JP4718661B2 - シリコン種結晶の転位排除方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、引上げ単結晶冷却のためのクーラーを備え、かつ、ダッシュネック法によるシリコン種結晶からの転位排除を円滑に行うことができるCZ法単結晶引上げ方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
チョクーラールスキー法(CZ法)により単結晶を引き上げるCZ法単結晶引上げ装置において、引上げ単結晶を冷却するクーラーをCZ炉内に設置したものが最近使用されるようになってきている。このような炉内クーラー設置型のCZ法単結晶引上げ装置については、それを使用することによって単結晶引上げ速度の著しい高速化が可能となり、その結果として単結晶インゴットやウエハの製造効率を高めることができるようになるので、その意義は大きい。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本発明者らによる研究の結果、ダッシュネック法(W.Dash : J. Applied Physics 30(1959)P459)によってシリコン種結晶から転位(主に、種結晶を融液に浸漬させたときに、その際の熱衝撃によって発生する転位)の排除をしようとしたときに、クーラーが存在した場合には当該シリコン種結晶から転位が抜け難くなるということが判明した。
【0004】
本発明は以上のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、CZ炉内にクーラーを備えると共に、ダッシュネック法によるシリコン種結晶から転位の排除を円滑に行うことができるCZ法単結晶引上げ方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
以上のような目的を達成するために、本発明においては、ダッシュネック法によってシリコン種結晶から転位の排除を行っている際には、クーラーが融液液面から遠ざかっているようなCZ法単結晶引上げ方法を提供することとしている。
【0006】
本発明の完成には、融液液面上方に熱遮蔽体があり、更にその上方に冷却コイルがあるという構成をとった場合には、ダッシュネック法を応用した特定の条件下でしか無転位化は不可能であるということが実験的に明確となったという本発明者らの研究成果が大いに貢献している。
【0007】
なお、本発明に類似する技術としては、特開平11−189488号公報に記載の発明では、融液液面と熱遮蔽体下端との距離を所定の範囲にすると同時に着液前の種結晶と融液との温度差を小さくすることで、ネッキング工程無しで無転位化を実現したとしているが、クーラーが種結晶近傍に存在する場合には、無転位化を実現させることは不可能である。また、結晶冷却を目的にメルト上方に冷却手段を用いた例として、特開平4−317491号公報や特開平8−239291号公報に記載の発明が存在するが、種結晶着液後の無転位化についての具体的な方法はいっさい開示されていない。
【0008】
より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0009】
(1) 融液を貯留するルツボと融液液面の上方に配置される熱遮蔽体及びクーラーとを備えたCZ法シリコン単結晶引上げ装置を用いてシリコン単結晶を製造する際に、ダッシュネック法によってシリコン種結晶から転位を排除するシリコン種結晶の転位排除方法において、
融液液面から熱遮蔽体下端までの距離と融液液面からクーラー下端までの距離との組み合わせで定義される無転位化領域を決定し、
ダッシュネック法によるシリコン種結晶の種絞りを行う際に、融液液面から熱遮蔽体下端までの距離と融液液面からクーラー下端までの距離との組み合わせが前記無転位化領域内に入るように、融液液面から熱遮蔽体下端までの距離と融液液面からクーラー下端までの距離とを調整することによって、シリコン種結晶から転位を排除する
ことを特徴とするシリコン種結晶の転位排除方法。
(2) 融液液面から熱遮蔽体下端までの距離と融液液面からクーラー下端までの距離を、熱遮蔽体及びクーラーを昇降させることによって調整する
ことを特徴とする(1)に記載のシリコン種結晶の転位排除方法。
【0012】
本発明においては、ダッシュネック法による種絞り操作を行っている最中には、基本的には、クーラーも、熱遮蔽体も、シリコン融液液面から遠ざけられることとなるが、その位置は、ダッシュネック法による転位の排除効に悪影響を及ぼさない位置であり、最も好ましいのは、後の実施の形態において示される「無転位化領域」(この領域は、後の実施の形態で図面を参照して示されるように、融液液面からクーラー下端までの距離と熱遮蔽体下端までの距離とでマッピングした一定の領域として捕らえることができる)に属する位置であり、クーラー及び熱遮蔽体がそこに位置している場合には、クーラー及び熱遮蔽体がCZ炉内に存在し無い場合と同じくらいの効果(ダッシュネック法による転位の排除効)が得られる。
【0021】
なお、シリコンインゴットからウエハを切り出す場合には、当該シリコンインゴットの製品対象領域からの切り出しが行われるのが一般的であるが、研究用やダミー用のウエハを切り出すときなど、場合によってはショルダー部分やテール部分からの切り出しが行われる場合もある。
【0022】
【発明を実施するための形態】
図1は本発明に係るCZ法単結晶引上げ装置の好適な実施形態を示すブロック図である。
【0023】
[全体構成]
本発明に係るCZ法単結晶引上げ装置は、通常のCZ法CZ法単結晶引上げ装置と同様に、密閉容器たるチャンバ11内に、シリコン融液12の製造・貯蔵のためのルツボ13と、このルツボ13を加熱するためのヒータ14と、を備えている。そして、この他にも適宜、通常のCZ法CZ法単結晶引上げ装置と同様に、ヒータ14に電力を供給する電極、ルツボ13を支持するルツボ受け、ルツボ13を回転させるペディスタル、断熱材、メルトレシーブ、内筒などが備え付けられる。また、この装置には、シリコン融液12及びヒータ14から引上げ単結晶17への熱の輻射を遮蔽するための熱遮蔽体18と、この熱遮蔽体18の内側に配置されたクーラー19と、が備え付けられている。
