JP4494681B2 - 堆積膜形成方法およびこれに用いるマスク、並びに有機エレクトロルミネッセンスディスプレイパネル - Google Patents
堆積膜形成方法およびこれに用いるマスク、並びに有機エレクトロルミネッセンスディスプレイパネル Download PDFInfo
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、堆積膜形成方法およびこれに用いるマスクに関するものである。詳しく述べると、本発明は、例えば、電流の注入によって発光する有機化合物材料のエレクトロルミネッセンス(以下、ELという)を利用する有機ELディスプレイパネルの発光層形成、電極形成に有用である堆積膜形成方法およびこれに用いるマスクに関するものである。本発明はさらに、このような堆積膜形成方法を応用した有機ELディスプレイパネルおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、有機EL素子の陰極や有機EL媒体層をマイクロパターニングすることは、電荷注入層や発光層に用いられる有機EL媒体の耐熱性(一般に100℃以下)、耐溶剤性、耐湿性の低さのため困難である。例えば、通常薄膜のパターニングに用いられるフォトリソグラフィ法を有機EL素子に用いると、フォトレジスト中の溶剤の素子への侵入や、フォトレジストベーク中の高温雰囲気や、フォトレジスト現像液またはエッチング液の素子への浸入や、ドライエッチング時のプラズマによるダメージ等の原因により有機EL素子特性が劣化する問題が生じる。
【0003】
また、蒸着マスクを用いてパターニングする方法もあるが、基板及び蒸着間のマスクの密着不良による蒸着物の回り込みや、強制的に基板と蒸着マスクを密着させた場合のマスクとの接触により有機EL媒体層が傷ついてインジウム錫酸化物(以下、ITOという)などからなる陽極と陰極がショートすることや、陰極のストライプ状パターンなど開口部が大きくマスク部が細いパターンの場合にはマスク強度が不足しマスクが撓むこと等の問題により、微細なパターンが形成できない。
【0004】
現在、有機EL材料を用いたディスプレイパネルとしては、特開平2−66873号、特開平第5−275172号、特開平第5−258859号及び特開平第5−258860号の公報に開示されているものがある。このフルカラーディスプレイは、交差している行と列において配置された複数の発光画素からなる画像表示配列を有している発光装置である。
【0005】
この発光装置においては、各々の画素が共通の電気絶縁性の光透過性基板上に配置されている。各行内の画素は、基板上に伸長して配置された共通の光透過性第1電極を含有し且つ該電極によって接合されている。隣接行内の第1電極は、基板上で横方向に間隔をあけて配置されている。有機EL媒体は、第1電極及び基板によって形成された支持面の上に配置されている。各列の画素は、有機EL媒体上に配置された共通に伸長した第2電極を含有し且つ該電極によって接続されている。隣接列内の第2電極は、有機EL媒体上で横方向に間隔をあけて配置されている。この発光装置においては有機EL媒体を挟んで交差している第1及び第2電極のラインを用いた単純マトリクス型を採用している。
【0006】
前述の問題を解決する方法が、上記公開公報に開示されている。たとえば、特開平2−66873号開示の技術は、有機EL媒体を溶解しない溶剤を用いたフォトレジストを素子上にパターニングし、希硫酸を用いて陰極をエッチングする方法である。しかし、エッチングの際、希硫酸により有機EL媒体が損傷を受ける。
【0007】
また、特開平第5−275172号、特開平第5−258859号及び特開平第5−258860号開示の技術は、ITOパターニング後の基板上に平行に配置したストライプ状の数〜数十μmの高さの隔壁を作製し、その基板に隔壁に対して垂直方向、基板面に対して斜めの方向から有機EL媒体や陰極材料を蒸着することによりパターニングする方法である。即ち、第1電極ライン及び有機EL媒体の薄膜を、予め基板に設けられている境界の高い壁により所定気体流れを遮って、選択的に斜め真空蒸着して形成する製造方法が採用されている。しかし、この方法は、斜めの蒸着方向に対し垂直な方向にしかパターニングできず、ストライプ状の形状にしかならない。このため、RGBがデルタ配置されたものや、陰極が屈曲もしくは蛇行するようなディスプレイパネルは実現できない。
【0008】
