以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。そして、水平面内における所定方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれに直交する方向(すなわち鉛直方向)をZ軸方向とする。
(液滴吐出ヘッド)
液滴吐出ヘッドの一実施形態について説明する。図1は液滴吐出ヘッドの一実施形態を示す外観斜視図、図2は液滴吐出ヘッドをノズル開口部側から見た斜視図の一部破断図、図3は図1のA−A線断面矢視図である。
図1に示すように、液滴吐出ヘッド1は、機能液の液滴を吐出するものであって、液滴が吐出されるノズル開口部15(図2参照)を備えたノズル基板16と、ノズル基板16上に接続され、液滴が流れる流路を形成する流路形成基板10と、流路形成基板10上に接続され、圧電素子300の駆動によって変位する振動板400と、振動板400上に接続され、リザーバ100を形成するためのリザーバ形成基板20と、可撓性を有するフレキシブル基板501〜504と、各フレキシブル基板501〜504に搭載され、圧電素子300を駆動するための駆動回路部(ICドライバ)200(200A〜200D)と、各フレキシブル基板501〜504上に設けられ、駆動回路部200と圧電素子300とを電気的に接続する導電部(導電パターン、配線パターン)510とを備えている。液滴吐出ヘッド1の動作は、外部コントローラCTによって制御される。そして、流路形成基板10と、ノズル基板16と、振動板400とで囲まれた空間によって、ノズル開口部15より吐出される前の機能液が配置される圧力発生室12(図3参照)が形成される。また、リザーバ形成基板20と流路形成基板10とで囲まれた空間によって、圧力発生室12に供給される前の機能液を予備的に保持するリザーバ100(図3参照)が形成される。
図2に示すように、ノズル基板16は、流路形成基板10の一面に設けられた開口を覆って配設されている。流路形成基板10とノズル基板16とは、例えば接着剤や熱溶着フィルム等を介して固定されている。そのノズル基板16には、液滴を吐出するノズル開口部15が設けられている。ノズル開口部15はノズル基板16に複数設けられている。具体的には、ノズル基板16には、Y軸方向に複数並んで設けられたノズル開口部15によって構成された、第1ノズル開口群15A、第2ノズル開口群15B、第3ノズル開口群15C、及び第4ノズル開口群15Dのそれぞれが設けられている。第1ノズル開口群15Aと第2ノズル開口群15BとはX軸方向に関して互いに対向するように配置されている。第3ノズル開口群15Cは第1ノズル開口群15Aの+Y側に設けられており、第4ノズル開口群15Dは第2ノズル開口群15Bの+Y側に設けられている。これら第3ノズル開口群15Cと第4ノズル開口群15DとはX軸方向に関して互いに対向するように配置されている。
なお図2では、各ノズル開口群15A〜15Dのそれぞれは6個のノズル開口部15によって構成されて示されているが、実際には、例えば720個程度のノズル開口部15によって構成されている。
流路形成基板10の内側には複数の隔壁11が形成されている。流路形成基板10はシリコンによって形成されており、複数の隔壁11は、流路形成基板10の母材であるシリコン単結晶基板を異方性エッチングすることにより形成される。そして、複数の隔壁11を有する流路形成基板10と、ノズル基板16と、振動板400とで囲まれた空間として、複数の圧力発生室12が形成される。圧力発生室12は、複数のノズル開口部15に対応するように複数形成されている。すなわち、圧力発生室12は、第1〜第4ノズル開口群15A〜15Dのそれぞれを構成する複数のノズル開口部15に対応するように、Y軸方向に複数並んで設けられている。そして、第1ノズル開口群15Aに対応して複数形成された圧力発生室12によって第1圧力発生室群12Aが構成されている。第2ノズル開口群15Bに対応して複数形成された圧力発生室12によって第2圧力発生室群12Bが構成されている。第3ノズル開口群15Cに対応して複数形成された圧力発生室12によって第3圧力発生室群12Cが構成されている。第4ノズル開口群15Dに対応して複数形成された圧力発生室12によって第4圧力発生室群12Dが構成されている。第1圧力発生室群12Aと第2圧力発生室群12BとはX軸方向に関して互いに対向するように配置されており、それらの間には隔壁10Kが形成されている。同様に、第3圧力発生室群12Cと第4圧力発生室群12Dとは、X軸方向に関して互いに対向するように配置されており、それらの間には隔壁10Kが形成されている。
また、図2に示すように、第1圧力発生室群12Aを形成する複数の圧力発生室12のうち、−X側の端部は上述した隔壁10Kによって閉塞され、+X側の端部は互いに接続しかつ、リザーバ100(図3参照)と接続している。
図3に示すように、リザーバ100は、機能液導入口25より導入され、圧力発生室12に供給される前の機能液を一時的に保持する。リザーバ100は、リザーバ形成基板20にY軸方向に延びるように形成されたリザーバ部21と、流路形成基板10にY軸方向に延びるように形成され、リザーバ部21と各圧力発生室12のそれぞれとを接続する連通部13とを備えている。すなわち、リザーバ100は、第1圧力発生室群12Aを構成する複数の圧力発生室12の共通の機能液保持室(インク室)である。機能液導入口25より導入された機能液は、導入路26を経てリザーバ100に流れ込み、その後、供給路14を経て、第1圧力発生室群12Aを構成する複数の圧力発生室12のそれぞれに供給される。
