JP4505093B2 - 血圧測定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、血圧測定装置、特に非観血型の血圧測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
血圧値は様々な病気の指標となることから、血圧測定装置は、医療現場のみならず一般家庭においても広く普及しつつある。血圧測定装置には、大別して、圧力センサを備えた注射針を動脈血管内に挿入して直接的に計測する観血型装置と、血管の外部から間接的に測定する非観血型装置とがある。観血型装置は、正確な圧力レベルの計測が可能であるとともに、圧力変動即ち脈圧の正確な計測が可能であるという利点を有する反面、血管内特に圧力の高い動脈内への注射針の挿入に伴う出血に細心の注意を要するため、特別な医療現場でしか用いられていないのが現状である。一方、非観血型装置として一般的な圧迫カフを利用して行う従来の装置は、コロトコフ音の現出および消滅を検知して行うものであるが、このコロトコフ音の測定を自動化したものが開発され、適用が非常に容易となり、一般にも広く普及しつつある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような圧迫カフを用いた従来の装置においては、コロトコフ音測定用のマイクロフォンが周囲の騒音を拾い、正確に測定を行えない場合が生じるという問題が生じていた。また、測定の度にその都度圧迫カフにより測定部位を圧迫しなければならず、特に測定を繰り返して実施する際には、うっ血や心理的ストレス等、被験者に対し少なからず負担を与えてしまうという問題が生じていた。さらに、この装置においては圧力脈動を計測することは不可能であった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
かかる事情に鑑み、本発明によれば、電気信号を発光素子の発光に変換して体内に向けて送波光を送波し、その送波光の体内における反射波を受波し、受波した反射波を電気信号に変換し、その電気信号を送波部に帰還して自励発振する帰還ループの中に設けられる自励発振回路の発振周波数に基づいて血圧を算出する。これにより、コロトコフ音を利用することなく、測定精度が高く適用の容易な非観血型の血圧測定が実現される。また、圧迫カフが不要となるため、被験者への負担を軽減することができる。さらに本発明によれば、血圧脈動の測定も可能となる。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を血圧測定装置に適用した第一の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1には、本実施形態にかかる血圧測定装置の概略システム構成を示すブロック図を、図2には、本実施形態にかかる血圧測定装置のセンサユニットの側断面図を、図3には、本実施形態にかかる血圧測定装置のゲイン変化補正回路の一例を示す回路構成図を、図4には、本実施形態にかかる血圧測定装置の送波回路の一例を示す回路構成図を、そして図5には、本実施形態にかかる血圧測定装置の受波回路の一例を示す回路構成図をそれぞれ示す。
【0006】
<血圧測定装置のシステム構成> まず、本実施形態にかかる血圧測定装置の概略システム構成について図1,2を用いて説明する。この血圧測定装置1は、電気信号を発光素子の発光に変換して例えば赤外光の体内への送波を行う送波部21と体内における反射波例えば反射赤外光を受波して電気信号に変換する受波部22とを備えるセンサユニット20と、このセンサユニット20を制御し、受波部と送波部との間の自励発振回路の発振周波数に基づいて血圧を計算する制御ユニット10とを備える。
【0007】
センサユニット20は、送波部例えば赤外光の発光素子21(例えばLED)と、受波部例えば赤外光の受光素子22(例えばフォトトランジスタ)と、これらを交互に複数備えた帯状体23とを有する。帯状体23は、測定部位例えば手首40に、貼付部例えばマジックテープ24により測定部位に着脱自在に例えば巻き付けにより装着される。そしてこの帯状体23の測定部位40への装着によりこれら送波部21および受波部22が測定部位40の外周に沿って交互に測定部位40の表面に密着するように構成される。このように、測定部位40外周に沿って送波部21あるいは受波部22を交互にあるいは複数配置することにより、装着位置の外周方向のずれに伴う受波電気信号のゲインの変化が抑制され、これらの外周方向の装着位置に配慮することなく迅速にセンサユニット20の装着を行うことができる。
