JP4508700B2 - 放射性物質容器用状態検出装置、放射性物質容器の異常検出方法及び異常検出プログラム - Google Patents

放射性物質容器用状態検出装置、放射性物質容器の異常検出方法及び異常検出プログラム Download PDF

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Description

本発明は,使用済燃料集合体,放射性廃棄物等の放射性物質を収容,輸送,あるいは保存する放射性物質容器の状態を検出する状態検出装置に関する。
原子炉における燃焼を終えた使用済燃料集合体を安全に長期的に保存する技術は,核燃料サイクルの確立のために重要な技術の一つである。使用済燃料集合体が生成された後,それを再処理施設によって再処理されるまでには,ある程度の時間が必要である。具体的には,使用済燃料集合体は,それが生成された後再処理されるまでに最長で60年間保存される可能性がある。従って,使用済燃料集合体は,再処理施設によって再処理されるまで長期に安全に保存される必要がある。
使用済燃料集合体を長期間保存する技術として,湿式貯蔵と乾式貯蔵があり,乾式貯蔵にはコンクリートキャスク,金属キャスク,ボールト貯蔵が知られている。コンクリートキャスクは,概略的には,使用済燃料集合体を収容する金属製のキャニスタ(内筒)と,そのキャニスタを収容するコンクリート製の外筒とから構成される。使用済燃料集合体は,キャニスタの内部に形成された密封空間に収容される。金属キャスクは,概略的には,放射性物質を収容する金属製の胴部と,一次蓋と二次蓋とからなる蓋部とから構成される。使用済燃料集合体は,胴部と蓋部とによって形成された密封空間に収容される。一方,ボールト貯蔵とは,使用済燃料集合体を収容する金属製のキャニスタを,除熱,及び放射線遮蔽を考慮した建屋内に高密度に並べる方法である。使用済燃料集合体は,キャニスタの内部に形成された密封空間に収容される。
使用済燃料集合体の保存にあたり考慮すべき事項としては,使用済燃料集合体がFP(核分裂生成物)などの高放射性物質に含まれる放射能及び発熱が挙げられる。キャスク及びキャニスタの主な役割は,使用済燃料集合体の放射能及び発熱を低減することである。使用済燃料集合体の発熱を低減するために,一般的には,以下の3つの技術が採用される。第1に,使用済燃料集合体が局所的に発生する熱を拡散するために,使用済燃料集合体を収容する密封空間(即ち,キャニスタ及び金属キャスクの内部)にはヘリウムガスが封じられる。第2に,使用済み燃料集合体の保存の間,キャスクは冷却される。更に,キャスク自体も発熱に耐えられるように設計される。
加えて,より安全に使用済燃料集合体を保存するために,使用済燃料集合体を収容する密封空間の密封性,即ち,キャスク及びキャニスタの密封性の確認が行われる。密封性を確認する最も有力な手段としては,キャスクから漏れ出る放射線を検出する放射線検出装置及びヘリウムガスのリークを検出するヘリウムリークディテクターが挙げられる。しかし,これらの装置の使用は,使用済燃料集合体を長期的に保存する密封空間の密封性を放射能漏洩のない早期に継続的に確認するためには好適でない。このため,キャスクの密封性を簡便に放射能漏洩のない早期に,且つ,低コストに確認するための装置の開発が求められている。
特許文献1は,キャスクの密封性を簡便に,且つ,低コストに確認するためのモニタリング装置を開示している。公知のそのモニタリング装置は,キャスクの温度変化及び圧力変化から,密封性の劣化を検知する。キャスクの密封性の劣化によってヘリウムガスの漏れが発生すると,キャスクの温度及び圧力は異常に低下する。公知のそのモニタリング装置は,この温度及び圧力の異常な低下を検知することにより,キャスクの異常を検出する。温度変化及び圧力変化からキャスクの密封性を確認することは,モニタリング装置を簡素化することを可能にし,キャスクの密封性を簡便に放射能漏洩のない早期に,且つ,低コストに確認するために有効である。
温度変化及び圧力変化からキャスクの密封性を確認するモニタリング装置では,キャスクの密封性の異常の検知の確実性を向上することが重要である。より具体的には,キャスクに微小なリークが発生したときでも,その微小なリークを検知できることが重要である。微小なリークでは,キャスクの時間あたりの温度変化及び圧力変化も小さいから,微小なリークに起因する温度変化及び圧力変化を正確に検知することが重要である。一方で,異常でない温度変化及び圧力変化を,キャスクの密封性の劣化に起因していないと正しく結論付けることも重要である。
このような背景から,放射性物質を収容する放射性物質容器の密封性の異常を,より確実に検知する技術の提供が求められている。
特開2002−48898号公報
本発明の目的は,放射性物質を収容する放射性物質容器の密封性の異常を,より確実に検知する技術を提供することにある。
上記の目的を達成するために,本発明は,以下に述べられる手段を採用する。その手段に含まれる技術的事項には,[特許請求の範囲]の記載と[発明を実施するための最良の形態]の記載との対応関係を明らかにするために,[発明を実施するための最良の形態]で使用される番号・符号が付加されている。但し,付加された番号・符号は,[特許請求の範囲]に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
本発明による放射性物質容器用状態検出装置(2,2’,2”)は,放射性物質を収容する放射性物質容器(11,3)の状態量(T,P)を取得する状態量取得手段(31,32,71)と,気温(T)を測定する気温測定手段(33,72)と,気温(T)に基づいて状態量(T,P)を補正することによって補正状態量(TCi,P)を算出する補正状態量算出手段(34a,34a’,73a)と,補正状態量(TCi,P)に基づいて放射性物質容器(11,3)の異常を検出する異常検出手段(34b−34e,73b−73e)とを備えている。好適な実施形態では,補正状態量(TCi,P)の算出には,状態量(T,P)に対応する状態量対応項と,気温(T)の状態量(T,P)に対する応答を表す応答波形対応項とを含む演算式が使用される。状態量(T,P)としては,最も典型的には,放射性物質容器(11,3)の表面温度及びその内部の圧力が使用される。
かかる状態検出装置(2,2’,2”)は,補正状態量(TCi,P)を用いて放射性物質容器(11,3)の異常を検出することにより,気温(T)に起因する状態量(T,P)の変動に対する影響をキャンセルしながら,放射性物質容器(11,3)の異常を検出することができる。これにより,当該状態検出装置(2,2’,2”)は,放射性物質容器の密封性の検知の確実性を向上することができる。
好適には,上記応答波形対応項として,気温の状態量に対する応答を一次遅れ要素で表す一次遅れ波形対応項が使用される。
一層に検知の確実性を向上するためには,応答波形対応項は,互いに異なる伝達関数にそれぞれに対応する複数の項を含むことが好適である。これにより,時定数が異なる構造体の影響を反映した適切な応答波形対応項を生成することができ,従って,放射性物質容器の密封性の検知の確実性を向上することができる。上記応答波形対応項として,一次遅れ波形対応項が使用される場合には,当該応答波形対応項は,時定数が異なる複数の一次遅れ波形にそれぞれに対応する複数の項を含むことが好適である。
特に,ボールト貯蔵が行われる場合には,補正状態量算出手段(34a’)は,気温に加え,他の放射性物質容器の表面温度に基づいて前記状態量を補正することによって補正状態量を算出することが好適である。
異常検出手段(34b−34e,73b−73e)は,補正状態量(TCi,P)の一定期間における統計量から正常状態領域を設定する正常領域設定手段(34b,73b)と,補正状態量(TCi,P)が正常状態領域の中にあるか否かに基づいて,放射性物質容器(11,3)の密封性に異常があるか否かを判定する異常判定手段(34b,73b)とを含むことが好適である。具体的な統計量としては,補正状態量(TCi,P)の一定期間における平均値,該一定期間における補正状態量(TCi,P)の標準偏差,あるいは最大値,最小値,その偏差,尖度,歪度が挙げられる。
また,異常検出手段(34c,73c)は,補正状態量(TCi,P)の時間変化率から放射性物質容器(11,3)の異常を検出することが好適である。この場合,異常検出手段(34c,73c)は,時間変化率の一定期間における統計量から正常状態領域を設定する正常領域設定手段(34c,73c)と,補正状態量(TCi,P)の時間変化率が正常状態領域の中にあるか否かに基づいて,放射性物質容器(11,3)の密封性に異常があるか否かを判定する異常判定手段(34c,73c)とを含むことが好適である。具体的な統計量としては,補正状態量(TCi,P)の時間変化率の一定期間における平均値である時間変化率平均値,該一定期間における補正状態量(TCi,P)の時間変化率の標準偏差である時間変化率標準偏差,あるいは最大値,最小値,その偏差,尖度,歪度が挙げられる。
状態量取得手段(31,32)は,放射性物質容器(11,3)の第1位置における第1表面温度(T)を取得する第1温度測定器(31)と,放射性物質容器(11,3)の,第1位置と異なる高さの第2位置における第2表面温度(T)を取得する第2温度測定器(32)とを備えることがある。この場合,補正状態量算出手段(34a,73a)は,第1表面温度に対応する第1表面温度対応項と,気温(T)の第1表面温度(T)に対する応答に対応する応答波形対応項とを含む演算式によって第1補正温度(TC1)を算出し,且つ,第2表面温度(T)に対応する第2表面温度対応項と,気温(T)の第2表面温度(T)に対する応答に対応する応答波形対応項とを含む演算式によって第2補正温度(TC2)を算出し,且つ,異常検出手段(34d)は,第1補正温度(TC1)と第2補正温度(TC2)との温度差から,放射性物質容器(11,3)の異常を検出することが好適である。この場合,異常検出手段(34d)は,第1補正温度(TC1)と第2補正温度(TC2)との温度差の一定期間における統計量から,正常状態領域を設定する正常領域設定手段(34d)と,該温度差が正常状態領域の中にあるか否かに基づいて,放射性物質容器(11,3)の密封性に異常があるか否かを判定する異常判定手段(34d)とを含むことが好適である。具体的な統計量としては,第1補正温度(TC1)と第2補正温度(TC2)との温度差の,一定期間における平均値である温度差平均値,該一定期間における温度差の標準偏差である温度差標準偏差,あるいは最大値,最小値,その偏差,尖度,歪度が挙げられる。
