JP4512146B2 - 有機トランジスタの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、有機トランジスタとその製造方法、およびそれを用いた有機ELディスプレイに関する。本発明の有機トランジスタの有機半導体膜は、インクジェット法や凸版印刷法などの印刷プロセスにより作製される。
近年、プラズマディスプレイや液晶ディスプレイなどの薄型ディスプレイの低価格化が進み、より低コストで生産することが急務になっている。これに応じて、低コストである生産技術として、インクジェット法や凸版印刷法などの印刷プロセスが注目を浴びている。例えば、現在主流であるシリコントランジスタの半導体膜は、真空プロセス(真空蒸着やスパッタリング等)およびフォトリソグラフィプロセスを用いて形成されており、製造コストが非常に高くなるという課題を抱えている。それに対して、有機半導体材料を用いて印刷プロセスで形成した有機半導体膜を有する有機トランジスタは、非常に安価に製造されうる。
有機半導体膜を、有機半導体材料を用いて印刷プロセスで形成するには、有機半導体膜を配置すべき領域を囲む隔壁(バンク、リブなどとも称する)が必要となる。隔壁とは、有機物(ポリマーやモノマーなど)や、無機物で形成される物理的な境界を意味する。
例えば、液体材料を塗布する領域の外周部に隔壁を形成し、隔壁で囲まれた領域に液体材料を塗布し、乾燥させることによって、デバイスを作製する方法が記載されている(特許文献1を参照)。この方法により、真空プロセスが不要になるとともに、塗布領域を隔壁で囲むことにより、使用する液体材料を最小限に抑えることができるので、製造コストが安くなる。
一方、ゲート絶縁膜のエッチングに用いたレジストマスクを隔壁として、ゲート電極を塗布法で形成する方法が記載されている(特許文献2を参照)。
特開2003−318131号公報 特開2006−237477号公報
前記の通り印刷プロセスでデバイスを作製するには、隔壁の形成が必要となる。隔壁の形成には、例えば、スピンコートによる感光性樹膜の成膜→ベーク→露光→現像→洗浄という工程が必要となる。この隔壁の形成が、デバイス形成のコストを高める一因となる。
また、隔壁で囲まれたセル内に印刷プロセスで液体材料を形成させるためには、隔壁表面とセル表面の液体に対する親液性(または撥液性)に差異を設ける必要がある。具体的には、隔壁表面を撥液性に、セル表面を親液性に制御する必要がある。その制御手段の一つとして、酸素プラズマ処理による親液化、およびCF(テトラフルオルメタン)プラズマ処理による撥液化がある。しかし、プラズマを用いた処理による撥液性または親液性は、数十分間しか維持されず、短時間で消失してしまうという問題がある。そのため、安定してデバイス生産することが困難となる。
また、基板面積が大きい場合や、基板の材質がプラスチックなどのフレキシブル材料である場合には、フォトリソグラフィにより隔壁を形成するときに、下地とのアライメント精度が悪化して、製品歩留りが低下するという問題もあった。
さらに、従来の方法で形成した隔壁を用いて有機トランジスタを塗布法で作製すると、フォトリソグラフィ工程での露光機のアライメント精度の制約上、必要量以上にソース・ドレイン電極とゲート電極とがオーバーラップしてしまうことがある。ソース・ドレイン電極とゲート電極とのオーバーラップが過剰になると、寄生容量が増大して、トランジスタ特性の悪化を引き起こすことも考えられる。
本発明は、まず、塗布法で形成された有機半導体膜を有する有機トランジスタを、有機半導体膜を形成するための隔壁を形成するプロセスを経ることなく製造する手段を提供する。さらに本発明は、基板の大きさや種類に関わらず、アライメント精度よく隔壁を形成することにより、高特性の有機トランジスタを提供する手段を提供する。また本発明は、そのような有機トランジスタを含む有機ELディスプレイを提供する。