【0008】
制御ユニット10は、受波部22において受波した反射波に基づく電気信号を前記送波部21に帰還して自励発振する自励発振回路11と、自励発振回路11の発振周波数を測定する周波数測定部31と、この周波数測定部31により測定された周波数に基づいて血圧を算出する血圧計算部32と、周波数と血圧との相関パラメータを記憶する記憶部33と、前記相関パラメータなど各種パラメータの設定入力あるいは制御ユニット10に対する操作指示入力を行う入力部34と、測定された脈動波形あるいは血圧値を表示する表示部35と、を備える。
【0009】
前記自励発振回路11は、ゲイン変化補正回路13と、送波部21を接続する送波回路14と、受波部22を接続する受波回路15と、電気信号例えば受波部22からの電気信号を増幅する増幅回路12と、を備え、受波部22において受波した反射波に基づく電気信号を前記送波部21に帰還して自励発振する帰還ループを構成している。
【0010】
ゲイン変化補正回路13は、周波数の変化に対してゲインを変化(例えば上昇)させる機能を備えるとともに、自励発振回路11の入力位相と出力位相との位相差である入出力合成位相差を零に調節し帰還発振を促進するフェーズトランスファ機能を備え、入出力合成位相差が零になるまで周波数を変化させるとともにこの周波数の変化に応じてゲインをさらに変化(例えば上昇)させる機能を備える。本実施形態においては、ゲイン変化補正回路13として、周波数の変化に対してゲインが上昇する周波数−ゲイン特性を有するフィルタ回路が使用される。図3はゲイン変化補正回路13に使用される一例としてのフィルタ回路の回路構成図である。このフィルタ回路は、抵抗素子R11、R12、R13、R14、容量素子C11、C12、C13、C14、及び増幅回路AMPを備える。この例では、抵抗素子R11は10KΩ、抵抗素子R12は220Ω、抵抗素子R13は420KΩ、抵抗素子R14は2.2KΩにそれぞれ設定される。増幅回路AMPには、電源端子V11から電源(12V)が供給される。また基準電源端子V12には電圧(−12V)が印加される。図中、符号Vinは信号の入力端子、符号Voutは信号の出力端子である。このフィルタ回路はバンドパスフィルタ回路の特性を備える。ゲイン変化補正回路13の入力端子Vinは増幅回路12の出力端子に接続され、出力端子Voutは送波回路14の入力端子に接続される。
【0011】
図4に、送波回路の一例としての赤外光の発光回路14を示す。この発光回路14は、例えば抵抗素子R21、R22、容量素子C21、可変抵抗素子VR21、およびトランジスタTR21を備える。抵抗素子R21およびR22は例えば2.2KΩ、容量素子C21は例えば1μF、可変抵抗素子VR21は例えば100Ωにそれぞれ設定される。またこの回路には、例えば電源端子V21から電源(12V)が供給される。信号の入力端子Vinから入力された電気信号は、トランジスタTR21と電源端子V21とに両端を並列に接続された複数の発光素子21において赤外光に変換され送波される。入力端子Vinはゲイン変化補正回路13の出力端子に接続される。
【0012】
図5に、受波回路の一例としての赤外光の受光回路15を示す。この受光回路15は、例えば複数の受光素子22一個に対して抵抗素子(R31、R32、・・・)およびトランジスタ(TR31、TR32、・・・)を並列にそれぞれ一個ずつ備える。抵抗素子(R31、R32、・・・)はそれぞれ例えば10KΩに設定される。この回路には、例えば電源端子V31から電源(+5V)が供給され、また例えば基準電源端子V32には電圧(−5V)が印加される。受光素子22において受光された赤外光は電気信号に変換され、出力端子Voutより出力される。出力端子Voutは増幅回路12を介してゲイン変化補正回路13の入力側に接続される。即ちこの例の場合には、出力端子Voutは増幅回路12の入力端子に接続される。
【0013】
