JP4501414B2 - 有機エレクトロルミネッセンス装置、及びその駆動方法、並びに電子機器 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス装置、及びその駆動方法、並びに電子機器 Download PDF

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Description

本発明は、有機エレクトロルミネッセンス装置、及びその駆動方法、並びに電子機器に関するものである。
次世代の表示装置として、有機エレクトロルミネッセンス装置(有機EL装置)が期待されている。有機EL装置は、発光層を上下の電極間に挟持した有機EL素子を基板面内に複数配列して構成され、各有機EL素子を独立に駆動制御することで所望の表示を行うようになっている。この有機EL装置では、駆動初期には高輝度で発光することが可能であるが、連続的に発光を行うと徐々に効率が低下し、輝度が低下するという問題を有していた。そこで、有機EL素子の長寿命化を図るべく、有機EL素子を交流駆動して表示を行う有機EL装置が提案されている(特許文献1参照)。
特開平8−180972号公報
上記従来技術文献に記載の有機EL装置では、有機EL素子を交流駆動することで非点灯期間を設け、寿命の延長を図っている。しかしながら、交流駆動ゆえに生じる非点灯期間により表示輝度の低下が生じ、係る輝度低下を補うために駆動電圧を高くすると、期待通りの寿命を得られなくなるという問題が生じる。また常時交流駆動を行うことを前提にすると、印加可能な駆動電圧の範囲内では輝度が足りなくなるなどの不具合があった。
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、必要に応じて十分な輝度を得られ、かつ長寿命の発光表示を得ることができる有機エレクトロルミネッセンス装置、及びその駆動方法を提供することを目的としている。
本発明は、上記課題を解決するために、発光層を含む有機機能層を備えた有機EL素子と、該有機EL素子を駆動する素子駆動部とを備えた有機エレクトロルミネッセンス装置であって、前記素子駆動部は、前記有機EL素子に対して、交流電流と直流電流とを切替自在に供給可能であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス装置を提供する。
この構成によれば、前記有機EL素子に対して、選択的に直流電流又は交流電流を供給し駆動することができるので、必要に応じて有機EL素子に交流電流を供給することで、有機EL素子の消費電力を低減できるとともに、発光動作により有機EL素子に蓄積した電荷を解放することによる素子の長寿命化を実現できる。また従来の交流駆動有機EL装置では、間欠発光になる交流駆動時に発光輝度を補うべく印加電圧を上昇させようとしても、素子耐圧等の制限により十分な発光輝度が得られない場合があったが、本発明の有機EL装置では有機EL素子に対して直流電流を供給できるため、必要に応じて高輝度の表示が得られるようになっている。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置では、前記素子駆動部は、複数の前記有機EL素子のそれぞれに対して、前記交流電流又は直流電流を選択的に供給可能であることが好ましい。このような構成とすることで、複数の有機EL素子の駆動状態を適切に制御することができ、もって装置の低消費電力化、並びに素子の長寿命化を実現することができる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置では、前記素子駆動部は、複数色の前記有機EL素子に対して、発光色毎に前記交流電流又は直流電流を選択的に供給可能である構成とすることができる。このような構成とすることで、各色の有機EL素子間で素子寿命が異なっている場合にも、特定色の有機EL素子の劣化が進むのを抑え、経時的な色バランスの変化を生じ難くすることができる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置では、前記素子駆動部は、前記有機EL素子に入力される画像信号に基づき選択的に、当該有機EL素子に対して前記交流電流又は直流電流を供給可能である構成とすることもできる。この構成によれば、有機EL素子に入力された画像信号の信号レベル(すなわち素子の発光輝度)等に応じて駆動電流の種類を選択することができ、より緻密に有機EL素子の制御を行うことができる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置では、前記素子駆動部は、前記画像信号の階調値に基づき選択的に、前記有機EL素子に対して前記交流電流又は直流電流を供給可能であることが好ましい。