本発明は、ソース電極とドレイン電極をパターニングするためのマスキング膜を隔壁として併用して、有機半導体膜を塗布法で形成することに着想してなされた。
本発明は、以下に示す有機トランジスタの製造方法に関する。
] 基板、前記基板上に形成された金属膜、および前記金属膜上に形成されたネガ型の感光性樹脂膜とを含む積層体を準備するステップと、
前記感光性樹脂膜に光を照射して、かつ現像することにより、互いの櫛型形状の歯がかみあっている2つの櫛型形状にパターニングするステップと、
前記櫛型形状にパターニングされた感光性樹脂膜をマスキング膜として、金属膜をエッチングして、櫛型形状のソース電極部およびドレイン電極部を形成するステップと、
前記櫛型形状にパターニングされた感光性樹脂膜に酸素プラズマまたはUVオゾンを照射して、前記ソース電極部および前記ドレイン電極部の櫛型形状の歯を支持する部分と、歯を支持する部分の端部に位置する歯の部分以外の感光性樹脂膜を消失させるステップと、
前記照射後に残存した感光性樹脂膜を隔壁として、有機半導体膜を塗布形成するステップと、
を含む、有機トランジスタの製造方法。
] 前記櫛型形状の電極部のうち、前記隔壁が配置されていない部分の電極線幅は、前記隔壁が配置された部分の電極線幅の半分より小さい、[]に記載の製造方法。
] 前記感光性樹脂膜の厚さは、前記隔壁が配置された部分の電極線幅よりも大きい、[]または[]に記載の製造方法。
] 前記感光性樹脂膜を櫛型形状にパターニングするステップにおいて、
前記感光性樹脂膜にハーフトーンマスクを介して光を照射して、かつ現像することにより、前記櫛型形状の歯を支持する部分と、歯を支持する部分の端部に位置する歯の感光性樹脂膜の厚さを、前記櫛型形状の歯を支持する部分の端部に位置する歯以外の歯の感光性樹脂膜の厚さよりも大きくする、[]に記載の製造方法。
] 前記感光性樹脂膜は、撥液性樹脂膜である、[]〜[]のいずれかに記載の製造方法。
] 前記有機半導体膜上にゲート絶縁膜を形成するステップと、前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成するステップと、をさらに含む、[]〜[]のいずれかに記載の製造方法。
] 前記基板には、ゲート電極とゲート絶縁膜が配置されており、かつ前記金属膜は、前記ゲート絶縁膜上に積層されている、[]〜[]のいずれかに記載の製造方法。
本発明によれば、有機半導体膜を形成するための隔壁の形成プロセスを省略して、有機トランジスタを製造することができるので、生産性が向上する。また、ソース電極部とドレイン電極部を形成するためのレジスト膜を剥離する必要がないので、レジストの残渣が残ることもなくなる。
さらに、基板の大きさや種類に関わらずアライメント精度が高まる。本発明の有機トランジスタは、ソース電極またはドレイン電極と、ゲート電極とがオーバーラップする領域が小さくなるため、寄生容量が減少しトランジスタ特性を向上させることができる。
1.有機トランジスタの製造方法
本発明の有機トランジスタの製造方法は、1)フォトリソグラフィで得られたマスキング膜で、ソース電極およびドレイン電極をパターニングするステップ、2)ソース電極およびドレイン電極をパターニングするために用いたマスキング膜を隔壁として、有機半導体材料を塗布するステップを含むことを特徴とする。図1〜図3を参照して、有機トランジスタの製造方法を説明する。
まず、基板1と、前記基板上に形成された金属膜2と、前記金属膜上に形成されたネガ型の感光性樹脂膜3とを含む積層体10を準備する(図1A)。基板1は絶縁体であれば無機物であっても有機物であってもよく、特に限定されないが、たとえばPET(PET:Polyethylene Terephthalate)、PEN(PEN:Polyethylene Naphthalate)、ガラスなどで構成される。