このような観点から、さらに特開平8−315981号公報においては、所期の形状にパターニングされた第1表示電極を形成後に、基板上に逆テーパー状の断面形状を有する電気絶縁性の隔壁(以下、陰極隔壁とも称する。)を設け、この隔壁をシャドーマスクとして用いて、有機EL媒体、第2表示電極とを逐次堆積する方法が提唱されている。この方法によれば、有機EL媒体の例えばストライプ状パターンなど開口部が大きくマスク部が細いパターンの場合にマスク強度が不足する傾向にあるマスクを基板に密着させても、前記隔壁が有機EL膜の発光層を保護するので、微細なパターンが形成でき発光層に損傷を与えることがなくなり、隔壁及びマスクによりRGB有機層の分離が確実に行なえ、精度良くRGBの媒体の塗り分けができるものであった。
【0009】
しかしながら、この方法も、逆テーパー状の陰極隔壁を形成する上で、そのパターニング工程が必要となるため、製造工程がやや複雑となるという問題があった。また、得られる有機EL素子において、この陰極隔壁が残るため、素子全体を絶縁性封止膜で覆っても、この隔壁部より発生する水分、ガス等によって、有機EL媒体が損傷を受け、非発光部が発生したり発光寿命が低下する虞れが残り、また、隔壁の存在によって当該封止膜の形成が難しくまた得られる素子が嵩高のものとなってしまうという問題もあった。さらに、アクティブマトリックスパネルの場合においては、第2表示電極(陰極)は、共通電極となるためにパターニングする必要はなく、上記のような陰極隔壁を形成しないため、各有機EL媒体層を形成する際マスクの接触により先に形成した有機EL媒体層が傷ついて陽極と陰極がショートするという問題が生じるものであった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は上記したような従来技術における課題を鑑みてなされたものであり、所期の形状の堆積膜を容易にかつ簡単な工程において形成することのできる堆積膜形成方法およびこれに用いるマスクを提供することを課題とする。本発明はまた、有機ELディスプレイパネルの発光層形成、電極形成に有用である堆積膜形成方法およびこれに用いるマスクを提供することを課題とするものである。本発明はさらに、容易にかつ簡単な工程において高品質の製品を得ることのできる有機ELディスプレイパネルの製造方法およびこれにより得られる高品質な有機ELディスプレイパネルを提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の堆積膜の形成方法は、基板上若しくはその基板に形成された積層構造体上に、開口部を有するマスクを配置して、基板若しくは積層構造体上の選択位置に、堆積膜を形成する方法において、前記マスクの基板若しくは積層構造体に対する対向面に、前記開口部以外の実部の任意部分より略垂直方向に突出する脚部を設け、マスク配置時に、マスクの基板対向面全体が、基板若しくは積層構造体に接触することを防止したことを特徴とする。
【0012】
また、上記課題を解決する本発明のマスクは、基板上若しくはその基板に形成された積層構造体上の選択位置に堆積膜を形成する際に用いられるマスクであって、前記選択位置に対応する開口部を有し、かつ、基板ないし積層構造体に対する対向面に、前記開口部以外の実部の任意部分より略垂直方向に突出する脚部が設けられていることを特徴とする。
【0013】
このように本発明においては、所期の位置に堆積膜を形成する上で、用いられるマスクに脚部を設け、この脚部によって基板ないしは基板上の積層構造物にマスクが当接支持されるものとしているので、基板ないしは基板上の積層構造物における該脚部の当接部を、例えば、機能性薄膜形成部以外に設定してやれば、マスク面自体が基板上の当該薄膜等に触れることがなく、当該接触によって引き起こされる薄膜等の損傷の虞れがなくなる。
【0014】
さらに上記課題を解決する本発明は、複数の発光部からなる画像表示配列を有している有機エレクトロルミネッセンスディスプレイパネルの製造方法であって、基板上に、前記発光部に対応する複数の第1表示電極を形成するパターニング工程と、前記露出した第1表示電極の部分に対応した複数の開口を有し、かつ基板対向面に、前記開口部以外の実部の任意部分より略垂直方向に突出する脚部が設けられているマスクを用い、前記複数の第1表示電極間の間隙部に当該マスクの前記脚部を位置させ載置することにより、当該マスクを第1表示電極に接触させることなく、第1表示電極上部に配置し、有機エレクトロルミネッセンス媒体を前記開口を介して前記隔壁内の前記第1表示電極の各々上に堆積させ、少くとも1層の有機エレクトロルミネッセンス媒体の薄膜を形成する発光層形成工程と、前記有機エレクトロルミネッセンス媒体の薄膜の複数の上に第2表示電極を形成する工程とを含むことを特徴とする。
