JP4448743B2 - 航空機用ステンレス製ボルトナット材及びその製造方法 - Google Patents

航空機用ステンレス製ボルトナット材及びその製造方法 Download PDF

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本発明は、高強度で高靭性な航空機用ステンレス製ボルトナット材及びその製造方法に関する。
現状、航空機に使用されるボルト、ナット、及びリベット等の締結部材は、航空機の機材との間で発生する電食(電界腐食)などの挙動を防ぐため、航空機機材と近い成分、もしくは充分に過去の実績のある現状使用素材と同一成分系のもの、例えば、析出硬化型ステンレス鋼であるPH13−8Mo材(ASTM XM−13)、又は日本工業規格ニッケルクロムモリブデン鋼であるJIS SNCM240材(SAE8740)等のステンレス鋼で形成されている。また、航空機において、航空機用の締結部材を高強度化してその使用本数を減らし、航空機を大幅に軽量化することが強く要望されてきた。
ここで、ステンレス鋼は、結晶の微細化によって高強度化されることが知られており、例えば、結晶粗大化阻害材料(ピンニング粒子)を用いて結晶組織を微細化する方法が用いられている。例えば、特許文献1には、結晶粗大化阻害材料として炭化物を用いる方法が、また、特許文献2には、酸化物を用いる方法が開示されている。なお、酸化物を用いたものとしては、例えば、酸化物分散強化型(ODS)フェライト系耐熱鋼等があり、これは既に製品化されている。更に、特許文献3には、結晶粗大化阻害材料として、二酸化ケイ素(SiO2 )、酸化マンガン(MnO)、二酸化チタン(TiO2 )、酸化アルミニウム(Al23 )、酸化クロム(Cr23 )、酸化カルシウム(CaO)、酸化タンタル(TaO)、及び酸化イットリウム(Y23 )を用いる方法が開示されている。
特開2000−96193号公報 特開2000−17370号公報 特開2000−17405号公報
特許文献1〜3に記載の方法は、いずれも当初から存在する酸化物を固相還元し他の種類の酸化物を分散させるか、あるいは酸化物として添加し分散させ、超微細組織を得ようとする方法である。しかしながら、これら酸化物を分散させた材料は高強度であるが、製造プロセスで機械的破砕処理が必要となる。この機械的破砕処理には、冶具(例えば、粉砕機の粉砕部)に高強度材料を用いることが必要であり、その結果炭素量の多い、例えば金型工具鋼11種(SKD11)や軸受鋼2種(SUJ2)等を用いるため、炭素の混入を避けることは難しい。
機械的破砕処理時には、雰囲気(大気中)から酸素及び窒素も混入する。また、これら酸素、炭素、及び窒素は粉末境界等に悪影響を及ぼす可能性が大きいが、解決策は提案されておらず、これまでは機械的破砕処理時に混入する不純物はできるだけ避けることが得策とされているに留まっている。なお、窒素は酸素と異なり少量であれば材料を脆化させる恐れは殆どなく、できるだけ積極的に活用すべき元素でもある(但し、旧粉末境界に偏析する場合はこの限りではない)。
また、粉末冶金法、特に機械的破砕処理により結晶粒を微細化した粉末から作製された材料の欠点は靭性である。前記した機械的破砕処理により混入した不可避含有不純物(酸素、炭素、及び窒素)によって、粉末の表面に非金属生成物が形成されることは避け難い。これら非金属生成物は、粉末間の金属的結合を阻害して、粉末を固化した製品の延性及び靭性を大幅に低下させる。機械的破砕処理により作製された超微細結晶組織が有する特性をフルに発揮させる為には、機械的破砕処理で混入する不純物を無害化、すなわち、酸化物、炭化物、及び窒化物として固定し、粉末間の結合を高めることが重要である。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、高強度で高靭性な航空機用ステンレス製ボルトナット材及びその製造方法を提供することを目的とする。
