JP4508771B2 - 圧力容器用ステンレス製ボルトナット材及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、圧力容器用ステンレス製ボルトナット材及びその製造方法に関する。
圧力容器の金属素材には、例えば、JIS G 4109に示されるクロムモリブデン鋼(SCMV4材)や、JIS G 3203に示される合金鋼鍛鋼(SFVA22材)等が多用され、圧力容器の締結材、例えば、ボルトとナットには、例えば、JIS G 4107に示される合金鋼ボルト材(SNB7材又はSNB16材)等が主に使われている。ここで、使用されるボルトとナットの高強度化は、ボルト自体の小型軽量化のみならず、圧力容器のフランジの小型化、更には圧力容器全体の小型化に結びつくため、従来から要望されてきた。
ボルトとナットの高強度化はそれらを作製するためのステンレス鋼素材の高強度化に依存し、ステンレス鋼素材の高強度化を達成するためには結晶組織の微細化を図ることが必要となる。しかし、これまでに行なわれた結晶組織の微細化手法は、結晶粗大化阻害材料を添加するものが殆どであった。例えば、特許文献1には、結晶粗大化阻害材料として炭化物を用いることが、特許文献2には酸化物を用いることが開示されている。その他、酸化物を用いたものの代表例としては、既に製品化もされているODSフェライト系耐熱鋼等があり、特許文献3ではSiO2 、MnO、TiO2 、Al23 、Cr23 、CaO、TaO、Y23 を含有したメカニカルアロイングにより作製された金属粉末を高温で固化成形してなる高強度超細粒鋼が開示されている。
特開2000−96193号公報 特開2000−17370号公報 特開2000−17405号公報
一般に、粉末冶金法から作製される材料は低靭性になるという問題がある。特に、特許文献1〜3に記載された発明では、組成上の制約から原料となる粉末はメカニカルアロイング法により作製せざるを得ないために、機械的破砕処理中に粉末が大気雰囲気から混入する酸素及び窒素、更に機械的破砕処理中に接触する冶具から混入する炭素等により、粉末の表面には非金属生成物が形成されることが避けがたい。これらの非金属生成物は、固化成形時に粉末間の金属的結合の形成を阻害し、バルク材としての延性及び靭性を大幅に低下させるという問題がある。しかしながら、粉末の表面に形成された非金属生成物が及ぼす悪影響についての具体的な解決策は提案されておらず、機械的破砕処理持に形成される非金属生成物はできるだけ少なくするのが得策であるとされるに留まっていた。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、メカニカルアロイング法で粉末を製造する際に混入する酸素、窒素、及び炭素を結晶粗大化を防止するピンニング粒子を構成する成分として積極的に活用することで、混入する酸素、窒素、及び炭素を無害化し粉末間の金属結合を高め強度と靱性を向上させることが可能な圧力容器用ステンレス製ボルトナット材及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係る圧力容器用ステンレス製ボルトナット材は、メカニカルアロイング法で合金化した粉末の熱間押出し成形で得られる平均結晶粒径が1μm以下である微結晶金属素材から作製され、
クロムを2.24重量%以上かつ2.33重量%以下、モリブデンを0.92重量%以上かつ1.01重量%以下、及びジルコニウムを0.92重量%以上かつ2.85重量%以下含有し、残部が鉄及び不可避不純物よりなり、しかも、不可避不純物とし含有される酸素、炭素、及び窒素の含有量の合計がジルコニウムの含有量の20重量%未満であり、
前記熱間押出し成形時にジルコニウムと酸素、窒素、及び炭素がそれぞれ反応し、形成された酸化物、窒化物、及び炭化物が粒界に析出して固定され、引張強さが1400MPa以上、かつシャルピー衝撃値が0.9MJ/m2以上である。