【0015】
このような方法によれば、マスクを第1表示電極ないしは先に形成した発光層等の下部構造体と接触させることがないので、当該接触による膜の損傷等が生じる虞がなく、また、素子中に前記した陰極隔壁のような構造体を形成する必要がないので、製造工程数が低減するとともに、得られる素子構造も単純化、薄肉化され、例えば、素子構造を覆うような保護膜の形成も容易となる。また本発明によればアクティブマトリックスタイプのような、機能上で陰極隔壁の形成ができないようなものも、容易に製造可能となる。
【0016】
また、本発明によれば、第2表示電極の形成も、露出した前記発光層の部分に対応した複数の開口を有し、かつ基板対向面に、前記開口部以外の実部の任意部分より略垂直方向に突出する脚部が設けられているマスクを用い、前記複数の発光層の間隙部に当該マスクの前記脚部を位置させ載置することにより、形成される。
【0017】
上記有機エレクトロルミネッセンスディスプレイパネルの製造方法においては、前記第1表示電極を形成するパターニング工程と前記発光層形成工程の間に、露出した前記第1表示電極の部分の縁部を覆う絶縁膜を、前記間隙の一部若しくは全体を埋めて、形成する工程を含むことが、第1表示電極間相互、あるいは第1表示電極と第2表示電極間の短絡を防止する上で好ましいが、さらに、本発明において、好ましくは、前記間隙部において、前記絶縁膜は、第1表示電極部分の縁部と接する側方部よりも、中央部分が薄肉なものとされ、当該間隙部へと配置される前記マスクの脚部に対する凹状の受け部を形成していることが望ましい。このような構成とすれば、マスクの脚部を基板側に当接させる際に、当該凹部に脚部が誘導され、マスクの位置決めが容易となり、歩留まりが向上する。
【0018】
さらに上記課題を解決する本発明は、上記製造方法により得られたことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスディスプレイパネルである。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下本発明を、好ましい実施の形態に基づきより詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明に係る堆積膜形成用マスクの一例の構造を模式的に示す図面である。
【0021】
本発明に係る堆積膜形成用マスクは、基板上若しくはその基板に形成された積層構造体上の選択位置に堆積膜を形成する際に用いられるマスク1であって、図1に示すように、その水平板部2に前記選択位置に対応する1ないし複数の開口部3を有しており、かつ、水平板部2の基板ないし積層構造体に対する対向面4に、前記開口部2以外の実部の任意部分より略垂直方向に突出する脚部5が設けられている。
【0022】
なお、実質的なマスクを形成する水平板部2と、脚部5とは、同一素材によって一体的に形成することも、あるいは同一素材または別の素材を用いて形成した各部材を、融着、溶接、接着剤等により接合して形成することができ、また各部材を構成する材質としても、特に限定されるものではなく、堆積条件に対し不活性なものである限り、その用途に応じて、ステンレス鋼、クロム等の金属、アルミナ、チタニア、ジルコニア等の金属酸化物ないし金属窒化物、ガラス(SiO2)といった無機物、あるいはポリイミド、エポキシ樹脂、ポリカーボネート等の有機物等の各種のものを用いることができる。
【0023】
脚部5の長さとしては、特に限定されず、マスクの種類、開口部の大きさ等に応じて適宜設定可能であるが、例えば、マスクの水平板部2の肉厚を1とした場合に、脚部の長さが1/100以上、より好ましくは1/10〜1/2程度とすることが一般的には望ましい。また、例えば、後述するような、有機ELディスプレイパネルの電極形成用、あるいは有機層(発光層)形成用のマスクとしては、脚部の長さが0.1μm以上、より好ましくは2〜10μm程度のものとすることが通常望まれる。脚部の長さが、極端に短いものであると、水平板部(マスク面)と、基板上の構造体との接触を確実に避けることが困難となり、一方、極端に長いものであると、水平板部(マスク面)と基板上の構造体との距離が離れすぎて、特定部分のみを開放するマスクとして有効に機能し得なくなる虞れが生じてくるためである。
