JP2005008709A - ポリウレタンのフェノール類による分解および分解生成物の回収方法 - Google Patents
ポリウレタンのフェノール類による分解および分解生成物の回収方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】容易かつ高効率にポリウレタンの分解を行い、かつ、分解生成物のポリオール成分とイソシアネート成分を、ケミカルリサイクルの原料として回収すること。
【解決手段】ポリウレタンを化学的に分解してポリウレタンの原料であるポリオール類とジイソシアネートを回収するに際し、該ジイソシアネートの少なくとも一部分をジイソシアネートのフェノール類、好ましくはクレゾールによるブロック化生成物として回収することを特徴とするポリウレタンの分解回収方法。150℃以上260℃未満のフェノール類、必要に応じ該フェノール類とメタノールの混合溶媒を用いてポリウレタンを分解する。ポリウレタンを化学的に分解する際の加熱方法として、マイクロ波加熱を利用することができる。ポリウレタンを化学的に分解する際の触媒として、三級アミン類あるいは有機スズ触媒を用いる。
【選択図】 なし
【解決手段】ポリウレタンを化学的に分解してポリウレタンの原料であるポリオール類とジイソシアネートを回収するに際し、該ジイソシアネートの少なくとも一部分をジイソシアネートのフェノール類、好ましくはクレゾールによるブロック化生成物として回収することを特徴とするポリウレタンの分解回収方法。150℃以上260℃未満のフェノール類、必要に応じ該フェノール類とメタノールの混合溶媒を用いてポリウレタンを分解する。ポリウレタンを化学的に分解する際の加熱方法として、マイクロ波加熱を利用することができる。ポリウレタンを化学的に分解する際の触媒として、三級アミン類あるいは有機スズ触媒を用いる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は廃ポリウレタンのケミカルリサイクルに関するものである。より詳細には、本発明は、各種の産業製品として用いられるポリウレタンを化学的に分解しポリウレタンの原料であるポリオール類とジイソシアネートを回収する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリマーのリサイクル技術は、大別してマテリアルリサイクル、サーマルリサイクル、ケミカルリサイクルの3つに分けられる。マテリアルリサイクルは簡便な反面、ポリマーの性状の悪化や被リサイクル物のさらなるリサイクルに問題がある。サーマルリサイクルは非常に汎用性の高い方法であるが、焼却を基本とするため環境への負荷が大きい。ケミカルリサイクルは他の二つのリサイクル技術に比べると、処理コストが高いものの、究極のリサイクル方法であるため、この方法によるリサイクルが強く望まれている。
【0003】
最もよく使用されているポリマーの一つであるポリウレタンのリサイクルについて種々の発明がなされている。ポリウレタンは、ジイソシアネートと2価ポリオールによる重付加反応で得られるポリマーで、主鎖にウレタン結合(−NH−COO−)を含む。合成時にジイソシアネートとポリオールの置換基を適当に選択して主鎖間を架橋することにより、様々な性質を持たすことができるため、その製品はウレタンフォーム、ウレタンゴム、ウレタン樹脂など多岐に渡る。
【0004】
このように、ポリウレタンは非常に有用で汎用な物質であるが、リサイクルという観点からは、その多様性の問題に加え、熱硬化性樹脂であるためにリサイクルしようとすると成形加工が自由にできず、また、分子中に窒素原子を含むため焼却を行うとシアンや窒素酸化物などの有害ガスが発生する。ポリウレタンの重量生産量はポリマー全生産量の約5%に過ぎないが、ポリウレタン製品の多くが発泡体として供給されるために、体積生産量割合は約30%にも達する。廃ポリウレタンのケミカルリサイクルを行うことは、リサイクルのみならず減容化としての意味も大きい。
【0005】
ポリウレタンに関しては、ケミカルリサイクル法としてグリコール分解法、アミン分解法、加水分解法などが知られている。これらの方法では、分解混合物として、ポリオールとアミンの混合物が得られ、それをさらにアルキレンオキシドなどの付加によって、アミンをポリオールに変換し、被リサイクル原料の全てをポリオールの原料としてリサイクルする。しかし、分解で得られたポリオールは、原料として用いられているポリオールとは大幅に性質が異なることや、その性質が被リサイクル原料の成分に依存して大きく異なること、ポリウレタンの原料として必要なポリオール成分とイソシアネート成分の二成分うち、ポリオール成分のみを供給することによる需給のアンバランスなどが問題となってしまう。
【0006】
加水分解法としてポリウレタン樹脂を、高温高圧水または超臨界水を用いて加水分解する方法が提案されている(特許文献1、2)。このような方法によれば、出発原料としてのポリオール化合物や、出発原料としてのイソシアネート化合物の中間体であるポリアミン化合物として、回収することができるので、リサイクルには有利となる。しかし、硬質ポリウレタンフォームを、高温高圧水または超臨界水を用いて加水分解すると、ポリメチレンポリフェニルポリアミンなどの複雑なアミン化合物が生成するため、単純な蒸留操作などではポリオール化合物との分離が困難となり、分離および精製工程が煩雑となる。
【0007】
そこで出発原料としてポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)などの複雑なポリイソシアネート化合物が用いられていても、高温高圧状または超臨界アルコールによる分解と簡易な分離および精製工程によって、出発原料と同じポリオール化合物を容易に回収することができるポリウレタン樹脂の分解回収方法が提案されている(特許文献3)。
【0008】
【非特許文献1】
特開平10−310663号公報
【非特許文献2】
特開2000−169624号公報
