JP4500427B2 - 電子写真装置用導電性部材 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真装置に用いる導電性部材に関し、特に中間転写ベルトおよび転写搬送ベルトに好適に使用できる電子写真装置用導電性部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
感光体上に形成されたトナー画像を紙などの記録媒体に転写する転写装置には、従来コロナ放電を利用したコロトロン、スコロトロンなどの転写方式が用いられている。しかし、これらの方式は、コロナ放電を用いるため、オゾン発生の問題がある。この問題を解消するため、記録媒体の裏面から弾性部材で構成される転写ローラを感光体に接触させ、転写ローラの軸に電圧を印加することで転写電界を発生させて、トナーを転写する接触転写方式が開発されている。転写ローラを用いる場合、感光体との接触幅(ニップ幅)が必要であり、かつ適正な導電性を持たせる必要がある。これには、次のような課題がある。
(a)電圧印加時間に対する一定の電流値
(b)ローラ周方向・幅方向に均一な導電性
(c)ローラ表面の離型性
【0003】
一方、小型、中型複写機のプリンタでは、省スペース化のため、トナー転写に十分な感光体とのニップ幅が確保でき、かつ記録媒体の搬送機能を兼ね備えた導電性無端ベルトが、転写搬送ベルトとして用いられることもある。この場合、導電性無端ベルトは、複数のローラを用いて多軸で駆動され、ベルトの表面に表面電位を形成して、記録媒体を吸着搬送し、転写位置で記録媒体にトナー画像の転写を行う。
【0004】
前記導電性無端ベルトの表面を帯電して表面電位を形成するために、コロナ放電を利用すると、先に述べたオゾン発生の問題があり、接触帯電方式を用いると部品点数が増加し、省スペースの効果が小さいという問題がある。
【0005】
前記接触帯電方式の改善方法として、無端ベルト自体に適正な導電性を持たせ、ベルト駆動に用いる一方のローラからベルトの表面に電圧を印加することが考えられるが、これには次のような課題がある。
(d)ベルトへの電圧印加時間に対する電流値が一定であること。電流値変化があると、特にベルト始動時に安定した転写特性が得られない。
(e)ベルト表面の体積固有抵抗値を均一にすること。体積固有抵抗値が不均一であると、安定したベルトの表面電位が得られない。
(f)ベルト内面が一定以上の体積固有抵抗値を有すること。ベルト内面の体積固有抵抗値が低いと内周面を経て他方のローラに電流が流れ、ベルト表面の電位が一定に保持できない。
(g)ベルト表面が離型性を有すること。離型性が小さいとベルト表面にトナーが付着して、記録媒体に汚れを生じる。
【0006】
ロ―ラやベルトなどの電子写真装置用部材に導電性を持たせる技術として、極性樹脂にイオン導電性樹脂をブレンドする技術が開示されている(たとえば特開平8−292640および特開2000−119449)。しかし、これには次のような課題がある。
(h)混練工程でのブレンド・分散が不充分であると引張強度、永久歪などの力学的物性が悪くなる。
(i)所定の電気抵抗を得るためにイオン導電性樹脂中のエチレンオキサイド含量が多くなりすぎ、環境変動が大きくなり易い。
(j)イオン導電性付与材が高分子化合物である樹脂であるため、電圧に対する電流値安定効果が得にくい。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、電子写真装置用導電性部材の表面電位が均一かつ安定で、該部材への電圧印加の時間経過に対する電流値の変化が小さく、トナーの離型性に優れた部材表面を有する電子写真装置用導電性部材を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、弾性部材層と、該弾性部材層上に表面層とを有する電子写真装置用導電性部材であって、前記弾性部材層は、樹脂と、導電性微粒子と、導電性付与物質とを含有し、前記導電性付与物質は、下記一般式(1)または(2)で表される少なくとも1種の低分子化合物と、1価の金属塩とを含有し、体積固有抵抗が106〜1012Ω・cmであり、前記表面層が、弾性部材層側の抵抗調整層および表面側の最外層の少なくとも2層からなり、最外層の体積固有抵抗が、抵抗調整層の体積固有抵抗より大きく、かつ最外層が、フッ素基を含有する重合体で構成されることを特徴とする電子写真装置用導電性部材である。
R1−O2C−(CH2)4−CO2−R2 (1)
【0009】
【化2】
Figure 0004500427
