JP4510951B2 - ソーコナイト型合成粘土、その製法及び用途 - Google Patents
ソーコナイト型合成粘土、その製法及び用途 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ソーコナイト型合成粘土、その製法及び用途に関するもので、より詳細には積層構造の規則性に優れており、感圧紙用顕色剤としての耐候性に顕著に優れたソーコナイト型合成粘土及びその製法に関する。
【0002】
【従来の技術】
合成ソーコナイトの製造は既に公知であり、例えば、本出願人の提案になる特公平5−13889号公報には、スメクタイト族粘土鉱物を該粘土鉱物の面指数〔001〕のX線回折ピークが実質上消失し且つ生成物のAl2O3/SiO2のモル比が1/11乃至1/99の範囲となる様に酸処理した粘土鉱物の酸処理物と、亜鉛の酸化物、水酸化物又は反応条件下に該酸化物乃至は水酸化物を生成し得る化合物とを、ZnO/SiO2のモル比が1/4乃至6/4の組成比で、130乃至170℃の温度、該温度に対応する自生蒸気圧下で水熱処理することにより製造できることが記載されている。
【0003】
合成ソーコナイトを感圧紙用顕色剤として用いることも既に知られており、例えば、特公平4−48106号公報には、合成ソーコナイト型フィロケイ酸亜鉛と、フェノール性水酸基含有有機化合物とを含有することを特徴とする感圧紙用顕色剤組成物が記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記提案は、ソーコナイト型フィロケイ酸亜鉛を合成したという点で意義のあるものではあるが、未だ天然の粘土鉱物にみられるような積層構造の規則性が不十分であり、感圧紙用顕色剤の用途に用いた場合にも単独では十分な発色性能をあげるに至っていない。
【0005】
本発明者らは、非晶質シリカと、特定の亜鉛化合物とを、鉱化剤の存在下に水熱処理すると、スメクタイトの積層構造の規則性に優れたソーコナイト型合成粘土が生成することを見出した。
【0006】
即ち、本発明の目的は、天然の粘土鉱物と同様に、スメクタイトの積層構造の規則性に優れたソーコナイト型合成粘土及びその製法を提供するにある。
本発明の他の目的は、感圧紙用顕色剤として使用したとき、顕著に優れた発色性能と著しく改善された耐候性とを示すソーコナイト型合成粘土及びその製法を提供するにある。
【0008】
本発明によれば、下記式(1)
Mx・ZnySi8O20(OH)z‥(1)
式中、Mは水素イオンまたは1価カチオンであり、
xは0.1〜1の数であり、
yは2.5〜10の数であり、
zは2.8〜7の数であって、
しかも−1.5<(x/2)+y−z<1.5を満足する数である、
で表される化学組成を有し、面指数(001)の面間隔が0.9〜1.3nmに単一のX線回折ピークを有し、更にエチレングリコール処理した状態で面指数(001)の面間隔が1.5〜1.9nmと面指数(002)の面間隔が0.86〜0.91nmとにX線回折ピークを有し、且つ下記式(2)
Rs=I001/I06‥(2)
式中、I001はエチレングリコール処理した状態で面指数(001)の面間隔が
1.5〜1.9nmのX線回折ピーク面積を表し、
I06はエチレングリコール処理した状態で面指数(06)の面間隔が0.1527
〜0.1532nmのX線回折ピーク面積を表す、
で定義されるX線回折ピーク面積比(Rs)が3.2以上であることを特徴とするソーコナイト型合成粘土が提供される。
【0009】
ここで、式(1)におけるx,y,zの関係が
−1.5<(x/2)+y−z<1.5
であり、電価のバランスがとれていないが、これはシリカ原材料等には微量のAl、Fe、Ca等が含まれており、この金属の微妙な電価の影響によりバランスがとれているためと考えられる。
【0010】
本発明のソーコナイト型合成粘土は、乾燥物基準で0.10meq/g以上のカチオン交換容量を有することが好ましい。