【特許文献3】
特開2002−363336
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記方法(特許文献3)では、高温高圧状態または超臨界アルコールを用いてポリウレタンを分解し、原料として用いられたポリオールと、イソシアネートとアルコールが反応して生成したアルキルウレタンを分離して回収する。
【0010】
しかるに、この方法で得られるリサイクル原料物質はポリオールのみであり、イソシアネート成分をケミカルリサイクル原料物質として回収するためには、アルキルウレタンのさらなる分解精製処理、たとえばアルキルウレタンの超臨界水分解処理など、を行わなければならない。この分解処理により、アルキルウレタンから、アミンとアルコールを含んだ分解水溶液が得られるが、この混合物からアミンを取り出して精製し、ホスゲン化することで、ポリウレタン原料のイソシアネート成分としてリサイクルすることができる。
【0011】
このように、上記の方法では、高温高圧を必要とすることや、原料二成分のうち片方の成分である、イソシアネート成分をリサイクルするために、ポリウレタン樹脂を分解する条件よりもさらに厳しい条件によって、さらなる分解・精製・再生処理を行わなければならず、完全なケミカルリサイクルを行う場合には、困難さに加えてコスト的にも不利である。
【0012】
また、ポリウレタンの分解によって直接イソシアネートを得る方法として、ポリウレタンの熱分解法なども考えることができるが、分解率が上記方法に比べると低いことに加え、分解時に発生するラジカル種によって、コーキングなど複雑な反応が起こる他、反応性に富むイソシアネートをいかにして効率よく回収するかなどの問題がある。
【0013】
これらの課題を鑑み、本発明では、ポリウレタンの分解をより容易かつ高効率に行い、かつ、ポリウレタン分解生成物のポリオール成分とイソシアネート成分を、ケミカルリサイクルの原料として回収することのできる分解回収方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下のポリウレタンの分解回収方法を要旨とする。
(1) ポリウレタンを化学的に分解してポリウレタンの原料であるポリオール類とジイソシアネートを回収するに際し、該ジイソシアネートの少なくとも一部分をジイソシアネートのフェノール類によるブロック化生成物として回収することを特徴とする、ポリウレタンの分解回収方法。
(2) ポリウレタンを150℃以上260℃未満のフェノール類を用いて分解する上記(1)のポリウレタンの分解回収方法。
(3) ポリウレタンを150℃以上260℃未満のフェノール類とメタノールの混合溶媒を用いて分解する上記(1)のポリウレタンの分解回収方法。
(4) 上記のフェノール類がクレゾールである上記(1)、(2)または(3)のポリウレタンの分解回収方法。
すなわち、ポリウレタンを化学的に分解してポリウレタンの原料であるポリオール類とジイソシアネートを回収するに際し、該ジイソシアネートの少なくとも一部分をジイソシアネートのクレゾールによるブロック化生成物として回収する、好ましくはポリウレタンを150℃以上260℃未満のクレゾール、必要に応じメタノールとの混合溶媒を用いて分解し、該ジイソシアネートをジイソシアネートのクレゾールによるブロック化生成物として回収することを特徴とする、ポリウレタンの分解回収方法。
(5) ポリウレタンを化学的に分解する際の加熱方法として、マイクロ波加熱を利用する上記(1)ないし(4)のいずれかのポリウレタンの分解回収方法。
すなわち、ポリウレタンを化学的に分解してポリウレタンの原料であるポリオール類とジイソシアネートを回収するに際し、ポリウレタンを150℃以上260℃未満のフェノール類、好ましくはクレゾールを用いて、必要に応じメタノールとの混合溶媒を用いて分解し、その際の加熱方法として、マイクロ波加熱を利用し、該ジイソシアネートの少なくとも一部分をジイソシアネートのフェノール類、好ましくはクレゾールによるブロック化生成物として回収することを特徴とするポリウレタンの分解回収方法。
(6) ポリウレタンを化学的に分解する際の触媒として、三級アミン類あるいは有機スズ触媒を用いる上記(1)ないし(5)のいずれかのポリウレタンの分解回収方法。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の方法において、分解の対象とされるポリウレタンは、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物との反応により得られる高分子化合物である。上記の高分子化合物であるポリウレタンとしては、軟質、半硬質あるいは硬質ポリウレタンフォーム、注型あるいは熱可塑ポリウレタンエラストマーなどが挙げられる。また、分解に用いるポリウレタンの形状は、特に制限はない。
【0016】
上記のポリイソシアネート化合物としては、例えば、4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)などの芳香族ジイソソシアネート、例えば、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)などの芳香脂肪族ジイソシアネート、例えば、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)などの脂環族ジイソシアネート、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などの脂肪族ジイソシアネート、および、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)などが挙げられる。
【0017】
