JP4495271B2 - トラップ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば半導体製造あるいは液晶素子製造に用いるトラップ装置に関し、特に、反応性ガス中での成膜処理と反応性ガス中での食刻処理とイオン性ガス中でのイオン注入処理との少なくともひとつの処理を被処理部材に施す気密チャンバからの排気系に介挿され、内部を流通する排気ガス中の粉体とミストと凝縮性ガスとの少なくともひとつから固形物を生成してこの固形物を捕捉するトラップ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば半導体あるいは金属を処理する半導体製造におけるウェーハ処理工程やガラス等の絶縁基板に液晶素子を形成する液晶素子製造における液晶素子製造工程には、次のような処理工程が含まれる。
【0003】
1)2酸化シリコン(Si O2 )を成膜する方法のひとつとして、TEOS(テトラ・エチル・オキサイド・シリコン)と酸素を用いる工程がある。この成膜処理を行う成膜処理装置の排気ガス中には、2酸化シリコンの微粉末が含まれる。この微粉末は、TEOSが酸化したときに発生する水蒸気が液体に凝縮するとそれが結合原因物質となり、2酸化シリコンはより大きな粉体粒の粉末に成長しする。その結果、このような排気ガスが冷えることにより、ガス中に含まれる2酸化シリコンは粒径の大きな粉体として排気配管の中に停留しやすくなる。また、ときとしてTEOS(液体)自身がミストとして排気ガスに含まれることがある。このミストは冷却されると、排気配管の管壁に付着し最終的には2酸化シリコンとして固着する。
【0004】
2)窒化シリコンを成膜する方法のひとつとして、ジクロールシランとアンモニアガスを用いる工程がある。また、窒化チタンを成膜する方法のひとつとして塩化チタンとアンモニアガスを用いる工程がある。このような成膜処理を行う成膜処理装置の排気ガス中には塩化アンモニウムが含まれる。塩化アンモニウムは約140℃程度になると、急速に凝縮して気体から固体になる。このため、塩化アンモニウムが真空ポンプの内部や排気配管の管壁に固体の層として固着する。
【0005】
3)アルミニウムを食刻する方法のひとつとして、塩化水素ガスを用いる処理工程がある。この反応性ガス中で食刻処理する食刻処理装置の排気ガス中には塩化アルミニウムが含まれる。また、酸化アルミニウムを成膜する方法のひとつとして、塩化アルミニウムと水蒸気を用いる工程があり、このような成膜処理を行う成膜処理装置の排気ガス中には塩化アルミニウムが含まれる。塩化アルミニウムは約100℃程度になると、凝縮して気体から粉末状の固体になる。このため、塩化アルミニウムは真空ポンプの内部や排気配管の中に停留しやすくなる。
【0006】
4)高濃度のホスフィンや固体のリンをイオン源として利用するイオン注入工程がある。このイオン注入装置の排気ガス中にはイオン化したリンが含まれる。このイオン性のガスは、冷却すると凝縮され、リンが微粉末となって析出する。このリンの微粉末は真空ポンプ等の可動機構の隙間に付着し、可動機構の摩擦を増大し、最終的には真空ポンプを停止させてしまう。
【0007】
5)金属タングステンを成膜する方法として六フッカタングステンと水素ガスとを用いる方法がある。この場合、これらのガスを120℃以上にすることにより、金属タングステンが析出し、成膜が行われる。しかし、ポンプ内で金属タングステンが析出すると、タングステンの硬度はポンプの主材料である鋳鉄よりも高いため、ポンプはすぐに摩耗破損する。
【0008】
このような各種の処理工程中で生成された粉末がそのまま放置されると、大量の粉末により、真空ポンプを過負荷停止させる。あるいは、排気配管に固着した固体層が次第に成長すると、最終的には排気配管を閉塞させる原因となる。更に、イオン性ガスは、真空ポンプを停止させてしまい、タングステン成膜ガスは真空ポンプを摩耗破損させてしまう。このような、真空ポンプ内や排気系統における固形物の付着を防止するため、ガス処理装置として冷却媒体や加熱媒体を用いたトラップを用いることが広く行われている。
【0009】
図5は、このようなガス処理装置として用いられる従来技術のトラップを示す。このようなトラップは冷却媒体と加熱媒体とのいずれをも用いることが可能なものであるが、以下の説明では、主に冷却媒体として水を用いた水冷トラップとして説明する。