また,異常検出手段(34e,73e)は,現在の補正状態量(TCi,P)に対応する現在値と,過去のある時刻における補正状態量(TCi,P)に対応する過去値との差に基づいて,放射性物質容器(11,3)の異常を検出することが好適である。この場合,異常検出手段(34e,73e)は,現在値と過去値との差の基準期間における統計量から,正常状態領域を設定する正常領域設定手段(34e,73e)と,現在値と過去値との差が正常状態領域の中にあるか否かに基づいて,放射性物質容器(11,3)の密封性に異常があるか否かを判定する異常判定手段(34e,73e)とを含むことが好適である。具体的な統計量としては,補正状態量(TCi,P)の基準期間における標準偏差である基準標準偏差,あるいは最大値,最小値,その偏差,尖度,歪度が挙げられる。
他の観点において,本発明による放射性物質容器の異常検出方法は,
放射性物質を収容する放射性物質容器(11,3)の状態量(T,P)を取得するステップと,
気温(T)を測定するステップと,
気温(T)に基づいて状態量(T,P)を補正することによって補正状態量(TCi,P)を算出するステップと,
補正状態量(TCi,P)に基づいて放射性物質容器(11,3)の異常を検出するステップ
とを備えている。好適な実施形態では,補正状態量(TCi,P)は,状態量(T,P)に対応する状態量対応項と,気温(T)の状態量(T,P)に対する応答を表す応答波形対応項とを含む演算式を用いて算出される。
更に他の観点において,本発明による放射性物質容器の異常検出プログラムは,
放射性物質を収容する放射性物質容器(11,3)の状態量(T,P)を取得するステップと,
気温(T)を測定するステップと,
気温(T)に基づいて状態量(T,P)を補正することによって補正状態量(TCi,P)を算出するステップと,
補正状態量(TCi,P)に基づいて放射性物質容器(11,3)の異常を検出するステップ
とをコンピュータ(34,73)に実行させる。
本発明により,放射性物質を収容する放射性物質容器の密封性の検知の確実性が向上される。
第1 実施の第1形態
本発明の実施の第1形態では,コンクリートキャスク1の劣化の発生の有無が,状態検出装置2によって検出される。以下では,状態の検出の対象であるコンクリートキャスク1の構成が説明された後,本実施の形態の状態検出装置2の構成と動作が詳細に説明される。
1.コンクリートキャスクの構成
コンクリートキャスク1は,概略的には,キャニスタ11と,そのキャニスタ11を収容するコンクリート容器21とから構成される。キャニスタ11は,胴部12と一次蓋13aと二次蓋13bとから構成されている。胴部12と一次蓋13aと二次蓋13bは,いずれも,ステンレス又は炭素鋼で形成されている。胴部12の上部開口は一次蓋13aと二次蓋13bとによって密封され,これにより,キャニスタ11の内部にはキャビティ14が形成されている。このキャビティ14に,使用済燃料集合体15を収容するバスケット16が収められる。キャニスタ11の内部には,使用済燃料集合体15が局部的に発生する熱を全体に拡散するために,ヘリウムガスが充填されている。使用済燃料集合体15が熱を発生すると,その近傍のヘリウムガスの温度が上昇する。この温度上昇により,ヘリウムガスが循環され,熱がキャニスタ11の全体に拡散される。自然循環を利用して熱を拡散するため,キャニスタ11の上部の温度は高くなり,下部の温度は低くなる。即ち,キャニスタ11の高さが異なる位置では,その温度が異なる。
コンクリート容器21は,いずれもコンクリート製の支持体22と側壁23と蓋体24とから構成されている。側壁23の上部及び下部には空気流通孔25が形成されている。コンクリートキャスク1を収容する設備内部の空気は空気流通孔25を通じてキャニスタ11に流通可能であり,これにより,キャニスタ11が冷却される。
コンクリート容器21の側壁23及び蓋体24には,これを貫通する検査孔26,27がそれぞれに形成されている。後述されるように,検査孔26,27は,キャニスタ11の表面温度を測定するための温度センサを挿入するために使用される。
2.状態検出装置2の構成
状態検出装置2は,温度センサ31,32と,気温センサ33と,演算装置34と,表示装置35とを備えている。
温度センサ31,32は,キャニスタ11の表面温度を逐次に測定するために使用される。温度センサ31,32は,コンクリート容器21に設けられた検査孔26,27に挿入されてキャニスタ11の表面に接触するように固定される。温度センサ31は,キャニスタ11の上部に接触され,上部の表面温度を測定するために使用される。一方,温度センサ32は,キャニスタ11の中央部に接触され,中央部の表面温度を測定するために使用される。温度センサ31,32としては,典型的には,熱電対,ペルチェ素子,測温抵抗体,赤外線温度計,放熱温度計が使用され得る。
温度センサ31,32が設けられている高さが異なることは,キャニスタ11の密封性の劣化の検知の上で重要である。キャニスタ11の高さの異なる2点の温度差は,キャニスタ11の密封性に異常が発生すると変化するから,高さの異なる2点の温度差は,異常の発生に検知するために使用可能である。温度センサ31によって測定される表面温度(即ち,キャニスタ11の上部の表面温度)は,以後,表面温度Tと記載され,温度センサ32によって測定される表面温度(即ち,キャニスタ11の中央部の表面温度)は,以後,表面温度Tと記載される。特に時刻を特定したい場合には,時刻tにおける表面温度T,Tは,それぞれ,T(t),T(t)と表記される。
気温センサ33は,コンクリートキャスク1の周囲の気温Tを測定する。時刻tにおける気温Tは,T(t)と表記される。
演算装置34は,温度センサ31,32によって逐次に測定された表面温度T,Tと,気温センサ33によって逐次に測定された気温Tとを用いて,キャニスタ11の異常の有無を検知するコンピュータである。演算装置34には,補正温度算出モジュール34aと,温度測定値判定モジュール34bと,温度変化率判定モジュール34cと,温度差判定モジュール34dと,長期的変化判定モジュール34eとを含むソフトウェアプログラムがインストールされている。
補正温度算出モジュール34aは,表面温度T,Tから補正温度TC1,TC2を算出するプログラムである。ここで補正温度TC1,TC2とは,気温Tの変化が表面温度T,Tに与える影響をキャンセルするために導入される仮想的な温度である。補正温度TC1,TC2は,表面温度T,Tから,気温Tの変化による表面温度T,Tの変化に対応する成分を減じることによって得られる。後述されるように,補正温度TC1,TC2の導入は,キャニスタ11の密封性の状態の検知の確実性を向上するために重要な役割をはたしており,本実施の形態の状態検出装置2の一つの特徴である。
温度測定値判定モジュール34bと,温度変化率判定モジュール34cと,温度差判定モジュール34dと,長期的変化判定モジュール34eとは,補正温度算出モジュール34aによって算出された補正温度TC1,TC2を用いてキャニスタ11の異常を検知するプログラムである。これらのモジュールは,異なる方法によって,キャニスタ11の異常を検知する
温度測定値判定モジュール34bは,補正温度TC1,TC2を統計的に処理することによってキャニスタ11の異常を検知する。キャニスタ11の表面温度T,Tは,キャニスタ11の密封性に異常が発生すると変化するから,補正温度TC1,TC2も表面温度T,Tの変化に伴って変化する。温度測定値判定モジュール34bは,この補正温度TC1,TC2の変化を捉えることにより,キャニスタ11の密封性の異常を検知する。
温度変化率判定モジュール34cは,補正温度TC1,TC2の時間変化率dTC1,dTC2を算出し,この補正温度変化率dTC1,dTC2を統計的に処理することによってキャニスタ11の異常を検知する。補正温度変化率dTC1,dTC2は,キャニスタ11の密封性に異常が発生すると変化する。この補正温度変化率dTC1,dTC2の変化を捉えることにより,温度変化率判定モジュール34cは,キャニスタ11の密封性の異常を検知する。
温度差判定モジュール34dは,補正温度TC1,TC2の差ΔT(=TC1−TC2)を算出し,この温度差ΔTを統計的に処理することによってキャニスタ11の異常を検知する。キャニスタ11の上部の表面温度Tと中央部の表面温度Tとの温度差は,キャニスタ11の密封性に異常が発生すると変化するから,補正温度TC1,TC2の温度差ΔTも,キャニスタ11の密封性に異常が発生すると変化する。温度差判定モジュール34dは,この温度差ΔTの変化を捉えることにより,キャニスタ11の密封性の異常を検知する。
長期的変化判定モジュール34eは,補正温度TC1,TC2の長期的変化を検出してキャニスタ11の異常を検知する。具体的には,長期的変化判定モジュール34eは,補正温度TC1,TC2の,過去のある時間の値(過去値)と現在値とを比較することにより,キャニスタ11の異常を検知する。過去値としては,典型的には,6ヶ月前,1年前の補正温度TC1,TC2が使用される。この長期的変化判定モジュール34eは,キャニスタ11の微小なリークを検出するためのものである。微小なリークは,キャニスタ11の内部の圧力を長期間徐々に減少させ,これに伴い,キャニスタ11の表面温度T,T及びそれらに対応する補正温度TC1,TC2も徐々に減少させる。この補正温度TC1,TC2の緩やかな低下を捕らえることにより,長期的変化判定モジュール34eは,キャニスタ11の微小なリークを検知する。
表示装置35は,演算装置34による検知結果を表示するために使用される。演算装置34によって異常が検知されると,その旨が表示装置35に表示される。
3.キャニスタの状態判定方法
以下では,本実施の形態における,キャニスタ11の状態判定方法が詳細に説明される。