本発明に係る圧力容器用ステンレス製ボルトナット材の製造方法は、鉄、クロム、及びモリブデンを含みジルコニウムを含まないガスアトマイズ法にて製造された粉末とジルコニウムの粉末とを混合し、メカニカルアロイング処理にてクロムを2.24重量%以上かつ2.33重量%以下、モリブデンを0.92重量%以上かつ1.01重量%以下、及びジルコニウムを0.92重量%以上かつ2.85重量%以下含有し、残部が鉄及び不可避不純物よりなり、しかも、不可避不純物とし含有される酸素、炭素、及び窒素の含有量の合計がジルコニウムの含有量の20重量%未満である粉末を作製する粉末製造工程と、
前記作製された粉末を、押出し温度が700℃以上かつ950℃以下、及び押出し比が5以上かつ7以下である熱間押出し成形により固化成形すると共に、ジルコニウムと酸素、窒素、及び炭素をそれぞれ反応させて形成される酸化物、窒化物、及び炭化物を粒界に析出させて固定する成形工程とを有する。
本発明に係る圧力容器用ステンレス製ボルトナット材及びその製造方法においては、メカニカルアロイング法で粉末を製造する際に混入する酸素、窒素、及び炭素を、結晶粗大化を防止するピンニング粒子の構成成分として積極的に活用することで、混入する酸素、窒素、及び炭素を無害化し粉末間の金属結合を高め強度と靱性を向上させることが可能になる。
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここで、図1は本発明の一実施の形態に係る圧力容器用ステンレス製ボルトナット材の製造方法に使用するアトリッションミルの説明図である。
圧力容器を締結する、例えば、ボルト及びナットを作製する素材の組成は、圧力容器との間で発生する電食(電界腐食)を防ぐため圧力容器を構成する素材に近い組成とすることが好ましい。更に、JIS G 4107に示される高温用合金鋼ボルト材(SNB7材及びSNB16材)では、表1に示すような組成になっているため、圧力容器とボルト及びナットの間では往々に固着や溶着が発生し、分離が困難になる場合がある。そこで、固着や溶着を防止するため、ボルト及びナットにおける鉄、クロム、モリブデン、及びニッケル等の含有量を、JIS規格における圧力容器材の鉄、クロム、モリブデン、及びニッケル等の含有量の範囲内にすることが望ましい。例えば、JIS G 4109に示される圧力容器用クロムモリブデン鋼(SCMV4材)では、化学成分は表2に示される範囲に調整されているので、圧力容器用ステンレス製ボルトナット材の化学成分もこの範囲に調整する必要がある。
従って、本実施の形態に係る圧力容器用ステンレス製ボルトナット材では、クロムを2重量%以上かつ2.5重量%以下、モリブデンを1重量%以上かつ1.1重量%以下含有するようにした。
また、圧力容器用ステンレス製ボルトナット材の高強度化を図る場合、素材を微細結晶粒で構成することが有効である。そして、このような微細結晶粒から構成される素材を得る手法の一つに、機械的破砕処理により粉末を固化成形する粉末冶金法がある。
しかし、機械的破砕処理により粉末を作製する場合、大気雰囲気中に存在するガス成分である酸素と窒素、特に酸素の混入は素材の機械的性質に重大な悪影響を及ぼす。一方、窒素は素材を構成する結晶粒子の表面に偏析する場合を除いて、少量であれば素材を脆化させる恐れは殆どなく、素材の特性を改善するために積極的に活用すべき元素にもなっている。また、機械的破砕処理を行なう破砕装置の冶具には摩耗損傷に備えて高強度材料、例えば、炭素含有量の多いSKD11材やSUJ2材等を用いる必要がある。このため、機械的破砕処理中に治具との接触により炭素が粉末中に混入してくる。従って、機械的破砕処理により得られた粉末をそのまま使用すると、機械的破砕処理時に混入した酸素、窒素、及び炭素が固化成形時に形成される粉末間の境界に集積し素材の脆化を招く恐れがある。