前記目的に沿う本発明に係る航空機用ステンレス製ボルトナット材は、平均結晶粒径が1μm以下の微結晶金属素材から作製された、引っ張り強さが1200MPa以上で、シャルピー衝撃値が1MJ/m 2 以上である航空機用ステンレス製ボルトナット材であって、クロム(Cr)を12.25質量%以上で13.25質量%以下、ニッケル(Ni)を7.50質量%以上で8.50質量%以下、モリブデン(Mo)を2.00質量%以上で2.50質量%以下、及びジルコニウム(Zr)を0.3質量%以上で3質量%以下含有し、残りが鉄及び不可避不純物である粉末の固化物であり、しかも、前記粉末は、酸素、炭素、及び窒素の質量の合計が、ジルコニウムの質量の20%未満である
前記目的に沿う本発明に係る航空機用ステンレス製ボルトナット材の製造方法は、鉄、クロム、ニッケル、及びモリブデンを含みジルコニウムを含まない粉末αと、ジルコニウムの粉末βとを混合して粉末γを作製し、該粉末γをメカニカルアロイング処理によって粉末δを作製し、該粉末δを熱間押出して固化する航空機用ステンレス製ボルトナット材の製造方法であって、前記粉末δは、クロムを12.25質量%以上で13.25質量%以下、ニッケルを7.50質量%以上で8.50質量%以下、モリブデンを2.00質量%以上で2.50質量%以下、及びジルコニウムを0.3質量%以上で3質量%以下含有し、残りが鉄及び不可避不純物であって、しかも、不可避不純物として含有される酸素、炭素、及び窒素の質量の合計が、ジルコニウムの質量の20%未満である
本発明に係る航空機用ステンレス製ボルトナット材及びその製造方法においては、以上のように構成されているので、高強度で高靭性を有する航空機用ステンレス製ボルトナット材を得ることができる。
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここで、図1は本発明の一実施の形態に係る航空機用ステンレス製ボルトナット材の表面の透過形電子顕微鏡写真、図2は同航空機用ステンレス製ボルトナット材の製造方法の説明図である。
図1及び図2に示すように、本発明の一実施の形態に係る航空機用ステンレス製ボルトナット材(以下、単に「ボルトナット材」ともいう)10は、平均結晶粒径が1μm以下の微細な結晶、すなわち、微結晶金属素材で構成されている。更に、ボルトナット材10は、引っ張り強さ(以下、強度ともいう)が1200MPa以上でシャルピー衝撃値が1MJ/m2 以上の高強度で高靭性を有しているので、製造された締結部材、例えば、ボルト、ナット、及びリベットの使用本数を減らすことができ、航空機を大幅に軽量化することができる。ここで、ボルトナット材10の平均結晶粒径が1μmを超えると、結晶粒子の比表面積が減少するので、結晶粒子間の結合が弱まり、強度及びシャルピー衝撃値が低下すると解される。
次に、図2を参照して、ボルトナット材10の製造方法について説明する。
まず、例えば、誘導炉又はガス炉等で溶解した合金原料(鉄、クロム、ニッケル、及びモリブデンを含みジルコニウムを含まないもの)をノズルから流出させ、不活性ガスのジェット流を吹き付けて粉砕し、液滴として凝固させるガスアトマイズ法によって、鉄、クロム、ニッケル、及びモリブデンを含みジルコニウムを含まない粉末αを製造する。粉末αは、水アトマイズ法、遠心力アトマイズ法、又はプラズマアトマイズ法等の他のアトマイズ法で作製してもよく、また、メルトスピニング法、又は回転電極法(REP法)等で作製してもよい。
次に、粉末αとジルコニウムの粉末βとを混合して粉末γを作製する。更に、粉末γを、例えば、特開2003−96506号公報に記載されたアトリッションミルによって強制的に混錬するメカニカルアロイング処理によって合金化したアモルファス金属の粉末δを作製する。ここで、粉末δは、クロムを12.25質量%以上で13.25質量%以下、ニッケルを7.50質量%以上で8.50質量%以下、モリブデンを2.00質量%以上で2.50質量%以下、及びジルコニウムを0.3質量%以上で3質量%以下含有し、残りが鉄及び不可避不純物である。しかも、不可避不純物として含有される酸素、炭素、及び窒素の質量の合計が、ジルコニウムの質量の20%未満とする。
なお、粉末δにジルコニウムを含まない、すなわち、クロムを12.25質量%以上で13.25質量%以下、ニッケルを7.50質量%以上で8.50質量%以下、及びモリブデンを2.00質量%以上で2.50質量%以下含有し、残りが鉄及び不可避不純物であるものは、航空機機材と近い成分である析出硬化型ステンレス鋼(PH13−8Mo材、ASTM XM−13)であるので、航空機の機材との間で発生する電食(電界腐食)などの挙動を防ぐことができる。
