JP4499861B2 - 移動可能なマイクロマシンの移動制御システムおよび医用マイクロマシン誘導システム - Google Patents

移動可能なマイクロマシンの移動制御システムおよび医用マイクロマシン誘導システム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、広汎な産業に用いられるマイクロマシンを対象としており、特に医療用として有用な生体内を移動可能なマイクロマシンの移動制御システムおよびそのためのマイクロマシンに関する。
【0002】
【従来の技術】
マイクロマシン技術は従来の機械では困難であった局部領域や極限領域での作業を可能とするものであり、発電および工場施設のメンテナンスシステムや医療用システム等への応用が期待されている。
【0003】
特に、磁気力を駆動源とする磁気マイクロマシンは、エネルギー供給のためのケーブルを必要としないという特筆すべき特徴を持つ。このことから磁気マイクロマシンはケーブルや電源等の制約から離れ、シンプルな構造で所望の運動を実現することが出来る。すでにこれまでに、以上のような特長を生かした自律して移動可能な磁気マイクロマシンの試作・検討が行われており、本発明者らによって、既にワイヤレスで自律的に走行、飛行、および泳動が可能なマイクロマシンが開発され、かつ論文(仙道雅彦ら;電気学会マグネティックス研究会資料 MAG-98-238、島崎克彦ら;電気学会マグネティックス研究会資料 MAG-97-180)等で紹介している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このワイヤレスの泳動機構は、微生物の運動を模倣し、外部回転磁界によって微小磁石に働く磁気トルクを利用したものであり、マイクロマシンの医療への応用を考えた際、生体の主成分が血液や体液といった液体であることから、その運動方法としてこれらワイヤレスによる液体中の泳動の検討は不可欠といえる。
【0005】
そこで、スパイラル形状のワイヤと微小磁石から構成されるマイクロマシンを基礎として、様々な粘性の液体中を泳動可能なスパイラル型磁気マイクロマシンの泳動特性を詳しく調べた結果、これらのマイクロマシンが静水中や流水中で良好な移動特性を示し、医用マイクロロボットへの応用上極めて有望なマイクロマシンであることが判明した。
【0006】
また、生体中に限らず、これら自律して移動可能なマイクロマシンを目的の部位まで到達させるには、その進行方向を制御する必要があることは言うまでもない。
【0007】
本発明の目的は、このような要求に応えるべく移動可能なマイクロマシンの移動制御システム並びにその移動制御システムに適したマイクロマシンとを提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の移動可能なマイクロマシンの移動制御システムは、磁石の回転により推力を得るロボット本体に与える回転磁界を発生する磁界発生部と、前記ロボット本体の前記磁石が形成する磁界の向きと強さを検出して該検出した磁界の向きと強さから前記ロボット本体の3次元の位置および移動方向を検出する位置検出部と、前記位置検出部が検出した前記ロボット本体の3次元の位置および移動方向に基づき、前記ロボット本体を目的地へ到達させる方向へ向けるべく前記磁界発生部による回転磁界の向きを変更する磁界変向手段と、からなることを特徴としている。
上記構成の本発明によれば、投入されたロボット本体の位置は位置検出部で把握されており、回転磁界の向きを変えることで、進行しているロボットの方向制御を行いながらロボットを目的地へ確実に導くことができる。
【0009】
本発明の移動可能なマイクロマシンの移動制御システムは、前記位置検出部が検出したロボット本体の3次元の位置および移動方向と、ロボット本体を到達させたい目的位置との情報に基づいて、ロボット本体が進行する最適条件での方向を割出し、前記磁界変向手段による回転磁界の向きの変更を制御する制御部を有してなることが好ましい。このようにすれば、ロボット本体を到達させたい目的位置のみを入力しておくだけで、自動的にロボット本体を目的位置に到達させることが可能となる。
【0010】
本発明の移動可能なマイクロマシンの移動制御システムは、前記位置検出部が検出した前記ロボット本体の現在位置および移動方向と目標位置とから最適な進行経路を決定する経路決定手段を備え、前記磁界変向手段が、前記経路決定手段が決定した前記進行経路上を前記ロボット本体が移動するように、前記回転磁界の向きを変更することを特徴としている。
このようにすれば、前記ロボット本体は、外部から印加される回転磁界の回転面に垂直の姿勢を保ちながら推進を行う。このことから、磁界の回転面を変えることでマシンの推進方向も変えることができる。