また、第2、第3、第4圧力発生室群12B、12C、12Dのそれぞれを構成する圧力発生室12のそれぞれにも、上述と同様のリザーバ100が接続されている。
流路形成基板10とリザーバ形成基板20との間に配置された振動板400は、流路形成基板10の一面を覆う弾性膜50と、弾性膜50上に設けられた下電極膜60とを備えている。弾性膜50は、例えば厚み1〜2μm程度の二酸化シリコンによって形成されている。下電極膜60は、例えば厚み0.2μm程度の金属によって構成されている。本実施形態において、下電極膜60は、複数の圧電素子300の共通電極となっている。
振動板400を変位させるための圧電素子300は、下電極膜60上に設けられた圧電体膜70と、その圧電体膜70上に設けられた上電極膜80とを備えている。圧電体膜70は例えば厚み1μm程度であり、上電極膜80は例えば厚み0.1μm程度である。なお、圧電素子300の概念としては、圧電体膜70及び上電極膜80に加えて、下電極膜60を含むものであってもよい。すなわち、本実施形態における下電極膜60は、圧電素子300としての機能と、振動板400としての機能とを兼ね備えている。また、本実施形態では、弾性膜50及び下電極膜60が振動板400として機能するが、弾性膜50を省略した構造とし、下電極膜60が弾性膜(50)を兼ねるようにしてもよい。
圧電体膜70及び上電極膜80(すなわち圧電素子300)は、複数のノズル開口部15及び圧力発生室12のそれぞれに対応するように複数設けられている。すなわち、圧電素子300は、各ノズル開口部15ごとに(圧力発生室12ごとに)設けられている。上述したように、下電極膜60は複数の圧電素子300の共通電極として機能し、上電極膜80は複数の圧電素子300の個別電極として機能する。
そして、第1ノズル開口群15Aの各ノズル開口部15に対応してY軸方向に並ぶ複数の圧電素子300によって、第1圧電素子群300Aが構成されている。第2ノズル開口群15Bの各ノズル開口部15に対応してY軸方向に並ぶ複数の圧電素子300によって、第2圧電素子群300Bが構成されている。第1圧電素子群300Aと第2圧電素子群300BとはX軸方向に関して互いに対向するように配置されている。同様に、第3ノズル開口群15Cの各ノズル開口部15に対応してY軸方向に並ぶ複数の圧電素子300によって、第3圧電素子群300Cが構成されている。第4ノズル開口群15Dの各ノズル開口部15に対応してY軸方向に並ぶ複数の圧電素子300によって、第4圧電素子群300Dが構成されている。第3圧電素子群300Cと第4圧電素子群300DとはX軸方向に関して互いに対向するように配置されている(なお、第3、第4圧電素子群300C、300Dは図3の紙面奥側に形成されているものであって、図示されていない)。
リザーバ形成基板20上には、封止膜31と固定板32とを有するコンプライアンス基板30が接合されている。封止膜31は、剛性が低く可撓性を有する材料(例えば、厚み6μm程度のポリフェニレンスルフィドフィルム)からなる。この封止膜31によってリザーバ部21が封止されている。また、固定板32は、金属等の硬質の材料(例えば、厚み30μm程度のステンレス鋼)で形成される。この固定板32のうち、リザーバ100に対応する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部33となっている。そのため、リザーバ100の上部は、可撓性を有する封止膜31のみで封止され、内部圧力の変化によって変形可能な可撓部22となっている。
機能液導入口25からリザーバ100に機能液が供給されると、例えば、圧電素子300の駆動時の機能液の流れ、あるいは、周囲の熱などによってリザーバ100内に圧力変化が生じる。上述のように、リザーバ100の上部が可撓性を有する封止膜31(可撓部22)によって封止されていることにより、可撓部22が撓み変形してその圧力変化を吸収する。したがって、リザーバ100内は常に一定の圧力に保持される。その他の部分は固定板32によって十分な強度に保持されている。
そして、リザーバ100の外側のコンプライアンス基板30上には、リザーバ100に機能液を供給するための機能液導入口25が形成されており、リザーバ形成基板20には、その機能液導入口25とリザーバ100の側壁とを連通する導入路26が設けられている。
リザーバ形成基板20のうち、X軸方向に関して中央部には、Y軸方向に延びる開口部700が形成されている。開口部700によって、リザーバ形成基板20は、第1圧電素子群300Aを封止する第1封止部20Aと、第2圧電素子群300Bを封止する第2封止部20Bとに分けられる(図3参照)。同様に、開口部700によって、第3圧電素子群300Cを封止する第3封止部20Cと、第4圧電素子群300Dを封止する第4封止部20Dとに分けられる(なお、第3、第4封止部20C、20Dは図3の紙面奥側に形成されているものであって、図示されていない)。
第1封止部20Aは、圧電素子300に対向する領域に設けられた溝部24を有している。溝部24は、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を確保するとともに、その空間を密封する。溝部24は、上記の第1〜第4封止部20A〜20Dのそれぞれに、第1〜第4圧電素子群300A〜300Dを覆う大きさで形成されている。また、圧電素子300のうち、少なくとも圧電体膜70は、この溝部24内に密封されている。
このように、リザーバ形成基板20は、圧電素子300を外部環境と遮断して、圧電素子300を封止する機能を有している。リザーバ形成基板20によって圧電素子300を封止することで、水分等の外部環境による圧電素子300の劣化が防止される。また、本実施形態では、溝部24の内部を密封状態にしただけであるが、例えば、溝部24内の空間を真空にしたり、あるいは窒素又はアルゴン雰囲気等とすることにより、溝部24内を低湿度に保持し、圧電素子300の劣化をさらに確実に防止することができる。