この構成によれば、信号レベルが高い(階調値が大きい)場合には素子を直流駆動し、信号レベルが低い(階調値が小さい)場合には素子を交流駆動するといった駆動形態をとることができ、表示品質を損なうことなく消費電力を低減することができる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置では、信号処理によって画像信号の階調を変調可能な信号処理手段を備え、前記信号処理手段は、前記素子駆動部から供給される電流の種類に応じて異なる前記画像信号の変調処理を実行可能である構成も適用できる。この構成によれば、有機EL素子に供給される電流の種類に応じて有機EL素子に入力する画像信号を変調することができ、電源の切り替えによる表示の変化を抑えることも可能になる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置では、前記有機EL素子に対して交流電流が供給されるとき、前記信号処理手段により実行される変調処理は、前記画像信号を、前記交流電流のデューティ比の逆数倍に伸長する変調処理であることが好ましい。このような構成とすることで、間欠発光となる交流駆動時にも画像信号に応じた発光輝度を得られるようになる。この場合、素子の消費電力を低減する効果は小さくなるが、有機EL素子への逆バイアス電圧印加による寿命延長効果は得られるため、表示品質を維持しつつ発光素子の長寿命化を実現可能である。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置では、当該有機エレクトロルミネッセンス装置の表示面における光強度を測定する測光手段を備え、前記素子駆動部は、前記測光手段により測定された光強度情報に基づき選択的に、前記有機EL素子に対して前記交流電流又は直流電流を供給可能である構成とすることができる。この構成によれば、前記測光手段により有機EL装置の表示面に入射する外光の強度や、有機EL素子の発光強度に関する光強度情報を得ることができるので、例えば外光の強度が低下した場合に、有機EL素子を交流駆動に切り替えて発光輝度を低下させる等の動作が可能になる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置では、当該有機エレクトロルミネッセンス装置の表示面における光強度を測定する測光手段を備え、前記素子駆動部は、前記測光手段により測定された光強度情報に基づき前記有機EL素子への供給電力を調整可能である構成とすることもできる。この場合には、例えば外光の強度が低下したことを検知したとき、有機EL素子に供給する電力を減少させて発光輝度を低下させ、電力を節約することができる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置では、前記有機EL素子に対して交流電流が供給されるとき、前記素子駆動部により実行される供給電力の調整処理は、前記交流電流のデューティ調整であることが好ましい。このような構成とすることで、有機EL素子の耐圧等に制限されることなく交流駆動された有機EL素子の輝度を調整することが可能になる。また画像信号の変調が不要になるので、素子駆動回路の構成を簡素化できるという利点もある。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置では、前記素子駆動部は、前記有機EL素子を交流電流のみにより駆動する省電力駆動モードを備えていることが好ましい。すなわち、暗所での使用時等、表示輝度を下げてもよい使用環境においては、入力される画像信号のレベルによらず有機EL素子を交流駆動することで、消費電力を低減し、かつ素子寿命を延ばすことができる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置では、前記省電力モードにおいて、前記素子駆動部は、前記交流電流のデューティ調整による前記有機EL素子の輝度調整を実行可能である構成とすることが好ましい。上記省電力モードにおいても、有機EL素子の輝度調整をデューティ調整によって行うようにすることで、画像信号の変調が不要になり、回路の簡素化を実現できる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置では、前記素子駆動部は、前記光強度情報に基づき前記省電力駆動モードに移行可能であることが好ましい。このような構成とすることで、より効率的に省電力モードを動作させることができ、消費電力の低減効果、及び素子寿命の延長効果をさらに高めることができる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置では、前記素子駆動部は、前記有機EL素子を定電流駆動可能であることが好ましい。すなわち、交流駆動、直流駆動のいずれにおいても有機EL素子を定電流駆動可能に構成することが好ましく、このような構成とすることで経時的に発光輝度が変化することによる表示品質の低下を防止できる。