粉末δのジルコニウムの含有量が、0.3質量%未満であると、不可避不純物である酸素、炭素、及び窒素をそれぞれ酸化物、炭化物、及び窒化物として固定し難くなり、結晶が粗大化し、3質量%を超えると、製造されるボルトナット材10は、強度は高くなるが、靭性が低下する。また、不可避不純物である酸素、炭素、及び窒素の含有量がそれぞれ0.4質量%、0.2質量%、0.2質量%を超えると、強度及び靭性が低下する。
次に、粉末δを押出温度が700℃以上で950℃以下、かつ、押出比が5.0以上で7.0以下で熱間押出して固化して、ボルトナット材10を得る。
また、機械的破砕処理(メカニカルアロイング処理)において、高純度アルゴンガスの使用、粉砕ボールへのコーティング、及び、粉末の不活性ガス中での保存及び取扱いのいずれか1又は2以上によって、酸素、炭素、及び窒素の混入量を、それぞれ0.4質量%以下、0.2質量%以下、及び0.2質量%以下まで減少させることが可能である。粉末δ中に酸素、炭素、及び窒素が遊離した状態で存在する場合、結晶が粗大化し、ボルトナット材の強度及び靭性が低下するので、結晶粗大化阻害材料としてジルコニウムを混合する。
ジルコニウムの混合量は、酸素、炭素、及び窒素の混合量により決定され、酸素、炭素、及び窒素をそれぞれ酸化物(例えば、酸化ジルコニウム、ZrO2 )、炭化物(例えば、炭化ジルコニウム、ZrC)、窒化物(例えば、窒化ジルコニウム、ZrN)として固定化するための化学量論的に不足しない量、かつ、速やかに酸化物、炭化物、及び窒化物が形成される量であると共に、ボルトナット材10を脆化させない量、すなわち、粉末δ中のジルコニウムの含有量は、0.3質量%以上で3質量%以下、かつ、不可避不純物である酸素、炭素、及び窒素の質量の合計は、ジルコニウムの質量の20%未満とする。生成した酸化物、炭化物、及び窒化物は、ボルトナット材10中で微細に分散し、結晶粒界移動の抵抗となって結晶粒粗大化を抑制し、ボルトナット材10を高強度で高靭性とすることができる。
メカニカルアロイング処理によって合金化した粉末δは、金属性のカプセルに封入し、例えば、700℃以上で950℃以下、押出比を5以上かつ7以下で熱間押出することにより、微細な結晶粒、すなわち、平均結晶粒径が1μm以下を維持しつつ、緻密かつ靭性に優れるボルトナット材10を得ることができる。押出温度を700℃未満とした場合、押出比にもよるが、押詰まりが生じる可能性があると共に、歪の蓄積などにより靭性が得られない場合がある。また、押出温度950℃を超える場合、結晶粒の成長が著しくなり(結晶が粗大化する)、高強度を得られなくなる。更に、押出比が5未満の場合、内部に空隙が残る場合があり、押出比が7を超える場合、繊維集合組織の影響でセパレーションが生じ、靭性が低下する傾向にあり、また押詰まりを生じやすくなる。
メカニカルアロイング処理及び熱間押出を行って作製したボルトナット材10が、脱気が不充分である等の理由によって靭性が得られない場合には、更に、ボルトナット材10を10MPa以上の加圧下、かつ、熱間押出時の温度を超える温度で熱処理を行う。これによって、粉末間の化合物の成長を抑制しながら粉末間の結合が促進され、靭性を向上させることができる。なお、10MPa未満の雰囲気圧下、例えば、大気圧下で同熱処理を行った場合、粉末境界は、化合物の生成サイトとなりやすく、ボルトナット材の脆化を引き起こすことがある。また、熱処理を行う雰囲気圧は高いほど好ましいが、熱処理を行う装置の性能により、約1000MPaが上限となる。
また、結晶粗大化阻害材料としてジルコニウムを使用しない場合、熱処理温度の上限は、組織安定性の観点から、押出温度以下で行うことが望ましく、熱処理温度の下限は、粉末間の結合を促進することから、600℃が望ましい。しかしながら、結晶粗大化阻害材料としてジルコニウムを使用しない場合、製造した素材は強度は高いが、平均結晶粒径が1μmを超え、靭性が低かった。本実施の形態では、結晶粗大化阻害材料としてジルコニウムを用い、更に理想的に粒界に生成させているので、押出温度を超える高温で熱処理しても、結晶粗大化のスピードが遅くなり、平均結晶粒径を1μm以下で保持できる。これによって、ボルトナット材10は、強度の低下をもたらさずに靭性を向上させることができる。