また、リザーバ形成基板20は剛体である。リザーバ形成基板20の形成材料としては、例えば、ガラス、セラミック材料等の流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料を用いることが好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板が用いられる。
図3に示すように、第1封止部20Aの溝部24に封止された圧電素子300のうち、上電極膜80の−X側の端部は、第1封止部20Aの外側まで延びており、リザーバ形成基板20の開口部700の内部に配置されている。同様に、第2封止部20Bの溝部24に封止された圧電素子300のうち、上電極膜80の+X側の端部は、第2封止部20Bの外側まで延びており、リザーバ形成基板20の開口部700の内部に配置されている。さらに、不図示ではあるが、第3封止部20C(第4封止部20D)で封止された圧電素子300のうち、上電極膜80の一部が、第3封止部20C(第4封止部20D)の外側まで延びており、リザーバ形成基板20の開口部700の内部に配置されている。なお、上電極膜80の延接部分と下電極膜60との間にはそれぞれ絶縁膜600が配設されている。
図1に戻り、圧電素子300を駆動するための駆動回路部200(200A〜200D)は、例えば回路基板あるいは駆動回路を含む半導体集積回路(IC)を含んで構成されており、各フレキシブル基板501〜504の一面に搭載されている。フレキシブル基板501〜504はそれぞれ可撓性を有しており、例えばポリイミド等の絶縁性フィルムによって構成されている。前述したように、フレキシブル基板501〜504における駆動回路部200の搭載面には、銅などの導電性材料からなる配線パターン(導電部)510が形成されている。
図4はフレキシブル基板501の平面図である。
図4に示すように、駆動回路部200Aは、フレキシブル基板501の一面にフリップチップ実装されて配線パターン510と接続されている。駆動回路部200Aとフレキシブル基板501とは樹脂201によって固定されている。フレキシブル基板501は、駆動回路部200の短辺方向にかつ、駆動回路部200の搭載位置付近を基点として一方向に延在して形成されている。なお、フレキシブル基板501における駆動回路部200Aの近傍には位置決め用の貫通穴501aが形成されている。
配線パターン510は、フレキシブル基板501の延在方向に伸びる複数の線状パターンを含み、これらの複数の線状パターンは、互いに平行かつ離間して並んでいる。配線パターン510は、導電性の金属からなる。こうした配線パターン510は、プリント法、フォトリソグラフィ法、あるいはメッキ法等を用いて高精細に形成することができる。
配線パターン510の延在方向中央部を含むフレキシブル基板501の中央部は、熱成形シート511によって覆われている。この熱成形シート511は、フレキシブル基板501の折り曲げ状態を保持するものであり、加熱されることにより軟化し、成形後に冷却されることによりその形状を保持する。なお、フレキシブル基板501及び熱成形シート511には、フレキシブル基板501の折り曲げ位置(折り曲げ線505〜508)において、曲げを円滑にするための切り欠き501b,511aが設けられている。
配線パターン510における駆動回路部200A側と反対側の端部が、圧電素子300の上電極膜80(図3参照)に電気的に接続される端子部512である。端子部512は、配線パターン510における各線状パターンの端部からなる複数の線状端子512を含み、これらの複数の線状端子512は、互いに平行かつ離間して並んでいる。そして、フレキシブル基板501上において、この複数の線状端子512を含む領域に、圧電素子300の上電極膜80(図3参照)との電気接続用の異方性導電材515が配置される。他のフレキシブル基板502,503,504についても、フレキシブル基板501と同様である。
フレキシブル基板501上において、配線パターン510の端子部512と熱成形シート511との端部との間には、異方性導電材515の端部の剥離防止のための絶縁膜517が配設されている。絶縁膜517は、アクリル、エポキシ、ポリイミド、シリコーンからなる群に含まれる1種または2種以上の樹脂によって形成されている。絶縁膜517の形成材料としては、異方性導電材515との密着性の高いものが適宜選択される。異方性導電材515がエポキシ樹脂を含む場合、絶縁膜517の形成材料は、例えば、ポリイミド樹脂である。
また、絶縁膜517は、フレキシブル基板501における配線パターン510よりも上層にかつ、フレキシブル基板501における端子部512に近い折り曲げ線505に沿って設けられている。すなわち、絶縁膜517の一辺がフレキシブル基板501の折り曲げ線505に一致している。絶縁膜517は、例えば、フレキシブル基板501上に配線パターン510を形成した後に、印刷法や、フォトリソグラフィ法や、液滴吐出法(インクジェット法)などを用いて形成することができる。こうした方法では、フレキシブル基板501の表面に予め表面処理を施すことにより、その表面に対して高い接合性を有する絶縁膜517を形成することができる。
図5は、フレキシブル基板501の配設状態を示す部分拡大図である。
図5に示すように、フレキシブル基板501に搭載された駆動回路部200Aは、リザーバ形成基板20上に固定される。リザーバ形成基板20上には、必要に応じて配線パターンが形成されるとともに、この配線パターンが駆動回路部200Aの端子に電気的に接続される。この駆動回路部200Aは、外部信号入力部580(図1参照)を介して外部コントローラCT(図1参照)に電気的に接続される。