【0024】
このようなCZ法単結晶引上げ装置は、通常のCZ法CZ法単結晶引上げ装置と同様に、引上げ単結晶17とルツボ13が逆方向に回転しながら単結晶の引上げが行われる。ここで、ルツボ13は、ルツボ13の下部に設けられている図示しないリフタによってルツボ13が上下に移動する。ルツボ13の上下移動は、特に断わらない場合には、シリコン単結晶インゴットの引き上げに伴うシリコン融液液面12aの下降に応じてルツボ13が上昇する、というような形態で行われる。
【0025】
なお、本発明に係るCZ法単結晶引上げ装置は、特に図示していないが、この種のCZ法CZ法単結晶引上げ装置に通常装備される不活性ガスの導入・排気システムを備えている。そして、このようなシステム下にあって、熱遮蔽体18は不活性ガスの流通路を調整する働きも兼ね備えている。また、この装置においては、チャンバ11内の排気を行う真空ポンプ20が接続されている(なお、スロットルバルブの開度を検出するようにしたり、供給される電力量を検出するようにしたりする手段を真空ポンプ20に備え付けることにより、後述の圧力センサを別途に設ける必要がなくなる)。
【0026】
また、本発明に係るCZ法単結晶引上げ装置は、シリコン融液12にカスプ磁場を与えるソレノイド51及び52が備え付けられている。このソレノイド51及び52によってシリコン融液12にカスプ磁場が印加されることにより、シリコン融液12内に生じる微小な対流を消滅させることができ、結晶欠陥の低減や安定した引き上げなどを更に増進することができるようになる。
【0027】
更に、図2に示されるように、本発明に係るCZ法単結晶引上げ装置は、シリコン融液液面12aと熱遮蔽体18の底面との間の距離、若しくは、シリコン融液液面12aとクーラー19の底部との間の距離を検出するメルトレベルセンサ45を備え、るつぼの上下移動によって変化する液面レベルの検出を適確に行うことができる。このため、熱遮蔽体18の底面とシリコン融液液面12aとの間の距離や、クーラー19の底部とシリコン融液液面12aとの間の距離について、これらが、後で説明するダッシュネック法による欠陥排除効が得られる距離となるように精度良く制御することができる。
【0028】
[クーラー]
本発明に係るCZ法単結晶引上げ装置においては、その中を冷却水が流通する配管で構成されたクーラー19が熱遮蔽体18の内側に配置されている。このクーラー19は、図1及び図2に示されるように、引上げ単結晶17を囲繞する配管の積層体(冷却管スタック)で構成されており、この配管の中に冷却水が流通される。冷却水は、供給管21aを介して供給される。この供給管21aを含む給排管21(供給管21aと排出管21bのセットからなる)をチャンバ11内に貫入する個所には、蛇腹部材23が取り付けられており、これによって気密が保たれるようにされている。
【0029】
この実施の形態において、クーラー19を構成する配管の内径は17mm程度であり、配管内を流通する冷却水の流通速度は15リットル/分以下に設定される。ここで、配管の径を小さくした場合において、あまりにも小さくしてしまった場合には十分な冷却効果が得られないこととなってしまうが、ある程度小さくした場合には、冷却効果にはさほどの支障は出ない。そしてこの場合には、クーラー19に滞留する水量が少なくなる分だけ、万が一のクーラー19の破損の場合の水漏れ被害を低減させることができる。
【0030】
なお、クーラー19の下端19aとシリコン融液液面12aからの距離は、通常は150mm程度に設定されている。クーラー19をCZ炉内に設置することで、単結晶直胴部における温度勾配の増大を通じて結晶欠陥サイズの微小化が図れ、同時に、シリコン単結晶インゴットの引き上げ速度を高めることができ、それによって生産効率の向上が実現できる。
【0031】
[クーラーの移動]
<クーラー昇降装置(鉛直方向への直線状上下移動)>
本発明に係るCZ法単結晶引上げ装置において特徴的なことは、その中を冷却水が流通する配管で構成されたクーラー19がCZ炉内を移動することであり、この実施の形態においては、まず最初に、クーラー19の移動は「昇降」という実施態様で示される。
【0032】
即ち、本発明に係るクーラー付CZ法シリコン単結晶引上げ装置おいては、図1に示されるように、クーラー19をCZ炉内で昇降させる昇降装置25が備え付けられており、この昇降装置25の駆動によって、引上げ単結晶17の周囲を囲繞するクーラー19の冷却管スタックが上下方向に移動する。
【0033】
ここで、図2は、昇降装置25の機能構成を説明するためのブロック図である。なお、同図において、図1と同一の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。また、簡潔に説明を行う都合上、説明に不要な部材・構成要素については省略をする一方で、図1では省略されている部材・構成要素を適宜付加している。
【0034】
図2に示されるように、この実施の形態において、昇降装置25は、蛇腹部材23の上部に取り付けられた昇降ブロック23a(架橋部材)と、この昇降ブロック23aに螺合する螺子棒体25aと、この螺子棒体25aを回動させるモータ26aと、からなる。なお、この実施の形態において、昇降ブロック23aと螺子棒体25aとの螺合はボールネジにより行われている。
【0035】
以上のような形態の昇降装置25によれば、螺子棒体の軸方向の移動が確実に行え、かつ、移動速度の変更も適確かつ自在に行うことができるという利点を有する。より具体的には、螺子棒体軸方向の等速運動は勿論のこと、突然の停止や逆回転位動速度の変更も自在に行うことができる。
【0036】
因みに、本発明に係るCZ法単結晶引上げ装置においては、30mm/minと300mm/minの2段階で移動速度が変わることとされており、後で説明する装置の安全確保等の際に、その機能が活用されることとなる。
【0037】
また、以上のような形態の昇降装置25によれば、駆動機構であるモータ26aが停止した場合でも、クーラーが支えられた状態となり、クーラーの位置が維持されることとなるので、エネルギーの節約にもなる。
【0038】
