JP4498516B2 - 単結晶インゴット製造装置及び方法 - Google Patents

単結晶インゴット製造装置及び方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、チョクラルスキー法(以下、CZ法)により単結晶インゴット(特に、シリコン単結晶インゴット)を製造する単結晶インゴット製造装置及び方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
CZ法による単結晶の引き上げ方法は周知の技術であり、CZ法単結晶インゴット製造装置も広く普及している。CZ法により単結晶を得るにあたっては、原料融液から単結晶の引き上げが行われ、引き上げられる単結晶の結晶欠陥の低減等のために、引き上げ速度その他の条件が様々に設定されるが、最近では、欠陥形成温度領域を急冷し、結晶の欠陥サイズを小さくしてその後の熱処理でウェーハ表層を無欠陥層にするというようなことも行われている。また、急冷をすることによって、単結晶インゴットの生産効率を高めることもできる。
【0003】
引き上げられる単結晶の急冷を行うものとしては、CZ炉内にクーラーを配置したものが存在する(WO93/00462号公報(特許第2562245号))。そして、この公報にも示されているように、急冷を行うためのクーラーとしては、手軽さや構築の汎用性の観点からして、冷却水を通す冷却配管を採用するのが一般的である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、冷却水を通す冷却配管をクーラーとして採用した場合には、冷却配管が破損して冷却水が漏出してしまったときに、装置に多大なるダメージを与えるという問題がある。このような事故が生じてしまった場合には、単結晶インゴットの引き上げ環境に悪影響を及ぼすばかりでなく、ときには生産工程の停止という事態を招き、単結晶インゴットの安定供給が阻害されてしまう。
【0005】
本発明は以上のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、冷却水が流通する配管系からなるクーラーを備える単結晶インゴット製造装置において、漏水による装置故障を低減させる改良をなし、同時に、生産効率の最大化を達成するための条件追及をすることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
以上のような課題に鑑みて本発明者らが鋭意研究を行った結果、引き上げられる単結晶インゴットの結晶欠陥の調整を行うためのクーラーは、炉内の広大な領域に設置する必要は無く、限られた狭い領域に設置すれば十分であることを見出し、同時に、かかる限られた狭い領域に設置されたクーラーであっても、冷却水の流水量や流水速度、管径等を適切に設定することにより、単結晶インゴットの引き上げ速度を向上させて生産効率を上げるためのクーラーとして十分に機能することを確認し、本発明を完成するに至った。
【0007】
より具体的には、本発明は、以下のような装置及び方法を提供する。
【0008】
[チョクラルスキー法シリコン単結晶インゴット製造装置]
まず、本発明は、以下のようなチョクラルスキー法シリコン単結晶インゴット製造装置を提供する。
【0009】
(1) るつぼ内の原料融液から単結晶インゴットを炉内で引き上げるチョクラルスキー法(以下、CZ法)単結晶インゴット製造装置であって、引き上げ中の単結晶インゴット(以下、単結晶引き上げインゴット)を囲繞して融液液面からの輻射熱を遮蔽する熱遮蔽体と、この熱遮蔽体の内側に配置され、前記単結晶引き上げインゴットの所定の個所の冷却を行うクーラーと、を炉内に備えるCZ法単結晶インゴット製造装置において、前記クーラーは、冷却水が流通する冷却配管からなり、かつ、前記熱遮蔽体の内側の一部分に配置されており、前記クーラーの表面のうち前記単結晶引き上げインゴット側の表面に、PVD法による黒色膜が形成されていることを特徴とするCZ法単結晶インゴット製造装置。
このように熱吸収性を向上させるような表面処理が施されたクーラーを用いれば、本発明による冷却効果をより一層向上させることができ、更には冷却効果の向上によりクーラーを小型化することも可能となる。
【0010】
(2) 前記クーラーは、前記単結晶引き上げインゴットを囲繞するものであり、かつ、該クーラーの内径は前記熱遮蔽体の下端の内径よりも大きいことを特徴とする上記記載のCZ法単結晶インゴット製造装置。