本発明は、上記課題を解決するために、発光層を含む有機機能層を備えた有機EL素子を具備してなる有機エレクトロルミネッセンス装置の駆動方法であって、前記有機EL素子に対して交流電流と直流電流とを切替自在に供給することにより、当該有機EL素子を駆動することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス装置の駆動方法を提供する。この駆動方法によれば、前記有機EL素子を交流駆動することで素子の低消費電力化、及び長寿命化をはかることができ、また必要に応じて直流駆動することで容易に必要な表示輝度を得ることができる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置の駆動方法では、前記有機EL素子を駆動するに際して、前記有機EL素子に供給する電流を、該有機EL素子に入力される画像信号の階調値に応じて切り替えることもできる。この駆動方法によれば、前記有機EL素子の輝度レベルに応じて駆動電流の種類を変更することができ、より緻密に有機EL素子の駆動形態を制御でき、効率的に消費電力の低減をはかることができる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置の駆動方法では、前記有機EL素子に入力される画像信号の階調値が所定値以下であるとき、前記有機EL素子を交流電流により駆動し、前記階調値が前記所定値以上であるとき、前記有機EL素子を直流電流により駆動することが好ましい。この駆動方法によれば、観察者に対して比較的目立って視認されやすい高輝度の有機EL素子は直流駆動とし、逆に目立ちにくい低輝度の有機EL素子では交流駆動とするので、実質的な表示品質を損なうことなく効率的に消費電力を低減でき、素子寿命を延ばすことができる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置の駆動方法では、前記有機EL素子を交流電流により駆動するに際して、前記画像信号を、前記交流電流のデューティ比の逆数倍に伸長することもできる。この駆動方法によれば、前記有機EL素子を交流駆動するに際しても、直流駆動時と同程度の輝度を得ることができ、表示品質の維持しつつ素子の長寿命化をはかることができる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置の駆動方法では、前記有機EL素子を定電流駆動することが好ましい。有機EL素子を定電流駆動することで、素子の経時的な劣化によって発光輝度が変化するのを抑えることができ、長期間にわたり高画質の表示を得ることができる。
次に、本発明の電子機器は、先に記載の本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置を備えたことを特徴とする。この構成によれば、低消費電力かつ長寿命の表示部を備えた電子機器が提供される。
(有機EL装置)
以下、本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置(有機EL装置)について図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施の形態である有機EL装置の概略断面図、図2は、図1に示す有機EL装置の回路構成図の一例を示す図である。尚、本実施形態では、有機EL素子の出力光を基板側から取り出すボトムエミッション方式の有機EL装置を例示して説明するが、有機EL素子側から光を取り出すトップエミッション方式も適用可能であるのは勿論である。
図1に示す有機EL装置1は、光を透過可能な基板2と、基板2の一方の面に設けられた有機EL素子(発光素子)3と、この有機EL素子3と電気的に接続された素子駆動部CONTとを主体として構成されている。有機EL素子3は、一対の電極(陽極4及び陰極7)に挟持された有機エレクトロルミネッセンス材料からなる発光層6と正孔注入/輸送層5とを備えており、陽極4及び陰極7にて素子駆動手段としての素子駆動部CONTと電気的に接続されている。
基板2はガラス等を形成材料とし発光層6から発光する光に対して透過性を有する透明基板であり、陽極4はインジウム錫酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)等を形成材料とし発光層6から発光する光に対して透過性を有する透明電極である。正孔注入/輸送層5及び発光層6は有機エレクトロルミネッセンス材料により形成されている。陰極7はアルミニウム(Al)やマグネシウム(Mg)、金(Au)、銀(Ag)等の金属を形成材料とし発光層6から発光する光に対して反射性を有する反射電極である。また、陰極7と発光層6との間にフッ化リチウム(LiF)やカルシウム(Ca)等を設けることができる。