また、本発明のソーコナイト型合成粘土は、前記式(1)におけるMがアルカリ金属であり、下記式(3)
Rp=I001/I'001‥(3)
式中、I001はエチレングリコール処理した状態で面指数(001)の面間隔が
1.5〜1.9nmのX線回折ピーク面積を表し、
I'001はエチレングリコール処理前の状態で面指数(001)の面間隔が0.9
〜1.3nmのX線回折ピーク面積を表す、
で定義されるX線回折ピーク面積比(Rp)が1.4以上であることが好ましい。
本発明によればまた、非晶質シリカと、亜鉛華、水酸化亜鉛及び炭酸亜鉛からなる群より選択された亜鉛化合物とを、水溶性のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩から選択された鉱化剤の存在下水熱処理することを特徴とするソーコナイト型合成粘土の製法が提供される。
本発明によれば更に、上記ソーコナイト型合成粘土からなることを特徴とする感圧紙用顕色剤が提供される。
【0011】
【発明の実施形態】
[ソーコナイト型合成粘土]
本発明のソーコナイト型合成粘土は、基本的にソーコナイト型フィロケイ酸亜鉛の骨格を有しているが、上記式(1)の化学組成に示すとおり、一定量の水素イオン或いは1価カチオンを含有していること、及び上記式(2)で示されるX線回折ピーク面積比(Rs)を有していることが顕著な特徴である。
【0012】
上記の水素イオン或いは1価カチオンの大部分は、イオン交換性の成分としてソーコナイト型合成粘土に組み込まれており、この合成粘土は、乾燥物基準で0.10meq/g以上、一般に0.10乃至1.00meq/gのカチオン交換容量(CEC)を示す。
このように、水素イオンや1価カチオンが組み込まれたソーコナイト型粘土鉱物は、本発明以前未知のものであると共に、後述するスメクタイトの積層構造の発達にも重要な影響をもたらすものである。
【0013】
添付図面の図1(A)は、本発明のソーコナイト型合成粘土のX線回折像であり、図1(B)は図1(A)のソーコナイト型合成粘土をエチレングリコール処理したもののX線回折像である。
一方、図2(A)は前記公知例によるソーコナイト型フィロケイ酸亜鉛のX線回折像であり、図2(B)は図2(A)のソーコナイト型フィロケイ酸亜鉛をエチレングリコール処理したもののX線回折像である。
【0014】
これらのX線回折像から次の事実が明らかとなる。即ち、ソーコナイト型合成粘土そのものは、面指数(001)の面間隔が0.9〜1.3nm(0.77〜1.11nm −1 )に実質上単一のX線回折ピークを有するが、エチレングリコール処理により層間の間隔を一定にした試料では、底面反射で、面指数(001)の面間隔が1.5〜1.9nm(0.53〜0.67nm −1 )と面指数(002)の面間隔が0.86〜0.91nm(1.10〜1.16nm −1 )との複数の位置にX線回折ピークを有することが明らかとなる。
【0015】
更に、図2(A)及び2(B)の従来のソーコナイト型フィロケイ酸亜鉛と、図1及び2の本発明のソーコナイト型合成粘土とを対比すると、本発明の合成粘土では、従来のものに比して、面指数(001)の回折ピーク強度がかなり大きくなっていると共に、エチレングリコール処理した状態で面指数(06)の回折ピーク強度当たり面指数(001)の回折ピーク強度比もかなり大きくなっていることが明らかである。
即ち、前記式(2)
Rs=I001/I06‥(2)
式中、I001はエチレングリコール処理した状態で面指数(001)の面間隔が
1.5〜1.9nm(0.53〜0.67nm −1 )のX線回折ピーク面積を表し
、
I06はエチレングリコール処理した状態で面指数(06)の面間隔が0.1527
〜0.1532nm(6.527〜6.549nm −1 )のX線回折ピーク面積を
表す、
によるX線回折ピーク面積比(Rs)は、従来のものでは3.1以下であるのに対して、本発明による合成粘土では、3.2以上である。
【0016】
また、エチレングリコール処理したものの面指数(001)のX線回折ピーク強度は、エチレングリコール処理前での面指数(001)のX線回折ピーク強度を基準として、下記式(3)
