以下、本発明を適用した異常判定装置の第1実施形態について説明する。
本第1実施形態に係る異常判定装置は、被検対象として、画像形成装置たる複写機の異常の有無を判定するものである。本異常判定装置の被検対象である複写機の構成は、後述する第1参考形態に係る異常判定装置の被検対象となる複写機と同様である。この複写機の構成については、後述する第1参考形態で詳しく説明する。
画像形成装置たる複写機から取得される情報としては、センシング情報、制御パラメータ情報、入力情報、画像読取情報などが挙げられる。以下、これらの情報について詳述する。
(a)センシング情報
センシング情報としては、駆動関係、記録媒体の各種特性、現像剤特性、感光体特性、電子写真の各種プロセス状態、環境条件、記録物の各種特性などが取得する対象として考えられる。これらのセンシング情報の概要を説明すると、以下のようになる。
(a−1)駆動の情報
・感光体ドラムの回転速度をエンコーダーで検出したり、駆動モータの電流値を読み取ったり、駆動モータの温度を読み取る。
・同様にして、定着ローラ、紙搬送ローラ、駆動ローラなどの円筒状またはベルト状の回転する部品の駆動状態を検出する。
・駆動により発生する音を装置内部または外部に設置されたマイクロフォンで検出する。
(a−2)紙搬送の状態
・透過型または反射型の光センサ、あるいは接触タイプのセンサにより、搬送された紙の先端・後端の位置を読み取り、紙詰まりが発生したことを検出したり、紙の先端・後端の通過タイミングのずれや、送り方向と垂直な方向の変動を読み取る。
・同様に、複数のセンサ間の検出タイミングにより、紙の移動速度を求める。
・給紙時の給紙ローラと紙とのスリップを、ローラの回転数計測値と紙の移動量との比較で求める。
(a−3)紙などの記録媒体の各種特性
この情報は、画質やシート搬送の安定性に大きく影響する。この紙種の情報取得には以下のような方法がある。
・紙の厚みは、紙を二つのローラで挟み、ローラの相対的な位置変位を光学センサ等で検知したり、紙が進入してくることによって押し上げられる部材の移動量と同等の変位量を検知することによって求める。
・紙の表面粗さは、転写前の紙の表面にガイド等を接触させ、その接触によって生じる振動や摺動音等を検知する。
・紙の光沢は、規定された入射角で規定の開き角の光束を入射し、鏡面反射方向に反射する規定の開き角の光束をセンサで測定する。
・紙の剛性は、押圧された紙の変形量(湾曲量)を検知することにより求める。
・再生紙か否かの判断は、紙に紫外線を照射してその透過率を検出して行なう。
・裏紙か否かの判断は、LEDアレイ等の線状光源から光を照射し、転写面から反射した光をCCD等の固体撮像素子で検出して行なう。
・OHP用のシートか否かは、用紙に光を照射し、透過光と角度の異なる正反射光を検出して判断する。
・紙に含まれている水分量は、赤外線またはμ波の光の九州を測定することにより求める。
・カール量は光センサ、接触センサなどで検出する。
・紙の電気抵抗は、一対の電極(給紙ローラなど)を記録紙と接触させて直接測定したり、紙転写後の感光体や中間転写体の表面電位を測定して、その値から記録紙の抵抗値を推定する。
(a−4)現像剤特性
現像剤(トナー・キャリア)の装置内での特性は、電子写真プロセスの機能の根幹に影響するものである。そのため、システムの動作や出力にとって重要な因子となる。現像剤の情報を得ることは極めて重要である。この現像剤特性としては、例えば次のような項目が挙げられる。
・トナーについては、帯電量およびその分布、流動性・凝集度・嵩密度、電気抵抗、外添剤量、消費量または残量、流動性、トナー濃度(トナーとキャリアの混合比)を挙げることができる。
・キャリアについては、磁気特性、コート膜厚、スペント量などを挙げることができる。
以上のような項目を複写機の中で単独で検出することは通常困難である。そこで、現像剤の総合的な特性として検出する。この現像剤の総合的な特性は、例えば次のように測定することができる。
・感光体上にテスト用潜像を形成し、予め決められた現像条件で現像して、形成されたトナー像の反射濃度(光反射率)を測定する。
・現像装置中に一対の電極を設け、印加電圧と電流の関係を測定する(抵抗、誘電率など)。
・現像装置中にコイルを設け、電圧電流特性を測定する(インダクタンス)。
・現像装置中にレベルセンサを設けて、現像剤容量を検出する。レベルセンサは光学式、静電容量式などがある。
(a−5)感光体特性
感光体特性も現像剤特性と同じく、電子写真プロセスの機能と密接に関わる。この感光体特性の情報としては、感光体の膜厚、表面特性(摩擦係数、凹凸)、表面電位(各プロセス前後)、表面エネルギー、散乱光、温度、色、表面位置(フレ)、線速度、電位減衰速度、抵抗・静電容量、表面水分量などが挙げられる。このうち、複写機の中では、次のような情報を検出できる。
・膜厚変化に伴う静電容量の変化を、帯電部材から感光体に流れる電流を検知し、同時に帯電部材への印加電圧と予め設定された感光体の誘電厚みに対する電圧電流特性と照合することにより、膜厚を求める。
・表面電位、温度は従来周知のセンサで求めることができる。
・線速度は感光体回転軸に取りつけられたエンコーダーなどで検出される。
・感光体表面からの散乱光は光センサで検出される。
(a−6)電子写真プロセス状態
電子写真方式によるトナー像形成は、周知のように、感光体の均一帯電、レーザー光などによる潜像形成(像露光)、電荷を持ったトナー(着色粒子)による現像、転写材へのトナー像の転写(カラーの場合は中間転写体または最終転写材である記録媒体での重ね合わせ、または現像時に感光体への重ね現像を行なう)、記録媒体へのトナー像の定着という順序で行なわれる。これらの各段階での様々な情報は、画像その他のシステムの出力に大きく影響を与える。これらを取得することがシステムの安定を評価する上で重要となる。この電子写真プロセス状態の情報取得の具体例としては、次のようなものが挙げられる。
・帯電電位、露光部電位は従来公知の表面電位センサにより検出される。
・非接触帯電における帯電部材と感光体とのギャップは、ギャップを通過させた光の量を測定することにより検知する。
・帯電による電磁波は広帯域アンテナにより捉える。
・帯電による発生音
・露光強度
・露光光波長
また、トナー像の様々な状態を取得すること方法として、以下のようなものがあげられる。
・パイルハイト(トナー像の高さ)を、変位センサで縦方向から奥行きを、平行光のリニアセンサで横方向から遮光長を計測して求める。
・トナー帯電量を、ベタ部の静電潜像の電位、その潜像が現像された状態での電位を測定する電位センサにより測定し、同じ箇所の反射濃度センサから換算した付着量との比により求める。
・ドット揺らぎまたはチリを、ドットパターン画像を感光体上においては赤外光のエリアセンサ、中間転写体上においては各色に応じた波長のエリアセンサで検知し、適当な処理をすることにより求める。
・オフセット量(定着後)を、記録紙上と定着ローラ上の対応する場所をそれぞれ光学センサで読み取って、両者比較することにより求める。
・転写工程後(PD上,ベルト上)に光学センサを設置し,特定パターンの転写後の転写残パターンからの反射光量で転写残量を判断する。
・重ね合わせ時の色ムラを定着後の記録紙上を検知するフルカラーセンサで検知する。
(a−7)形成されたトナー像の特性
・画像濃度、色は光学的に検知する(反射光、透過光のいずれでもよい。色によって投光波長を選択する)。濃度及び単色情報を得るには感光体上または中間転写体上でよいが、色ムラなど,色のコンビネーションを測るには紙上の必要がある。
・階調性は、階調レベルごとに感光体上に形成されたトナー像または転写体に転写されたトナー像の反射濃度を光学センサにより検出する。
・鮮鋭性は、スポット径の小さい単眼センサ、若しくは高解像度のラインセンサを用いて、ライン繰り返しパターンを現像または転写した画像を読み取ることにより求める。