【0024】
脚部5の形状としても、直柱状、断面半円状、断面逆台形状等、特に限定されないが、水平板部側より、先端部(基板側)に向かい漸次細くなるような形状のものが、一般的には、基板との当接部をより確実に形成できるために望ましい。さらに、先端部がアールを有する丸みを付与されものであるものが、基板との接触において基板側に損傷を与えにくいことから一般には好ましい。
【0025】
また、脚部5の配置数、大きさ等も特に限定されない。例えば、前記開口部の少なくとも一側面に沿って設けたり、開口部の周縁を囲繞して設けたりすることができる。また、必ずしも、各開口部の全てに対して隣接する脚部を設ける必要はなく、マスクを支持できる限り、脚部を開口部に対して1つ置きであるとか数個置きに配置するというように、より少ない数のものであってもよい。さらに、前記脚部は、必ずしも、前記開口部の実質的全長にわたり連続して存在するものである必要はなく、点在するものであっても良い。このような脚部は、上記したように、マスク面と、基板ないしは基板上の積層構造物との間を、一定の距離に保つ役割を有するが、さらに、開口部直下の領域と、それ以外の領域とを区画する隔壁としての機能も発揮し得、堆積膜形成時において、所期の部位以外へ膜形成材料が回り込むことを防止することができる。なお、この機能の上からは、前記脚部は、前記開口部の周縁の極力多くの部位に存在することが望まれる。
【0026】
なお、図1に示す例は、有機ELディスプレイパネルの陰極パターニングマスクの一例であり、ストライプ状に開口された開口部3に対して、脚部5は、これら開口部3間にある水平板部2実部毎の下部に、この実部の略全体に大きさで形成されており、前記開口部の両側面に同様にストライプ状に形成されている。なお、この例において脚部5の実部への取付け位置5aは、開口部5断面より若干後退、例えば、0〜5μm程度実部中心側に寄った位置とされているが、これは、所定大きさの陰極部を形成する上で、脚部5の存在が立体的な障害とならないような配慮からである。しかしながら、脚部の取付け位置としても、特段に限定があるわけではなく、各実施形態に応じて、より開口部断面に近い位置とすることもあるいはより実部中心側に寄った位置とすることも可能である。
【0027】
なお、開口部の存在により、マスクの強度が問題となる場合には、実際に形成される陰極パターンの各ストライプピン全てに対応する開口部を設けることなく、1つ置きないしは複数個置きに対応して、開口部を設けることで、開口部間の距離(実部幅)を大きなものとしたマスクとすることもできる。この場合も脚部は、開口部に近接して設ければよい。このようなマスクを用いて一旦、パターニングした後、マスクを一位相分だけずらして、先に形成したパターン部に隣接したパターン部を形成するという操作を、所定回数繰り返すことで、所期の陰極パターンを形成することも可能である。
【0028】
図2に示す例は、有機ELディスプレイパネルの有機膜(発光層)パターニングマスクの一例であり、図1に示す陰極パターニングマスクとほぼ同様に、ストライプ状に開口された開口部3に対して、脚部5は、これら開口部3間に並行して存在する水平板部2実部毎の下部に、形成されており、前記開口部の両側面に同様にストライプ状に形成されている。
【0029】
さらに、図3に示す例は、有機ELディスプレイパネルの有機膜(発光層)パターニングマスクの別の一例であり、ドット状に開口された開口部3に対して、脚部5は、これら開口部3間に存在する水平板部2実部の下部に、前記開口部3の並行する2側面に並行するようにストライプ状に形成されている。
【0030】
なお、図示してはいないが、前記したように、ドット状に開口された各開口部3を囲繞するような矩形形状の脚部を設けることも可能であり、その他、適当な部位にピン状の脚部を点在させて設けることも可能である。
【0031】
このようなマスクを用いて、基板上の選択部位に堆積膜を形成する方法としては、従来のマスクを用いた堆積膜の形成方法と特段変わるところはなく、基板上に、当該マスクを前記脚部で支持して配置し、開口された選択部位に所定のソースより蒸着等の適当な手段によって製膜すればよい。
【0032】
次に、このような本発明に係るマスクを用いて、有機ELディスプレイパネルを製造する方法について説明する。
【0033】