ここで、ジルコニウムは、鋼に混入し脆化の一因ともなる酸素、窒素、及び炭素の強力なゲッターとして働くと同時に、ジルコニウムに捕捉された酸素、窒素、及び炭素はジルコニウムと反応して微細な酸化物、窒化物、及び炭化物として鋼中に分散するので、結晶粒界移動の抵抗となり結晶粒粗大化を抑制する作用を有する。従って、機械的破砕処理で粉末を作製する際の出発原料中にジルコニウムを添加しておくと、固化成形時にジルコニウムは粉末内に混入した酸素、窒素、及び炭素を酸化物、窒化物、及び炭化物として固定することで結晶粒界移動の抵抗となるピンニング粒子を生成し結晶粒粗大化を抑制すると共に、混入した酸素、窒素、及び炭素からピンニング粒子を生成することにより、固化成形時に形成される粉末間の粒界に酸素、窒素、及び炭素が拡散することを防止することができ、強度及び靭性を向上させる効果を生む。これによって、素材が平均結晶粒径1μm以下の微細結晶粒(微結晶金属素材)で構成されるようにすることができると共に、素材の引張強さを1400MPa以上、かつシャルピー衝撃値を0.9MJ/m2 以上とすることができる。
ジルコニウムの含有量は主として機械的破砕処理で混入する酸素、窒素、及び炭素の総重量により決定される。ここで、機械的破砕処理時における酸素、窒素、及び炭素の各混入量は、機械的破砕処理の際に高純度アルゴンガスを使用したり、あるいは粉末の保存と取り扱いを不活性ガス(例えば、高純度アルゴンガス)中で行なう等してある程度制御することが可能であるが、それでも混入量は多い場合で、酸素が0.4重量%、窒素が0.2重量%、及び炭素が0.2重量%に達する。従って、本実施の形態に係る圧力容器用ステンレス製ボルトナット材では、酸素を0.4重量%以下、炭素を0.2重量%以下、窒素を0.2重量%以下とした。そして、ジルコニウムの添加量は、混入した酸素、窒素、及び炭素をそれぞれジルコニウムの酸化物(例えば、ZrO2 )、窒化物( 例えば、ZrN)、及び炭化物(例えば、ZrC) として全て固定でき、しかも速やかに酸化物、窒化物及び炭化物の生成反応が進むように、更に素材を脆化させないことを条件に調整することが重要である。このため、ジルコニウムの添加量を0.3重量%以上かつ3重量%以下とした。ジルコニウムを3重量%を超えて添加すると素材の脆化が顕著となり好ましくない。また、ジルコニウムの添加量が0.3重量%未満では機械的破砕処理時に混入する酸素、窒素、及び炭素の固定化が完全に進行しないためである。更に混入する酸素、窒素、及び炭素の絶対値の合計をジルコニウムの絶対値の20重量%未満とした。これによって、ジルコニウムの添加量を0.3〜3重量%の範囲に規定しても、機械的破砕処理時に混入した酸素、窒素、及び炭素の固定化を完全に進行させることができる。
次に、本発明の一実施の形態に係る圧力容器用ステンレス製ボルトナット材の製造方法について説明する。
クロム及びモリブデンの含有量が圧力容器用素材と近く、かつジルコニウムを最大で3重量%含むような組成、例えば、鉄を90重量%以上かつ95重量%以下、クロムを2重量%以上かつ2.5重量%以下、モリブデンを0.9重量%以上かつ1.1重量%以下、及びジルコニウムを0.3重量%以上かつ3重量%以下含有する組成は溶製ではできないため、ガスアトマイズ法で製造された鉄、クロム、及びモリブデンを含有した粉末とジルコニウムの粉末との混合粉末を準備し、この混合粉末に対して機械的破砕処理(メカニカルアロイング処理)を行なって粉末を形成するようにした。なお、機械的破砕処理中、鉄、クロム、及びモリブデンを含有した粉末とジルコニウムの粉末は相互に衝突を繰り返しながら粉砕と凝集が繰り返され、このとき両粉末の衝突箇所では両粉末の成分間の相互溶け込みが生じて合金化(メカニカルアロイング)が進行する。このため、機械的破砕処理を行なって得られる粉末は内部歪みが大きく、鉄−クロム−モリブデン−ジルコニウム系の合金組成になっている。