【0010】
この水冷トラップは、一端を底壁で閉じられた円筒状ケーシング2内に冷却管4を配置し、この円筒状ケーシング2の他端を密閉板6で閉じた密閉構造を有する。排気ガスは円筒状ケーシング2に設けられた吸気口2aから流入し、密閉板6に設けられた排気口2bから排出される。また、冷却管4内には、給水口4aから冷却水が供給され、この内部通路を流通した後、排水口4bから排出される。この冷却管4の外周部には、フィン8が螺旋状に取付けられている。
【0011】
円筒状ケーシング2内を流通する排気ガスは、冷却管4およびフィン8の表面に接触して効率的に冷却され、この冷却管4およびフィン8の表面上に排気ガス中の粉末を付着させ、あるいは、固着原因物質を凝縮付着させることにより、排気ガス中から粉体、凝縮性ガスあるいはミスト等を除去することができる。
【0012】
したがって、このような水冷トラップを用いることにより、そのトラップ内において排気ガス中の粉末を強制的に除去し、あるいは、ガス中の凝縮性ガスを強制的にトラップ内に固着させてガス中の固着原因物質を除去することができる。このような粉末あるいは固着原因物質を排気ガス中から除去する効果は、スクラビング効果と称されている。このスクラビング効果により、粉末、あるいは凝縮性ガスを強制的に除去された排気ガスは、排気配管や真空ポンプ内部に固形物を付着あるいは生成させることがほとんどなく、したがって、配管閉塞による排気停止あるいは真空ポンプ停止を伴なう排気停止トラブルを未然に防ぐことができる。このような排気停止トラブルは、長期間にわたって防止できることが望ましい。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、冷却管およびフィンの表面に粉末ないし固着原因物質等の固形物がある程度付着すると、この冷却管およびフィンの冷却能力が低下することにより、水冷トラップにおけるスクラビング効果も低下し、最終的には粉末あるいは凝縮性ガスを所定以上のトラップ効率で除去できなくなってしまう。また、例えトラップ効率が十分であっても、固形物の付着により、ガス流に対するコンダクタンスが低下し、ポンプの排気速度を減少させる結果となる。このような状態になると、排気系統は前述の問題を生じ、排気停止を起し、あるいは、排気能力が不足することになる。言い換えると、このように粉末あるいは凝縮性ガスを所定以上のトラップ効率で除去できなくなったり、所定以下のコンダクタンスとなったときに、水冷トラップの使用寿命となる。
もちろん、トラップ効率とコンダクタンスの維持とは長期にわたって持続することが望ましいことであるが、しかし、従来の水冷トラップの効率と使用寿命とを延長させるためにはトラップ内表面積を大きくし、ガス分子と冷却面との衝突回数を増大させる必要があり、そのためケーシングおよび冷却管を軸方向に延長させて多数の冷却フィンを挿入していた。この場合には、水冷トラップが極めて大型化すると共に、排気ガスの流れが妨げられ、ガス流に対するコンダクタンスが減少すると言う問題をかかえていた。また、フィンとケーシングとの間に粉末ないし固着原因物質等の固形物が堆積すると、ケーシングに対向するフィンの全長が長いために強固な結合力が形成され、冷却管をケーシングから分離することが困難となる。
【0014】
本発明は上述に鑑みてなされたもので、必要な流量コンダクタンスを確保しつつ長期間にわたってトラップ効果を維持することができると共に、固形物が大量に内部に堆積した状態でも容易に分解することができるトラップ装置を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明によると、反応性ガス中での成膜処理と反応性ガス中での食刻処理とイオン性ガス中でのイオン注入処理との少なくともひとつの処理を被処理部材に施す気密チャンバからの排気系に介挿され、内部を流通する排気ガス中の粉体とミストと凝縮性ガスとの少なくともひとつから固形物を生成してこの固形物を捕捉するトラップ装置であって、ガス流入口およびガス流出口を開口させた外筒部材と、この外筒部材内に配置され、外筒部材との間に環状のガスチャンネルを形成する内筒部材と、前記外筒部材の内周側から環状のガスチャンネル内に突出して螺旋状のガス流路を形成する複数の帯板状の外側フィンと、内筒部材の外周側からガスチャンネル内に突出する環状の板状に形成され、このガスチャンネル内を流れるガス流を攪拌する複数の内側フィンとを備え、前記外側フィンは、内側フィンの半径方向外側で、長手方向に沿ってねじられると共に一端が内筒部材の周方向に移動された螺旋状に配置され、この外側フィンの配置される面と内側フィンが配置される面とが互いに交差するトラップ装置が提供される。
