JP4501013B2 - ポリオールの精製方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリオールの精製方法、詳しくは、ポリウレタン樹脂を分解することによって得られる分解回収ポリオールを精製する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリオールは、水酸基を少なくとも2個以上有する化合物の総称であり、例えば、ポリウレタン樹脂の製造に使用されるなど、各種の工業用原料として広く使用されている。
【0003】
一方、近年、地球環境を保護する観点より、各種のプラスチック製品をリサイクルすることが種々検討されており、ポリウレタン樹脂も、その出発原料であるポリオールと、出発原料であるポリイソシアネートの中間原料であるポリアミンとに分解して、次いで、分解により生成したポリオールとポリアミンとを分離して回収し、そのそれぞれを再使用することが検討されつつある。
【0004】
このようにして得られる分解回収ポリオールは、分離回収時にポリアミンが混在するため、このような分解回収ポリオールを、例えば、ポリウレタン樹脂の原料として再使用した場合には、混在するポリアミンがポリオールとポリイソシアネートとの正常な反応を阻害して、不良品の発生を招くなどの要因となることがある。
【0005】
そのため、例えば、特開昭55−86814号公報では、ポリウレタン樹脂を分解してポリオールとポリアミンとに分離回収する方法において、ポリウレタン樹脂の分解生成物中に、塩酸ガスを多段階で吹き込み、各段階ごとに生じた沈殿を濾別することによって、ポリオールからポリアミンを除去し、これによって、良好な品質のポリオールを得ることが提案されている。
【0006】
また、特開昭57−80438号公報では、ポリウレタン樹脂を分解してポリオールとポリアミンとに分離回収する方法において、ポリウレタン樹脂の分解生成物を、所定の条件下、管状コイルエバポレータ中にスプレーすることにより、大部分のポリアミンを除去し、次いで、塩酸ガスを1段階で吹き込むことにより、残りのポリアミンを沈殿させ、これを濾別することにより良好な品質のポリオールを得ることが提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の方法では、いずれも、ポリアミンを塩酸塩として沈殿させ濾別するようにしているが、ポリアミンの塩酸塩は、結晶化しにくく濾別が困難である。また、塩酸はウレタン化反応における強い負触媒として作用するので、得られたポリオール中に少しでも塩酸が残存すると、再使用時において、ウレタン化反応を阻害するおそれがある。さらに、濾別されたポリアミンの塩酸塩を処分する場合においては、塩素に起因する有害物質の発生も考えられ、環境汚染の原因となるおそれもある。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑みなされたもので、その目的とするところは、ポリアミンを含有するポリオールから、ポリアミンを簡単かつ効率よく除去することができ、品質の良好なポリオールを得ることができる、ポリオールの精製方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のポリオールの精製方法は、ポリアミンを含有するポリオールに、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸および無水マレイン酸からなる群から選択される少なくとも1種の有機ジカルボン酸またはその無水物を加えた後、析出物を除去するポリオールの精製方法であって、ポリアミンを含有するポリオールが、ポリウレタン樹脂を分解することによって得られる分解回収ポリオールであり、液状とされたアミン化合物中にポリウレタン樹脂を加え、120〜220℃に加熱するアミノリシスにより、ポリウレタン樹脂を流動化する流動化工程、流動化されたポリウレタン樹脂を加水分解する加水分解工程、および加水分解により生成した分解生成物を分離回収する分離回収工程を備えるポリウレタン樹脂の分解回収方法の、分離回収工程に適用されること特徴としている。
【0010】
この精製方法において、ポリオールとしては、ポリエーテルポリオールであることが好ましい。また、有機ジカルボン酸またはその無水物が、シュウ酸であることが好ましい。
【0011】
また、ポリアミンのアミノ基1当量あたり有機ジカルボン酸またはその無水物のカルボキシル基が0.3〜1.05当量となるような割合で、ポリアミンを含有するポリオールに有機ジカルボン酸またはその無水物を加えることが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の精製方法の対象となるポリアミンを含有するポリオールは、ポリオール中にポリアミンが混在しているものであって、例えば、ポリオールの不純物としてポリアミンが混入したものや、例えば、ポリウレタン樹脂を分解して得られるポリオールとポリアミンとの混合物、あるいは、分解して得られるポリオールとポリアミンとの混合物から、粗ポリオールと粗ポリアミンとに粗分離した後の粗ポリオールなどの分解回収ポリオールなどが挙げられる。これらのうち、本発明の精製方法は、特に分解回収ポリオールの精製に有用である。