フレキシブル基板501の端子部512は、異方性導電材515を介して、圧電素子300(上電極膜80)に電気的に接続される。すなわち、異方性導電材515を間に挟んで、フレキシブル基板501の端子部512が、圧電素子300の上電極膜80に押圧されることにより、異方性導電材515に含まれる金属粒子を介して端子部512と上電極膜80とが電気的に接続される。
フレキシブル基板501は、駆動回路部200Aの搭載位置と端子部512との間で複数回折り曲げられている。フレキシブル基板501の複数回の折り曲げによって、比較的大きな段差であっても、確実な電気接続が可能である。フレキシブル基板501の折り曲げ状態は、フレキシブル基板501の表面に設けられた熱成形シート511によって保持されている。フレキシブル基板501の折り曲げ状態が保持されることにより、フレキシブル基板501の弾性力がフレキシブル基板501の配線パターン510と流路形成基板10の配線(上電極膜80)との接続部分に剥離力として働くのが抑制される。その結果、フレキシブル基板501の弾性力による、その電気接続部分の信頼性の低下が防止される。
前述したように、フレキシブル基板501上において、配線パターン510の電気接続部分の近傍には、異方性導電材515との密着性が高い絶縁膜517が設けられている。異方性導電材515の少なくとも1部が絶縁膜517に密着することにより、フレキシブル基板501の表面に対する異方性導電材515の密着性が向上する。すなわち、配線パターン510の形成後に、その配線パターン510の電気接続部分の近傍に上記絶縁膜517が配置されることにより、その配線パターン510の下層の表面と異方性導電材515との密着性の向上が図られる。
本実施形態では、フレキシブル基板501上において、異方性導電材515の端部と絶縁膜517の端部とが密着しており、その端部同士の密着位置は、フレキシブル基板501の折り曲げ線505に位置する。そのため、フレキシブル基板501の折り曲げ位置(折り曲げ線505)で異方性導電材515が剥離するのが防止され、さらに、フレキシブル基板501上の電気接続面に絶縁膜517による突起が生じるのが抑制される。その結果、異方性導電材515を介したフレキシブル基板501の配線パターン510と流路形成基板10の配線(上電極膜80)との電気接続部分の信頼性の向上が図られる。
フレキシブル基板501の端子部512と圧電素子300の上電極膜80との電気接続部分は、樹脂材202によって固定される。その電気接続部分は、リザーバ形成基板20に形成された開口部700内の底部であるから、その開口部700に樹脂材202が充填されている。この樹脂材202によって、フレキシブル基板501の端子部512と圧電素子300の上電極膜80との接続部分の剥がれが防止される。
図6は、フレキシブル基板501の端子部512と圧電素子300の上電極膜80との接続構造を示す模式図である。
図6に示すように、フレキシブル基板501の端子部512は、異方性導電材515を介して、圧電素子300の上電極膜80に電気的に接続される。異方性導電材515は、エポキシ、アクリル、ポリイミド、シリコーンからなる群に含まれる1種または2種以上の樹脂と、ニッケル、銅、パラジウム等の金属粒子とを含む。異方性導電材515を用いることにより、電気接続部分の狭ピッチ接続が可能となる。そして、複数の線状端子512がそれぞれ、圧電素子300の上電極膜80に個別に電気接続される。
圧電素子300が形成されている流路形成基板10上において、上電極膜80の電気接続部分の周囲には、流路形成基板10の表面と異方性導電材515との密着性を向上させるための絶縁膜520が設けられている。絶縁膜520は、フレキシブル基板501における複数の線状端子512同士の間に位置する複数の線状膜520を含む。より具体的には、複数の線状膜520は、流路形成基板10上において、各上電極膜80の電気接続部分の両外側にフレキシブル基板501の線状端子512と同方向に延在して配設されている。
さらに、複数の線状膜520には、フレキシブル基板501及び異方性導電材515が重ならない位置において、モールド用の樹脂材202(図3参照)を流路形成基板10の表面に接触させるための開口520aが設けられている。この開口520aを介して樹脂材202(図3参照)が流路形成基板10の表面に接触することにより、樹脂材202と流路形成基板10との接合性の向上が図られる。
絶縁膜520は、アクリル、エポキシ、ポリイミド、シリコーンからなる群に含まれる1種または2種以上の樹脂によって形成されている。絶縁膜520の形成材料としては、異方性導電材515との密着性の高いものが適宜選択される。異方性導電材515がエポキシ樹脂を含む場合、絶縁膜520の形成材料は、例えば、ポリイミド樹脂である。
絶縁膜520の膜厚は、5μm以下であるのが好ましく、1μm以下であるのがより好ましく、例えば、0.1μm〜0.9μmである。絶縁膜520の膜厚は、異方性導電材515に含まれる金属粒子の径等に応じて適宜定められる。絶縁膜520が厚くなると異方性導電材515を介した電気接続に不良が生じる可能性が高くなる。
絶縁膜520は、例えば、流路形成基板10上に上電極膜80を含む圧電素子300を形成した後に、フォトリソグラフィ法や液滴吐出法(インクジェット法)などを用いて形成することができる。こうした方法では、流路形成基板10の表面に表面処理を施すことにより、その表面に対して高い接合性を有する絶縁膜520を形成することができる。