・粒状性(ざらつき感)は、鮮鋭性の検出と同じ方法により、ハーフトーン画像を読み取り、ノイズ成分を算出することにより求める。
・レジストスキューは、レジスト後の主走査方向両端に光学センサを設け、レジストローラONタイミングと両センサの検知タイミングとの差異から求める。
・色ずれは、中間転写体または記録紙上の重ね合わせ画像のエッジ部を、単眼の小径スポットセンサ若しくは高解像度ラインセンサで検知する。
・バンディング(送り方向の濃度むら)は、記録紙上で小径スポットセンサ若しくは高解像度ラインセンサにより副走査方向の濃度ムラを測定し、特定周波数の信号量を計測する。
・光沢度(むら)は、均一画像が形成された記録紙を正反射式光学センサで検知するように設ける。
・かぶりは、感光体上、中間転写体上、または記録紙上において、比較的広範囲の領域を検知する光学センサで画像背景部を読み取る方法、または高解像度のエリアセンサで背景部のエリアごと画像情報を取得し、その画像に含まれるトナー粒子数を数えるという方法がある。
(a−8)複写機のプリント物の物理的な特性
・像流れ・かすれなどは、感光体上、中間転写体、あるいは記録紙上でトナー像をエリアセンサにより検知し、取得した画像情報を画像処理して判定する。
・チリは記録紙上の画像を高解像度ラインセンサまたはエリアセンサで取り込み、パターン部の周辺に散っているトナー量を算定することにより求める。
・後端白抜け、ベタクロス白抜けは、感光体上、中間転写体、あるいは記録紙上で高解像度ラインセンサにより検知する。
・カール・波打ち・折れは、変位センサで検出する。折れの検出のためには記録紙の両端部分に近い所にセンサを設置することが有効である。
・コバ面の汚れやキズは、排紙トレイに縦に設けたエリアセンサにより,ある程度排紙が溜まった時のコバ面をエリアセンサで撮影,解析する。
(a−9)環境状態
・温度検出には、異種金属どうし或いは金属と半導体どうしを接合した接点に発生する熱起電力を信号として取り出す熱電対方式、金属或いは半導体の抵抗率が温度によって変化することを利用した抵抗率変化素子、また、或る種の結晶では温度が上昇したことにより結晶内の電荷の配置に偏りが生じ表面に電位発生する焦電型素子、更には、温度による磁気特性の変化を検出する熱磁気効果素子などが採用できる。
・湿度検出には、H2O或いはOH基の光吸収を測定する光学的測定法、水蒸気の吸着による材料の電気抵抗値変化を測定する湿度センサ等がある
・各種ガスは、基本的にはガスの吸着に伴う、酸化物半導体の電気抵抗の変化を測定することにより検出する。
・気流(方向、流速、ガス種)の検出には、光学的測定法等があるが、システムへの搭載を考慮するとより小型にできるエアブリッジ型フローセンサが特に有用である。
・気圧・圧力の検出には、感圧材料を使用する、メンブレンの機械的変位を測定する等の方法がある。振動の検出にも同様に方法が用いられる。
(b)制御パラメータ情報について
複写機の動作は制御部によって決定されるため、制御部の入出力パラメータを直接利用することが有効である。
(b−1)画像形成パラメータ
画像形成のために制御部が演算処理により出力する直接的なパラメータで、以下のような例がある。
・制御部によるプロセス条件の設定値で、例えば帯電電位、現像バイアス値、定着温度設定値など
・同じく、中間調処理やカラー補正などの各種画像処理パラメータの設定値
・制御部が装置の動作のために設定する各種のパラメータで、例えば紙搬送のタイミング、画像形成前の準備モードの実行時間など
(b−2)ユーザー操作履歴
・色数、枚数、画質指示など、ユーザーにより選択された各種操作の頻度
・ユーザーが選択した用紙サイズの頻度
(b−3)消費電力
・全期間または特定期間単位(1日、1週間、1ヶ月など)の総合消費電力あるいはその分布、変化量(微分)、累積値(積分)
(b−4)消耗品消費情報
・全期間または特定期間単位(1日、1週間、1ヶ月など)のトナー、感光体、紙の使用量あるいはその分布、変化量(微分)、累積値(積分)
(b−5)故障発生情報
・全期間または特定期間単位(1日、1週間、1ヶ月など)の故障発生(種類別)の頻度あるいはその分布、変化量(微分)、累積値(積分)
(c)入力画像情報
ホストコンピュータから直接データとして送られる画像情報、あるいは原稿画像からスキャナーで読み取って画像処理をした後に得られる画像情報から、以下のような情報を取得することができる。
・着色画素累積数はGRB信号別の画像データを画素ごとにカウントすることにより求められる。
・例えば特許第2621879号の公報に記載されているような方法でオリジナル画像を文字・網点・写真・背景に分離し、文字部、ハーフトーン部などの比率を求めることができる。同様にして色文字の比率も求めることができる。
・着色画素の累積値を主走査方向で区切った領域別にカウントすることにより、主走査方向のトナー消費分布が求められる。
・画像サイズは制御部が発生する画像サイズ信号または画像データでの着色画素の分布により求められる。
・文字の種類(大きさ、フォント)は文字の属性データから求められる。
次に、被検対象たる複写機における各種情報の具体的取得法について説明する。なお、以下は、複写機内での各種情報の取得方法を説明するものである。本異常判定装置を複写機と一体的に構成した場合には、以下に説明する情報取得手段をそのまま本異常判定装置の情報取得手段として機能させることができる。また、本異常判定装置を複写機と別体で構成した場合には、以下に説明する複写機の情報取得手段によって取得された各種情報を、本異常判定装置の情報取得手段たる受信手段に受信させればよい。
(1)温度
被検対象となる複写機は、温度の情報を取得する温度センサとして、原理及び構造が簡単でしかも超小型にできる抵抗変化素子を用いるものを備えている。図1は、この温度センサにおける薄膜タイプの抵抗変化素子を示す斜視図である。この抵抗変化素子は次のように製造することができる。まず基板951上に絶縁膜952を形成し、その上に金属或いは半導体材料からなる薄膜状の感知部953を設けている。更に、感知部953の両端にパッド電極954を設け、最後にリード線955を接続する。この抵抗変化素子においては、周囲の温度が変化するとそれに伴って感知部953の電気抵抗が変化するので、その変化を電圧或いは電流変化として取り出せばよい。感知部953が薄膜であるため、素子全体が小型にできシステムに組み込みやすい。
図2は、図1とは異なる構成の抵抗変化素子を示す斜視図である。図1の抵抗変化素子とは、薄膜状感知部953が、スペーサ956を介して基板951から中空に浮いている薄膜ブリッジ957の上に設置されている点で異なる。このような構造にすることで感知部953から熱の散逸が妨げられ、感知部953の温度に対する応答性が早くなる。この構造であれば被計測部からの輻射熱だけを検知することができ、非接触での測定には好適である。
(2)湿度
小型にできる湿度センサが有用である。基本原理は感湿性セラミックスに水蒸気が吸着すると、吸着水によりイオン伝導が増加しセラミックスの電気抵抗が低下することによる。感湿性セラミックスの材料は多孔質材料であり、一般的にはアルミナ系、アパタイト系、ZrO2−MgO系などが使用される。図3は被検対象となる複写機に搭載されている湿度センサを示す斜視図である。絶縁基板961上に櫛形電極962を設けその両端に端子963を接続する。更に感湿層964(一般的には感湿性セラミックス)を設け全体をケース965でカバーしてある。ケース965を介して水蒸気が感湿性セラミックスに吸着すると、電気抵抗が減少するので、それを電圧或いは電流変化として計測すればよい。
(3)振動