【0014】
ここで、ポリオールとは、水酸基を少なくとも2個以上有する化合物であって、例えば、ポリウレタン樹脂などの製造に通常使用される、低分子量ポリオールや高分子量ポリオールなどが挙げられる。
【0015】
低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、キシレングリコールなどの低分子量ジオール、例えば、グリセリン、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパンなどの低分子量トリオール、例えば、D−ソルビトール、キシリトール、D−マンニトール、D−マンニットなどの水酸基を4個以上有する低分子量ポリオールなどが挙げられる。
【0016】
また、高分子量ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、エポキシポリオール、天然油ポリオール、シリコンポリオール、フッ素ポリオール、ポリオレフィンポリオールなどが挙げられる。
【0017】
これらポリオールのうち、高分子量ポリオール、とりわけ、数平均分子量が800〜20000程度の高分子量ポリオールが、分解回収ポリオールとして得られやすく、なかでも、ポリエーテルポリオールが得られやすい。
【0018】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、活性水素基を有する開始剤に、エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加反応させることによって得られる、ポリエチレングリコールおよび/またはポリプロピレングリコール(これらのランダムおよび/またはブロック共重合体を含む)や、例えば、テトラヒドロフランなどの開環重合によって得られるポリテトラメチレンエーテルグリコールなどが挙げられる。
【0019】
また、ポリオールに含有されるポリアミンは、アミノ基を少なくとも2個以上有する化合物であって、例えば、本発明の精製方法が分解回収ポリオールの精製に用いられる場合には、ポリウレタン樹脂の分解によってポリオールとともに生成されるポリイソシアネートの中間原料としてのポリアミンが挙げられる。
【0020】
このようなポリアミンとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の中間原料であるジアミノジフェニルメタン(MDA)、トリレンジイソシアネート(TDI)の中間原料であるトリレンジアミン(TDI)などの芳香族ジアミン、例えば、キシリレンジイソシアネート(XDI)の中間原料であるキシリレンジアミン(XDA)、ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン(TMXDI)の中間原料であるビス(1−アミノ−1−メチルエチル)ベンゼン(TMXDA)などの芳香脂肪族ジアミン、例えば、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)の中間原料である3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン(IPDA)、4,4' −メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)の中間原料である4,4' −メチレンビス(シクロヘキシルアミン)(H12MDA)、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6 XDI)の中間原料であるビス(アミノメチル)シクロヘキサン(H6 XDA)などの脂環族ジアミン、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)の中間原料であるヘキサメチレンジアミン(HDA)などの脂肪族ジアミン、および、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)の中間原料であるポリメチレンポリフェニルポリアミンなどが挙げられる。
【0021】
次に、本発明の精製方法をウレタン樹脂の分解回収方法に適用して、分解回収されるポリオールを精製する方法について説明する。
【0022】