【0016】
このトラップ装置では、ガス流入口から流入した排気ガスは、外側フィンで案内されつつガスチャンネル内を流れ、ガス流出口から排気系に戻される。このガスチャンネル内を流れる間に、ガス流は内側フィンで攪乱され、好適なトラップ効果が得られる。また、外側フィンの配置される面と内側フィンが配置される面とが互いに交差するため、外側フィンの内周側縁部と、内側フィンの外周側縁部とは、面積の小さな点状の領域で重なり合う。このため、この間に堆積した固形物で形成される結合力は、強固なものとはならない。
【0017】
前記外筒部材と内筒部材とは、冷却用又は加熱用の媒体が流れる環状スペースを有するのが好ましい。また、内側フィンは、それぞれ内側管部材の軸線に対して垂直に配置され、前記外側フィンの各端部は、それぞれ内筒部材の軸方向に沿う平板状に形成されているのが好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の好ましい実施の形態によるトラップ装置の全体を示し、図2から図4はその内部構造を概略的に示す。
このトラップ装置は、半導体製造装置や液晶素子製造装置に好適に用いられ、例えば上述のようなTEOSと酸素とを用いた2酸化シリコン成膜処理装置、ジクロールシランとアンモニアガスとを用いた窒化シリコンの成膜処理装置、塩化チタンとアンモニアガスとを用いた窒化チタンの成膜装置、塩化アルミニウムと水蒸気を用いた酸化アルミニウムの成膜装置、塩化水素ガスを用いたアルミニウムの食刻処理装置、あるいは、高濃度のホスフィンや固体のリンをイオン源として利用するイオン注入処理装置等の処理装置から、直接、又は真空ポンプあるいはガス除外装置を介して排気される排気系に介挿され、排気ガス中の粉体、ミストあるいは凝縮性ガスを捕捉するものである。なお、以下では、これらの捕捉された粉体、ミストあるいは凝縮性ガスを単に固形物と総称する。
【0019】
図1に示すように、このトラップ装置10は、円筒状の外筒部材12を備える。この外筒部材12は、両端が開口した第1円筒部材12aと、一端が湾曲構造の底壁14で閉じられた第2円筒部材12bとをシールリング12cを介して同軸状に連結して形成してある。この外筒部材12の開口した他端には支持プレート16が設けられ、この支持プレート16が外筒部材12の内部を密閉すると共に、後述する内筒部材、および、冷却あるいは加熱媒体用の管路を支えている。また、第1円筒部材12aには、ガス流入口18が形成され、上述のような成膜処理装置、食刻処理装置あるいはイオン注入処理装置等の処理装置の気密チャンバから排気された反応性ガスあるいはイオン性ガス等を、このガス流入口18からトラップ装置10内に導く。更に、第2円筒部材12bの外周部には、ジャケット20が配置され、第2円筒部材12bの周部に環状スペース22を形成する。
【0020】
外筒部材12の内部には、内筒部材24が同軸状に配置されている。この内筒部材24は両端が開口しており、支持プレート16に形成された開口26に、ガス流出口28を形成する一方の端部が結合され、したがって、外筒部材12は内筒部材24の一端に形成したガス流出口28を、外部に開口させている。また、内筒部材24の反対側の端部は、外筒部材12の内部で底壁14と対向配置され、この外筒部材12との連通口30を形成する。これにより、ガス流入口18から、外筒部材12と内筒部材24との間、および、内筒部材24の内孔を介してガス流出口28に至るガスチャンネルが形成される。
【0021】
この内筒部材24の連通口30に近接した部分、すなわち第2円筒部材12bの半径方向内方に配置される部分の外周部にはジャケット32が配置され、内筒部材24の外周部に環状スペース34を形成する。この内筒部材24に形成した環状スペース34は、連絡管路36を介して外筒部材12の環状スペース22と連通し、更に、媒体供給管路38を介して例えば冷却水等の冷却媒体が供給される。本実施形態では、内筒部材24のガス流出口28に近接した側で、この媒体供給管路38が環状スペース34内に開口しており、反対側の連通口30に近接した側で、連絡管路36が環状スペース34内に開口する。この連絡管路36は、ガス流入口18に近接する側でジャケット20に設けられた接続部40を介して外筒部材12の環状スペース22に連通する。底壁14に近接する側でジャケット20に設けられた接続部42は、図示しない媒体排出管路に接続され、環状スペース22から冷却媒体を排出することができる。