【0012】
本発明の医用マイクロマシン誘導システムは、略円柱状の本体形状を有し、その長手方向の軸と垂直方向に磁化方向を有する磁石と、前記軸を中心とした回転を該軸方向への推進力に変換するら旋構造とを備えた医用マイクロマシンと、前記磁石が形成する磁界の向きと強さを検出して該検出した磁界の向きと強さから前記医用マイクロマシンの3次元の位置および移動方向を検出する位置検出部と、前記医用マイクロマシンを回転させるよう前記磁石に対して回転磁界を発生する磁界発生部と、前記磁界発生部を駆動する電力を供給する電源装置と、前記電源装置の出力電力を制御する回転磁界制御手段と、からなることを特徴としている。
本発明の医用マイクロマシン誘導システムは、前記位置検出部が、前記磁石が形成する磁界の向きと強さを検出する複数の磁界検出部を有し、前記磁界検出部が検出した磁界の向きと強さから前記医用マイクロマシンの位置および移動方向を検出してもよい。
本発明の医用マイクロマシン誘導システムは、前記位置検出部が検出した前記医用マイクロマシンの現在位置と目標位置とから最適な進行経路を決定する経路決定手段を備え、前記回転磁界制御手段が、前記経路決定手段の出力に基づき、前記磁界発生部が発生する回転磁界の向きを変更するように前記電源装置の出力電力を制御してもよい。
本発明の医用マイクロマシン誘導システムは、前記医用マイクロマシンが、前記ら旋構造を長手方向の先端に備えてもよい。
本発明の医用マイクロマシン誘導システムは、前記医用マイクロマシンが、前記ら旋構造を長手方向の先端および後端に備えてもよい。
本発明の医用マイクロマシン誘導システムは、前記医用マイクロマシンが、前記ら旋構造を本体側面に備えてもよい。
本発明の医用マイクロマシン誘導システムは、前記ら旋構造が、スパイラル状のワイヤにより形成されてもよい。
本発明の医用マイクロマシン誘導システムは、前記位置検出部が、前記医用マイクロマシンを前記位置検出部による測定空間から遠ざけたときに、前記磁界検出部が検出した磁界強度に基づいて地磁気の影響を補正してもよい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の移動可能なマイクロマシンの移動制御システムを図面に基づき説明する。
【0014】
まず図1は、本発明の実施の一形態であるマイクロマシンの移動制御システム構成を示すブロック図である。本実施形態の移動制御システムは、図1に示すように、後述するマイクロマシン本体11に非接触にて回転力を付与するための回転磁界を形成する3対の磁界生成コイル12X,12Y,12Zと、各磁界生成コイル12X〜12Zに後述するコンピュ−タ5より出力される制御出力に基づいて電力を供給する電源装置13と、前記マイクロマシン本体11が形成する磁界を検出する磁気センサーユニット2および3と、該磁気センサーユニット2および3にて検出された磁界より、マイクロマシン本体11の3次元的な現在位置を算出するとともに、その現在位置と目標の位置とから、最適な進行経路を割出し、その進行経路上をマイクロマシン本体11が移動するように、その進路方向を決定して前記電源装置13により印加される各磁界生成コイル12X〜12Zの電力を制御して各磁界生成コイル12X〜12Zにより形成される回転磁界を変更してマイクロマシン本体11の進路を前記決定した進路方向へ変更させるコンピュ−タ5と、から構成されている。
【0015】
この本実施形態に用いたマイクロマシン本体11は、図2に示すような外観とされ、直径約2mmで長さが約7.5mmの円柱形磁石の先端部に長さ約4mmのら旋構造を有する円錐型のドリル部を有する構造とされており、前記円柱形磁石としてはネオジウム鉄ボロン系磁石を使用し、その直径方法に磁化方向を有するように着磁されている。
【0016】
このように、マイクロマシン本体11に装着される磁石として前記ネオジウム鉄ボロン系磁石を用いることは、比較的軽量でかつ着磁力の大きなものが好ましが、本発明はこれに限定されるものではなく、その他の磁石を用いるようにしても良い。
【0017】
まず、本実施形態において、マイクロマシン本体11が自律して移動可能となる原理について以下に説明すると、前記のようにマイクロマシン本体11にはその直径方法に磁化方向を有するように着磁された円柱形磁石が搭載されており、前記磁界生成コイル12X〜12Zに適宜に電力が印加されて磁界が形成されると、磁石の磁化方向と磁界方向とが平行になるような回転力が発生し、マイクロマシン本体11が回転するようになる。この回転運動は、前記円錐型のドリル部に伝達され、該ドリル部に形成されたら旋構造により円柱軸方向の推力に変換されてマイクロマシン本体11が移動するようになる。
