻害の割合として提示する。
【0038】
【表3】
【0039】
表3は、バラの実抽出物でインキュベートした抹消血単球の走化性の結果を示す。濃度500(g/mlのバラの実抽出物が、ヒト単球の走化性をを約80%から90%阻害した。
【0040】
[化学ルミネセンス]
LKBルミノメータで測定したヒト抹消血多形核白血球(PMN)化学ルミネセンス反応に対するバラの実抽出物の効果を表4に示す。バラの実抽出物は、MEM内でバラの実粉末を5℃で19時間インキュベートすることにより調製した。インキュベーションの後、調製物は、4000rpmで10分間遠心分離にかけ、その上澄みを適切な濃度でMEMにて希釈した。細胞は、37℃で30分間、バラの実抽出物の濃度を様々にして予めインキュベートした。予めインキュベートした後、オプソニン作用させたチモサンで活性化させた細胞の化学ルミネセンス反応を測定した。データは2回同じことを行った3つの実験からのもので、緩衝液のみで予めインキュベートした対照細胞の反応と対比させて、化学ルミネセンスの阻害割合として提示する。
【0041】
【表4】
【0042】
表4に示す通り、バラの実抽出物は、オプソニン作用させたチモサンにより活性化したPMNの化学ルミネセンスを阻害した。抽出物において、pHを生理学的値に調節しても阻害効果には大きく影響を与えることはなかった。
【0043】
[ビタミンC]
ビタミンCを対照として使用した。濃度が5000(g/mlまでの結晶のビタミンCは、ビタミンCのpHを生理学的pH7.2に調節しても、PMN化学ルミネセンスに対してほとんど効果がなかった。
【0044】
[ビタミンE]
ビタミンE(アルファ‐トコフェノール)も既知の酸化防止剤の対照として使用した。濃度が1(g/mlを超えるビタミンEは、化学ルミネセンスを阻害した。
【0045】
[患者の研究]
[血液化学]
治療前、治療中の10日目および28日目、ならびに治療後34日目のカリウム、ナトリウム、アラニン‐アミノ転移酵素(AL/AT)、アルカリホスファターゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)、ビリルビンおよび総コレステロール定量の血中濃度は、表5に示す通りである。データは、17名の被験者からの平均値で示す。
【0046】
【表5】
【0047】
表5に示す通り、治療前の値と、治療5日目、10日目、21日目および28日目の値と、治療を止めて28日目の値を比べても、カリウム、ナトリウム、アラニン‐アミノ転移酵素、アルカリホスファターゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、ビルブリン、ヘモグロビンおよび総コレステロール定量に大きな変化はない。ところが、血清クレアチニンは、初期値(92.00±82(mol/l)からそれぞれ治療10日目の値(88.63±80.5)および28日目の値(86.47±81.32)(p<0.001)とかなり減少している。治療を止めて28日すると、血清クレアチニンの濃度は、かなり上昇し(95.56±81.20)(p<0.001)、かつ治療前の値と同程度になった。
【0048】
異なる個体における、バラの実を1日45g28日間摂取する治療の前(0日目)、治療中(10日目および28日目)および治療後(62日目)のC反応性蛋白質の濃度について表6に示す。結果は、mg/L CRPで示す。
【0049】
【表6】
【0050】
C反応性蛋白に関するデータについて表6と図2に示す。これらの結果は、血清クレアチニンを評価して得られたものと類似していた。CRPの初期平均濃度は、治療の10日目と28日目には、5.50±1.67からそれぞれ4.18±2.34と4.56±2.09mg/L(p<0.05)に低下した。治療を止めて28日後では、濃度は、それ以前の時点にくらべて6.31±3.07mg/L(p<0.02)に上昇した。
【0051】
[多形核白血球走化性]