(1)補正温度の算出
上述されているように,本実施の形態では,表面温度T,Tから,気温Tの変化による表面温度T,Tの変化に対応する成分を減じて補正温度TC1,TC2を算出し,この補正温度TC1,TC2を用いてキャニスタ11の状態が判定される;表面温度T,Tをそのままキャニスタの状態の判定に用いるのではない。このような状態判定方法の利点は,キャニスタ11の表面温度T,Tから,キャニスタ11の密封性の劣化に起因する成分を分離できることである。気温Tは,キャニスタ11の表面温度T,Tに大きな影響を及ぼすから,表面温度T,Tの変化は,純粋に,キャニスタ11の密封性の劣化によって生じるものではない。この気温Tの影響を除去することにより,本実施の形態では,キャニスタ11の密封性の検知の確実性が向上されている。
具体的には,本実施の形態では,気温Tの変化による表面温度T,Tの変化に対応する成分が,時定数τi1を有する一つの一次遅れ要素,又は,それぞれ時定数τi1,τi2,・・・,τimを有するm個の一次遅れ要素の和であるとして近似され,この近似に基づいて,補正温度TC1,TC2が算出される。
即ち,時刻tにおける補正温度TCi(t)は,下記式(1):
Ci(t)=T(t)−ΣKij・Tτij(t), ・・・(1)
によって算出される。iは,1,2の任意であり,jは,1以上m以下の整数である。Tτij(t)は,気温Tの表面温度Tへの応答を表す項であり,時定数τを有する一次遅れ要素によって記述される。Kijは,時定数τijを有する一次遅れ要素に対応して定められる補正係数である。Tτij(t)は,下記式(2):
τij(t)=L−1[Xτij(s)・T(s)]|t=tk, ・・・(2)
で求められる。ただし,T(s)は,気温T(t)のラプラス変換である。Xτij(s)は,気温Tに対する表面温度Tの応答のうち時定数がτijである一次遅れの成分の伝達関数である。L−1は,逆ラプラス変換を示す記号である。
気温Tに対する表面温度T,Tの応答を,(一つではなく)m個の一次遅れ要素の和であるとして近似することは,気温Tの表面温度T,Tへの影響をより適正に評価する上で好適である。コンクリートキャスク1は,異なる熱容量を有する複数の部材,即ち,温度変化の時定数が異なる複数の部材で構成される。従って,表面温度T,Tの応答をm個の一次遅れ要素の和であるとして近似することは,気温Tの表面温度T,Tへの応答を,より適正に近似することを可能にする。
図2を参照して,気温Tに対する表面温度Tの応答の伝達関数Xτi1(s),Xτi2(s),・・・の時定数τi1,τi2,・・・は,好適には,相関法によって決定される。
具体的には,まず,各時定数τijについて,伝達関数XCij(s)の算出に使用される期間Πが決定される。期間Πは,表面温度Tに対応する伝達関数X1j(s)の時定数τ1jと,表面温度Tに対応する伝達関数XC2j(s)の時定数τ2jの決定に共通に使用される。期間Πの長さは,評価したい時定数の長さに応じて決定される;短期の変動を表す時定数を求めたい場合には,期間Πの長さは短く取られ,長期の変動を表す時定数を求めたい場合には,期間Πの長さは長く取られる。例えば,コンクリート容器21のように,大きな熱容量を有する部材の影響を表現する時定数を求めるためには,例えば,その長さが7日であるような長い期間Πが決定される。キャニスタ11のように,中程度の熱容量を有する部材の影響を表現する時定数を求めるためには,例えば,その長さが2日であるような中程度の期間Πが決定される。
更に,測定された気温T(t),表面温度T(t),T(t)からオフセット成分が除かれた後(ステップS01),白色化フィルタにより,雑音が除去される(ステップS02)。オフセット成分と雑音成分とが除去された気温T,表面温度T,Tは,それぞれ,気温Tf0(t),表面温度Tf1(t),Tf2(t)と表記される。
続いて,オフセット成分と雑音成分とが除去された気温Tf0(t)と,表面温度Tfi(t)との,期間Πについての相互相関関数RCij(τ)が求められる(ステップS03)。
更に,その相互相関関数Rcij(τ)から,インパルス応答が求められ(ステップS04),そのインパルス応答を積分することによってステップ応答が求められる(ステップS05)。そのステップ応答を一次遅れ要素として近似することにより,時定数τijが算出される(ステップS06)。このような過程で算出された時定数τi1,τi2,・・・が一次遅れ波形Tτi1(t),Tτi2(t),・・・の計算,即ち,時刻tの補正温度TCi(t)の算出に使用される。
本質的な問題ではないが,補正温度TCiをキャニスタ11の温度を表す指標として有意義な値にするためには,気温Tの平均値が一次遅れ波形Tτij(t)から減じられることが好適である;即ち,補正温度TCi(k)は,式(1)を修正して得られる下記式(1’):
Ci(t)=T(t)−ΣKij・{Tτij(t)−μT0j}, ・・・(1’)
によって算出されることが好適である。ここで,μT0jは,期間Πにおける気温Tの平均値である。平均値μT0jの代わりに,過去一定期間(例えば1年間)の気温Tの平均値が使用されることも可能である。これにより,補正温度TCiは,キャニスタ11の温度に近い値になる。
本実施の形態では,気温Tの変化による表面温度T,Tの変化に対応する成分の近似に一次遅れ要素が使用されているが,他の伝達関数が近似に使用されることも可能である。この場合,気温Tに対する表面温度T,Tの応答を,(一つではなく)m個の係数が異なる伝達関数の和であるとして近似されることが好適である。既述のように,コンクリートキャスク1は,異なる熱容量を有する複数の部材,即ち,温度変化の時定数が異なる複数の部材で構成される。従って,表面温度T,Tの応答を係数が異なる複数の伝達関数の和であるとして近似することは,気温Tの表面温度T,Tへの応答を,より適正に近似することを可能にする。
(2)補正温度を用いた状態判定方法
2−1)当該状態判定方法の概略
図3は,本実施の形態において,補正温度TC1,TC2を用いてキャニスタ11の状態を判定する方法を示すフローチャートである。
所定の測定時刻になると,温度センサ31,32は,キャニスタ11の上部の表面温度Tと,キャニスタ11の中央部の表面温度Tとを測定し,気温センサ33は気温Tを測定する(ステップS11)。以下では,最新の測定時刻は,時刻tと記述され,その時刻tにおいて測定された表面温度T,Tは,それぞれ,T(t),T(t)と記載される。
続いて,補正温度算出モジュール34aにより,表面温度T(t),T(t)から,上記式(1)(又は式(1’))を用いて,補正温度TC1(t),TC2(t)が算出される(ステップS12)。
続いて,ステップS12で算出された補正温度TC1(t),TC2(t)を用いて,キャニスタ11の状態が判定される(ステップS13−S16)。キャニスタ11の状態の判定は,上述された4つのモジュール:即ち,温度測定値判定モジュール34b,温度変化率判定モジュール34c,温度差判定モジュール34d,長期的変化判定モジュール34eによって同時的に行われる。上述のとおり,温度測定値判定モジュール34bは,
補正温度TC1,TC2の統計処理によってキャニスタ11の異常を検知する(ステップS13)。温度変化率判定モジュール34cは,補正温度TC1,TC2の時間変化率である補正温度変化率dTC1,dTC2の統計処理によってキャニスタ11の異常を検知する(ステップS14)。温度差判定モジュール34dは,補正温度TC1,TC2の温度差ΔT(=TC1−TC2)の統計処理によってキャニスタ11の異常を検知する(ステップS15)。長期的変化判定モジュール34eは,補正温度TC1,TC2の長期的変化を検出してキャニスタ11の異常を検知する(ステップS16)。
ステップS11−S16の処理が,測定時刻が到来する毎に行われ,キャニスタ11の異常の検出が逐次に行われる。
以下では,ステップS13−S16で実行される処理が,それぞれに詳細に説明される。
2−2) 補正温度TC1,TC2の統計処理による状態判定
図4は,補正温度TC1,TC2の統計処理によってキャニスタ11の異常を検知する処理(ステップS13)を示すフローチャートである。当該処理では,測定時刻tの直近の一定期間Γにおける補正温度TC1,TC2の平均値μTC1,μTC2及び標準偏差σTC1,σTC2が算出される(ステップS21,S22)。最も典型的には,期間Γは,tk−N≦t≦tk−1なる期間と定められる。ここで,時刻tk−1は,測定時刻tの直前の測定時刻であり,同様に,時刻tk−Nは,測定時刻tのN回前の測定時刻である。この場合,平均値μTC1,μTC2及び標準偏差σTC1,σTC2は,下記式(3a),(3b)で表される。
Figure 0004508700
例えば,一定期間Γは,その始期である時刻tk−Nが測定時刻tの2日前になるように設定される。
続いて,ステップS21,S22で算出された平均値μTC1,μTC2及び標準偏差σTC1,σTC2から,正常温度領域が決定される(ステップS23)。正常温度領域とは,キャニスタ11が正常と判断される補正温度TC1,TC2の範囲である。本実施の形態では,補正温度TC1,TC2それぞれの正常温度領域RTC1,RTc2は,
TC1:μTC1−n・σTC1<TC1<μTC1+n・σTC1, ・・・(4a)
TC2:μTC2−n・σTC2<TC2<μTC2+n・σTC2, ・・・(4b)
と算出される。nは,経験的には,2又は3であることが好適である。しかしながら,nは,最適な任意の値を取り得る。
留意されるべきことは,補正温度TC1,TC2の平均値及び標準偏差の算出に使用される一定期間Γは,測定時刻が到来する毎にずれていき,従って,正常温度領域も,通常,測定時刻が到来する毎に変化していくことである。例えば,時刻tの次の測定時刻tk+1については,期間Γk+1は,tk−N+1≦t≦tなる期間と定められる。従って,次の測定時刻tk+1が到来すると,平均値μTC1,μTC2及び標準偏差σTC1,σTC2が新たに算出され,更に,正常温度領域RTC1,RTC2も新たに決定される。これを明確にするために,必要がある場合には,時刻tについて定められた正常温度領域を,それぞれ,RTC1(t),RTC2(t)と記載することにする。