【0010】
(式(1)および(2)において、R1〜R4は、下記一般式(3)で表される置換アルキル基を表す。
−(CH2)1−O−(CH2)m−O−(CH2)n−CH3 (3)
式(3)中、lおよびmは、1〜4の整数を、nは1〜3の整数を表す。ただし、R1〜R4は、互いに同一であっても、また異なっていてもよい。)
【0011】
本発明に従えば、電子写真装置用導電性部材の弾性部材層は、導電性微粒子と、導電性付与物質として、前記一般式(1)または(2)で表される化合物のうち少なくとも1種と1価の金属塩とを含有し、弾性部材層の体積固有抵抗値が、106〜1012Ω・cmに調整されている。すなわち、導電性付与物質としてイオン導電性可塑剤である一般式(1)または(2)で表される低分子化合物と1価の金属塩とを弾性部材層に添加することによって、導電性微粒子間に充填されている弾性部材層を構成する樹脂にイオン導電性が付与され、または樹脂のイオン導電性が向上するので、電圧のON/OFFのような急激な電圧変化や電圧印加の時間経過に対しても電流値の変動が少ない、安定した電気特性を有する電子写真装置用導電性部材を提供することができる。
また前記表面層が、弾性部材層側の抵抗調整層と、表面側の最外層とを含む少なくとも2層からなり、最外層の体積固有抵抗が、抵抗調整層の体積固有抵抗より大きく、かつ最外層が、フッ素基を含有する重合体で構成される。最外層を、フッ素基を含有する重合体で構成することによって、離型性が大きく、余分なトナーが部材上に残留せず、画像が汚れることがない電子写真装置用導電性部材を提供することができる。
また最外層の体積固有抵抗は、抵抗調整層の体積固有抵抗よりも高く設定されているので、最外層上に一定の転写電界を保持することができる。
【0019】
また本発明は、最外層が、導電性微粒子を含まないことを特徴とする。
本発明に従えば、最外層が導電性微粒子を含まないことによって、部材表面の電位を均一にすることができる。
【0020】
また本発明は、電子写真装置用導電性部材の表面粗度Rzが、8μm以下であることを特徴とする。
【0021】
本発明に従えば、部材の表面粗度Rzを8μm以下とすることによって、部材表面の凹凸により、凹部で転写抜けが発生するのを防止することができる。
【0022】
また本発明は、電子写真装置用導電性部材表面の水接触角θが、90°以上であることを特徴とする。
【0023】
本発明に従えば、部材表面の水接触角θは90°以上である。表面の水接触角θが90°以上と大きいと、撥水性があり、トナーの離型性がよくなる。
【0024】
また本発明は、電子写真装置用導電性部材の最外層の層厚が、0.5〜70μmであることを特徴とする。
【0025】
本発明に従えば、最外層の層厚を0.5〜70μmとすることによって、電子写真装置用導電性部材の表面電位を均一に保持し、かつ転写に必要な表面電位を得ることができる。
【0026】
また本発明は、抵抗調整層が、粒径30〜500nmの導電性カーボンを導電性微粒子として含有することを特徴とする。
【0027】
本発明に従えば、抵抗調整層は、使用目的によって異なる電子写真装置用導電性部材全体の抵抗を調整するために設ける層である。抵抗調整層に必要量の導電性微粒子を加えて部材全体の電気抵抗を制御する場合は、加える導電性微粒子としては、粒径30〜500nmの導電性カーボンが好ましい。粒径30〜500nmの導電性カーボンを用いることによって、部材表面の電位を均一に保持することができる。
【0028】
また本発明は、電子写真装置用導電性部材が、ベルト形状を有し、前記弾性部材層の層厚が0.2〜2mmであり、かつその層厚の変動幅が0.1mm以下であることを特徴とする。
【0029】
本発明に従えば、ベルトの弾性部材層の層厚を0.2〜2mmとし、層厚の変動幅を0.1mm以下とすることによって、ローラからの電圧を表面層に伝え、ベルト表面に必要な表面電位を与えるとともに、表面電位を均一にすることができる。
【0030】
また本発明は、ベルトの伸長度ηが、8%以下であることを特徴とする。
本発明に従えば、ベルト伸長度ηを8%以下とすることによって、感光体とベルトの接触幅を適度に保ち、カラー画像形成時にトナーを色重ねする際にも、ベルトの伸びによるカラー画像の色ズレが生じない電子写真装置用導電性部材を提供することができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