毎日45g28日間バラの実を摂取する治療中の間および治療を止めてから28日目の被験者からの抹消血多形核白血球の走化性を表7に示す。走化性は、表7に示す通り、走化性ペプチドfMLPおよびチモサン活性化血清(ZAS)に対して測定される。結果は、移動した細胞の数で示す。
【0052】
【表7】
【0053】
データを、表7ならびに図3および図4に示す。走化性ペプチドfMLPに対するPMN走化性の平均値は、バラの実を用いた治療28日目に試験したものでは、123±131であったのに対して、バラの実での治療を止めてから28日後に摂取した血液サンプルでは、315±92であった(p<0.001)。生物学的に活性の走化性要素C5aを含む活性化された血清(ZAS)を有するチモサンでの処置に対する平均PMN走化性は、265±288であったのに対して、バラの実での治療を止めて28日後に試験したものでは、564±141であった(p<0.001)。
【0054】
fMLPの走化性反応の減少は、67%であり、17人の志願者のうち16人にはかなりの走化性反応の減少があった。ZASに対する走化性反応の減少は53%であり、17人の志願者のうち16人にかなりの減少があった。両方の検定で治療に反応を見せなかった志願者は同じであった。
【0055】
[臨床的発見]
骨関節炎を原因とする軽い痛みを訴えていた3人の志願者が、バラの実による治療を始めて14日後に痛みが和らいだことを報告した。3人の場合すべてにおいて、治療を止めて12から14日後に痛みが戻った。6人の志願者が、バラの実の治療を受けている間、夜は良く眠れたと報告した。また、バラの実の治療を受けている間は、夜間トイレに立つ必要もなかったと報告した。治療の間アレルギー反応は観察されなかったが、研究の最後で、2人の志願者が軽い胃腸管に空気の障害を訴えた。
【0056】
[結論]
結論として、上記の研究によれば、バラの実の抽出物はインビトロでは、最も重要かつ最も数の多い炎症性細胞である、ヒト末梢血の多形核白血球の走化性および酸化性バースト反応を阻害することを証明する。抽出物は、また、炎症および関節炎の病因に含まれるもう一つの重要な細胞型である、単球の走化性も阻害し/減少させた。バラの実の抽出物が好中球走化性および酸化性バースト反応を阻害することは、抽出物に含まれるビタミンC分によるものではないと思われる。これは、pHを調節したビタミンCが化学ルミネセンスを阻害することができないのに対して、pHを調節した抽出物は依然pHを調節していない抽出物と同じ位の阻害力があることからわかる。バラの実が持つ抗炎症性および抗酸化性という特性は、炎症を起こした関節における組織の損傷を阻害しかつ/または減少させる上で重要である。また、関節炎を患う患者にバラの実を投与することで痛みが和らぎ、関節炎に伴う炎症および他の症状が減少した。健康な志願者に1日45グラム、28日間にわたって投与したところ、多形核白血球の走化性反応をおよそ50%阻害した。その上、バラの実は、志願者における急性期蛋白質であるC反応性蛋白の濃度を下げ、値が通常の範囲である10mg/L未満にした。この低下は大きく、治療を始めて10日後に観察された。バラの実による肉体的症状の緩解/軽減は、治療を受ける被験者の末梢血好中球の走化性の低下とC反応性蛋白質の濃度の低下に非常によく相関していた。患者がバラの実の粉末の摂取を止めた後、好中球の走化性とC反応性蛋白質の濃度が未治療時の値まで上昇した。本発明において提示した血液化学データは、バラの実の摂取がこの研究において行われた肝臓と腎臓機能パラメータのいずれにも有害な影響を及ぼしていないことを示す。
【0057】
上に述べた本発明では、人の治療に焦点をおいているが、本発明のハーブの処方物を、関節炎や、免疫反応を減少/抑制したり、それら疾患が引き起こす関節の痛みと硬化を緩解することが望ましい他のT細胞媒介免疫疾患を含む家畜および養殖動物を含む、人以外の哺乳動物のための治療および予防として使用することも考えられる。当業者であれば、治療を行う動物により治療のモードおよび方法を容易に確認するであろう。たとえば、処方物をその動物の水源または餌食に入れることができるし、またはカプセル、錠剤、液体等の形で薬剤として投与することもできる。
【0058】
