JP4513567B2 - 酸化物超電導線材の製造方法 - Google Patents

酸化物超電導線材の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸化物超電導線材の製造方法に関し、特に、酸化物超電導体の原材料粉末を金属で被覆した形態の線材から酸化物超電導線材を製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、酸化物超電導線材の製造方法として、酸化物超電導体の原材料粉末を金属管に充填した後、伸線加工や圧延加工を金属管に施すことによって得られた線材を熱処理して酸化物超電導体の原材料粉末を焼結し、酸化物超電導線材を得る方法が知られている。しかしながら、上記の焼結のための熱処理工程において線材に膨れが生じることにより、得られた酸化物超電導線材の超電導特性が低下する等の問題があった。
【0003】
そこで特開平5−101723号公報では、酸化物超電導体の粉末を充填してなる金属管またはその偏平体を加圧雰囲気中で加熱処理して酸化物超電導体の粉末を焼結させることを特徴とする酸化物超電導線材の製造方法が提案されている。この方法によれば、加圧熱処理することによって超電導特性に優れた線材が得られると上記公報に記載されている。
【0004】
具体的には、酸化物超電導体の粉末を充填した金属管を耐熱耐圧の密閉容器内に収容し、密閉容器内の温度上昇に伴なって増大する内部の圧力の上昇によって焼結時の膨れを防止することが試みられている。このときの内部圧は、気体の状態方程式などから求めることができ、たとえば、温度900℃程度の加熱温度では約4気圧の内部圧を得ることができると上記公報に記載されている。
【0005】
また、特許第2592846号公報(特開平1−30114号公報)には、熱処理時と熱処理後との少なくとも一方において、内部に酸化物超電導粉末などを充填した金属管を高圧力状態に保持することを特徴とする酸化物超電導導体の製造方法が提案されている。この方法によれば、高圧力状態に置くことによって、焼結時に生じる酸化物超電導体と金属管との界面における部分的剥離をなくすことができると上記公報に記載されている。
【0006】
具体的には、内部に酸化物超電導粉末を充填した金属管を、熱処理時と熱処理後との少なくとも一方において、500〜2000kg/cm(約50〜200MPa)の高圧力状態に保持することにより金属管を焼結体側に圧着することができる。これにより、超電導体が部分的にクエンチ現象を生じた場合に、このクエンチ現象によって発生した熱を速やかに取り去ることができる。また、これ以外に、剥離部が応力集中部になり、歪を生じることによる超電導特性の劣化を防止することもできる。
【特許文献1】
特開平5−101723号公報
【特許文献2】
特許第2592846号公報
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特開平5−101723号公報では、密閉容器内の温度上昇に伴なって得られる内部圧は4気圧(0.4MPa)程度である。これにより、焼結時に酸化物超電導結晶間に空隙が生成され、それにより臨界電流密度が低下するという問題があった。
【0008】
また、内部圧が4気圧(0.4MPa)程度であるため、焼結時に生成する酸化物超電導線材の膨れを十分に抑制できず、それにより、臨界電流密度が低下するという問題もあった。
【0009】
また、特許第2592846号公報の方法では、加える圧力が500〜2000kg/cm(約50MPa〜200MPa)と高すぎるために熱処理時の酸素分圧制御が困難となり、臨界電流密度が低下してしまう。
【0010】
本発明の目的は、酸化物超電導結晶間の空隙および酸化物超電導線材の膨れの生成を抑止するとともに熱処理時の酸素分圧制御を容易にすることにより、臨界電流密度を向上できる酸化物超電導線材の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の酸化物超電導線材の製造方法は、以下の特徴を備えている。
【0012】
酸化物超電導体の原材料粉末を金属で被覆した形態を有する線材が作製される。そして、線材が加圧雰囲気中で熱処理される。加圧雰囲気の全圧力は1MPa以上50MPa未満である。
【0013】
本発明の酸化物超電導線材の製造方法によれば、1MPa以上という大きな線材外部の圧力によって、熱処理時に生成する超電導結晶の塑性流動およびクリープ変形が起こるため、酸化物超電導結晶間の空隙は減少される。また、熱処理時に生成する酸化物超電導結晶粉末の隙間内のガスや熱処理時に生成する酸化物超電導結晶粉末に付着したガスが熱処理時に膨張することを、金属管外部からの圧力により抑制することができるので、酸化物超電導線材の膨れの生成は抑止される。以上の結果、臨界電流密度が向上する。
【0014】
また、安定した酸化物超電導相を生成するには、加圧雰囲気中の全圧力の値にかかわらず酸素分圧を常に一定範囲に制御する必要がある。しかし、この場合、加圧雰囲気中の全圧力が50MPaを超える場合には、その全圧力に対する酸素分圧が小さくなる。これにより、加圧雰囲気中の酸素濃度の値が非常に小さくなるため、測定誤差等の影響を強く受けるようになるので、酸素分圧の制御が困難になるという問題がある。本発明の酸化物超電導線材の製造方法によれば、50MPa未満の加圧雰囲気中で熱処理が行なわれるので、加圧雰囲気中の全圧力に対する酸素分圧が小さくなりすぎず、加圧雰囲気中の酸素濃度の値がある程度高いので、測定誤差等の影響をそれほど受けないで酸素分圧の制御が容易となる。
【0015】
上記の酸化物超電導線材の製造方法において好ましくは、熱処理する工程は、熱間等方圧加圧法(HIP:Hot Isostatic Pressing)により行なわれる。
【0016】
これにより、酸化物超電導線材は等方的に加圧されるので、均一に線材の空隙および膨れは防止される。
【0017】
上記の酸化物超電導線材の製造方法において好ましくは、酸化物超電導体は、ビスマスと鉛とストロンチウムとカルシウムと銅とを含み、その原子比として(ビスマスと鉛):ストロンチウム:カルシウム:銅が2:2:2:3と近似して表されるBi2223相を含むBi−Pb−Sr−Ca−Cu−O系の酸化物超電導体である。
【0018】
これにより、結晶間の空隙および酸化物超電導線材の膨れの生成が抑止される結果、臨界電流密度を向上できる。
【0019】
上記の酸化物超電導線材の製造方法において好ましくは、熱処理する工程は、酸素雰囲気中で行なわれ、かつ、酸素分圧は0.003MPa以上0.02MPa以下である。
【0020】
このように酸素分圧を0.003MPa以上0.02MPa以下の範囲に保つことにより、安定した酸化物超電導相が生成し、臨界電流密度を向上させることが可能となる。なお、酸素分圧が0.02MPaを超えると異相が生成し、0.003MPa未満では酸化物超電導相が生成しにくくなり臨界電流密度が低下する。
【0021】
上記の酸化物超電導線材の製造方法において好ましくは、熱処理する工程における熱処理前の昇温時には、加圧雰囲気中の温度上昇に伴なって酸素分圧が増加するように制御される。
【0022】
酸化物超電導相の生成に最適な酸素分圧の値は、温度上昇とともに大きくなる。これにより、熱処理する工程における熱処理前の昇温時においても適切な酸素分圧となるので、安定した酸化物超電導相が生成し、臨界電流密度を向上させることが可能となる。
【0023】
上記の酸化物超電導線材の製造方法において好ましくは、熱処理時には加圧雰囲気中の全圧力が一定となるように制御される。
【0024】
熱処理時には、加圧容器中で線材を支える支持具の酸化により酸素ガスが消費されることや、保圧弁などの圧力調整器の圧力制御時のハンチングや、消費された酸素を補うために追加するガス導入時の圧力変動などにより、全圧力が減少傾向を示すことがある。これにより容器内で急激な減圧が生じると、線材内部の圧力が線材外部の圧力と比較して高くなり、線材の膨れが生成する。しかし、本発明の好ましい局面では熱処理時の全圧力が一定となるように制御されているため、熱処理時の急激な減圧による線材の膨れの生成を防止することが可能となる。
【0025】
上記の酸化物超電導線材の製造方法において好ましくは、熱処理する工程は、酸素雰囲気中で行なわれ、かつ、熱処理時の酸素分圧が10%以内の変動範囲で一定となるように制御される。
【0026】
これにより、温度の変動があっても、酸化物超電導相の生成に最適な酸素分圧の範囲内に酸素分圧をおさめることができるので、安定した酸化物超電導相が生成し、臨界電流密度を向上させることが可能となる。
【0027】
上記の酸化物超電導線材の製造方法において好ましくは、熱処理直後の降温時には、降温による圧力の低下を補うようにガスが注入される。
【0028】
熱処理直後の降温時には温度変化に伴なう圧力低下が起こる。このときに加熱容器内が急激に減圧されると、線材内部の圧力が線材外部の圧力と比較して高くなり、線材の膨れが生成する。しかし、本発明の好ましい局面では降温による圧力低下を補うようにガスが注入されるため、熱処理直後の降温時の急激な減圧による線材の膨れの生成を防止することが可能となる。
【0029】