本発明による電子写真装置用導電性部材は、転写搬送ベルトおよび中間転写ベルトなどの導電性ベルトとして、また帯電ローラ、現像ローラおよび転写ローラなどの電子写真装置用の導電性ローラとして好適に用いることができる。以下、図面により詳細に説明する。
【0032】
図1は、本発明の実施の一形態による電子写真装置用導電性部材である導電性ベルト1の斜視図であり、図2は、図1の導電性ベルト1の拡大断面図である。また図3は、本発明の実施の他の形態による電子写真装置用導電性部材である導電性ローラ7の斜視図であり、図4は、図3の導電性ローラ7の拡大断面図である。本発明に係る電子写真装置用の導電性部材は、弾性部材層2と表面層3とから成り、表面層3は、弾性部材層2上の抵抗調整層4と表面側の最外層5とで構成される。
【0033】
前記導電性部材の弾性部材層2は、導電性微粒子としてカーボンブラックを含有し、また弾性部材層2を構成する樹脂である極性ゴムにイオン導電性を付与する物質として、下記一般式(1)または(2)で表される化合物のうち少なくとも1種と1価の金属塩とを含有する。一般式(1)および(2)で表される化合物は、本来樹脂に対する可塑剤としての機能を有する低分子化合物である。
R1−O2C−(CH2)4−CO2−R2 (1)
【0034】
【化3】
Figure 0004500427
【0035】
式(1)および(2)において、R1〜R4は、下記一般式(3)で表される置換アルキル基を表す。
−(CH2)1−O−(CH2)m−O−(CH2)n−CH3 (3)
式(3)中、lおよびmは、1〜4の整数を、nは1〜3の整数を表す。ただし、R1〜R4は、互いに同一であっても、また異なっていてもよい。
【0036】
1〜R4の具体例としては、たとえば、―CH2OCH2OCH3、―CH2CH2OCH2CH2OCH2CH3 ―CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2CH3などを挙げることができる。
【0037】
前記1価の金属塩は、イオン性の無機化合物であるので、弾性部材層2を構成する樹脂に添加することによって樹脂にイオン導電性を付与することができる。1価の金属塩としては、具体的には LiClO4、LiN(CF3SO22、LiBF4、LiPF6、LiAsF6、LiCF3SO3などを挙げることができる。なかでも、LiClO4およびLiN(CF3SO22などのLi塩が、極性ゴムとの相溶性が高いので好ましい。
【0038】
電子写真装置用導電性部材への電圧印加時間に対する電流値の変化は、カーボンブラックの分散状態および弾性部材層2を構成する樹脂の導電性が原因となって生じる。すなわち、弾性部材層2ではカーボンブラックが相互に接触して導電経路が形成されるが、弾性部材層2中では、カーボンブラック粒子が接触していない部位も存在する。このような部位では、電圧印加の初期では電流が流れるが、その後樹脂が分極して電流が流れなくなる。このため電圧印加初期の電流値が大きく、その後電流値が低下するという現象が生じる。この現象は、樹脂が誘電分極に起因する一定の時間定数を持っているためと考えられ、電子写真装置で用いられる体積固有抵抗106〜1012Ω・cmの電気抵抗域で起こりやすい。したがって、カーボンブラック粒子間に存在する樹脂にある程度の導電性を付与し、分極による電流値低下を補完することによって、電流値の低下現象を防止することができる。
【0039】
前記一般式(1)および(2)で表される化合物は、イオン導電性の可塑剤であるので、弾性部材層2を構成する樹脂に添加することによって、樹脂に導電性を付与しまたは樹脂の導電性を高めることができる。また、前記1価の金属塩も無機系のイオン導電性物質であるが、弾性部材層2を構成する樹脂である極性ゴムとの相溶性が高く、樹脂に導電性を付与する。したがって、これらの導電性付与物質を弾性部材層2に添加することによって、電圧のON/OFFのような急激な電圧変化や電圧印加時間に対しても電流値の変動が少ない、安定した電気特性を有する電子写真装置用導電性部材を提供することができる。
【0040】
一般式(1)および(2)で表される化合物の添加量としては、弾性部材層2を構成する樹脂100重量部に対し1〜50重量部が好ましく、より好ましくは5〜25重量部である。1重量部未満では、電流値変化低減の充分な効果が得られない。また50重量部を超えると、弾性部材層2の硬度が実用域よりも低くなり、弾性率も小さくなりすぎるなど弾性部材の物性が低下し、さらに添加物が部材表面に滲み出したりする(ブリードアウト)。
【0041】