バックゲート型の有機トランジスタを製造する場合には、基板1にゲート電極と、ゲート電極を覆うゲート絶縁膜を配置し(不図示)、ゲート絶縁膜に金属膜2と感光性樹脂膜3とを積層することが好ましい。
金属膜2は、パターニングされてソース電極およびドレイン電極となる。したがって、金属膜2の材質は、金、クロム、銀、銅、アルミニウムまたは白金などであることが好ましい。金属膜の厚さは、約100nmであればよい。
感光性樹脂膜3は、ネガ型であることが好ましい。ネガ型の感光性樹脂膜とは、光(例えば紫外線)が照射された部位が硬化し、一方、照射されない部位は現像工程で現像液(例えばアルカリ溶液)に溶解して除去される樹脂膜をいう。感光性樹脂膜3の厚さは、通常は1〜10μmである。感光性樹脂膜3は、フォトリソグラフィによりパターニングされて、ソース電極やドレイン電極をパターニングするためのマスキング膜(図1Bの3Aと3B参照)となり、かつ有機半導体材料を含有するインクを印刷するための隔壁(図1Dの4Aと4B参照)ともなる。
有機半導体材料を塗布する領域を囲む隔壁(図1Dの4Aと4B参照)には、撥液性が求められる。隔壁が撥液性であれば、印刷されたインクが隔壁をこえて漏れ出すことが抑制される。したがって前記感光性樹脂膜3は、撥液性を有することが好ましい。撥液性の樹脂膜の好ましい例には、フッ素含有樹脂膜などが含まれる。さらにフッ素含有樹脂膜は、材料中にフッ素成分を含有し、ベーキングした際にフッ素成分が膜の表層に浮き出てきて、撥液性を示すことがより好ましい。
感光性樹脂膜3の材料を撥液性樹脂とすることにより、形成された隔壁の撥液性を調整する処理を行う必要がなくなる。従来のプラズマ処理による親液性や撥液性の調整では、処理後の親液性や撥液性が短時間しか維持されないという問題があった。一方、本発明により形成する隔壁の親液性や撥液性は、数日間安定して維持されうる。また、プラズマ処理を省略できるので、生産コストも低くできる。
前記感光性樹脂膜3に光を照射して、かつ現像することにより、櫛型形状にパターニングする(図1B)。つまり、櫛型形状の開口部を有するマスクを介して光を照射して、照射部分の樹脂膜を硬化する。照射する光は、感光性樹脂膜の感光性に応じて適宜選択すればよく、紫外線やX線などでありうる。光照射により硬化された樹脂膜を現像液で現像する。現像液は、感光性樹脂膜の種類に応じて選択されればよく、アルカリ性溶液に溶ける樹脂であれば、アルカリ性溶液を現像液とすればよい。
パターニング形状は、2つの櫛型形状が対向した形状とする。櫛型形状の例が、図2に示される。つまり図2は、図1Bに示される積層体の上面図である。図2に示されるように、櫛型形状にパターニングされた膜3Aおよび3Bのそれぞれの歯が、互いにかみ合って対向している。櫛形形状は、櫛の歯を支持する部分(3A−1と3B−1)と、歯を構成する部分(3A−2と3A−3、および3B−2と3B−3)とを有する。
パターニング後の樹脂膜の特徴1
櫛型形状の歯を支持する部分(3A−1と3B−1)および櫛型形状の歯のうちの歯を支持する部分の端部にある歯(3A−2および3B−2)の幅Xは、櫛型形状の歯を支持する部分の端部にある歯以外の歯(3A−3および3B−3)の幅Yに対して、2倍以上であることが好ましい。幅Xは、通常1〜10μmであることが好ましい。
また、幅Xは、感光性樹脂膜の厚さTよりも小さいことが好ましい。つまり、感光性樹脂膜の厚さTと、幅Xと幅Yは、以下の関係を満たすことが好ましい。
T > X > 2Y