(試験例1)
ガスアトマイザー法により作製した約5kgのPH13−8Mo材(ASTM XM−13)組成の粉末α(以下同様)に、ジルコニウムの粉末βを添加して粉末γを作製した。次に、粉末γをアトリッションミルを用いてメカニカルアロイング処理を行い、合金化した粉末δを作製した。更に、この粉末δを軟鋼性の缶に詰め、真空状態として脱気封入した後、押出比6.8かつ押出温度800℃で熱間押出を行いボルトナット材を製造した。
表1に示すように、粉末δ中のジルコニウムの含有量が、実験例1〜5でそれぞれ実質的に1質量%、2質量%、3質量%、4質量%、5質量%となるように、粉末αに粉末βを添加している。表1には、実験例1〜5でそれぞれ粉末δの組成を示し、また、表中の「粉末α」は、原料となる粉末αの組成を示し、Balは残りを示す。実験例1〜5において、ボルトナット材は、ジルコニウムの添加量の増加に伴い、強度(引っ張り強さ)が高くなるが、靭性を表すシャルピー衝撃値は低下するという傾向となった。なお、粉末δ中のジルコニウムの含有量が4質量%を超えると、シャルピー衝撃値が1MJ/m2 未満となった。
(試験例2)
表2に示すように、実験例1の粉末γを用いたメカニカルアロイング処理におけるアトリッションミルの回転数を、100rpm(実験例1)、150rpm(実験例6)、200rpm(実験例7)、250rpm(実験例8)、及び300rpm(実験例9)として製造したボルトナット材の強度及び靭性について評価を行った。高速回転数で作製するほどメカニカルアロイング処理が短時間で終了して量産に適した条件となるが、粉末δ中の酸素、炭素、及び窒素の含有量が増加すると共に、ボルトナット材の強度及び靭性が共に低下した。
これは、高速回転数で製造する際の摩擦熱によって、粉末δ中の酸素、炭素、及び窒素の含有量が増加し、1質量%のジルコニウムでは、これらを固定できず、粉末間の金属結合が阻害されたと解される。試験例2では、実験例1及び実験例6の結果から解るように、回転数が150rpm以下が適しており、その場合には、粉末δの酸素、炭素、及び窒素の合計の質量が、ジルコニウムの質量の20%未満となった。
(試験例3)
表3に示すように、実験例1の粉末γを、アトリッションミルの回転数を100rpmとしてメカニカルアロイング処理を行って作製した粉末δを、4.2、5.2、6.8、及び7.5のそれぞれの押出比で、押出温度を650℃(実験例10〜13)、700℃(実験例14〜17)、750℃(実験例18〜21)、800℃(実験例22、23、1、及び24)、850℃(実験例25〜28)、900℃(実験例29〜32)、950℃(実験例33〜36)、及び1000℃(実験例37〜40)として、熱間押出を行いボルトナット材10を製造した。
押出温度としては、650℃は押し詰まりが発生して押し出せず、1000℃では素材の強度低下が著しかった。また、押出比4.2では相対的に密度が低く、またシャルピー衝撃試験片の試験後破面観察の結果でも、粉末粒界が潰し切れておらず、粉末粒界を亀裂が伝達したと判断された。押出比7.5の素材では試験片加工時に割れが発生した。押出温度としては、700℃以上かつ950℃以下、押出比としては5.2以上かつ6.8以下が適した条件と判断された。
(試験例4)
実験例20のボルトナット材は、強度が高いが、靭性(シャルピー衝撃値)が低いので、更に、アルゴン雰囲気中において、900℃で3時間熱処理を行った。その結果、強度は1550MPaと低下したが、シャルピー衝撃値は1.62MJ/m2 と大幅に高くなった。このように、熱間押出によって製造したボルトナット材を、更に、押出温度よりも高い温度で熱処理を行うことにより、若干の強度低下を伴うが、靭性を高めることができた。
(比較例1)