1価の金属塩の配合比としては、前記導電性付与物質全量に対し0.05〜30重量%が好ましく、0.5〜20重量%がより好ましい。0.05%未満では、電流値変化低減に充分なイオン導電効果が得られない。30重量%を超えると、温湿度などの環境変化の影響を受けて電気抵抗の変化が大きくなり、また金属塩の充分な溶解性が得られないため、電気抵抗のバラツキの原因となるなどの不都合が生じる。
【0042】
弾性部材層2に添加する導電性微粒子としては、前述のカーボンブラック以外に、金属粉末、酸化錫等の金属酸化物などを使用することができる。カーボンブラックは、入手しやすく、前記極性ゴムに容易に分散できるので好ましい。
【0043】
弾性部材層2を構成する樹脂としては、電気抵抗の調整が比較的容易であるので、極性ゴムを用いるのが好ましい。極性ゴムとしては、具体的にはクロロプレンゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴムおよびエピクロルヒドリン−エチレンオキサイドを主成分とする共重合体などを挙げることができる。これらの極性ゴムは、1種単独で使用してもよいし、2種以上混合して使用してもよい。
【0044】
弾性部材層2は、これらの極性ゴムに導電性微粒子を加え、その体積固有抵抗を106〜1012Ω・cm、好ましくは109〜1011Ω・cmに調整される。前記極性ゴムは、導電性微粒子を分散しやすく、また弾性部材層2の導電性を制御するのが容易である。弾性部材層2の体積固有抵抗が106Ω・cm未満では、弾性部材層2を介して周方向に電流が流れ、電圧を印加したい領域に充分な電界がかからず、転写ベルトとしての機能を満足しなくなる。
【0045】
図1のベルト形態の場合は、ベルト内周面の体積固有抵抗は、転写システムの印加電圧にもよるが、106〜1012Ω・cm程度、好ましくは109〜1011Ω・cm程度に制御することによって、ベルト内周面に流れる電流を低減し、充分な転写電界を得ることができる。また、弾性部材層2の層厚は、0.2〜2mmであり、層厚の変動幅は、0.1mm以下である。弾性部材層2の層厚が0.2mm未満のベルトは製作困難であり、また2mmを超えると、ローラからの電圧を表面層に伝えることができず、ベルト表面に必要な表面電界が得られない。弾性部材層2の層厚の変動幅は少ないことが好ましく、層厚が変動すると、その部分の電気抵抗が変化するためにベルト表面電位の変動を生じ、転写性能に影響を与える。すなわち変動幅が0.1mmを超えると、導電性微粒子が均一に分散されていても、厚い部分と薄い部分との電気抵抗に差ができ、ベルト表面の電界が均一にならない。したがって、弾性部材層2の層厚を0.2〜2mmとし、層厚の変動幅を0.1mm以下、好ましくは0.05mm以下とすることによって、ベルト表面電界の層厚による変動をなくすことができる。
【0046】
前記電子写真装置用導電性部材の表面層3は、抵抗調整層4と最外層5から構成されている。弾性部材層2に接して設けられる抵抗調整層4は、使用目的によって異なる電子写真装置用導電性部材全体の抵抗を調整するために設ける層である。抵抗調整層4を構成する樹脂としては、前述の弾性部材層2と同様の極性ゴムや熱可塑性のポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂および変性フッ素樹脂などを使用することができる。電気抵抗の高い調整層が必要な場合は、抵抗調整層4に導電性微粒子を加える必要はない。電気抵抗の低い調整層が必要な場合は、抵抗調整層4に必要量の導電性微粒子を加えて電気抵抗の制御を行うが、その場合、加える導電性微粒子としては、粒径10〜500nmの導電性カーボンが好ましい。10nm未満の導電性カーボンは、製造し難く、10nm未満にすればカーボン粒子は電気導電性を失う。また粒径が500nmを超えると、最外層5の膜厚と同程度になり、カーボン粒子が存在する点で最外層5の体積固有抵抗が低下し、表面電界を均一に保持することができない。
【0047】
電子写真装置用導電性部材の表面側に設けられる最外層5は、部材の保護、部材表面の離型性の向上および表面電界を均一に保持することなどを目的として設ける層である。最外層5は、導電性微粒子を含まない。最外層5が導電性微粒子を含めば、導電性微粒子が存在する部分で、最外層5の体積固有抵抗が低下し、部材表面の電界を均一にできない。すなわち、部材の表面電界のバラツキは、印加電圧に対する部材表面の微小領域間における導電性の違いに起因している。その原因は、導電性微粒子が樹脂層表面に露出しているため、見かけ上その部分の表面電界が樹脂層の部分より高くなることによる。したがって表面層5を形成する樹脂に導電性微粒子を含有させないことによって、電子写真装置用導電性部材1の表面電界のバラツキを低減し、表面電位を均一にすることができる。