振動センサは、基本的には気圧及び圧力を測定するセンサと同じであり、システムへの搭載を考慮すると超小型にできるシリコン利用のセンサが特に有用である。薄いシリコンのダイアフラム上に作製した振動子の運動を、振動子と対向して設けられた対向電極間との容量変化を計測する、或いはSiダイアフラム自体のピエゾ抵抗効果を利用して計測することができる。図4は被検対象となる複写機に搭載されている振動センサを示す断面図である。絶縁基板971の上に対向電極972を設ける。次に、シリコン基板973に薄いダイアフラム974及び振動子975を設け、更に対向電極972との間隔を保持する段差部976を形成し、先に作製した対向電極972を有する基板971と接合する。この状態で周囲から振動或いは圧力が加わると、それに伴って振動子975が振動し、それを対向電極972との間の容量変化として測定すればよい。
(4)トナー濃度(4色分)
各色ごとにトナー濃度を検出する。トナー濃度センサとしては従来より公知の方式のものを用いることができる。例えば、特開平6−289717号公報に記載されているような現像装置中の現像剤の透磁率の変化を測定するセンシングシステムにより、トナー濃度を検出することができる。図5は、被検対象となる複写機に搭載されたトナー濃度センサの電気回路を示すブロック図である。また、図6は、同トナー濃度センサの濃度検出部を示す概略構成図である。例えば、磁性キャリアと非磁性トナーを混合してなる現像剤981の近傍に配置された検知コイル982には基準コイル983が差動的に接続されている。検知コイル982はトナー濃度(直接的には磁性キャリア)の増減による透磁率変化に対してインダクタンスが変動し、これに対して基準コイル983のインダクタンスはトナー濃度の変化に対して影響を受けないようになっている。そして、上記2つのコイル982、983の直列回路には、例えば500[kHz]にて発振駆動する交流駆動源984が接続されており、上記両コイル982、983を駆動するようになっている。これら両コイル982、983の接続点からは差動出力が取り出され、その出力は位相比較器985へ接続されるとともに、この位相比較器985には上記交流駆動源984の一方の出力が別途接続されており、これら駆動源984からの電圧と差動出力電圧との位相を比較するように構成される。そして、上記2つのコイル、すなわち検知コイル982と基準コイル983の少なくともいずれか一方、図示例にあっては検知コイル982に感度設定用抵抗986(R1)が並列に接続されており、トナー濃度の変化に対する感度を鈍化させて感度特性を制御し得るように構成されている。両コイル982、983は、筒状のコイル支持体987に図中上下方向に隣り合って巻回されており、現像剤981に近い側には透誘率の変化を検知するために検知コイル982が位置され、遠い側はトナー濃度が変化しても透磁率が変化しないように基準コイル983が配置されている。
(5)感光体一様帯電電位(4色分)
各色用の感光体(40K,Y,M,C)について、それぞれ一様帯電電位を検出する。図7は、被検対象となる複写機に搭載された電位測定システムを示す概略構成図である。同図において、符号931は対象物(図示せず)に対向して取り付けられるセンサ部基板を示している。符号932はセンサ部基板に対し、ドライブ信号を送り、センサ出力を受ける信号処理部基板を示している。センサ部基板内には、チョッピング手段である音さ933と、圧電素子934とが設けられている。信号処理部基板932からのドライブ信号によってこの圧電素子934が駆動される。この電位測定システムでは一方の圧電素子934をドライブするとそれによる振動が音さ933を通してもう一方の圧電素子934aに伝わり、それがドライブ元に戻るというループによる自励発振方式を用いている。符号935は、対象物からの電気力線を受ける測定電極(以下電極という)をである。符号936は、電極935によって受信された電気力線Sの時間変化量を増幅する増幅器を示している。信号処理部基板932内には、圧電素子ドライブ回路937、フィルタ938及び圧電素子ドライブ回路939を備えている。フィルタ938は波形を整形する。移相回路939は、センサに混入するドライブ信号と実際のドライブ信号の位相差を180度ずらせ、打消し合わせられるようにする目的をもっている。2つの信号の位相差は混入経路によって異なってくるのが一般的である。アッテネータ940は、位相調整された補正信号の大きさを調整する役割を有する。加算回路941は補正信号とセンサ出力を加算する。処理回路942は最終的な信号出力を処理し、対象物の電位を求める。符号943,944はそれぞれ移相回路およびアッテネータの調整用ボリュームを示している。かかる構成において、移相量,アッテネータゲインを調整し最適化することにより、ドライブ信号に基づいた混入信号に対し、逆位相,同レベルの信号を補正信号として加算することができ、実際には真の対象物に基づくセンサ出力のみが検出可能となる。また、調整手段を設けたことによって、調整により経年変化に伴う特性変化にも対応することができ、センサとしての信頼性が向上する。
(6)感光体露光後電位(4色分)
光書込後の感光体(40K,Y,M,C)の表面電位を、(5)と同様にして検出する。
(7)着色面積率(4色分)
入力画像情報から、着色しようとする画素の累計値と全画素の累計値の比から着色面積率を色ごとに求め、これを利用する。
(8)現像トナー量(4色分)
感光体(40K,Y,M,C)上で現像された各色トナー像における単位面積あたりのトナー付着量を、反射型フォトセンサによる光反射率に基づいて求める。反射型フォトセンサは対象物にLED光を照射し、反射光を受光素子で検出するものである。トナー付着量と光反射率とには相関関係が成立するため、光反射率に基づいてトナー付着量を求めることができる。
(9)紙先端位置の傾き
給紙部(200)の給紙ローラから2次転写ニップに至る給紙経路のどこかに、転写紙をその搬送方向に直交する方向の両端で検知する光センサ対を設置し、搬送されてくる転写紙の先端付近の両端を検出する。両光センサについて、給紙ローラの駆動信号の発信時を基準として、通過までの時間を計測し、時間のズレに基づいて送り方向に対する転写紙の傾きを求める。
(10)排紙タイミング
転写紙を機外に排出する排出ローラ対を通過した後の転写紙を光センサで検出する。この場合も給紙ローラの駆動信号の発信時を基準として計測する。
(11)感光体総電流(4色分)
感光体(40K,Y,M,C)からアースに流れ出る電流を検出する。感光体の基板と接地端子との間に、電流測定手段を設けることで、かかる電流を検出することができる。
(12)感光体駆動電力(4色分)
感光体の駆動源(モータ)が駆動中に費やす駆動電力(電流×電圧)を電流計や電圧計などによって検出する。
図8は、本異常判定装置における電気回路の要部を示すブロック図である。同図において、本異常判定装置は、事物の情報を取得する情報取得手段たる情報取得部501、判定手段たる異常判定部502、情報記憶手段たる情報記憶部503、データ入力手段たるデータ入力部504等を備えている。また、異常判定手段による判定結果を出力する判定結果出力部505も備えている。
情報取得部501は、上述した各種情報の少なくとも2つ以上を被検対象たる図示しない複写機から取得するものである。この情報取得部501によって取得された複数の情報は、異常判定部502に送られる。異常判定部502は、異常の判定に必要な各種の演算を行うための演算手段(図示の例ではCPU501a)を有している。そして、情報取得部501から送られてきた情報を異常判定のための演算処理にそのまま使用したり、情報記憶部503に記憶させた後に使用したりする。具体的には、情報取得部501から送られてくる各種情報に基づいて所定の計算を実施し、その計算結果と、情報記憶部503に記憶されている所定の閾値との比較結果に基づいて、複写機内における異常の有無を判定する。
異常判定部502による判定結果は、判定結果出力部505によって出力される。この出力とは、判定結果を同複写機のユーザーに認識させるための印字出力、画像表示出力、音声出力などの他、判定結果情報をパーソナルコンピュータやプリンタなどといった外部の何らかの装置に出力する態様も含む概念である。様々な態様の出力により、故障が近いことを知らせたり、後述のマハラノビスの距離などといった数値を知らせたり、グラフや文字などを伝えたりするのである。出力の態様としては、次に列記するものが挙げられる。