【0022】
したがって、媒体供給管路38から供給された冷却水等の媒体は、環状スペース34のガス流出口28に近接した側から、反対側の連通口30に向けて流れ、この連通口30に近接した側から連絡管路36を介してジャケット20の接続部40に供給される。そして、外筒部材12の環状スペース22内をガス流入口18に近接する側から底壁14に近接する側に向けて流れた後、接続部42から外部に排出される。
【0023】
これらの内筒部材24および外筒部材12の環状スペース34,22内には、排気ガスを冷却する場合には冷却媒体として水等を循環することができ、更に、0℃以下に冷却させる場合には水に代えてグリセリン等の冷却媒体を循環させるのが好ましい。一方、例えば、フッ化タングステン(WF6)を用いてタングステン膜を形成する成膜処理装置に用いる場合には、フッ化タングステンが大気圧下では120℃以上で分解してタングステンを析出させるため、冷却水等の冷却媒体に代え、加熱された液体等の加熱媒体を循環させる。なお、このように加熱する場合には、環状スペース22,34の一方あるいは双方にヒータを配置することも可能である。
【0024】
本実施形態のトラップ装置10では、ガス流入口18とガス流出口28との間のガスチャンネルが3つのトラップステージから形成されている。第1ステージAは第1円筒部材12aと内筒部材24との間に形成される環状のガスチャンネルであり、第2ステージBは第2円筒部材12bと内筒部材24との間に形成される環状のガスチャンネルであり、第3ステージCは、内筒部材24の内孔部に形成される円筒状のガスチャンネルである。
【0025】
第1ステージAは、従来のものと同様に、ガス流入口18から流入した排気ガスをこの環状のガスチャンネル内で外筒部材12および内筒部材24の壁面に衝突させ、生成された固形物を捕捉する。また、最終の第3ステージCでは、最後に残った固形物を捕捉するもので、この第3ステージCを形成する円筒状のガスチャンネル中に本実施形態では2つのバッフル44a,44bが突出し、ガス流出口28から排気系に流出するのを防止している。そして、第1ステージAと第3ステージCとの間に配置される第2ステージBでは、複数の内側フィン46が内筒部材24の外周面側すなわちジャケット32の外周面からガスチャンネル内に突出し、複数の外側フィン48が外筒部材12の内周面側からガスチャンネル内に突出する。
【0026】
図2から図4に概略を示すように、各内側フィン46は、内筒部材24の軸線とほぼ直交する面内に配置された環状の板状に形成されており、軸方向に沿って互いに隣接する2つの内側フィン46間に環状凹部50が形成される。また、外側フィン48は、内側フィン46と交差する面に沿いかつ内側フィン46の半径方向外側に配置されており、細長い帯板状に形成されている。各外側フィン48は、その長手方向軸線に沿って約90°ねじられると共に、一端が内筒部材24の周方向に約90°移動されている。したがって、この外側フィン48は、内筒部材24の軸線に対して螺旋状に配置され、互いに隣接する2つの外側フィン48間には螺旋状のガス流路52が形成される。また、このように外側フィン48の配置される面と内側フィン46が配置される面とが互いに交差するため、外側フィン48の内周側縁部と、内側フィン46の外周側縁部とは、図4から明らかなように、面積の小さな点状の領域で重なり合う。
【0027】