【0011】
(3) 前記冷却配管の下端が融液液面から150mm以下の位置に位置することを特徴とする上記記載のCZ法単結晶インゴット製造装置。
【0012】
(4) 下記のいずれかの検出手段を、単独もしくは組み合わせで、それぞれ少なくとも一つは備えていることを特徴とする上記記載のCZ法単結晶インゴット製造装置。
▲1▼CZ炉の排気経路内に取り付けられる温度センサ。
▲2▼CZ炉内の排気を行うポンプの吸引量を追跡する追跡手段。
▲3▼CZ炉内もしくはCZ炉の排気経路内に取り付けられる赤外線吸光度測定センサ。
【0013】
(5) 前記るつぼ内の原料融液内に磁場を印加する磁場印加手段を備えていることを特徴とする上記記載のCZ法単結晶インゴット製造装置。
【0014】
(6) 前記磁場印加手段は、前記原料融液内に等軸対称的かつ放射状のカスプ磁場を作る磁場印加手段であることを特徴とする上記記載のCZ法単結晶インゴット製造装置。
【0015】
[CZ法単結晶インゴット製造装置の配管の設定方法]
(7) CZ炉内の配管に冷却用流体を流通させて引き上げ中の単結晶インゴットの急冷を行うCZ法単結晶インゴット製造装置の配管の設定方法であって、前記冷却用流体が流通する配管の下端の位置を低く設定すると同時に当該配管の内径を細くし、かつ、前記単結晶引き上げインゴットの直径に応じて前記冷却用流体の流通速度を調整することにより、前記単結晶引き上げインゴットの引き上げ方向の温度勾配を高めると共に装置の安定性を高め、かつ、前記配管のアレンジのフレキシビリティを高める方法。
【0016】
(8) 前記急冷に供する配管を、炉内の前記熱遮蔽体の内側の一部に配置することを特徴とする上記記載の設定方法。
ここで、冷却配管の内径が小さい場合には、万が一の漏水が生じてしまった場合でも、内径が大きい場合と比較して漏水量は少なくなる。そして、シリコン融液液面から150mm以下の部分(特に100mm以下の部分)においては、冷却配管の内径を小さくしても引き上げ方向の温度勾配に寄与する冷却効果に大きな変化は生じないことが本発明者らにより確認されている。従って、当該部分において冷却配管の内径を小さくするということは、引き上げ方向の温度勾配の調整に寄与させるための冷却効果を維持しながらにして漏水による装置故障を低減させることができるということを意味することになる。そしてそれは、同時に、引き上げ速度のアップによる生産効率の向上を実現することにもつながる。
【0017】
本発明に係る方法によって配管アレンジのフレキシビリティを高めることができるのは、配管が細ければそれだけ収容容積が少なくて済み、また、折り曲げ等の加工も容易になるからである。しかしながら本発明は、冷却効果を低減させずに、しかも安全性が向上した状態で、配管アレンジのフレキシビリティを高めることができるという点で、意義を有する。特に、炉内の前記熱遮蔽体の内側の一部に配管を配置したときにはその意義は大きい。
【0018】
[単結晶引き上げインゴットの温度勾配調整方法]
本発明に係るクーラーは、単結晶インゴットの引き上げ方向の温度勾配を大きくするために、所定の場所を重点的に冷却するものであるので、本発明は、その別の側面として、以下のような方法も包含する。
【0019】
(9) 炉内で引き上げ中の単結晶インゴットを囲繞して融液液面からの輻射熱を遮蔽する熱遮蔽体と、この熱遮蔽体の内側に配置され、前記単結晶引き上げインゴットの所定の個所の冷却を行うクーラーと、を炉内に備えるCZ法単結晶インゴット製造装置に適用される方法であって、前記熱遮蔽体の内側の一部に前記クーラーを配置することにより、前記単結晶引き上げインゴットの引き上げ方向の温度勾配を調整する方法。
【0025】
[単結晶引き上げインゴットの温度勾配調整方法の他の態様]
さらに、本発明は、熱吸収性を向上させるような表面処理が施されたクーラーを用いた以下のような方法も包含する。
【0026】
(13) 前記クーラーとして前記単結晶引き上げインゴット側の表面に熱吸収性を向上させるような処理が施されたクーラーを用いることにより、前記クーラーによる吸熱効果を高めながら前記単結晶引き上げインゴットの引き上げ方向の温度勾配を調整する上記(9)記載の方法。
【0027】
[用語の定義等]
この装置において、「冷却配管の下端が融液液面から150mm以下の位置」とあり、冷却配管の下端の上限は融液液面から150mmの位置であるが、冷却配管の下端の下限は、シリコン融液液面に接触しない程度の距離であり、融液液面の輻射熱による異常等がクーラーに生じない程度の距離であるのが好ましい。