上記の酸化物超電導線材の製造方法において好ましくは、原材料粉末を被覆する金属が銀を含み、熱処理する工程後の線材の横断面における酸化物超電導体部分の面積に対する金属部分の面積の比(以下、銀比)が1.5である場合には、熱処理直後の降温時の減圧速度が0.05MPa/min以下に制御される。
【0030】
これにより、銀比が1.5である場合において、急激な減圧による線材の膨れの生成を防止する効果がより顕著である。
【0031】
上記の酸化物超電導線材の製造方法において好ましくは、原材料粉末を被覆する金属が銀を含み、銀比が1.5である場合には、熱処理する工程において、雰囲気中の温度が200℃以上の場合には、加圧雰囲気中の全圧力の減圧速度が0.05MPa/min以下となるように制御される。
【0032】
雰囲気中の温度が200℃以上の場合に加熱容器内が急激に減圧されると、線材内部の圧力が線材外部の圧力と比較して高くなり、それにより線材の膨れが生成する。そこで、これにより、銀比が1.5である場合において、熱処理する工程中(熱処理前、熱処理時、熱処理後)における急激な減圧による線材の膨れの生成を抑止する効果がより顕著である。
【0033】
上記の酸化物超電導線材の製造方法において好ましくは、原材料粉末を被覆する金属が銀を含み、銀比が3.0である場合には、熱処理直後の降温時の減圧速度が0.03MPa/min以下に制御される。
【0034】
これにより、銀比が3.0である場合において、急激な減圧による線材の膨れの生成を防止する効果がより顕著である。
【0035】
上記の酸化物超電導線材の製造方法において好ましくは、原材料粉末を被覆する金属が銀を含み、銀比が3.0であり、熱処理する工程において、雰囲気中の温度が200℃以上の場合には、加圧雰囲気中の全圧力の減圧速度が0.03MPa/min以下となるように制御される。
【0036】
雰囲気中の温度が200℃以上の場合に加熱容器内が急激に減圧されると、線材内部の圧力が線材外部の圧力と比較して高くなり、それにより線材の膨れが生成する。そこで、これにより、銀比が3.0である場合において、熱処理する工程中(熱処理前、熱処理時、熱処理後)における急激な減圧による線材の膨れの生成を抑止する効果がより顕著である。
【0037】
上記の酸化物超電導線材の製造方法において好ましくは、熱処理する工程において、加圧雰囲気の全圧力が1MPa以上の場合には、加圧雰囲気中の全圧力の減圧速度が0.05MPa/min以下となるように制御される。
【0038】
雰囲気中の全圧力が1MPa以上の場合に加熱容器内が急激に減圧されると、線材内部の圧力が線材外部の圧力と比較して高くなり、それにより線材の膨れが生成する。これにより、熱処理する工程中(熱処理前、熱処理時、熱処理後)における急激な減圧による線材の膨れの生成を抑止する効果がより顕著である。
【0039】
上記の酸化物超電導線材の製造方法において好ましくは、線材を作製する工程の後であって熱処理する工程の前に、線材をロールにより圧延する工程をさらに備え、圧延する工程後の線材の外皮厚みは200μm以上である。
【0040】
ピンホールは、線材と圧延のロールとの摩擦により線材の表面が荒らされて、外部から酸化物超電導体フィラメントまで貫通することにより主に形成される。しかし、圧延する工程後において酸化物超電導線材の外皮厚みがどの部分でも200μm以上となるような状態で圧延されれば、線材の表面が圧延で荒らされたとしても、外部から酸化物超電導体フィラメントまで穴が貫通することがないため、ピンホールが生成することはない。これにより、上記熱処理する工程により空隙や膨れの生成が抑止され、臨界電流密度を向上できる。なお、本明細書中においてピンホールとは、外部から酸化物超電導体線材フィラメントまで貫通している直径100μm以上の径を有する穴を意味している。また、ピンホールのある線材とは、4mm×10mmの線材中に直径100μm以上の穴が2個以上含まれている線材を意味している。
【0041】
上記の酸化物超電導線材の製造方法において好ましくは、線材を作製する工程の後であって熱処理する工程の前に、銀もしくは銀合金を前記線材の表面に付着させる工程をさらに備えている。
【0042】
単位面積当たりに流すことのできる超電導電流を増やすため、酸化物超電導線材の銀比はできるだけ小さくされている。しかし、銀比が小さい線材は、金属部分の割合が少ないため、外皮厚みを大きくすることができない。特に、熱処理する工程後の外皮厚みが200μm未満の線材は、熱処理する工程前の圧延等の処理の際にピンホールが形成されやすい。ピンホールのある線材は、上記の加圧雰囲気中で熱処理する工程が行なわれても、加圧している気体がピンホールから線材内部に侵入する。このため、線材内外での圧力差がなくなり、加圧により空隙や膨れの生成が抑止されることにより、臨界電流密度の低下が防止される効果が小さい。そこで、線材を作製する工程後であって熱処理する工程前に、銀もしくは銀合金を線材の表面に付着させることにより、ピンホールが銀や銀合金で被覆されて表面から消滅する。したがって、前もってピンホールがない線材にされてから熱処理する工程が行なわれるので、熱処理する工程の際に、加圧している気体がピンホールから線材内部に侵入しなくなる。これにより、上記加圧雰囲気中で熱処理する工程により空隙や膨れの生成が抑止され、臨界電流密度を向上できる。
【0043】
上記の酸化物超電導線材の製造方法において好ましくは、線材を作製する工程の後であって熱処理する工程の前に、線材をロールにより圧延する工程をさらに備え、ロールの線材が接する部分の表面粗さRyは320μm以下である。
【0044】
これにより、線材とロールとの摩擦が小さくなるので、線材の表面が荒らされにくくなり、線材の外皮厚みに関係なくピンホールのない線材が得られる。したがって、熱処理する工程の際に、加圧している気体がピンホールから線材内部に侵入しなくなる。これにより、線材の外皮厚みに関係なく、上記加圧雰囲気中で熱処理する工程により、空隙や膨れの生成が抑止され、臨界電流密度を向上できる。なお、表面粗さRyとは、JIS(Japanese Industrial Standards)に規定された最大高さのことである。
【0045】
上記の酸化物超電導線材の製造方法において好ましくは、熱処理する工程における熱処理前の昇温時には、雰囲気中の温度上昇に伴なって段階的に圧力が増加するように制御される。
【0046】
ピンホールのある線材は、通常の加圧方法で加圧雰囲気中で熱処理する工程が行なわれても、加圧している気体がピンホールから線材内部に侵入するため、線材内外での圧力差がなくなり、加圧により空隙や膨れによる臨界電流密度の低下が防止される効果が小さい。しかし、雰囲気中の温度上昇に伴なって段階的に圧力が増加するように制御されることにより、加圧している気体がピンホールから線材内部に侵入する前に外部圧力が増加される。これにより、線材内外での圧力差が生じ、熱処理する工程前の線材がピンホールを有しているか否かにかかわらず、空隙や膨れの生成が抑止され、臨界電流密度を向上できる。
【0047】
上記超電導線材の製造方法において好ましくは、熱処理する工程における熱処理前の昇温時には、0.05MPa/min以上の速度で雰囲気の全圧力が増加するように制御される。
【0048】
本願発明者らは、線材を熱処理する工程において、加圧している気体がピンホールから線材内部に侵入する速度は約0.05MPa/min未満であることを見出した。したがって、熱処理前の昇温時において、0.05MPa/min以上の速度で雰囲気の全圧力が増加し続けるように制御することで、常に線材内部の圧力よりも雰囲気中の圧力を高く保ち続けることができる。これにより、熱処理する工程前の線材がピンホールを有しているか否かにかかわらず、熱処理前の昇温時において線材に対して圧縮する力を加えることができるので、空隙や膨れの生成が抑止される。その結果、1MPa以上50MPa未満の加圧雰囲気中での熱処理により臨界電流密度の低下を効果的に抑止することができる。
【0049】
上記超電導線材の製造方法において好ましくは、熱処理する工程における熱処理時には、雰囲気中の全圧力が増加し続けるように制御される。
【0050】
これにより、熱処理時において、線材内部の圧力と雰囲気中の圧力とが等しくなるのを遅らせることができ、線材内部の圧力よりも雰囲気中の圧力が高い状態をより長く保ち続けることができる。したがって、熱処理時において空隙や膨れの生成が抑止され、1MPa以上50MPa未満の加圧雰囲気中での熱処理により臨界電流密度の低下を効果的に抑止することができる。
【0051】
上記超電導線材の製造方法において好ましくは、線材を作製する工程の後であって熱処理する工程の前に、線材を圧延する工程をさらに備え、圧延する工程における線材の圧下率は84%以下であり、好ましくは80%以下である。
【0052】
線材を熱処理する工程が1MPa以上50MPa未満の加圧雰囲気中で行なわれる場合には、酸化物超電導線材は熱処理する工程の際においても圧縮される。したがって、線材を圧延する工程が、従来の圧下率より低い84%以下の圧下率で行なわれても、その後の熱処理する工程において原材料粉末が圧縮されるので、結果的に超電導フィラメントの密度を高くすることができる。一方で、線材を圧延する工程が、従来の圧下率より低い84%以下の圧下率で行なわれることにより、原材料粉末中に空隙が生じにくくなるので、酸化物超電導線材の長手方向に垂直な方向に伸びる空隙の発生を抑止することができる。以上の理由により、酸化物超電導線材の臨界電流密度を向上することができる。また、線材を圧延する工程が、80%以下の圧下率で行なわれることにより、原材料粉末中に空隙が生じなくなるので、酸化物超電導線材の長手方向に垂直な方向に伸びる空隙の発生を一層抑止することができる。