ここで、図1に示すように、機械的破砕処理を行なう破砕装置の一例であるアトリッションミル10は、例えば、上部に開口部が形成され混合粉末を収容するステンレス製粉砕タンク11と、ステンレス製粉砕タンク11の中央部に上方から装入され粉砕用鋼製ボール12を撹拌するアジテータアーム13と、アジテータアーム13が取付けられて回転する主軸14と、中央に主軸14を挿通させる貫通孔15が形成されステンレス製粉砕タンク11の開口部を閉じる蓋部材16を有している。また、ステンレス製粉砕タンク11外に突出した主軸14の基部は図示しない回転駆動源に接続され、ステンレス製粉砕タンク11の円筒状の側壁部分には冷却水入口17及び冷却水出口18を備えた水冷ジャケット19が設けられている。更に、主軸14と貫通孔15の間にはガスシール部材20が設けられている。
このような構成とすることにより、ステンレス製粉砕タンク11内に混合粉末と粉砕用鋼製ボール12を投入し開口部を蓋部材16で閉じて、図示しない排気口から空気を脱気した後に高純度アルゴンガスを吹き込み、更に、水冷ジャケット19でステンレス製粉砕タンク11の側部を冷却することにより、機械的破砕処理による酸素、窒素、及び炭素の混入を抑えると共に、機械的破砕処理中の発熱を抑えながらメカニカルアロイング法で合金化した粉末を作製することができる(粉末製造工程)。
メカニカルアロイング法で合金化した粉末を金属製のカプセル内に封入し、固化成形の一例である熱間押出し成形を温度が700℃〜950℃、押出し比が5〜7の条件で行なうことにより、平均結晶粒径が1μm以下の結晶からなる緻密かつ靭性に優れるバルク材を得ることができる(成形工程)。
ここで、粉末中には機械的破砕処理により酸素、窒素、及び炭素が混入すると共に、合金化によりジルコニウムが存在するようになっているので、固化成形時にジルコニウムと酸素、窒素、及び炭素がそれぞれ反応して酸化物、窒化物、及び炭化物が形成され粒界に析出する。このため、形成された酸化物、窒化物、及び炭化物がピンニング粒子として結晶粒界移動の抵抗となるので、結晶粒粗大化が抑制される。更に、混入した酸素、窒素、及び炭素はジルコニウムの酸化物、窒化物、及び炭化物として固定される。これによって、引張強さが1400MPa以上、シャルピー衝撃値が0.9MJ/m2 以上の素材が得られる。
なお、押出し温度を700℃未満とした場合、押出し比が5〜7では押詰まりが生じる可能性があると同時に、得られた素材中に歪が蓄積させることにより大きな靭性が得られない場合がある。また、押出し温度が950℃を超える場合は結晶粒の成長が著しくなり、平均結晶粒径が1μm以下の組織が得られないことから高強度が得られなくなる。従って、押出し温度は700℃以上かつ950℃以下に限定する。一方、押出し比が5未満の場合は内部に空隙が残る場合があり好ましくない。押出し比が7を超えると、繊維集合組織が形成されてセパレーションが生じ、靭性が低下する傾向となる。更に、押詰まりも生じやすくなる。従って、押出し比を5以上かつ7以下の範囲に限定した。
また、熱間押出し成形で得られた成形物に熱処理を行なう場合、熱処理を行なう温度は、熱間押出し成形で得られた素材の組織安定性から考えると、熱間押出し成形温度以下で行うことが一般的である。しかし、熱処理温度が熱間押出し成形温度以下であると、粉末間の結合が促進されるのに要する時間が非常に長くなり著しく経済性が低下し好ましくない。
しかしながら、本素材には、結晶粒粗大化を抑制するピンニング粒子が理想的に結晶粒界に生成しているので、大気圧下で、単純に材料履歴上の最高温である熱間押出し成形温度以上の温度に保持しても、結晶粗大化のスピードが遅く、さしたる強度の低下をもたらさずに靭性を向上させることができるという利点を有する。
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
[試験例1]
ガスアトマイズ法で作製した2.25重量%クロム、1重量%モリブデン、及び残部を鉄と不可避不純物とする組成(JIS SCMV4材 相当の組成)の原料粉末5kgにジルコニウムを1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、及び5重量%それぞれ添加して混合粉末を作製し、この混合粉末をアトリッションミルを用いて回転数を100rpmとしてメカニカルアロイング法による合金化処理を行い、粉末を作製した。この粉末を軟鋼製の缶に詰め、真空ポンプで脱気した後封入し、押出し比6.8、押出し温度800℃で熱間押出し成形を行なった。作製した素材の化学成分を表3に示す。