上記のポリオール化合物としては、低分子量ポリオールとして、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、キシレングリコールなどの低分子量ジオール、例えば、グリセリン、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパンなどの低分子量トリオール、例えば、D−ソルビトール、キシリトール、D−マンニトール、D−マンニットなどの水酸基を4個以上有する低分子量ポリオールなどが挙げられる。また、高分子量ポリオールとして、例えば、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、エポキシポリオール、天然油ポリオール、シリコンポリオール、フッ素ポリオール、ポリオレフィンポリオールなどが挙げられる。
【0018】
本発明の方法では、高温状態のフェノール類、望ましくは150℃以上260℃未満の液体クレゾールとポリウレタンとの反応によってポリウレタンの分解を行い、分解生成物をケミカルリサイクル原料として回収する。
【0019】
例えばフェノール類の一つであるp−クレゾールは、常圧下における融点が34.7℃、沸点が201.9℃であり、200℃でポリウレタンを分解する場合には、加圧の必要がない。また、沸点以上の温度、たとえば260℃で分解する場合には、適宜加圧をすることにより、液体状態を維持することができる。よって、p−クレゾールを用いた場合には、分解時の溶媒の分圧を低く抑えることができ、反応系の圧力を低くすることができる。
【0020】
《触媒》
このように、例えば、p−クレゾールを用いてポリウレタンを分解する場合には、150℃以上260℃未満の液体クレゾールを用いることができるが、分解温度が低い場合には、分解反応時間が長くかかる場合がある。その場合には、有機スズ化合物や三級アミン類などの触媒を用いて分解することにより、分解にかかる反応時間を短くすることができる。分解反応の性質上、ポリウレタン合成に使用される触媒のほとんどが、分解反応の触媒として用いることができると考えられる。触媒として、例えば、ジラウリン酸ジブチルスズ(DBTDL)、オクチル酸鉛、スタナスオクトエートなどの有機金属触媒、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミンなどのアミン類が使用に適し、そのうちのいずれか一種、ないしは二種かそれ以上の混合物を触媒として選択することができる。また、260℃以上の温度における反応では、原料成分の分解反応や重合反応、あるいは、クレゾールの分解反応など、リサイクル原料を生成する上で、好ましくない反応が起こる場合があるので、できるだけ低い温度で分解反応を行うことが望ましい。
【0021】
この方法で得られる分解生成物は、ポリオール類と、ジイソシアネートのフェノール類によるブロック化生成物である。ブロック化生成物は、熱分解によって容易にジイソシアネートとフェノール類に分解される。このため、ポリウレタンの原料であるポリオール類とジイソシアネートを高効率に回収でき、ケミカルリサイクルに使用することができる。
【0022】
ポリウレタンとフェノール類との混合割合は、ポリウレタンの種類や形状などによって適宜選択されるが、ポリウレタンとフェノール類とを直接接触させる場合の、フェノールの使用量が、ポリウレタン1重量部に対して、1〜30重量部、さらには、2〜20重量部が目安となる。上記したように、アルコールを配合する場合には、フェノールの使用量を、ポリウレタン1重量部に対して、0.5〜15重量部、さらには、1〜10重量部に低減することができる。
【0023】
高温状態のフェノール類、望ましくは150℃以上260℃未満の液体クレゾールとポリウレタンとの反応によって、ポリウレタン中のウレタン結合が[化1]のように解裂して交換反応が起こり、ポリオール化合物と、ジイソシアネートブロック化物(カーバメート)とを生成する。混合溶媒としてアルコールを加えた場合には、[化2]のような反応も起こり、同様にカーバメート化合物(アルキルウレタン)が生成する。ここで生成したアルキルウレタンは、場合によっては、[化3]のように、さらなるウレタン結合の解裂と交換反応が起こり、イソシアネートブロック化物(カーバメート)が生成する。ただし、[化1]〜[化3]中、R1,R2,R3=アルキル基,Arl=アリール基である。
【0024】
【化1】
【化2】
【化3】
【0025】
このような分解は、耐圧容器中においてバッチ方式で直接加熱分解してもよく、また、ポリウレタンとフェノール類とを配合することにより、スラリー化、流動化もしくは液状化した後、これを分解管に連続フィードすることによって、連続式で加熱分解してもよい。
【0026】
分解後の生成物は、上記したように、原料として用いられたポリオール化合物、イソシアネートのフェノール類によるブロック化物(カーバメート)、分解溶媒としてフェノール類を過剰に用いた場合は、そのフェノール類、場合によってはさらにジイソシアネートのアルコールによるブロック化生成物からなる。この分解混合物中からポリオール化合物およびイソシアネートブロック化物を回収する。
【0027】
これらの化合物を回収する方法は、何ら制限されず、公知の方法を用いることができるが、例えば、クレゾールを分離除去する方法として、分解混合物から溶媒のクレゾールを蒸発させる方法や、ポリオール成分として低分子量のものが含まれていない場合、クレゾールあるいはクレゾールをアルカリによって中和したクレゾール塩、を水で抽出して取り除くことができる。クレゾールを除いた混合物は、固体として析出してくるイソシアネートブロック化物を遠心分離やろ過などによって分離するか、あるいは、カーバメートが不溶な溶媒、例えばヘキサンなどを用いてポリオールを抽出して分離しても良い。尚、クレゾールは、分解混合物を冷却したときに固体として析出してくるイソシアネートブロック化物を遠心分離やろ過などによって取り除いた後に除去してもよい。
【0028】