【0048】
最外層5は、フッ素基を含有する重合体によって構成する。部材表面に付着したトナーを除去するためには、トナーとの付着力が小さい表面層材料を使用する必要がある。表面の水接触角θが90°以上の大きな値を有する樹脂は、撥水性があり、トナーの離型性がよくなる。このような特性を有する樹脂としては、たとえばフッ素基を含有する重合体などを挙げることができる。したがって最外層5を、フッ素基を含有する重合体で構成することによって、離型性が大きく、余分なトナーが部材上に残留せず、また画像が汚れることがない電子写真装置用導電性部材が得られる。
【0049】
また電子写真装置用導電性部材の表面へのトナーの物理的な付着力を低減するためには、部材の表面粗度が小さいことが好ましい。このため、電子写真装置用導電性部材の表面粗度Rzは、8μm以下である。表面粗度Rzを8μm以下とすることによって、トナーの物理的な付着を低減するとともに、部材表面の凹凸が大きくなり、凹部で転写抜けが発生するのを防止することができる。
【0050】
また最外層5の層厚は、0.5〜70μmである。層厚が0.5μm未満では最外層を設けた意味がなく、抵抗調整層4中に存在する導電性微粒子の影響で、部材の表面電位を均一に保持できない。また層厚が70μmを超えると、部材全体の抵抗が大きくなりすぎて、転写に必要な表面電位が低下する。
【0051】
また最外層5の体積固有抵抗は、抵抗調整層5の体積固有抵抗よりも高く設定する。これにより最外層5上に一定の電界を保持することができる。
【0052】
また図1に示すベルトのベルト伸長度ηは、8%以下である。図1の電子写真装置用導電性部材を後述の図5の転写搬送ベルト1として用いた場合、図7で説明するように、少なくとも2本のローラ41,42に張架されて使用される。2本のローラ41,42の中心間の距離をL、2本のローラ41,42の外径をd1,d2とすると、2本のローラ41,42に張架されたベルト1の理論上の内周D0は、次の式で表される。
【0053】
【数1】
Figure 0004500427
【0054】
これに対し、ベルト1の実際の内周長をDとすると、ベルト伸長度ηは次の式で求められる。
η=(D0/D−1)×100%
【0055】
ベルト伸長度が8%を超えると、感光体11とベルト1の接触幅が大きくなりすぎ、またカラー画像形成時にトナーを色重ねする際に、ベルトの伸びによるカラー画像の色ズレが生じるので好ましくない。
【0056】
図5は、図1に示した本発明の電子写真装置用の導電性ベルト1を、転写搬送ベルト1として用いた電子写真装置の構成を示す断面図である。直円柱状の感光体11は、帯電ローラ21によって、たとえば負の電荷がその表面に均一に付与される。電荷が付与された感光体11は、矢符16の方向に回転駆動されて、露光領域12に至り、露光手段22からのレーザ光によって画像が露光され、露光部分の電荷が中和されて静電潜像が形成される。
【0057】
感光体11は、さらに回転駆動されて、現像領域13に至り、前記静電潜像がトナーによって現像される。このトナーは、現像装置23において撹拌手段24によって相互に摩擦接触して負に帯電している。帯電トナーは、供給ローラ25を介して現像ローラ26に供給され、余分のトナーは規制ブレード27によって規制され、最適量のトナーが現像ローラ26から感光体11の電荷が中和された静電潜像の部分に供給され、トナー像として現像される。
【0058】
感光体11は、さらに回転駆動されて転写領域14に至り、前記トナー像が感光体11と本発明の転写搬送ベルト1との間に供給される紙28などの記録媒体に転写される。転写搬送ベルト1は、2つのローラ41,42に張架され、矢符40方向に駆動される。
【0059】
感光体11に近いローラ(従動ローラ)41は、その軸43に高圧電源装置45の正極が接続され、軸43周囲の導電弾性層44を介して転写搬送ベルト1の正の電荷が与えられ、転写搬送ベルト1の正の電荷によって負に帯電した感光体11上のトナーが吸引され、感光体11と転写搬送ベルト1との間に搬送された紙28に感光体11上のトナー像が転写される。他のローラ(駆動ローラ)42は、図示しないモータなどの駆動源が接続される。感光体11は、さらに回転駆動され、クリーニング領域15に至り、クリーニングブレード29で感光体11上の残留トナーがクリーニングされ、残留する電荷が除電手段30で除かれる。
