JP4501293B2 - 冷蔵庫 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷蔵庫の庫内に貯蔵された食品の貯蔵環境を管理する冷蔵庫に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
生鮮食料品を典型とする食品の鮮度を管理することは、食品メーカーや外食産業を問わず家庭においても重要である。しかしながら家庭における鮮度管理の方法は、食品メーカーが指定する賞味期限に基づいて日数計算を行い、光沢、色、香り等の各人の主観的な官能評価で腐敗していないかどうかで判断して管理されているのが現状である。
【0003】
こうした背景の中、食品を貯蔵する冷蔵庫を視野に入れた鮮度管理装置が提案されてきており、その一例として、特許第2875174号公報に記載されたものが知られている。
【0004】
以下、図面を参照しながら上記従来の鮮度管理装置を説明する。
【0005】
図9は、従来の鮮度管理装置の機能ブロック図である。図9において、1は鮮度管理装置であり、野菜を貯蔵する貯蔵室2と、貯蔵室2内に備えて野菜から発生するガス成分と濃度を感知して電気信号に変換する感知センサー3と、貯蔵室2内のガス環境を回復、維持させる鮮度維持装置4と、感知センサー3からの電気信号により鮮度維持装置4の制御信号を出力するマイクロプロセッサー5より構成されている。
【0006】
以上のように構成された鮮度管理装置について、以下その動作を説明する。
【0007】
使用者が貯蔵室2に野菜を収納すると、野菜は野菜自体より時間経過に従い硫化水素、メチルメルカプタン、ジメチルサルファイド、ジメチルジサルファイド等の硫化合物ガス及び還元性ガスを発生する。このようなガスは感知センサー3の表面の酸素イオンと結合して伝導電子を発生し、これが電子信号としてマイクロプロセッサー5に入力され、そして制御信号が鮮度維持装置4に送られ、鮮度維持装置4の動作を調節し、野菜の鮮度を維持するものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の構成では、貯蔵室2内に保存された野菜より発生するガス成分とその濃度が変化する時には、すでに保存された野菜は鮮度劣化が進んでいるため、鮮度劣化が生じる前に鮮度維持装置4を稼動できず、その効果が十分に発揮できないという欠点があった。また、鮮度維持装置4を稼動しても、既に野菜自体が鮮度劣化反応を細胞内で開始されると、その鮮度劣化反応の速度は速く、後追いの対応となる欠点があった。
【0009】
また、野菜より発生するガス成分や濃度の変化は、野菜の収納量の違いや野菜を買足した場合など、収納量の変化という鮮度と無関係な因子により影響を受け、鮮度維持装置4の作用で若干は低下するが抑えることはできず、そのため、実際は野菜の保存状態を報知し、一刻も早くその対象野菜を消費する手段の方が勝っているという欠点があった。
【0010】
本発明は従来の課題を解決するもので、野菜の鮮度が低下した時に、野菜より発生する特定のガス濃度の変化をセンサーで検知し、野菜の傷みが進行する前に、事前に使用者に情報提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に記載の発明は、野菜、果物等の収納物を貯蔵する野菜室と、前記野菜室内の一画に設けて前記収納物より発生するガス成分と扉開放時に野菜室外より流入するガス成分を含めた複合ガス成分の濃度変化を感知する雰囲気センサーと、野菜室内に設けた温度センサと、前記雰囲気センサーの電気的出力をもとに野菜、果物の外観状態を表示及び/又は音声報知する報知手段を設け、前記温度センサーの温度上昇度が所定値以上に急峻であるときには一時的な温度上昇と見なして、前記雰囲気センサーの電気的出力による報知を待機状態とし、所定時間後に再度判定するものであり、複合ガス成分の濃度に応じて野菜,果物の鮮度劣化環境を特定することができ、冷蔵庫を開けてその都度、保存状態を確認しなくても野菜,果物の現在の保存状態を視覚及び/又は聴覚で認識できる。
【0012】