【0018】
これらマイクロマシン本体11の構造は、これらマイクロマシン本体11を液体より固い固体ゲル質内を移動可能なものとするためには、マイクロマシン本体11が周りの体ゲル質より受ける摩擦抵抗を低減できるように、全体の表面積が小さくなるような構造を有し、かつ前記ら旋構造をマイクロマシン本体11が1回転する間に進む距離を比較的小さくするようにすることが好ましく、この観点から前記図2に示すような構造のマイクロマシン本体11が好ましいが、本発明はこれに限定されるものではなく、これらマイクロマシン本体の構造として、図9(a)に示すように、液体中をも効率良く移動できるように、円柱状の磁石の側面部分にもら旋構造を有するものや、図9(c)方向転換や目的位置からの離脱を行い易くする目的で、その両端に円錐型のドリル部が形成されたものであっても良い。
【0019】
また、これらドリル部の形状も前記円錐形に限定されるものではなく、図9(b)に示すように、その他のドリル形状としても良い。
【0020】
次いで、これらマイクロマシン本体11の位置検出の方法について以下に説明する。まず、本実施形態のマイクロマシンの移動制御システムは1個のマイクロマシン本体11の位置を検出する場合を例示しているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0021】
本発明のマイクロマシンの移動制御システムは、視覚的に遮蔽され、かつ測定空間(大域範囲)R内に存在するマイクロマシン本体11の位置を検出する場合の例である。ここで、測定空間Rは例えば約30cm×30cm×30cm立方体の空間に設定してある。
【0022】
なお、マイクロマシン本体11は実際には視覚的に遮蔽されていて目視することはできないが、図1においてはこれを透視した状態を図示しており、かつ移動によって3次元磁気センサーユニット(以下、単に磁気センサーユニットとも記す)2および3に対向した位置にある状態を示している。なお、図1において波線はマイクロマシン本体11に装着された前記ネオジウム鉄ボロン系磁石による磁力線を模式的に示している。
【0023】
本発明のマイクロマシンの移動制御システムには、位置検出されるマイクロマシン本体11に対して、一対の例えばフラックゲートからなる磁気センサーユニット2および3が所定間隔、例えば10cmの間隔で磁気センサーユニット装着板1に装着してある。ここで、磁気センサーユニット装着板1は測定空間Rの一面の面積を有していて、この例では30cm×30cmの面積に設定されており、左隅位置0を測定位置の原点に設定してある。
【0024】
磁気センサーユニット2,3は磁界の強さおよび方向を検出する。磁気センサーユニット2,3からの出力は、A/D変換器群41およびインターフェース回路群42からなる信号前処理回路4に供給され、磁気センサーユニット2,3からの出力がA/D変換器群41にてデジタルデータに変換され、インターフェース回路群42を介してコンピュ−タ5へ出力される。
【0025】
この信号前処理回路4からの出力データは、コンピュ−タ5内部のデータバスに装着された位置検出処理基板5’に供給され、マイクロマシン本体11の位置がコンピュ−タ5へ出力されて、該マイクロマシン本体11の位置が、例えば3次元ワイヤフレームにて表示装置6に表示される。
【0026】
この位置検出処理基板5’は、比較的高速の演算回路からなり、前記磁気センサーユニット2,3からの各出力信号に基づく出力データに基づいてマイクロマシン本体11による磁気モーメントを算出する磁気モーメント演算手段51と、マイクロマシン本体11が測定空間R内で区分した予め定めた所定サイズのどの局所範囲内に存在するか否か、たとえば5cm×5cm×5cmの立方体の空間の範囲内に存在するか否かを判別する局所範囲判別手段52と、マイクロマシン本体11が存在すると判別された局所範囲内におけるマイクロマシン本体11の位置および移動方向を検出するマイクロマシン本体位置算出手段53とを機能的に備えている。
【0027】
磁気センサーユニット2,3はそれぞれ一対のフラックスゲートセンサから構成されている。磁気センサーユニット2,3について、磁気センサーユニット2を例に説明する。
【0028】
磁気センサーユニット2を構成する一対のフラックスゲートセンサ中の一方のフラックスゲートセンサは、図3に示すように、基板20と、基板20上に設けたリング状コア22と、リング状コア22に巻回された励磁コイル23と、励磁コイル23が巻回されたリング状態コア22に互いに直交して巻回された磁界検出コイル24および25とを備えている。
【0029】