因みに、この実施の形態で説明する全てのタイプの昇降装置は、図1に示されるようにシリコン融液に磁場が印加される場合には、当該磁場に対応するために、ステンレス製にしたり、磁場の影響のない位置に設置したり、或いは筐体で覆ったりというような何らかの対策を施す必要がある。
【0039】
<斜め方向の移動>
図3は、斜め方向にクーラーが移動する場合の実施形態を説明するためのブロック図である。同図において、図1及び図2と同一の構成要素には同一符号を付し、機能が同一の均等要素には下2桁が同じ100番台の符号を付してある。
【0040】
この図3に示されるように、斜め方向に移動するクーラーにおいては、昇降装置自体は図1に示される鉛直方向移動型のクーラーに対するものと同じであるが、クーラーを構成する冷却管スタックが2個に分割されているところが相違している。そして、このような特徴的な構成のために、この実施形態に係るクーラー付CZ法シリコン単結晶引上げ装置おいては、クーラーが斜め方向に上昇したときには当該冷却管スタックが開くこととなる。
【0041】
この実施形態に係るクーラー付CZ法シリコン単結晶引上げ装置の構成と動作を具体的に説明すると、この装置において、冷却管スタックからなるクーラー119を斜め方向に移動させるための昇降装置125の構成は、図1に示される昇降装置25と基本的には同じであり、昇降装置125は、蛇腹部材123の上部に取り付けられた昇降ブロック123a(架橋部材)と、この昇降ブロック123aと螺合する螺子棒体125aと、この螺子棒体125aを回動させるモータ126aと、からなる。なお、この実施の形態において、昇降ブロック123aと螺子棒体125aとの螺合も、図1に示される昇降装置25と同様に、ボールネジにより行われている。
【0042】
ここで、この実施の形態に係るクーラーにおいて特徴的なことは、冷却管スタックで構成されているクーラー119が2個のクーラーブロック119a及び119bに分割されていることである。このクーラーブロック119a及び119bは、それぞれ、図4A及び図4Bに示されているように、ブロック全体が半円筒状となるように冷却管を巻いて構成しており、クーラーブロック119aとクーラーブロック119bの2つが合わさると円筒状を構成するようにされている(図5A)。このため、斜め方向からの移動によっても、クーラーで単結晶の所定の位置を冷却し、必要の無いときには別の箇所に退避させることができる。
【0043】
このような斜め方向移動型のクーラー119は、単結晶の冷却位置の変更をするための使用には向かないが、図1に示される鉛直方向移動型のクーラーと比較して、冷却引上げ環境の設定・解除の切り替えを適確かつ簡易・迅速に行うことができるという利点を有している。
【0044】
なお、斜め方向移動型のクーラー119を構成するクーラーブロック119a及び119bについて、この実施の形態では半円筒状のものだけを示しているが(図5A参照)、これには限られず、例えば中心角を120度にして円筒を3分割したものや(図5B参照)、中心角を90度にして円筒を4分割して構成したもの(図5C参照)など、全てが一体となって円筒形若しくは円筒形に近い形状のものを構成できるあらゆる形態を採用することができる。当然のことながら、分割した場合の中心角は均一でなくてもよい(図5D参照)。
【0045】
<回転位動>
図6は、回転位動するクーラーを備えたクーラー付CZ法シリコン単結晶引上げ装置の実施形態を説明するためのブロック図である。同図において、図1に示される鉛直方向移動型のクーラーを備えるクーラー付CZ法シリコン単結晶引上げ装置と同一の構成要素には同一符号を付し、機能が同一の均等要素には下2桁が同じ200番台の符号を付してある。
【0046】
図6に示されるように、回転位動型のクーラー219も、鉛直方向移動型のクーラー19と同様に冷却管のスタックから構成されており、この中を冷却水が流通することによって単結晶の冷却を行う。
【0047】
この回転位動型のクーラー219において特徴的なことは、回動軸71を中心にしてクーラー219が回転位動することである。即ち、図6のCZ法シリコン単結晶引上げ装置においては、クーラー219の回転位動によって当該クーラー219が持ち上げられた後(図6A)、蛇腹部材223が伸びて、当該蛇腹部材223内にクーラー219が収容される(図6B)。
【0048】
ここで、蛇腹部材223の伸縮は、水平移動装置225によって行われるが、この水平移動装置225は、図1に示される鉛直方向移動型のクーラー19や図3に示される斜め方向移動型のクーラー119の昇降装置と同様の構成を備えており、蛇腹部材223の端部に取り付けられた移動ブロック223aと、この移動ブロック223aに螺合する螺子棒体225aと、この螺子棒体225aを回動させるモータ226aと、で構成されている。そして、このような水平移動装置225によれば、先の昇降装置と同様に、モータ226aの回動に伴って移動ブロック223aが水平移動し、蛇腹部材223の伸縮及びクーラー219の出し入れが行われる。
【0049】
なお、このような回転位動型のクーラー219を備えたクーラー付CZ法シリコン単結晶引上げ装置においては、クーラー219の形状は、図7に示されるように、クーラー219が持ち上げられたときに当該クーラー219が単結晶17をすり抜けられるようにするために、完全な円筒状ではなく、基本的には種結晶17aの直径よりも大きい隙間219xを有している必要がある。但し、このような形態を採用しなくとも、先の図5A〜図5Dに示されるような分割式のクーラーを使用するようにしてもよい。
【0050】
[クーラーの着脱]
クーラーの取り外しは、シリコン単結晶インゴットの引き上げ終了後に、CZ炉内から給排管を引き抜くことによって行われる。
【0051】
この動作及び関連する部材については、図1に示される鉛直方向移動型のクーラー19を備えたクーラー付CZ法シリコン単結晶引上げ装置を例としてあげるが、冷却管で構成されたクーラーを備えている限り、他のタイプの装置に対しても同様に適用することができる。
【0052】
まず、クーラー19の取り外しは、シリコン単結晶インゴットの引き上げ終了後に、CZ炉内から給排管(21a,21b)を引き抜くことによって行われる。