得られたカーバメートは、室温で安定な物質であり、保存する上で安定性に優れているが、熱分解をすることにより、容易にもとのフェノール類とイソシアネート化合物に分離するので、カーバメートをイソシアネートの原料とすることができる。必要であれば、ポリウレタン合成・分解に使用した触媒類、例えばジラウリン酸ジブチルスズや三級アミン化合物を用いることにより、このカーバメートをより低い温度で分解することができる。
【0029】
このように、本発明のポリウレタン分解回収方法を用いれば、ポリウレタンの出発原料として用いられたポリオールとイソシアネートを容易に回収することができる。
【0030】
【作用】
これまで、ジイソシアネートの合成法としては、(1)ホスゲン化法、(2)ニトロ+一酸化炭素法、(3)カーバメート熱分解法の3種類が有望な方法として考案されているが、現行法では、上記(1)のホスゲン化法によるジイソシアネートの合成が100%を占めている。これまで、上記(3)の方法が用いられてこなかった理由の一つに、カーバメートの生成コストが高いという原因があった。複雑でコストのかかる方法によってバージン原料からカーバメートを合成するのではなく、廃ポリウレタンから直接分解してカーバメートを生成させることで、上記(3)の方法も、効率的なリサイクルを行っていく上で、割合が増えてくるものと思われる。この方法は、ノンハロゲンプロセスとしても有望である。
【0031】
【実施例】
本願発明の詳細を実施例で説明する。本願発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
【0032】
合成例1
MDI 25 重量部
エチレングリコール 6.2 重量部
4−メチル−2−ペンタノン(溶媒) 240 ml
DMSO(溶媒) 40 ml
MDI:4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネート
DMSO:ジメチルスルホキシド
【0033】
上記の処方において、MDIを4−メチル−2−ペンタノンに溶かした。これに、エチレングリコールをDMSOに溶かした溶液を加え、窒素雰囲気下において撹拌した。115℃で1.5時間加熱して反応させた。これを水中に投入して白色のポリマーを沈澱させた後、ろ過した。90℃で真空乾燥させて白色のポリウレタンを得た。
【0034】
得られたポリウレタンをGPCを用いて分析したところ、重量平均分子量が約28,000であることがわかった。
【0035】
実施例1
内容積300mlの三つ口フラスコに、上記で得られたポリウレタンを約5gとクレゾール60gを仕込み、窒素雰囲気下、204℃まで加熱して昇温した。その後、204℃で4時間保持して反応させた。
【0036】
保持時間経過後、反応混合物は淡い黄色の溶液になった。これを室温まで冷却すると固体が析出した。100℃,0.2mbarでクレゾールをエバポレートすると、黄色の固体が得られた。この固体をテトラヒドロフラン(THF)に溶かしたところ、すべてが溶解した。
【0037】
得られたTHF溶液のLC−MS分析(GPCカラム使用)とGC−MS分析を行った。LC−MS分析の結果によって、反応混合物には高分子量の化合物は存在しないことから、分解率が100%であることが判明した。また、MDIとクレゾールの1:2付加物(ブロック化物)とエチレングリコールが生成していることが判明した。GC−MS分析では、このMDIブロック化物が熱分解して生成した、MDIのピークが観察された。
【0038】
実施例2
内容量300mlのオートクレーブに、ポリウレタンを10gとクレゾール80gを仕込み、260℃まで昇温したところ、圧力が0.8MPaになった。その後、260℃で2時間保持して反応させた。
【0039】
オートクレーブを室温まで冷却した後、反応混合物を取り出したところ、うす茶色の液体であり、うす茶色の固形物があった。反応混合物のLC−MS分析(GPC)の結果から、分解率が100%であることがわかった。GC−MS分析の結果は、分解混合物にMDIのブロック化合物が生成していることを示していたが、それ以外の複雑な反応による化合物も生成していることがわかった。
【0040】
実施例3
内容積300mlの三つ口フラスコに、上記で得られたポリウレタンを約5gとクレゾール60gを仕込み、攪拌をしながら窒素雰囲気下、150℃まで加熱して昇温した。その後、150℃で4時間保持して反応させた。その結果、ポリウレタンの一部が溶解して反応した。
【0041】
実施例1と同様にクレゾールのエバポレートを行ったところ、白色の固体を得た。この固体をTHFに溶かすと、その一部が溶解したので、THF可溶分と残渣とにろ別して分離した。
【0042】
溶解成分のLC−MS分析とGC−MS分析から、THF可溶分にはMDIのクレゾールブロック化物のみが含まれていることがわかった。残渣のLC−MS分析とFT−IR測定から、残渣は未反応のポリウレタンであることがわかった。残渣の重量から、分解率を決定すると28.7%であった。
【0043】
実施例4
触媒のDABCOを0.113g加えた反応は、実施例3と同様に行った。その結果、分解率が向上し、ポリウレタンの重量比60.0%が溶解して反応した。溶解成分のLC−MS分析とGC−MS分析は、実施例1と同様の結果を与えた。
【0044】
実施例5
触媒のDBTDLを0.126g加えた反応は実施例3と同様に行った。その結果、分解率が向上し、ポリウレタンの重量比81.3%が溶解して反応した。溶解成分のLC−MS分析とGC−MS分析は、実施例1と同様の結果を与えた。