【0060】
紙28は、2個の紙送りローラ46によって、感光体11と転写搬送ベルト1との間に供給され、トナー像が転写された後、定着装置47に搬送され、トナー像が定着される。
【0061】
また図6は、図5の転写搬送ベルト1の代わりに、図3に示すローラを転写ローラ7として用いた電子写真装置の構成を示す断面図である。転写ローラ7も、転写搬送ベルト1と同様の機能を好適に果たす。
【0062】
以下、実施例および比較例によって作製したベルトを用いて、本発明を具体的に説明する。
【0063】
(実施例1)
非硫黄変成タイプのクロロプレンゴム(CR)100重量部と、導電性微粒子としてのカーボンブラック(東海カーボン製FEFカーボン)40重量部と、導電性物質として下記式(4)の化合物9.91重量部およびLiClO4 0.09重量部と、酸化亜鉛5重量部、酸化マグネシウム4重量部と、ステアリン酸1重量部と、加硫促進剤として2−メルカプトイミダゾリン0.5重量部とを混ぜ、テープラッピング加硫法によって160℃で30分間加硫して、内径50mm、厚み1.0mmのベルト粗材を作製した。このベルト粗材の表面を研磨し、厚み0.6mm、表面粗度Rz3.8μm、周方向の厚み変動幅0.04mm、長手方向の厚み変動幅0.03mm、体積固有抵抗5×1010Ω・cmのベルト用弾性部材を得た。
【0064】
【化4】
Figure 0004500427
【0065】
次いで、ディフェンサTR−304(大日本インキ工業製)100重量部と、MHIブラック5732M(三菱化学製)40重量部とを、メチルエチルケトン210重量部と酢酸ブチル70重量部の混合溶媒中に加え、ペイントシェーカーで混合し、さらに硬化剤としてバーノックDN−950(大日本インキ工業製)6重量部を加えて得られたコート液を用いて、先に得たベルト用弾性部材層上に、スプレーコーティング法で、層厚が15μmになるように塗工し、80℃で15分間熱風オーブン中で乾燥して抵抗調整層を形成した。
【0066】
さらに、ディフェンサTR−306(大日本インキ工業製)100重量部と、バーノックDN−950(大日本インキ工業製)6重量部とを、メチルエチルケトン150重量部と酢酸ブチル50重量部の混合溶媒に溶解したコート液を用いて、先に得た抵抗調整層上に、スプレーコーティング法で、層厚が10μmになるように塗工し、風乾後、130℃で30分間熱風オーブン中で乾燥して最外層を形成し、電子写真装置用の導電性ベルトを得た。
【0067】
(実施例2)
弾性部材層に添加する導電性物質として、前記式(4)の化合物7.41重量部および下記式(5)の化合物2.47重量部と、LiClO4 0.125重量部を用いた以外は実施例1と同様にして、厚み0.6mm、表面粗度Rz3.8μm、周方向の厚み変動幅0.04mm、長手方向の厚み変動幅0.03mm、体積固有抵抗6×1010Ω・cmのベルト用弾性部材層を形成した。
【0068】
【化5】
Figure 0004500427
【0069】
次いで、得られたベルト用弾性部材層上に、実施例5と同様にして抵抗調整層および最外層を形成し、電子写真装置用の導電性ベルトを得た。
【0070】
(比較例1)
弾性部材層に添加する導電性物質の代わりにナフテン系オイル10重量部を用いた以外は実施例5と同様にして、厚み0.6mm、表面粗度Rz3.8μm、周方向の厚み変動幅0.04mm、長手方向の厚み変動幅0.03mm、体積固有抵抗8×1010Ω・cmのベルト用弾性部材層を形成した。次いで、得られたベルト用弾性部材層上に、実施例5と同様にして抵抗調整層および最外層を形成し、電子写真装置用の導電性ベルトを得た。
【0071】
実施例1、2および比較例1で得られた電子写真装置用導電性ベルトの物性値を表1に示す。なお、表1中、ベルトの通過電流および走行性は、図8に示すベルト走行試験機用いて、高圧電源装置に2kVの電圧を印加して測定した。
【0072】
【表1】
Figure 0004500427
【0073】
表1より、実施例1および2で得られた導電性ベルトはいずれも、目視の状態もよく、ベルトの走行性も良好で、ベルト通過電流の変動幅が図9および図10に示すように4μA以下と少なかった。また、温湿度の変化に対しても安定した体積固有抵抗を示すことが判った。これに対し、比較例1で得られた導電性ベルトは、ベルトの通過電流の変動幅が図11に示すように6μAで、通電初期に通過電流の変動が確認された。
【0074】
実施例1、2および比較例1で得られた導電性ベルトを、図5の転写搬送ベルト1として用い、転写・搬送プロセスを搭載する電子写真装置により画像評価を行った結果を表2に示す。