Rp=I001/I'001‥(3)
式中、I001はエチレングリコール処理した状態で面指数(001)の面間隔が
1.5〜1.9nm(0.53〜0.67nm −1 )のX線回折ピーク面積を表し
、
I'001はエチレングリコール処理前の状態で面指数(001)の面間隔が0.9
〜1.3nm(0.77〜1.11nm −1 )のX線回折ピーク面積を表す、
で定義されるX線回折ピーク面積比(Rp)で表されるが、従来のNaタイプのものではこのRpが1.3以下であるのに対して、本発明によるNaタイプの合成粘土ではこのRpの値が1.4以上である。
【0017】
一般に、ソーコナイトは、式(4)
Zn3Si4O10(OH)2 ‥(4)
で表される化学構造を有する三層構造のフィロケイ酸亜鉛であって、2つのシリカの四面体層が、ZnO6の八面体層を間に挟んで三層に積層されたものを基本骨格とし、この基本骨格が場合によりC軸方向に積層された構造を有するものであると知られている。
本発明のソーコナイト型合成粘土では、前記式(1)に示すとおり、上記基本骨格のZnO6八面体層の一部が空位となっており、この空位を補う形で水素イオン或いは1価カチオンが層間に入った構造をとっていると思われる。
【0018】
本発明のソーコナイト型合成粘土では、Rsの値が3.2以上で示されるように、基本三層構造の積み重ねが非常に規則的に行われており、粘土としての積層構造の規則性が至って優れていることが了解される。
【0019】
本発明のソーコナイト型合成粘土は、非晶質シリカと、亜鉛華、水酸化亜鉛及び炭酸亜鉛からなる群より選択された亜鉛化合物とを水熱処理することにより合成されるが、本発明では鉱化剤の存在下に水熱処理することが重要である。
この鉱化剤は、基本三層構造の層間に入る1価カチオンを供給するものであり、この1価カチオンが基本三層構造の形成とそれらの積層とを規則性よく制御しているものと考えられる。
【0020】
本発明のソーコナイト型合成粘土は、後述する例に示すとおり、感圧紙用顕色剤として、発色性能と耐候性との組合せに特に優れている。一般に、天然産のスメクタイトやその酸処理物は、一般に、合成のケイ酸類やケイ酸塩、アルミノケイ酸塩に比して発色性能、耐候性に優れており、これが天然産のスメクタイトやその酸処理物が感圧複写システムに未だに使用されている理由であるが、本発明のソーコナイト型合成粘土は、従来のソーコナイト型フィロケイ酸亜鉛に比しては勿論のこと、天然産のスメクタイトやその酸処理物に比しても、発色性能や耐候性に優れており、しかも合成粘土であるため、鉄分等の不純物をほとんど含有していなく、白色性にも優れているという利点がある。
【0021】
本発明のソーコナイト型合成粘土は、一般的にいって、BET法で測定して、50乃至200m2/gの比表面積と、JIS.K.5101.21(1991)で測定して、50乃至160ml/100gの吸油量とを有する。
粒子径は特に限定されないが、レーザ散乱法で測定して、中位径(D50)が1乃至7μm、特に2乃至5μmの範囲にあるのがよい。
【0022】
[合成法]
本発明のソーコナイト型合成粘土は、非晶質シリカと、亜鉛華、水酸化亜鉛及び炭酸亜鉛からなる群より選択された亜鉛化合物とを鉱化剤の存在下水熱処理することにより合成される。
【0023】
一方の原料である非晶質シリカとしては、それ自体公知の非晶質シリカ原料は何れでも使用でき、例えば、湿式法非晶質シリカ、例えば、沈降法による非晶質シリカや、ゲル法による非晶質シリカは勿論のこと、気相法非晶質シリカやコロイダルシリカなどを用いることができる。
【0024】
他方の原料である亜鉛系化合物としては、亜鉛華、水酸化亜鉛、炭酸亜鉛が好適に使用されるが、反応条件下で亜鉛の酸化物や水酸化物を生成しうるものであれば、他の亜鉛系化合物も勿論使用可能である。
【0025】
非晶質シリカと亜鉛系化合物とは、一般式(1)で示した化学量論的量で用いるのがよい。