素子駆動部CONTは、図示略の電源装置から供給される電力を、当該有機EL素子3の階調に応じて適宜スイッチングして供給することにより有機EL素子3の発光状態を制御するものであり、例えば図2に示した構成の回路を適用することができる。図2に示す回路構成において、回路駆動部CONT及び有機EL素子3は、互いに交差して延びる走査線110と、信号線118と、電源線114とに囲まれる領域内に配置されている。素子駆動部CONTは、信号処理部(信号処理手段)116と、有機EL素子3を駆動するスイッチング素子を成す第1のTFT(薄膜トランジスタ)111及び第2のTFT112と、これらのTFT111,112間に介挿された蓄積容量113とを備えている。信号処理部116は、走査線110と信号線118と第1のTFT111との間に介挿されるとともに、電源線114に接続された電源スイッチ回路117とも接続されている。
第1のTFT111は、表示回路から供給されるデータに応じて有機EL素子3への印加電圧情報を第2のTFT112のゲートに対して出力するようになっており、第2のTFT112は、第1のTFT111から出力される印加電圧情報に基づき、電源線114から供給される電圧を有機EL素子3に印加するようになっている。また第2のTFT112と並列に介挿された蓄積容量114は、非選択状態において前記印加電圧情報を保持するべく機能する。
そして、本実施形態の有機EL装置1では、直流電源120DCと交流電源120ACとを備えた電源装置120が、電源スイッチ回路117を介して電源線114と接続されている。この構成のもと、有機EL装置1は、電源線114と接続する直流電源120DCと交流電源120ACとを切り替えつつ有機EL素子3を駆動することで、有機EL素子3の直流駆動又は交流駆動を行うようになっている。
ここで、図3は交流電源120ACから供給される交流電圧波形の模式図である。交流電源120ACは、回路的に見てダイオードを成す有機EL素子3に対し、順方向及び逆方向のパルス状の電圧を印加可能に構成されており、例えば順方向のバイアス電圧(順バイアス電圧)Vaと逆方向のバイアス電圧(逆バイアス電圧)Vbとを1フレーム(1選択期間)T中に順次複数回印加できるようになっている。さらに本実施形態の場合、直流電源120DCと交流電源120ACのいずれも有機EL素子3を定電流駆動する定電流源となっている。
本実施形態の有機EL装置1では、素子駆動部CONTから、例えば図3に示すような略矩形波状の波形にて電圧が供給されて各有機EL素子3の発光を行うようになっており、1フレームを複数の期間(サブフレーム)に分割するとともに、前記各サブフレームにおいてそれぞれ順バイアス電圧の印加又は逆バイアス電圧の印加が行われるようになっている。また図3に示すデューティTを1フレーム中で自在に変更する(デューティ比T/Tを変更する)ことが可能になっている。
上記構成を備えた素子駆動部CONTは、走査線110及び信号線118を介して入力される信号により、信号処理部116を介して第1の111を駆動し、この第1のTFT111からの出力によって電源線114に接続された第2のTFT112を駆動することにより、所定量の電流を有機EL素子3に供給し、発光させるようになっている。有機EL素子3においては、陽極4及び陰極7を介して直流電圧又は交流電圧(順バイアス電圧)が印加され、陽極4から正孔注入/輸送層5を介して発光層6に正孔が注入されるとともに、陰極7から発光層6に電子が注入される。そして、陽極4側から注入された正孔と陰極7側から注入された電子とが発光層6内で再結合し、再結合した際に発生するエネルギーにより発光層6内における周囲の分子が励起され、励起状態の励起分子が基底状態に失活する際の差分エネルギーが光として放出される。この発光層6内における正孔と電子との再結合領域が発光層6の発光領域8となる。
ここで、前記有機EL素子3に交流電源120ACが接続されて交流駆動される場合、順バイアス電圧の印加に続いて逆バイアス電圧の印加が行われる。ダイオードを成す有機EL素子3では、前記逆バイアス電圧が印加されても電流はほとんど流れずに発光が停止する。また、このような逆バイアス電圧の印加を行うと、上記発光動作により発光層6に生じた電荷の蓄積を減少させることができ、前記電荷の蓄積に起因して生じる有機EL素子3の劣化を効果的に防止でき、発光寿命を延ばすことができる。
そして、上記発光動作に際して、本実施形態に係る有機EL装置1に備えられた信号処理部116は、信号線118を介して入力される画像信号の信号レベル(階調値)を判定し、係る判定に基づき電源線114に接続する電源を選択できるようになっている。また必要に応じて、前記判定に応じた信号処理を前記画像信号に施すことができるようになっている。図4は、係る信号処理部116の動作を図示したフローチャートであり、図4に示す信号処理部116は、階調判定部116aと階調補正部116bとを備えている。信号線118を介して信号処理部116に画像信号が入力されると、信号処理部116は、まず階調判定部116aにより画像信号の階調値に基づき電源線114に接続する駆動電源を選択する。つまり、画像信号の階調値が所定レベル以上(x%以上)であれば(図示YES側)、信号処理部116は、電源スイッチ回路117に対して直流電源120DCと電源線114とを接続する命令を出力し、所定レベル以下(x%以下)であれば(図示NO側)、交流電源120ACと電源線114とを接続する命令を出力する。さらに、交流電源120ACにより有機EL素子3を駆動する場合、信号処理部116に備えられた階調補正部116bにより画像信号に対して所定の変調処理が施され、この変調後の画像信号が図2に示した第1のTFT111に送信されるようになっている。