本発明に係る有機ELディスプレイパネルの製造方法は、上述したような形状のマスクを用いて、所定パターンの有機層(発光層)および/または第2表示電極を形成するものである。
【0034】
図4は、本発明に係る有機ELディスプレイパネルの製造工程を模式的に示す図面である。
【0035】
図4(a)に示すように、この有機ELディスプレイパネルの基板10上には、ITOなどからなる第1表示電極ライン11が設けられている。第1表示電極ライン11は互いに平行な複数のストライプ状に配列されている。この基板10上に、上記したような脚付のマスク1を、マスクの脚部5が、基板上の第1表示電極ライン11の各ストライプ間の間隙に配座するように位置させて、基板上に配置する。この状態において、マスク1の開口部3は、第1の色の画素、例えば、赤色の画素形成部を開口している。開口された位置に、赤色の有機EL媒体12Aを例えば蒸着などの方法を用いて所定厚さに成膜する。次に、図4(b)に示すように、マスクを移動し、開口部により、第2の色の画素、例えば、緑色の画素形成部を開口させ、同様にして、緑色の有機EL媒体12Gを所定厚さに成膜する。最後に、図4(c)に示すように、さらにマスクを移動させ、第3の色の画素、例えば、青色の画素形成部を開口させ、同様にして、青色の有機EL媒体12Bを所定厚さに成膜する。なお、図ではRGB3色の2画素のみの説明であるが、実際は2次元に複数個の画素を同時に形成する。なお、各有機EL媒体は、有機発光層の単一層、あるいは有機正孔輸送層、有機発光層及び有機電子輸送層の3層構造の媒体、または有機正孔輸送層及び有機発光層2層構造の媒体などであり得る。このようにして発光層形成が完了するが、前記したように、用いられるマスクは、脚付であり、マスク面が直接、有機EL媒体層等の既に形成した積層構造体に触れることがないため、マスクの位置合わせ、移動配置した際に、マスクにより有機EL媒体層等を傷つけることがない。
【0036】
その後、各有機EL媒体の上に、陰極となる第2表示電極を形成するが、この場合も第2表示電極の形成の場合と同様に、各有機EL媒体層に対応する位置が開口した脚付きのマスクを用いて、形成を行うことにより、マスクの接触による有機EL媒体層等の既に形成した積層構造体を損傷することない。陰極の材質は電気的に導通のあるものならなんでもよいが、Al,Cu,Auなど抵抗率の低い金属が望ましいのはもちろんである。
最後に防湿封止を行い、有機ELフルカラーディスプレイが完成する。
【0037】
なお、図4(a)〜(c)の工程で3色の有機EL媒体ではなく1色分の有機EL媒体を全面に成膜すれば、単色のディスプレイができるのは明らかである。また、この1色の色を白色にして、RGBのフィルターと組み合わせれば、フルカラーディスプレイにもなる。
【0038】
さらに、本発明の好ましい実施形態においては、表示電極間の短絡、特に第2表示電極エッジ部の短絡を防止する上で、図5に示すように、予め第1表示電極11(ITO陽極)が所定の形状にパターニングされた基板上に、露出した前記第1表示電極の部分の縁部を覆う絶縁膜13を、前記間隙の一部若しくは全体を埋めて、形成する。この際に、例えば図6に示すように、特に、前記絶縁膜13を、第1表示電極11部分の縁部と接する側方部13aよりも、中央部分13bが薄肉なものとして形成することが望ましい。膜構造上で、この部位に絶縁膜13を形成すれば、自然に側方部13と中央部分13bとの間に段差が生じるが、さらに、一般的なフォトリソグラフィーあるいはスパッタリング等の技術を用いて、中央部分13bの絶縁膜13をより積極的に除去したりあるいは中央部13bには絶縁膜が形成されないような態様とすることが望ましい。このようにして、当該間隙部に、凹状の受け部を形成する。なお、この受け部の深さとしては、特に限定されないが、例えば1μm以上、特に、1〜5μm程度のものであることが好ましい。この間隙部には、前記したように、マスク1を配置する際に、その脚部5が配座されるものであるため、このような凹状の受け部が形成されていると、図7に示すように、当該凹部に脚部が誘導され、マスクの位置決めが容易となり、歩留まりが向上する。
【0039】
上記のようにして得られる本発明に係る有機ELディスプレイパネルは、従来技術におけるような陰極隔壁の存在なく、微細なパターンが形成でき製造工程に起因して発光層に損傷を与えることがなくなり、隔壁及びマスクによりRGB有機層の分離が確実に行なえ、精度良くRGBの媒体の塗り分けでき、また、隔壁部より発生する水分、ガス等によって、有機EL媒体が損傷を受けることもないために、高品質で精度の高い製品となるものであり、かつ得られる製品は構造が単純かつ薄肉のものとなり、製品保護のための封止膜の形成も容易であるといった優れた特性を有するものとなる。