磁界検出コイル24はY軸に直交し、磁界検出コイル25はX軸に直交して、磁界検出コイル25によってX軸方向磁界成分の強さおよび方向を検出し、磁界検出コイル24によってY軸方向磁界成分の強さおよび方向を検出する。
【0030】
さらに、キャリア周波数fcの発振を行うキャリア発振器30からの発振出力を受けてキャリア周波数fcを分周器21によって2分周し、該2分周出力によって励磁コイル23を励磁する。
【0031】
磁界検出コイル25からの出力信号とキャリア発振器30からの発振出力を乗算することにより同期検波回路28にて同期検波し、同期検波回路26からの出力をローパスフィルタ27にて積分して、X軸方向磁界検出出力を得る。同様に、磁界検出コイル24からの出力信号とキャリア発振器30からの発振出力を乗算することにより同期検波回路28にて同期検波し、同期検波回路28からの出力をローパスフィルタ29にて積分して、Y軸方向磁界検出出力を得る。
【0032】
磁気センサーユニット2の他方のフラックスゲートセンサは、磁気センサーユニット2の一方のフラックスゲートセンサと同様の構成であるが、一方のフラックスゲートセンサにおけるコイル24、同期検波回路28およびローパスフィルタ29を除去した構成であり、図1および後記の図6に模式的に示すように、磁気センサーユニット2の他方のフラックスゲートセンサを形成する基板は、磁界検出コイルがZ軸と直交するように磁気センサーユニット2の一方のフラックスゲートセンサを形成する基板20の下面に直交してT字状に一体に設けてあって、磁界検出コイルからの出力を同期検波および積分してZ軸方向磁界の強さおよび方向に基づくZ軸方向磁界検出出力を得る。
【0033】
したがって、磁気センサーユニット2からX、Y、Z軸方向磁界の強さに基づく出力が送出される。
【0034】
ここで、フラックスゲートセンサからは、磁界検出コイルの巻線直交する方向からの外部磁界の強さに応じて出力電圧が出力され、この電圧の周波数はフラックスゲートセンサの励磁周波数fc/2の2倍のキャリア周波数fcである。
【0035】
次に、同期検波回路26,28について、図3に示す同期検波回路26を例にして、同期検波回路を説明すれば、同期検波回路26はキャリア発振器30の出力を反転するインバータ261と、キャリア発振器30の出力によって磁界検出コイル25からの出力をオン・オフするスイッチ262と、インバータ261の出力によって磁界検出コイル25の出力をオン・オフするスイッチ263と、スイッチ262の出力とスイッチ263の出力を増幅する演算増幅器264とからなり、演算増幅器264の出力をローパスフィルタ27へ送出する。
【0036】
分周器21の出力は図4(a)に示す波形であり、磁界検出コイル25の出力は図4(b)に示す如くキャリア周波数fcの信号であって正負の極性を有している。スイッチ262のオン・オフの波形は図4(c)に示す如くであり、スイッチ263のオン・オフの波形は図4(d)に示す如くであって、スイッチ262および263によって実質的に両波整流を行っていることになり、演算増幅器264の出力は図4(e)に示す如くになる。Y軸およびZ軸方向磁界検出出力についても同様の処理がなされる。
【0037】
なお、磁気センサーユニット3についても磁気センサーユニット2と同様に構成してあり、同様に3軸方向磁界の強さに基づく出力が得られる。
【0038】
次に、磁気センサーユニット2を構成する磁界検出コイルから出力されるX軸、Y軸、Z軸方向磁界の強さおよび方向の出力について図5により説明する。図5において波線はマイクロマシン本体11による磁力線を示している。
【0039】
磁気センサーユニット2の位置Cにおける磁界の強さおよび方向をAとし、磁界の強さおよび方向AのX軸方向磁界の強さ、Y軸方向磁界の強さ、Z軸方向磁界の強さをそれぞれAx、Ay、Azとし、cosα、cosβ、cosyを磁界の強さおよび方向Aの方向余波とすれば、Ax=Acosα、Ay=Acosβ、Az=cosyであり、磁界検出コイル25からはAxの出力が、磁界検出コイル24からはAyの出力が、Z軸方向の磁界検出コイルからはAzの出力が送出される。磁界の強さおよび方向Aは、A=√(Ax+Ay+Az)で与えられる。
【0040】
磁気センサーユニット3についても磁気センサーユニット2の場合と同様であって、磁気センサーユニット3の位置Dにおける磁界の強さおよび方向をBとして示してある。
【0041】
図6は、磁気センサーユニット2と、磁気センサーユニット2の出力を処理する信号前処理回路4の構成を示している。
【0042】