素子駆動部CONTは、入力された画像信号の信号レベルが高い(有機EL素子3を高輝度に発光させる)場合、高輝度の光を得やすい直流電流により有機EL素子3を駆動し、逆に信号レベルが低く、有機EL素子3が低輝度となる場合には、発光輝度は上げにくいが消費電力及び発光寿命の点で有利な交流電流により有機EL素子3を駆動するようになっている。このような構成としたことで、本実施形態の有機EL装置1は、実質的な発光輝度の低下を伴うことなく低消費電力化と有機EL素子の長寿命化を実現することができる。
上記階調補正部116bにおいて実行される変調処理としては、印加される交流電圧のデューティ比の逆数倍(T/T倍)に画像信号を伸長する処理を例示できる。図3に示したように、交流駆動では順バイアス電圧と逆バイアス電圧とが素子に交互に印加され、逆バイアス電圧印加時には有機EL素子3は発光を停止する。従って、信号線から供給される画像信号をそのまま第1のTFT111に対して出力すると、例えば1/2フレームの期間は有機EL素子3は発光しないことになり、1フレームあたりの輝度が低下する。そこで、階調判定部116aにより交流駆動が選択された場合において、階調補正部116bにより画像信号に対して上記の伸長処理を施すことで、順バイアス電圧印加時の発光輝度を上昇させ、直流駆動と同等の発光輝度を得られるようになる。尚、上記伸長処理を行う場合、順バイアス電圧印加時の消費電力が上昇し、直流駆動時と同程度の消費電力になることが予想されるが、交流駆動の他の利点である素子劣化の回復作用は得られるため、発光寿命を延ばす上では有効である。
<省電力モード>
また本実施形態の有機EL装置1は、暗所での使用時や電池残量が少なくなった場合等において、発光輝度を抑えて消費電力を低減することができる省電力モードを備えた構成とすることができる。尚、本発明に係る有機EL装置1は、先に説明した階調値による駆動電源切替機能とともに、以下に説明する省電力モードを備えた構成とすることもでき、省電力モードを単独で備えた構成とすることもできる。
図5は、係る省電力モードにおける信号処理部116の動作を説明するためのフローチャートである。省電力モードを実装している場合、信号処理部116は省電力モードに移行するための判定回路を備えた構成とされる。すなわち、外部又は有機EL装置に実装された他の回路から入力される動作モード切替信号に応じて、電源スイッチ回路117に対して所定の命令を出力できるよう構成される。本実施形態の場合、動作モード切替信号により省電力モードへの移行が選択された場合には(図示YES側)、電源スイッチ回路117に対して交流電源120ACを選択する命令が出力され、有機EL素子3は交流駆動される。
省電力モードが選択される状況では、通常、有機EL素子3は低輝度発光状態であっても構わない。そこで、有機EL素子3を交流駆動することで、第1のTFT111に入力する画像信号を変調することなく有機EL素子3の輝度を低下させ、消費電力の低減と、逆バイアス電圧による素子劣化の回復を行えるようになる。このように、本実施形態に係る有機EL装置1に省電力モードを実装するならば、消費電力の低減効果に加えて、発光寿命の延長効果も得ることができる。
また本実施形態の有機EL装置1では、上記省電力モードでの動作時に、輝度レベルの調整が可能である。この場合、図3に示した交流電圧のデューティTを延長/短縮することで有機EL素子3の1フレーム中の発光期間を調整し、有機EL素子3の発光輝度を調整することができる。このような構成とすれば、信号線118を介して入力される画像信号の変調処理を行わなくとも省電力モードでの輝度調整が可能であり、信号処理部116の回路構成を簡素化することができ、有機EL装置1の低コスト化を実現できる。
省電力モードに移行するための動作モード切替信号は、使用者の手動入力により出力されるものであってもよいが、装置の使用状態に応じて出力されるようにすることもできる。すなわち、本有機EL装置1は、装置表面における明るさを観測する測光手段を備え、係る測光手段による測光結果に基づき上記動作モード切替信号が出力される構成とすることができる。すなわち、測光手段により使用環境が暗くなったことが検知されたとき、省電力モードへ移行するための動作モード切替信号が前記信号処理部116に対して入力されるようにすることで、より効果的に省電力モードを活用することができ、さらに消費電力を提言することができる。この測光手段としては、例えばフォトダイオードやフォトトランジスタ等の工学センサを例示することができる。
<有機EL表示装置>
図6は、上記実施形態の有機EL装置1を、アクティブマトリクス型の表示装置に適用した場合の回路構成図、図7は、同、平面構成図、図8は、同、部分断面構成図である。