【0045】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明のポリウレタン分解回収方法を用いれば、容易にポリウレタンを分解し、分解生成物として出発原料のポリオールと、イソシアネートブロック化物であるカーバメートをそれぞれ回収することができる。カーバメートは室温で安定な化合物であるため、保存に適するが、加熱分解することによって、容易に出発原料のイソシアネートを得ることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は廃ポリウレタンのケミカルリサイクルに関するものである。より詳細には、本発明は、各種の産業製品として用いられるポリウレタンを化学的に分解しポリウレタンの原料であるポリオール類とジイソシアネートを回収する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリマーのリサイクル技術は、大別してマテリアルリサイクル、サーマルリサイクル、ケミカルリサイクルの3つに分けられる。マテリアルリサイクルは簡便な反面、ポリマーの性状の悪化や被リサイクル物のさらなるリサイクルに問題がある。サーマルリサイクルは非常に汎用性の高い方法であるが、焼却を基本とするため環境への負荷が大きい。ケミカルリサイクルは他の二つのリサイクル技術に比べると、処理コストが高いものの、究極のリサイクル方法であるため、この方法によるリサイクルが強く望まれている。
【0003】
最もよく使用されているポリマーの一つであるポリウレタンのリサイクルについて種々の発明がなされている。ポリウレタンは、ジイソシアネートと2価ポリオールによる重付加反応で得られるポリマーで、主鎖にウレタン結合(−NH−COO−)を含む。合成時にジイソシアネートとポリオールの置換基を適当に選択して主鎖間を架橋することにより、様々な性質を持たすことができるため、その製品はウレタンフォーム、ウレタンゴム、ウレタン樹脂など多岐に渡る。
【0004】
このように、ポリウレタンは非常に有用で汎用な物質であるが、リサイクルという観点からは、その多様性の問題に加え、熱硬化性樹脂であるためにリサイクルしようとすると成形加工が自由にできず、また、分子中に窒素原子を含むため焼却を行うとシアンや窒素酸化物などの有害ガスが発生する。ポリウレタンの重量生産量はポリマー全生産量の約5%に過ぎないが、ポリウレタン製品の多くが発泡体として供給されるために、体積生産量割合は約30%にも達する。廃ポリウレタンのケミカルリサイクルを行うことは、リサイクルのみならず減容化としての意味も大きい。
【0005】
ポリウレタンに関しては、ケミカルリサイクル法としてグリコール分解法、アミン分解法、加水分解法などが知られている。これらの方法では、分解混合物として、ポリオールとアミンの混合物が得られ、それをさらにアルキレンオキシドなどの付加によって、アミンをポリオールに変換し、被リサイクル原料の全てをポリオールの原料としてリサイクルする。しかし、分解で得られたポリオールは、原料として用いられているポリオールとは大幅に性質が異なることや、その性質が被リサイクル原料の成分に依存して大きく異なること、ポリウレタンの原料として必要なポリオール成分とイソシアネート成分の二成分うち、ポリオール成分のみを供給することによる需給のアンバランスなどが問題となってしまう。
【0006】
加水分解法としてポリウレタン樹脂を、高温高圧水または超臨界水を用いて加水分解する方法が提案されている(特許文献1、2)。このような方法によれば、出発原料としてのポリオール化合物や、出発原料としてのイソシアネート化合物の中間体であるポリアミン化合物として、回収することができるので、リサイクルには有利となる。しかし、硬質ポリウレタンフォームを、高温高圧水または超臨界水を用いて加水分解すると、ポリメチレンポリフェニルポリアミンなどの複雑なアミン化合物が生成するため、単純な蒸留操作などではポリオール化合物との分離が困難となり、分離および精製工程が煩雑となる。
【0007】
そこで出発原料としてポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)などの複雑なポリイソシアネート化合物が用いられていても、高温高圧状または超臨界アルコールによる分解と簡易な分離および精製工程によって、出発原料と同じポリオール化合物を容易に回収することができるポリウレタン樹脂の分解回収方法が提案されている(特許文献3)。
【0008】
【非特許文献1】
特開平10−310663号公報
【非特許文献2】
特開2000−169624号公報
【特許文献3】
特開2002−363336
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記方法(特許文献3)では、高温高圧状態または超臨界アルコールを用いてポリウレタンを分解し、原料として用いられたポリオールと、イソシアネートとアルコールが反応して生成したアルキルウレタンを分離して回収する。
【0010】
しかるに、この方法で得られるリサイクル原料物質はポリオールのみであり、イソシアネート成分をケミカルリサイクル原料物質として回収するためには、アルキルウレタンのさらなる分解精製処理、たとえばアルキルウレタンの超臨界水分解処理など、を行わなければならない。この分解処理により、アルキルウレタンから、アミンとアルコールを含んだ分解水溶液が得られるが、この混合物からアミンを取り出して精製し、ホスゲン化することで、ポリウレタン原料のイソシアネート成分としてリサイクルすることができる。
【0011】
このように、上記の方法では、高温高圧を必要とすることや、原料二成分のうち片方の成分である、イソシアネート成分をリサイクルするために、ポリウレタン樹脂を分解する条件よりもさらに厳しい条件によって、さらなる分解・精製・再生処理を行わなければならず、完全なケミカルリサイクルを行う場合には、困難さに加えてコスト的にも不利である。
【0012】
また、ポリウレタンの分解によって直接イソシアネートを得る方法として、ポリウレタンの熱分解法なども考えることができるが、分解率が上記方法に比べると低いことに加え、分解時に発生するラジカル種によって、コーキングなど複雑な反応が起こる他、反応性に富むイソシアネートをいかにして効率よく回収するかなどの問題がある。
【0013】