流路形成基板10の表面に、上記の絶縁膜520が設けられていることにより、その表面に対する異方性導電材515の密着性が向上する。流路形成基板10の表面にシリコンが露出している場合には、シリコン表面と異方性導電材515との間の密着性は比較的低いものの、そのシリコン表面に上記絶縁膜520が設けられていることにより、密着性の向上が図られる。シリコン上に他の物質の膜が形成されている場合においても同様である。すなわち、配線(上電極膜80)の形成後に、その配線の電気接続部分の周囲に上記絶縁膜520が形成されることにより、その配線の下層の表面と異方性導電材515との密着性の向上が図られる。
電気接続部分の近接領域において、異方性導電材515を介した上下物体(フレキシブル基板501、流路形成基板10)間の密着性が向上することにより、その電気接続部分における上下端子間の接続強度向上が図られる。なお、他のフレキシブル基板502,503,504についても、フレキシブル基板501と同様である。
次に、上述した構成を有する液滴吐出ヘッド1の動作について説明する。液滴吐出ヘッド1より機能液の液滴を吐出するために、外部コントローラCTは、機能液導入口25に接続された不図示の外部機能液供給装置を駆動する。外部機能液供給装置から送出された機能液は、機能液導入口25を介してリザーバ100に供給された後、ノズル開口部15に至るまでの液滴吐出ヘッド1の内部流路を満たす。また、外部コントローラCTは、フレキシブル基板501〜504に設けられた外部信号入力部580を介して、駆動回路部200等に駆動電力や指令信号を送る。駆動回路部200は、外部コントローラCTからの指令に基づいて、端子部512を含む配線パターン510を介して、圧力発生室12に対応するそれぞれの下電極膜60と上電極膜80との間に電圧を印加し、弾性膜50、下電極膜60及び圧電体膜70を変位させることにより、各圧力発生室12内の圧力を高めて、ノズル開口部15より液滴を吐出する。
次に、液滴吐出ヘッド1の製造方法について図7のフローチャート図を参照しながら説明する。なお以下では、駆動回路部200と圧電素子300とを接続する手順について主に説明する。液滴吐出ヘッド1のうち、ノズル基板16、流路形成基板10、リザーバ形成基板20、圧電素子300等の製造及び接続・配置作業は既に完了しているものとする。
まず、ポリイミド等からなる可撓性を有するフレキシブル基板501〜504の一面に、銅などの導電性材料からなる端子部512を含む配線パターン510を、メッキやエッチングなどの手法によって設ける(ステップSA1)。端子部512を含む配線パターン510は、ノズル開口部15どうしの間の距離(ノズルピッチ)、すなわち圧電素子300どうしの間の距離に応じて精度良く形成される。
次に、配線パターン510が形成されたフレキシブル基板501〜504上に、熱成形シート511及び絶縁膜517をそれぞれ部分的に形成する(ステップSA2)。熱成形シート511及び絶縁膜517はそれぞれ、印刷法や、フォトリソグラフィ法や、液滴吐出法(インクジェット法)などを用いて形成することができる。
次に、フレキシブル基板501〜504の所定領域(実装領域)に対して、駆動回路部200をフリップチップ実装する(ステップSA3)。
次に、フレキシブル基板501〜504を折り曲げる(ステップSA4)。フレキシブル基板501〜504の折り曲げは、フレキシブル基板501〜504を所望の折り曲げ状態に固定するとともに、フレキシブル基板501〜504及び熱成形シート511を加熱することにより行う。
また、フレキシブル基板501〜504の折り曲げと同時に、フレキシブル基板501〜504上に電気接続用の異方性導電材515を印刷法(転写法)により配置する。例えば、異方性導電材515を所定のシートからフレキシブル基板501に転写させる。このとき、フレキシブル基板501〜504を介して異方性導電材515を加熱する。この加熱により、異方性導電材515がフレキシブル基板501〜504がなじみ、フレキシブル基板501に対する異方性導電材515の密着強度が向上する。なお、このフレキシブル基板501〜504の折り曲げ及び異方性導電材515の配置に関する工程については後で詳しく説明する。
次に、樹脂201によってフレキシブル基板501〜504と駆動回路部200とを固定する(ステップSA5)。
このように、配線パターン510が設けられたフレキシブル基板501〜504上に駆動回路部200を設けることで、液滴吐出ヘッド1全体のコンパクト化を図ることができ、また配線パターン510と駆動回路部200との位置決めを容易に行うこともできる。また、駆動回路部200をフレキシブル基板501〜504にフリップチップ実装することで、駆動回路部200と配線パターン510との電気的な接続を、作業性良く且つ良好に行うことができる。
次に、フレキシブル基板501〜504に設けられた端子部512と、圧電素子300の上電極膜80とを接続する(ステップSA6)。端子部512と上電極膜80とを接続する際には、所定の押圧部材によって、フレキシブル基板501〜504の端部を押圧する。フレキシブル基板501〜504の端部は、上記押圧により変形する(撓む、曲がる)ので、溝部の内部など、比較的狭い領域での接続作業を容易に行うことができる。
端子部512と上電極膜80との接続作業が完了した後、樹脂材202によって端子部512と上電極膜80との接続部を覆うとともに、フレキシブル基板501〜504をリザーバ形成基板20に対して固定する(ステップSA7)。これにより、フレキシブル基板501〜504の位置が固定されるとともに、フレキシブル基板501〜504自体が樹脂材202によって補強される。更には、樹脂材202によって、端子部512と上電極膜80との接続部が保護される。