電極の線幅を調整することにより、ソース電極部とドレイン電極部の上であって、外周部(3A−1と3A−2、および3B−1と3B−2)にのみ隔壁を形成することが可能となり(詳細は後述する)、効率よく有機半導体材料を塗布することができる。櫛型電極の櫛歯部分の上部にも隔壁があると、有機半導体材料を塗布したときに均一に形成できない可能性がある。また、ソース電極とドレイン電極の形状を櫛型形状にすることにより、電極の表面積が増大し、電流量を多く流すことが可能となり特性の優れた有機トランジスタを作製できる。
パターニング後の樹脂膜の特徴2
一方、櫛型形状の線幅を調整するのではなく、櫛型形状にパターニングされた樹脂膜の厚さを制御してもよい。つまり、前記櫛型形状の歯を支持する部分(3A−1と3B−1)と、歯を支持する部分の端部に位置する歯(3A−2および3B−2)の感光性樹脂膜の厚さを、前記櫛型形状の歯を支持する部分の端部に位置する歯以外の歯(3A−3および3B−3)の感光性樹脂膜の厚さよりも大きくしてもよい。パターニングされた樹脂膜の厚さを制御することによっても、ソース電極部とドレイン電極部の上であって、外周部(3A−1と3A−2、および3B−1と3B−2)にのみ隔壁を形成することが可能となる。
パターニング後の樹脂膜の厚さを部位選択的に制御するには、例えばハーフトーンマスクを介して、露光光を照射する。つまり、櫛型形状の歯を支持する部分(3A−1と3B−1)と、歯を支持する部分の端部に位置する歯(3A−2および3B−2)に照射する光の量を、歯を支持する部分の端部に位置する歯(3A−2および3B−2)に照射する光の量よりも多くすればよい。一方、感光性樹脂膜がポジ型であるときは、歯を支持する部分の端部に位置する歯(3A−2および3B−2)に照射する光の量よりを多くすればよい。
櫛型形状にパターニングされた感光性樹脂膜3Aと3Bをマスキング膜として、金属膜2をエッチングして櫛型形状にパターニングする(図1C)。金属膜2のエッチングは、エッチャントを用いて行えばよい。たとえは金属膜2が金であれば、王水や、ヨウ化カリウムとヨウ素の水溶液をエッチャントとすればよい。こうして、基板1の上に、パターニングされた金属膜(ソース電極2Aおよびドレイン電極2B)と、パターニングされた感光性樹脂膜3Aと3Bとが積層された積層体が得られる(図1C)。
従来の手法によれば、パターニングされた感光性樹脂膜3Aと3Bは、金属膜2をエッチングした後に剥離されていた。一方、本発明では、感光性樹脂膜3Aと3Bを剥離することなく、次の処理に付すことを特徴とする。
エッチングにより得られた積層体の感光性樹脂膜3Aと3Bに、酸素プラズマ照射処理またはUVオゾン照射処理をする。酸素プラズマ照射は、得られた積層体を、積層体ごとプラズマチャンバに投入して行えばよい。プラズマを照射されると、感光性樹脂膜3Aと3Bはエッチングされて徐々に小さくなり、4Aと4Bとなる(図1D)。プラズマ照射は、ダウンフロー型のプラズマ処理装置で行うことが好ましい。ダウンフロー型のプラズマ雰囲気にプラズマチャンバ内に投入された積層体の全体が曝されると、感光性樹脂膜3Aと3Bは上下左右に等方的にエッチングされやすい。
酸素プラズマ照射の投入電力を約200〜300[W]とし、酸素流量は50〜100[ml/min]に設定することが好ましい。処理時間を約10分間とすることで、200〜500[nm](好ましくは約400[nm])エッチングする。
図3は、図1Dに示される積層体の上面図である。図3に示されたように、酸素プラズマ照射処理またはUVオゾン照射処理により、2つの櫛形形状が対向するようにパターニングされた感光性樹脂膜3Aと3Bのうち、櫛型形状の歯を支持する部分(3A−1と3B−1)と、歯を支持する部分の端部にある歯に相当する部分(3A−2と3B−2)に形成された膜は、4Aと4Bとなって残存する。一方、櫛の歯に相当する部分(3A−3と3B−3)に形成された膜は消失する。