また、野菜の保存状態の低下に相関のあるガスの濃度が所定の濃度レベルでないのに、野菜室の扉の開放や冷却されていない新たな収納物の投入などで一時的に雰囲気センサーのピークが急峻に立ち上がっても、制御手段はこれを一時的な温度影響と判断して表示手段や音声報知手段を駆動させることはなく、温度変動による誤検知を防止して、表示手段,音声報知手段の駆動精度を高めることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による冷蔵庫の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1による冷蔵庫の断面図ある。図2は、同実施の形態の冷蔵庫の雰囲気センサー素子部を表面から見た斜視図である。図3は同実施の形態の冷蔵庫の雰囲気センサー素子部を裏面から見た斜視図である。図4は、同実施の形態の冷蔵庫の要部を示す機能ブロック図である。図5は、同実施の形態の冷蔵庫の雰囲気センサーの出力電圧特性図である。
【0015】
図1から図3において、6は冷蔵庫本体であり、断熱仕切壁7によって上部に上部貯蔵区画8、下部に下部貯蔵区画9を区画形成している。10は上部貯蔵区画8内を上下に仕切る仕切板であり、上部に冷蔵室11、下部に野菜、果物などを貯蔵する野菜室12を区画形成している。12aは野菜室専用の冷却板で、上部貯蔵区画8を完全に上下に分割し、冷気の流れを分断している。12bは冷却板12aを下方より覆って結露滴下を受ける通気孔を有する露受け板である。13は冷蔵室11の前面開口部に取り付けたヒンジ式の扉、14は野菜室12の前面開口部に取り付けて収納容器15を一体に引き出す引き出し式の扉である。
【0016】
16は冷蔵庫本体6の下部後方に設けた冷凍サイクルの圧縮機、17は上部貯蔵区画8内に設けた第1の冷却器、18は第1の冷却器17で生じた冷気を強制通風する第1の送風機、19は下部貯蔵区画9内に設けた第2の冷却器、20は第2の冷却器19で生じた冷気を強制通風する第2の送風機である。
【0017】
また、21は仕切板10の前方に形成した野菜室12への給気口、22は仕切板10の後方に形成した野菜室12からの排気口であり、23は野菜室12内において給気口21から排気口22に通じる通気路である。24は野菜室12内の上部に配置された雰囲気センサーである。
【0018】
雰囲気センサー24の素子部34は、表面を基板25の表面上に形成した電極26と、電極26上に形成した感知層27により構成し、裏面には面上のヒーター28を設けている。
【0019】
感知層27は例えば酸化錫を主体とした材料を焼結して形成され、アンモニア系、アルコール系、アルデヒド系、硫黄系ガスなどを主体とした還元性ガスが感知層27の表面に吸着した空気中の酸素を減少させ、電気抵抗を低下させることによって還元性ガスの濃度変化を検出するよう構成されている。
【0020】
図4において、29はマイクロコンピューターからなる制御手段であり、入力側にアンモニア系、アルコール系、アルデヒド系、硫黄系ガスなどの複合ガスの濃度および温度変化により電気抵抗を変化する雰囲気センサー24からの電気信号が入力され、出力側には表示手段30と音声合成回路およびスピーカーなどで構成される音声報知手段31が接続されている。
【0021】
また、表示手段30は液晶パネルなどで構成されて冷蔵室の扉13の表面に取り付けられている。
【0022】
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作を図5に基づいて説明する。
【0023】
まず、新鮮な野菜を野菜室12に収納した時においては、野菜室12の収納容器15内に収納された野菜、果物などの収納物から発生するガスによって野菜室12内は、アルコール系、アルデヒド系などの還元性ガスが低濃度で存在している。
【0024】
そして、圧縮機16のON/OFFや、野菜室,冷蔵室の扉14,13の開閉による外気の侵入や、第1の冷却器17の除霜による温度変動で雰囲気センサー24の出力電圧は温度の上昇時にピークを持った波形を繰り返しながら、その時点の還元性ガスの濃度に応じたレベルで推移している。
【0025】
次に、x時点において、たとえば野菜室12内の野菜が傷んでくると、野菜室12内には野菜の保存状態が低下したときに野菜より発生するアンモニア、エタノール、アセトアルデヒド、ジメチルサルファイドなどの還元性ガスが充満する。
【0026】
このため、雰囲気センサー24の感知層27を形成する酸化錫の表面に吸着した空気中の酸素が上述した還元性ガスによって減少し、雰囲気センサー24の電気抵抗を低下させ出力電圧が増加した還元ガスの濃度に応じて上昇する。
【0027】
そして、上昇後の出力電圧は新鮮な野菜を保存している時と同様に上述の種々の温度変動要因に合わせて温度上昇のピークを繰り返した波形で推移する。
【0028】