ここで、クーラー19は、図8に示されるように、蛇腹部材23の頂部に設けられている固定冶具60によって昇降ブロック23aに固定されている。また、クーラー19が取り外された後に昇降ブロック23aに開く穴を塞ぐための部材として、蓋体70が用意されている。この蓋体70は、クーラー19が存在し無い状態を補填するためのものであることから、可換性を持たすために、固定冶具60と蓋体70は互いに相同した形状とされている。
【0053】
ここで、これらの固定冶具60と蓋体70の具体的構造につき、それらは共に、図8に示されるように、昇降ブロック23aの外側面に対して平行して伸びたフランジ部材を備え、当該フランジ部材をネジ固定する構造を基本構造としている。まず、蓋体70は、図8Bに示されるように、円柱状の胴部70aの頂部に円盤状のフランジ70bが設けられたものからなり、昇降ブロック23aに嵌め込まれた状態で、ネジ70cによってネジ固定される。円筒状の胴部70aには、気密性を保つためのOリング70dが巻着されている。
【0054】
一方、固定冶具60は、図8Aに示されるように、周状に溝61aが形成された円柱体61と、この円柱体61の周状溝61aに嵌合する一対の半円リング状板材62a及び62bと、からなり(図8D)、円柱体61には、給排管(21a,21b)が通される貫通孔61bが設けられている(図8C)。また、円柱体61には、蓋体70の胴部70aと同様に、気密性を保つためのOリング61dが巻着されている。
【0055】
このような固定冶具60においては、一対の半円リング状板材62a及び62bが円柱体61の溝61aに嵌め込まれる。そしてその状態で、半円リング状板材62a及び62bがネジ63a及び63bによって円柱体61にネジ固定され、これによってフランジ部材を備える円柱体の形状となり、蓋体70と同様の機能を発揮できるようになる。そしてこのようになった状態で、固定冶具60は、半円リング状板材62a及び62bのフランジ部分となった箇所にて、ネジ64a及び64bによって昇降ブロック23aにネジ固定される。
【0056】
このように、固定冶具60と蓋体70は共に(固定冶具60については半円リング状板材62a及び62bが嵌合された状態でボルト状の形状となり)、いわばネジ山の無いボルト様の部材として、昇降ブロック23aの穴に嵌め込まれるものであり、互いに可換性のものとして、いわば固定冶具60と蓋体70とで一つのセットを構成しているようなものであるため、クーラー19の着脱を容易に行うことができる。このため、クーラー有り・無しの切り換えを簡易かつ自在に行うことができ、ケースバイケースで、あるときはクーラー付きのCZ炉を備えるCZ法単結晶引上げ装置として使用し、また別のあるときにはクーラー無しの通常のCZ法単結晶引上げ装置として使用するというようなことを気軽に行うことができるようになる。
【0057】
[リチャージ・追いチャージ]
石英るつぼは、多結晶を溶解する際の加熱によって傷み、大抵は一回の引上げプロセス毎に廃棄されることになる。従って、一回の引上げプロセスで引上げられる単結晶の量を多くすることができれば、それだけ製造コストを下げることができるだけでなく、同じ量の単結晶を製造するにしても、冷却と昇温というプロセスの繰返し回数を減らすことが可能となるので、一定量の単結晶製造の際の時間短縮にもつながり、製造工程全体として見た場合の効率を向上させることができるようになる。特に、単結晶引上用の石英るつぼとしての耐用限界にまで単結晶の引上げ量を引っ張ることができるようになれば、この側面からのコスト低減等の効果としては最大のものを得ることができる。
【0058】
リチャージや追いチャージは、そのような効果を得るための手段であり、追いチャージは、図9Aに示されるように、原料のポリシリコンをるつぼ内にチャージして溶解した場合に、原料ポリシリコンの嵩張りによってるつぼがフルチャージの状態にされない場合に、原料融液に更に原料ポリシリコンを追加して融液量を増加させた後、通常の場合と同様に単結晶の引上げが行われていく。
【0059】
一方、リチャージは、図9Bに示されるように、単結晶の引上げがある程度終了した段階で再度、原料ポリシリコンをるつぼ内にチャージして単結晶の引き上げを行うようにすることを言う。
【0060】
このようなリチャージ・追いチャージによれば、一回の引上げプロセスで引上げられる単結晶の量を多くすることができ、製造コストの低減を図ることができるだけでなく、るつぼの大幅な昇温・降温を行わないために、るつぼ寿命の低下が防止され、加熱時間を長くとることができるようになるため、この側面からしても、加熱時間を長くした分だけ、一回あたりで引上げられる単結晶の長さを長くすることができる。また、クーラーと併用することで、クーラーによる引上げ速度の向上に基づく単位時間あたりの単結晶引上げ量の増大と相乗して、全体として製造効率のアップを図ることができるようになる。
【0061】
ここで、クーラー19や熱遮蔽体18は、それらの機能を十分に発揮させるために、通常はなるべく融液液面に近くなるような位置に配置されるが、リチャージや追いチャージを行う際には、クーラー19や熱遮蔽体18が融液液面近くにあるというのは、融液液面の上昇によるこれらの部材への接触や液跳ねの問題を考慮した場合には、決して好ましいことではない。
【0062】
なおこれについては、るつぼに通常のチャージを行う際にも同様の問題があり、効率を上げるべく、なるべくフルチャージに近いようにするためには、必然的に原料ボリシリコンの堆積量を多くすることとなるが、そのようにしてしまった場合には、溶解の過程で、上側に積まれている原料ポリシリコンが落下し、原料融液が跳ねてクーラー19や熱遮蔽体18に付着してしまうという心配がある。
【0063】
このような問題を解決するために、本発明に係るクーラー付CZ法シリコン単結晶引上げ装置においては、原料のるつぼへのチャージ及び当該原料の溶解、並びに、リチャージや追いチャージの実施の際には、クーラーや熱遮蔽体を上方に退避させるようにしている(図10)。この場合において、クーラーを移動させるための機構は、既に説明した昇降装置等を使用するようにすればよい。また、作業効率の面からすれば、上方への退避の際の速度は高速度(300mm/min)であるのが好ましい。