なお、図2および図3には、4枚の外側フィン48を等間隔に配置した状態で示してあるが、必要に応じて例えば8枚等の適宜数とし、そのねじれ角等も適宜なものとすることができる。また、これらの外側フィン48の幅寸法は、螺旋状のガス流路52の有効ガス通過断面積の合計が、第3ステージCを形成する内筒部材24のガス通過断面積とほぼ等しくなるように設定するのが好ましい。更に、各外側フィン48の長手方向の各端部は、ねじることなく、それぞれ内筒部材24の軸方向に沿う平板状に形成し、第1ステージAおよび第3ステージCとの間で滑らかにガスを案内できるようにするのが好ましい。一方、内側フィン46は、第2ステージBのガスチャンネルを流れるガス流を攪乱できるものであればよく、例えば内筒部材24の軸線に対して傾斜させ、あるいは、外側フィン48のねじれ角と異なる角度の螺旋状に配置することも可能である。各内側フィン46は、隣接する内側フィン46間の環状凹部50が、第1ステージA側すなわちガス流入口18に近接する側から連絡口30に近接する第3ステージC側に向けて次第に狭くなるように形成するのが好ましい。
【0028】
次に、図1から図4を参照しつつ上記トラップ装置10の作用について説明する。
図1に示すように、上述のような各種の処理装置から排出された排気ガスは、ガス流入口18から第1ステージAに流入する。この第1ステージAでは、半径方向外方から流入した排気ガスは、内筒部材24の外面に衝突して攪乱され、内筒部材24および外筒部材12に接触して、この環状のガスチャンネル内で大部分の固形物がトラップされる。
【0029】
第2ステージBでは、環状スペース22,34内に水等の冷却媒体が循環されている場合には、外筒部材12の内周面と、内筒部材24のジャケット32と、内側フィン46および外側フィン48の表面とで冷却される。この際、図4に示すように、外筒部材12の軸線方向に沿う高速成分を持つ排気ガスHは、外側フィン48間のそれぞれの螺旋状のガス流路52に沿う複数のメインガス流を形成する。一方、内側フィン46で攪拌されることにより、軸線方向に沿う速度成分が小さい排気ガスLは、メインガス流から分離されて半径方向内方に移動する。このような排気ガスLは、内側フィン46間の環状凹部50内に滞留し、また、メインガス流で付勢されて再度ガス流路52の方向に移動し、したがって、内側フィン46との接触を繰返す。これにより、排気ガス中の微粉末は大きな粉体に成長し、凝縮性ガスは固体となって内筒部材24したがってジャケット32と内側フィン46との表面に付着する。また、排気ガス中のミストもこれらのジャケット32と内側フィン46との表面に付着する。
【0030】
このように、第2ステージBでは、環状スペース22,34内を流れる冷却媒体と排気ガスとの温度差、および、内側フィン46によるガス流の攪拌作用により、スクラビング効果が向上する。また、ほとんどの固形物は内側フィン46間の環状凹部50内に捕捉されるため、螺旋状のガス流路52が閉塞されることはほとんどなく、トラップ容量を増大させてもガス流に対する所要のコンダクタンスを維持することができる。
【0031】
第3ステージCでは、更に内筒部材24の内周面で冷却され、排気ガス中に含有される粉体、ミスト、あるいは凝縮性ガスが、この内筒部材24内に捕捉され、除去された後に、排気ガスがガス流出口28から送出される。バッフル44a,44bは、内部に捕捉した固形物がガス流で搬出されるのを防止する。
【0032】
なお、排気ガスを冷却する場合の他、上述のように、例えばフッ化タングステン(WF6)を用いてタングステン膜を形成する成膜処理装置に用いる際に、冷却水等の冷却媒体に代え、加熱された液体等の加熱媒体を循環させる場合でも、冷却媒体を循環させる場合と同様に、排気ガスと、外筒部材12および内筒部材24の表面との温度差とガス流の攪拌とを有効に利用し、固形物を捕捉できことは明らかである。この場合も、外筒部材12と内筒部材24と内側および外側フィン46,48との表面に付着する。
【0033】
固形物の堆積量が限度に達した場合は、トラップ装置10を分解し、捕捉した固形物を除去することにより、再度使用することができる。この場合、内側フィン46と外側フィン48との最接近部分が面積の小さな点状であるため、大量の固形物を捕捉した後であっても、これらの固形物により大きな結合力が形成されることはない。したがって、外筒部材12あるいは内筒部材24に例えばハンマーで衝撃を加えることにより、これらの外筒部材12と内筒部材24とを簡単に分離することができる。
【0034】
したがって、本実施の形態におけるトラップ装置10は、軸線方向および径方向において極めてコンパクトな構造でありながらも、長期間にわたって好適なトラップ効率と所要の流量コンダクタンスとの双方を維持することができる。また、内部に堆積した固形物による結合力も小さいため、保守が容易である。
【0035】