【0053】
なお、本明細書中において、圧下率(%)は以下の式で定義されるものである。
【数1】
Figure 0004513567
【0054】
上記の酸化物超電導線材の製造方法において好ましくは、線材に複数回の熱処理が施され、その複数回の熱処理のうち少なくとも1つの熱処理は、全圧力が1MPa以上50MPa未満の加圧雰囲気中で行なわれる。
【0055】
これにより、熱処理時に発生する酸化物超電導結晶間の空隙および酸化物超電導線材の膨れの生成を抑止することが可能となる。
【発明の実施の形態】
【0056】
以下、本発明の実施の形態について図を用いて説明する。
【0057】
実施の形態1
【0058】
図1を参照して、たとえば、多芯線の酸化物超電導線材について説明する。酸化物超電導線材1は、長手方向に伸びる複数本の酸化物超電導体フィラメント2と、それらを被覆するシース部3とを有している。複数本の酸化物超電導体フィラメント2の各々の材質は、たとえばBi−Pb−Sr−Ca−Cu−O系の組成が好ましく、特に、(ビスマスと鉛):ストロンチウム:カルシウム:銅の原子比がほぼ2:2:2:3の比率で近似して表されるBi2223相を含む材質が最適である。シース部3の材質は、たとえば銀よりなっている。
【0059】
なお、上記においては多芯線について説明したが、1本の酸化物超電導体フィラメント2がシース部3により被覆される単芯線構造の酸化物超電導線材が用いられてもよい。
【0060】
次に、上記の酸化物超電導線材の製造方法について説明する。
【0061】
図2を参照して、まず、酸化物超電導体の原材料粉末が金属管に充填される(ステップS1)。この酸化物超電導体の原材料粉末は、たとえば、Bi2223相を含む材質よりなっている。
【0062】
なお、金属管としては熱伝導率の高い銀や銀合金などを用いるのが好ましい。これにより、超電導体がクエンチ現象を部分的に生じた場合に発生した熱を金属管から速やかに取り去ることができる。
【0063】
次に、原材料粉末を充填した金属管は、伸線加工により所望の直径の線材とされる(ステップS2)。これにより、酸化物超電導線材の原材料粉末を金属で被覆した形態を有する線材が得られる。この線材に1次圧延が行なわれ(ステップS3)、その後に1回目の熱処理が行なわれる(ステップS4)。これらの操作により原材料粉末から酸化物超電導相が生成される。この熱処理を施された線材に2次圧延が施される(ステップS5)。これにより1回目の熱処理で生じたボイドが除去される。2次圧延された線材に2回目の熱処理が施される。(ステップS6)。2回目の熱処理で酸化物超電導相の焼結が進むと同時に酸化物超電導相の単相化が行なわれる。
【0064】
上記の製造方法により、たとえば図1に示す酸化物超電導線材を製造することができる。
【0065】
本実施の形態においては、1回目の熱処理(ステップS4)および2回目の熱処理(ステップS6)の少なくともいずれかが、全圧力として1MPa以上50MPa未満の圧力を加えた加圧雰囲気中で行なわれる。
【0066】
この加圧雰囲気中における熱処理は、たとえば熱間等方圧加圧法(HIP)により行なわれる。この熱間等方圧加圧法について以下に説明する。
【0067】
図3を参照して、熱間等方圧加圧法を行なう装置13は、圧力容器円筒6と、その圧力容器円筒6の両端を密閉する上蓋5および下蓋11と、圧力容器円筒6中にガスを導入するために上蓋5に設けられたガス導入口4と、処理品8を加熱するヒータ9と、断熱層7と、処理品8を支える支持具10とにより構成されている。
【0068】
本実施の形態では、原材料粉末を金属管に充填した後に伸線・圧延した線材が、処理品8として圧力容器円筒6内で支持具10に支持される。この状態で、ガス導入口4から所定のガスが圧力容器円筒6内に導入されることで、圧力容器円筒6内は1MPa以上50MPa未満の加圧雰囲気とされ、その加圧雰囲気下でヒータ9により線材8が所定温度に加熱される。この熱処理は酸素雰囲気中で行なわれることが好ましく、酸素分圧は0.003MPa以上0.02MPa以下であることが好ましい。このようにして線材8に熱間等方圧加圧による熱処理が施される。
【0069】
本実施の形態によれば、上記のように1MPa以上50MPa未満の加圧雰囲気中で熱処理を行なうことにより、主に以下の3つの効果が得られる。
【0070】
第一に、熱処理時に酸化物超電導結晶間に生成する空隙を少なくすることができる。
【0071】
本願発明者は、1MPa以上の加圧雰囲気中で熱処理することにより、主に熱処理時に生成する酸化物超電導結晶間の空隙を、1MPa未満の場合よりも格別に少なくできることを見出した。
【0072】
すなわち、図4A〜4Dを参照して、加圧雰囲気中で熱処理すると、熱処理時に生成する酸化物超電導結晶間の接触面積が塑性流動により増加し、超電導結晶間に存在している数μm〜数十μmオーダーの空隙が減少する(図4A→図4B)。この状態で保持すると、図4Cのようにクリープ変形を起こし、接合界面に存在している空隙が収縮するとともに、酸化被膜などの汚染部が一部破壊・分解し、原子の拡散が生じ焼結が進行する。そして最終的に図4Dのように超電導結晶間の空隙がほとんどなくなり、安定した接合界面が形成される。
【0073】
ここで、超電導線に電流を流すということは、超電導線材を構成する超電導結晶間に電流を流すことである。通常、超電導線を使用する冷媒中(たとえば液体窒素やヘリウム、または冷凍機)において、超電導状態(電気抵抗を発生しない)を維持して流すことができる電流量を制限するのは超電導状態が弱い超電導結晶間の接合部である(超電導結晶の方が結晶間の接合部より超電導性は強い)。超電導結晶間の接合部の隙間は、通常の大気焼成ではどうしても残留する。このため、超電導結晶間の隙間を減らすことにより、超電導線の性能がよくなり、臨界電流密度の低下を防止することができる。
【0074】
具体的には、Bi2223相を含む酸化物超電導線材について、大気圧中で熱処理した場合の酸化物超電導体の焼結密度は80〜90%であるのに対し、加圧雰囲気の全圧力を10MPaとして、本発明における製造方法により作製した場合の酸化物超電導体の焼結密度は93〜96%であり、酸化物超電導体結晶間に生成する空隙の減少が見られた。
【0075】
第二に、熱処理時に生成する酸化物超電導線材の膨れを防止することができる。
【0076】
本願発明者は、酸化物超電導線材を加圧雰囲気中で熱処理する際に全圧力を変えたときの熱処理後の線材に生じた膨れ数を調べた。図5を参照して、加圧雰囲気の全圧力が0.5MPaを超えると酸化物超電導線材中の膨れが大幅に減少し、さらに1MPa以上になると、酸化物超電導線材中の膨れがほぼなくなることがわかる。このような結果が得られた理由は以下のように考えられる。
【0077】
金属管中の酸化物超電導体の粉末は通常、焼結前には理論密度の約80%の充填率であるため、粉末の隙間内にはガスが存在する。この粉末の隙間内のガスは熱処理時に高温になると体積膨張し、線材に膨れを生じさせる。しかし、本実施の形態では1MPa以上の加圧雰囲気で熱処理が行なわれるため、金属管内部の圧力よりも金属管外部の圧力を大きくできる。このため、粉末の隙間内のガスによる線材の膨れが防止されるものと考えられる。
【0078】
また、本願発明者が線材の膨れの原因をさらに検討したところ、酸化物超電導体の原材料粉末に付着している炭素(C)、水(HO)、酸素(O)などの吸着物が焼結中に気化して、この気体によって金属管内の体積が膨張して線材の膨れが発生することもわかった。しかし、この粉末の吸着物の気化による線材の膨れも、1MPa以上の加圧雰囲気で熱処理を行なうことにより、金属間の内部の圧力よりも外部の圧力を大きくできるため防止できるものと考えられる。
【0079】
以上により、1MPa以上とすることで、このような酸化物超電導体の原料粉末の隙間に存在するガスによる膨れだけでなく、その粒子の表面に付着している吸着物の気化による膨れもほとんどなくすことができると考えられる。酸化物超電導線材の膨れは臨界電流密度を低下させる原因となるものであるので、線材の膨れを防止することで、臨界電流密度の低下を防止することができる。
【0080】
第三に、熱処理時における酸素分圧の制御を容易にすることができる。
【0081】
本願発明者は、全圧力にかかわらず、酸素分圧を0.003MPa以上0.02MPa以下に制御することにより、Bi系酸化物超電導体の2223相が安定して生成することを見出した。すなわち、酸素分圧が0.02MPaを超えるとCaPbOのような異相が生成してしまい、0.003MPa未満になるとBi2223相が生成しにくくなり、臨界電流密度が低くなる。
【0082】
