JP4505684B2 - 化粧板先付けプレキャストコンクリート板の製造方法 - Google Patents

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本発明は、表面にタイル等の化粧板が一体に取り付けられたプレキャストコンクリート板の製造方法に係わり、特に、前記化粧板を、前記プレキャストコンクリート板の成形時に一体に取り付けるようにした化粧板先付けプレキャストコンクリート板の製造方法に関するものである。
一般に、たとえば建築物の外壁等に用いられるプレキャストコンクリート壁等のプレキャストコンクリート板(以下、PC板と略称する)にあっては、意匠的な効果や防水性を高めること等を目的として、表面に化粧板を設けることが行なわれている。
そして、このPC板の製造方法として、PC板の成形に用いられる型枠内に多数の化粧板を敷き詰めた後に、これらの化粧板を覆うようにして前記型枠内にコンクリートを打設し硬化させることにより、打設コンクリートと前記化粧板とを一体化する、いわゆる、化粧板先付け方法と称される方法が実施されている。
そして、前記化粧板は、一般的には長方形状の板材によって形成され、隣り合う化粧板の端面間に所定の間隔(すなわち目地)を設けた状態で前記PC板に取り付けることが行なわれており、このようなPC板においては、前記目地が碁盤目状に設けられる。
ところで、このようなPC板の製造方法であると、型枠内へ打設されたコンクリートのノロが、前記目地部分から前記化粧板の表面側に染み出して、これらの化粧板の表面を汚してしまうことから、前記PC板の脱型後にその表面を洗浄して、前記化粧板表面に付着したノロを除去する必要がある。
一方、このような不具合を解消するために、つぎのような技術が提案されている。
すなわち、前記化粧板間に形成される目地の裏面側に、この目地を覆うようにして帯状シーリング部材を配設するとともに、この帯状シーリング部材の両側縁部を前記化粧板の裏面に接合することによって固定した後に、前記型枠内にコンクリートを打設して硬化させるようにしたものである(特許文献1参照)。
この技術によって、打設されるコンクリートと前記目地とを帯状シーリング部材で遮蔽して、前記目地からのノロの染み出しを抑制することができる。
特開2000−289011号公報
しかしながら、前述した従来の技術においても、なお、つぎのような改善すべき課題が残されている。
すなわち、前述した従来の技術においては、前記化粧板間に設けられる碁盤目状の目地を帯状シーリング部材でシールするようにしているが、前記目地の交差部分において、それぞれの目地を覆って配設される帯状シーリング部材が上下に重なるように交差させられる。
ここで、前記帯状シーリング部材には厚みがあることから、前記交差部において、上方に配置される帯状シーリング部材が下方の帯状シーリング部材の両側縁部で浮き上がり、
上下の帯状シーリング部材間、あるいは、上方の帯状シーリング部材と化粧板との間に隙間が形成されてしまう。
このような不具合は、帯状シーリング部材の貼付作業のばらつき等によって助長されやすい。
そして、このような現象は、多数ある前記目地の交差部分全てにおいて発生し、これらの隙間からノロが化粧板表面へ染み出して化粧板表面を汚してしまう原因となっており、PC板表面の汚れ防止の観点から、さらなる改善が必要とされている。
本発明は、前述した従来において残されている課題を解決せんとしてなされたもので、請求項1に記載の化粧板先付けプレキャストコンクリート板の製造方法は、型枠内に、長方形状の板材からなる化粧板を、その長辺側の端面どうしおよび短辺側の端面どうしを当接させて敷き詰め、前記長辺側の接合部あるいは短辺側の接合部の何れか一方を、その裏面側から粘液状接着剤によってシールするとともに、前記長辺側の接合部あるいは短辺側の接合部の他方を粘着性テープによってシールし、前記粘液状接着剤の硬化後に、前記化粧板を覆うようにコンクリートを打設して硬化させることにより、前記化粧板とコンクリートとを一体化したプレキャストコンクリート板を得ることを特徴とするものである。
請求項2に記載の化粧板先付けプレキャストコンクリート板の製造方法は、請求項1に記載の前記化粧板を、その長辺側の接合部あるいは短辺側の接合部の何れか一方の接合部が直線状に連続し、他方の接合部が前記一方の接合部の途中に位置するように敷き詰めることを特徴とするものである。
請求項3に記載の化粧板先付けプレキャストコンクリート板の製造方法は、請求項1または請求項2の何れかに記載の前記化粧板の短辺側の接合部を粘液状接着剤によってシールし、長辺側の接合部を粘着性テープによってシールすることを特徴とするものである。
請求項4に記載の化粧板先付けプレキャストコンクリート板の製造方法は、請求項1または請求項2の何れかに記載の前記化粧板の長辺側の接合部を粘液状接着剤によってシールし、短辺側の接合部を粘着性テープによってシールすることを特徴とするものである。