<自励発振の基本原理> 次に、自励発振の基本原理について説明する。図6は、ゲイン変化補正回路13を除く自励発振回路11の部分と、ゲイン変化補正回路13とについてそれぞれの周波数特性を合成した総合周波数特性を示す周波数−ゲイン−位相特性曲線図である。横軸は周波数を示し、縦軸はゲイン、位相のそれぞれを示す。周波数−ゲイン特性曲線TGは、ゲイン変化補正回路13を含む自励発振回路11の総合周波数特性である。この周波数−ゲイン特性曲線TGは、低周波数側の帯域においては周波数の増加とともにゲインが上昇し、共振周波数f0の帯域でゲインが最大になり、高周波数側の帯域においてはゲインが減少する、山なりの曲線を描く。特性曲線θ11は自励発振回路11の入力位相と出力位相との差である入出力位相差を示す位相特性である。
【0014】
この自励発振回路11においては、周波数−ゲイン特性曲線TGのゲイン極大値TGSを示す共振周波数f0で自励発振回路11の入出力位相差が零になる調節がなされる。すなわち、自励発振回路11において、受波回路15から出力される共振周波数の位相(入力位相)θ1とゲイン変化補正回路13から出力され送波回路14に帰還されるゲイン上昇後の位相(出力位相)θ2との位相差である入出力合成位相差θ11が零(θ11=θ1+θ2=0)に調整される。この入出力合成位相差θ11の調節により、ゲイン変化補正回路13を含む自励発振回路11の入力位相θ1と出力位相θ2との間に位相差が存在する場合には入出力合成位相差θ11が零になるまで帰還が繰り返し行われ、入出力合成位相差θ11が零になった時点で発振が行われる。この結果、自励発振回路11の帰還発振をより確実に行い、帰還発振を促進することができる。入出力合成位相差θ11の調節はゲイン変化補正回路13において行われる。ゲイン変化補正回路13は周波数特性において中心周波数を調節することにより容易に入出力合成位相差θ11の調節を実現できる。
【0015】
図7は前記自励発振回路11、ゲイン変化補正回路13のそれぞれの周波数特性を示す周波数−ゲイン−位相特性曲線図である。横軸は周波数を示し、縦軸はゲイン、位相のそれぞれを示す。ゲイン変化補正回路13の周波数−ゲイン特性曲線13Gは、低周波数側の帯域においては周波数の増加とともにゲインが上昇し、中心周波数の帯域でゲインが最大となり、高周波数側の帯域においてはゲインが減少する、山なりの曲線を描く。特性曲線θ13はゲイン変化補正回路13の入出力位相差を示す位相特性である。特性曲線MGはゲイン変化補正回路13を除く自励発振回路11の部分についての周波数−ゲイン特性曲線である。周波数−ゲイン特性曲線MGは、中心周波数、周波数帯域及びゲイン極大値は異なるが、基本的にはゲイン変化補正回路13の周波数特性と同様に、山なりの曲線を描く。
【0016】
本実施形態においては、周波数−ゲイン特性曲線MG、13Gにそれぞれ示すように、ゲイン極大値S1が示すゲイン変化補正回路13を除く自励発振回路11の部分の中心周波数f1と、ゲイン変化補正回路13のゲイン最大値13GSが示す中心周波数f2とを、意図的にずらした周波数帯域に設定する。ここでは例えば、血圧値が高い程ゲインが高くなるように、ゲイン変化補正回路13を除く自励発振回路11の部分の中心周波数f1に対してゲイン変化補正回路13の中心周波数f2を高い周波数帯域に設定する。
【0017】
血圧に変動が生じると、受波部22により受波された反射波の特性、即ち本実施形態では受光素子22により受光される体内で反射された赤外光の特性が変化し、これに起因してゲイン変化補正回路13を除く自励発振回路11の部分の電気信号の周波数、ゲイン、位相、振幅がいずれも変化する。本発明者により、血圧の変化に応じて自励発振回路11の発振周波数が変化し、またこれら周波数のシフトによる周波数の変動波形が血圧の変動波形に対応する相似形状となることが確認された。即ち、ゲイン変化補正回路13を除く自励発振回路11の部分の周波数は、血圧の変化に応じ、ゲイン変化補正回路13を除く自励発振回路11の部分の中心周波数f1から共振周波数f11まで変化(例えば上昇)する。またここでは、ゲイン変化補正回路13を除く自励発振回路11の部分の周波数−ゲイン特性曲線MGのゲイン極大値は、ゲイン極大値S1からゲイン変化補正回路13の周波数−ゲイン特性曲線13Gに沿って変化し、ゲイン極大値S1から上昇するように変化する。即ち、ゲイン変化補正回路13を除く自励発振回路11の部分の周波数−ゲイン特性曲線MGは周波数−ゲイン特性曲線MG1に変化し、ゲイン極大値S1はゲイン極大値S11に、ゲインG1はゲインG11にそれぞれ変化する。