磁気センサーユニット2から出力されるX軸、Y軸、Z軸方向磁界の強さに基づく信号は、各別にA/D変換器411、412、413にて同時にA/D変換され、A/D変換器411、412、413からのA/D変換出力は各別にインターフェース回路421、422、423を介して位置検出処理基板5’へ出力される。磁気センサーユニット3から出力されるX軸、Y軸、Z軸方向磁界の強さに基づく信号も同様に処理されて、位置検出処理基板5’へ出力される。
【0043】
次に、位置検出処理基板5’における視覚的に遮蔽された状態のマイクロマシン本体11の位置検出処理について図7および図8のフローチャートに基づいて説明する。
【0044】
信号前処理回路4において信号処理された磁気センサーユニット2,3からの出力データを受けた位置検出処理基板5’では、マイクロマシン本体11を遠ざけて磁気センサーユニット2,3にて地磁気を検出する状態にして地磁気を計測し、地磁気の補正を行う等の初期設定を行って、続いて、磁気センサーユニット2からの出力を読み込む磁界計測が行われる(ステップS1)。
【0045】
この磁界計測においてZ軸方向磁界の強さを求める磁界検出コイルは基板20の表面に位置していないため、基板20からZ軸方向磁界検出コイルの巻回中心位置までの長さの補正を行って磁界計測を行う。
【0046】
ステップS1に続いて、同期検波および積分された磁気センサーユニット2からの出力がA/D変換され(ステップS2)、A/D変換された各磁気センサーユニット2,3からの出力を図示しないA/Dデータメモリに一旦記憶し、(ステップS3)、磁気センサーユニット3からの出力について実行されたか否かがチェックされ、全磁気センサーユニット2,3からの出力についてA/D変換がなされ、図示しないA/Dデータメモリに記憶がなされるまで繰り返す(ステップS4)。
【0047】
ステップS4において全磁気センサーユニット2、3からの出力についてA/D変換がなされ、記憶されたとき、ステップS4に続いてマイクロマシン本体11の位置およびその方向を算出する後記のステップS5が実行される。磁気センサーユニット2,3からの出力に基づきマイクロマシン本体11の位置を求めるために、本明細書および図7のステップS5その他において、「逆問題を解き」、と記載してある。
【0048】
ステップS5においてマイクロマシン本体11の位置および移動方向が算出されると、算出されたマイクロマシン本体11の位置および移動方向が表示装置6に、3次元ワイヤーフレーム表示される(ステップS6)。
【0049】
次に逆問題の演算ルーチンを図8のフローチャートによって説明する。ステップS4に続いて逆問題を解く逆問題演算ルーチンに入ると、磁気センサーユニット2,3からの出力に基づいて、マイクロマシン本体11の磁気モーメントが演算される(ステップS51)。次いで、測定空間Rを所定の空間(局所範囲)に分割、例えば5cm×5cm×5cmの立方体の空間に分割して、その分割されたいずれかの局所範囲内に逆問題の解が存在するか否かをチェックすることによってなされる(ステップS52)。
【0050】
ステップS52における解の存在は、局所範囲を形成する6面体の各面における評価関数を磁気モーメントに基づき算出し、局所範囲を形成する6面体のうち1面でも評価関数の値の極性が異なる値の面が存在するか否かによって判別される。すなわち、局所範囲内にマイクロマシン本体11が存在するときは、局所範囲を形成する6面体のうち1面でも評価関数の値の極性が異なる極性になったとき、局所範囲内にマイクロマシン本体11が存在しないときは、局所範囲を形成する6面体の総ての面の評価関数の値の極性が同一極性になることからマイクロマシン本体11の存否、すなわち解が存在するか否かが判別される。
【0051】
ステップS52におけるチェックによって、局所範囲内に逆問題の解が存在しないと判別されたとき、すなわち局所範囲内にマイクロマシン本体11が存在しないと判別されたときは隣の局所範囲に移動して(ステップS53)、測定空間Rの全部にわたって実行したか否かがチェックされ(ステップS54)、測定空間R内の全部にわたって実行していないときは、ステップS54に続いてステップS52が実行される。
【0052】
ステップS54において測定空間R内の全部にわたって実行したときは測定空間Rに解が存在する局所空間が見つからなかったときであって、ステップS54に続いて解なしの表示が表示装置6になされる(ステップS55)。
【0053】
ステップS52において解が存在する局所範囲が見つかったときは、ステップS52に続いて解が存在する局所範囲において、ニュートンラプソン法を適用して解を求め、求めた解が収束するか否かがチェックされる(ステップS56)。ここで、収束は例えば評価関数の値が10−3を閾値として、評価関数の値が10−3以下になったら収束したと判別する。これは評価関数の値が0のとき真に収束であるからである。