図6を参照して、たとえば、加圧雰囲気の全圧力が1気圧(0.1MPa)の大気圧である場合には、酸素分圧制御を行なわなくとも、酸素分圧が点線で示す0.2気圧(0.02MPa)のレベルと同等であるため、Bi2223相が安定して生成する。しかしながら、加圧雰囲気の全圧力が2気圧、3気圧・・・と大きくなるにつれて、酸素分圧も大きくなるため、点線で示す0.2気圧のレベルを超えてしまう。その結果Bi2223相が安定して生成しなくなる。そこで、図7に示すように混合ガス中の酸素ガスの混合割合を変えることにより酸素分圧を0.003MPa以上0.02MPa以下に制御する必要がある。なお、図7の点線は図6の点線と同様に0.2気圧(0.02MPa)のレベルを示している。
【0083】
実際の酸素分圧制御は、全圧力と酸素濃度とがモニターされることで行なわれる。すなわち、酸素分圧は全圧力の値に酸素濃度を掛けることで算出される。
【0084】
このため、たとえば、全圧力が50MPaのときには、0.005MPaの酸素分圧で熱処理を行なう場合、酸素濃度は0.01%となる。したがって、0.01%の酸素濃度を測定して、注入する混合ガスを制御する必要がある。しかしながら、0.01%の酸素濃度は測定誤差と同程度であるため、この酸素濃度を正確に測定し、注入する混合ガス中の酸素ガスを制御することは困難である。本実施の形態では、加圧雰囲気中の全圧力を50MPa未満とすることにより、酸素濃度の測定誤差の影響を少なくし、注入する混合ガス中の酸素ガスの濃度をある程度高く保つことができるため、酸素分圧を容易に制御することが可能となる。
【0085】
ところで、1MPa以上の加圧雰囲気中で熱処理を行なう際には、熱処理時および熱処理後に加圧雰囲気で急激な減圧が起こらないように減圧速度を制御することが好ましい。
【0086】
すなわち、1MPa以上の加圧雰囲気中で熱処理を行なう際には、線材表面の微細な空孔から外部のガスが線材内部に入り込み、外部と同じ圧力になっていると考えられる。このような高圧力雰囲気中では、急激な減圧により外部の圧力が下がると、内部からのガスの放出が外部圧力の減少に追いつけなくなり、内部圧力が高くなって膨れを生成することを本願発明者は発見した。
【0087】
したがってこのような膨れを防止するために好ましくは、熱処理時には、全圧力が一定となるようにAr(アルゴン)やN(窒素)などの不活性ガスとOガスとの混合ガスが容器内に注入される。また、熱処理直後の降温時には、降温による圧力の低下を補うように不活性ガスと酸素ガスとの混合ガスが容器内に注入される。熱処理時および熱処理直後の降温時にこれらの減圧速度の制御を行なうことにより、急激な減圧による膨れの生成を防止することができる。
【0088】
図8A、8Bを参照して、図8Aの熱処理時(約800℃の温度)には図8Bに示すように全圧力が一定となるように制御される。つまり、熱処理時には加熱容器中で線材を支える支持具の酸化などにより容器中の酸素ガスが消費されるため、容器内の圧力が減少する。これを防止するために、混合ガスが容器中に注入されて圧力が一定に保たれる。そして、図8Aの熱処理直後の降温時(約800〜約300℃の温度範囲)には図8Bに示すように降温による圧力の低下を補うように混合ガスが容器中に注入され、減圧速度が一定以下に制御される。つまり、降温時には、温度の急激な低下により気体の状態方程式に基づいてガスの圧力も急激に低下しようとするため、混合ガスを注入して降温を緩やかにする必要がある。なお、300℃以下では、約800℃〜約300℃の場合と比較して温度が低いので、線材内部の圧力が既に十分低くなっている。したがって、減圧速度を制御しなくても線材の膨れが生成しないと考えられる。
【0089】
また、酸化物超電導線材の膨れの生成防止のために必要な減圧速度の範囲は、熱処理後の線材の横断面における酸化物超電導体部分の面積に対する金属部分の面積の比(銀比)により異なることを本願発明者は見出した。すなわち、好ましくは、銀比が1.5である場合には、熱処理直後の降温時(800℃〜300℃の温度範囲)の減圧速度は0.05MPa/min以下であり、銀比が3.0である場合には、熱処理直後の降温時(800℃〜300℃の温度範囲)の減圧速度は0.03MPa/min以下である。
【0090】
実施の形態2
【0091】
図9A、9Bの熱処理の条件は、全圧力20MPa、酸素分圧0.008MPa、雰囲気中の温度825℃、熱処理時間50時間である。図9Aを参照して、ピンホールのない酸化物超電導線材は、熱処理後において厚さが約0.006mm〜0.01mm減少している。これは、全圧力20MPaの加圧雰囲気中で熱処理されることにより、酸化物超電導結晶間の空隙および酸化物超電導線材の膨れの生成が抑止されているためである。一方、図9Bを参照して、ピンホールのある酸化物超電導線材は、熱処理後において厚さが約0.002mm〜0.005mmしか減少せず、酸化物超電導結晶間の空隙および酸化物超電導線材の膨れの生成が十分に抑止されていない。また、線材中のピンホールがあった部分(A部分)は、熱処理前よりも熱処理後の方が厚さが大きくなっている。
【0092】
以上により、ピンホールがない場合には、実施の形態1の圧力範囲(1MPa以上50MPa未満)で熱処理すれば空隙や膨れの生成が効果的に抑止できるが、ピンホールがある場合には、実施の形態1の圧力範囲で熱処理するだけでは空隙や膨れの生成が十分に抑止できないことがわかった。
【0093】
本発明における加圧雰囲気中での熱処理においては、1MPa以上という大きな線材外部の圧力によって、熱処理時に生成する超電導結晶の塑性流動およびクリープ変形が起こるため、熱処理時に生成する酸化物超電導結晶間の空隙は抑止される。また、熱処理時に生成する酸化物超電導結晶粉末の隙間内のガスや熱処理時に生成する酸化物超電導結晶粉末に付着したガスが、熱処理時に膨張することを、金属管外部からの圧力により抑制することができるので、酸化物超電導線材の膨れの生成は抑止される。以上の結果、空隙や膨れによる臨界電流密度の低下は防止される。
【0094】
しかし、ピンホールのある線材は、上記の加圧雰囲気中での熱処理が行なわれても、加圧している気体がピンホールから線材内部に侵入するため、線材内外での圧力差がなくなり、加圧により空隙や膨れの生成が十分抑止されない。この結果、臨界電流密度の低下が防止される効果が小さくなっている。
【0095】
そこで本願発明者らは、鋭意検討し、熱処理前にピンホールのない線材とすることで空隙や膨れの生成を十分抑止可能な手法を見出した。
【0096】
第1の手法は、図2の圧延(ステップS3またはS5)後であって熱処理(ステップS4またはステップS6)前の酸化物超電導線材の外皮厚みを200μm以上にすることである。
【0097】
また、第2の手法は、図2の圧延(ステップS3またはS5)に用いるロールの線材が接する部分の表面粗さRyを320μm以下にすることである。
【0098】
また、第3の手法は、図2の圧延(ステップS3またはS5)後であって熱処理(ステップS4またはS6)前に酸化物超電導線材に銀または銀合金をメッキすることである。
【0099】
以下、これらの各手法について具体的に説明する。
【0100】
第1の手法として、図2の圧延(ステップS3またはS5)後であって熱処理(ステップS4またはS6)前の酸化物超電導線材の外皮厚みWが、どの部分でも200μm以上となるようにすることで、圧延(ステップS3またはS5)の際ピンホールが生成しないことを本願発明者らは見出した。ここで外皮厚みWとは、図10に示されるように、線材1の断面において外周部に並んでいる酸化物超電導体フィラメント2と線材1の外表面との圧延後における距離Wを意味している。外皮厚みWを200μm以上となるようにすることでピンホール14が生成しない理由は、以下のように考えられる。
【0101】
ピンホール14は、線材1と圧延のロールとの摩擦により線材1の表面が荒らされて、外部から酸化物超電導体フィラメント2まで貫通することにより主に形成される。しかし、圧延後において酸化物超電導線材1の外皮厚みWがどの部分でも200μm以上となるような状態で圧延されれば、線材1の表面が圧延で荒らされたとしても、外部から酸化物超電導体フィラメント2まで穴が貫通することがないため、ピンホール14が生成することはないと考えられる。なお、図10の上述した以外の構成は、図1に示す構成とほぼ同じであるため、同一部材には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0102】
また、圧延後の酸化物超電導線材の外皮厚みWが200μm未満であっても、上述の第2、第3の手法を用いれば、熱処理の前にピンホール14のない線材が得られ、その結果、加圧雰囲気中で熱処理により空隙や膨れの生成が抑止され、臨界電流密度の低下が効果的に防止されることを本願発明者らは見出した。
【0103】
図11を参照して、圧延は、回転する複数(通常2本)のロール15間に板状または棒状の材料を通して、その厚さまたは断面積を減じ、同時に断面を目的の形状に成形する加工法である。圧延の際、酸化物超電導線材1はロール15からの摩擦力によって複数のロール15間に引き込まれ、そこでロール15の表面15aからの圧縮力を受けて変形する。
【0104】
第2の手法においては、図2に示す1次圧延(ステップS3)および2次圧延(ステップS5)の少なくともいずれかにおいて、線材1が接する部分である表面15aにおける表面粗さRyが320μm以下であるロール15が用いられる。