作製した素材から引張り試験片及びシャルピー衝撃試験片を作製し、引張り試験及びシャルピー衝撃試験を行なった。得られた引張り強さ及びシャルピー衝撃値の平均値を表3に示す。引張り強さはジルコニウム添加量と共に増加する傾向を示し、シャルピー衝撃値は逆にジルコニウム添加量と共に低下する傾向を示した。表3から、引張り強さが1400MPa以上、シャルピー衝撃値が0.9MJ/m2 以上が満足されるのは、ジルコニウムの添加量が3重量%以下の場合であることが判る。
[試験例2]
ガスアトマイズ法で作製した2.25重量%クロム、1重量%モリブデン、及び残部を鉄と不可避不純物とする組成(JIS SCMV4材 相当の組成)の原料粉末5kgにジルコニウムを1重量%添加した混合粉末をアトリッションミルを用いて、回転数を100rpm〜300rpmまで変化させてメカニカルアロイング法により合金化処理を行い、粉末を作製した。この粉末を軟鋼製の缶に詰め、真空ポンプで脱気した後封入し、押出し比6.8、押出し温度800℃で熱間押出し成形を行なった。作製した素材の化学成分を表4に示す。
高速回転で合金化処理を行なう程、短時間で合金化処理が終了し粉末の量産に容易に対応することができるが、同時に高速回転による摩擦熱のため、製造する粉末中への酸素、窒素、及び炭素の混入量が増加している。
また、作製した素材から引張り試験片及びシャルピー衝撃試験片を作製し、引張り試験及びシャルピー衝撃試験を行なった。得られた引張り強さ及びシャルピー衝撃値の平均値を表4に示す。アトリッションミルの回転数が大きくなる程、引張り強さ及びシャルピー衝撃値のばらつきが大きくなり、平均値は低下する傾向を示した。この原因は、粉末中に混入する酸素量、窒素量、及び炭素量の増加によるものと判断される。また、回転数が300rpmではシャルピー衝撃値が大幅に低下しているため、回転数を250rpm以下にすると、粉末中に混入する酸素、炭素、及び窒素の絶対値の合計をジルコニウムの絶対値の20重量%未満にすることができると判断される。
[試験例3]
試験例2で使用したのと同一の粉末を軟鋼製の缶に詰め、真空ポンプで脱気した後封入し、押出し比を4.2、5.2、6.8、及び7.5の4条件、押出し温度を650℃、700℃、750℃、800℃、850℃、900℃、950℃、及び1,000℃の8条件として熱間押出し成形を行なった。得られた各素材の化学成分、密度、引張り強さ強度、及びシャルピー衝撃値を表5に示す。
押出し比を4.2として得られた素材は密度が低く、またシャルピー衝撃試験片の試験後の破面観察の結果でも、粉末間の粒界が潰し切れておらず、粉末の粒界を亀裂が容易に伝達したと判断された。押出し比7.5として得られた素材では、試験片加工時に割れが発生した。また、押出し温度が650℃では押し詰まりが発生して押し出せず、押出し温度を1000℃とした場合では素材の強度低下が著しかった。従って、熱間押出し成形の押出し温度としては、700〜950℃、押出し比としては5〜7が適した条件と判断された。
[試験例4]
試験例3で作製した実施例11の素材(熱間押出し成形の条件が押出し比6.8で押出し温度750℃)を温度900℃のアルゴン雰囲気(大気圧)中で3時間熱処理してから、引張り強さとシャルピー衝撃値を測定した。その結果を表6に示す。
熱処理を行なうことにより強度は1830MPaから1540MPaと若干低下(約16%低下)するが、シャルピー衝撃値は0.93MJ/m2 から1.45MJ/m2 に増加(約1.56倍)し、シャルピー衝撃値(靱性)の改善が確認できた。
[試験例5]
試験例3で作製した実施例11の素材(熱間押出し成形の条件が押出し比6.8で押出し温度750℃)と、比較材であるSCMV4材(JIS G 4109に示される圧力容器用クロムモリブデン鋼)の物性を比較した結果を表7に示す。