なお、本実施形態においては、フレキシブル基板501〜504と駆動回路部200との接続を行った後、端子部512と圧電素子300(上電極膜80)との接続を行っているが、フレキシブル基板501〜504に設けられた端子部512と圧電素子300との接続を行った後、そのフレキシブル基板501〜504と駆動回路部200との接続を行うことも可能である。
図8は、上記のフレキシブル基板501〜504の折り曲げ及び異方性導電材515の配置に用いられるシステム800を示している。図8では、代表的にフレキシブル基板501を示す。フレキシブル基板502〜503についてもこれと同様である。
図8に示すように、このシステム800は、フレキシブル基板501を折り曲げ成形する成形装置810と、フレキシブル基板501上に電気接続用の異方性導電材515を配置する導電材配置装置830と、が一体化された構成を有している。
成形装置810は、支持台811と、保持部812と、第1ヒータ813と、第2ヒータ814とを含む。支持台811には、基板案内ピン815が立設されている。フレキシブル基板501の貫通穴501a(図4参照)に基板案内ピン815が通されることにより、支持台811に対してフレキシブル基板501が位置決めされる。支持台811には、駆動回路部200Aの保護のために樹脂等からなる保護材816が配置されている。保持部812は、バネを介してフレキシブル基板501を支持台811に押圧する。保持部812には、フレキシブル基板501を吸着する吸着機構812aも設けられている。
第1ヒータ813及び第2ヒータ814はそれぞれ、フレキシブル基板501との当接面が所定の段差形状を有している。第1ヒータ813は、支持台811に固定されている。第2ヒータ814は、第1ヒータ813に対して離間自在である。第1ヒータ813と第2ヒータ814との間にフレキシブル基板501が挟まれることにより、フレキシブル基板501が折り曲げ状態となる。第1ヒータ813及び第2ヒータ814に加熱されることにより、フレキシブル基板501の折り曲げ状態が保持される。第1ヒータ813の表面には、フレキシブル基板501上の熱成形シート511との密着性が低いフッ素膜が形成されている。第2ヒータ814には、フレキシブル基板501を吸着保持するための吸着孔818が設けられている。吸着孔818は、真空ポンプ等の不図示の吸引機構に接続されている。
導電材配置装置830は、異方性導電材515を所定のシート831からフレキシブル基板501に転写させる構成を有する。シート831は、ベースシート831a、導電材膜831b、及び保護シート831cを含む積層構造からなる。導電材配置装置830は、シート831を間欠的あるいは連続的に搬送する搬送機構835と、シート831上の導電材をシート831からフレキシブル基板501に転写させる転写機構836とを含む。
搬送機構835は、巻出し部840、ベースシート巻取り部841、保護シート巻取り部842、及び支持台845を有する。巻出し部840から送り出されたシート831のうち、ベースシート831aはベースシート巻取り部841によって巻き取られ、保護シート831cは保護シート巻取り部842によって巻き取られる。シート831の送り量は、不図示の駆動制御装置によって制御される。基本的なシートの送り量は、フレキシブル基板501に転写される異方性導電材515の平面形状に基づいて決定される。
支持台845は、成形装置810の支持台811と協働して保護シート831cが取られれたシート831を支持する。成形装置810の支持台811と導電材配置装置830の支持台845との間にシート831が挟まれる。成形装置810の支持台811において、シート831との当接面には、テフロン(登録商標)シートなどの導電材膜831bとの密着性が低い膜847が形成されている。この膜847により、搬送途中でのシート831からの導電材の剥がれが防止される。
転写機構836は、跳ね上げ台850、裁断部851、及び冷却部852を有する。跳ね上げ台850は、回転軸855を中心に回転移動する。不図示の駆動装置の制御によって、支持台811におけるシート831との当接面に対して、跳ね上げ台850におけるシート831との当接面の角度が変化する。すなわち、支持台811の当接面と跳ね上げ台850の当接面とが平行である状態(跳ね上げ状態)と、支持台811の当接面に対して跳ね上げ台850の当接面が傾いた状態とが、選択的に切り換えられる。
裁断部851は、シート831上の導電材を裁断する役割を有する。本実施形態では、裁断部851は、成形装置810の支持台811に形成されたブレードである。跳ね上げ台850が上記傾いた状態において、シート831が送られる。一方、跳ね上げ台850が上記跳ね上げ状態において、シート831上の導電材に裁断部851が挿入される。
冷却部852は、跳ね上げ台850を冷却する役割を有する。例えば、冷却部852は、跳ね上げ台850の表面温度を測定するセンサと、冷媒を循環させる循環回路とを含み、跳ね上げ台850を所定の温度範囲に制御する。
次に、上記のシステム800の動作について図9A〜図9Kを参照して説明する。
まず、図9Aに示すように、フレキシブル基板501(図8参照)のセットに先立って、上記システム800にシート831がセットされる。シート831は、成形装置810の支持台811と導電材配置装置830の支持台845との間に通される。シート831のうち、ベースシート831aがベースシート巻取り部841によって適宜巻き取られ、保護シート831cが保護シート巻取り部842によって適宜巻き取られる。シート831が送られる際には、支持台811と支持台845とが離間するとともに、跳ね上げ台850が傾いた状態となる。