図6に示すように、有機EL表示装置100は、複数の走査線110と、これら走査線110に対して交差する方向に延びる複数の信号線118と、これら信号線118に並列に延びる複数の電源線114とをそれぞれ配線した構成を備えたもので、走査線110及び信号線118の各交点毎に、本表示装置の最小表示単位(1ドット)を成す有機EL装置1が複数設けられている。
信号線118に対しては、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン、アナログスイッチ等を備えるデータ線駆動回路390が設けられている。一方、走査線110に対しては、シフトレジスタ、レベルシフタ等を備える走査線駆動回路380が設けられている。また、画素1の各々には、走査線110を介して走査信号がゲート電極に供給される画素選択用TFT(第1のTFT)111と、この画素選択用TFT111を介して信号線118から供給される画像信号を保持する保持容量113と、保持容量113によって保持された画像信号がゲート電極に供給される画素駆動用TFT(第2のTFT)112と、この画素駆動用TFT112を介して電源線114に電気的に接続したときに電源線114から駆動電流が流れ込む画素電極(陽極)4と、この画素電極4と対向電極(陰極)7との間に挟み込まれる発光層6とが設けられている。
図7は、図6に示した回路構成を備えた有機EL表示装置の全体構成を示す平面図である。図7に示すように、有機EL表示装置100は、ガラス等からなる透明な基板2と、マトリクス状に配置された有機EL素子3を具備して基板2上に形成された発光素子部11を具備している。上記発光素子部11には、R,G,B各色の有機EL素子3が配列されている。
基板2中央部の発光素子部11が表示領域2aに対応し、その外側を取り囲む領域が非表示領域2cとされている。非表示領域2cには、前述の電源線133(133R、133G、133B)が配線されている。また表示領域2aの両側には、前述の走査線駆動回路380、380が配置されている。更に、走査線駆動回路380、380の両側には、走査線駆動回路380、380に接続される駆動回路用制御信号配線105aと駆動回路用電源配線105bとが設けられている。表示領域2aの図中上側には製造途中や出荷時の表示装置の品質、欠陥の検査を行う検査回路106が配設されている。また、配線215aは、基板2上に形成された陰極用配線212や、上記信号配線105a、電源配線105b等と、フレキシブル基板215上に設けられた駆動IC216とを電気的に接続するように引き回されている。
次に、図8に示す断面構造を見ると、基板2の一方の面に複数の有機EL素子3が設けられており、これらの有機EL素子3とそれぞれ電気的に接続された素子駆動部CONTと、基板2の素子形成面側に披着された封止基板12とを主体として構成されている。基板上に設けられた各有機EL素子3には、図1に示した先の実施形態の有機EL素子3と同様の構成が適用されている。基板2上に立設されたバンク14は、その開口部13内部に有機EL素子3を配設可能になっており、有機EL素子3の発光層6等を液滴吐出法により形成する際に、液体材料を所定位置に固定する機能を奏する。
図示した3つの発光層6はそれぞれ赤色(R)、緑色(G)、及び青色(B)の3色の発光層により構成され、これら3色の発光素子3(ドット)が、有機EL表示装置100の1画素を構成している。
また、封止基板12と基板2とは図示略の接着層を介して接着されており、封止基板12及び接着層により有機EL素子3が封止されている。また、封止基板12の内面側に、封止された空間の水分を除去するための乾燥剤が配設されている。
上記構成を備えた有機EL表示装置100は、本発明に係る有機EL装置を主体として構成されていることで、発光輝度を損なうことなく低消費電力化を実現できるとともに、有機EL素子3の寿命を延ばすことができる。また、本有機EL表示装置100のごとくR,G,B各色の有機EL素子3が設けられている場合、有機EL素子3を交流駆動するか、直流駆動するかの閾値となる階調値を、各色毎に異ならせることもできる。例えば、比較的寿命が短い色種(例えば青色)の有機EL素子3については、前記閾値となる階調値を低めに設定することで、経時的な素子劣化を抑え、色バランスが崩れるのを効果的に防止する効果が得られる。またあるいは、発光色の視感度に応じて交流駆動となる階調値を異ならせてもよい。
<有機EL表示装置の各部の具体例>
以下、有機EL表示装置の具体的な構成例について図8を参照して説明する。
図8に示した有機EL表示装置100において、基板2の形成材料としては、光を透過可能な透明あるいは半透明材料、例えば、透明なガラス、石英、サファイア、あるいはポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリエーテルケトンなどの透明な合成樹脂などが挙げられる。