(O−1)ディスプレイ等の表示手段に判定結果を表示する。
(O−2)スピーカー等の音声発生手段に言語や警報音などを出力する。
(O−3)転写紙等の記録体に文字情報等を印字出力する。
(O−4)判定結果を電子情報として、有線回線や無線回線を通じて外部の機械に出力する。
このような出力により、異常判定部502による判定結果が、複写機のユーザーや、遠隔地にいるサービスマンなどに認識される。なお、情報取得部501は、RAM、ROM、ハードディスク等から構成され、情報取得部501によって取得された各種の情報の他、例えば制御プログラムやアルゴリズムなどの情報も記憶している。なお、各複写機、プリンタサーバー、監視センターなどといった外部装置の記憶手段(例えばメモリ)に、判定結果を記憶させるようにしてもよい。
判定によって異常が発見された場合には、判定結果の出力の他に、被検対象たる複写機に対して何らかの処理を行うようにすることが望ましい。例えば、複写機を強制的に停止させて、メンテナンス要求を報知させるような処理である。また、複写機の一部の機能を制限するような処理でもよい。異常が発見された際に行う処理としては、次に列記するものを例示することができる。
(h−1)カラー複写機における出力色数の制限
(h−2)画像形成速度の制限
(h−3)出力画像の中間調部における出力画素数(例えば線数)の制限
(h−4)中間調再現方法の制限
(h−5)紙種の制限
(h−6)レジスト制御のパラメータの制限
(h−7)画像形成プロセスのパラメータ制限(例えば電子写真では帯電電位、露光量、現像バイアス、転写バイアスなど)
発生した異常の種類によっては、ユーザーに消耗品や部品の補給・交換を促す処理を実行してもよい。また、修復可能な異常である場合には、その異常を自動で修復させるような処理を実行してもよい。
情報記憶部503は、正常な状態の被検対象たる複写機から予め取得された各種情報の組合である正常組データを、複数記憶している。以下、これら複数の正常組データの集まりを、正常組データ群という。
異常判定部502は、被検対象たる複写機から取得された各種情報を情報取得部501によって複写機から取得した結果と、情報記録部503に予め記憶している正常組データ群とに基づいて、マハラノビスの距離を求める。このマハラノビスの距離については、後述する第2実施形態や第1参考形態で詳しく説明するが、マハラノビスの距離は、次のような事物の正常さ加減を示す指標である。具体的には、複数種類の情報の組合せからなる正常組データの集まりである正常組データ群に基づいて求められる多次元空間中で、被検対象から取得された同じ複数種類の情報の組合せからなる取得データがどのような座標に位置するのかを示す。その座標が正常組データ群の位置する座標群から遠ざかるほど、被検対象が正常な状態から遠ざかっていることになる。マハラノビスの距離は、前者の座標が、後者の座標群からどの程度遠ざかっているのかを示す。マハラノビスの距離が、予め設定された閾値を超えた場合には、被検対象の異常が「有り」と判定される。
このような判定方法においては、マハラノビスの距離を求めるための正常組データ群(後述する取得データテーブル、正規化データテーブル、相関係数行列R、又は逆行列A)が、被検対象の正常状態の指標となる正常指標情報として機能している。また、マハラノビスの距離と比較される閾値も、被検対象の正常状態の指標となる正常指標情報として機能している。
本異常判定装置の情報記憶部503は、上述の正常組データ群として、互いに異なる内容の複数の特定情報にそれぞれ個別に対応する複数のものを予め記憶している。この特定情報とは、被検対象たる複写機から取得される複数種類の情報の1つである。例えば、高速印字モードなのか低速印字モードなのかを示す動作モード設定値などの情報である。そして、異常の判定にあたっては、マハラノビスの距離の算出に用いるための正常組データ群を、複写機から取得された特定情報の内容に対応するものに切り換えて使用する。例えば、複写機から取得された特定情報の内容が高速印字モードを示す値である場合には、複数の正常組データ群のうち、高速印字モード用のものに切り換えるのである。
図9は、同複写機におけるトナー帯電量と、トナー濃度との関係を示すグラフである(トナーの帯電極性が正の場合の例)。複写機等の画像形成装置においては、トナー帯電量と、現像剤中のトナー濃度とが強い相関(逆相関)を示す。トナー濃度が増加するにつれて、トナー帯電量が減少するのである。また、トナー帯電量やトナー濃度は、環境とも相関関係が成立する。例えば、図中のLLで示される線で囲まれた領域は、低温低湿環境下において正常な状態の複写機から取得されたトナー帯電量とトナー濃度との組合せからなる正常組データの集まりである正常組データ群に基づいて求められる2次元空間である。被検対象たる複写機から取得された正常組データが、この領域内にあれば、その複写機は正常であると判断して差し支えない。但し、その領域外にあれば、その複写機は異常である可能性が高い。よって、正常な状態の複写機から取得した正常組データ群と、被検対象の複写機から取得したトナー帯電量及びトナー濃度とに基づいて正常組データ群からのマハラノビスの距離を求め、これを閾値と比較することで異常の有無を判定することができる。
しかしながら、図中のLLで示される線で囲まれた領域は、低温低湿環境下の複写機におけるトナー帯電量とトナー濃度との正常2次元空間である。高温高湿環境下では、その正常2次元空間が図中のHHで示される領域にシフトする。この場合には、被検対象の複写機から取得した正常組データ群がたとえLLで示される線で囲まれた領域内に位置するものであっても、HHで示される線で囲まれた領域から外れていれば、被検対象を異常と判断するべきである。ところが、低温低湿環境下で得られた正常組データ群と、高温高湿環境下で得られた正常組データ群とを一緒にして1つの正常組データ群として捉えると、HHで示される線で囲まれた領域から外れていても、LLで示される線で囲まれた領域内にあれば、正常であると判定してしまうおそれがある。
そこで、本異常判定装置は、正常組データ群として、例えば環境情報などといった特定情報にそれぞれ個別に対応する複数のものを、情報記憶部503に予め記憶している。そして、その特定情報の内容に応じて、使用する正常組データ群を切り換えて使用するのである。このようにすれば、例えば、低温低湿環境下では図中のLLの領域内になる正常組データの集まりだけを正常組データ群として使用することが可能になる。また、高温高湿環境下では図中のHHの領域内になる正常組データの集まりだけを正常組データ群として使用することが可能になる。そして、これらの結果、情報取得部501による取得情報の正常値が特定情報の内容に応じて異なってしまうことによる誤判定を回避することができる。
次に、第1実施形態に係る異常判定装置の各変形例装置について説明する。
[第1変形例装置]
図10は本第1変形例装置における電気回路の一部を示すブロック図である。この第1変形例装置では、データー入力部504が、ユーザーによって入力される特定情報(例えば動作モード設定値や環境情報など)を受け付ける。そして、受け付けた特定情報を情報記憶部503が記憶する。異常判定部502は、情報記憶部503に記憶されている複数の正常組データ群のうち、情報記憶部503に記憶されている特定情報の内容に対応するものを1つ特定して、情報記憶部503から読み出す。そして、情報取得部501によって取得された各種情報(センサA、B・・・Xによる取得情報など)と、情報記憶部503から読み出した正常組データ群とに基づいて、マハラノビスの距離を算出する。過去の判定結果を調整・変更する場合や、メンテナンス時にサービスマンがテストする場合などに有効である。
なお、特定情報を情報記憶部503に記憶させておくのではなく、特定情報も情報取得部501によって取得させ、それを情報取得部501から異常判定部502に送るようにしてもよい。