【0028】
CZ炉内の排気を行うポンプの吸引量を追跡する「追跡手段」としては、ポンプの吸引量を追跡してその変化を検出する流量センサのようなものを別途に設けているようなものでもよく、ポンプ自体がそのような検出機構を何らかの形で備えているものでもよい。即ち、ポンプはそれ自体、例えばインバーター制御されている場合には、吸引量の変化は消費電力の変化として表れるが、前記「追跡手段」としては、当該消費電力の変化をポンプ自身がとらえる場合も含まれる。
【0029】
「単独もしくは組み合わせ」という用語に関し、「単独」というのは、上記▲1▼、▲2▼または▲3▼のいずれか一つを採用するということであり、「組み合わせ」というのは、▲1▼と▲2▼、または▲1▼と▲3▼、または▲1▼と▲2▼と▲3▼というように、異なる二つ以上のものの組み合わせを意味する。また、「それぞれ少なくとも一つは備えている」というのは、▲1▼単独の場合には▲1▼と▲1▼、▲1▼と▲2▼の組み合わせの場合には例えば▲1▼と▲1▼と▲2▼というように、同種類の二つ以上のものの組み合わせも許容する意味である。即ち、温度センサ2個に流量センサ1個、というような形態を採用することも、この装置の概念に含まれることになる。
【0030】
「温度センサ」とは、例えば熱電対のようなものである。また、「流量センサ」は、何らかの形で気体の流量を測定するものを意味し、気体の通過量を測定するものも、気体の通過速度を直接測定するものも含まれる。「赤外線吸光度測定センサ」は、赤外線の吸収量を測定するものでも、赤外線の吸収率を測定するものでもよい。また「赤外線吸光度測定センサ」は、反射タイプ、透過タイプの種別を問わない。
【0031】
「るつぼ内の原料融液内に磁場を印加する磁場印加手段」としては、例えば特開昭56−45889号公報に開示されているようなものを使用することができる。また、「カスプ磁場を作る磁場印加手段」としては、特開昭58−217493号公報に開示されているようなものを使用することができる。
【0032】
「冷却用流体」は代表的には水であるが、この方法の場合には効率良く熱を運ぶものであればその種類は限られないので、水以外の気体、液体も使用することができる。
【0033】
「熱吸収性を向上させるような処理」の例としては、実施の形態にて後述するような「黒色膜の形成処理(即ち黒色の着色処理)」を含む処理だけでなく、着色処理を行うにしても、赤外線の反射率を低減させるような色であれば黒色でなくてもよい(例えば褐色、赤黒色等の着色処理)。また、このような黒色処理以外の着色処理の他にも、例えば、クーラーの形状や表面の状態を変化させて熱反射率を低減させる処理(例えば表面に凹凸を形成するような処理等)も含まれる。
【0034】
更に、「黒色の着色処理を含む処理」という用語に関し、「含む」というのは、前記「熱吸収性を向上させるような処理」に「黒色の着色処理」以外の処理が含まれていても構わないという意味である。従って例えば、上記の「黒色の着色処理」に、当該黒色処理以外の着色処理を含む処理や、クーラーの形状や表面の状態を変化させて熱反射率を低減させる処理(例えば表面に凹凸を形成するような処理等)が伴われていてもよい。
【0035】
「PVD法」には、後述の実施の形態で採用したスパッタリング、イオンプレーティングの他、真空蒸着も含まれる。しかしながら、形成された膜の密着性が高いイオンプレーティングを用いるのがより好ましい。また、膜の構成元素のバラエティを考慮した場合にはスパッタリングを用いるのが好ましい。
【0036】
本発明に係る方法及び装置は、引き上げられる単結晶インゴットの種類に影響されるファクターが無く、CZ法一般に適用できる方法であると考えられるので、引き上げられる単結晶インゴットがシリコン単結晶インゴットである場合に限られない。
【0037】
【発明を実施するための形態】
図1は本発明に係るシリコン単結晶インゴット製造装置の好適な実施形態を示すブロック図である。
【0038】
[全体構成]