【0026】
鉱化剤としては、水溶性のアルカリ金属塩やアンモニウム塩が使用される。アルカリ金属塩としては、ナトリウム塩やカリウム塩が挙げられ、塩としては、塩化物、硝酸塩、硫酸塩などの鉱酸塩が好適であり、具体例としては、食塩、芒硝、塩化アンモン等が挙げられる。
鉱化剤の使用量は、SiO2とZnOとの合計量100重量部を基準にして、5乃至80重量部、特に7乃至30重量部の範囲が好適である。
【0027】
水熱処理は、勿論水の存在下に行うが、一般に反応の均一性や、反応物の仕込みや生成物の取り出しの容易さの点で、固形分濃度が4乃至30重量%の水性スラリーの形で反応を行うのが有利である。
【0028】
反応温度は一般に100℃以上、特に140乃至200℃の温度で、オートクレーブ内で1時間以上、特に2乃至10時間反応を行うのがよい。
反応後の合成粘土は、濾過し、水洗し、乾燥し、所望により粉砕、分級して製品とする。
【0029】
本発明のソーコナイト型合成粘土には、所望により、種々の後処理を行うことができる。
例えば、水素型のソーコナイト型合成粘土を製造するには、カチオン種がアンモニウム型であるソーコナイト型合成粘土を製造し、これを300乃至600℃の温度で焼成することにより、水素型のソーコナイト型合成粘土を合成することができる。
【0030】
[用途]
本発明のソーコナイト型合成粘土は、感圧紙用顕色剤、抗菌剤、消臭剤などとして有用である。
【0031】
本発明のソーコナイト型合成粘土は感圧紙用顕色剤として特に有用であり、この用途に際しては、顕色剤を紙の表面に塗布して、感圧複写紙の発色剤層として使用する。
感圧複写紙の製造に際しては、前記顕色剤を20乃至45重量%、特に30乃至40重量%、及び結着剤を4乃至10重量%、特に6乃至8重量%含む水性スラリーを製造し、この水性スラリーを紙の表面に塗布し、乾燥する。
【0032】
この場合、スラリーの塗工量は、乾燥基準で紙表面当りの顕色剤として2乃至15g/m2、特に3乃至10g/m2となる範囲がよい。結着剤としては、水性ラテックス系結着剤、例えばスチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、カルボキシル変性スチレンブタジエン共重合体ラテックス;自己乳化型結着剤、例えば自己乳化型アクリル樹脂;水溶性結着剤、例えばカルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、シアノエチル化澱粉、カゼイン等の1種又は2種以上の組合せが使用される。
【0033】
勿論、本発明のソーコナイト型合成粘土は単独で顕色剤として使用し得る他に、それ自体公知のロイコ色素用顕色剤、例えばフェノール類、フェノール樹脂類サリチル酸亜鉛乃至はその誘導体、モンモリロナイト酸処理物等との組合せでロイコ色素用顕色剤として使用される。また、増量や顕色性能補助等の目的で、炭酸カルシウム、各種ゼオライト、モンモリロナイト、アタパルガイト、カオリン、タルク等の鉱物類を配合することができる。
【0034】
本発明の感圧紙を用いる複写において、ロイコ色素としては、この種の感圧記録等に使用されているロイコ色素は全て使用でき、例えば、トリフェニルメタン系ロイコ色素、フルオラン系ロイコ色素、スピロピラン系ロイコ色素、ローダミンラクタム系ロイコ色素、オーラミン系ロイコ色素、フェノチアジン系ロイコ色素等が単独又は2種以上の組み合わせで使用される。これらのロイコ色素のマイクロカプセル層を設けた上葉紙と組合せ、感圧記録の用途に供する。本発明の顕色剤は、黒色系のロイコ色素との組合せで特に優れた効果を与える。
【0035】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明を説明する。実施例で用いた測定方法は以下の通りである。
【0036】
[1]化学組成
強熱減量(Ig-loss) 、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化ナトリウム(Na2O)の分析はJIS.M.8855に準拠して測定した。また、ZnO は原子吸光法を用いた。