【0105】
すなわち、圧延の際に用いられるロール15の表面15aの表面粗さRyが320μm以下であれば、線材1とロール15の表面15aの摩擦が小さくなるので、線材1の表面が荒らされにくくなり、線材1の外皮厚みに関係なくピンホールのない線材1が得られる。したがって、熱処理する工程の際に、加圧している気体がピンホールから線材1内部に侵入しなくなる。これにより、線材1の外皮厚みWに関係なく、上記加圧雰囲気中で熱処理する工程により空隙や膨れの生成が抑止され、臨界電流密度の低下が効果的に防止される。
【0106】
また、第3の手法においては、図12に示すように圧延(ステップS3またはS5)の後であって熱処理(ステップS4またはS6)前において、銀もしくは銀合金を線材の表面にメッキする工程(ステップS11またはS12)が行なわれる。なお、メッキする工程(ステップS11またはS12)を追加した以外は図2の方法とほぼ同じであるため、対応する工程には対応する符号を付し、その説明を省略する。
【0107】
図13を参照して、シース部3の外周部分には銀もしくは銀合金16がメッキされていて、これにより外部に開口していたピンホール14は銀もしくは銀合金16により塞がれている。なお、これ以外の構成は、図1の構成とほぼ同じであるため、同一の部材については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0108】
通常、単位面積あたりに流すことのできる超電導電流を増やすため、酸化物超電導線材1の銀比はできるだけ小さくされている。しかし、銀比が小さい線材1は、金属部分の割合が少ないため、外皮厚みWを大きくすることができない。したがって、銀比が小さい線材1は外皮厚みが200μm未満となり、熱処理する工程前の処理(たとえば圧延等)でピンホール14が形成されやすい。ピンホール14のある線材1は、上述のように加圧により空隙や膨れの生成が十分抑止されない。この結果、臨界電流密度の低下が防止される効果が小さくなっている。そこで、熱処理する工程前に銀もしくは銀合金16を線材1の表面にメッキさせることにより、ピンホール14が銀もしくは銀合金16で塞がれて、表面から消滅する。したがって、線材1からピンホール14が消滅されてから熱処理する工程が行なわれるので、熱処理する工程の際に、加圧している気体がピンホール14から線材1内部に侵入しなくなる。これにより、線材1の外皮厚みWの値および圧延に用いられるロール15の表面粗さRyの値に関係なく、上記加圧雰囲気中で熱処理する工程により空隙や膨れの生成が抑止され、臨界電流密度の低下が効果的に防止される。
【0109】
また、次に説明する第4の手法または第5の手法を用いれば、ピンホール14のある線材1であっても空隙や膨れの生成が抑止され、臨界電流密度の低下が効果的に防止されることを本願発明者らは見出した。第4の手法においては、図2に示す1回目の熱処理(ステップS4)および2回目の熱処理(ステップS6)の少なくともいずれかにおいて、熱処理前の昇温時には、温度上昇に伴なって段階的に圧力が増加するように制御される。また、第5の手法においては、図2に示す1回目の熱処理(ステップS4)および2回目の熱処理(ステップS6)の少なくともいずれかにおいて、熱処理前の昇温時には、0.05MPa/min以上の速度で雰囲気の全圧力が増加するように制御される。そして、熱処理時には、雰囲気中の全圧力が増加し続けるように制御される。さらに、熱処理直後の降温時には、降温による圧力の低下を補うように(圧力を追加するように)制御される。はじめに、第4の手法について説明する。
【0110】
図14を参照して、熱処理温度800℃、圧力20MPaという条件で熱処理が行なわれている。このとき、温度上昇に伴なって段階的に圧力が増加するように制御されている。つまり、圧力増加時に、所定圧力で一定時間保持した後に圧力を増加させ、増加後の圧力で再度一定時間保持するというプロセスを繰り返すように圧力が制御されている。具体的には、圧力増加過程において、7MPa程度、10MPa程度、12.5MPa程度、15MPa程度、および17MPa程度で一定時間圧力が保持される。また、圧力を一定時間保持した後に増加させるタイミングは、雰囲気中の温度の測定値に基づいて行なわれる。つまり、室温で圧力を7MPa程度に増加させ、温度が400℃程度に達した時点で圧力を10MPa程度に増加させ、500℃に達した時点で圧力を12.5MPaに増加させ、600℃に達した時点で圧力を15MPa程度に増加させ、700℃に達した時点で圧力を17MPa程度に増加させるようにして圧力が制御される。なお、安定した酸化物超電導相を生成するために、酸素分圧は常に0.003〜0.008MPaの範囲となるように制御される。
【0111】
ピンホールのある線材は、通常の加圧方法で加圧雰囲気中で熱処理する工程が行なわれても、加圧している気体がピンホールから線材内部に侵入するため、線材内外での圧力差がなくなり、加圧により空隙や膨れによる臨界電流密度の低下が防止される効果が小さい。しかし、第4の手法のように、温度上昇に伴なって段階的に圧力が増加するように制御されることにより、加圧している気体がピンホールから線材内部に侵入する前に外部圧力が増加する。これにより、線材内外での圧力差が生じ、熱処理する工程前の線材がピンホールを有しているか否かにかかわらず、空隙や膨れの生成が抑止され、臨界電流密度の低下が効果的に防止される。
【0112】
さらに、上記手法1〜4に以下の手法を組み合わせることにより、線材の空隙および膨れの生成をさらに効果的に抑止することができる。以下、その手法について説明する。
【0113】
その手法においては、図2に示す1回目の熱処理(ステップS4)および2回目の熱処理(ステップS6)の少なくともいずれかにおいて、熱処理する工程において、雰囲気中の温度が200℃以上の場合には、加圧雰囲気中の全圧力の減圧速度が一定速度未満となるように制御される。
【0114】
図15A〜15Dを参照して、熱処理前の昇温時には、上述した第4の手法と同様、雰囲気中の温度上昇に伴なって段階的に圧力が増加するように制御されている。なお、図15Bでは、所定圧力で一定時間保持されていないように見えるが、これは図14よりも図15Bの経過時間のスケールが大きすぎるため、圧力保持部が省略されたように見えるだけで、実際には図14の場合と同様に所定圧力で一定時間保持されている。この昇温工程により、温度815℃、圧力20MPaとされ、その状態で50時間の熱処理が行なわれる。熱処理前の昇温時および熱処理時においては、雰囲気中の温度が200℃以上の場合には、加圧雰囲気中の全圧力の減圧速度が0.05MPa/min以下となるように制御される。そして熱処理後においては、50℃/hの速度で温度が降温される。熱処理後においても、雰囲気中の温度が200℃以上である場合には、加圧雰囲気中の全圧力の減圧速度が0.05MPa/min以下となるように制御される。なお、熱処理後の降温速度が50℃/hである場合には、温度低下に伴なう自然減圧速度は常に0.05MPa/min以下となるので、減圧速度を制御する必要はない。さらに、熱処理前、熱処理時、熱処理後にわたって、酸素濃度は0.04%に保たれている。これにより、酸素分圧は常に0.003〜0.008MPaの範囲となり、安定した酸化物超電導相が生成可能である。
【0115】
雰囲気中の温度が200℃以上の場合に加熱容器内が急激に減圧されると、線材内部の圧力が線材外部の圧力と比較して高くなり、線材の膨れが生成する。そこで、加圧雰囲気中の全圧力の減圧速度が一定速度未満となるように制御されることにより、熱処理中(熱処理前、熱処理時、熱処理後)における急激な減圧による線材の膨れの生成を抑止する効果がより顕著である。
【0116】
なお、銀比が3.0である線材については、雰囲気中の温度が200℃以上の場合に、減圧速度は0.03MPa/min以下となるように制御される。
【0117】
次に、第5の手法について説明する。第5の手法においては、1回目の熱処理(ステップS4)および2回目の熱処理(ステップS6)の少なくともいずれかにおいて、熱処理前の昇温時には、0.05MPa/min以上の速度で雰囲気の全圧力が増加し続けるように制御される。そして、熱処理時には、雰囲気中の全圧力が増加し続けるように制御される。さらに、熱処理直後の降温時には、降温による圧力の低下を補うように(圧力を追加するように)制御される。
【0118】
図16を参照して、熱処理前の昇温時には、雰囲気の温度がたとえば700℃以下の場合には、気体の状態方程式にしたがって緩やかに圧力が増加される。そして、雰囲気の温度が700℃を超えるあたりで、雰囲気中の圧力が10MPa程度まで増加される。このとき、雰囲気中の圧力は0.05MPa/min以上の加圧速度で一気に増加される。
【0119】
ここで、本願発明者らは、ピンホールのある酸化物超電導線材を加圧雰囲気中で熱処理する際に、加圧している気体がピンホールから線材内部に侵入する速度は約0.05MPa/min未満であることを見出した。したがって、熱処理前の昇温時において、0.05MPa/min以上の速度で雰囲気の全圧力が増加し続けるように制御することで、熱処理前の昇温時において線材内部よりも雰囲気中の圧力を高く保ち続けることができる。
【0120】