本発明に係るシリコン単結晶インゴット製造装置は、通常のCZ法シリコン単結晶インゴット製造装置と同様に、密閉容器たるチャンバー11内に、シリコン融液12の製造・貯蔵のためのルツボ13と、このルツボ13を加熱するためのヒータ14と、を備えている。そして、この他にも適宜、通常のCZ法シリコン単結晶インゴット製造装置と同様に、ヒータ14に電力を供給する電極、ルツボ13を支持するルツボ受け、ルツボ13を回転させるペディスタル、断熱材、メルトレシーブ、内筒などが備え付けられる。また、この装置には、シリコン融液12及びヒータ14からシリコンインゴット17への熱の輻射を遮蔽するための熱遮蔽体18と、この熱遮蔽体18の内側に配置されたクーラー19と、が備え付けられている。
【0039】
更に、本発明に係るシリコン単結晶インゴット製造装置は、特に図示していないが、この種のCZ法シリコン単結晶インゴット製造装置に通常装備される不活性ガスの導入・排気システムを備えている。そして、このようなシステム下にあって、熱遮蔽体18は不活性ガスの流通路を調整する働きも兼ね備えている。また、この装置においては、チャンバー11内の排気を行う真空ポンプ20が接続されている(なお、スロットルバルブの開度を検出するようにしたり、供給される電力量を検出するようにしたりする手段を真空ポンプ20に備え付けることにより、後述の圧力センサを別途に設ける必要がなくなる)。
また更に、本発明に係るシリコン単結晶インゴット製造装置は、シリコン融液12にカスプ磁場を与えるソレノイド51及び52が備え付けられている。このソレノイド51及び52によってシリコン融液12にカスプ磁場が印加されることにより、シリコン融液12内に生じる微小な対流を消滅させることができ、結晶欠陥の低減や安定した引き上げなどを更に増進することができるようになる。
【0040】
[クーラー]
本発明に係るシリコン単結晶インゴット製造装置において特徴的なことは、その中を冷却水が流通する配管で構成されたクーラー19が熱遮蔽体18の内側の一部分に配置されていることであり、その下端19aとシリコン融液液面12aからの距離Lが150mm以下に設定されていることである。既に説明をした通り、クーラー19の下端19aをこの範囲に設定することで、かかる部分における温度勾配の増大を通じて結晶欠陥サイズの微小化が図れ、同時に、シリコン単結晶インゴットの引き上げ速度を高めることができ、それによって生産効率の向上が実現できる。なお、本発明に係るクーラー19自体の高さ(配管の下端から上端までの長さ)は、100mmもあればそれで十分である。
【0041】
配管で構成されているクーラー19の中には冷却水が流通されるが、冷却水は、供給管21aを介して供給される。この供給管21aを含む給排管21(供給管21aと排出管21bのセットからなる)をチャンバー11内に貫入する個所には、蛇腹部材23が取り付けられており、これによって気密が保たれるようにされている。そして、クーラー19自体は動かない一方で、ルツボ13の下部に設けられている図示しないリフタによってルツボ13が上下に移動する。本装置においては、シリコン単結晶インゴットの引き上げに伴うシリコン融液液面12aの下降に応じてルツボ13が上昇し、クーラー19の下端19aと間の距離Lが常に150mm以下となるように調整される。
【0042】
この実施の形態において、クーラー19を構成する配管の内径は17mm以下であり、配管内を流通する冷却水の流通速度は15リットル/分以下に設定される。配管の内径は、同様の従来技術と比較して、断面積にして半分程度という小さいものとなっているが、そうであったとしても、距離Lが150mm以下であれば、欠陥形成温度領域に対する引き上げ方向の温度勾配への寄与という観点からの冷却効果に大きな差は生じないことは既に述べた通りである。しかしながら、配管の内径を小さくすることにより、クーラー19に滞留する水量が少なくなるため、万が一クーラー19の冷却配管が破損してしまい、水の漏出が起きてしまった場合でも、クーラー19に滞留する水量が少ないことに対応して漏出水量も少ないので、従来の同タイプの装置と比較すると、水漏れが生じてしまった場合の被害を小さいものに留めることができる。即ち、本装置によれば、生産効率を向上させつつ、水漏れ時の被害を低減することができることになる。
【0043】
また、本発明に係るクーラー19は、輻射率を高めて吸熱量を高くするために、シリコンインゴット17側の表面(シリコンインゴット17に対向する表面)に黒色膜が形成されているが、この黒色膜は、PVD法(低温(200〜400℃)での均一なコーティング処理)により形成している。
ここで、PVD法により形成した黒色膜(発色膜)の特性を以下の表1に示す。なお、下記の表において、「赤外吸収率75%程度」というのは、黒色膜を形成しない場合よりも赤外吸収率が向上していることを示している。