【0037】
[2]X線回折
理学電機(株)製X線回折装置を用いた。
ターゲット Cu
フィルター Ni
検出器 SC
電圧 35KVP
電流 15mA
カウントフルスケール 8000c/s
時定数 1sec
走査速度 2°/min
チャート速度 2cm/min
スリット DS1° RS0.3mm SS1°
照角 6°
【0038】
[3]エチレングリコール処理品のXRD測定
試料1gに、10%エチレングリコール水溶液5mLを加えてよくなじませてから、50℃に設定したオーブンに1昼夜入れて乾燥する。得られた試料を測定方法[2]の条件でXRD測定した。
【0039】
[4]面積比(Rs,Rp)
Rs=I001/I06 ‥(2)
式中、I001はエチレングリコール処理した状態で面指数(001)の面間隔が1.5〜1.9nmのX線回折ピーク面積を表し、
I06はエチレングリコール処理した状態で面指数(06)の面間隔が0.1527〜0.1532nmのX線回折ピーク面積を表す、で定義されるX線回折ピーク面積比(Rs)および
Rp=I001/I'001 ‥(3)
式中、I001はエチレングリコール処理した状態で面指数(001)の面間隔が1.5〜1.9nmのX線回折ピーク面積を表し、
I'001はエチレングリコール処理前の状態で面指数(001)の面間隔が0.9〜1.3nmのX線回折ピーク面積を表す、
で定義されるX線回折ピーク面積比(Rp)を、上記測定方法[2]及び[3]の条件で測定したX線回折図からそれぞれの回折ピーク面積を求め、式(2)または(3)にしたがって算出した。
【0040】
[5]CEC測定(カチオン交換能)
日本鉱物協会、東海支部の無機砂型研究部会発行の試験方法TIKS−413に準拠し、測定した。
【0041】
[6]示差熱重量分析
理学(株)製TAS−100−TG8110を用いて測定した。測定条件としては、標準物質α−Al2O3、昇温速度10℃/分、空気雰囲気の室温乃至950℃迄の範囲での熱分析を行なった。
【0042】
[7]BET比表面積
カルロエルバ社製Sorptomatic Series 1900を使用し、BET法により測定した。
【0043】
[8]吸油量
JIS.K.5101.21(1991)に準拠して測定した。
【0044】
(実施例1)
3Lの水に137gの食塩を溶解させ、980gの珪酸ゲル(SiO2:6.6mol)と358gの酸化亜鉛を添加して分散させる。得られた懸濁液を内容積5Lのオートクレーブに仕込み、160℃で3時間加熱撹拌した。反応終了後、内容物を取り出し、ろ過、水洗、乾燥、粉砕および分級して白色でメジアン径が2.9μmの微粉末を得た(これをEX−1とする)。
得られた試料の物性測定を行い結果を表1に示す。また、試料のX線回折像を図1(A)に、試料をエチレングリコール処理したもののX線回折像を図1(B)に、示差熱重量分析の結果を図5にそれぞれ示す。
【0045】
(実施例2)
珪酸ゲルと亜鉛華の配合割合を表1のように変えたほかは、実施例1と同様にして反応、処理をほどこし、それぞれの微粉末を得た(これをそれぞれEX−2−1からEX−1−7とする)。
得られた試料の物性測定を行い結果を表1に示す。
【0046】
(実施例3)
珪酸ゲルと亜鉛華の代わりに沈降法シリカと水酸化亜鉛を用いたほかは、実施例1と同様にして反応、処理をほどこし、微粉末を得た(これをEX−3とする)。
得られた試料の物性測定を行い結果を表1に示す。
【0047】
(実施例4)
珪酸ゲルと亜鉛華の代わりにコロイダルシリカと炭酸亜鉛を用いたほかは、実施例1と同様にして反応、処理をほどこし、微粉末を得た(これをEX−4とする)。
得られた試料の物性測定を行い結果を表1に示す。
【0048】
(実施例5)
珪酸ゲルと食塩の代わりに気相法シリカとボウ硝を用いたほかは、実施例1と同様にして反応、処理をほどこし、微粉末を得た(これをEX−5とする)。