請求項1に記載の発明によれば、複数の化粧板を、その長辺側の端面どうしおよび短辺側の端面どうしを当接させた状態で型枠内に敷き詰め、これらの接合部の一方を粘液状接着剤でシールするようにしたから、前記接合部の隙間を極力狭めた状態でシールすることから、粘液状接着剤を用いてシールを行なった場合においても、この粘液状接着剤が前記接合部内に垂れ込むことがなく、かつ、両側の化粧板との接着面積を十分に確保できることから、接合部のシールを容易かつ確実に行なって、隙間の発生を極力防止することができる。
また、他方の接合部を粘着テープによってシールする場合においても、両化粧板が当接させられた状態であるから、貼付される粘着性テープに撓みが発生することが抑制され、これによって、粘着性テープを確実に化粧板へ貼着し、これらの接合部における隙間の発生を極力防止することができる。
さらに、粘着性テープによるシール部と粘液状接着剤によるシール部とが交差する部位においては、前記粘着性テープが浮き上がったり前記粘着性テープと化粧板との間に隙間が生じたとしても、これらの隙間に、前記粘液状接着剤がその粘性により入り込み、あるいは、シール作業時の押圧力により前記粘液状接着剤が押し込まれ、これによって、前記隙間が塞がれる。
したがって、これらの相乗作用により、複数の化粧板の接合部における隙間の発生を極力少なくすることができ、化粧板裏面側にコンクリートを打設した際に、ノロが化粧板表面に染み出すことを大幅に抑制することができる。
これに伴い、PC板を脱型した後の表面洗浄作業を軽減することができる。
また、請求項2に記載の発明のように、化粧板を、その長辺側の接合部あるいは短辺側の接合部の何れか一方の接合部が直線状に連続し、他方の接合部が前記一方の接合部の途中に位置するように敷き詰めた場合(換言すれば化粧板を千鳥状に敷き詰めた場合)においても、こらの接合部における隙間を、前記請求項1における作用によって効率よく塞ぐことができる。
したがって、ノロの染み出しを抑制しつつ化粧板の配列形態の自由度を高めることができる。
そして、請求項3または請求項4に記載のように、粘液状接着剤や粘着性テープの使用箇所は適宜選択可能である。
特に、直線状に連続する接合部に粘着性テープを使用することにより、この粘着性テープの切断回数を少なくして作業を簡素化することができ、また、粘液状接着剤に比して安価な粘着性テープの使用比率を高めて、シールにかかる材料費の高騰を抑制することができる。
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態によって製造されたPC板1(1a、1b、1c)を一部に用いて構築された家屋Hの側面図である。
前記PC板1aは、家屋Hの1階部分の妻側の壁を構成し、前記PC板1bは2階部分の妻側の壁を構成し、また、前記PC板1cは、ベランダ部分の妻側の手摺りを構成している。
その他のPC板は、形状が異なるだけでその構成は共通している。
前記1階部分に用いられているPC板1aには、図2(b)に示すように、窓用開口2と掃き出し口3・3とが形成され、2階部分に用いられているPC板1bには、2個の窓用開口2が形成されている。
そして、これらの各PC板1a〜1bは、後述するように打設されるコンクリートCの表面に、長方形状のタイルからなる化粧板5の多数を先付けにて一体化して構成されている。
前記化粧板5は、前記PC板1の幅方向に直線状に配列されたタイル群を1群として、多数群のタイル群をPC板1の高さ方向に積層して取り付けられており、上方に位置する群の化粧板5が、下方の群の化粧板5に対して、PC板1の幅方向に半ピッチ(化粧板5の長さの半分)分ずれて設置されて、全体として千鳥状に配置されている。
また、これらの各化粧板5は、隣り合う化粧板5どうしの端面が相互に当接させられている。
ついで、本発明に係る前記PC板1の製造方法の一実施形態について、前記手摺り用のPC板1cを用いて説明する。
まず、図3に示すように、前記PC板1cを成形するための矩形状の型枠6を基盤(図示略)上に組み上げ、この型枠6の内部に、多数の化粧板5を千鳥状にかつ隣り合う化粧板5どうしの端面が当接するように密に敷き詰める。
この状態において、PC板1cの幅方向に配置される化粧板5は直線状に連続して配置され、したがって、上部に配置される他の化粧板5との接合部(長辺側の接合部と称す)Fが連続した直線となされ、また、側部に配設される他の化粧板5との接合部(短辺側の接合部と称す)Vが、前記長辺側の接合部Fに、前記化粧板5の長辺の中間位置において突き合わされている。
そして、本実施形態においては、図4に詳述するように、前記長辺側の接合部Fを覆うようにして、その全長にわたり粘着性テープ7を貼り付け、前記短辺側の接合部Vを覆うようにして、その全長にわたり粘液状接着剤8を塗布することにより、全ての接合部F・Vを塞ぐとともに、隣接する化粧板5どうしを相互に接合する。
このような粘液状接着剤8の塗布に際して、隣り合う化粧板5どうしが当接させられて、その短辺側の接合部Vの隙間が極めて狭くなっていることにより、塗布される前記粘液状接着剤8が、前記短辺側の接合部V内に垂れ込むことがなく、かつ、両側の化粧板5との接着面積が十分に確保され、したがって、この短辺側の接合部Vの隙間を容易かつ確実に塞ぐことができる。