このウレタン樹脂の分解回収方法は、ウレタン樹脂を流動化する流動化工程、流動化されたウレタン樹脂を加水分解する加水分解工程、および加水分解により生成した分解生成物を分離回収する分離回収工程を備えており、本発明の精製方法は、このような分解回収方法の分離回収工程に適用される。なお、図1には、このような分解回収方法を工業的に実施する場合の一例を示しており、以下、この図1を参照しながら説明する。ただし、図1は概略図であって、ポンプや加熱装置などの附帯手段を省略して示している。
【0023】
この分解回収方法の対象となるポリウレタン樹脂は、主として、上記したポリオールとポリイソシアネートとの反応により得られる合成高分子化合物であって、例えば、軟質、半硬質あるいは硬質ポリウレタンフォーム、注型あるいは熱可塑ポリウレタンエラストマーなどが挙げられる。より具体的には、これらを、各種の家庭用または産業用の製品として成形加工する際に生ずる切断片および切屑や、これらの製品の使用後の廃品などが対象とされる。なお、これらの製品中に、例えば、繊維、皮革、合成皮革、金属などが多少含まれていても差し支えはないが、処理しやすいように、適宜、所定の大きさに、裁断または粉砕しておくことが好ましい。
【0024】
まず、流動化工程では、投入手段としてのホッパ1から投入されたポリウレタン樹脂を流動化槽2内において流動化させる。流動化させる方法としては、ポリウレタン樹脂にアミン化合物を作用させるアミノリシスが用いられる。
【0025】
アミノリシスでは、液状とされたアミン化合物中に、ポリウレタン樹脂を加え、約120〜220℃、好ましくは、150〜200℃に加熱して、ポリウレタン樹脂を流動化させるようにする。加熱温度がこれより低いと、流動化に時間がかかる場合があり、一方、加熱温度がこれより高いと、アミン化合物の分解や重合が起こり流動化できない場合がある。また、このアミノリシスにおいて用いられるアミン化合物は、ポリウレタン樹脂の加水分解後に生成するポリアミンであることが好ましい。このようなポリアミンを還流して使用すれば、加水分解後の分離回収が容易となり、またコストの低減を図ることができる。さらに、アミン化合物には、ポリオール化合物を配合してもよい。ポリオール化合物を配合することによって、系中の粘度を低下させて、均一に流動化させることができる。アミン化合物とポリオール化合物とを併用する場合の配合割合は、アミン化合物1重量部に対し、ポリオール化合物が0.5〜5重量部の範囲であることが好ましい。ポリオール化合物の配合割合がこれより高いと、ポリウレタン樹脂が良好に流動化しない場合がある。また、用いられるポリオール化合物は、上記と同様の理由により、ポリウレタン樹脂の加水分解後に生成するポリオールであることが好ましい。
【0026】
より具体的には、図1に示すように、後述する脱水槽6と分離槽7との途中から、流動化槽2に接続する還流ライン9を設けて、ポリウレタン樹脂の加水分解後により生成するポリアミンおよびポリオールの混合物を流動化槽2内に還流することによって、アミノリシスを行なうようにすればよい。なお、分離槽7の下流側のポリアミン回収ラインから流動化槽2に接続する還流ライン10を設けて、ポリアミンのみを還流するようにしてもよく、またはこれら還流ライン9および10を併用するようにしてもよい。
【0027】
このようにして流動化されたポリウレタン樹脂は、次いで、加水分解工程において、加水分解される。なお、流動化工程において流動化されたポリウレタン樹脂中に繊維や金属などが混在している場合には、図1には示していないが、必要により濾過手段などを用いて、これら繊維や金属などを除き、その後に、加水分解工程に移行することが好ましい。
【0028】
加水分解は、加水分解槽3内において、例えば、給水槽4から供給される超臨界水または高温高圧水を用いて、200〜400℃、好ましくは、240〜300℃で、この温度域で水が液状を保ち得る以上の圧力下において行なわれる。この温度より低いと、分解速度が遅い場合があり、一方、この温度より高いと、生成するポリオールあるいはポリアミンの分解または副反応が生じる場合がある。
使用される水の重量は、例えば、流動化されたポリウレタン樹脂1重量部あたり、0.3〜10.0重量部(以下「加水比」という。)であることが好ましく、加水比が、0.3〜5.0であることがさらに好ましい。加水比がこれより低いと、分解が不完全となる場合があり、一方、加水比がこれより高いと、エネルギーロスが大きく不経済となる場合がある。なお、加水分解時に、少量のアルカリ金属水酸化物やアンモニアなどを触媒として用いてもよい。
【0029】
そして、この加水分解により、流動化されたポリウレタン樹脂は、その出発原料であるポリオールと、出発原料であるポリイソシアネートの中間原料であるポリアミンとに分解される。
【0030】