得られた試料の物性測定を行い結果を表1に示す。
【0049】
(実施例6)
亜鉛華と食塩の代わりに炭酸亜鉛と塩化アンモニウムを用いたほかは、実施例1と同様にして反応、処理をほどこし、微粉末を得た(これをEX−6とする)。
得られた試料の物性測定を行い結果を表1に示す。また、試料のX線回折像を図3(A)に、示差熱重量分析の結果を図5にそれぞれ示す。
【0050】
(実施例7)
実施例6で得られた微粉末を500℃で1時間焼成することによって得た(これをEX−7とする)。
得られた試料の物性測定を行い結果を表1に示す。また、試料のX線回折像を図3(B)に示す。
【0051】
(実施例8)
(第1工程)
新潟県中条町産・酸性白土を粗砕したのち線状に成型(直径:3mm)したもの250gに、該粘土に含有されているアルミニウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、ナトリウム、カリウム、チタニウム等の塩基性金属成分の全グラム当量数(1.14グラム当量/100g乾燥物)の3.5倍グラム当量数に相当する硫酸、すなわち34%硫酸700mlを加え、85℃の水浴で15時間加熱し、酸処理を行った後、濾過、水洗し、ケーキを得た。該ケーキの一部を110℃で乾燥後、粉砕し、定量分析を行ったところ、SiO2分は92.7%(110℃乾燥物基準)であった。得られたケーキをポットミルに入れ、水を加えて朝鮮ボールとともに湿式粉砕を行った。スラリーのSiO2分は15%であった。
(第2工程)
次に得られたスラリー200g(SiO2分として30g)と酸化亜鉛(試薬一級)30g及び芒硝21gを1Lのオートクレーブ容器にとり、更に水370gを加えて、500回転/minの攪拌条件下で160℃で5時間水熱合成反応を行った。冷却後反応物を取り出し、濾過により水を分離した後、130℃で乾燥した。乾燥品をサンプルミルで粉砕し、ソーコナイト型フィロケイ酸亜鉛(これをEX−8とする)を得た。
得られた試料の物性測定を行い結果を表1に示す。
【0052】
(比較例1)
実施例1において、鉱化剤無しで反応した(これをH−1とする)。
得られた試料の物性測定を行い結果を表1に示す。
【0053】
(比較例2)
(第1工程)
新潟県中条町産・酸性白土を粗砕したのち線状に成型(直径:3mm)したもの250gに、該粘土に含有されているアルミニウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、ナトリウム、カリウム、チタニウム等の塩基性金属成分の全グラム当量数(1.14グラム当量/100g乾燥物)の3.5倍グラム当量数に相当する硫酸、すなわち34%硫酸700mlを加え、85℃の水浴で15時間加熱し、酸処理を行った後、濾過、水洗し、ケーキを得た。該ケーキの一部を110℃で乾燥後、粉砕し、定量分析を行ったところ、SiO2分は92.7%(110℃乾燥物基準)であった。得られたケーキをポットミルに入れ、水を加えて朝鮮ボールとともに湿式粉砕を行った。スラリーのSiO2分は15%であった。
(第2工程)
次に得られたスラリー200g(SiO2分として30g)と酸化亜鉛(試薬一級)30gを1Lのオートクレーブ容器にとり、更に水370gを加えて、500回転/minの攪拌条件下で160℃で5時間水熱合成反応を行った。冷却後反応物を取り出し、濾過により水を分離した後、130℃で乾燥した。乾燥品をサンプルミルで粉砕し、ソーコナイト型フィロケイ酸亜鉛(これをH−2とする)を得た。
得られた試料の物性測定を行い結果を表1に示す。また、試料のX線回折像を図2(A)に、試料をエチレングリコール処理したもののX線回折像を図2(B)に、示差熱重量分析の結果を図5にそれぞれ示す。
【0054】
(比較例3)
(第1工程)