【0054】
ステップS56において解が収束すると判別されたときは初期値の設定がなされる(ステップS57)。ステップS56において解が収束しないと判別されたときは、評価関数の最小値(>0)を解とし(ステップS58)、ステップS58に続いて初期値の設定がなされる(ステップS57)。この場合において初期値は、解が存在する局所範囲が求まったとき、その局所範囲内の中心位置を初期値とすることが好都合である。
【0055】
上記のステップS51〜ステップS58では予め定めた領域内において解の存在を求め、その解が収束するか否かをチェックして初期値を設定しており、この解法を本明細書においては、局所解法とも記している。これは測定空間Rの領域より小さな空間内、すなわち5cm×5cm×5cmの立方体の空間内におけるマイクロマシン本体11の存在を求めているためである。
【0056】
ステップS57に続いて初期値に基づき解が存在した局所範囲においてニュートンラプソン法によって解を求め(ステップS59)、ステップS6が実行される。ステップS59を本明細書では局所解法とも記している。局所範囲内において解を求めているためである。
【0057】
このように解が内部に存在する局所領域を求め、解が存在する局所領域内で解を求めるために、すなわち局所解法によってマイクロマシン本体11の位置および方向を検出するために、測定空間R内を区分しないで順次解を求めていく場合に比較してきわめて早く解が得られ、すなわちマイクロマシン本体11の位置および方向が得られる。
【0058】
なお、マイクロマシン本体11の数が増加しても、それぞれのマイクロマシン本体11位置が、異なる局所範囲内に存在するときは、それぞれのマイクロマシン本体11に対して順次収束解が求められる。
【0059】
また、2つのマイクロマシン本体11が同一の局所範囲内に存在するような場合は、2つのマイクロマシン本体11による合成磁界のX軸、Y軸、Z軸の成分に基づいてマイクロマシン本体11の位置が測定される。
【0060】
上記した本発明の実施の一形態にかかるマイクロマシンの移動制御システムにおいて、測定空間Rを、例えば30cm×30cm×30cmの立方体として説明したが、この測定空間Rは使用するフラックスゲートセンサの感度および誤差とマイクロマシン本体11の磁気モーメントによって定められる。
【0061】
また分割した所定の範囲、すなわち局所範囲を5cm×5cm×5cmの立方体としたが、この局所範囲はニュートンラプソン法による演算時に収束する程度の範囲に選択すればよく、マイクロマシン本体11の数、マイクロマシン本体11と磁気センサーユニットとの距離、磁気センサーユニットの感度、マイクロマシン本体11の磁気モーメントに基づいて設定すればよい。
【0062】
なお、上記した本発明の実施の一形態にかかるマイクロマシンの移動制御システムにおいては、視覚的に遮蔽されたマイクロマシン本体11の位置および方向を検出する場合を例示したが、視覚的に遮蔽されていないマイクロマシン本体11の位置および方向を測定する場合も同様である。
【0063】
このようにして、前記位置検出処理基板5’により検出されたマイクロマシン本体11の位置と移動方向(向き)とは、その座標データとして前記コンピュータ5に出力され、その現在位置の座標データとコンピュータ5において予め設定されている目的位置の座標データとから、目的位置への最適な経路がコンピュータ5の処理プログラムにより形成された経路決定手段54により選出され、該選出された経路上をマイクロマシン本体11が移動するように、逐次その方向が経路決定手段54により決定されてその決定された方向へマイクロマシン本体11が誘導される。
【0064】
このマイクロマシン本体11の誘導(方向変更)の手法は、前記マイクロマシン本体11が前述のように磁界生成コイル12X〜12Zにより形成される回転磁界により発生する磁気トルク(回転)を利用して移動するが、この回転磁界の回転面を適宜に変更制御することでマイクロマシン本体11の進行方向である向きを変更することができる。すなわち、回転磁界回転面に対して垂直方向に進行する本マイクロマシン本体11の特徴を利用し、前記回転面を傾けることによりマイクロマシン本体11の進行方向が変更される。このため、本実施形態では、これら回転磁界の回転面を変更するために、X方向,Y方向,Z方向の各方向に磁界を形成するための3組の磁界生成コイル12X〜12Zを用い、前記経路決定手段54により決定された方向へマイクロマシン本体11が向くような回転面となるように、各磁界生成コイル12X〜12Zに印加される電流の強さと位相とを演算により算出して制御する回転磁界制御手段55が、プログラムにより形成されており、該回転磁界制御手段55にて算出された電流の強さと位相情報とが前記電源装置13に出力され、これら制御情報に基づき電源装置13により磁界生成コイル12X〜12Zに印加される電流の強さと位相とが制御されて、マイクロマシン本体11が目的の位置へ適宜に誘導されていく。