実施例15の素材はジルコニウムを含有することを除くと比較材と同一組成であるが、組織を構成する結晶粒子のサイズを微細化することにより引張り強さに大幅な(2.2倍)特性向上が発現し、更にジルコニウムを含有させることによりシャルピー衝撃値にも大幅な(39.2倍)特性向上が発現していることが認められる。ここで、光学顕微鏡で観察した引張り試験後の破面状態を図2に示す。引張り試験後の破面には粉末間の粒界が潰し切れて形成された多くの凹凸が観察され、靱性の高い素材であることが確認できた。更に、透過電子顕微鏡で観察した試験片の組織状態を図3に示す。組織は平均結晶粒径が0.2μm以下の微細結晶粒から構成されている。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲での変更は可能であり、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組み合わせて本発明の圧力容器用ステンレス製ボルトナット材及びその製造方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
本発明の一実施の形態に係る圧力容器用ステンレス製ボルトナット材の製造方法に使用するアトリッションミルの説明図である。 実施例15で測定した引張り試験後の試験片の破面状態を示す光学顕微鏡写真である。 同試験片の組織を示す透過電子顕微鏡写真である。
符号の説明
10:アトリッションミル、11:ステンレス製粉砕タンク、12:粉砕用鋼製ボール、13:アジテータアーム、14:主軸、15:貫通孔、16蓋部材、17:冷却水入口、18:冷却水出口、19:水冷ジャケット、20:ガスシール部材

Claims (3)

  1. メカニカルアロイング法で合金化した粉末の熱間押出し成形で得られる平均結晶粒径が1μm以下である微結晶金属素材から作製され、
    クロムを2.24重量%以上かつ2.33重量%以下、モリブデンを0.92重量%以上かつ1.01重量%以下、及びジルコニウムを0.92重量%以上かつ2.85重量%以下含有し、残部が鉄及び不可避不純物よりなり、しかも、不可避不純物とし含有される酸素、炭素、及び窒素の含有量の合計がジルコニウムの含有量の20重量%未満であり、
    前記熱間押出し成形時にジルコニウムと酸素、窒素、及び炭素がそれぞれ反応し、形成された酸化物、窒化物、及び炭化物が粒界に析出して固定され、引張強さが1400MPa以上、かつシャルピー衝撃値が0.9MJ/m2以上であることを特徴とする圧力容器用ステンレス製ボルトナット材。
  2. 鉄、クロム、及びモリブデンを含みジルコニウムを含まないガスアトマイズ法にて製造された粉末とジルコニウムの粉末とを混合し、メカニカルアロイング処理にてクロムを2.24重量%以上かつ2.33重量%以下、モリブデンを0.92重量%以上かつ1.01重量%以下、及びジルコニウムを0.92重量%以上かつ2.85重量%以下含有し、残部が鉄及び不可避不純物よりなり、しかも、不可避不純物とし含有される酸素、炭素、及び窒素の含有量の合計がジルコニウムの含有量の20重量%未満である粉末を作製する粉末製造工程と、
    前記作製された粉末を、押出し温度が700℃以上かつ950℃以下、及び押出し比が5以上かつ7以下である熱間押出し成形により固化成形すると共に、ジルコニウムと酸素、窒素、及び炭素をそれぞれ反応させて形成される酸化物、窒化物、及び炭化物を粒界に析出させて固定する成形工程とを有することを特徴とする圧力容器用ステンレス製ボルトナット材の製造方法。
  3. 請求項2記載の圧力容器用ステンレス製ボルトナット材の製造方法において、前記熱間押出し成形で得られた成形物を、更に大気圧下で前記押出し温度以上の温度で熱処理することを特徴とする圧力容器用ステンレス製ボルトナット材の製造方法。
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