つまり、前記の通り、3A−3と3B−3の幅Yは、幅Xよりも小さくされている(前述の「パターニング後の樹脂膜の特徴1」参照)ので、3A−3と3B−3の感光性樹脂膜が消失しても、3A−1と3B−1および3A−2と3B−2の感光性樹脂膜の一部は、4Aおよび4Bとして残存する。このように、「T > X > 2Y」の関係を満たすので、図1Dに示したように、基板1をチャンバー内に投入して等方的にエッチングを行うと、ソース・ドレイン電極の外周部にのみ隔壁4Aおよび4Bを形成することができる。
また、3A−3と3B−3の樹脂膜の厚さが、3A−1と3B−1および3A−2と3B−2の樹脂膜の厚さよりも薄くされている(前述の「パターニング後の樹脂膜の特徴2」参照)場合も、同様に3A−3と3B−3の感光性樹脂膜が消失しても、3A−1と3B−1および3A−2と3B−2の感光性樹脂膜の一部は、4Aおよび4Bとして残存する。
酸素プラズマ照射処理またはUVオゾン照射処理により、3A−3と3B−3の部分には電極部2Aおよび2Bが完全に露出する。一方、3A−1と3B−1および3A−2と3B−2の部分も、残存した4Aと4Bの周囲に電極部2Aおよび2Bが露出する(図3)。電極部を露出させることにより、電極部と有機半導体膜との接続性をより高めることができる。
次に、前記残された感光性樹脂膜4Aと4Bを隔壁として、有機半導体材料を含有するインクを印刷して、有機半導体膜5を形成する(図1E)。
ここでソース電極2Aをエッチングするためのマスキング膜3Aと、ドレイン電極2Bをエッチングするためのマスキング膜3Bには、必然的に分離しており、隙間Sがある(図2参照)。ソース電極とドレイン電極と構造的に分離させなければならないからである。
したがって、酸素プラズマ照射処理またはUVオゾン照射処理により形成した隔壁4Aと4Bにも、必然的に隙間S’がある(図3参照)。この隙間S’から、印刷したインクが流出しないようにするため、隙間S’の間隔を適切に制御する必要がある。したがって、隙間S’の間隔は狭いほうがよいが、一方で、狭すぎると毛細管現象が生じてインクが漏れ出すことがある。
そこで隙間S’において毛細管現象が生じないように、その幅を設定する。毛細管現象とは、液体が微小な径の流路を流動する現象であり、流路と液体との表面張力(界面張力)により生じる圧力を原動力とする。表面張力(界面張力)により生じる圧力は、以下の式で表される。
Figure 0004512146
隔壁4Aと4Bとの間の隙間S’の幅を”b”、隔壁4Aと4Bの高さを”h”とすると、そのときの水力直径Dは、下記式で計算される。下記式に基づいて、隙間S’の幅bを設定すればよい。このように、隙間S’幅bは、印刷するインクの粘度によって異なるが、通常は20μm〜200μmの範囲である。
Figure 0004512146
隔壁4Aと4Bとで囲まれた領域への有機半導体材料を含むインクの塗布は、例えばインクジェット法や凸版印刷法により行うことができる。有機半導体材料の例には、ポルフィリン,ペンタセンおよびテトラセンなどが含まれる。形成する有機半導体膜5の厚さは約100[nm]であればよい。
トップゲート型の有機トランジスタを製造する場合には、有機半導体膜5の形成後、ゲート絶縁膜6およびゲート電極7を順次形成する(図1F)。ゲート絶縁膜6の厚さは約500[nm]、ゲート電極7の厚さは100[nm]とすればよいが、特に限定されない。ゲート絶縁膜6の材料としてはシリコン酸化物、シリコン窒化物などの無機化合物、およびベンゾシクロブテンなどの有機化合物を用いる。ゲート電極7の材料としては、クロム,銀,アルミニウム,金およびタンタル、そしてその多層構造材料,複合材料などを用いる。ゲート絶縁膜6やゲート電極7の形成方法は、インクジェット法や凸版印刷法などの印刷法であっても、真空蒸着やスパッタリングなどの真空プロセスを用いた方法であってもよい。