【0018】
自励発振回路11の帰還ループには抵抗素子と容量素子とを組み合わせた回路が含まれているため、自励発振回路11の入力位相θ1と出力位相θ2との間には必ず位相差Δθが存在する。ここで、ゲイン変化補正回路13はフェーズトランスファ機能を備えており、ゲイン変化補正回路13を含む帰還ループの入出力合成位相差θ11が零になる調節をしているので、入出力合成位相差θ11が零になる帰還発振の安定点に到達するまで、周波数はさらに変化し、ゲインもさらに変化する。すなわち、ゲイン変化補正回路13を除く自励発振回路11の部分の周波数−ゲイン特性曲線MG1は周波数−ゲイン特性曲線MG1に変化し、共振周波数f11は共振周波数f12に変化する。この共振周波数f12への変化に伴い、ゲイン極大値S11はゲイン極大値S12に変化し、ゲインG11はゲインG12に変化する。すなわち、位相差Δθに相当する分、ゲイン変化補正回路13を除く自励発振回路11の部分の中心周波数f1は共振周波数f12まで連続的に変化例えば上昇するとともに、ゲインG1はゲインG12まで連続的に変化例えば上昇する。結果的に、ゲイン変化補正回路13を除く自励発振回路11の部分において、周波数変化量Δfが得られるとともにゲイン変化量ΔGが得られる。ゲイン変化補正回路13を除く自励発振回路11の部分の周波数変化量Δf、ゲイン変化量ΔGがそれぞれ得られた時点で入出力合成位相差θ11が零になり、自励発振回路11は帰還発振する。このように、本実施形態にかかる血圧測定装置1においては、周波数変化量Δf、位相差Δθがそれぞれ増長して変化するため、より血圧の変動幅を増大させて血圧の変動を捉えやすくすることが可能となるとともに、血圧測定に十分な検出電圧を得ることが可能となる。
【0019】
<血圧測定装置のキャリブレーション> 次に、本実施形態にかかる血圧測定のキャリブレーションについて説明する。図8に、キャリブレーション測定により算出した自励発振回路11の発振周波数fと血圧値Pとの相関の一例を示す。ここでは、キャリブレーションは、各測定実施条件毎、例えば被験者毎、測定部位毎、被験者の運動状態毎(例えば安静時、運動後など)あるいは測定部位の内部構成の変化(例えば体脂肪率、血管の硬度、血液成分等の変化など)に応じて適宜行う。これは、送波波の反射物あるいは媒質の組成状態により、反射波の周波数に差異が生じるからである。このキャリブレーションは、同一の条件下において他の圧力測定法例えばカフ圧迫法により測定された最高血圧および最低血圧と、本発明にかかる方法により測定された周波数波形例えば自励発振回路11の周波数波形との比較により行われる。より具体的には、例えば図8の例では、ある条件下(以下条件1とする)において測定した自励発振回路11の周波数の変動波形における最大周波数fmax1と最小周波数fmin1とを、それぞれ、条件1下においてカフ圧迫法により測定した最高血圧Pmax1と最低血圧Pmin1とに対応付け、周波数fを血圧Pの関数例えば1次関数Q1として近似する。即ち、この条件1下においては、血圧Pは、P=Q1(f)として求めることができる。また、別の条件下(例えば、被験者が異なる場合、同一被験者における運動状態が異なる場合など;以下条件2とする)において測定した自励発振回路11の周波数変動波形における最大周波数fmax2と最小周波数fmin2とを、それぞれ、条件2下においてカフ圧迫法により測定した最高血圧Pmax2と最低血圧Pmin2とに対応付け、周波数fを血圧Pの関数例えば1次関数Q2として近似する。即ち、この条件2下においては、血圧Pは、P=Q2(f)として求めることができる。そして記憶部33には、前記したような各条件毎に、条件を識別するフラグfg(例えば条件1に対してはfg=1、条件2に対してはfg=2)とともに、この関数の相関パラメータ(例えば条件1の場合、1次関数Q1(f)におけるfの0次の係数k01および1次の係数k11など)が格納される。そして実際の測定時には、入力部における測定実施条件の入力に応じた相関パラメータ(例えば入力された測定実施条件が前記フラグfg=1に対応する条件であった場合にはk01およびk11)が、血圧計算部32に呼び出され、発振周波数fとこれら相関パラメータとに基づいて血圧値Pが計算される。