【0040】
なお、以上は、本発明に係る堆積膜形成方法およびこれに用いるマスクにつき、有機ELディスプレイパネルの製造を中心に説明したが、本発明の堆積膜形成方法およびこれに用いるマスクの適用分野としては、これに何ら限定されるものではなく、例えば、液晶表示素子の画素ないし電極形成等をはじめとするその他の各種の分野に広く適用可能である。
【0041】
【発明の効果】
以上の述べたように本発明によれば、精度高く選択位置に堆積膜を形成することができ、マスクの配置によって、下部の積層構造体を損傷することもないので、各種の薄膜デバイスの堆積膜形成、特に、有機ELディスプレイパネルの製造において好適に使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るマスクの一実施形態の概略部分拡大断面図。
【図2】 本発明に係るマスクの別の実施形態における概略斜視図。
【図3】 本発明に係るマスクのさらに別の実施形態における概略斜視図。
【図4】 本発明に係る有機ELディスプレイパネルの製造工程を示す模式図。
【図5】 本発明の有機ELディスプレイパネルの製造方法の一実施形態における一工程を示す模式図。
【図6】 本発明の有機ELディスプレイパネルの製造方法の別の実施形態における一工程を示す模式図。
【図7】 本発明の有機ELディスプレイパネルの製造方法の別の実施形態における別の工程を示す模式図。
【符号の説明】
1 マスク
2 マスク水平部
3 開口部
5 脚部
7 隔壁
10 基材
11 第1表示電極
12R,12G,12B 有機EL媒体
13 絶縁膜
Claims (3)
- 複数の発光部からなる画像表示配列を有している有機エレクトロルミネッセンスディスプレイパネルの製造方法であって、
基板上に、前記発光部に対応する複数の第1表示電極を形成するパターニング工程と、
前記露出した第1表示電極の部分に対応した複数の開口を有し、かつ基板対向面に、前記開口部以外の実部の任意部分より略垂直方向に突出する脚部が設けられているマスクを用い、前記複数の第1表示電極間の間隙部に当該マスクの前記脚部を位置させ載置することにより、当該マスクを第1表示電極に接触させることなく、第1表示電極上部に配置し、
有機エレクトロルミネッセンス媒体を前記開口を介して前記第1表示電極の各々上に堆積させ、少くとも1層の有機エレクトロルミネッセンス媒体の薄膜を形成する発光層形成工程と、前記有機エレクトロルミネッセンス媒体の薄膜の複数の上に第2表示電極を形成する工程と、
前記第1表示電極を形成するパターニング工程と前記発光層形成工程の間に、前記間隙の一部を埋めて、露出した前記第1表示電極の部分の縁部を覆う絶縁膜を設ける工程と、
を含み、
前記絶縁膜は、第1表示電極部分の縁部と接する側方部に形成され、中央部分には形成されないものであることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスディスプレイパネルの製造方法。 - 前記発光層形成工程は、第1の有機エレクトロルミネッセンス媒体を前記マスクの開口を介して前記マスクの脚部より形成される隔壁内の前記第1表示電極の各々上に堆積させた後、1つの前記開口が1つの前記第1表示電極上からその隣接する前記第1表示電極上へ配置されるように前記マスクを逐次移動せしめ、第2、第3…の有機エレクトロルミネッセンス媒体を用いて前記発光層形成工程を逐次繰り返すことを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンスディスプレイパネルの製造方法。
- 前記第2表示電極が、露出した前記発光層の部分に対応した複数の開口を有し、かつ基板対向面に、前記開口部以外の実部の任意部分より略垂直方向に突出する脚部が設けられているマスクを用い、前記複数の発光層の間隙部に当該マスクの前記脚部を位置させ載置することにより、形成されるものである請求項1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンスディスプレイパネルの製造方法。
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