続いて,温度測定値判定モジュール34bは,補正温度TC1(t),TC2(t)が,正常温度領域RTC1(t),RTC2(t)の下限を下回るか否かに応じて,キャニスタ11が正常か否かを判断する(ステップS24)。具体的には,温度測定値判定モジュール34bは,補正温度TC1,TC2の少なくとも一方が,今回を含めて過去m回連続して正常温度領域の下限を下回る場合に,キャニスタ11に異常があると判断する;即ち,温度測定値判定モジュール34bは,補正温度TC1,TC2の少なくとも一方が,「0以上m−1以下の任意のpについて,補正温度TCi(tk−p)が,正常温度領域RTCi(tk−p)の下限を下回る」という条件を満足する場合,キャニスタ11の密封性に異常があると判断する。この代わりに,補正温度TC1,TC2の両方が今回を含めて過去m回連続して正常温度領域から外れている場合に,キャニスタ11に異常があると判断してもよい。一方で,温度測定値判定モジュール34bは,補正温度TCi(t)が正常温度領域RTCi(t)の上限を今回を含めて過去m回連続して上回る場合,センサ異常あるいは計測系の異常があると判断する。
キャニスタ11に異常があると判断した場合,温度測定値判定モジュール34bは,異常が発生した旨を表示装置35に表示する(ステップS25)。キャニスタ11が正常であると判断した場合,温度測定値判定モジュール34bは,キャニスタ11が正常である旨を表示装置35に表示する(ステップS26)。
図5は,補正温度TC1の統計処理による状態判定方法の具体的事例を示すグラフである。補正温度TC1が逐次に算出され,算出された補正温度TC1を用いて,平均値μTC1,標準偏差σTC1が逐次に算出される。この平均値μTC1,標準偏差σTC1を用いて,正常温度領域RTC1が逐次に決定される。当該事例では,時刻tにおいてキャニスタ11に漏れが発生し,内部のガス圧力が低下し始めている。これに応答して,補正温度TC1が急激に低くなり始める。補正温度TC1の変動に伴う正常温度領域RTC1の変化は,緩やかであるため,補正温度TC1は正常温度領域RTC1から外れる。本事例では,時刻tにおいて,補正温度TC1が正常温度領域RTC1から外れる。その後,補正温度TC1が正常温度領域RTC1から外れるという事象がm回連続して起こると,即ち,補正温度TC1が正常温度領域RTC1から外れる状態がある程度維持されると,温度測定値判定モジュール34bは,キャニスタ11に漏れが発生したと判断する。
このようにしてキャニスタ11の密封性を判断することの有効性は,正常温度領域RTC1,RTc2を逐次に的確に決定できることにある。キャニスタ11の温度は,その密封性が正常であっても,長期的に保存されている間に徐々に低下していく。これは,ある固定された閾値を決定することによって,キャニスタ11の表面温度が異常に低下したか否かを判断することが困難であることを意味する。本実施の形態の補正温度TC1,TC2の統計処理による状態判定方法では,一定期間Γにおける正常の範囲の変動,即ち,平均値を中心とする上下n・σTC1の間の変動よりも大きな変動が発生した場合に,キャニスタ11の密封性に異常が発生したと判断される。これにより,キャニスタ11の密封性の判断基準を動的に的確に決定し,キャニスタ11の密封性を的確に判断することができる。
2−3) 補正温度変化率dTC1,dTC2の統計処理による状態判定
図6は,補正温度変化率dTC1,dTC2の統計処理によってキャニスタ11の異常を検知する処理(ステップS14)を示すフローチャートである。当該方法では,時刻tについて算出された補正温度TC1,TC2から,時刻tにおける補正温度の変化率dTC1(t),dTC1(t)が算出される(ステップS31)。
続いて行われる処理は,補正温度TC1,TC2の代わりに補正温度変化率dTC1,dTC2が使用される点以外,補正温度TC1,TC2の統計処理による状態判定方法で行われる処理と同一である。具体的には,測定時刻tの直近の一定期間Γにおける補正温度変化率dTC1,dTC2の平均値μdTC1,μdTC2及び標準偏差σdTC1,σdTC2が算出される(ステップS32,S33)。
続いて,ステップS32,S33で算出された平均値μdTC1,μdTC2及び標準偏差σdTC1,σdTC2から,正常温度変化率領域RdTC1,RdTc2が決定される(ステップS34)。本実施の形態では,補正温度変化率dTC1,dTC2それぞれの正常温度変化率領域RdTC1,RdTc2は,
dTC1:μdTC1−n・σdTC1<dTC1<μdTC1+n・σdTC1, ・・・(5a)
dTC2:μdTC2−n・σdTC2<dTC2<μTdC2+n・σdTC2, ・・・(5b)
と決定される。nは,例えば,2又は3であることが好適である。しかしながら,nは最適な任意の値を取り得る。
続いて,温度変化率判定モジュール34cは,補正温度変化率dTC1(t),dTC2(t)が,正常温度領域RdTC1(t),RdTc2(t)の下限を下回るか否かに応じて,キャニスタ11が正常か否かを判断する(ステップS35)。具体的には,温度測定値判定モジュール34bは,補正温度変化率dTC1,dTC2の少なくとも一方が,今回を含めて過去m回連続して正常温度領域RdTC1,RdTc2の下限を下回る場合,キャニスタ11の密封性に異常があると判断する;即ち,温度変化率判定モジュール34cは,補正温度TC1,TC2の少なくとも一方が,「0以上m−1以下の任意のpについて,補正温度変化率dTCi(tk−p)が,正常温度変化率領域RdTCi(tk−p)の下限を下回る」という条件を満足する場合,キャニスタ11の密封性に異常があると判断する。その代わりに,温度変化率判定モジュール34cは,補正温度変化率dTC1,dTC2の両方が,今回を含めて過去m回連続して正常温度領域RdTC1,RdTc2から外れている場合,キャニスタ11の密封性に異常があると判断してもよい。一方で,温度変化率判定モジュール34cは,補正温度変化率dTCi(t)が正常温度領域RTCi(t)の上限を今回を含めて過去m回連続して上回る場合,センサ異常あるいは計測系の異常があると判断する。
キャニスタ11に異常があると判断した場合,温度変化率判定モジュール34cは,異常が発生した旨を表示装置35に表示する(ステップS36)。キャニスタ11が正常であると判断した場合,温度変化率判定モジュール34cは,キャニスタ11が正常である旨を表示装置35に表示する(ステップS37)。
図7は,補正温度変化率dTC1の統計処理による状態判定方法の具体的事例を示すグラフである。補正温度変化率dTC1が逐次に算出され,算出された補正温度変化率dTC1を用いて,平均値μdTC1,標準偏差σdTC1が逐次に算出される。この平均値μdTC1,標準偏差σdTC1を用いて,正常温度変化率領域RdTC1が逐次に決定される。当該事例では,時刻tにおいてキャニスタ11に漏れが発生し,表面温度Tが低下し始めている。これに応答して,補正温度TC1が急激に低くなり始め,これに伴い,補正温度変化率dTC1が大きく変化している。補正温度変化率dTC1による正常温度変化率領域RdTC1の変化は,緩やかであるため,補正温度変化率dTC1は正常温度変化率領域RdTC1から外れる。本事例では,時刻tにおいて,補正温度変化率TC1が正常温度変化率領域RdTC1から外れる。その後,補正温度変化率dTC1が正常温度変化率領域RdTC1から外れるという事象がm回連続して起こると,即ち,補正温度変化率dTC1が正常温度変化率領域RdTC1から外れる状態がある程度維持されると,温度変化率判定モジュール34cは,キャニスタ11に漏れが発生したと判断する。
補正温度変化率dTC1の統計処理による状態判定方法の有利性は,キャニスタ11の漏れが発生して以後,キャニスタ11の異常の検出に要するまでの時間が短いことである。図6から理解されるように,キャニスタ11の漏れが発生すると,その補正温度変化率dTC1は瞬間的に変化し,速やかに正常温度変化率領域RdTC1から外れる。このため,補正温度変化率dTC1の統計処理による状態判定方法は,短時間でキャニスタ11の異常を検出することができる。
2−4) 温度差ΔT(=TC1−TC2)の統計処理による状態判定
図8は,補正温度TC1,TC2の差ΔTの統計処理によってキャニスタ11の異常を検知する処理(ステップS15)を示すフローチャートである。当該処理では,時刻tについて算出された補正温度TC1,TC2から,時刻tにおける補正温度TC1,TC2の差ΔT(t)(=TC1(t)−TC2(t))が算出される。(ステップS41)。
続いて行われる処理は,補正温度TC1,TC2の代わりに温度差ΔTが使用される点以外,補正温度TC1,TC2の統計処理による状態判定方法で行われる処理と同一である。具体的には,測定時刻tの直近の一定期間Γにおける温度差ΔTの平均値μΔTC及び標準偏差σΔTCが算出される(ステップS42,S43)。
続いて,ステップS42,S43で算出された平均値μΔTC及び標準偏差σΔTCから,正常温度差領域RΔTCが決定される(ステップS44)。本実施の形態では,正常温度差領域RΔTCは,
ΔTC:μΔTC−n・σΔTC<ΔT<μΔTC+n・σΔTC, ・・・(6)
と決定される。nは,経験的には,2又は3であることが好適である。しかしながら,nは最適な任意の値を取り得る。
続いて,温度差判定モジュール34dは,温度差ΔT(t)が,正常温度差領域RΔTC(t)の下限を下回るか否かに応じて,キャニスタ11が正常か否かを判断する(ステップS45)。具体的には,温度差判定モジュール34dは,温度差ΔTが,今回を含めて過去m回連続して正常温度差領域RΔTCの下限を下回る場合,キャニスタ11の密封性に異常があると判断する;即ち,温度差判定モジュール34dは,温度差ΔTが「0以上m−1以下の任意のpについて,温度差ΔT(tk−p)が,正常温度差領域RΔTC(tk−p)の下限を下回る」という条件を満足する場合,キャニスタ11の密封性に異常があると判断する。一方で,温度差判定モジュール34dは,温度差ΔT(t)が,正常温度差領域RΔTC(t)の上限を今回を含めて過去m回連続して上回る場合,センサ異常あるいは計測系の異常があると判断する。