[第2変形例装置]
図11は、本第2変形例装置における電気回路の一部を示すブロック図である。この第2変形例装置では、情報取得部501が、複写機内部に設置されているセンサA、センサBなどによって取得された各種情報を、複写機の図示しないデータ送信手段などから取得する。また、複写機内部に設置されているセンサXによって取得された情報を、特定情報としてデータ入力部504によって受け付ける。受け付けられた特定情報は、情報記憶部503に記憶される。異常判定部503は、情報記憶部503に記憶されている複数の正常組データ群のうち、情報記憶部503に記憶されている特定情報の内容に対応するものを1つ特定して、情報記憶部503から読み出す。そして、情報取得部501によって取得された各種情報と、情報記憶部503から読み出した正常組データ群とに基づいて、マハラノビスの距離を算出する。複写機内の環境(温度や湿度)や、感光体の表面電位などといった特定情報の内容が変化した場合に、それを自動で異常判定部502に知らせることができる。そして、マハラノビスの距離の算出に使用する正常組データ群を、特定情報の内容の変化を反映させたものに切り換えさせることができる。
[第3変形例装置]
図12は、本第3変形例装置における電気回路の一部を示すブロック図である。この第3変形例装置では、情報取得部501が、複写機内部に設置されているセンサA、センサBなどによって取得された各種情報を、複写機の図示しないデータ送信手段などから取得する。また、複写機内部に設置されている制御部によって取得された情報を、特定情報としてデータ入力部504によって受け付ける。受け付けられた特定情報は、情報記憶部503に記憶される。異常判定部503は、情報記憶部503に記憶されている複数の正常組データ群のうち、情報記憶部503に記憶されている特定情報の内容に対応するものを1つ特定して、情報記憶部503から読み出す。そして、情報取得部501によって取得された各種情報と、情報記憶部503から読み出した正常組データ群とに基づいて、マハラノビスの距離を算出する。複写機の制御部によって取得可能な制御情報、例えば、カラーモードの使用状況情報、連続枚数頻度などといった特定情報の内容が変化した場合に、それを自動で異常判定部502に知らせることができる。そして、マハラノビスの距離の算出に使用する正常組データ群を、特定情報の内容の変化を反映させたものに切り換えさせることができる。
[第4変形例装置]
図13は、本第4変形例装置における電気回路の一部を示すブロック図である。この第4変形例装置では、情報取得部501が、複写機内部に設置されているセンサA、センサBなどによって取得された各種情報を、複写機の図示しないデータ送信手段などから取得する。また、被検対象の複写機や本第4変形例装置とは異なる外部装置から送られている情報を、特定情報としてデータ入力部504によって受け付ける。受け付けられた特定情報は、情報記憶部503に記憶される。異常判定部503は、情報記憶部503に記憶されている複数の正常組データ群のうち、情報記憶部503に記憶されている特定情報の内容に対応するものを1つ特定して、情報記憶部503から読み出す。そして、情報取得部501によって取得された各種情報と、情報記憶部503から読み出した正常組データ群とに基づいて、マハラノビスの距離を算出する。遠隔診断システムなどといった外部装置から送られてくる特定情報の内容が変化した場合に、それを自動で異常判定部502に知らせることができる。そして、マハラノビスの距離の算出に使用する正常組データ群を、特定情報の内容の変化を反映させたものに切り換えさせることができる。
[第5変形例装置]
本第5変形例装置においては、次に説明する点が、第1変形例装置〜第4変形例装置と異なる。即ち、情報記憶部503には、1つの正常組データ群しか記憶していない。様々な値に変化する特定情報のうち、ある特定の値の特定情報に対応する正常組データ群しか記憶していないのである(以下、この正常組データ群を標準的正常組データ群という)。異常判定部502は、データ入力部504や情報取得部501から得られた特定情報の内容が、情報記憶部503に記憶されている標準的正常組データ群に対応する特定情報の内容と異なる場合には、標準的正常組データ群を補正する。具体的には、標準的正常組データ群内の各データを、データ入力部504や情報取得部501から得られた特定情報の内容に見合った値になるように補正するのである。
標準的正常組データ群の各データの補正方法としては、例えば、後述する第2実施形態や第3実施形態で説明する取得データテーブル内の各データを補正する方法が挙げられる。また、正規化データテーブル内の各データを補正してもよい。また、相関係数行列Rや逆行列A内の各データを補正してもよい。また、後述する第2実施形態の数2、あるいは第3実施形態の数7で示される式中の平均値y(y1・・・・yk)を、それぞれ補正してもよい。また、数2や数7で示される式の変わりに、次の数1で示される式を用いてもよい。
平均値yを補正する方法では、特定情報の内容に応じてそれぞれ値が異なる補正係数を複数用意しておき、異常判定時の特定情報の値に応じた補正係数を平均値yに乗ずればよい。なお、この補正係数については、予めの試験によって決定しておく。
また、数1の式を用いる方法においても、特定情報の内容に応じてそれぞれ値が異なる補正係数kを複数用意しておく。これら補正係数kも、予めの試験によって決定しておく。そして、例えば情報の種類数が20(j=1、2・・・・20)である場合に、全ての種類(j)に同一の補正係数kを乗じて補正すればよい。また、全ての種類(j)に同一の補正係数kを乗じただけでは、正常値を適切に表すことができない場合には、種類毎に補正係数kを用意してもよい(k1、k2・・・・・k20)。
このように標準的正常組データ群を補正することで、情報記憶部503には、特定情報の内容毎にそれぞれ値の異なる複数の正常組データ群を記憶させておく必要がなく、1つの標準的正常組データ群だけを記憶させればよくなる。このことにより、情報記憶部503の記憶容量を低減することができる。
図14は本第5変形例装置における電気回路の一部を示すブロック図である。この第5変形例装置では、データー入力部504が、ユーザーによって入力される特定情報(例えば動作モード設定値や環境情報など)を受け付ける。そして、受け付けた特定情報を情報記憶部503が記憶する。異常判定部502は、情報記憶部503に記憶されている特定情報を読み出す。また、情報記憶部503に記憶されている標準的正常組データ群も読み出す。そして、標準的正常組データ群が、特定情報の内容に対応しない場合には、標準的正常組データ群内の各データが特定情報の内容に対応する値になるように、それぞれ補正する。次いで、情報取得部501によって取得された各種情報(センサA、B・・・Xによる取得情報など)と、標準的正常組データ群あるいは必要に応じて補正した補正後正常組データ群とに基づいて、マハラノビスの距離を算出する。
なお、特定情報を情報記憶部503に記憶させておくのではなく、特定情報も情報取得部501によって取得させ、それを情報取得部501から異常判定部502に送るようにしてもよい。
[第6変形例装置]
本第6変形例装置も、第5変形例装置と同様に、正常組データ群として、標準的正常組データ群しか情報記憶部503に記憶していない。そして、必要に応じて、標準的正常組データ群を補正して、マハラノビスの距離の算出に用いるようになっている。