【0064】
なお、このような本発明に係る方法を採用すれば、例えば図11に示されるように、ボトムヒータ16を別途取り付けて、更に加熱力をアップさせた場合においても、クーラー19や熱遮蔽体18を上方に退避させて液はねの付着を防止し、加熱力のアップ分を有効に素材溶解に利用することができる。
【0065】
[クーラーに追従させた熱遮蔽体の移動]
図12は、本発明に係る熱遮蔽体及びクーラーの構造と機能説明するためのCZ炉内の縦断面図である。
【0066】
図12Aに示されるように、本発明において特徴的なことは、クーラー19の側部は耳部材81aが取り付けられており、その一方で、熱遮蔽体18の内壁側には、この耳部材81aと係合する係合体18aが設けられていることである。また、これに対応して、熱遮蔽体18は、CZ炉内において、台部材83の上に、ネジ固定や接着などの固定が行われずに、ただ単に当該台部材83の上に載せられているだけである。従って、この熱遮蔽体18は、持ち上げることによって、容易に台部材83から離すことができる。
【0067】
即ち、本発明に係るクーラー付きCZ法単結晶引上装置においては、図12B及び図12Cに示されるように、クーラー19が通常の位置にある場合には、耳部材81aと係合部材18aとの係合は行われず、通常のクーラー19aに熱遮蔽体18と何ら変わらない状態をとるが、図示されているように、耳部材81aと係合体18aとが互いに係合するような位置関係に配置されているため、クーラー19が上昇した場合には、耳部材81aと係合体18aとが互いに係合し、クーラー19と共に熱遮蔽体18も、台部材83から離れて上昇することとなる。
【0068】
なお、図12Cに示されるように、耳部材81aと係合部材18aとは、クーラー19の円周全体にわたって設けられているわけではなく、その一部に設けられている。なお、この図12Cにおいては、耳部材18aとそれに対応する係合部材81aとがそれぞれ2個づつ設けられているが、これらは、例えば図12Dに示されるように、クーラー19の周囲に3個設けるようにしたものでもよく、また、適宜装置全体の機能等を考慮してこれ以上の数のものを設けることも可能である。
【0069】
ここで図13は、本発明に係るクーラー19と熱遮蔽体18の動作を説明するための図である。なお、図12と図11の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0070】
まず、図13Aに示されるように、クーラー19は定位置として最低レベルの位置に位置していることになる。そして、図13Bに示されるように、クーラー19が上昇していき、そして、図13Cに示されるように、耳部材81aと係合部材18aとが係合したときに、熱遮蔽体18aが持ち上げられることになる(図13D)。なお、これについて逆の見方をすれば、図13Bに示されるように、耳部材81aと係合部材18aとが係合するまでの間は、クーラー19は熱遮蔽体18とは無関係に自由に昇降できるということになる。
【0071】
ところで、本発明に係る耳部材81aを構成するにあたっては、金属製であるクーラー19の側面に耳部材81aを接着する形式では、熱遮蔽体18と係合してこれを持ち上げる程の強度を出すことは一般的には困難である。従って、本発明では、その好適な実施形態として、図14に示されるようなサポート板81を構成し、これをクーラー19の螺旋の中に挟み込むことによってクーラー19の側壁から耳部材81aを出すようにしている。即ち、このサポート板81は、クーラー19の螺旋の中に挟み込まれる環状部分81bとこの環状部分81bの周囲から突出する耳部材81aとからなり、これがクーラー19に挟み込まれると、図13に示されるように、耳部材81aがクーラーの側壁から突出し、しかもこの耳部材81aによって熱遮蔽体18を持ち上げる程の強度を持たすことが可能となる。なお、このサポート板81は、カーボン素材等の耐熱性素材で構成することが可能である。
【0072】
このような本発明に係るクーラー付CZ法単結晶引上装置においては、原料の初回溶解時や、追いチャージ・リチャージ溶解時には、溶解時間を短縮するためにクーラー19を上部に移動させて融液液面から遠ざけるように動作する。この際に、この実施の形態においては、熱遮蔽体18もクーラー19に合わせて上部に上げるようにしているので、融液液面に対してクーラー19が熱遮蔽体18の影になることとなるので、原料溶解のための加熱効率が上がることとなる。なお、初回溶解時や追いチャージ・リチャージ溶解時のいずれの場合においても、原料溶解時には特にボトムヒータ16のほうの出力比率を上げて溶解時間の短縮を図るようにするのが好ましい。
【0073】
また、クーラー19の昇降は、上記の目的で上部へ移動する時や、安全確保のための上部退避の時には高速移動で行うが、結晶育成中に下部へ移動する時は、急激な熱環境の変化を避けるために、徐々に下げていくようにする。
【0074】
なお、追いチャージ・リチャージ実行時の動作について、本明細書では鉛直方向移動型のクーラーを備えるクーラー付CZ法単結晶引上装置を例にあげて説明をしてきたが、本発明の目的は追いチャージ・リチャージ実行時に融液やるつぼから離れた位置にクーラーが移動してさえいれば達成できるので、斜め方向移動型クーラーや回転型クーラー等の他のタイプの移動型クーラーを備えるクーラー付CZ法単結晶引上装置においても適用することができるのは明らかである。
【0075】
[ダッシュネック法とクーラー]
本発明者らの研究により、ダッシュネック法による種結晶の種絞りを行っている間にクーラーが種結晶の近くに存在した場合には、熱衝撃により発生した転位が種結晶からぬけず、単結晶を製造することができなくなるという事実を見出した(表1)。
【0076】
【表1】
【0077】