関節炎の治療に現在使用可能な薬剤は、アスピリン等のアセチルサリチル酸、イブプロフェン、メトトレキサートおよびナプロクサン等の非ステロイド系抗炎症性薬剤、ならびにグルココルチコイドを含む。これらの薬剤で症状を制御するには、毎日、長期間にわたっての投与が必要になる。これらの薬剤には、胃潰瘍ならびに腎臓および肝臓に悪影響があるなど様々な毒性および他の副作用を伴う。これらの薬剤のいくつか、特にグルココルチコイドは、感染に対する免疫反応を阻害する。したがって、特に長期間毎日使用する場合、伝統的な薬剤の必要性およびそれらの副作用をなくすことができる関節炎の管理のための代替的治療法が大いに求められている。本発明のバラの実粉末は、有効で、安全で、安価であるという点でこれらの特性を有する。天然生産物として、副作用がない。単独でカプセル、錠剤、粉末、お茶や他の調製物として投与することができる。粉末状態のバラの実またはバラの実の抽出物を、これらに限るわけではないが、焼いた製品、菓子、氷菓子、プリン、スナック食品、サラダドレッシング、栄養飲料、ソフトドリンク、果物飲料、たれおよび塗るもの、アイスクリーム、ヨーグルト等の乳製品、マーガリンのようなスプレッド、肉、鶏肉、魚介類およびサラダ等に使用する調味料、ならびに焼いていない食品を含む、適当な食品または飲料に組込む材料として、特別な加工の必要なしで使用することもできる。本発明のバラの実粉末はまたビタミン、ミネラルおよび抗酸化剤等の他の補助食品に組合せて使用することもできる。バラの実を含む調製物は、関節炎の治療プログラムの一部としてまたは関節炎の遺伝的もしくは環境的疾病素質を有する個人に対する予防プログラムとして、毎日摂取するために設計することができる。
【0059】
本発明の好ましい実施例について図示し記載したが、当業者には、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更修正が可能であることが当然であり、本発明はここに挙げた例に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 健康な志願者に投与されたバラの実の粉末に存在するビタミンCの摂取を示すグラフである。バラの実粉末約45gに存在する250mg当量のビタミンCを有するある量のバラの実の粉末を経口により健康な志願者に投与し、異なる時点でビタミンCの血中濃度を測定した。粉末は飲みこまれ、水で飲み下された、500mgの商業的に入手可能なビタミンCの錠剤が対照被験者に投与された。
【図2】 1日45gずつ28日間バラの実を摂取する治療の前(0日目)、治療中(10日目および28日目)および治療後(62日目)における個々のC反応性蛋白(CRP)の血中濃度を示すグラフである。結果は、平均値でかつmg/L CRPで示す。
【図3】 1日45gずつ28日間バラの実を摂取する治療中および治療を止めてから28日後との被験者からの末梢血多形核白血球の走化性を示すグラフである。走化性は、走化性ペプチドfMLPに対して測定される。結果は、17人の被験者から移動した細胞の平均数として示す。
【図4】 1日45gずつ28日間バラの実を摂取する治療中および同治療を止めてから28日後の被験者からの抹消血多形核白血球の走化性を示すグラフである。走化性は、チモサン活性血清(ZAS)に対して測定される。結果は17人の被験者から移動した細胞の平均数で示す。
Claims (2)
- バラの実の濃縮物を含む処方物を製造するための方法であって、
複数のバラの実を得るステップと、
該バラの実を小片に破砕するステップと、
該バラの実の小片を冷凍するステップと、
該バラの実の実肉部分を堅果および毛から分離するステップと、
該実肉部分を暗闇で50℃未満の温度で、水分5%の状態まで乾燥させるステップと、
該乾燥させた実肉部分を粉砕して粒径が0.1mmから0.5mmの粉末にするステップとを含む、方法。 - 請求項1に記載の方法によって入手可能な処方物を含む食品または飲料。
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