これらの課題を鑑み、本発明では、ポリウレタンの分解をより容易かつ高効率に行い、かつ、ポリウレタン分解生成物のポリオール成分とイソシアネート成分を、ケミカルリサイクルの原料として回収することのできる分解回収方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下のポリウレタンの分解回収方法を要旨とする。
(1) ポリウレタンを化学的に分解してポリウレタンの原料であるポリオール類とジイソシアネートを回収するに際し、該ジイソシアネートの少なくとも一部分をジイソシアネートのフェノール類によるブロック化生成物として回収することを特徴とする、ポリウレタンの分解回収方法。
(2) ポリウレタンを150℃以上260℃未満のフェノール類を用いて分解する上記(1)のポリウレタンの分解回収方法。
(3) ポリウレタンを150℃以上260℃未満のフェノール類とメタノールの混合溶媒を用いて分解する上記(1)のポリウレタンの分解回収方法。
(4) 上記のフェノール類がクレゾールである上記(1)、(2)または(3)のポリウレタンの分解回収方法。
すなわち、ポリウレタンを化学的に分解してポリウレタンの原料であるポリオール類とジイソシアネートを回収するに際し、該ジイソシアネートの少なくとも一部分をジイソシアネートのクレゾールによるブロック化生成物として回収する、好ましくはポリウレタンを150℃以上260℃未満のクレゾール、必要に応じメタノールとの混合溶媒を用いて分解し、該ジイソシアネートをジイソシアネートのクレゾールによるブロック化生成物として回収することを特徴とする、ポリウレタンの分解回収方法。
(5) ポリウレタンを化学的に分解する際の加熱方法として、マイクロ波加熱を利用する上記(1)ないし(4)のいずれかのポリウレタンの分解回収方法。
すなわち、ポリウレタンを化学的に分解してポリウレタンの原料であるポリオール類とジイソシアネートを回収するに際し、ポリウレタンを150℃以上260℃未満のフェノール類、好ましくはクレゾールを用いて、必要に応じメタノールとの混合溶媒を用いて分解し、その際の加熱方法として、マイクロ波加熱を利用し、該ジイソシアネートの少なくとも一部分をジイソシアネートのフェノール類、好ましくはクレゾールによるブロック化生成物として回収することを特徴とするポリウレタンの分解回収方法。
(6) ポリウレタンを化学的に分解する際の触媒として、三級アミン類あるいは有機スズ触媒を用いる上記(1)ないし(5)のいずれかのポリウレタンの分解回収方法。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の方法において、分解の対象とされるポリウレタンは、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物との反応により得られる高分子化合物である。上記の高分子化合物であるポリウレタンとしては、軟質、半硬質あるいは硬質ポリウレタンフォーム、注型あるいは熱可塑ポリウレタンエラストマーなどが挙げられる。また、分解に用いるポリウレタンの形状は、特に制限はない。
【0016】
上記のポリイソシアネート化合物としては、例えば、4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)などの芳香族ジイソソシアネート、例えば、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)などの芳香脂肪族ジイソシアネート、例えば、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)などの脂環族ジイソシアネート、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などの脂肪族ジイソシアネート、および、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)などが挙げられる。
【0017】
上記のポリオール化合物としては、低分子量ポリオールとして、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、キシレングリコールなどの低分子量ジオール、例えば、グリセリン、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパンなどの低分子量トリオール、例えば、D−ソルビトール、キシリトール、D−マンニトール、D−マンニットなどの水酸基を4個以上有する低分子量ポリオールなどが挙げられる。また、高分子量ポリオールとして、例えば、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、エポキシポリオール、天然油ポリオール、シリコンポリオール、フッ素ポリオール、ポリオレフィンポリオールなどが挙げられる。
【0018】
本発明の方法では、高温状態のフェノール類、望ましくは150℃以上260℃未満の液体クレゾールとポリウレタンとの反応によってポリウレタンの分解を行い、分解生成物をケミカルリサイクル原料として回収する。
【0019】
例えばフェノール類の一つであるp−クレゾールは、常圧下における融点が34.7℃、沸点が201.9℃であり、200℃でポリウレタンを分解する場合には、加圧の必要がない。また、沸点以上の温度、たとえば260℃で分解する場合には、適宜加圧をすることにより、液体状態を維持することができる。よって、p−クレゾールを用いた場合には、分解時の溶媒の分圧を低く抑えることができ、反応系の圧力を低くすることができる。
【0020】
《触媒》