キャニスタ11に異常があると判断した場合,温度差判定モジュール34dは,異常が発生した旨を表示装置35に表示する(ステップS46)。キャニスタ11が正常であると判断した場合,温度差判定モジュール34dは,キャニスタ11が正常である旨を表示装置35に表示する(ステップS37)。なお,以上の温度差の統計処理による状態判定においては,補正前の表面温度T,Tから得られる温度差ΔT(=T−T)を用いることも可能である。また,温度差の統計処理による状態判定においては,単純な固定の閾値との比較によりキャニスタ11が正常か否かを判断することも可能である。
2−5) 長期的変化の検出による状態判定
図9は,補正温度TC1,TC2の長期的変化の検出によってキャニスタ11の異常を検知する処理(ステップS16)を示すフローチャートである。
当該処理では,所定の基準期間Γにおける,補正温度TC1,TC2の標準偏差σ TC1,σ TC2が算出される(ステップS51)。基準期間Γとしては,キャニスタ11の密封性が安定して保たれていると判明している期間が選ばれる。即ち,標準偏差σ TC1,σ TC2は,キャニスタ11が安定状態にあるときの補正温度TC1,TC2のバラツキである。基準期間Γは,固定であることが可能である。例えば,保存が開始された直後の所定の期間が基準期間Γと定められることが可能である。また,測定時刻tから相対的に決定されることも可能である。例えば,時刻tの2年前から1年前までの期間が,基準期間Γとして決定されることも可能である。基準期間Γが固定である場合には,測定時間の到来毎に,標準偏差σ TC1,σ TC2が算出される必要はない;標準偏差σ TC1,σ TC2の算出は,一度行われれば充分である。
続いて,補正温度TC1,TC2から,補正温度の現在値T C1,T C2と過去値T C1,T C2とが決定される(ステップS52)。現在値T Ciとは,最新の測定時刻tの補正温度TCi(t)から決定される値であり,過去値T Ciとは,最新の測定時刻tから所定の時間τSTDだけ前の測定時刻tk’(=t−τSTD)の補正温度TCi(tk’)から決定される値である。典型的には,現在の測定時刻tから1ヶ月,6ヶ月,1年前,2年前,3年前等の時刻が,時刻tk’として選択される。現在値T Ci,過去値T Ciは,それぞれ,補正温度TCi(t),TCi(tk’)そのものであることが可能である。
バラツキの影響をなくすためには,最新に得られるN’個の補正温度TCiの平均値が現在値T Ciとして使用され,時刻tk’−N−1以降時刻tk’までに得られるN’個の補正温度TCiの平均値が過去値T Ciとして使用されることが好適である;即ち,現在値T Ci,過去値T Ciは,それぞれ,下記式(7a),(7b):
Figure 0004508700
によって算出されることが好適である。
続いて,補正温度TC1の現在値T C1と過去値T C1との差ΔTcp C1(=T C1−T C1)と,補正温度TC2の現在値T C2と過去値T C2との差ΔTcp C2(=T C2−T C2)が算出される(ステップS53)。
差ΔTcp Ciは,時刻tk’から時刻tまでの補正温度TCiの低下分であり,従って,キャニスタ11に微小なリークがあることを検出するために好適なパラメータである。時間差τSTD(=t−tk’)を適切に設定すれば,例えば,τSTDを1ヶ月乃至6ヶ月程度に設定すれば,キャニスタ11の異常がない場合には,差ΔTcp Ciは0に近い値になることが期待される;1ヶ月乃至6ヶ月程度では,キャニスタ11の本質的な温度の低下は,ほぼ0であるからである。逆に,図10に示されているように,差ΔTcp Ciが増大するという現象は,時刻tk’から時刻tまでに補正温度TCiが低下していることを示しており,従って,キャニスタ11に時間差τSTDのオーダーで圧力が減少するような微小なリークがあることを意味している。
長期的変化判定モジュール34eは,ステップS53で算出される差ΔTcp C1,差ΔTcp C2の変化に基づいて,キャニスタ11の異常の有無を判定する(ステップS54)。具体的には,長期的変化判定モジュール34eは,所定の基準期間Γにおける,補正温度TC1,TC2の標準偏差σ TC1,σ TC2から,正常温度差領域Rcp C1,Rcp C2を決定する。典型的には,長期的変化判定モジュール34eは,正常温度差領域Rcp C1,Rcp C2
cp C1:−n・σ TC1<ΔTcp C1<n・σ TC1
cp C2:−n・σ TC2<ΔTcp C2<n・σ TC2
と決定する。nは,経験的には,2又は3であることが好適である。しかしながら,nは最適な任意の値を取り得る。そして,長期的変化判定モジュール34eは,差ΔTcp C1,差ΔTcp C2の少なくとも一方が,今回を含めて過去m回連続して正常温度差領域Rcp C1,Rcp C2の上限を上回る場合,キャニスタ11の密封性に異常があると判断する;即ち,長期的変化判定モジュール34eは,差ΔTcp C1,差ΔTcp C2の少なくとも一方が,「0以上m−1以下の任意のpについて,差ΔTcp Ciが,正常温度差領域Rcp Ciの上限を上回る」という条件を満足する場合,キャニスタ11の密封性に異常があると判断する。その代わりに,温度測定値判定モジュール34bは,差ΔTcp C1,差ΔTcp C2の両方が,今回を含めて過去m回連続して正常温度差領域Rcp C1,Rcp C2の上限を上回る場合,キャニスタ11の密封性に異常があると判断してもよい。キャニスタ11に異常があると判断した場合,長期的変化判定モジュール34eは,異常が発生した旨を表示装置35に表示する(ステップS55)。キャニスタが正常であると判断した場合,長期的変化判定モジュール34eは,キャニスタが正常である旨を表示装置35に表示する(ステップS56)。
以上に説明された,現在値T Ciと過去値T Ciとの差ΔTcp Ciに基づくキャニスタ11の密封性の異常の検知の有利性は,時間τSTD程度の時間をかけてキャニスタ11の圧力が低下しつづけるような微小なリークを検出できることにある。この利点は,上述された3つの方法では原理的に達成することが困難であり,上記の3つの方法と,長期的変化の検出による状態判定とを併用することは,キャニスタ11の密封性の異常の検知を,一層に確実にするため好適である。
第2 実施の第2形態
本発明の実施の第2形態では,図11に示されているように,金属キャスク3の密封性の異常の有無が,状態検出装置2’によって検出される。金属キャスク3とコンクリートキャスク1との大きな違いは,金属キャスク3は,その内部の圧力を測定可能であることである;コンクリートキャスク1のキャニスタ11は,その構造上の制約から内部の圧力を測定することができないことに留意されたい。圧力が測定可能であることは,金属キャスク3に密封性の異常を検出するために好適である。なぜなら,金属キャスク3の漏れの発生は,そのまま圧力の変化に直接に結びつくからである。このため,本実施の形態では,金属キャスク3の内部の圧力が,その密封性の異常の発生の検出に利用される。
しかしながら,金属キャスク3の圧力もまた,金属キャスク3の周囲の気温Tの影響を受ける。このため,本実施の形態では,金属キャスク3の圧力から気温Tの影響を取り除いた仮想的な圧力である補正圧力が算出され,その補正圧力に基づいて,金属キャスク3の密封性の異常の有無が判断される。
以下では,状態の検出の対象である金属キャスク3の構成が説明された後,本実施の形態の状態検出装置2’の構成と動作が詳細に説明される。
1.金属キャスク3の構成
金属キャスク3は,概略的には,胴部61と,一次蓋62a,二次蓋62bとを備えている。胴部61と,一次蓋62a,二次蓋62bは,いずれも,ステンレス又は炭素鋼で形成されている。胴部61の上部開口は,一次蓋62aによって密封され,更に,二次蓋62bが一次蓋62aを覆うように固定される。胴部61と一次蓋62aとにより,キャビティ63が形成され,そのキャビティ63に使用済燃料集合体64を収容するバスケット65が収められる。一次蓋62aと二次蓋62bとの間には,圧力を緩衝させる空間である圧力障壁66が形成されている。二次蓋62bは,それを貫通する検査孔67が設けられている。検査孔67は,後述されるように,圧力障壁66の圧力を計測する圧力センサを挿入するための開口である。キャビティ63と圧力障壁66にはヘリウムガスが充填されている。ヘリウムガスは,その対流により,使用済燃料集合体64の発熱をキャビティ63の全体に拡散する役割を果たす。
2.状態検出装置2’の構成
本実施の形態では,状態検出装置2’は,圧力センサ71と,気温センサ72と,演算装置73と,表示装置74とを備えている。
圧力センサ71は,圧力障壁66の圧力Pを逐次に測定するために使用される。圧力センサ71は,二次蓋62bに設けられた検査孔67に挿入され,その先端は,圧力障壁66に到達するように二次蓋62bに固定される。圧力センサ71と二次蓋66との間はシール構造によって封じられ,検査孔67は完全に密封される。時刻tにおける圧力障壁66の圧力Pは,P(t)と表記される。
圧力障壁66の内部の圧力はどの位置でも一定であるから,(温度センサ31,32とは異なり)圧力センサ71が異なる高さの位置に設けられる必要はない。
気温センサ72は,金属キャスク1の周囲の気温Tを測定する。時刻tにおける気温Tは,T(t)と表記される。
演算装置73は,圧力センサ71によって逐次に測定された圧力Pと,気温センサ33によって逐次に測定された気温Tとを用いて,金属キャスク3の異常の有無を検知するコンピュータである。演算装置73には,補正圧力算出モジュール73aと,圧力測定値判定モジュール73bと,圧力変化率判定モジュール73cと,長期的変化判定モジュール73eとを含むソフトウェアプログラムがインストールされている。補正圧力算出モジュール73aは,圧力Pから補正圧力Pを算出するプログラムである。圧力測定値判定モジュール73bと,圧力変化率判定モジュール73cと,長期的変化判定モジュール73eとは,補正圧力算出モジュール73aによって算出された補正圧力Pを用いてキャニスタ11の異常を検知するプログラムである。補正圧力Pの導入は,キャニスタ11の密封性の状態の検知の確実性を向上するために重要な役割をはたしており,本実施の形態の状態検出装置2’の一つの特徴である。