一方、バックゲート型の有機トランジスタを製造する場合には、予め、基板にゲート電極とゲート絶縁膜を配置して、かつゲート絶縁膜上に、前記金属膜2と前記感光性樹脂膜3を積層すればよい。
2.有機トランジスタ
本発明の有機トランジスタは、基板と;基板上に形成されたソース電極部およびドレイン電極部と;ソース電極部およびドレイン電極部の一部の上に配置された隔壁と;隔壁で規定される領域に配置されて、ソース電極部とドレイン電極部とを接続する有機半導体膜と;有機半導体膜にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極とを有する。本発明の有機トランジスタは、いわゆる「トップゲート型有機トランジスタ」であっても、「バックゲート型トランジスタ」であってもよい。「トップゲート型」である場合には半導体膜上にゲート絶縁膜を有し、当該ゲート絶縁膜上にゲート電極を有する。また、「バックゲート型」である場合には、基板にゲート電極と、ゲート電極を覆うゲート絶縁膜とが配置され、当該ゲート絶縁膜上にソース・ドレイン電極、及びソース電極部とドレイン電極部とを接続する有機半導体膜とが配置されている。
本発明の有機トランジスタは、例えば、前述の製法により製造されるが、特に限定されるわけではない。例えば、酸素プラズマ照射処理またはUVオゾン照射処理によってエッチングする代わりに、大気圧プラズマやレーザーアブレーションによって、櫛の歯の部分の感光性樹脂膜(図2における3A−3および3B−3)を選択的に除去してもよい。
基板上に形成されたソース電極部およびドレイン電極部は、櫛形形状をしていることが好ましい。櫛型形状のソース電極部およびドレイン電極部は、互いの前記櫛型形状の歯がかみあっている状態で配置される。
トランジスタ特性の一つである移動度(μ)は、下記式に示す通り、1)ソース電極およびドレイン電極と、半導体膜との接触面積(W)に比例し、2)ソース電極とドレイン電極との間の距離(L)に反比例する。そこで接触面積(W)を高めるため、ソース電極およびドレイン電極のそれぞれを櫛型形状(図3参照)として、互いの櫛の歯をかみ合わせて配置することが好ましい。
Figure 0004512146
ここで隔壁は、有機半導体膜の周囲を完全には取り囲まず、わずかな隙間を有していることを特徴とする。隔壁は、ソース電極とドレイン電極をパターニングするためのマスキング膜としても用いるため、必然的に分離するためである。
また隔壁(通常は樹脂)は、ソース電極部とドレイン電極部の一部の上に形成されている。具体的には、ソース電極部とドレイン電極部の形状が櫛型である場合には、1)櫛の歯を支持する部分と、2)櫛の歯のうち、櫛の歯を支持する部分の端部に位置する歯の上に、隔壁が形成されている(図3参照)。
また隔壁は、1)櫛の歯を支持する部分と、2)櫛の歯のうち、櫛の歯を支持する部分の端部に位置する歯の上に形成されているが、それらの部分の電極部の全てを覆っているわけではなく、それらの部分の一部を露出させている(図3参照)。露出された部分の上には、有機半導体膜が配置される(図1E参照)ので、有機半導体膜と電極部との接続性が高まる。
3.有機ELディスプレイ
本発明の有機ELディスプレイは、前述の有機トランジスタを具備することを特徴とするが、その他は従来の有機ELディスプレイと同様でありうる。有機トランジスタは、例えば有機EL素子の駆動TFTとして用いられたり、スイッチングTFTとして用いられたりする。