すなわち、表1に示されるように、熱遮蔽体18と融液液面の間の距離が20mmであると、クーラー19と融液液面の間の距離が小さくても(75mm)大きくても(125mm)、種結晶の無転位化を行うことはできなかった(表1に示されるように、いずれの場合も無転位化率は0%)。この一方で、熱遮蔽体18と融液液面の間の距離を30mm或いは40mmにとった場合には、クーラー19と融液液面の間の距離が小さくても(85mm)大きくても(115mm)、種結晶の無転位化率は100%であった(表1に示されるように、30mmの場合には15本中の15本から転位が抜けている)。また、クーラー19が設置されていなかった場合には(表1の右端)、熱遮蔽体18と融液液面の間の距離が20mmであっても、種結晶の無転位化率は100%というデータが得られた。
【0078】
以上のようなことから、クーラーが存在しない場合には、熱遮蔽体の下端が融液液面の近くに存在していても、種結晶を無転位化させることができるが、クーラーが存在する場合には、熱遮蔽体の下端が融液液面からある程度離れた位置(融液液面から少なくとも30mm程度離れた位置)になければ、種結晶を無転位化させることはできないということが分かる。
【0079】
このような事実に基づいて無転位化が可能になる領域を想定してみると、図15に示されるようなものとなる。図15に示される無転位化領域の境界部分の具体的な数値は、CZ炉の大きさや状態、使用される炉内部材の形状等によって定まるものであるが、例えばこの実施の形態においては、図中のP点は30mmということになるであろう。
【0080】
このように、クーラー19及び熱遮蔽体18のいずれも、融液液面から近いと転位が抜けず、別の見方をすれば、ダッシュネック法において種結晶から転位を上手く除去するためには、熱遮蔽体18とクーラー19を融液液面から離しておく必要があるのである。
【0081】
従って、本発明においては、ダッシュネック法による転位の排除を行っている最中は、クーラー19と熱遮蔽体18とをそれぞれ融液液面から引き離すように制御することとしている。クーラー19及び熱遮蔽体18と融液液面とをどの程度引き離すかということについては、図15に示される無転位化領域を、CZ炉の大きさや状態、使用される炉内部材の形状等によって境界条件を具体的に定めた上で決定し、この無転位化領域内に入るようにクーラー19及び熱遮蔽体18を移動させることになる。
【0082】
そして、ダッシュネック法により転位が充分に種結晶からぬけた後、クーラー19及び熱遮蔽体18が降下してきて、冷却を行いながら単結晶の引き上げが行われることになる。なお、この動作の過程において、クーラー19と熱遮蔽体18の移動は、作業の効率化等の観点からすれば、基本的には高速(300mm/min)で行うようにするのが好ましい。
【0083】
なお、ダッシュネック法による転位排除の際のクーラーの動作について、本明細書では鉛直方向移動型のクーラーを備えるクーラー付CZ法単結晶引上装置を例にあげて説明をしてきたが、本発明の目的はダッシュネック法による転位排除を行っている間に融液液面から所定距離離れたところにクーラー及び熱遮蔽体が位置してさえいればよいので、斜め方向移動型クーラーや回転型クーラー等の他のタイプの移動型クーラーを備えるクーラー付CZ法単結晶引上装置においても同様に適用することができるのは明らかである。
【0084】
[クーラーの移動速度と位置の関係―単結晶引上全工程において―]
図16は、本発明に係るクーラー付CZ法単結晶引上装置の動作を説明するための図であり、下側にはクーラーの移動速度、上側にはクーラーの位置が示されている。
【0085】
まず、追いチャージおよびネッキングを行う過程において(工程イ及びロ)、クーラー19は、融液液面から離されて高い位置に停止状態で置かれている。そして、ネッキングが終了すると、クーラー19が降下してきて、所定の位置まで来ると停止する(工程ハ)。その際の移動は、作業の迅速を図るために高速で行われる。なお、種結晶のつけ直しの必要が生じた場合には、クーラー19は再び上昇して高い位置に置かれ、その状態でネッキングが行われることになる。
【0086】
そして、クーラーが所定の位置まで下降してきた状態で単結晶の引上げが行われる(工程ニ)と、単結晶の冷却を行いながら引上げがなされることになるので、引上げ速度を速くすることが可能となる。ここで、単結晶引上げが終了すると、再び高速度でクーラー19が上昇し(工程ホ)、リメルトを行うために、上の位置でクーラー19が停止させられる(工程ヘ)。リメルトが終了すると再びクーラー19は高速度で下降してきて(工程ト)、再び単結晶引上げが行われる(工程チ)。単結晶引上げの最終工程であるテール工程(工程リ)では、電力消費量の低減のためにクーラー19の上昇が行われるが、十分な製品対象溶液を確保するために、少しタイミングを遅らせて上昇させるようにしている。
【0087】
次に、リチャージ(工程ヌ)を行う際には、すでに説明したように、チャージの容易性の確保のためや、液ハネの害を回避するために、高速度でクーラー19が上昇させられ、高い位置に置かれることになる。そして、リチャージが終了すると、クーラー19が再び高速度で降下してきて(工程ル)、単結晶の引上げが行われる(工程ヲ)。なお、この単結晶引上工程(工程ヲ)においては、衝突や事故が生じた場合には、速やかにクーラー19を上昇させ、シリコン融液液面から遠ざけるようにする。単結晶引上げ後のテール工程(工程ワ)につていは、既に説明したテール工程(工程ニ)と同様であり、その後はクーラー19がるつぼ内にまで降下してきて、当該るつぼの冷却が行われる(工程ヨ)。
【0088】
<安全確保・危険回避のための動作>
本発明に係るCZ法単結晶引上げ装置は、安全確保・危険回避のための動作として、基本的には、異常事態が生じた場所、融液面や引上げ単結晶からクーラーを遠ざけさせる(退避)という形態を採用する。より具体的な態様としては、例えば、「異常事態」というものがクーラー19と他の炉内部材との間の衝突若しくは異常接近であった場合には、クーラー19を一時的に5mm程度、逆方向に移動させるという態様が挙げられる。また、「異常事態」がクーラー19以外の炉内部材どうしの衝突等であったり、装置の誤作動のようなものであった場合には、クーラー19を単結晶17やシリコン融液12から遠ざけさせることによって危険を回避し、CZ法単結晶引上げ装置の保守性を高める。
【0089】
この場合において、単結晶17やシリコン融液12に代表される危険箇所からの退避を行う際には、クーラー19の移動速度を高速に可変して行う(30mm/min→300mm/min)ことによって、危険回避を迅速に行うことが実現される。