【0044】
【表1】
Figure 0004498516
【0045】
このようにクーラー19のシリコンインゴット17側の表面に黒色膜を形成して当該シリコンインゴット17側表面の輻射率を向上させているので、吸熱量が多くなり冷却効果をより向上させることができる。このため、クーラー19のシリコンインゴット17側の表面に黒色PVD処理を施すことにより、シリコンインゴット17の引き上げ速度を高めることができる。
【0046】
また、PVD法で膜を形成することにより、以下のような利点も得ることができる。
【0047】
(1)PVD法による膜は耐熱温度が600℃程度であるため、トラブルの発生等でクーラー19への冷却水が遮断された場合でも膜が変質する可能性を著しく低減させることができる。例えば黒色の膜を形成する処理としてこれまで行われてきたインコ法では、膜(インコ膜)の耐熱温度が200℃であるため、冷却水停止時には膜が変質してしまう恐れがある。
【0048】
(2)PVD法による膜は強度や耐熱性に優れているため、加工、設置、使用時等において傷つき難く、膜が剥離する恐れが低減される。
従って、制作加工時や設置の際に何か硬いものとぶつかってしまった場合にも、黒色膜が剥離するのを防ぐことができる(インコ膜は膜の強度やSUS母材への密着強度が弱いため、黒色膜まで剥離してしまうことがあった)。
【0049】
また、このように黒色膜が剥離される恐れが少ないため、黒色膜が汚染源になりにくいという利点もある。
【0050】
さらに、クーラー19表面に付着したアモルファスSiOを除去する際に、黒色膜まで剥離されてしまうのを防ぐこともできる(インコ法では黒色膜まで剥離してしまう恐れがあった)。また、アモルファスSiOの除去も容易になる。
【0051】
このように本発明によれば剥離され難い黒色膜を形成しているので、装置の繰り返し使用の際の確実性を増加させることができる他、クーラーを小型化したときに問題となる黒色膜の剥離が全体に与えるダメージを低減させることができる。
【0052】
[安全対策]
この実施の形態に係るシリコン単結晶インゴット製造装置においては、チャンバー11内の圧力変化を追跡する圧力センサ31と、真空ポンプ20で吸引されるチャンバー11内の気体の温度変化を見る温度センサ33と、真空ポンプ20で吸引されるチャンバー11内の気体の赤外線吸収を見る赤外線センサ34と、が取り付けられている。これは、クーラー19の配管に水漏れが生じた場合には、炉内の熱によってその水漏れ水が水蒸気となり、それが温度変化ないしは圧力変化を生じさせるので、それを検出することによって水漏れを的確に察知しようとするものである。赤外線センサ34は、水蒸気には赤外線吸収があることから、それを測定することによって、水漏れ検出の確実性を増大させるために設置されている。
【0053】
これらの各センサについては、いずれか一つが設置されていれば、水漏れを察知することは十分に可能であるが、検出の万全を期すという観点から、適当に組み合わせて複数個設置するようにしてもよい。また、同様の観点から、同種類のセンサを複数個設置することも妨げられない。
【0054】
なお、温度センサ33は、比較的多量の水蒸気が存在しなければ他の条件変化と区別可能な感応をしないため、水蒸気による温度変化を的確にキャッチするためには水蒸気が集中する場所に取り付けられるべきであるので、基本的には排気経路(即ち、真空ポンプ20に接続されている管)に取り付けられるのが好ましい。これに対し、赤外線センサ34は微量の水蒸気でも直ちに検出できるので、排気経路だけでなく、チャンバー11の内壁面など、あらゆるところに取り付けることが可能である。
【0055】
ここで、上記各センサは、コントローラ35に接続されている。この実施の形態においては、圧力センサ31は直接的に、温度センサ33及び赤外線センサ34は、それぞれ対応する処理装置33a及び34aを介してコントローラ35に接続されている。
【0056】
たとえば、水蒸気の発生によるチャンバー11内の圧力上昇が圧力センサ31によって検出された場合、水蒸気の発生による排気ガスの高温化が温度センサ33によって検出された場合、赤外線センサ34によって水蒸気の吸収帯での異常な吸収が認められた場合、或はこれらの事態が同時に検出された場合には、コントローラ35が作動して、表示器36を点灯させ、冷却水の流入を調整する電磁弁37を閉じて冷却水の流入をストップし、それと同時に、普段は閉じられている電磁弁39を開き、排出管21bの末端を大気に開放する。そうすると、水漏れが生じた場合には、水漏れ水が水蒸気となって圧力が増すので、その場合には、電磁弁39を通ってクーラー19内の冷却水が外部に排出され、シリコン融液中に落ちる水の量を低減させることができる。