その後、熱処理時において温度はたとえば830℃に保たれる。一方で雰囲気中の圧力は増加され続ける。熱処理時における加圧速度はなるべく速いことが好ましいが、加圧速度があまり速すぎると全圧力が50MPaを超えてしまうので、熱処理時の全圧力が50MPaを超えないような適切な加圧速度で圧力が増加され続ける必要がある。図16においては、30MPa程度まで圧力が増加されている。これにより、熱処理時において圧力が一定に保たれる場合と比べて、線材内部の圧力と雰囲気中の圧力とが等しくなる時間を時間t1から時間t2に遅らせることができる。このように、熱処理中において線材内部の圧力よりも雰囲気中の圧力が高い状態をより長く保ち続けることができる。
【0121】
その後、熱処理直後の降温時には、気体の状態方程式にしたがって、雰囲気中の温度の低下とともに圧力も低下しようとする。このとき、降温による圧力の低下を補うように(圧力を追加するように)圧力が制御される。なお、安定した酸化物超電導相を生成するために、酸素分圧は常に0.003〜0.02MPaの範囲となるように制御される。
【0122】
第5の手法によれば、熱処理前の昇温時において線材内部の圧力よりも雰囲気中の圧力が高くなるので、線材に対して圧縮する力を加えることができる。また、熱処理時において線材内部の圧力よりも雰囲気中の圧力が高い状態をより長く保ち続けることができる。その結果、熱処理前の昇温時および熱処理時において空隙や膨れの生成が抑止され、1MPa以上50MPa未満の加圧雰囲気中での熱処理により臨界電流密度の低下を効果的に抑止することができる。
【0123】
実施の形態3
【0124】
酸化物超電導線材の臨界電流密度をさらに向上するために、本願発明者らは、熱処理前の昇温時および熱処理時における最適な酸素分圧について鋭意検討を行なった。それにより、図17に示す結果が得られた。
【0125】
図17を参照して、たとえば酸素分圧が0.007MPaである場合には、815℃以上825℃以下の温度範囲であれば、安定した酸化物超電導相が生成し、臨界電流密度が向上することがわかる。また、図には示されていないが、酸素分圧が0.0003MPaである場合には、750℃以上800℃以下の温度範囲、好ましくは770℃以上800℃以下の温度範囲であれば、安定した酸化物超電導相が生成し、臨界電流密度が向上する。また、酸素分圧が0.02MPaである場合には、820℃以上850℃以下の温度範囲、好ましくは830℃以上845℃以下の温度範囲であれば、安定した酸化物超電導相が生成し、臨界電流密度が向上する。さらに、温度が650℃以下の場合には酸素分圧を0.00005MPa以上0.02MPa以下の範囲に制御する必要があることもわかった。
【0126】
以上の温度と酸素分圧との関係から、酸化物超電導相の生成に最適な酸素分圧の値は、温度上昇とともに大きくなっている。したがって、熱処理前の昇温時においては、雰囲気中の温度上昇に伴なって酸素分圧を増加するように制御することにより、酸素分圧を酸化物超電導相の生成に最適な範囲にすることができる。これにより、安定した酸化物超電導相が生成し、臨界電流密度を向上することができる。
また、熱処理時の一定温度で線材が保持される際には、温度に数℃の変動(誤差)が生じることが多い。この温度の変動と、最適な酸素分圧の範囲との関係を考えると、たとえば822.5℃で線材が保持される場合には、最適な酸素分圧は0.006MPa以上0.01MPa以下となるが、825℃に温度が変動した場合には、最適な酸素分圧は0.007MPa以上0.011MPa以下となる。また、820℃に温度が変動した場合には、最適な酸素分圧は0.005MPa以上0.009MPa以下となる。そこで、このような温度の変動があっても常に最適な酸素分圧となるようにするためには、822.5℃で線材が保持される場合には、酸素分圧は0.007MPa以上0.009MPa以下の変動範囲(図17中斜線部分)で一定となるように制御すればよいこととなる。
【0127】
ところで、この酸素分圧の変動範囲は酸素分圧の値の10%程度となっている。したがって、熱処理時の酸素分圧が10%以内の変動範囲で一定となるように制御されることにより、温度の変動があっても最適な酸素分圧の範囲内に酸素分圧をおさめることができるので、安定した酸化物超電導相が生成し、臨界電流密度を向上させることが可能となる。
【0128】
実施の形態4
【0129】
酸化物超電導線材の臨界電流密度をさらに向上するために、本願発明者らは、熱処理中の全圧力の減圧速度が0.05MPa/minとなるように制御し、全圧力の値と線材の膨れの生成との関係について鋭意検討を行なった。
【0130】
Bi:Pb:Sr:Ca:Cu=1.82:0.33:1.92:2.01:3.02の組成比の原料粉末を調製した。この原料粉末を750℃で10時間熱処理した後、800℃で8時間熱処理した。その後、粉砕により得られた粉末を850℃で4時間熱処理した後、再び粉砕を行なった。粉砕により得られた粉末を減圧下で加熱処理した後、外径36mm、内径31mmの銀からなる金属管に充填した。次に、粉末を充填した金属管について伸線加工を行なった。さらに、伸線した線材を61本に束ねて、外径36mm、内径31mmの金属管に嵌合した。次に、伸線加工および1次圧延を行ない、厚さ0.25mm、幅3.6mmのテープ形状のBi2223相を有する超電導線材を得た。次に、この線材に1回目の熱処理を行なった。1回目の熱処理は、大気中で行ない、熱処理温度を842℃とし、熱処理時間を50時間として行なった。次に2次圧延を行なった後、2回目の熱処理を行なった。2回目の熱処理は、酸素分圧を0.008MPaとし、熱処理温度を825℃とし、熱処理時間を50時間とし、熱処理中の全圧力の減圧速度が0.05MPa/minとなるように制御し、表1に示すように全圧力を変化させて行なった。2回目の熱処理後、線材の膨れの有無を調べた。全圧力と線材の膨れの有無とを表1に併せて示す。
【表1】
Figure 0004513567
【0131】
表1の結果から、全圧力が1MPa以上の場合には線材の膨れが発生している。これにより、線材の膨れを抑止するためには、全圧力が1MPa以上の場合に加圧雰囲気中の減圧速度が0.05MPa/min以下となるように制御する必要がある。
【0132】
続いて、2回目の熱処理の熱処理温度を500℃として、同様に線材の膨れの有無を調べた。全圧力と線材の膨れの有無とを表2に併せて示す。
【表2】
Figure 0004513567
【0133】
表2の結果から、熱処理温度が500℃の場合においても全圧力が1MPa以上の場合には線材の膨れが発生している。これにより、熱処理温度が500℃の場合においても、線材の膨れを抑止するためには、全圧力が1MPa以上の場合に加圧雰囲気中の減圧速度が0.05MPa/min以下となるように制御する必要がある。
【0134】
実施の形態5
【0135】
図18を参照して、全圧力が1MPa以上50MPa未満の加圧雰囲気中における熱処理後の酸化物超電導線材1の超電導フィラメント2においては、長手方向(図18中横方向)に長い空隙はほぼ無くなっているのに対して、長手方向に垂直な方向に伸びる空隙20がわずかに残っている。なお、図18においては、超電導フィラメントが1本である単芯線の酸化物超電導線材について示している。
【0136】
すなわち、本願発明者らは、酸化物超電導線材1の長手方向に垂直な方向に伸びる空隙20は、加圧雰囲気中での熱処理によっても減少し難いことを見出した。これは以下の理由によるものと考えられる。加圧雰囲気中においては、圧力が酸化物超電導線材の全ての面に等しく加わる。そして、この圧力により酸化物超電導結晶がクリープ変形を起こし、結晶同士の接合界面に存在している空隙が収縮する。このようにして、酸化物超電導結晶間に生成する空隙は減少する。しかしながら、酸化物超電導線材1は長手方向に長く伸びた形状を有しているので、長手方向には力が伝わりにくく、線材1は長手方向に圧縮されにくい。その結果、酸化物超電導線材1の長手方向に垂直な方向に伸びる空隙20は、加圧雰囲気中での熱処理によっても減少し難い。
【0137】
酸化物超電導線材1の長手方向に垂直な方向に伸びる空隙20は、超電導フィラメント中の電流を遮っているので、酸化物超電導線材1の臨界電流密度が低下する原因の1つとなっている。したがって、この空隙20の生成を抑えれば、酸化物超電導線材1の臨界電流密度をさらに向上することができる。
【0138】
そこで、図2の1次圧延(ステップS5)において、酸化物超電導線材の圧下率を84%以下、好ましくは80%以下とすることで、酸化物超電導線材の長手方向に垂直な方向に伸びる空隙の生成を熱処理前に抑えることができ、その結果酸化物超電導線材の臨界電流密度を向上できることを本願発明者らは見出した。この理由について以下に説明する。
【0139】
1次圧延は、金属管に充填された原材料粉末の密度を高めるために行なわれる工程である。1次圧延において、酸化物超電導線材の圧下率を大きくする(加工率を大きくする)程、金属管に充填された原材料粉末の密度は高くなる。原材料粉末の密度が高くなると、その後の熱処理(ステップS4およびステップS5)により生成する超電導結晶の密度が高くなり、酸化物超電導線材の臨界電流密度が向上する。
【0140】