【0090】
ここで、異常事態の検出機構・装置としては、クーラー内を流れる冷却水の温度検出、CZ炉内の温度分布の監視、炉内部材の相対位置検出、クーラーや単結晶引上げモータの過負荷検出や異常重量変化検出、移動型クーラーに設置されたエンコーダによる移動量の検出などを挙げることができるが、本明細書では特に水蒸気検出によって安全確保を図る場合の機能・構成について、図1に基づいて説明をする。
【0091】
図1に示されるように、この実施の形態に係るCZ法単結晶引上げ装置においては、チャンバ11内の圧力変化を追跡する圧力センサ31と、真空ポンプ20で吸引されるチャンバ11内の気体の温度変化を見る温度センサ33と、真空ポンプ20で吸引されるチャンバ11内の気体の赤外線吸収を見る赤外線センサ34と、が取り付けられている。これは、クーラー19の配管に水漏れが生じた場合には、炉内の熱によってその水漏れ水が水蒸気となり、それが温度変化ないしは圧力変化を生じさせるので、それを検出することによって水漏れを的確に察知しようとするものである。赤外線センサ34は、水蒸気には赤外線吸収があることから、それを測定することによって、水漏れ検出の確実性を増大させるために設置されている。
【0092】
これらの各センサについては、いずれか一つが設置されていれば、水漏れを察知することは十分に可能であるが、検出の万全を期すという観点から、適当に組み合わせて複数個設置するようにしてもよい。また、同様の観点から、同種類のセンサを複数個設置することも妨げられない。
【0093】
なお、温度センサ33は、比較的多量の水蒸気が存在しなければ他の条件変化と区別可能な感応をしないため、水蒸気による温度変化を的確にキャッチするためには水蒸気が集中する場所に取り付けられるべきであるので、基本的には排気経路(即ち、真空ポンプ20に接続されている管)に取り付けられるのが好ましい。これに対し、赤外線センサ34は微量の水蒸気でも直ちに検出できるので、排気経路だけでなく、チャンバ11の内壁面など、あらゆるところに取り付けることが可能である。
【0094】
ここで、上記各センサは、コントローラ35に接続されている。この実施の形態においては、圧力センサ31は直接的に、温度センサ33及び赤外線センサ34は、それぞれ対応する処理装置33a及び34aを介してコントローラ35に接続されている。
【0095】
例えば、水蒸気の発生によるチャンバ11内の圧力上昇が圧力センサ31によって検出された場合、水蒸気の発生による排気ガスの高温化が温度センサ33によって検出された場合、赤外線センサ34によって水蒸気の吸収帯での異常な吸収が認められた場合、或はこれらの事態が同時に検出された場合には、コントローラ35が作動して、表示器36を点灯させ、冷却水の流入を調整する電磁弁37を閉じて冷却水の流入をストップし、それと同時に、普段は閉じられている電磁弁39を開き、排出管21bの末端を大気に開放する。そうすると、水漏れが生じた場合には、水漏れ水が水蒸気となって圧力が増すので、その場合には、電磁弁39を通ってクーラー19内の冷却水が外部に排出され、シリコン融液中に落ちる水の量を低減させることができる。
【0096】
なお、この大気への開放を行う管は、供給管21aにも接続されており、クーラー19内にこれから供給されようとしていたものをも排出することができる。
このため、水漏れ時には、クーラー19内に滞留している冷却水が可能な限り多く排出されるので、装置に対するダメージが少なくなり、そのような場合でも装置の操業停止等の事態が回避できることとなる。但し、この実施の形態に係るCZ法単結晶引上げ装置においては、非常事態に対する万全を期すために、その対策として、チャンバ11には安全弁40が取り付けられている。また、冷却水の流出管や大気開放管にも逆止弁41、42及び43が取り付けられており、非常事態に対する万全が図られている。
【0097】
ここで、CZ法単結晶引上げ装置において「異常事態が生じた」ことの態様としては、例えば、作業員の検知、停電、真空ポンプの故障、ヒーター電源故障、炉内品破損、冷却水ポンプ故障等を挙げることができ、このような「異常事態が生じた」場合には、少なくとも昇降装置25のモータ26aが停止し、場合によっては、とっさにモータ26aを逆回転させてクーラー19を逆方向に戻し、重篤な事故に至るのを回避する。更には、重篤な事故に至るのを回避するために、「異常事態が生じた」場合には、クーラーが接近した状態では危険な炉内部材(シリコン融液液面や引上げ単結晶)からクーラーを高速度(300mm/min)で遠ざけるように動作する。
【0098】
【発明の効果】
以上のような本発明に係るクーラー付CZ法単結晶引上装置においては、追いチャージ・リチャージ時の問題点やダッシュネック法による無転位化の際の問題点というような、CZ炉内に単結晶冷却用のクーラーが設置されていることによって生じる問題を回避し、結晶引上げ速度の高速化というようなクーラーが設置されていることによるメリットだけを享受することができる。従って、例えば、結晶引上げ速度を従来の1.5倍化するというような効果を、クーラー設置のデメリット無しに、確実に得ることができるようになる。
【0099】
より具体的に言えば、まず、本発明に係るクーラー付CZ法単結晶引上装置においては、クーラー付CZ法単結晶引上装置が抱えるエネルギー消費量増大の問題を低減することができる。即ち、この明細書にて示したようなクーラー付きCZ法単結晶引上装置においては、原料融液から結晶への熱の遮蔽を行う熱遮蔽体と結晶との間にクーラーを設けることによって結晶の引上速度を従来の1.5倍以上に高速化することができるが、その一方でエネルギー消費量増大の問題が生じるが、本発明に係るクーラー付きCZ法単結晶引上装置においては、初回溶解時や追いチャージ・リチャージ溶解時には、クーラー(場合によっては、熱遮蔽体も同時に)を上部に移動させて融液液面から遠ざけるようにしているので、それだけヒータの出力が低減され、エネルギー消費量の増大が抑えられることとなる。
【0100】