そこで、雰囲気センサー24の出力電圧上昇直前の新鮮な野菜収納時のピークa時点と出力電圧上昇直後のピークb時点の出力電圧上昇幅yの大きさが予め定めた所定の出力電圧上昇幅より大きければ、制御手段29が還元性ガス濃度が高く、雰囲気温度も高くなって野菜室12内に収納された収納物の鮮度を劣化させる環境になっていると判断し、制御手段29から表示手段30に表示情報が送られ、液晶パネルに例えばイメージ図やアニメーションなどによって野菜室12内の野菜の保存状態が低下したことを使用者に目視で認識させる。
【0029】
また、同時に制御手段29から音声報知手段31に音声情報が送られ、野菜室12内の野菜の保存状態が低下したことを使用者に音声で報せる。
【0030】
以上、これらのことにより本実施の形態によると、従来例のように野菜室12の収納物自体からその鮮度の劣化の進行に伴い発生する硫化合物ガス及び還元性ガスなどの濃度を検知して鮮度維持装置を駆動させるものとは異なり、野菜の鮮度が低下した時に、野菜より発生する特定のガス濃度の変化を雰囲気センサー24で検知し、野菜の傷みが進行する前に、事前に冷蔵庫の表示手段30や音声報知手段31で報知することで、使用者にとって経済的な食材貯蔵管理が行える。
【0031】
また、表示手段30を経時的に計測された雰囲気センサー24の出力電圧の絶対値による判定とすれば、たとえば野菜室12内に収納物が少ない場合に検知レベルに到達しにくく必要な場合にもシステムが作動しないことが考えられるが、本実施の形態のように出力電圧のピーク値の相対差をもって判定することにより、収納物の量によらず表示手段30を最適な時期に精度よく駆動させることができる。
【0032】
また、揮発性が高く比重の小さい還元性ガスの検知をよりよくするために雰囲気センサー24は野菜室12内の天面付近に設けられ、且つ、野菜室12内を対流する通気路中に配置することによって対象ガスを効率よく感知することができる。雰囲気センサー24を野菜室12の天面の構成体、即ち冷却板12aや露受け板12bなどより若干下方に突出させればなお検知精度が高まる。
【0033】
また、出力電圧のピーク値の相対差を多段階的に分割し、各段階時期にあった野菜の保存状態を表示手段30で報知することで、野菜室12内の保存状態が一目でわかり、使用者に対して冷蔵庫内の収納物の使い方への警鐘をすることができる。
【0034】
また、野菜の保存状態で野菜が外観上傷んでいる時の出力電圧のピーク値の相対差に到達した際に、表示手段30で報知することで、野菜室12の扉14を開けずに野菜の保存状態が認識でき、また傷んでいる状態が使用可能な場合、その野菜を優先して使用することで、野菜を無駄に捨てる必要もなくなる。
【0035】
また、その際野菜が傷む時に特に顕著に発生するアルコール系、硫黄系ガス成分の濃度変化を検知する雰囲気センサー24を用いることで、より精度よく表示手段での報知をおこなうことができる。
【0036】
また、野菜の保存状態で野菜が外観上腐りかけまたは腐っている時の出力電圧のピーク値の相対差に到達した際に、表示手段30で報知することで、野菜室12の扉14を開けずに野菜の保存状態が認識でき、すぐに腐っている野菜を取り除くことで、その他の新鮮な野菜が傷んでいくことを防止でき、野菜を無駄に捨てる必要もなくなる。また、腐敗のもとを早く取り除くことで冷蔵庫内に臭いが充満して使用者に不快感を与えることがない。
【0037】
また、その際野菜の腐敗時に特に顕著に発生するアンモニア系、硫黄系ガス成分の濃度変化を検知する雰囲気センサー24を用いることで、より精度よく表示手段30,音声報知手段31での報知をおこなうことができる。
【0038】
なお、表示手段30,音声報知手段31はいずれか一方の適用でもよいが、より使用者に対する啓蒙をは図る目的で、双方備えてもよい。
【0039】
(実施の形態2)
図6は、本発明の実施例2による冷蔵庫の断面図ある。図7は、同実施例による冷蔵庫の要部を示す機能ブロック図である。図6、図7において、32は野菜室12内の一画に設けられた温度センサーであり、制御手段29に野菜室12内の温度情報を入力するよう構成され、たとえば温度センサー32の温度上昇度が所定値以上に急峻であるときには一時的な温度上昇と見なして、雰囲気センサー24の出力電圧が所定値以上に上昇しても表示手段30をすぐには駆動させず待機状態とし、所定時間後の経過により再度判定するように構成されている。
【0040】