新潟県新発田市小戸産・酸性白土を粗砕した(水分32.4%)740gに25%硫酸3kgを加え、95℃で10時間加熱し、一度濾過し処理液を除去後、再び25%硫酸3kgを加え、95℃で10時間加熱し、酸処理を行った後、濾過、水洗し、ケーキを得た。該ケーキの一部を110℃で乾燥後、粉砕し、定量分析を行ったところ、SiO2分は91.5%(110℃乾燥物基準)であった。得られたケーキをポットミルに入れ、水を加えて朝鮮ボールとともに湿式粉砕を行った。粉砕後のスラリーのSiO2分は15%であった。
(第2工程)
次に得られたスラリー200g(SiO2分として30g)と酸化亜鉛(試薬一級)62gを1Lのオートクレーブ容器にとり、更に水370gを加えて、500回転/minの攪拌条件下で170℃で5時間水熱合成反応を行った。冷却後反応物を取り出し、濾過により水を分離した後、130℃で乾燥した。乾燥品をサンプルミルで粉砕し、ヘミモルファイト型ケイ酸亜鉛(これをH−3とする)を得た。
得られた試料の物性測定を行い結果を表1に示す。また、試料のX線回折像を図4(A)に示す。
【0055】
(比較例4)
比較例3の第1工程にて得られたスラリー200g(SiO2分として30g)と酸化亜鉛(試薬一級)62gを1Lのオートクレーブ容器にとり、更に水370gを加えて、500回転/minの攪拌条件下で250℃で5時間水熱合成反応を行った。冷却後反応物を取り出し、濾過により水を分離した後、130℃で乾燥した。乾燥品をサンプルミルで粉砕し、ウイレマイト型ケイ酸亜鉛(これをH−4とする)を得た。
得られた試料の物性測定を行い結果を表1に示す。また、試料のX線回折像を図4(B)に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
実施例及び比較例で得られた各試料について感圧紙試験及び印字耐候試験を行い、その結果を表2に示す。なお、試験方法は以下のとおりである。
【0058】
(感圧紙試験)
1.塗液の調整
高速攪拌機付き容器(内容積:1.9L)に水250gを入れ、これに炭酸カルシウム25gと試料100g(110℃乾燥物換算)を加えた後、5%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを約9.5にする。50%スチレン−ブタジエン系ラテックス42.5gを加えて攪拌し均一にした後、更に水を加えて487.5gとし、全固形分濃度を30%に調整する。
2.受印紙の調製
得られた塗液をコーティング・ロッド(ワイヤー径:0.05mm)を用いて、あらかじめ重量を測定した原紙に塗布する。すばやく重量を測定して塗布量(g/m2)を求め、5.7〜6.3g/m2になる受印紙を得る。風乾後、110℃で2分間乾燥する。
3.顕色能試験
受印紙を飽和食塩水入りのデシケータ(75%RH)に入れ、室温(25℃)で暗所に保存する。塗布後約24時間置いてからとり出して、室内(恒温・恒湿:温度約25℃、湿度約60%RH)に16時間暴露したのち、顕色させる。顕色は瞬間発色性ロイコ色素のCVL(Crystal Violet Lactone)とFluoran系のロイコ色素を補助的に混合して含有する青発色マイクロカプセルが塗布してある実用市販の転写紙ならびにFluoran系ロイコ色素のSDB(Single Dye Black)を主体に含有する黒発色マイクロカプセルが塗布してある実用市販の転写紙と前記受印紙とを塗布面が向い合うように重ね合わせ、NEC製PC−PR201ドットプリンターでΦ40mmの円形を印字させる。各受印紙の顕色能は、1時間後の顕色面と非顕色塗布面のY値を濃度計(Datacolor AG製、ELREPHO 2000)で測定し、下記式(5)で表わす。濃度が高いことが顕色能も高いことを表わしている。
顕色能=Y0−Y ‥(5)
Y0:非顕色塗布面のY値
Y:顕色面のY値
【0059】
(印字耐候試験)
顕色能試験に用いて発色された受印紙を実験室内の壁面に貼り、2週間暴露する。室内環境により褪色した発色面と非顕色塗布面の濃度を測定し、前記同様の計算により受印紙の耐候性を表す。
【0060】
【表2】
【0061】
【発明の効果】