陽極4は、インジウム錫酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)等からなる透明電極であって光を透過可能である。正孔注入/輸送層5は、例えば、高分子系材料として、ポリチオフェン、ポリスチレンスルホン酸、ポリピロール、ポリアニリン及びこの誘導体などが好ましい構成材料として例示される。また、低分子系材料を使用する場合は、正孔注入層と正孔輸送層を積層して形成するのが好ましく、正孔注入層の形成材料としては、例えば銅フタロシアニン(CuPc)や、ポリテトラヒドロチオフェニルフェニレンであるポリフェニレンビニレン、1,1−ビス−(4−N,N−ジトリルアミノフェニル)シクロヘキサン、トリス(8−ヒドロキシキノリノール)アルミニウム等が挙げられるが、特に銅フタロシアニン(CuPc)を用いるのが好ましい。また、正孔輸送層としては、トリフェニルアミン誘導体(TPD)、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体等からなる。具体的には、特開昭63−70257号、同63−175860号公報、特開平2−135359号、同2−135361号、同2−209988号、同3−37992号、同3−152184号公報に記載されているもの等が例示されるが、トリフェニルジアミン誘導体が好ましく、中でも4,4'−ビス(N(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ)ビフェニルが好適とされる。なお、正孔輸送層または正孔注入層のいずれか一方を形成してもよい。
発光層6の形成材料としては、高分子発光体や低分子の有機発光色素、すなわち各種の蛍光物質や燐光物質などの発光物質が使用可能である。発光物質となる共役系高分子の中ではアリーレンビニレン又はポリフルオレン構造を含むものなどが特に好ましい。低分子発光体では、例えばナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、ペリレン誘導体、ポリメチン系、キサテン系、クマリン系、シアニン系などの色素類、8−ヒドロキノリンおよびその誘導体の金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエン誘導体等、または特開昭57−51781、同59−194393号公報等に記載されている公知のものが使用可能である。陰極7はカルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)やマグネシウム(Mg)、金(Au)、銀(Ag)等からなる金属電極が好ましい。
なお、陰極7と発光層6との間に、必要に応じて電子輸送層や電子注入層を設けてもよい。電子輸送層の形成材料としては、特に限定されることなく、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタンおよびその誘導体、ベンゾキノンおよびその誘導体、ナフトキノンおよびその誘導体、アントラキノンおよびその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタンおよびその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレンおよびその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリンおよびその誘導体の金属錯体等が例示される。具体的には、先の正孔輸送層の形成材料と同様に、特開昭63−70257号、同63−175860号公報、特開平2−135359号、同2−135361号、同2−209988号、同3−37992号、同3−152184号公報に記載されているもの等が例示され、特に2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、ベンゾキノン、アントラキノン、トリス(8−キノリノール)アルミニウムが好適とされる。
封止基板12としては、例えばガラス基板を用いるが、透明でガスバリア性に優れていれば例えば、プラスチック、プラスチックのラミネートフィルム、ラミネート成型基板等のガラス基板以外の部材、またはガラスのラミネートフィルム等を用いてもよい。また、保護層として紫外線を吸収する部材を用いることもできる。
図8に示す有機EL表示装置100の発光層6を含む機能層は、蒸着法の他、液滴吐出法(インクジェット法)を用いて形成することができる。液滴吐出法を用いて機能層を形成する際には、該機能層が形成されるべき領域に開口部13を有するバンク14が形成される。そして、液滴吐出装置の吐出ヘッドより、前記機能層形成用材料を含む液体材料がバンク14の開口部13に対して吐出されることにより、所定の位置に機能層が形成される。