その後、図9Bに示すように、支持台811に対して支持台845が近づく。支持台811と支持台845との間に挟まれることにより、シート831が保持される。支持台811のシート831との当接面にテフロン(登録商標)シートなどの導電材膜831bとの密着性が低い膜847が形成されていることにより、シート831からの導電材膜831bの剥がれが防止される。
次に、図9Cに示すように、導電材の裁断を行う。すなわち、不図示の駆動装置によって回転軸855を中心に、跳ね上げ台850を跳ね上げる。これにより、支持台811に形成された裁断部851(ブレード)がベースシート831a上の導電材膜831bに挿入され、導電材膜831bが裁断される。このとき、ベースシート831aは、切断されることなく、連続状態である。その後、図9Dに示すように、不図示の駆動装置によって、跳ね上げ台850を傾いた状態に戻す。これにより、ベースシート831a上に導電材の個片(導電材515)が形成される。
次に、図9Eに示すように、上記システム800にフレキシブル基板501をセットする。フレキシブル基板501には、配線パターン510と熱成形シート511と絶縁膜517が形成されている。前述したように、熱成形シート511は、フレキシブル基板501の折り曲げ状態を保持する機能を有し、絶縁膜517は、フレキシブル基板501と導電材515との密着性を向上させる機能を有する。フレキシブル基板501の貫通穴501aに基板案内ピン815が通されることにより、支持台811に対してフレキシブル基板501が位置決めされる。保持部812は、バネを介してフレキシブル基板501を支持台811に押圧固定する。
次に、図9F及び9Gに示すように、フレキシブル基板501を折り曲げる。すなわち、フレキシブル基板501を間に挟んで第1ヒータ813に対して第2ヒータ814が近づくとともに、跳ね上げ台850が跳ね上がる。これにより、第1ヒータ813及び第2ヒータ814のそれぞれに対して、フレキシブル基板501が密接する。この密接により、第1ヒータ813及び第2ヒータ814の表面の段差形状に応じてフレキシブル基板501が所定の折り曲げ状態となる。この密接時、第1ヒータ813及び第2ヒータ814はオン状態である。フレキシブル基板501の温度上昇に伴い、フレキシブル基板501上の熱成形シート511が軟化する。
このとき、ベースシート831a上の導電材の個片(導電材515)がフレキシブル基板501に密着するとともに、フレキシブル基板501を介して第1ヒータ813及び第2ヒータ814の熱が導電材515に伝わる。導電材515は、軟化してフレキシブル基板501になじむ。なお、裁断部851がベースシート831a上の導電材膜831bに挿入状態であり、フレキシブル基板501に密着している導電材515の熱が、ベースシート831a上の他の導電材膜831bに伝わるのが、裁断部851によって遮られる。この裁断部851による熱遮断は、次にフレキシブル基板501に密着されるべき導電材が熱により変質し、その導電材の密着性が低下するのを防ぐという利点を有する。
また、軟化した導電材515の一部は、フレキシブル基板501上の絶縁膜517に密着する。すなわち、フレキシブル基板501上における折り曲げ位置に導電材515との密着性の高い絶縁膜517が配置されているので、その折り曲げ位置において導電材515の端部と絶縁膜517の端部とが密着する。これにより、フレキシブル基板501に対する導電材515の密着強度が向上する。
続いて、図9Hに示すように、冷却部852をオン状態として、跳ね上げ台850を冷却する。冷却部852は、第1ヒータ813及び第2ヒータ814による加熱側とは反対側から導電材515を冷却する。これにより、フレキシブル基板501に対する導電材515の密着強度がさらに向上するとともに、ベースシート831aからの導電材515の離脱が促進される。また、第2ヒータ814の吸着孔818を介して第2ヒータ814に対してフレキシブル基板501が吸着されることにより、ベースシート831aからの導電材515の離脱がさらに促進される。跳ね上げ台850の冷却は、次にフレキシブル基板501に密着されるべき導電材が熱により変質し、その導電材の密着性が低下するのを防ぐという役割も有する。また、第1ヒータ813及び第2ヒータ814が、適宜停止される。
次に、図9Iに示すように、不図示の駆動装置によって跳ね上げ台850を傾いた状態に戻す。これにより、導電材515がシート831からフレキシブル基板501に転写される。跳ね上げ台850が傾くとき、フレキシブル基板501の折り曲げ位置で導電材515に対して剥離力が働くものの、絶縁膜517との密着によってその折り曲げ位置での導電材515の剥離が防止される。また、冷却部852による跳ね上げ台850の冷却が、適宜停止される。
次に、図9Jに示すように、フレキシブル基板501(熱成形シート511)が冷えると、吸着孔818を介した吸引を停止するとともに、第2ヒータ814を第1ヒータ813から離間させる。これにより、フレキシブル基板501から第2ヒータ814が離れる。熱成形シート511は、加熱後に冷却されることにより、フレキシブル基板501の折り曲げ状態を保持する。
続いて、図9Kに示すように、フレキシブル基板501をシステム800から取り外す。このとき、保持部812の吸着機構812aがフレキシブル基板501を吸着する。保持部812が第1ヒータ813から離間するのに伴い、フレキシブル基板501が第1ヒータ813から離れる。第1ヒータ813の表面には、フレキシブル基板501上の熱成形シート511との密着性が低いフッ素膜が形成されていることにより、熱成形シート511の剥がれが防止されるとともに、第1ヒータ813からのフレキシブル基板501の離脱が容易である。