なお、このトラップ装置は上述のように半導体製造装置あるいは液晶素子製造装置に用いるのに特に有益なものであるが、これに限らず、ガスに含まれる粉体、ミストあるいは凝縮性ガスを捕捉する必要のある種々のガス流通系統に用いることが可能なことは明らかである。
【0036】
【発明の効果】
本発明のトラップ装置は、ガス流入口およびガス流出口を開口させた外筒部材と、この外筒部材内に配置され、外筒部材との間に環状のガスチャンネルを形成する内筒部材と、前記外筒部材の内周側からガスチャンネル内に突出して螺旋状のガス流路を形成する複数の帯板状の外側フィンと、内筒部材の外周側からガスチャンネル内に突出する環状の板状に形成され、このガスチャンネル内を流れるガス流を攪拌する複数の内側フィンとを備え、前記外側フィンは、内側フィンの半径方向外側で、長手方向に沿ってねじられると共に一端が内筒部材の周方向に移動された螺旋状に配置され、この外側フィンの配置される面と内側フィンが配置される面とが互いに交差することにより、固形物を捕捉する環状凹部と、所要の流量コンダクタンスを維持する螺旋状のガス流路とを極めて簡単に形成することができ、更に、必要な流量コンダクタンスを確保しつつ長期間にわたってトラップ効果を維持することができると共に、固形物が大量に内部に堆積した状態でも容易に分解することができる。
【0037】
また、外筒部材と内筒部材とが、冷却用又は加熱用の媒体の流れる環状スペースを有する場合には、外側フィンおよび内側フィンによる案内および攪拌作用に加え、媒体の熱を利用することにより、トラップ効果を増大することができる。
【0038】
更に、内側フィンが、それぞれ内側管部材の軸線に対して垂直に配置され、前記外側フィンの各端部は、それぞれ内筒部材の軸方向に沿う平板状に形成されている場合には、螺旋状のガス流路に対して滑らかにガスを案内できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好ましい実施の形態によるトラップ装置の内部構造を概略的に示す説明図。
【図2】図1に示すトラップ装置内の外側フィンと内側フィンとの配置関係を概略的に示す斜視図。
【図3】図1のIII−III線の方向から見た状態のトラップ装置内部の説明図。
【図4】図2のIV−IV線の方向から見たガスの流れを説明する概略図。
【図5】従来の水冷トラップを示す図。
【符号の説明】
10…トラップ装置、12…外筒部材、12a,12b…円筒部材、12c…シールリング、14…底壁、16…支持プレート、18…ガス流入口、20,32…ジャケット、22,34…環状スペース、24…内筒部材、26…開口、28…ガス流出口、30…連通口、32…媒体供給管、36…連絡管路、38…媒体供給管路、40,42…接続部、44a,44b…バッフル、46…内側フィン、48…外側フィン、50…環状凹部、52…ガス流路。
Claims (3)
- 反応性ガス中での成膜処理と反応性ガス中での食刻処理とイオン性ガス中でのイオン注入処理との少なくともひとつの処理を被処理部材に施す気密チャンバからの排気系に介挿され、内部を流通する排気ガス中の粉体とミストと凝縮性ガスとの少なくともひとつから固形物を生成してこの固形物を捕捉するトラップ装置であって、
ガス流入口およびガス流出口を開口させた外筒部材と、この外筒部材内に配置され、外筒部材との間に環状のガスチャンネルを形成する内筒部材と、前記外筒部材の内周側からガスチャンネル内に突出して螺旋状のガス流路を形成する複数の帯板状の外側フィンと、内筒部材の外周側からガスチャンネル内に突出する環状の板状に形成され、このガスチャンネル内を流れるガス流を攪拌する複数の内側フィンとを備え、前記外側フィンは、内側フィンの半径方向外側で、長手方向に沿ってねじられると共に一端が内筒部材の周方向に移動された螺旋状に配置され、この外側フィンの配置される面と内側フィンが配置される面とが互いに交差するトラップ装置。 - 前記外筒部材と内筒部材とは、冷却用又は加熱用の媒体が流れる環状スペースを有する請求項1に記載のトラップ装置。
- 前記内側フィンは、それぞれ内側管部材の軸線に対して垂直に配置され、前記外側フィンの各端部は、それぞれ内筒部材の軸方向に沿う平板状に形成されている請求項1又は2に記載のトラップ装置。
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