補正圧力算出モジュール73a,圧力測定値判定モジュール73b,圧力変化率判定モジュール73c,及び長期的変化判定モジュール73eは,それぞれ,補正温度算出モジュール34a,温度測定値判定モジュール34b,温度変化率判定モジュール34cと,長期的変化判定モジュール34eとに対応する演算を行う;即ち,圧力測定値判定モジュール73b,圧力変化率判定モジュール73c,及び長期的変化判定モジュール73eは,表面温度Tの代わりに圧力Pを使用し,補正温度TCiの代わりに補正圧力Pを使用する点以外,温度測定値判定モジュール34b,温度変化率判定モジュール34cと,長期的変化判定モジュール34eと同様の演算を行う。このような演算が可能であることは,圧力Pと温度Tとが,近似的に,
PV=nRT,
の関係にあることを考えれば,当業者には自明的である。
ただし,本実施の形態では,温度差判定モジュール34dに対応するモジュールは設けられない。これは,表面温度とは異なり,金属キャスク3の圧力は,高さの異なる位置でも同一であるからである。
より具体的には,圧力測定値判定モジュール73bは,補正圧力Pを統計的に処理することによって金属キャスク3の異常を検知する。金属キャスク3の圧力障壁66の圧力Pは,金属キャスク3の密封性に異常が発生すると変化するから,補正圧力Pも圧力Pの変化に伴って変化する。圧力測定値判定モジュール73bは,この補正圧力Pの変化を捉えることにより,金属キャスク3の密封性の異常を検知する。
圧力変化率判定モジュール73cは,補正圧力Pの時間変化率dPを算出し,この補正圧力変化率dPを統計的に処理することによって金属キャスク3の異常を検知する。補正圧力変化率dPは,金属キャスク3の密封性に異常が発生すると変化する。この補正圧力変化率dPの変化を捉えることにより,圧力変化率判定モジュール73cは,金属キャスク3の密封性の異常を検知する。
長期的変化判定モジュール73eは,補正圧力Pの長期的変化を検出して金属キャスク3の異常を検知する。具体的には,長期的変化判定モジュール73eは,補正圧力Pの,過去のある時間の値(過去値)と現在値とを比較することにより,金属キャスク3の異常を検知する。この長期的変化判定モジュール73eは,金属キャスク3の微小なリークを検出するためのものである。微小なリークは,金属キャスク3の内部の圧力を長期間徐々に減少させ,これに伴い,金属キャスク3の圧力P及びそれに対応する補正圧力Pも徐々に減少させる。この補正圧力Pの緩やかな低下を捕らえることにより,長期的変化判定モジュール73eは,金属キャスク3の微小なリークを検知する。
表示装置74は,演算装置73による検知結果を表示するために使用される。演算装置73によって異常が検知されると,その旨が表示装置74に表示される。
3.金属キャスクの状態検出方法
2−1)当該状態判定方法の概略
図12は,本実施の形態において,補正圧力Pを用いて金属キャスク3の状態を判定する方法を示すフローチャートである。
所定の測定時刻になると,圧力センサ71は,金属キャスク3の圧力障壁66の圧力Pとを測定し,気温センサ72は,気温Tを測定する(ステップS61)。以下では,最新の測定時刻tにおいて測定された圧力Pは,P(t)と記載される。
続いて,補正圧力算出モジュール73aにより,圧力P(t)から,補正圧力P(t)が算出される(ステップS62)。補正圧力Pの算出は,表面温度Tiの代わりに圧力障壁66の圧力Pを使用する点以外,補正温度TCiの算出と同様にして行われる。具体的には,気温Tの変化による圧力Pの変化に対応する成分が,時定数τを有する一つの一次遅れ要素,又は,それぞれ時定数τ,τ,・・・,τを有するm個の一次遅れ要素の和であるとして近似され,この近似に基づいて,補正圧力Pが算出される。
即ち,時刻tにおける補正圧力P(t)は,下記式(8):
(t)=P(t)−ΣK・Pτj(t), ・・・(8)
によって算出される。jは,1以上m以下の整数である。Pτj(t)は,気温Tの圧力Pへの応答を表す項であり,時定数τを有する一次遅れ要素によって記述される。Kは,時定数τを有する一次遅れ要素に対応して定められる補正係数である。Pτj(t)は,下記式(2):
τj(t)=L−1[Xτj(s)・T(s)]|t=tk, ・・・(9)
で求められる。ただし,T(s)は,気温T(t)のラプラス変換であり,X(s)は,気温Tに対する圧力Pの応答のうち時定数がτである一次遅れの成分の伝達関数である。L−1は,逆ラプラス変換を示す記号である。図2と同様に,気温Tに対する圧力Pの応答の伝達関数Xτ1(s),Xτ2(s),・・・の時定数τ,τ,・・・は,好適には,相関法によって決定される。気温Tに対する圧力Pの応答を,(一つではなく)m個の一次遅れ要素の和であるとして近似することは,気温Tの圧力P,Tへの影響をより適正に評価する上で好適である。
続いて,ステップS62で算出された補正圧力P(t)を用いて,金属キャスク3の状態が判定される(ステップS63−S65)。金属キャスク3の状態の判定は,上述された3つのモジュール:即ち,圧力測定値判定モジュール73b,圧力変化率判定モジュール73c,及び長期的変化判定モジュール73eによって同時的に行われる。上述のとおり,圧力測定値判定モジュール73bは,補正圧力Pの統計処理によって金属キャスク3の異常を検知する(ステップS63)。圧力変化率判定モジュール73cは,補正圧力Pの時間変化率である補正圧力変化率dPの統計処理によって金属キャスク3の異常を検知する(ステップS64)。長期的変化判定モジュール73eは,補正圧力Pの長期的変化を検出して金属キャスク3の異常を検知する(ステップS65)。
ステップS61−S65の処理が,測定時刻が到来する毎に行われ,金属キャスク3の異常の検出が逐次に行われる。
続いて,ステップS63−S65で実行される処理が,それぞれに詳細に説明される。
2−2) 補正圧力Pの統計処理による状態判定
図13は,補正圧力Pの統計処理によって金属キャスク3の異常を検知する処理(ステップS63)を示すフローチャートである。補正圧力Pの統計処理による金属キャスク3の異常の検知は,補正温度TCiの代わりに補正圧力Pが使用される点以外,補正温度TCi統計処理によるキャニスタ11の異常の検知と同様の処理で行われる。
具体的には,測定時刻tの直近の一定期間Γにおける補正圧力Pの平均値μPC及び標準偏差σPCが算出される(ステップS71,S72)。続いて,ステップS71,S72で算出された平均値μ及び標準偏差σPCから,正常圧力変化率領域RPCが決定される(ステップS73)。本実施の形態では,補正圧力Pの正常圧力領域RPCは,
PC:μPC−n・σPC<P<μPC+n・σPC, ・・・(10)
と決定される。nは,経験的には,2又は3であることが好適である。しかしながら,nは最適な任意の値を取り得る。
続いて,圧力測定値判定モジュール73bは,補正圧力P(t)が,正常圧力領域RPC1(t)の下限を下回るか否かに応じて,金属キャスク3が正常か否かを判断する(ステップS74)。具体的には,圧力測定値判定モジュール73bは,補正圧力Pが,今回を含めて過去m回連続して正常圧力領域RPCの下限を下回る場合,金属キャスク3の密封性に異常があると判断する。金属キャスク3に異常があると判断した場合,圧力測定値判定モジュール73bは,異常が発生した旨を表示装置74に表示する(ステップS75)。金属キャスク3が正常であると判断した場合,圧力測定値判定モジュール73bは,金属キャスク3が正常である旨を表示装置74に表示する(ステップS76)。
以上の処理により,補正圧力Pにおける異常な変化が検出され,異常な変化が発見された場合には,金属キャスク3の密封性に異常が発生したと検知される。
2−3) 補正圧力変化率dPの統計処理による状態判定
図14は,補正圧力変化率dPの統計処理によって金属キャスク3の異常を検知する処理(ステップS14)を示すフローチャートである。補正圧力変化率Pの統計処理による金属キャスク3の異常の検知は,補正温度TCiの代わりに補正圧力Pが使用される点以外,補正温度変化率dTCiの統計処理によるキャニスタ11の異常の検知と同様の処理で行われる。
具体的には,当該方法では,時刻tについて算出された補正圧力Pから,時刻tにおける補正圧力の変化率dPが算出される(ステップS81)。続いて,測定時刻tの直近の一定期間Γにおける補正圧力変化率dPの平均値μdPC及び標準偏差σdPCが算出される(ステップS82,S83)。続いて,ステップS82,S83で算出された平均値μdPC及び標準偏差σdPCから,正常圧力変化率領域RdPCが決定される(ステップS84)。本実施の形態では,補正圧力変化率dPの正常圧力変化率領域RdPCは,
dPC:μdPC−n・σdPC<P<μdPC+n・σdPC, ・・・(11)
と決定される。nは,経験的には,2又は3であることが好適である。しかしながら,nは最適な任意の値を取り得る。
続いて,圧力変化率判定モジュール73cは,補正圧力変化率dP(t)が,正常圧力領域RdPC(t)の下限を下回るか否かに応じて,金属キャスク3が正常か否かを判断する(ステップS85)。具体的には,圧力変化率判定モジュール73cは,補正圧力変化率dPが,今回を含めて過去m回連続して正常圧力領域RdPCの下限を下回る場合,金属キャスク3の密封性に異常があると判断する。金属キャスク3に異常があると判断した場合,圧力変化率判定モジュール73cは,異常が発生した旨を表示装置74に表示する(ステップS86)。金属キャスク3が正常であると判断した場合,圧力変化率判定モジュール73cは,金属キャスク3が正常である旨を表示装置74に表示する(ステップS87)。
以上の処理により,補正圧力変化率dPにおける異常な変化が検出され,異常な変化が発見された場合には,金属キャスク3の密封性に異常が発生したと検知される。
2−5) 長期的変化の検出による状態判定