図15は、本第6変形例装置における電気回路の一部を示すブロック図である。この第6変形例装置では、情報取得部501が、複写機内部に設置されているセンサA、センサBなどによって取得された各種情報を、複写機の図示しないデータ送信手段などから取得する。また、複写機内部に設置されているセンサXによって取得された情報を、特定情報としてデータ入力部504によって受け付ける。受け付けられた特定情報は、情報記憶部503に記憶される。異常判定部503は、情報記憶部503に記憶されている特定情報を読み出す。また、情報記憶部503に記憶されている標準的正常組データ群を読み出す。そして、標準的正常組データ群が、特定情報の内容に対応しない場合には、標準的正常組データ群内の各データが特定情報の内容に対応する値になるように、それぞれ補正する。次いで、情報取得部501によって取得された各種情報と、情報記憶部503から読み出した標準的正常組データ群あるいは補正後正常組データ群とに基づいて、マハラノビスの距離を算出する。かかる構成においても、情報記憶部503の記憶容量を低減することができる。
[第7変形例装置]
本第7変形例装置も、第5変形例装置と同様に、正常組データ群として、標準的正常組データ群しか情報記憶部503に記憶していない。そして、必要に応じて、標準的正常組データ群を補正して、マハラノビスの距離の算出に用いるようになっている。
図16は、本第7変形例装置における電気回路の一部を示すブロック図である。この第7変形例装置では、情報取得部501が、複写機内部に設置されているセンサA、センサBなどによって取得された各種情報を、複写機の図示しないデータ送信手段などから取得する。また、複写機内部に設置されている制御部によって取得された情報を、特定情報としてデータ入力部504によって受け付ける。受け付けられた特定情報は、情報記憶部503に記憶される。異常判定部503は、情報記憶部503に記憶されている特定情報を読み出す。また、情報記憶部503に記憶されている標準的正常組データ群も読み出す。そして、標準的正常組データ群が、特定情報の内容に対応しない場合には、標準的正常組データ群内の各データが特定情報の内容に対応する値になるように、それぞれ補正する。次いで、情報取得部501によって取得された各種情報と、標準的正常組データ群あるいは補正後正常組データ群とに基づいて、マハラノビスの距離を算出する。かかる構成においても、情報記憶部503の記憶容量を低減することができる。
[第8変形例装置]
本第8変形例装置も、第5変形例装置と同様に、正常組データ群として、標準的正常組データ群しか情報記憶部503に記憶していない。そして、必要に応じて、標準的正常組データ群を補正して、マハラノビスの距離の算出に用いるようになっている。
図17は、本第8変形例装置における電気回路の一部を示すブロック図である。この第8変形例装置では、情報取得部501が、複写機内部に設置されているセンサA、センサBなどによって取得された各種情報を、複写機の図示しないデータ送信手段などから取得する。また、被検対象の複写機や本第8変形例装置とは異なる外部装置から送られている情報を、特定情報としてデータ入力部504によって受け付ける。受け付けられた特定情報は、情報記憶部503に記憶される。異常判定部503は、情報記憶部503に記憶されている特定情報を読み出す。また、情報記憶部503に記憶されている標準的正常組データ群も読み出す。そして、標準的正常組データ群が、特定情報の内容に対応しない場合には、標準的正常組データ群内の各データが特定情報の内容に対応する値になるように、それぞれ補正する。次いで、情報取得部501によって取得された各種情報と、標準的正常組データ群あるいは補正後正常組データ群とに基づいて、マハラノビスの距離を算出する。かかる構成においても、情報記憶部503の記憶容量を低減することができる。
[第9変形例装置]
本第9変形例装置においても、情報記憶部503に1つの正常組データ群しか記憶していない。但し、これまで説明してきた第1実施形態や第1〜第8変形例装置のように、正常指標情報たる正常組データ群を切り換えるようなことはしない。その変わりに、正常指標情報たる閾値を所定のタイミングで切り換えるようになっている。この閾値は、マハラノビスの距離と比較するために用いられるものであり、この値が切り替わることで、「異常有り」と判定される際の異常の度合が変化する。
閾値の切り換えについては、データ入力部504によって入力されるか、あるいは情報取得部501によって取得されるかするユーザー情報の内容が変化したときに、行うようになっている。ユーザーは、複写機を使用するときに、その個人情報又はグループ情報であるユーザー情報を、複写機又は本第9変形例装置に入力する。入力されたユーザー情報が前回の複写時と変わらない場合には、前回の複写時と同じユーザー又はユーザーグループの人によって複写が行われることになる。この場合は、上述の閾値を切り換えずに、マハラノビスの距離を求める。
一方、入力されたユーザー情報が前回の複写時と変わっている場合には、前回の複写時と異なったユーザー又はユーザーグループの人によって複写が行われることになる。このとき、そのユーザーの故障感知度合は、前回のユーザーと異なっている可能性がある。そこで、情報記憶部503には、各ユーザー(又はユーザーグループ)毎の専用の閾値がそれぞれ個別に記憶されている。そして、異常判定部502は、入力されたユーザー情報が前回の複写時と変わっている場合には、上述の閾値を新たなユーザーに対応するものに切り換える。かかる構成では、閾値をそのとのユーザー情報に応じて切り換えて使用することで、被検対象たる複写機のユーザーが変わることによる判定精度の低下を回避することができる。
次に、第1実施形態に係る異常判定装置に、より特徴的な構成を付加した各実施例の異常判定装置について説明する。
[実施例1]
本実施例1に係る異常判定装置では、正常指標情報たる正常組データ群として、被検対象たる複写機の設置環境の値毎に互いに値の異なる複数のものを、情報記憶部503に記憶している。この設置環境とは、複写機が設置される場所の環境について、低温低湿環境、中温中湿環境、高温高湿環境などであることを示す情報である。そして、ユーザーがこの設置環境の情報をデータ入力部504に入力する。異常判定部502は、マハラノビスの距離の算出に用いる正常組データ群を、情報記憶部503に記憶されている複数の正常組データ群のうち、ユーザーによって入力された設置環境の情報に対応するものに切り換える。かかる構成においては、情報取得部501による取得情報の正常値が複写機の設置環境に応じて異なってしまうことによる誤判定を回避することができる。
なお、正常指標情報として、正常組データ群ではなく、閾値を設置環境の情報に応じて切り換えさせるようにした場合には、複写機の設置環境の変化に伴ってユーザーの異常感知度合が変化することによる判定精度の低下を回避することができる。
[実施例2]
本実施例2に係る異常判定装置は、温度、湿度又は気圧のうちの少なくとも1つを検知する環境検知手段たる環境検知センサを備えている。また、正常指標情報たる正常組データ群として、環境検知センサによって検知される環境情報の値毎に、互いに値の異なる複数のものを情報記憶部503に記憶している。異常判定部502は、マハラノビスの距離の算出に用いる正常組データ群を、情報記憶部503に記憶されている複数の正常組データ群のうち、環境検知センサによって検知された環境情報の値に対応するものに切り換える。かかる構成においても、情報取得部501による取得情報の正常値が複写機の環境に応じて異なってしまうことによる誤判定を回避することができる。
なお、正常指標情報として、正常組データ群ではなく、閾値を環境検知センサによって検知された環境情報に応じて切り換えさせるようにした場合には、環境の変化に伴ってユーザーの異常感知度合が変化することによる判定精度の低下を回避することができる。
[実施例3]
本実施例3に係る異常判定装置では、正常指標情報たる正常組データ群として、複写機の動作態様情報の値毎に、互いに値の異なる複数のものを、情報記憶部503に記憶している。この動作態様情報としては、次に列記するものが挙げられる。
・単色出力であるか多色出力であるかを示す出力色情報
・プリント動作であるかコピー動作であるかを示す情報
・高速プリントモードであるか低速プリントモードであるかを示す情報
・感光体表面の一様帯電電位の設定値を示す情報