【0075】
【表2】
Figure 0004500427
【0076】
表2より、実施例1および2で得られた導電性ベルトはいずれも、電子写真装置に転写搬送ベルトとして組込んで使用しても、初期画像が良好で、5000枚通紙による変化も見られなかった。これに対し、比較例1で得られた導電性ベルトは、転写電流の変動によって画像濃度が不均一になった。すなわち、ハーフトーン画像における画像濃度が起動直後は増大し、通紙によって低下してゆき、印刷中の濃度変動が見られた。
【0077】
(実施例3)
カーボンブラックをHAFカーボン(昭和キャボット社製)50重量部に変更した以外は、実施例1と同様の弾性部材層用材料を用いて混練し、厚み約0.6mmのゴムシートを成型した。得られたゴムシートを直径8mmφ、長さ310mmの金属製軸芯に巻き付け、テープラッピング法にて160℃で30分間加硫して、外径14.5mm、ゴム部長さ290mmのローラ素材を作製した。このローラ粗材の表面を研磨し、外径13.5mm、表面粗度Rz3.2μmのローラ用弾性部材を得た。
【0078】
ついで、実施例1と同様にして、該ローラ用弾性部材上に抵抗調製層および最外層を形成し、電子写真装置用の導電性ローラを得た。
【0079】
(実施例4)
実施例2と同様の弾性部材層用材料を用い、実施例3と同様にして外径13.5mm、表面粗度Rz3.5μmのローラ用弾性部材を得た。
【0080】
ついで、実施例2と同様にして、該ローラ用弾性部材上に抵抗調製層および最外層を形成し、電子写真装置用の導電性ローラを得た。
【0081】
(比較例2)
比較例1と同様の弾性部材層用材料を用い、実施例3と同様にして、外径13.5mm、表面粗度Rz3.4μmのローラ用弾性部材を作成し、ついで、実施例3と同様にして、該ローラ用弾性部材上に抵抗調整層および最外層を形成して、電子写真装置用の導電性ローラを得た。
【0082】
実施例3、4および比較例2で得られた電子写真装置用導電性ローラの物性値を表3に示す。なお、表3中、導電性ローラ7の電気抵抗値は、図12に示すように、金属(SUS)平板50上で、導電性ローラ7の両端の軸体6に各々F1,F2=500gの荷重をかけて圧接し、軸体6より250Vの電圧を印加して、金属平板に流れ込む電流値よりローラの電気抵抗値を算出した。
【0083】
【表3】
Figure 0004500427
【0084】
表3より、実施例3および4で得られた導電性ローラはいずれも、目視の状態もよく、ローラの表面電位の変動幅が3mV以下と少なかった。また、温湿度の変化に対しても安定した体積固有抵抗を示すことが判った。これに対し、比較例2で得られた導電性ローラは、目視の状態もよく、温湿度の変化に対して安定した体積固有抵抗を有するが、ローラ流入電流の変動幅が8μAと大きく、通電初期に電流値の変動が確認された。
【0085】
実施例3、4および比較例2で得られた導電性ローラを、転写ローラシステムを用いた電子写真装置に転写ローラとして装着し、画像評価を行った結果を表4に示す。
【0086】
【表4】
Figure 0004500427
【0087】
表4より、実施例3および4で得られた導電性ローラはいずれも、電子写真装置に転写ローラとして組込んで使用しても、初期画像が良好で、5000枚通紙による変化も見られなかった。これに対し、比較例2で得られた導電性ローラは、転写電流の変動によって画像濃度が不均一になった。すなわち、ハーフトーン画像における画像濃度が起動直後は増大し、通紙によって低下してゆき、印刷中の濃度変動が見られた。
【0088】
【発明の効果】
本発明によれば、電子写真装置用部材の弾性部材層に導電性微粒子と、導電性付与物質として、前記一般式(1)または(2)で表される化合物のうち少なくとも1種と1価の金属塩とを含有させた電子写真装置用導電性部材を使用することによって、部材への電圧印加の時間経過に対する電流値の変化を小さくすることができる。
【0089】
また部材内面を形成する弾性部材層の体積固有抵抗を106〜1012Ω・cmとすることによって、部材内周面に流れる電流を低減し、充分な部材の表面電界を得ることができる。
【0090】
また、弾性部材層上に形成される表面層を多層構造とし、最外層の体積固有抵抗を抵抗調整層の体積固有抵抗より高くし、かつ最外層に導電性微粒子を含めないことによって、部材の表面電界を均一にすることができるので、感光体上のトナー像を濃度ムラなく転写することができる。
【0091】