図15は,補正圧力Pの長期的変化の検出によって金属キャスク3の異常を検知する処理(ステップS65)を示すフローチャートである。ステップS65における長期的変化の検出による金属キャスク3の状態判定の処理は,補正温度TCiの代わりに補正圧力Pが使用される点以外,実施の第1形態のステップS16における長期的変化の検出によるキャニスタ11の状態判定と同様である。
具体的には,当該処理では,所定の基準期間Γにおける,補正圧力Pの標準偏差σ PCが算出される(ステップS91)。基準期間Γとしては,金属キャスク3の密封性が安定して保たれていると判明している期間,例えば,保存が開始された直後の所定の期間が選ばれる。続いて,補正圧力Pから,補正圧力の現在値P と過去値P とが決定される(ステップS92)。現在値P とは,最新の測定時刻tの補正圧力P(t)から決定される値であり,過去値P とは,最新の測定時刻tから所定の時間τSTDだけ前の測定時刻tk’(=t−τSTD)の補正圧力P(tk’)から決定される値である。現在値P ,過去値P は,それぞれ,補正圧力P(t),P(tk’)そのものであることが可能である。好適には,最新に得られるN’個の補正圧力PCiの平均値が現在値P として使用され,時刻tk’−N−1以降時刻tk’までに得られるN’個の補正圧力Pの平均値が過去値P として使用される。続いて,補正圧力Pの現在値P C1と過去値P との差ΔPcp (=P −P )が算出される(ステップS93)。長期的変化判定モジュール73eは,ステップS93で算出される差ΔPcp の変化に基づいて,金属キャスク3の異常の有無を判定する(ステップS94)。具体的には,長期的変化判定モジュール73eは,所定の基準期間Γにおける,補正圧力Pの標準偏差σ PCから,正常圧力差領域Rcp を決定する。典型的には,長期的変化判定モジュール73eは,正常圧力差領域Rcp
cp :ΔPcp <n・σ PC, ・・・(12)
と決定する。nは,経験的には,2又は3であることが好適である。しかしながら,nは最適な任意の値を取り得る。そして,長期的変化判定モジュール73eは,差ΔPcp が,今回を含めて過去m回連続して正常圧力差領域Rcp から外れている場合,金属キャスク3の密封性に異常があると判断する。金属キャスク3に異常があると判断した場合,長期的変化判定モジュール73eは,異常が発生した旨を表示装置74に表示する(ステップS95)。金属キャスク3が正常であると判断した場合,長期的変化判定モジュール73eは,金属キャスク3が正常である旨を表示装置74に表示する(ステップS96)。
以上の処理により,補正圧力Pにおける長期的な変化が検出され,異常な変化が発見された場合には,金属キャスク3の密封性に異常が発生したと検知される。
第3 実施の第3形態
本発明の実施の第3形態では,図16に示されるボールト貯蔵におけるキャニスタ11の劣化の発生の有無が,状態検出装置2”によって検出される。ボールト貯蔵と,キャスク貯蔵との最も重要な相違は,キャニスタ11の表面温度が,隣接するキャニスタの温度に影響を受けやすい点にある。このため,本実施の形態では,キャニスタ11の表面温度が,気温のみならず,隣接するキャニスタの表面温度に基づいて補正される。以下では,状態の検出の対象であるキャニスタ11の構成が説明された後,本実施の形態の状態検出装置2”の構成と動作が詳細に説明される。
1.キャニスタの構成
実施の第3形態で使用されるキャニスタ11の構成及び性質は,実施の第1形態のキャニスタ11と同様である。キャニスタ11を収容する設備内部の空気は直接キャニスタ11に流通可能であり,これにより,キャニスタ11が冷却される。
2.状態検出装置2”の構成
実施の第3形態の状態検出装置2”は,概略的には,実施の第1形態の状態検出装置2と同様である。状態検出装置2”は,温度センサ31,32と,気温センサ33と,演算装置34と,表示装置35とを備えている。温度センサ31,32は,それぞれ,キャニスタ11の上部の表面温度T,中央部の表面温度Tを測定する。気温センサ33は,キャニスタ11の周囲の気温Tを測定する。演算装置34は,表面温度T,T及び気温Tに基づいて,キャニスタ11の異常を検出する。表示装置35は,演算装置34による検知結果を表示するために使用される。演算装置34によって異常が検知されると,その旨が表示装置35に表示される。
本実施の形態では,補正温度算出モジュール34aは,気温Tのみならず,監視の対象であるキャニスタ11の周囲にあるキャニスタ(以下,「周囲キャニスタ」という。)の表面温度Tを用いて,補正温度TC1,TC2を算出する。これにより,周囲キャニスタの表面温度Tがキャニスタ11の表面温度T,Tに及ぼす影響を排除して,キャニスタ11の異常を検知することができる。かかる動作の違いを明確にするために,以下では,本実施の形態の補正温度算出モジュール34aは,補正温度算出モジュール34a’と記述される。
残りの温度測定値判定モジュール34b,温度変化率判定モジュール34c,温度差判定モジュール34d,長期的変化判定モジュール34eは実施の第1形態と同一の演算を行う。
3.キャニスタの状態検出方法
以下では,本実施の形態における,キャニスタ11の状態判定方法が詳細に説明される。
(1)補正温度の算出
上述されているように,本実施の形態では,表面温度T,Tから,気温T及び周囲キャスクの表面温度Taの変化による表面温度T,Tの変化に対応する成分を減じて補正温度TC1,TC2を算出し,この補正温度TC1,TC2を用いてキャニスタ11の状態が判定される;表面温度T,Tをそのままキャニスタの状態の判定に用いるのではない。このような状態判定方法の利点は,キャニスタ11の表面温度T,Tから,キャニスタ11の密封性の劣化に起因する成分を分離できることである。気温Tと周囲キャニスタの表面温度Taとは,キャニスタ11の表面温度T,Tに大きな影響を及ぼすから,表面温度T,Tの変化は,純粋に,キャニスタ11の密封性の劣化によって生じるものではない。この気温T,周囲キャニスタの表面温度Taの影響を除去することにより,本実施の形態では,キャニスタ11の密封性の検知の確実性が向上されている。
具体的には,本実施の形態では,補正温度TC1,TC2の算出方法として気温Tの変化に加えて周囲キャニスタの表面温度Taの変化による表面温度T,Tの変化に対応する成分が,時定数τi1を有する一つの一次遅れ要素,又は,それぞれ時定数τi1,τi2,・・・,τimを有するm個の一次遅れ要素の和であるとして近似される。
即ち,時刻tにおける補正温度TCi(t)は,下記式(13):
Ci(t)=T(t)−ΣKij・Tτij(t), ・・・(13)
によって算出される。iは,1,2の任意であり,jは,1以上m以下の整数である。Tτij(t)は,時定数τijを有する一次遅れ要素によって表現される気温T及び周囲キャニスタの表面温度Taの一次遅れ波形であり,Kijは,時定数τijを有する一次遅れ要素に対応して定められる補正係数である。Tτij(t)は,下記式(14):
τij(t)=L−1[Xτij(s)・T(s)]|t=tk, ・・・(14)
で求められる。ただし,T(s)は,気温T(t)あるいは周囲キャスクの表面温度T(t)のラプラス変換である。Xτij(s)は,気温T,周囲キャスクの表面温度T(t)に対する表面温度Tの応答のうち時定数がτijである一次遅れの成分の伝達関数である。L−1は,逆ラプラス変換を示す記号である。
気温T,周囲キャスクの表面温度Ta(t)に対する表面温度T,Tの応答を,(一つではなく)m個の一次遅れ要素の和であるとして近似することは,気温Tの表面温度T,Tへの影響をより適正に評価する上で好適である。コンクリートキャスク1は,異なる熱容量を有する複数の部材,即ち,温度変化の時定数が異なる複数の部材で構成される。従って,表面温度T,Tの応答をm個の一次遅れ要素の和であるとして近似することは,気温Tの表面温度T,Tへの応答を,より適正に近似することを可能にする。
実施の第1形態と同様に,気温T,周囲キャスクの表面温度T(t)に対する表面温度Tの応答の伝達関数Xτi1(s),Xτi2(s),・・・の時定数τi1,τi2,・・・は,好適には,相関法によって決定される。具体的には,実施の第1形態で説明された手法と同様の手法を用いて時定数τijが算出され,時定数τi1,τi2,・・・を用いて一次遅れ波形Tτi1(t),Tτi2(t),・・・の計算,即ち,時刻tの補正温度TCi(t)の算出が行われる。
(2)補正温度を用いた状態判定方法
図17は,本実施の形態において,補正温度TC1,TC2を用いてキャニスタ11の状態を判定する方法を示すフローチャートである。
所定の測定時刻になると,温度センサ31,32は,キャニスタ11の上部の表面温度Tと,キャニスタ11の中央部の表面温度Tとを測定し,温度センサ33は,気温Tを測定する(ステップS101)。以下では,最新の測定時刻は,時刻tと記述され,その時刻tにおいて測定された表面温度T,Tは,それぞれ,T(t),T(t)と記載される。
続いて,補正温度算出モジュール34a’により,表面温度T(t),T(t)から,上記式(13)を用いて,補正温度TC1(t),TC2(t)が算出される(ステップS102)。
続いて,ステップS102で算出された補正温度TC1(t),TC2(t)を用いて,キャニスタ11の状態が判定される(ステップS103−S106)。キャニスタ11の状態の判定は,上述された4つのモジュール:即ち,温度測定値判定モジュール34b,温度変化率判定モジュール34c,温度差判定モジュール34d,長期的変化判定モジュール34eによって同時的に行われる。上述のとおり,本実施の形態において温度測定値判定モジュール34b,温度変化率判定モジュール34c,温度差判定モジュール34d,長期的変化判定モジュール34eが行う演算は,実施の第1形態のそれと同一である,その詳細な説明は行われない。