また、本発明に係るクーラー付きCZ法単結晶引上装置では、石英ルツボの耐久時間の問題に起因した追いチャージやリチャージ時の問題も解決される。即ち、追いチャージやリチャージを行った場合には石英るつぼが加熱された状態が長くなってしまい、石英ルツボの劣化や耐久時間の問題により、リチャージを行った場合には、リチャージ後の結晶崩れ(多結晶化)率の増加による取得率の低下という問題、追いチャージを行った場合には、結晶後半での結晶崩れ(多結晶化)率の増加による取得率の低下という問題が生じてしまうが、本発明に係るクーラー付きCZ法単結晶引上装置では、結晶の引上速度を、クーラー設置のデメリット無しに確実に従来の1.5倍以上に高速化し、石英ルツボの加熱時間を短縮することができるため、追いチャージ結晶とリチャージ結晶のいずれについても無転位化率のアップを図ることが可能になる。また、耐久性等の問題から、従来は多結晶化率増加の回避のために高価な合成石英ルツボを使用しなければならなかったが、本発明を適用することにより、安価な天然石英ルツボの使用をすることも可能となる。
【0101】
更に、本発明に係るクーラー付CZ法単結晶引上装置においては、クーラー付でありながらも、ダッシュネック法による無転位化を確実に行うことができるため、生産効率がアップし、生産コストの低減に寄与することができる。
【0102】
また更に、長時間使用等が原因となって炉内部材の変形が生じてしまった場合でも、融液液面とクーラーの間の距離や熱遮蔽体とクーラーの間の距離を微調整して実質的に同一条件が維持されるように設定をすることができるので、安定した品質の結晶を量産し続けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るCZ法単結晶引上げ装置の好適な実施形態を示すブロック図である。
【図2】 本発明に係るCZ法単結晶引上げ装置の昇降装置の機能構成を説明するためのブロック図である。
【図3】 斜め方向にクーラーが移動する場合の実施形態を説明するためのブロック図である。
【図4】 斜め方向に移動するクーラーの冷却管スタックの実施形態を示す図である。特に、図4Aは側面図、図4Bは上面図である。
【図5】 冷却管スタックの実施形態のバリエーションを示す図である。
【図6】 回転位動するクーラーを備えたクーラー付CZ法シリコン単結晶引上げ装置の実施形態を説明するためのブロック図である。
【図7】 回転位動するクーラーの冷却管スタックの実施形態を示す図である。
【図8】 クーラーの給排管の昇降ブロックとの接合部に使用される冶具、及びクーラーが抜かれた後の穴を蓋する蓋体の構成を示す図である。特に、図8Aは冶具の縦断面図、図8Bは蓋体の縦断面図、図8Cは冶具の上面図、図8Dは冶具の構造を説明するための図である。
【図9】 追いチャージの工程(A)及びリチャージの工程(B)を説明するための図である。
【図10】 追いチャージ及びリチャージの際の動作を説明するためのブロック図である。
【図11】 追いチャージ及びリチャージの際の動作を説明するためのブロック図であって、ボトムヒータが設置されている場合の実施形態を示した図である。
【図12】 クーラー19と共に熱遮蔽体18が上昇する場合の実施形態を説明するための図である。
【図13】 クーラー19と共に熱遮蔽体18が上昇する実施形態の動作を説明するための図である。
【図14】 サポート板81の構成を説明するための図である。
【図15】 融液液面から熱遮蔽体の下端までの距離と融液液面からクーラーの下端までの距離との関係で、ダッシュネック法により無転位化できる領域を示した想定図である。
【図16】 本発明におけるクーラーの昇降動作について説明をするための図であり、クーラーの位置(上部)と移動速度(下部)をそれぞれ経時的に示した図である。
【符号の説明】
11 チャンバ
12 シリコン融液
12a シリコン融液液面
13 ルツボ
14 ヒータ
15 ワイヤ
16 巻取機
17 シリコンインゴット
17a 種結晶
18 熱遮蔽体
18a 係合部材
19,119,219 クーラー
119a,119b クーラーブロック
219x 隙間
20 真空ポンプ
23,123,223 蛇腹部材
25,125 昇降装置
225 水平移動装置
23a,123a,223a 昇降ブロック(架橋部材)
223a 移動ブロック
25a,125a,225a 螺子棒体
26a,126a,226a モータ
26b エンコーダ
27 リミッタスイッチ(LS)
31 圧力センサ
33 温度センサ
34 赤外線センサ
33a,34a 処理装置
35 コントローラ
36 表示器
37,39 電磁弁
40 安全弁
41〜43 逆止弁
45 メルトレベルセンサ
51,52 ソレノイド
60 固定冶具
61 円柱体
61a 円柱体61の周状溝
61b 貫通孔
61d Oリング
62a,62b 半円リング状板材
63a, 63b, 64a, 64b ネジ
70 蓋体
70a 蓋体70の円柱状の胴部
70b 円盤状のフランジ
70c ネジ
70d Oリング
71 回動軸
81 サポート板
81a 耳部材
81b 環状部分
83 台部材
Claims (2)
- 融液を貯留するルツボと融液液面の上方に配置される熱遮蔽体及びクーラーとを備えたCZ法シリコン単結晶引上げ装置を用いてシリコン単結晶を製造する際に、ダッシュネック法によってシリコン種結晶から転位を排除するシリコン種結晶の転位排除方法において、
融液液面から熱遮蔽体下端までの距離と融液液面からクーラー下端までの距離との組み合わせで定義される無転位化領域を決定し、
ダッシュネック法によるシリコン種結晶の種絞りを行う際に、融液液面から熱遮蔽体下端までの距離と融液液面からクーラー下端までの距離との組み合わせが前記無転位化領域内に入るように、融液液面から熱遮蔽体下端までの距離と融液液面からクーラー下端までの距離とを調整することによって、シリコン種結晶から転位を排除する
ことを特徴とするシリコン種結晶の転位排除方法。 - 融液液面から熱遮蔽体下端までの距離と融液液面からクーラー下端までの距離を、熱遮蔽体及びクーラーを昇降させることによって調整する
ことを特徴とする請求項1に記載のシリコン種結晶の転位排除方法。
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