ここで、液滴吐出装置の吐出ヘッドはインクジェットヘッドを含む。インクジェット方式としては、圧電体素子の体積変化により流動体を吐出させるピエゾジェット方式であっても、エネルギー発生素子として電気熱変換体を用いた方式であってもよい。なお、液滴吐出装置としてはディスペンサー装置でもよい。また、液体材料とは、吐出ヘッドのノズルから吐出可能な粘度を備えた媒体をいう。水性であると油性であるとを問わない。ノズル等から吐出可能な流動性(粘度)を備えていれば十分で、固体物質が混入していても全体として流動体であればよい。また、液体材料に含まれる固体物質は融点以上に加熱されて溶解されたものでも、溶媒中に微粒子として分散させたものでもよく、溶媒の他に染料や顔料その他の機能性材料を添加したものであってもよい。
<電子機器>
次に、上記実施形態の有機EL装置を備えた電子機器の例について説明する。
図9は上述した実施形態に係る有機EL表示装置を備えたモバイル型のパーソナルコンピュータ(情報処理装置)の構成を示す斜視図である。同図において、パーソナルコンピュータ1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、上述した有機EL表示装置を備えた表示部1106とから構成されている。このため、発光寿命が長く、また低消費電力の表示部を備えた電子機器を提供することができる。
なお、上述した例に加えて、他の例として、携帯電話、腕時計型電子機器、液晶テレビ、ビューファインダ型やモニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、電子ペーパー、タッチパネルを備えた機器等が挙げられる。本発明の有機EL表示装置は、こうした電子機器の表示部としても適用できる。
図1は、実施形態の有機EL装置の断面構成図。 図2は、実施形態に係る有機EL素子の回路構成図。 図3は、交流電圧波形の一例を示す図。 図4は、素子駆動部の動作フローチャート 図5は、素子駆動部の動作フローチャート。 図6は、有機EL表示装置の一例における回路構成図。 図7は、同、平面構成図。 図8は、同、部分断面構成図。 図9は、電子機器の一例を示す斜視構成図。
符号の説明
1…有機エレクトロルミネッセンス装置(有機EL装置)、2…基板、2a…表示領域、2c…非表示領域、3…有機EL素子(有機EL素子)、4…陽極、5…正孔注入/輸送層、6…発光層、7…陰極、8…発光領域、11…発光素子部、12…封止基板、13…開口部、14…バンク、116…信号処理部、116a…階調判定部、116b…階調補正部、117…電源スイッチ回路、CONT…素子駆動部、Va,Vb…バイアス電圧

Claims (6)

  1. 発光層を含む有機機能層を備えた有機EL素子と、該有機EL素子を駆動する素子駆動
    部とを備えた有機エレクトロルミネッセンス装置であって、
    前記素子駆動部は、前記有機EL素子に対して駆動電流を供給する電源及び電源線と、画像信号に応じて前記駆動電流を制御する薄膜トランジスタと、を備え、
    前記電源は直流電源と交流電源とを備え、
    前記薄膜トランジスタに入力される前記画像信号の階調値が所定値以下であるとき、前記有機EL素子は前記駆動電流として前記交流電源から交流電流が供給され、
    前記階調値が前記所定値以上であるとき、前記有機EL素子は前記駆動電流として前記直流電源から直流電流が供給されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス装置。
  2. 前記素子駆動部は、複数色の前記有機EL素子に対して、発光色毎に前記交流電流又は
    直流電流を選択的に供給することを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
  3. 前記素子駆動部は、前記有機EL素子に交流電流のみを供給する省電力駆動モードを備えていることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
  4. 前記省電力モードにおいて、
    前記素子駆動部は、前記交流電流のデューティ調整による前記有機EL素子の輝度調整
    を実行することを特徴とする請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
  5. 発光層を含む有機機能層を備えた有機EL素子と、画像信号に応じて前記有機EL素子
    に供給する駆動電流を制御する薄膜トランジスタと、を具備してなる有機エレクトロルミ
    ネッセンス装置の駆動方法であって、
    前記画像信号の階調値が所定値以下であるとき、前記有機EL素子に交流電源から前記駆動電流として交流電流を供給し、
    前記階調値が前記所定値以上であるとき、前記有機EL素子に直流電源から前記駆動電流として直流電流を供給することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス装置の駆動方法。
  6. 請求項1ないしのいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置を備え
    たことを特徴とする電子機器。
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