一方で、1次圧延において、酸化物超電導線材の圧下率を大きくすると、加工率が大きくなることに起因する以下の3つの現象が認められる場合がある。第1に、原材料粉末中に空隙(クラック)が生じる。第2に、酸化物超電導線材中のフィラメントの形状が長手方向に不均一になるソーセージングが生成しやすくなる。第3に、ソーセージングの発生により、超電導フィラメントの断面積が局所的に大きくなった部分において別の超電導フィラメントと接触するブリッジングが発生しやすくなる。これらの現象は、いずれも酸化物超電導線材の臨界電流密度を低下させる原因となり得る。
【0141】
したがって、1次圧延は、原材料粉末の密度が高くなり、かつ原材料粉末中に空隙等が生じないような圧下率で行なわれる必要がある。従来の1次圧延においては、酸化物超電導線材は約86〜90%という圧下率で圧延されていた。
【0142】
しかしながら、熱処理が1MPa以上50MPa未満の加圧雰囲気中で行なわれる場合には、熱処理の際においても酸化物超電導線材が圧縮される効果が得られる。したがって、1次圧延が84%以下の圧下率で行なわれても、その後の加圧雰囲気中での熱処理において原材料粉末が圧縮されるので、結果的に酸化物超電導線材の超電導フィラメントの密度を高くすることができる。一方で、1次圧延が84%以下の圧下率で行なわれることにより、原材料粉末中に空隙が生じにくくなるので、酸化物超電導線材の長手方向に垂直な方向に伸びる空隙が生じることを抑止できる。さらに、1次圧延が80%以下の圧下率で行なわれることにより、原材料粉末中に空隙が完全に生じなくなる。以上の理由により、酸化物超電導線材の臨界電流密度を向上できる。
【0143】
図19を参照して、大気中で熱処理を行なう場合には、1次圧延が約86%の圧下率で行なわれるときに酸化物超電導線材の臨界電流密度が最も高くなっている。一方、本発明の加圧雰囲気中で熱処理を行なう場合には、1次圧延が約82%の圧下率で行なわれるときに酸化物超電導線材の臨界電流密度が最も高くなっている。このように、熱処理が1MPa以上50MPa未満の加圧雰囲気中で行なわれる場合、酸化物超電導線材の臨界電流密度を向上するための最適な1次圧延の圧下率は、低圧下率側にシフトすることがわかる。
【0144】
本願発明者らは、上記の効果を確認すべく、本実施の形態における酸化物超電導線材を以下の条件で作製し、臨界電流密度の計測を行なった。
【0145】
図2に示す酸化物超電導線材の製造工程に基づいて、原材料粉末を金属管に充填し、伸線加工を行なった。次に1次圧延を行ない、テープ形状の超電導線材を得た。1次圧延は82%、87%の2種類の圧下率で行なった。また、1次圧延は、直径100mmのロールを用い、動粘度が10mm2/sである潤滑油を用いた。次に、この線材に1回目の熱処理を行なった。1回目の熱処理は、酸素文圧を0.008MPaとし、熱処理温度を830℃とし、熱処理時間を30時間として行なった。次に、2次圧延加工を行なった。2次圧延は、5〜30%の圧下率で、直径300mmのロールを用い、潤滑油を用いずに行なった。次に、2回目の熱処理を行なった。2回目の熱処理は、酸素分圧を0.008MPaとし、熱処理温度を820℃とし、熱処理時間を50時間として行なった。2回目の熱処理後、得られた酸化物超電導線材の臨界電流密度の計測を行なった。
【0146】
その結果、1次圧延において、圧下率を87%とした酸化物超電導線材では30kA/cm2の臨界電流密度となった。一方、圧下率を82%とした酸化物超電導線材では40kA/cm2の臨界電流密度となった。また以上の結果により、1次圧延(ステップS5)において、酸化物超電導線材の圧下率を84%以下とすることで、酸化物超電導線材の長手方向に垂直な方向に伸びる空隙の生成を熱処理前に抑えることができ、その結果酸化物超電導線材の臨界電流密度を向上できることがわかる。
【0147】
なお、上記各実施の形態においては、熱間等方圧加圧法によるBi2223相を有する酸化物超電導線材の製造方法について説明を行っているが、1MPa以上50MPa未満の加圧雰囲気で熱処理する方法であれば、熱間等方圧加圧法以外の加圧法により本発明を実施することも可能である。また、本発明はビスマス系以外のイットリウム系などの他の組成を有する酸化物超電導線材の製造方法についても適応できる。
【0148】
本発明の実施の形態2においては、銀もしくは銀合金を線材にメッキする工程が行なわれる場合について示したが、銀もしくは銀合金が線材に付着される工程であれば、たとえばスパッタする工程により本発明を実施することも可能である。加えて、図14、図15A〜15Dにおいては、温度と圧力と酸素濃度と酸素分圧との具体的な制御条件が示されているが、本発明はこの条件に限定されるものではなく、温度上昇に伴なって段階的に圧力が増加するように制御され、雰囲気中の温度が200℃以上の場合には、加圧雰囲気中の全圧力の減圧速度が0.05MPa/min以下となるように制御されればよい。
【0149】
本発明の実施の形態2の第1〜第5の手法は、実施の形態1の熱処理条件と組み合せられることにより、ピンホールの発生を防止でき、またはピンホールが発生した場合でも、線材の空隙や膨れの生成を効果的に抑止することができる。
【0150】
また、本発明の実施の形態2の第1〜第5の手法は、適宜組み合わせることにより、線材の空隙や膨れの生成をより効果的に抑止することができる。
【0151】
本発明の実施の形態2の第5の手法においては、熱処理直後の降温時には、降温による圧力の低下を補うように(圧力を追加するように)制御される場合について示したが、本発明はこのような場合に限定されるものではなく、少なくとも熱処理時に雰囲気中の圧力が増加し続けるように制御されればよい。
【0152】
本発明の実施の形態3においては、熱処理前の昇温時および熱処理時における最適な酸素分圧の数値範囲の一例が示されたが、本発明はこの数値範囲で酸素分圧を制御する場合に限定されるものではなく、雰囲気中の温度上昇に伴なって酸素分圧が増加するように制御するものであればよい。
【0153】
実施の形態5においては、圧延時の潤滑油の動粘度や圧延に用いられるロールの直径についての一例が示されたが、本発明はこのような圧延条件に限定されるものではなく、圧延する工程における線材の圧下率が84%以下であればよい。
【0154】
以上に開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正や変形を含むものと意図される。
【0155】
以上のように本発明に係る酸化物超電導線材の製造方法は、臨界電流密度の低下を防止できる酸化物超電導線材の製造方法に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 酸化物超電導線材の構成を概念的に示す部分断面斜視図である。
【図2】 酸化物超電導線材の一の製造工程を示す図である。
【図3】 熱間等方圧加圧法(HIP)装置の概略断面図である。
【図4】 4A〜4Dは酸化物超電導結晶間の空隙の挙動を段階的に示す概念図である。
【図5】 加圧雰囲気の全圧力P(MPa)と線材の膨れ数(個/10m)の関係を示す図である。
【図6】 窒素が約80%、酸素が約20%の割合の混合ガスについての全圧力と酸素分圧を表した図である。
【図7】 酸素分圧を一定にした場合の全圧力と酸素濃度値の関係を表した図である。
【図8】 8Aは、熱処理直後の減圧速度制御を行った場合の時間と線材の温度との関係を示す図、8Bは、熱処理直後の減圧速度制御を行った場合の時間と容器内の全圧力との関係を示す図である。
【図9】 9Aは、加圧雰囲気中における熱処理前後におけるピンホールのない酸化物超電導線材の線材厚さを示すグラフ、9Bは、ピンホールのある酸化物超電導線材の線材厚さを示すグラフである。
【図10】 ピンホールのある酸化物超電導線材の構成を概念的に示す部分断面斜視図である。
【図11】 実施の形態2における圧延方法を示す模式断面図である。
【図12】 酸化物超電導線材の他の製造工程を示す図である。
【図13】 銀もしくは銀合金を線材にメッキする工程後の酸化物超電導線材の構成を概念的に示す部分断面斜視図である。
【図14】 実施の形態2の第4の手法における熱処理時の温度および圧力と時間との関係を示す図である。
【図15】 15Aは、実施の形態2における銀比が1.5である場合の熱処理する工程の温度と時間の関係を示す図、15Bは、実施の形態2における銀比が1.5である場合の熱処理する工程の圧力と時間の関係を示す図、15Cは、実施の形態2における銀比が1.5である場合の熱処理する工程の酸素濃度と時間の関係を示す図、15Dは、実施の形態2における銀比が1.5である場合の熱処理する工程の酸素分圧と時間との関係を示す図である。
【図16】 実施の形態2の第5の手法における熱処理する工程の温度および圧力と時間との関係を示す図である。
【図17】 熱処理時における温度と酸素分圧との最適な組み合わせを示した図である。
【図18】 空隙が残る酸化物超電導線材の構成を概念的に示す部分断面斜視図である。
【図19】 酸化物超電導線材における1次圧延における圧下率と臨界電流密度との関係を模式的に示した図である。
【符号の説明】