【0065】
以下、本実施形態のマイクロマシンの移動制御システムを用い、移動する固体媒体として細菌培養用の培地寒天を用いた際の実験結果を示す。前記図2に示すマイクロマシン本体11に、磁界強度150Oeの回転磁界を印加すると回転運動を行い前記寒天培地中を移動した。その移動速度は、回転磁界の回転周波数に大きく依存し、周波数1Hzでは、毎秒2mm、周波数50Hzでは、毎秒20mmの速度で進行した。さらに、回転磁界の磁界回転面を変化させることによりマイクロマシン本体11は寒天中でその進行方向を変えることが可能であった。図10はマイクロマシン本体11の進行方向制御実験の一例であり、磁界回転周波数0.5Hz、磁界強度150Oeにおいて、半径50mmで転回することが可能であり、スタート地点からゴール地点までの経路を、障害壁を回避しながら進行することが可能であった。
【0066】
また、前記マイクロマシン本体11を図9(c)に示すような、円柱形磁石の両端にら旋形状を有するドリル部を有するものを用いることで、前記回転磁界を変更することにより、マイクロマシン本体11の回転方向を容易に逆転でき、それによりロボットは後退できるので、適宜に切り返しを実施してより小さな回転半径で進行方向を変えることも可能である。
【0067】
以上、説明したような本実施形態のマイクロマシンの移動制御システムを用いれば、例えば医療等へのマイクロマシンの応用を考えた場合においては、これらマイクロマシン本体11を患部へ的確な経路を通じて誘導することが必須となるが、これらマイクロマシン本体11を非接触にてその目的位置へ的確に誘導することが可能となり、本発明のマイクロマシンの移動制御システムはマイクロマシンの医療等への応用を考えた場合に、非常に重要な技術と成り得るものである。
【0068】
以上、本発明の実施形態を図面により前記実施例にて説明してきたが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれることは言うまでもない。
【0069】
【発明の効果】
本発明は次の効果を奏する。
【0070】
(a)請求項1の発明によれば、投入されたロボット本体の位置は位置検出部で把握されており、回転磁界の向きを変えることで、進行しているロボットの方向制御を行いながらロボットを目的地へ確実に導くことができる。
【0071】
(b)請求項2の発明によれば、ロボット本体を到達させたい目的位置のみを入力しておくだけで、自動的にロボット本体を目的位置に到達させることが可能となる。
【0072】
(c)請求項3の発明によれば、前記ロボット本体は、外部から印加される回転磁界の回転面に垂直の姿勢を保ちながら推進を行う。このことから、磁界の回転面を変えることでマシンの推進方向も変えることができる。
【0073】
(d)請求項4の発明によれば、回転することによって推進力を得る推力発生部としてらせん、スクリュー等のメカ的手段が考えられる。この推力発生部は流体中の推進には好適であるが、本発明のマイクロマシンの進行先端にはドリル部が設けられているため、例え進行方向に固体ゲル状体が存在したとしても、マイクロマシンは移動可能であり、目的地に確実に到達できることになる。
【0074】
(e)請求項5の発明によれば、先端のドリル部を利用して進入した固体やゲル状体に対して、後端のドリル部を利用することによって後進推力が得られ、確実に目的地から離れることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態のマイクロマシンの移動制御システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に用いたマイクロマシン本体の構造を示す外観図である。
【図3】本発明の実施形態に用いた磁気センサーユニットの構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施形態に用いた磁気センサーユニットにおける同期検波回路の作用の説明に供する模式説明図である。
【図5】本発明の実施形態に用いた磁気センサーユニットによる磁界強さの検出の説明図である。
【図6】本発明の実施形態に用いた磁気センサーユニットと信号前処理回路と位置検出処理基板との接続図である。
【図7】本発明の実施形態に用いた位置検出処理基板における処理内容を示すフロー図である。