本発明によれば、非晶質シリカと、亜鉛華、水酸化亜鉛及び炭酸亜鉛からなる群より選択された亜鉛化合物とを鉱化剤の存在下水熱処理することにより、イオン交換可能な水素イオン及び1価カチオンを特定の量で含有し、X線回折ピーク面積比(Rs)が3.2以上であるソーコナイト型合成粘土を合成することができた。
このソーコナイト型合成粘土は、天然の粘土鉱物と同様に、スメクタイトの積層構造の規則性に優れており、感圧紙用顕色剤として使用したとき、顕著に優れた発色性能と著しく改善された耐候性とを示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明(実施例1)のソーコナイト型合成粘土のX線回折像(A)と、同ソーコナイト型合成粘土をエチレングリコール処理したもののX線回折像(B)である。
【図2】公知例(比較例2)によるソーコナイト型フィロケイ酸亜鉛のX線回折像(A)と、同ソーコナイト型フィロケイ酸亜鉛をエチレングリコール処理したもののX線回折像(B)である。
【図3】本発明の一価カチオンがアンモニウム(実施例6)であるソーコナイト型合成粘土のX線回折像(A)と、同ソーコナイト型合成粘土を焼成し、水素イオンに変えたもの(実施例7)のX線回折像(B)である。
【図4】公知例(比較例3)によるヘミモルファイトのX線回折像(A)と、公知例(比較例4)によるウイレマイトのX線回折像(B)である。
【図5】本発明のソーコナイト型合成粘土(実施例1及び実施例6)と公知例(比較例2)によるソーコナイト型フィロケイ酸亜鉛の示差熱重量分析の曲線である。
Claims (5)
- 下記式(1)
Mx・ZnySi8O20(OH)z‥(1)
式中、Mは水素イオンまたは1価カチオンであり、
xは0.1〜1の数であり、
yは2.5〜10の数であり、
zは2.8〜7の数であって、
しかも−1.5<(x/2)+y−z<1.5を満足する数である、
で表される化学組成を有し、面指数(001)の面間隔が0.9〜1.3nmに単一のX線回折ピークを有し、更にエチレングリコール処理した状態で面指数(001)の面間隔が1.5〜1.9nmと面指数(002)の面間隔が0.86〜0.91nmとにX線回折ピークを有し、且つ下記式(2)
Rs=I001/I06‥(2)
式中、I001はエチレングリコール処理した状態で面指数(001)の面間隔が
1.5〜1.9nmのX線回折ピーク面積を表し、
I06はエチレングリコール処理した状態で面指数(06)の面間隔が0.1527
〜0.1532nmのX線回折ピーク面積を表す、
で定義されるX線回折ピーク面積比(Rs)が3.2以上であることを特徴とするソーコナイト型合成粘土。 - 乾燥物基準で0.10meq/g以上のカチオン交換容量を有することを特徴とする請求項1に記載のソーコナイト型合成粘土。
- 前記式(1)におけるMがアルカリ金属であり、下記式(3)
Rp=I001/I'001‥(3)
式中、I001はエチレングリコール処理した状態で面指数(001)の面間隔が
1.5〜1.9nmのX線回折ピーク面積を表し、
I'001はエチレングリコール処理前の状態で面指数(001)の面間隔が0.9
〜1.3nmのX線回折ピーク面積を表す、
で定義されるX線回折ピーク面積比(Rp)が1.4以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のソーコナイト型合成粘土。 - 非晶質シリカと、亜鉛華、水酸化亜鉛及び炭酸亜鉛からなる群より選択された亜鉛化合物とを、水溶性のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩から選択された鉱化剤の存在下水熱処理することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のソーコナイト型合成粘土の製法。
- 請求項1乃至3の何れかに記載のソーコナイト型合成粘土からなることを特徴とする感圧紙用顕色剤。
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