以上の図9A〜9Kの工程により、フレキシブル基板501が折り曲げられる(フォーミング)とともに、フレキシブル基板501に電気接続用の異方性導電材515が配置される。次のフレキシブル基板を処理する場合、シート831が適宜送り出される。フレキシブル基板502〜504についてもこれと同様である。
以上説明したように、本実施形態によれば、高精細な配線が形成されたフレキシブル基板501〜504を用いることにより、配線の狭ピッチ化に好ましく対応できる。また、異方性導電材515を用いることにより、電気接続部分の狭ピッチ化が図られる。さらに、フレキシブル基板501上に設けられた絶縁膜517によってフレキシブル基板501と異方性導電材515との密着性が向上するから、フレキシブル基板501の端子部512と圧電素子300の上電極膜80との接続信頼性の向上が図られる。
特に、本実施形態では、フレキシブル基板501〜504における一方の端部(駆動回路部200)と、他方の端部(端子部512)とが段差構造における上下に分かれて配され、さらにフレキシブル基板501がその間で折り曲げられている。そのため、折り曲げに伴う弾性力がフレキシブル基板501に働き、その力がフレキシブル基板501〜504と圧電素子300との電気接続部分を離す方向に働く可能性がある。しかしながら、本実施形態では、上記絶縁膜517を介した接続によってフレキシブル基板501〜504の配線と圧電素子300との電気接続強度を十分に確保することができる。そして、この接続強度が十分に確保されていることにより、この電気接続の後に行われる樹脂材202によるモールド作業も容易に行うことができる。
<液滴吐出装置>
次に、上述した液滴吐出ヘッド1を備えた液滴吐出装置IJの一例について図10を参照しながら説明する。図10は液滴吐出装置IJの概略構成を示す斜視図である。
図10において、液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド1と、駆動軸4と、ガイド軸5と、コントローラCTと、ステージ7と、クリーニング機構8と、基台9と、ヒータ6とを備えている。ステージ7は液滴吐出ヘッド1より機能液を吐出される基板Pを支持するものであって、基板Pを基準位置に固定する不図示の固定機構を備えている。液滴吐出ヘッド1のノズル開口部からは、ステージ7に支持されている基板Pに対して機能液が吐出される。
駆動軸4には駆動モータ2が接続されている。駆動モータ2はステッピングモータ等であり、コントローラCTからY軸方向の駆動信号が供給されると、駆動軸4を回転させる。駆動軸4が回転すると、液滴吐出ヘッド1はY軸方向に移動する。ガイド軸5は基台9に対して動かないように固定されている。ステージ7は、駆動モータ3を備えている。駆動モータ3はステッピングモータ等であり、コントローラCTからX軸方向の駆動信号が供給されると、ステージ7をX軸方向に移動する。
コントローラCTは液滴吐出ヘッド1に液滴の吐出制御用の電圧を供給する。更に、コントローラCTは、駆動モータ2に対して液滴吐出ヘッド1のY軸方向への移動を制御する駆動パルス信号を供給するとともに、駆動モータ3に対してステージ7のX軸方向への移動を制御する駆動パルス信号を供給する。
クリーニング機構8は液滴吐出ヘッド1をクリーニングするものであって、図示しない駆動モータを備えている。この駆動モータの駆動により、クリーニング機構8はガイド軸5に沿ってX軸方向に移動する。クリーニング機構8の移動もコントローラCTにより制御される。ヒータ6はここではランプアニールにより基板Pを熱処理する手段であり、基板P上に塗布された機能液に含まれる溶媒の蒸発及び乾燥を行う。このヒータ6の電源の投入及び遮断もコントローラCTにより制御される。
そして、液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド1と基板Pを支持するステージ7とを相対的に走査しつつ基板Pに対して液滴を吐出する。
なお、上述した実施形態において、液滴吐出ヘッド1より吐出される機能液としては、液晶表示デバイスを形成するための液晶表示デバイス形成用材料、有機EL表示デバイスを形成するための有機EL形成用材料、電子回路の配線パターンを形成するための配線パターン形成用材料などを含むものとする。これにより、液滴吐出装置IJは、液滴吐出法に基づいて吐出した機能液によって、上記各デバイスを製造することができる。
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1…液滴吐出ヘッド、10…流路形成基板(ベース基板)、15…ノズル開口部、15A〜15D…ノズル開口群、20…リザーバ形成基板、70…圧電体膜(圧電素子)、80…上電極膜(配線)、200…駆動回路部(デバイス)、201…樹脂、202…樹脂材(モールド材)、300…圧電素子(駆動素子)、300A、300B…圧電素子群(駆動素子群)、501〜504…フレキシブル基板、501a…貫通穴、501b…切り欠き、510…配線パターン(配線)、511…熱成形シート(成形膜)、511a…切り欠き、512…端子部、線状端子、515…異方性導電材、517…絶縁膜、520…絶縁膜、線状膜、700…開口部、800…システム(デバイス実装システム)、810…成形装置、811…支持台、812…保持部、813…第1ヒータ、814…第2ヒータ、818…吸着孔、830…導電材配置装置、831…シート、831a…ベースシート、831b…導電材膜、831c…保護シート、835…搬送機構、836…転写機構、845…支持台、850…跳ね上げ台、851…裁断部、852…冷却部、IJ…液滴吐出装置。