【図8】本発明の実施形態に用いた位置検出処理基板における作用の説明に供するフロー図である。
【図9】本発明の好適なその他の形状のマイクロマシン本体の構造を示す外観図である。
【図10】本発明の実施形態における進路変更の実験状況を示す図である。
【符号の説明】
1 磁気センサーユニット装着板
2,3 磁気センサーユニット
4 信号前処理回路
5 コンピュータ
5’ 位置検出処理基板
6 表示装置
11 マイクロマシン本体
12X,Y,Z 磁界生成コイル
20 基板
22 リング状コア
23 励磁コイル
24,25 磁界検出コイル
26,28 同期検波回路
27,29 ローパスフィルタ
41 A/D変換器群
42 インタフェース回路群
51 磁気モーメント演算手段
52 局所範囲判別手段
53 マイクロマシン位置算出手段
54 経路決定手段
55 回転磁界制御手段

Claims (11)

  1. 磁石の回転により推力を得るロボット本体に与える回転磁界を発生する磁界発生部と、
    前記ロボット本体の前記磁石が形成する磁界の向きと強さを検出して該検出した磁界の向きと強さから前記ロボット本体の3次元の位置および移動方向を検出する位置検出部と、
    前記位置検出部が検出した前記ロボット本体の3次元の位置および移動方向に基づき、前記ロボット本体を目的地へ到達させる方向へ向けるべく前記磁界発生部による回転磁界の向きを変更する磁界変向手段と、
    からなることを特徴とする移動可能なマイクロマシンの移動制御システム。
  2. 前記位置検出部が検出したロボット本体の3次元の位置および移動方向と、ロボット本体を到達させたい目的位置との情報に基づいて、ロボット本体が進行する最適条件での方向を割出し、前記磁界変向手段による回転磁界の向きの変更を制御する制御部を有してなる請求項1に記載の移動可能なマイクロマシンの移動制御システム。
  3. 前記位置検出部が検出した前記ロボット本体の現在位置および移動方向と目標位置とから最適な進行経路を決定する経路決定手段を備え、
    前記磁界変向手段は、前記経路決定手段が決定した前記進行経路上を前記ロボット本体が移動するように、前記回転磁界の向きを変更することを特徴とする請求項2に記載の移動可能なマイクロマシンの移動制御システム。
  4. 略円柱状の本体形状を有し、その長手方向の軸と垂直方向に磁化方向を有する磁石と、前記軸を中心とした回転を該軸方向への推進力に変換するら旋構造とを備えた医用マイクロマシンと、
    前記磁石が形成する磁界の向きと強さを検出して該検出した磁界の向きと強さから前記医用マイクロマシンの3次元の位置および移動方向を検出する位置検出部と、
    前記医用マイクロマシンを回転させるよう前記磁石に対して回転磁界を発生する磁界発生部と、
    前記磁界発生部を駆動する電力を供給する電源装置と、
    前記電源装置の出力電力を制御する回転磁界制御手段と、
    からなることを特徴とする医用マイクロマシン誘導システム。
  5. 前記位置検出部は、前記磁石が形成する磁界の向きと強さを検出する複数の磁界検出部を有し、前記磁界検出部が検出した磁界の向きと強さから前記医用マイクロマシンの位置および移動方向を検出することを特徴とする請求項に記載の医用マイクロマシン誘導システム。
  6. 前記位置検出部が検出した前記医用マイクロマシンの現在位置と目標位置とから最適な進行経路を決定する経路決定手段を備え、
    前記回転磁界制御手段は、前記経路決定手段の出力に基づき、前記磁界発生部が発生する回転磁界の向きを変更するように前記電源装置の出力電力を制御することを特徴とする請求項に記載の医用マイクロマシン誘導システム。
  7. 前記医用マイクロマシンは、前記ら旋構造を長手方向の先端に備えることを特徴とする請求項に記載の医用マイクロマシン誘導システム。
  8. 前記医用マイクロマシンは、前記ら旋構造を長手方向の先端および後端に備えることを特徴とする請求項に記載の医用マイクロマシン誘導システム。
  9. 前記医用マイクロマシンは、前記ら旋構造を本体側面に備えることを特徴とする請求項に記載の医用マイクロマシン誘導システム。
  10. 前記ら旋構造は、スパイラル状のワイヤにより形成されていることを特徴とする請求項のいずれか一つに記載の医用マイクロマシン誘導システム。
  11. 前記位置検出部は、前記医用マイクロマシンを前記位置検出部による測定空間から遠ざけたときに、前記磁界検出部が検出した磁界強度に基づいて地磁気の影響を補正することを特徴とする請求項6に記載の医用マイクロマシン誘導システム。
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