さらに最外層に水接触角θが90°以上のフッ素含有樹脂を使用し、部材の表面粗度Rzを8μm以下とすることによって、最外層の離型性がよくなり、部材表面に余分なトナーが残留したり、異物が付着するのを防止できるので、画像が汚れることがない。
さらにベルト形態で使用する場合に、弾性部材層の層厚を0.2〜2mmとし、かつ層厚の変動幅を0.1mm以下とすることによってベルトの表面電位の変動をなくすことができる。
【0092】
したがって、本発明による電子写真装置用導電性部材は、ベルト形態で使用する場合は、良好な転写性、搬送性を有し、かつ繰返し使用に耐えうる転写搬送ベルトなどとして、ローラ形態で使用する場合は、同様に帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラなどとして好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態による電子写真装置用導電性部材である導電性ベルト1の斜視図である。
【図2】図1の導電性ベルト1の拡大断面図である。
【図3】本発明の実施の他の形態による電子写真装置用導電性部材である導電性ローラ7の斜視図である。
【図4】図3の導電性ローラ7の拡大断面図である。
【図5】図1の導電性ベルト1を、転写搬送ベルト1として備える電子写真装置の構成を示す断面図である。
【図6】図3の導電性ローラ7を、転写ローラ7として備える電子写真装置の構成を示す断面図である。
【図7】導電性ベルト1の伸長度ηを説明するための側面図である。
【図8】転写搬送ベルト1の走行性および通過電流を測定する走行試験装置の側面図である。
【図9】実施例1におけるベルト通過電流の変動状態を示すグラフである。
【図10】実施例2におけるベルト通過電流の変動状態を示すグラフである。
【図11】比較例1におけるベルト通過電流の変動状態を示すグラフである。
【図12】導電性ローラ7の電気抵抗値の測定方法を示す概念図である。
【符号の説明】
1 導電性ベルト、転写搬送ベルト
2 弾性部材層
3 表面層
4 抵抗調整層
5 最外層
6 導電性軸体
7 導電性ローラ、転写ローラ
11 感光体
12 露光領域
13 現像領域
14 転写領域
21 帯電ローラ
23 現像装置
26 現像ローラ
28 紙(記録媒体)

Claims (8)

  1. 弾性部材層と、該弾性部材層上に表面層とを有する電子写真装置用導電性部材であって、
    前記弾性部材層は、樹脂と、導電性微粒子と、導電性付与物質とを含有し、
    前記導電性付与物質は、下記一般式(1)または(2)で表される少なくとも1種の低分子化合物と、1価の金属塩とを含有し、
    体積固有抵抗が106〜1012Ω・cmであり、
    前記表面層が、弾性部材層側の抵抗調整層および表面側の最外層の少なくとも2層からなり、
    最外層の体積固有抵抗が、抵抗調整層の体積固有抵抗より大きく、かつ最外層が、フッ素基を含有する重合体で構成されることを特徴とする電子写真装置用導電性部材。
    R1−O2C−(CH2)4−CO2−R2 (1)
    Figure 0004500427
    (式(1)および(2)において、R1〜R4は、下記一般式(3)で表される置換アルキル基を表す。
    −(CH2)1−O−(CH2)m−O−(CH2)n−CH3 (3)
    式(3)中、lおよびmは1〜4の整数を、nは1〜3の整数を表す。ただし、R1〜R4は、互いに同一であっても、また異なっていてもよい。)
  2. 最外層が、導電性微粒子を含まないことを特徴とする請求項記載の電子写真装置用導電性部材。
  3. 表面粗度Rzが8μm以下であることを特徴とする請求項記載の電子写真装置用導電性部材。
  4. 表面の水接触角θが90°以上であることを特徴とする請求項記載の電子写真装置用導電性部材。
  5. 最外層の層厚が、0.5〜70μmであることを特徴とする請求項記載の電子写真装置用導電性部材。
  6. 抵抗調整層が、粒径30〜500nmの導電性カーボンを導電性微粒子として含有することを特徴とする請求項記載の電子写真装置用導電性部材。
  7. ベルト形状を有し、前記弾性部材層の層厚が、0.2〜2mmであり、かつその層厚の変動幅が0.1mm以下であることを特徴とする請求項1〜のうちのいずれか1つに記載の電子写真装置用導電性部材。
  8. ベルト伸長度ηが、8%以下であることを特徴とする請求項記載の電子写真装置用導電性部材。
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