【0057】
なお、この大気への開放を行う管は、供給管21aにも接続されており、クーラー19内にこれから供給されようとしていたものをも排出することができる。このため、水漏れ時には、クーラー19内に滞留している冷却水が可能な限り多く排出されるので、装置に対するダメージが少なくなり、そのような場合でも装置の操業停止等の事態が回避できることとなる。但し、この実施の形態に係るシリコン単結晶インゴット製造装置においては、非常事態に対する万全を期すために、その対策として、チャンバー11には安全弁40が取り付けられている。また、冷却水の流出管や大気開放管にも逆止弁41から43が取り付けられており、非常事態に対する万全が図られている。
【0058】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る単結晶インゴット製造装置は、単結晶インゴットの融液液面近くを的確に冷却することによって、引き上げ方向の温度勾配を大きくすることに寄与し、結晶欠陥サイズの微小化と生産効率の向上が実現できると共に、少量の冷却水で冷却を行うことを実現することができ、単結晶インゴットの生産効率の向上と漏水事故によるダメージの低減を同時に図ることができる。
【0059】
さらに、クーラーのシリコンインゴット側の表面に吸熱性を向上させるような処理を施しているので、冷却効果をさらに向上させることができ、クーラーを小型化した場合には、本発明における漏水時のダメージ低減という効果に一層貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るシリコン単結晶インゴット製造装置の好適な実施形態を示すブロック図である。
【符号の説明】
11 チャンバー
12 シリコン融液
12a シリコン融液液面
13 ルツボ
14 ヒータ
17 シリコンインゴット
18 熱遮蔽体
19 クーラー
19a クーラーの下端
20 真空ポンプ
23 蛇腹部材
L クーラーの下端19aとシリコン融液液面12aの間の距離
31 圧力センサ
33 温度センサ
34 赤外線センサ
33a,34a 処理装置
35 コントローラ
36 表示器
37,39 電磁弁
40 安全弁
41〜43 逆止弁
51,52 ソレノイド

Claims (5)

  1. るつぼ内の原料融液から単結晶インゴットを炉内で引き上げるチョクラルスキー法(以下、CZ法)単結晶インゴット製造装置であって、引き上げ中の単結晶インゴット(以下、単結晶引き上げインゴット)を囲繞して融液液面からの輻射熱を遮蔽する熱遮蔽体と、この熱遮蔽体の内側に配置され、前記単結晶引き上げインゴットの所定の個所の冷却を行うクーラーと、を炉内に備えるCZ法単結晶インゴット製造装置において、
    前記クーラーは、冷却水が流通する冷却配管からなり、かつ、前記熱遮蔽体の内側の一部分に配置されており、
    前記クーラーの表面のうち前記単結晶引き上げインゴット側の表面に、PVD法による黒色膜が形成されていることを特徴とするCZ法単結晶インゴット製造装置。
  2. 前記クーラーは、前記単結晶引き上げインゴットを囲繞するものであり、かつ、該クーラーの内径は前記熱遮蔽体の下端の内径よりも大きいことを特徴とする請求項1記載のCZ法単結晶インゴット製造装置。
  3. 前記冷却配管の下端が融液液面から150mm以下の位置に位置することを特徴とする請求項1または2記載のCZ法単結晶インゴット製造装置。
  4. 下記のいずれかの検出手段を、単独もしくは組み合わせで、それぞれ少なくとも一つは備えていることを特徴とする請求項1から3いずれか記載のCZ法単結晶インゴット製造装置。
    1.CZ炉の排気経路内に取り付けられる温度センサ。
    2.CZ炉内の排気を行うポンプの吸引量を追跡する追跡手段。
    3.CZ炉内もしくはCZ炉の排気経路内に取り付けられる赤外線吸光度測定センサ。
  5. 前記冷却配管の管径は17mm以下であることを特徴とする請求項3記載のCZ法単結晶インゴット製造装置。
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