本発明に係る有機トランジスタとそれを用いた有機ELディスプレイおよびその製造方法は、隔壁の形成プロセスを省略することができる。また、ソース電極部やドレイン電極部をパターニングするためのマスキング膜を剥離する必要がないため、レジストの残渣が残存するという懸念もなくなる。よって、インクジェット法や凸版印刷法などの印刷プロセスを有する有機トランジスタの生産のコストを低減できる。
さらに、基板の大きさや種類に関わらずアライメント精度良く隔壁を形成することができる。さらに、ソース・ドレイン電極とゲート電極がオーバーラップする面積を最小にすることができるため、寄生容量が減少された有機トランジスタが得られる。
本発明の有機トランジスタは、例えば、有機ELディスプレイなどの半導体(TFT)に適応することができる。
本発明の有機トランジスタの製造方法のプロセスを示す工程断面図である。 図1Bの上面図である。 図1Dの上面図である。
符号の説明
1 基板
2 金属膜
2A ソース電極
2B ドレイン電極
3 感光性樹脂膜
3A,3B パターニングされた感光性樹脂膜
3A−1,3B−1 櫛型形状の歯を支持する部分
3A−2,3B−2 櫛型形状の歯のうち、櫛型形状の歯を支持する部分の端部に配置された部分
3A−3,3B−3 櫛型形状の歯の部分
4A,4B 隔壁
5 有機半導体膜
6 ゲート絶縁膜
7 ゲート電極
S,S’ 隙間
X 電極部の線幅
Y 電極部の線幅

Claims (7)

  1. 基板、前記基板上に形成された金属膜、および前記金属膜上に形成されたネガ型の感光性樹脂膜を含む積層体を準備するステップと、
    前記感光性樹脂膜に光を照射して、かつ現像することにより、互いの櫛型形状の歯がかみあっている2つの櫛型形状にパターニングするステップと、
    前記櫛型形状にパターニングされた感光性樹脂膜をマスキング膜として、前記金属膜をエッチングして、櫛型形状のソース電極部およびドレイン電極部を形成するステップと、
    前記櫛型形状にパターニングされた感光性樹脂膜に酸素プラズマまたはUVオゾンを照射して、前記ソース電極部および前記ドレイン電極部の櫛型形状の歯を支持する部分と、歯を支持する部分の端部に位置する歯の部分以外の感光性樹脂膜を消失させるステップと、
    前記照射後に残存した感光性樹脂膜を隔壁として、有機半導体膜を塗布形成するステップと、
    を含む、有機トランジスタの製造方法。
  2. 前記櫛型形状のソース電極部およびドレイン電極部のうち、前記隔壁が配置されていない部分の電極線幅は、前記隔壁が配置された部分の電極線幅の半分より小さい、請求項に記載の製造方法。
  3. 前記感光性樹脂膜の厚さは、前記隔壁が配置された部分の電極線幅よりも大きい、請求項に記載の製造方法。
  4. 前記感光性樹脂膜を櫛型形状にパターニングするステップにおいて、
    前記感光性樹脂膜にハーフトーンマスクを介して光を照射して、かつ現像することにより、前記櫛型形状の歯を支持する部分と、歯を支持する部分の端部に位置する歯の感光性樹脂膜の厚さを、前記櫛型形状の歯を支持する部分の端部に位置する歯以外の歯の感光性樹脂膜の厚さよりも大きくする、請求項に記載の製造方法。
  5. 前記感光性樹脂膜は、撥液性樹脂膜である、請求項に記載の製造方法。
  6. 前記有機半導体膜上にゲート絶縁膜を形成するステップと、前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成するステップと、をさらに含む、請求項に記載の製造方法。
  7. 前記基板には、ゲート電極とゲート絶縁膜が配置されており、かつ
    前記金属膜は、前記ゲート絶縁膜上に積層されている、請求項に記載の製造方法。
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