・目標トナー濃度を示す情報
・目標定着温度を示す情報
正常組データ群内の各データの正常値は、複写機の動作態様が単色出力であるか多色出力であるかに応じて大きく異なってくる場合がある。例えば、単色出力であるモノクロ出力のときには、後述するY,M,C,K用の感光体のうち、K用の感光体しか帯電させない場合が殆どである。このため、各感光体の一様帯電電位を取得情報として取得している場合には、Y,M,C用の感光体の一様帯電電位がほぼゼロとして検知される。よって、これら感光体の一様帯電電位がゼロ付近で検知された場合には、正常であると判定して差し支えない。しかし、ゼロとはかけ離れた数値で検知された場合には、異常であると判定されるべきである。これとは逆に、4色フルカラー出力のときには、各感光体がそれぞれ一様帯電せしめられるので、それぞれの一様帯電電位がある一定の値の付近で検知される。にもかかわらず、ゼロ付近で検知された場合には、異常と判定されるべきである。このような場合に、単色出力のときと、多色出力のときとで、それぞれ各感光体の一様帯電電位を反映させて正常組データ群を構築してしまうと、先に説明したトナー濃度とトナー帯電量との関係と同様にして、誤判定を生ずるおそれがある。両者を分けてそれぞれ正常組データ群を記憶させ、これら2つの正常組データ群を、単色出力であるか多色出力であるかに応じて切り換えることで、かかる誤判定を回避することが可能になる。
正常組データ群内の各データの正常値は、複写機の動作態様がプリント動作であるかコピー動作であるかに応じて大きく異なってくる場合がある。例えば、プリント動作のときには、スキャナーによる原稿読取を行わないので、スキャナーにおける読取装置や光源の移動速度を取得情報として取得している場合には、それらの移動速度はゼロになる。よって、それらの移動速度がゼロ付近で検知された場合には、正常であると判定して差し支えない。しかし、移動速度がゼロとはかけ離れた数値で検知された場合には、異常であると判定されるべきである。これとは逆に、コピー動作のときには、スキャナーによる原稿読取を行うので、スキャナーにおける読取装置や光源の移動速度がある一定の速度として検知される。よって、それらの移動速度がその一定の速度付近で検知された場合には、正常であると判定して差し支えない。しかし、移動速度がゼロとして検知された場合には、異常であると判定されるべきである。このような場合に、プリント動作のときにおけるスキャナーの読取装置や光源の移動速度と、コピー動作のときにおける読取装置や光源の移動速度とを、一緒にして正常組データ群を構築してしまうと、先に説明したトナー濃度とトナー帯電量との関係と同様にして、誤判定を生ずるおそれがある。両者を分けてそれぞれ正常組データ群を記憶させ、これら2つの正常組データ群を、プリント動作であるかコピー動作であるかに応じて切り換えることで、かかる誤判定を回避することが可能になる。
正常組データ群内の各データの正常値は、複写機の動作態様が高速プリントモードであるか低速プリントモードであるか応じて大きく異なってくる場合がある。例えば、高速プリントモードのときには、感光体の表面移動速度や、通紙速度が比較的高速度で検知される。よって、かかる速度やその付近で検知された場合には、正常であると判定して差し支えない。しかし、比較的低速度で検知された場合には、異常であると判定されるべきである。これとは逆に、低速プリントモードのときには、感光体の表面移動速度や通紙速度が比較的低速度で検知される。よって、かかる速度やその付近で検知された場合には、正常であると判定して差し支えない。しかし、比較的高速度で検知された場合には、異常であると判定されるべきである。このような場合に、感光体の表面移動速度や通紙速度を、高速プリントモードのときと、低速プリントモードのときとで、一緒にして正常組データ群を構築してしまうと、先に説明したトナー濃度とトナー帯電量との関係と同様にして、誤判定を生ずるおそれがある。両者を分けてそれぞれ正常組データ群を記憶させ、これら2つの正常組データ群を、高速プリントモードであるか低速プリントモードであるかに応じて切り換えることで、かかる誤判定を回避することが可能になる。
正常組データ群内の各データの正常値は、感光体の一様帯電電位の設定値に応じて大きく異なってくる場合がある。具体的には、トナーによる現像性能は環境に応じて異なってくるので、現像性能を安定化させる目的で、感光体の一様帯電電位の設定値を変化させる場合がある。このような場合には、その設定値に応じた正常組データ群を用いないと、先に説明したトナー濃度とトナー帯電量との関係と同様にして、誤判定を生ずるおそれがある。一様帯電電位の各設定値に応じた複数の正常組データ群を記憶させ、使用する正常組データ群を実際の設置値に応じて切り換えることで、かかる誤判定を回避することが可能になる。
正常組データ群内の各データの正常値は、目標トナー濃度に応じて大きく異なってくる場合がある。具体的には、トナーによる現像性能は環境に応じて異なってくるので、現像性能を安定化させる目的で、各色の現像剤のトナー濃度を変化させる場合がある。このような場合には、目標トナー濃度に応じた正常組データ群を用いないと、先に説明したトナー濃度とトナー帯電量との関係と同様にして、誤判定を生ずるおそれがある。各目標トナー濃度に応じた複数の正常組データ群を記憶させ、使用する正常組データ群を実際の目標トナー濃度に応じて切り換えることで、かかる誤判定を回避することが可能になる。
正常組データ群内の各データの正常値は、目標定着温度に応じて大きく異なってくる場合がある。具体的には、転写紙に対するトナー像の定着性は環境やトナー付着量に応じて異なってくるので、定着性を安定化させる目的で、定着温度を変化させる場合がある。このような場合には、目標定着温度に応じた正常組データ群を用いないと、先に説明したトナー濃度とトナー帯電量との関係と同様にして、誤判定を生ずるおそれがある。各目標定着温度に応じた複数の正常組データ群を記憶させ、使用する正常組データ群を実際の目標定着温度に応じて切り換えることで、かかる誤判定を回避することが可能になる。
[実施例4]
本実施例4に係る異常判定装置では、正常指標情報たる正常組データ群として、複写機に対するユーザーの操作履歴情報の値毎に、互いに値の異なる複数のものを、情報記憶部503に記憶している。そして、複数の正常組データ群の中から、ユーザーの操作履歴の最も高い動作態様情報に対応するものを特定し、マハラノビスの算出に用いる正常組データ群を、特定結果に対応するものに切り換えるようになっている。かかる構成では、ユーザーの過去の操作頻度の最も高い動作態様情報に応じて、複数の正常組データ群の中から、任意の1つを選択することが可能になる。これにより、プリント動作毎やコピー動作毎に、操作履歴情報を取得して正常組データ群を切り換えることによる制御の複雑化を回避することができる。
[実施例5]
本実施例5に係る異常判定装置では、正常指標情報たる正常組データ群として、複写機内における環境履歴情報の値毎に、互いに値の異なる複数のものを、情報記憶部503に記憶している。そして、複数の正常組データ群の中から、最も出現頻度の高い環境に対応するものを特定し、マハラノビスの算出に用いる正常組データ群を、特定結果に対応するものに切り換えるようになっている。かかる構成では、複写機内における出現頻度の最も高い環境に応じて、複数の正常組データ群の中から、任意の1つを選択することが可能になる。これにより、プリント動作毎やコピー動作毎に、環境情報を取得して正常組データ群を切り換えることによる制御の複雑化を回避することができる。
次に、本発明を、電子写真方式の画像形成装置である電子写真プリンタ(以下、単にプリンタという)に適用した第2実施形態について説明する。
まず、本第2実施形態に係るプリンタの基本的な構成について説明する。図18は、本プリンタを示す概略構成図である。同図において、本プリンタは、イエロー(Y),マゼンダ(M),シアン(C),黒(K)の各色の画像を形成するための4組のプロセスユニット801Y,M,C,Kを備えている。なお、以下、各符号の添字Y,M,C,Kは、それぞれイエロー、マゼンダ、シアン、黒用の部材であることを示す。