1 酸化物超電導線材、2 酸化物超電導体フィラメント、3 シース部(銀等)、4 ガス導入口、5 上蓋、6 圧力容器円筒、7 断熱層、8 処理品、9 ヒータ、10 支持具、11 下蓋、12 酸化物超電導結晶、13 熱間等方圧加圧法装置、14 ピンホール、15 ロール、15a ロールの表面、16 銀または銀合金。

Claims (18)

  1. 酸化物超電導体の原材料粉末を金属で被覆した形態を有する線材を作製する工程(S1、S2)と、
    前記線材を加圧雰囲気中で熱処理する工程(S4、S6)とを備え、
    前記加圧雰囲気の全圧力は1MPa以上50MPa未満であり、
    前記熱処理する工程(S4、S6)は、酸素雰囲気中で行なわれ、かつ、酸素分圧は0.003MPa以上0.02MPa以下であり、
    前記熱処理する工程(S4、S6)における熱処理前の昇温時には、前記加圧雰囲気中の温度上昇に伴なって前記酸素分圧が増加するように制御することを特徴とする、酸化物超電導線材の製造方法。
  2. 酸化物超電導体の原材料粉末を金属で被覆した形態を有する線材を作製する工程(S1、S2)と、
    前記線材を加圧雰囲気中で熱処理する工程(S4、S6)とを備え、
    前記加圧雰囲気の全圧力は1MPa以上50MPa未満であり、
    熱処理時には前記加圧雰囲気中の全圧力が一定となるように制御することを特徴とする、酸化物超電導線材の製造方法。
  3. 酸化物超電導体の原材料粉末を金属で被覆した形態を有する線材を作製する工程(S1、S2)と、
    前記線材を加圧雰囲気中で熱処理する工程(S4、S6)とを備え、
    前記加圧雰囲気の全圧力は1MPa以上50MPa未満であり、
    前記熱処理する工程(S4、S6)は、酸素雰囲気中で行なわれ、かつ、熱処理時の酸素分圧が10%以内の変動範囲で一定となるように制御することを特徴とする、酸化物超電導線材の製造方法。
  4. 酸化物超電導体の原材料粉末を金属で被覆した形態を有する線材を作製する工程(S1、S2)と、
    前記線材を加圧雰囲気中で熱処理する工程(S4、S6)とを備え、
    前記加圧雰囲気の全圧力は1MPa以上50MPa未満であり、
    熱処理直後の降温時には、降温による圧力の低下を補うようにガスを注入することを特徴とする、酸化物超電導線材の製造方法。
  5. 前記原材料粉末を被覆する前記金属が銀を含み、前記熱処理する工程後の前記線材(1)の横断面における前記酸化物超電導体部分(2)の面積に対する前記金属部分(3)の面積の比が1.5であり、
    前記熱処理直後の降温時の減圧速度が0.05MPa/min以下であることを特徴とする、請求項4記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  6. 前記原材料粉末を被覆する前記金属が銀を含み、前記熱処理する工程後の前記線材(1)の横断面における前記酸化物超電導体部分(2)の面積に対する前記金属部分(3)の面積の比が1.5であり、
    前記熱処理する工程(S4、S6)において、前記加圧雰囲気中の温度が200℃以上の場合には、前記加圧雰囲気中の全圧力の減圧速度が0.05MPa/min以下となるように制御することを特徴とする、請求項5記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  7. 前記原材料粉末を被覆する前記金属が銀を含み、前記熱処理する工程(S4、S6)後の前記線材(1)の横断面における前記酸化物超電導体部分(2)の面積に対する前記金属部分(3)の面積の比が3.0であり、
    前記熱処理直後の降温時の減圧速度が0.03MPa/min以下であることを特徴とする、請求項4記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  8. 前記原材料粉末を被覆する前記金属が銀を含み、前記熱処理する工程(S4、S6)後の前記線材(1)の横断面における前記酸化物超電導体部分(2)の面積に対する前記金属部分(3)の面積の比が3.0であり、
    前記熱処理する工程(S4、S6)において、前記加圧雰囲気中の温度が200℃以上の場合には、前記加圧雰囲気中の全圧力の減圧速度が0.03MPa/min以下となるように制御することを特徴とする、請求項7記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  9. 酸化物超電導体の原材料粉末を金属で被覆した形態を有する線材を作製する工程(S1、S2)と、
    前記線材を加圧雰囲気中で熱処理する工程(S4、S6)とを備え、
    前記加圧雰囲気の全圧力は1MPa以上50MPa未満であり、
    前記熱処理する工程(S4、S6)において、前記加圧雰囲気の全圧力が1MPa以上の場合には、前記加圧雰囲気中の全圧力の減圧速度が0.05MPa/min以下となるように制御することを特徴とする、酸化物超電導線材の製造方法。
  10. 酸化物超電導体の原材料粉末を金属で被覆した形態を有する線材を作製する工程(S1、S2)と、
    前記線材を加圧雰囲気中で熱処理する工程(S4、S6)とを備え、
    前記加圧雰囲気の全圧力は1MPa以上50MPa未満であり、
    前記線材を作製する工程(S1、S2)の後であって前記熱処理する工程(S4、S6)の前に、前記線材をロール(15)により圧延する工程(S3)をさらに備え、
    前記圧延する工程(S3)後の前記線材(1)の外皮厚みは200μm以上である、酸化物超電導線材の製造方法。
  11. 酸化物超電導体の原材料粉末を金属で被覆した形態を有する線材を作製する工程(S1、S2)と、
    前記線材を加圧雰囲気中で熱処理する工程(S4、S6)とを備え、
    前記加圧雰囲気の全圧力は1MPa以上50MPa未満であり、
    前記線材を作製する工程(S1、S2)の後であって前記熱処理する工程(S4、S6)の前に、銀もしくは銀合金(16)を前記線材(1)の表面に付着させる工程(S11)をさらに備える、酸化物超電導線材の製造方法。
  12. 酸化物超電導体の原材料粉末を金属で被覆した形態を有する線材を作製する工程(S1、S2)と、
    前記線材を加圧雰囲気中で熱処理する工程(S4、S6)とを備え、
    前記加圧雰囲気の全圧力は1MPa以上50MPa未満であり、
    前記線材を作製する工程(S1、S2)の後であって前記熱処理する工程(S4、S6)の前に、前記線材をロール(16)により圧延する工程(S3)をさらに備え、
    前記ロール(16)の前記線材(1)が接する部分の表面粗さは最大高さRyが320μm以下である、酸化物超電導線材の製造方法。
  13. 酸化物超電導体の原材料粉末を金属で被覆した形態を有する線材を作製する工程(S1、S2)と、
    前記線材を加圧雰囲気中で熱処理する工程(S4、S6)とを備え、
    前記加圧雰囲気の全圧力は1MPa以上50MPa未満であり、
    前記熱処理する工程(S4、S6)における熱処理前の昇温時には、雰囲気中の温度上昇に伴なって段階的に圧力が増加するように制御することを特徴とする、酸化物超電導線材の製造方法。
  14. 酸化物超電導体の原材料粉末を金属で被覆した形態を有する線材を作製する工程(S1、S2)と、
    前記線材を加圧雰囲気中で熱処理する工程(S4、S6)とを備え、
    前記加圧雰囲気の全圧力は1MPa以上50MPa未満であり、
    前記熱処理する工程(S4、S6)における熱処理前の昇温時には、0.05MPa/min以上の速度で雰囲気中の全圧力が増加するように制御することを特徴とする、酸化物超電導線材の製造方法。
  15. 前記熱処理する工程(S4、S6)における熱処理時には、前記雰囲気中の全圧力が増加し続けるように制御することを特徴とする、請求項14記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  16. 酸化物超電導体の原材料粉末を金属で被覆した形態を有する線材を作製する工程(S1、S2)と、
    前記線材を加圧雰囲気中で熱処理する工程(S4、S6)とを備え、
    前記加圧雰囲気の全圧力は1MPa以上50MPa未満であり、
    前記線材を作製する工程(S1、S2)の後であって前記熱処理する工程(S4、S6)の前に、前記線材を圧延する工程(S3)をさらに備え、
    前記圧延する工程(S3)における前記線材(1)の圧下率は84%以下である、酸化物超電導線材の製造方法。
  17. 前記圧延する工程(S3)における前記線材(1)の圧下率は80%以下である、請求項16記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  18. 酸化物超電導体の原材料粉末を金属で被覆した形態を有する線材を作製する工程(S1、S2)と、
    前記線材を加圧雰囲気中で熱処理する工程(S4、S6)とを備え、
    前記加圧雰囲気の全圧力は1MPa以上50MPa未満であり、
    前記線材に複数回の熱処理(S4、S6)が施され、前記複数回の熱処理(S4、S6)のうち少なくとも1つの熱処理は、全圧力が1MPa以上50MPa未満の加圧雰囲気中で行なわれる、酸化物超電導線材の製造方法。
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