次いで、得られた分解生成物を分離回収工程において、分離および回収するのであるが、その前に、加水分解に使用された水、および加水分解により生成した炭酸ガスを除去するために、脱水工程を備えることが好ましい。脱水工程における脱水および脱ガスは、脱水槽6内において、例えば、単蒸留、フラッシュ蒸留、減圧蒸留、吸着、乾燥など公知の方法を用いて行なうことができる。好ましくは、フラッシュ蒸留が用いられる。フラッシュ蒸留では、加水分解工程において高圧となっている水および炭酸ガスを、圧力調節弁5などを用いて、大気圧下に開放するのみの簡易な操作により、水および炭酸ガスを減圧蒸発させることができる。
【0031】
次いで、分離回収工程において、水および炭酸ガスが除去されたポリオールとポリアミンとの混合物から、ポリオールとポリアミンとのそれぞれに分離して回収する。この分離回収工程において、本発明の精製方法が適用される。
【0032】
分離回収工程は、ポリオールとポリアミンとの混合物から、本発明の精製方法を用いて直接ポリオールを単離精製してもよいが、好ましくは、まず、分離工程において、粗ポリオールと粗ポリアミンとに粗分離し、得られた粗ポリオールを本発明の精製方法を用いて精製することが好ましい。
【0033】
分離工程におけるポリオールとポリアミンとの粗分離は、分離槽7内において、例えば、蒸留、抽出、遠心分離、吸着、乾燥など公知の方法を用いて行なうことができる。高分子量ポリオールを回収する場合には、蒸留が好ましく用いられる。蒸留によれば、軽沸分として粗ポリアミンを、重沸分として粗ポリオールを、それぞれ効率よく分離できる。
【0034】
そして、精製工程では、精製槽8内において、本発明の精製方法を用いて、粗ポリオール、つまり、ポリアミンを含有するポリオールからポリアミンを除去する。
【0035】
この精製方法は、ポリアミンを含有するポリオールに、有機ジカルボン酸またはその無水物を加えることにより、ポリアミンを有機ジカルボン酸の塩として析出させ、次いで、この析出物を除去することにより行なわれる。
【0036】
この精製方法において用いられる有機ジカルボン酸またはその無水物としては、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、無水マレイン酸が挙げられる。好ましくは、シュウ酸および無水マレイン酸が挙げられ、さらに好ましくは、シュウ酸が挙げられる。また、有機ジカルボン酸またはその無水物を加える量は、ポリアミンのアミノ基1当量に対して、有機ジカルボン酸またはその無水物のカルボキシル基が0.3〜1.05当量、好ましくは、0.5〜1.03当量、さらに好ましくは、0.7〜1.01当量となるような割合であることが好ましい。この当量より少ないと、塩が析出しにくく、または必要な量のポリアミンが析出せずポリアミンを完全に除去できない場合がある。一方、この当量より多いと、精製後のポリオールに有機ジカルボン酸またはその無水物が残存して、品質の良いものが得られない場合がある。また、塩を析出させるには、窒素雰囲気下で、50〜140℃に加熱することが好ましい。
【0037】
そして、析出物を、濾過、遠心分離など公知の方法により除去する。好ましくは、濾過が用いられる。濾過によれば、簡易な装置により、連続的に除去することができる。
【0038】
このように精製して得られたポリオールは、ポリアミンがほぼ完全に除去されており、品質の高いポリオールとして、各種の分野において再使用することができる。すなわち、本発明の精製方法では、有機ジカルボン酸またはその無水物を用いているので、塩酸を用いた場合に比べて、容易に塩を結晶化させて析出させることができるため、ポリアミンを簡単かつ効率よく除去して、品質の高いポリオールを得ることができる。しかも、有機ジカルボン酸またはその無水物は、塩酸に比べるとそれほどウレタン化反応を阻害するものではないので、再使用時において、ウレタン化反応を阻害するおそれも少なく、さらに、除去されたポリアミンの塩を処分する場合においても、塩素のように有害物質が発生する可能性も少なく、環境汚染の原因となるおそれも少ない。
【0039】
【実施例】
以下に実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。
【0040】
流動化工程:
温度計、撹拌機及び窒素ガス導入管を備えた500mlの4つ口フラスコ中に、トルイレンジアミン50gと、ポリプロピレントリオール(数平均分子量3000)50gとを仕込み、外部から加熱して170℃に昇温した。この液中に、トリレンジイソシアネート(タケネート80:武田薬品工業(株)製)とポリプロピレントリオール(数平均分子量3000)とを用いて発泡させた密度25kg/m3 の軟質ポリウレタンフォームの裁断片30gを加え、同温度で1時間撹拌してフォームを完全に流動化(可溶化)させた。この液を25℃まで冷却し、粘度を測定したところ約10000mPaであった。
【0041】
加水分解工程:
次いで、温度計および圧力計を備えた内容積200mlのオートクレーブ中に、得られたフォームの溶解液50gと純水50gとを仕込み、窒素ガスで置換後外部から加熱し、270℃まで昇温することによって加水分解を行なった。この時、内圧は68kg/m2 Gを示した。この温度で20分間放置したがこれ以上の昇圧は認められなかった。室温まで冷却後、得られた加水分解生成物をGPCにより分析した結果、トリレンジアミン(TDA)とポリプロピレントリオール(数平均分子量3000)とに分解されていることが確認された。
【0042】
分離工程:
得られた加水分解生成物において、ポリプロピレントリオール(数平均分子量3000)からTDAを除去するために減圧単蒸留を行なった。すなわち、まず、110℃で水を完全に留去した後、90℃の冷却水を流した蒸留装置に、加水分解生成物を仕込み、15torrに減圧した後に昇温を行った。先に低沸分が留去した後、塔温が155℃に達したときに透明液体が留出した。塔温が下がり始め液が留出しなくなったところで単蒸留を終了した。残渣のTDAの濃度を、0.1mol/l過塩素酸・酢酸溶液で電位差滴定により測定すると、TDAが2.0重量%まで留去されたことが確認された。
【0043】
精製工程:
さらに、この単蒸留の残渣分を、4つ口フラスコに入れ70℃まで昇温した後、表1に示す実施例1〜4および比較例1〜5の種々の酸を、TDAのアミノ基1当量に対して、0.5および/または1.0倍当量添加した。その後、窒素ガスを吹き込みながら、徐々に昇温し120℃で脱水を行ない、1時間後に反応を終了して70℃まで降温した後、300メッシュの金網で沈殿物を濾別した。
【0044】
【表1】
【0045】
表1に示すように、酢酸、ギ酸、無水酢酸は沈殿物を生じなかったので、TDAを系中から除去することができなかった。
【0046】
シュウ酸水溶液、無水マイレン酸、6mol/lの塩酸は、白濁し塩が析出した。しかし、6mol/lの塩酸は塩が析出したものの,その粒子が非常に細かく、300メッシュの金網では濾別がほとんどできなかった。なお、10000rpm、10分間の遠心分離も試みたが、沈降する塩はほとんど得られなかった。これに対し、シュウ酸水溶液および無水マイレン酸を加えたものでは、塩として沈殿物が析出し、またその粒径が大きいため簡単に濾別することができた。
【0047】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明のポリオールの精製方法は、有機ジカルボン酸またはその無水物を用いているので、塩酸を用いた場合に比べて、容易に析出物を生成させることができるため、ポリアミンを簡単かつ効率よく除去して、品質の高いポリオールを得ることができる。しかも、有機ジカルボン酸またはその無水物は、塩酸に比べるとそれほどウレタン化反応を阻害するものではないので、たとえ残存しても、ポリウレタン樹脂の原料として良好に再使用でき、さらには、除去された析出物を処分する場合においても、塩素のように有害物質が発生する可能性も少なく、環境汚染の原因となるおそれも少ない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポリオールの精製方法が適用される、ポリウレタン樹脂の分解回収方法を工業的に実施するための装置の概略図である。
【符号の説明】
2 流動槽
3 加水分解槽
7 分離槽
8 精製槽
Claims (4)
- ポリアミンを含有するポリオールに、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸および無水マレイン酸からなる群から選択される少なくとも1種の有機ジカルボン酸またはその無水物を加えた後、析出物を除去するポリオールの精製方法であって、
ポリアミンを含有するポリオールが、ポリウレタン樹脂を分解することによって得られる分解回収ポリオールであり、
液状とされたアミン化合物中にポリウレタン樹脂を加え、120〜220℃に加熱するアミノリシスにより、ポリウレタン樹脂を流動化する流動化工程、
流動化されたポリウレタン樹脂を加水分解する加水分解工程、および
加水分解により生成した分解生成物を分離回収する分離回収工程
を備えるポリウレタン樹脂の分解回収方法の、分離回収工程に適用されることを特徴とする、ポリオールの精製方法。 - ポリアミンを含有するポリオールが、ポリエーテルポリオールであることを特徴とする、請求項1に記載のポリオールの精製方法。
- 有機ジカルボン酸またはその無水物が、シュウ酸であることを特徴とする、請求項1または2に記載のポリオールの精製方法。
- ポリアミンを含有するポリオールに、有機ジカルボン酸またはその無水物を、ポリアミンのアミノ基1当量あたり有機ジカルボン酸またはその無水物のカルボキシル基が0.3〜1.05当量となるような割合で加えることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のポリオールの精製方法。
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