図1は,本発明の実施の第1形態における状態検出装置の構成を示すブロック図である。 図2は,気温Tから表面温度TCiへの応答の伝達関数を算出する処理を示すフローチャートである。 図3は,本実施の形態におけるキャニスタの密封性の異常を検出する処理を示すフローチャートである。 図4は,本実施の形態において,補正温度の統計処理によってキャニスタの密封性の異常を検出する処理を示すフローチャートである。 図5は,補正温度の統計処理によるキャニスタの密封性の異常の検出の具体例を示すグラフである。 図6は,本実施の形態において,補正温度の変化率の統計処理によってキャニスタの密封性の異常を検出する処理を示すフローチャートである。 図7は,補正温度の変化率の統計処理によるキャニスタの密封性の異常の具体例を示すグラフである。 図8は,高さが異なる2点について求められた補正温度の差の統計処理によってキャニスタの密封性の異常を検出する処理を示すフローチャートである。 図9は,長期的な温度変化を検知することによってキャニスタの密封性の異常を検出する処理を示すフローチャートである。 図10は,長期的な温度変化を検知することによるキャニスタの密封性の異常の具体例を示すグラフである。 図11は,本発明の実施の第2形態における状態検出装置の構成を示すブロック図である。 図12は,本実施の形態における金属キャスクの密封性の異常を検出する処理を示すフローチャートである。 図13は,補正圧力の変化率の統計処理によって金属キャスクの密封性の異常を検出する処理を示すフローチャートである。 図14は,補正圧力の変化率の統計処理によって金属キャスクの密封性の異常を検出する処理を示すフローチャートである。 図15は,長期的な圧力変化を検知することによって金属キャスクの密封性の異常を検出する処理を示すフローチャートである。 図16は,本発明の実施の第3形態における状態検出装置の構成を示すブロック図である。 図17は,本実施の形態におけるキャニスタの密封性の異常を検出する処理を示すフローチャートである。
符号の説明
1:コンクリートキャスク
2,2’,2”:状態検出装置
3:金属キャスク
11:キャニスタ
12:胴部
13a:一次蓋
13b:二次蓋
14:キャビティ
15:使用済燃料集合体
16:バスケット
21:コンクリート容器
22:支持体
23:側壁
24:蓋体
25:空気流通孔
26,27:検査孔
31,32:温度センサ
33:気温センサ
34:演算装置
34a,34a’:補正温度算出モジュール
34b:温度測定値判定モジュール
34c:温度変化率判定モジュール
34d:温度差判定モジュール
34e:長期的変化判定モジュール
35:表示装置
61:胴部
62a:一次蓋
62b:二次蓋
63:キャビティ
64:使用済燃料集合体
65:バスケット
66:圧力障壁
67:検査孔
71:圧力センサ
72:気温センサ
73:演算装置
73a:補正圧力算出モジュール
73b:圧力測定値判定モジュール
73c:圧力変化率判定モジュール
73e:長期的変化判定モジュール
74:表示装置

Claims (16)

  1. 放射性物質を収容する放射性物質容器の表面温度又は内部圧力のいずれかである状態量を取得する状態量取得手段と,
    気温を測定する気温測定手段と,
    時刻tにおける前記状態量を前記気温に基づいて補正することによって前記時刻tにおける補正状態量を算出する補正状態量算出手段と,
    前記補正状態量に基づいて前記放射性物質容器の異常を検出する異常検出手段
    とを備えた
    放射性物質容器用状態検出装置。
  2. 請求項1に記載の放射性物質容器用状態検出装置であって、
    前記補正状態量算出手段は,前記状態量に一致する状態量対応項と,前記気温の前記状態量への応答を表す項である応答波形対応項とを含む演算式を用いて前記補正状態量を算出する
    放射性物質容器用状態検出装置。
  3. 請求項2に記載の放射性物質容器用状態検出装置において,
    前記応答波形対応項は,前記気温の前記状態量に対する応答を一次遅れ要素で表す一次遅れ波形対応項を含む
    放射性物質容器用状態検出装置。
  4. 請求項2に記載の放射性物質容器用状態検出装置において,
    前記応答波形対応項は,互いに異なる複数の伝達関数に対応する複数の項を含む
    放射性物質容器用状態検出装置。
  5. 請求項4に記載の放射性物質容器用状態検出装置において,
    前記複数の伝達関数は,互いに異なる時定数を有する一次遅れ要素の伝達関数である
    放射性物質容器用状態検出装置。
  6. 請求項1に記載の放射性物質容器用状態検出装置であって,
    前記状態量は,前記放射性物質容器の表面温度である
    放射性物質容器用状態検出装置。
  7. 請求項1に記載の放射性物質容器用状態検出装置であって,
    前記状態量は,前記放射性物質容器の内部力である
    放射性物質容器用状態検出装置。
  8. 請求項2に記載の放射性物質容器用状態検出装置であって,
    前記異常検出手段は,
    前記補正状態量の一定期間における平均値μ及び標準偏差σから、下限がμ−n・σ、上限がμ+n・σ(nは任意の所定値)として決定された正常状態領域を設定する正常状態設定手段と,
    前記補正状態量が前記正常状態領域の中にあるか否かに基づいて,前記放射性物質容器の密封性に異常があるか否かを判定する異常判定手段
    とを含む
    放射性物質容器用状態検出装置。
  9. 請求項2に記載の放射性物質容器用状態検出装置であって,
    前記異常検出手段は,
    前記補正状態量の時間変化率の一定期間における平均値μ及び標準偏差σから、下限がμ−n・σ(nは任意の所定値)、上限がμ+n・σとして決定された正常状態領域を設定する正常状態設定手段と,
    前記時間変化率が前記正常状態領域の中にあるか否かに基づいて,前記放射性物質容器の密封性に異常があるか否かを判定する異常判定手段
    とを含む
    放射性物質容器用状態検出装置。
  10. 請求項2に記載の放射性物質容器用状態検出装置であって,
    前記状態量取得手段は,
    前記放射性物質容器の第1位置における第1表面温度を取得する第1温度測定器と,
    前記放射性物質容器の,前記第1位置と異なる高さの第2位置における第2表面温度を取得する第2温度測定器と,
    とを含み,
    前記補正状態量算出手段は,前記第1表面温度に一致する第1表面温度対応項と,前記気温の前記第1表面温度への応答を表す項である第1応答波形対応項とを含む演算式によって第1補正温度を算出し,且つ,前記第2表面温度に一致する第2表面温度対応項と,前記気温の前記第2表面温度への応答を表す項である第2応答波形対応項とを含む演算式によって第2補正温度を算出し,
    前記異常検出手段は,前記第1補正温度と前記第2補正温度の温度差の一定期間における平均値μ及び標準偏差σから下限がμ−n・σ(nは任意の所定値)、上限がμ+n・σとして決定された正常状態領域を設定する正常状態設定手段と,
    前記温度差が前記正常状態領域の中にあるか否かに基づいて,前記放射性物質容器の密封性に異常があるか否かを判定する異常判定手段
    とを含む
    放射性物質容器用状態検出装置。
  11. 請求項2に記載の放射性物質容器用状態検出装置であって,
    前記状態量が、前記放射性物質容器の前記表面温度であり、
    前記時刻t における前記補正状態量は、前記時刻t における前記表面温度を前記気温に基づいて補正することによって算出され、
    前記異常検出手段は,
    前記補正状態量の基準期間における標準偏差σから、下限が−n・σ(nは任意の所定値)、上限がn・σ(nは任意の所定値)として決定された正常状態領域を設定する正常状態設定手段と,
    現在の前記補正状態量に対応する現在値から過去のある時刻における前記補正状態量に対応する過去値を減じた差が前記正常状態領域の中にあるか否かに基づいて,前記放射性物質容器の密封性に異常があるか否かを判定する異常判定手段
    とを含む
    放射性物質容器用状態検出装置。
  12. 請求項2に記載の放射性物質容器用状態検出装置であって,
    前記状態量が、前記放射性物質容器の前記内部圧力であり、
    前記時刻t における前記補正状態量は、前記時刻t における前記内部圧力を前記気温に基づいて補正することによって算出され、
    前記異常検出手段は,
    前記補正状態量の基準期間における標準偏差σから、上限がn・σ(nは任意の所定値)として決定された正常状態領域を設定する正常状態設定手段と,
    現在の前記補正状態量に対応する現在値から過去のある時刻における前記補正状態量に対応する過去値を減じたが前記正常状態領域の中にあるか否かに基づいて,前記放射性物質容器の密封性に異常があるか否かを判定する異常判定手段
    とを含む
    放射性物質容器用状態検出装置。
  13. 放射性物質を収容する放射性物質容器の表面温度又は内部圧力のいずれかである状態量を取得するステップと,
    気温を測定するステップと,
    時刻tにおける前記状態量を前記気温に基づいて補正することによって前記時刻tにおける補正状態量を算出するステップと,
    前記補正状態量に基づいて前記放射性物質容器の異常を検出するステップ
    とを備えた
    放射性物質容器の異常検出方法。
  14. 請求項13に記載の放射性物質容器の異常検出方法であって,
    前記補正状態量は,前記状態量に一致する項と,前記気温の前記状態量への応答を表す項である応答波形対応項とを含む演算式を用いて算出される
    放射性物質容器の異常検出方法。
  15. 放射性物質を収容する放射性物質容器の表面温度又は内部圧力のいずれかである状態量を取得するステップと,
    気温を取得するステップと,
    時刻tにおける前記状態量を前記気温に基づいて補正することによって前記時刻tにおける補正状態量を算出するステップと,
    前記補正状態量に基づいて前記放射性物質容器の異常を検出するステップ
    とをコンピュータに実行させる
    放射性物質容器用異常検出プログラム。
  16. 請求項15に記載の放射性物質容器用異常検出プログラムであって,
    前記補正状態量は,前記状態量に一致する項と,前記気温の前記状態量への応答を表す項である応答波形対応項とを含む演算式を用いて算出される
    放射性物質容器用異常検出プログラム。
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