以上のような構成において、野菜の保存状態の低下に相関のあるガスの濃度が所定の濃度レベルでないのに、野菜室の扉14の開放や冷却されていない新たな収納物の投入などで一時的に雰囲気センサー24のピークが急峻に立ち上がっても、制御手段29はこれを一時的な温度影響と判断して表示手段30や音声報知手段を駆動させることはなく、温度変動による誤検知を防止して、表示手段30,音声報知手段31の駆動精度を高めることができる。
【0041】
また、雰囲気センサー24の電気的出力値は計測一定時間の平均値として検知する制御を設けることにより、冷蔵庫内の霜取り時の昇温などの温度変動による雰囲気センサー24のピークによる誤検知を防止して、表示手段30,音声報知手段31の駆動精度を高めることができる。
【0042】
また、野菜室の扉14の開閉時は雰囲気センサー24の出力値を検知しない制御を設けることにより、扉開閉時の温度変動による雰囲気センサー24のピークによる誤検知を防止して、表示手段30,音声報知手段31の駆動精度を高めることができる。
【0043】
なお、本実施の形態では扉開閉の検出は野菜室の扉14を対象としたが、雰囲気センサー24へ温度影響度に応じて冷蔵室の扉13や他の室の扉を検出対象として加えてもよい。
【0044】
(参考例1)
図8は、本発明の実施の形態3による雰囲気センサーの詳細を示す断面図である。24は雰囲気センサーであり、開口部には吸湿部材33が取り付けられている。この吸湿部材33により雰囲気センサー24の素子には、空気中の水分は付着せず、ガス成分のみが付着するようになる。
【0045】
以上のような構成において、野菜室の扉14の開放や水分蒸散の多い新たな収納物の投入などで一時的に雰囲気センサー24の近傍の湿度が上昇しても、吸湿部材33で空気中の水分を除去するため、出力値のピークが急峻に立ち上がることなく、湿度変動による誤検知を防止して、表示手段30,音声報知手段31の駆動精度を高めることができる。
【0046】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に記載の発明は、野菜、果物等の収納物を貯蔵する野菜室と、前記野菜室内の一画に設けて前記収納物より発生するガス成分と扉開放時に野菜室外より流入するガス成分を含めた複合ガス成分の濃度変化を感知する雰囲気センサーと、野菜室内に設けた温度センサと、前記雰囲気センサーの電気的出力をもとに野菜、果物の外観状態を表示及び/又は音声報知する報知手段を設け、前記温度センサーの温度上昇度が所定値以上に急峻であるときには一時的な温度上昇と見なして、前記雰囲気センサーの電気的出力による報知を待機状態とし、所定時間後に再度判定するので、複合ガス成分の濃度に応じて野菜,果物の鮮度劣化環境が特定され、冷蔵庫を開けなくても野菜,果物の現在の保存状態を視覚及び/又は聴覚で認識することができ、収納物を野菜室の奥で腐らせることなく経済的に保存することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による冷蔵庫の実施の形態1の断面図
【図2】 同実施の形態の冷蔵庫の雰囲気センサー素子部の表面斜視図
【図3】 同実施の形態の冷蔵庫の雰囲気センサー素子部の裏面斜視図
【図4】 同実施の形態の冷蔵庫の機能ブロック図
【図5】 同実施の形態の冷蔵庫の雰囲気センサーの特性図
【図6】 本発明による冷蔵庫の実施の形態2の断面図
【図7】 同実施の形態の冷蔵庫の機能ブロック図
【図8】 本発明による冷蔵庫の参考例1の雰囲気センサーの断面図
【図9】 従来の鮮度管理装置の機能ブロック図
【符号の説明】
6 冷蔵庫本体
12 野菜室
14 扉
24 雰囲気センサー
29 制御手段
30 表示手段
31 音声報知手段
32 温度センサー
33 吸湿部材
Claims (1)
- 野菜、果物等の収納物を貯蔵する野菜室と、前記野菜室内の一画に設けて前記収納物より発生するガス成分と扉開放時に野菜室外より流入するガス成分を含めた複合ガス成分の濃度変化を感知する雰囲気センサーと、野菜室内に設けた温度センサと、前記雰囲気センサーの電気的出力をもとに野菜、果物の外観状態を表示及び/又は音声報知する報知手段を設け、前記温度センサーの温度上昇度が所定値以上に急峻であるときには一時的な温度上昇と見なして、前記雰囲気センサーの電気的出力による報知を待機状態とし、所定時間後に再度判定することを特徴とする冷蔵庫。
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