【0020】
<血圧の測定> 次に、本実施形態にかかる血圧測定について説明する。図9に、本実施形態にかかる血圧測定装置1により測定された血圧波形の一例を示す。前述のキャリブレーションにより相関が求められた後、血圧の測定が行われる。被験者の測定部位にセンサユニット20が装着され、血圧の測定が開始される。この際、前述した被験者、測定部位あるいは被験者の状態などキャリブレーションを実施した条件を識別する情報が入力部34より入力され、これに基づいて血圧計算部32は条件に適合する相関パラメータを記憶部33より呼び出す。この際キャリブレーションの実施条件が入力されなかった場合あるいはその条件が認識できなかった場合には、記憶部33に格納された基準相関パラメータが呼び出される。そして周波数測定部31により測定された自励発振回路11の周波数fは、血圧計算部32において呼び出された相関パラメータに基づいて血圧値Pに変換され、表示部35においてこの血圧値あるいは図9に示すような血圧波形の表示が逐次行われる。
【0021】
このように、電気信号を発光素子の発光に変換して体内に向けて送波光を送波し、その送波光の体内における反射波を受波し、受波した反射波を電気信号に変換し、その電気信号を送波部に帰還して自励発振する帰還ループの中に設けられる自励発振回路の発振周波数に基づいて血圧を算出する。これにより、従来のコロトコフ音方式のように外部の騒音等の影響を受けることなく、血圧の測定精度を向上することができる。また、測定部位の圧迫あるいは血管への注射針の挿入を伴わないため、被験者の負担を軽減することができる。またさらに、脈動波形を測定可能であるため、不整脈など心臓の挙動に関する診断も可能となる。
【0022】
また前述したように、本実施形態にかかる血圧測定装置は、ゲイン変化補正回路13のフェーズトランスファ機能により位相差を打ち消し、入出力合成位相差が零になるまで周波数の変化させ、またゲインを変化させることにより、検出される周波数をより大きな変動幅に、また検出される信号をより大きな電圧値に増大させることができ、このためより確実かつより容易に血圧の測定を行うことができる。
【0023】
なお、本発明は前述の実施の形態には限定されない。本発明において、ゲイン変化補正回路13は、増幅回路12と受波回路15との間に配置することも可能である。また、ゲイン変化補正回路13は周波数の変化に対してゲインを上昇しこのゲインの上昇により電圧を増加する特性を備えていれば良いので、前述の実施形態のバンドパスフィルタ回路以外にも、ローパスフィルタ回路、ハイパスフィルタ回路、ノッチフィルタ回路、積分回路、微分回路、あるいはピーキング増幅回路等を用いることが可能である。また、前述の実施形態では、自励発振回路11の中心周波数f1に対してゲイン変化補正回路13の中心周波数f2を高い周波数帯域に設定したが、これを低い周波数帯域に設定してもよい。
【0024】
また、血圧測定における周波数のキャリブレーションを、前述とは異なる手法により行うこともできる。例えば、血流停止状態における自励発振回路11の周波数を測定し、この血流停止状態での周波数に基づいて血圧を算出することができる。この場合血流の停止は例えばカフ圧迫により行うことができる。より具体的には、例えば、前述した血圧測定装置1のセンサユニット20を被験者の手首に装着し、この状態で圧迫カフにより例えば前記センサユニット20より心臓に近い側の腕(例えば前腕部)を圧迫してセンサユニット20による周波数測定部位の血流をほぼ停止させ、この状態における自励発振回路11の周波数を測定する。図10にこの周波数の変動の様子を示す。図10に示すように、血流停止により、時間経過とともに自励発振回路11の周波数はほぼ一定の収束値fcに収束し、この収束値fcは、少なくとも被験者の運動状態の変化に伴う血流状態の変化によらない被験者固有の値となることが、発明者により確認されている。