また、前記粘着性テープ7の貼着に際して、前述したように、隣り合う化粧板5どうしが当接させられて、その長辺側の接合部Fが極めて狭くなっていることから、貼付される粘着性テープ7の撓みが殆どなく、前記長辺側の接合部Fの両側の化粧板5の裏面に均一に貼付される。
したがって、前記長辺側の接合部Fの隙間を容易かつ確実に塞ぐことができる。
一方、本実施形態においては、前記長辺側の接合部Fが、連続した直線として前記PC板1cの幅方向全長にわたって形成されていることから、前記粘着性テープ7の貼着に際して、一つの長辺側の接合部Fへの貼付作業が、連続した一つの作業で行なうことができるので作業が簡便である。
さらに、前記短辺側の接合部Vと長辺側の接合部Fとの交差部分において、前記粘着性テープ7と粘液状接着剤8とが重なり合うこととなる。
ここで、仮に、前記粘着性テープ7が浮き上がっていたとしても、前記粘液状接着剤8が自らの粘性により、あるいは、作業者の塗布時における押圧力により、前記浮き上がりによって形成された隙間に入り込んでこの隙間を塞ぐことができる。
ついで、前述したように全部の接合部F・Vのシールを行ない、かつ、前記粘液状接着剤8が硬化した後に、前記型枠6の内部に、図5に示すように、所定形状に組み上げられた補強用鉄筋9を挿入するとともに、必要に応じてスペーサ等を用いて所定位置に設置する。
これより、図6および図7に示すように、前記型枠6内にコンクリートCを打設し、このコンクリートに所定強度が発現するまで養生を行なう。
ここで、打設されたコンクリートの下面に敷き詰められている前記化粧板5の結合部F・Vの全てが、前記粘液状接着剤8と粘着性テープ7とによってほぼ完全に塞がれていることから、前記コンクリートC中のノロが、前記化粧板5の表面側へ染み出すことが抑制される。
前記コンクリートCに所定強度が発現した後に、このコンクリートCを型枠6から脱型することによりPC板1cを得ることができ、その表面状態を図8に示す。
ここで、比較のために、本実施形態に係るシール処理を行なわずにPC板を成形し、その表面状態を図9に示す。
これらの図から明らかなように、図9に示す比較例においては、PC板20の表面の大部分に汚れMが発生しているが、本実施形態によるPC板1cにあっては、数カ所に若干の汚れMが見られる程度である。
本発明の一実施形態によって製造されたプレキャストコンクリート板を一部に用いて構築された家屋の側面図である。 本発明の一実施形態によって製造されたプレキャストコンクリート板を示す正面図である。 本発明の一実施形態を示すもので、型枠内に化粧板を敷き詰めた状態を示す斜視図である。 本発明の一実施形態を示すもので、化粧板の裏面のシール構造を示す要部の拡大図である。 本発明の一実施形態を示すもので、型枠内に補強用鉄筋を配設した状態を示す斜視図である。 本発明の一実施形態を示すもので、型枠内にコンクリートを打設した状態を示す斜視図である。 本発明の一実施形態を示すもので、型枠内にコンクリートを打設した状態を示す縦断面図である。 本発明の一実施形態によって製造されたプレキャストコンクリート板の正面図である。 従来方法によって製造されたプレキャストコンクリート板の正面図である。
符号の説明
1 PC板
1a PC板
1b PC板
1c PC板
2 窓用開口
3 掃き出し口
5 化粧板
6 型枠
7 粘着性テープ
8 粘液状接着剤
9 補強用鉄筋
C コンクリート
M 汚れ
F (長辺側の)接合部
V (短辺側の)接合部
H 家屋

Claims (4)

  1. 型枠内に、長方形状の板材からなる化粧板を、その長辺側の端面どうしおよび短辺側の端面どうしを当接させて敷き詰め、前記長辺側の接合部あるいは短辺側の接合部の何れか一方を、その裏面側から粘液状接着剤によってシールするとともに、前記長辺側の接合部あるいは短辺側の接合部の他方を粘着性テープによってシールし、前記粘液状接着剤の硬化後に、前記化粧板を覆うようにコンクリートを打設して硬化させることにより、前記化粧板とコンクリートとを一体化したプレキャストコンクリート板を得ることを特徴とする化粧板先付けプレキャストコンクリート板の製造方法。
  2. 前記化粧板を、その長辺側の接合部あるいは短辺側の接合部の何れか一方の接合部が直線状に連続し、他方の接合部が前記一方の接合部の途中に位置するように敷き詰めることを特徴とする請求項1に記載の化粧板先付けプレキャストコンクリート板の製造方法。
  3. 前記化粧板の短辺側の接合部を粘液状接着剤によってシールし、長辺側の接合部を粘着性テープによってシールすることを特徴とする請求項1または請求項2の何れかに記載の化粧板先付けプレキャストコンクリート板の製造方法。
  4. 前記化粧板の長辺側の接合部を粘液状接着剤によってシールし、短辺側の接合部を粘着性テープによってシールすることを特徴とする請求項1または請求項2の何れかに記載の化粧板先付けプレキャストコンクリート板の製造方法。
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