このように、例えば、p−クレゾールを用いてポリウレタンを分解する場合には、150℃以上260℃未満の液体クレゾールを用いることができるが、分解温度が低い場合には、分解反応時間が長くかかる場合がある。その場合には、有機スズ化合物や三級アミン類などの触媒を用いて分解することにより、分解にかかる反応時間を短くすることができる。分解反応の性質上、ポリウレタン合成に使用される触媒のほとんどが、分解反応の触媒として用いることができると考えられる。触媒として、例えば、ジラウリン酸ジブチルスズ(DBTDL)、オクチル酸鉛、スタナスオクトエートなどの有機金属触媒、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミンなどのアミン類が使用に適し、そのうちのいずれか一種、ないしは二種かそれ以上の混合物を触媒として選択することができる。また、260℃以上の温度における反応では、原料成分の分解反応や重合反応、あるいは、クレゾールの分解反応など、リサイクル原料を生成する上で、好ましくない反応が起こる場合があるので、できるだけ低い温度で分解反応を行うことが望ましい。
【0021】
この方法で得られる分解生成物は、ポリオール類と、ジイソシアネートのフェノール類によるブロック化生成物である。ブロック化生成物は、熱分解によって容易にジイソシアネートとフェノール類に分解される。このため、ポリウレタンの原料であるポリオール類とジイソシアネートを高効率に回収でき、ケミカルリサイクルに使用することができる。
【0022】
ポリウレタンとフェノール類との混合割合は、ポリウレタンの種類や形状などによって適宜選択されるが、ポリウレタンとフェノール類とを直接接触させる場合の、フェノールの使用量が、ポリウレタン1重量部に対して、1〜30重量部、さらには、2〜20重量部が目安となる。上記したように、アルコールを配合する場合には、フェノールの使用量を、ポリウレタン1重量部に対して、0.5〜15重量部、さらには、1〜10重量部に低減することができる。
【0023】
高温状態のフェノール類、望ましくは150℃以上260℃未満の液体クレゾールとポリウレタンとの反応によって、ポリウレタン中のウレタン結合が[化1]のように解裂して交換反応が起こり、ポリオール化合物と、ジイソシアネートブロック化物(カーバメート)とを生成する。混合溶媒としてアルコールを加えた場合には、[化2]のような反応も起こり、同様にカーバメート化合物(アルキルウレタン)が生成する。ここで生成したアルキルウレタンは、場合によっては、[化3]のように、さらなるウレタン結合の解裂と交換反応が起こり、イソシアネートブロック化物(カーバメート)が生成する。ただし、[化1]〜[化3]中、R1,R2,R3=アルキル基,Arl=アリール基である。
【0024】
【化1】
【化2】
【化3】
【0025】
このような分解は、耐圧容器中においてバッチ方式で直接加熱分解してもよく、また、ポリウレタンとフェノール類とを配合することにより、スラリー化、流動化もしくは液状化した後、これを分解管に連続フィードすることによって、連続式で加熱分解してもよい。
【0026】
分解後の生成物は、上記したように、原料として用いられたポリオール化合物、イソシアネートのフェノール類によるブロック化物(カーバメート)、分解溶媒としてフェノール類を過剰に用いた場合は、そのフェノール類、場合によってはさらにジイソシアネートのアルコールによるブロック化生成物からなる。この分解混合物中からポリオール化合物およびイソシアネートブロック化物を回収する。
【0027】
これらの化合物を回収する方法は、何ら制限されず、公知の方法を用いることができるが、例えば、クレゾールを分離除去する方法として、分解混合物から溶媒のクレゾールを蒸発させる方法や、ポリオール成分として低分子量のものが含まれていない場合、クレゾールあるいはクレゾールをアルカリによって中和したクレゾール塩、を水で抽出して取り除くことができる。クレゾールを除いた混合物は、固体として析出してくるイソシアネートブロック化物を遠心分離やろ過などによって分離するか、あるいは、カーバメートが不溶な溶媒、例えばヘキサンなどを用いてポリオールを抽出して分離しても良い。尚、クレゾールは、分解混合物を冷却したときに固体として析出してくるイソシアネートブロック化物を遠心分離やろ過などによって取り除いた後に除去してもよい。
【0028】
得られたカーバメートは、室温で安定な物質であり、保存する上で安定性に優れているが、熱分解をすることにより、容易にもとのフェノール類とイソシアネート化合物に分離するので、カーバメートをイソシアネートの原料とすることができる。必要であれば、ポリウレタン合成・分解に使用した触媒類、例えばジラウリン酸ジブチルスズや三級アミン化合物を用いることにより、このカーバメートをより低い温度で分解することができる。
【0029】
このように、本発明のポリウレタン分解回収方法を用いれば、ポリウレタンの出発原料として用いられたポリオールとイソシアネートを容易に回収することができる。
【0030】
【作用】
これまで、ジイソシアネートの合成法としては、(1)ホスゲン化法、(2)ニトロ+一酸化炭素法、(3)カーバメート熱分解法の3種類が有望な方法として考案されているが、現行法では、上記(1)のホスゲン化法によるジイソシアネートの合成が100%を占めている。これまで、上記(3)の方法が用いられてこなかった理由の一つに、カーバメートの生成コストが高いという原因があった。複雑でコストのかかる方法によってバージン原料からカーバメートを合成するのではなく、廃ポリウレタンから直接分解してカーバメートを生成させることで、上記(3)の方法も、効率的なリサイクルを行っていく上で、割合が増えてくるものと思われる。この方法は、ノンハロゲンプロセスとしても有望である。
【0031】
【実施例】
本願発明の詳細を実施例で説明する。本願発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
【0032】
合成例1
MDI 25 重量部
エチレングリコール 6.2 重量部
4−メチル−2−ペンタノン(溶媒) 240 ml
DMSO(溶媒) 40 ml
MDI:4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネート
DMSO:ジメチルスルホキシド
【0033】