そして、血圧Pを、この収束周波数fcと、実際の測定時における周波数の代表値(例えば周波数変動の最大値fmaxおよび/または最小値fmin)とを係数として含む周波数fの関数例えば一次関数Qcとして算出することが可能であり、またこうして算出した血圧は、少なくとも被験者の血流状態によらず、実際の血圧と良好に一致することが、本発明者により確認されている。この手法は、実際の測定時における周波数の代表値(例えば周波数変動の最大値fmaxおよび/または最小値fmin)と、収束周波数fcとに基づいて、測定実施時の測定条件を、血圧の計算に自動的に反映させていると言うことができる。この手法によれば、測定実施条件の場合分けを低減することができるため、測定に必要なキャリブレーションの実施回数、あるいは相関パラメータの記憶量を低減することが可能となる。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、測定部位の圧迫あるいは血管への針の挿入を伴わずに血圧を測定することができるため、血圧測定における被験者への負担が軽減され、長時間に亘る連続計測あるいは反復的な計測も含め、血圧の計測の実施が容易になるという優れた効果を奏し得る。また本発明によれば、血圧脈動の測定が可能となり、このため心臓の挙動も含めたより詳細な診断を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第一の実施の形態にかかる血圧測定装置の概略システム構成を示すブロック図である。
【図2】 本発明の第一の実施の形態にかかる血圧測定装置のセンサユニットの側断面図である。
【図3】 本発明の第一の実施の形態にかかる血圧測定装置のゲイン変化補正回路の一例を示す回路図である。
【図4】 本発明の第一の実施の形態にかかる血圧測定装置の送波回路の一例を示す回路図である。
【図5】 本発明の第一の実施の形態にかかる血圧測定装置の受波回路の一例を示す回路図である。
【図6】 本発明の第一の実施の形態にかかる血圧測定装置の自励発振回路およびゲイン変化補正回路のそれぞれの周波数特性を合成した総合周波数特性を示す周波数−ゲイン−位相特性曲線図である。
【図7】 本発明の第一の実施の形態にかかる血圧測定装置の自励発振回路およびゲイン変化補正回路のそれぞれの周波数特性を示す周波数−ゲイン−位相特性曲線図である。
【図8】 本発明の第一の実施の形態にかかる血圧測定装置の周波数と血圧との相関の一例を示す図である。
【図9】 本発明の第一の実施の形態にかかる血圧測定装置の周波数の測定結果の一例を示す図である。
【図10】 本発明にかかる血圧測定装置のキャリブレーションの一例における周波数変動波形を示す図である。
【符号の説明】
1 血圧測定装置、11 自励発振回路、13 ゲイン変化補正回路、21 発光素子(送波部)、22 受光素子(受波部)、32 血圧計算部。
Claims (5)
- 電気信号を発光素子の発光に変換して体内に向けて送波光を送波する送波部と、
前記発光素子から送波された送波光の体内における反射波を受波し、受波した反射波を電気信号に変換する受波部と、
前記受波部において受波した反射波に基づく電気信号を前記送波部に帰還して自励発振する帰還ループの中に設けられる自励発振回路と、
前記自励発振回路の発振周波数に基づいて血圧を算出する血圧計算部と、
を備える血圧測定装置。 - 前記送波部において、信号端子から入力された電気信号が、トランジスタと電源端子とに両端を接続された発光素子において発光に変換され、
前記受波部は、受光素子に抵抗素子およびトランジスタが備えられ、受光素子で受光された反射波は、電気信号に変換されることを特徴とする請求項1に記載の血圧測定装置。 - 前記自励発振回路は、周波数の変化に対してゲインを上昇させるゲイン変化補正回路を備え、ゲイン変化補正回路のゲインが最大となる中心周波数は、ゲイン変化補正回路を除く自励発振回路の部分のゲインが最大となる中心周波数と異なることを特徴とする請求項1記載の血圧測定装置。
- 前記発光素子の発光は赤外光であることを特徴とする請求項1記載の血圧測定装置。
- 前記送波部と前記受波部は、血圧を測定する部位の外周に沿って交互に測定部位の表面に密着するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の血圧測定装置。
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