ガスアトマイザー法により作製した約5kgのPH13−8Mo材の組成の粉末αをアトリッションミルを用いてメカニカルアロイング処理を行い、合金化した粉末を作製した。この合金化した粉末を軟鋼性の缶に詰め、真空状態としてで脱気封入した後、押出比6.8、押出温度850℃で熱間押出を行いボルトナット材を製造した。このステンレス鋼は、強度が1510MPaで、シャルピー衝撃値が0.06MJ/m2 であった。また、その平均結晶粒径は8.72μmと大きかった。
なお、ガスアトマイザー法により作製した約5kgのPH13−8Mo材(ASTM XM−13)組成の粉末αに、ジルコニウムの粉末βを添加して粉末γを作製した後、粉末γをアトリッションミルを用いてメカニカルアロイング処理を行い、合金化した粉末δを作製した。この粉末δを軟鋼性の缶に詰め、真空状態として脱気封入した後、押出比6.8かつ押出温度800℃で熱間押出を行いボルトナット材を製造した実験例27は、強度が1800MPaで、シャルピー衝撃値が1.28MJ/m2 、平均結晶粒径が0.21μmと非常に良好な結果となった。このように、実質的に同一の組成でありながら、結晶を微細化しただけで大幅な特性向上が発現していることが認められた。
本発明は、前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲での変更は可能であり、例えば、前記した実施の形態や変形例の一部又は全部を組み合わせて本発明の航空機用ステンレス製ボルトナット材及びその製造方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
例えば、前記実施の形態の航空機用ステンレス製ボルトナット材及びその製造方法において、鉄、クロム、ニッケル及びモリブデンを含みジルコニウムを含まない粉末αをPH13−8Mo材と同様の組成で調整したが、粉末αにジルコニウムの粉末βを混合した粉末γをメカニカルアロイング処理して作製した粉末δの組成が、クロムが12.25質量%以上で13.25質量%以下、ニッケルが7.50質量%以上で8.50質量%以下、モリブデンが2.00質量%以上で2.50質量%以下、及びジルコニウムが0.3質量%以上で3質量%以下であって、残りが鉄及び不可避不純物であればよい。
本発明の一実施の形態に係る航空機用ステンレス製ボルトナット材の表面の透過形電子顕微鏡写真である。 同航空機用ステンレス製ボルトナット材の製造方法の説明図である。
符号の説明
10:航空機用ステンレス製ボルトナット材

Claims (3)

  1. 平均結晶粒径が1μm以下の微結晶金属素材から作製された、引っ張り強さが1200MPa以上で、シャルピー衝撃値が1MJ/m 2 以上である航空機用ステンレス製ボルトナット材であって、
    クロムを12.25質量%以上で13.25質量%以下、ニッケルを7.50質量%以上で8.50質量%以下、モリブデンを2.00質量%以上で2.50質量%以下、及びジルコニウムを0.3質量%以上で3質量%以下含有し、残りが鉄及び不可避不純物である粉末の固化物であり、しかも、前記粉末は、酸素、炭素、及び窒素の質量の合計が、ジルコニウムの質量の20%未満であることを特徴とする航空機用ステンレス製ボルトナット材。
  2. 鉄、クロム、ニッケル、及びモリブデンを含みジルコニウムを含まない粉末αと、ジルコニウムの粉末βとを混合して粉末γを作製し、該粉末γをメカニカルアロイング処理によって粉末δを作製し、該粉末δを熱間押出して固化する航空機用ステンレス製ボルトナット材の製造方法であって、前記粉末δは、クロムを12.25質量%以上で13.25質量%以下、ニッケルを7.50質量%以上で8.50質量%以下、モリブデンを2.00質量%以上で2.50質量%以下、及びジルコニウムを0.3質量%以上で3質量%以下含有し、残りが鉄及び不可避不純物であって、しかも、不可避不純物として含有される酸素、炭素、及び窒素の質量の合計が、ジルコニウムの質量の20%未満であることを特徴とする航空機用ステンレス製ボルトナット材の製造方法。
  3. 請求項記載の航空機用ステンレス製ボルトナット材の製造方法において、前記粉末δの熱間押出は、押出温度が700℃以上で950℃以下、かつ、押出比が5.2以上で6.8以下で行うことを特徴とする航空機用ステンレス製ボルトナット材の製造方法。
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