上記の処方において、MDIを4−メチル−2−ペンタノンに溶かした。これに、エチレングリコールをDMSOに溶かした溶液を加え、窒素雰囲気下において撹拌した。115℃で1.5時間加熱して反応させた。これを水中に投入して白色のポリマーを沈澱させた後、ろ過した。90℃で真空乾燥させて白色のポリウレタンを得た。
【0034】
得られたポリウレタンをGPCを用いて分析したところ、重量平均分子量が約28,000であることがわかった。
【0035】
実施例1
内容積300mlの三つ口フラスコに、上記で得られたポリウレタンを約5gとクレゾール60gを仕込み、窒素雰囲気下、204℃まで加熱して昇温した。その後、204℃で4時間保持して反応させた。
【0036】
保持時間経過後、反応混合物は淡い黄色の溶液になった。これを室温まで冷却すると固体が析出した。100℃,0.2mbarでクレゾールをエバポレートすると、黄色の固体が得られた。この固体をテトラヒドロフラン(THF)に溶かしたところ、すべてが溶解した。
【0037】
得られたTHF溶液のLC−MS分析(GPCカラム使用)とGC−MS分析を行った。LC−MS分析の結果によって、反応混合物には高分子量の化合物は存在しないことから、分解率が100%であることが判明した。また、MDIとクレゾールの1:2付加物(ブロック化物)とエチレングリコールが生成していることが判明した。GC−MS分析では、このMDIブロック化物が熱分解して生成した、MDIのピークが観察された。
【0038】
実施例2
内容量300mlのオートクレーブに、ポリウレタンを10gとクレゾール80gを仕込み、260℃まで昇温したところ、圧力が0.8MPaになった。その後、260℃で2時間保持して反応させた。
【0039】
オートクレーブを室温まで冷却した後、反応混合物を取り出したところ、うす茶色の液体であり、うす茶色の固形物があった。反応混合物のLC−MS分析(GPC)の結果から、分解率が100%であることがわかった。GC−MS分析の結果は、分解混合物にMDIのブロック化合物が生成していることを示していたが、それ以外の複雑な反応による化合物も生成していることがわかった。
【0040】
実施例3
内容積300mlの三つ口フラスコに、上記で得られたポリウレタンを約5gとクレゾール60gを仕込み、攪拌をしながら窒素雰囲気下、150℃まで加熱して昇温した。その後、150℃で4時間保持して反応させた。その結果、ポリウレタンの一部が溶解して反応した。
【0041】
実施例1と同様にクレゾールのエバポレートを行ったところ、白色の固体を得た。この固体をTHFに溶かすと、その一部が溶解したので、THF可溶分と残渣とにろ別して分離した。
【0042】
溶解成分のLC−MS分析とGC−MS分析から、THF可溶分にはMDIのクレゾールブロック化物のみが含まれていることがわかった。残渣のLC−MS分析とFT−IR測定から、残渣は未反応のポリウレタンであることがわかった。残渣の重量から、分解率を決定すると28.7%であった。
【0043】
実施例4
触媒のDABCOを0.113g加えた反応は、実施例3と同様に行った。その結果、分解率が向上し、ポリウレタンの重量比60.0%が溶解して反応した。溶解成分のLC−MS分析とGC−MS分析は、実施例1と同様の結果を与えた。
【0044】
実施例5
触媒のDBTDLを0.126g加えた反応は実施例3と同様に行った。その結果、分解率が向上し、ポリウレタンの重量比81.3%が溶解して反応した。溶解成分のLC−MS分析とGC−MS分析は、実施例1と同様の結果を与えた。
【0045】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明のポリウレタン分解回収方法を用いれば、容易にポリウレタンを分解し、分解生成物として出発原料のポリオールと、イソシアネートブロック化物であるカーバメートをそれぞれ回収することができる。カーバメートは室温で安定な化合物であるため、保存に適するが、加熱分解することによって、容易に出発原料のイソシアネートを得ることができる。
Claims (6)
- ポリウレタンを化学的に分解してポリウレタンの原料であるポリオール類とジイソシアネートを回収するに際し、該ジイソシアネートの少なくとも一部分をジイソシアネートのフェノール類によるブロック化生成物として回収することを特徴とする、ポリウレタンの分解回収方法。
- ポリウレタンを150℃以上260℃未満のフェノール類を用いて分解する請求項1のポリウレタンの分解回収方法。
- ポリウレタンを150℃以上260℃未満のフェノール類とメタノールの混合溶媒を用いて分解する請求項1のポリウレタンの分解回収方法。
- 上記のフェノール類がクレゾールである請求項1、2または3のポリウレタンの分解回収方法。
- ポリウレタンを化学的に分解する際の加熱方法として、マイクロ波加熱を利用する請求項1ないし4のいずれかのポリウレタンの分解回収方法。
- ポリウレタンを化学的に分解する際の触媒として、三級アミン類あるいは有機スズ触媒を用いる請求項1ないし5のいずれかのポリウレタンの分解回収方法。
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CN114672066A (zh) * | 2022-04-20 | 2022-06-28 | 浙江大学 | 一种聚氨酯的回收利用方法 |
WO2023172682A1 (en) * | 2022-03-09 | 2023-09-14 | Nandi Mridula | Depolymerization of polyurethanes: regeneration of isocyanates via chemical recycling |
-
2003
- 2003-06-17 JP JP2003172627A patent/JP2005008709A/ja not_active Withdrawn
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