互いに水平方向に並ぶようにそれぞれ並行配設されたプロセスユニット801Y,M,C,Kは、それぞれ潜像担持体たるドラム状の感光体811Y,M,C,Kを有している。本プリンタは、これらプロセスユニット801Y,M,C,Kの他、光書込ユニット802、給紙カセット803、レジストローラ対804、紙搬送ユニット805、定着ユニット806、機内温度センサ807などを備えている。また、図示しない4つのトナー補給装置や、電源ユニットなども備えている。
上記光書込ユニット802は、図示しない光源、ポリゴンミラー、f−θレンズ、反射ミラー等を備え、画像データに基づいて各感光体811Y,M,C,Kの表面にレーザー光Lを走査する。
各プロセスユニット801Y,M,C,Kは、使用するトナーの色が異なる点の他は、ほぼ同様の構成になっている。Y用のプロセスユニット801Yを例にすると、これは、感光体811Yの他、帯電手段812Y、現像装置813Y、クリーニング手段814Y、除電手段815Y、Y用光学センサ816Yなども有している。
上記帯電手段812Yとしては、コロトロン等からのコロナ放電によって感光体811Yを帯電せしめる帯電チャージャーを用いることができる。また、感光体811Yとの対向位置で回転可能に配設された帯電ローラや帯電ブラシに転写バイアスを印加する方式のものでもよい。
Y用の感光体811Yにおいて、そのドラム形状の軸線方向における一端近傍には、ドラム周面の全周に渡って鏡面と非鏡面とが繰り返される図示しないスケール部が設けられている。上記Y用光学センサ816Yは、反射型フォトセンサからなり、図示しない発光素子からこのスケール部に向けて光を照射する。この光は、スケール部表面で反射した後、Y用光学センサ816Yの図示しない受光素子によって受光される。Y用光学センサ816Yは、受光素子での受光量に応じた電圧信号を、図示しない制御部に出力する。Y用光学センサ816Yの対向位置において、感光体811Yのスケール部の鏡面と非鏡面とが交互に通過することにより、Y用光学センサ816Yからは、感光体811Yの線速に応じた周波週のパルス電圧が出力されることになる。また、同様にして、M,C,K用光学センサ816M,C,Kからは、感光体811M,C,Kの線速に応じた周波週のパルス電圧が出力される。
上記帯電手段812Yによって一様帯電せしめられた感光体811の表面に、光書込ユニット802で変調及び偏向されたレーザー光Lが走査されると、露光部に静電潜像が形成される。この静電潜像は、後述する現像装置813YによってYトナー像に現像される。他のプロセスユニット801M,C,Kにおいても、同様にして、感光体811M,C,K上にM,C,Kトナー像が形成される。
上記給紙カセット803は、記録体たる転写紙Pを複数枚重ねた紙束の状態で収容しており、その一番上の転写紙Pに給紙ローラ803aを押し当てている。そして、所定のタイミングで給紙ローラ803aを回転させて、転写紙Pを給紙路に送り出す。この給紙路の末端には、レジストローラ対804が配設されており、送られてきた転写紙Pを、Y用のプロセスユニット801Yの感光体811Y上に形成されたYトナー像に同期させ得るタイミングで給紙路の末端から送り出す。
上記紙搬送ユニット805は、各プロセスユニット801Y,M,C,Kの下方に配設されており、無端移動する紙搬送ベルト851、駆動ローラ852、テンションローラ853、4つの転写チャージャー854Y,M,C,K等を有している。また、ベルト用光学センサ855も有している。紙搬送ベルト851は、図示しない駆動系によって図中反時計回りに回転駆動される駆動ローラ852と、テンションローラ853とにより、各感光体811Y,M,C,Kに対向するように横長の姿勢で張架されている。そして、駆動ローラ852の回転に伴って、図中反時計回りに無端移動せしめられ、各感光体811Y,M,C,Kとの対向位置であるY,M,C,K用の転写位置を順次通過する。これら転写位置では、紙搬送ベルト851のループ内側に、転写チャージャー854Y,M,C,Kが紙搬送ベルト851を介してそれぞれ感光体811Y,M,C,Kに対向するように配設されている。そして、感光体811Y,M,C,Kとの間に転写電界を形成する。なお、本プリンタにおいては、転写手段として転写チャージャー854Y,M,C,Kを設けているが、これらに代えて、転写ローラ等の転写バイアス印加部材に転写バイアスを印加する方式のものを用いてもよい。
紙搬送ベルト851において、その幅方向における一端近傍には、ベルト周面の全周に渡って明部と暗部とが繰り返される図示しないスケール部が設けられている。上記ベルト用光学センサ855は、反射型フォトセンサからなり、図示しない発光素子からこのスケール部に向けて光を照射する。この光は、スケール部表面で反射した後、ベルト用光学センサ855の図示しない受光素子によって受光される。ベルト用光学センサ855は、受光素子での受光量に応じた電圧信号を、図示しない制御部に出力する。ベルト用光学センサ855の対向位置において、紙搬送ベルト851のスケール部の暗部と明部とが交互に通過することにより、ベルト用光学センサ855からは、紙搬送ベルト851の線速に応じた周波週のパルス電圧が出力されることになる。
上述のレジストローラ対804によって送り出された転写紙Pは、紙搬送ユニット805の紙搬送ベルト851のおもて面(ループ外面)に保持されながら、上述のY,M,C,K用の転写位置を順次通過する。各プロセスユニット801Y,M,C,Kの感光体811Y,M,C,K上で現像されたY,M,C,Kトナー像は、Y,M,C,K用の転写位置で、上記転写電界の作用を受けて転写紙P上に重ね合わせて転写される。この重ね合わせの転写により、転写紙P上にはフルカラー画像が形成される。
フルカラー画像が形成された転写紙Pは、紙搬送ベルト851の無端移動に伴って図中右側から左側に向けて搬送されて、紙搬送ユニット805の図中左側方に配設された定着ユニット806に受け渡される。定着ユニット806は、ハロゲンランプ等の熱源を内包し且つ図中時計回りに回転駆動される定着ローラ806aと、これに当接しながら当接部で同方向に表面移動するように回転駆動される加圧ローラ806bとによって定着ニップを形成している。そして、紙搬送ユニット805から受け渡された転写紙Pをこの定着ニップに挟み込みながら、図中右側から左側へと搬送する。この搬送の際、ニップ圧や加熱によってフルカラー画像を転写紙Pの表面に定着せしめる。
Y用のプロセスユニット801Yにおいて、回転に伴ってY用の転写位置を通過した感光体811Y表面は、クリーニング手段814Yによって転写残トナーのクリーニング処理が施される。かかるクリーニング手段814Yとしては、ブレードやブラシ等のクリーニング部材を感光体811Y表面に当接させて転写残トナーを機械的に掻き取り除去するものを用いることができる。また、感光体811Yに当接しながら回転するクリーニングローラ等の回転部材にクリーニングバイアスを印加して、転写残トナーを静電的に除去する方式のものでもよい。
上記クリーニング手段814Yによってクリーニング処理が施された感光体811Y表面は、除電ランプ等の除電手段815Yによって除電処理が施された後、帯電手段812Yによって再び一様帯電せしめられる。
Y用のプロセスユニット801Yの現像装置813Yは、筺体開口から一部を露出させるように回転可能に配設された現像ロール、スクリュウやパドル等からなる図示しない現像剤攪拌手段、図示しない透磁率センサ等を有している。現像装置813Yの筺体内には、磁性キャリアと、摩擦帯電性のYトナーとを含む図示しない二成分現像剤が収容されている。この二成分現像剤は上記現像剤攪拌手段によって撹拌搬送されながら現像ロールの表面に担持される。そして、現像ロールの回転に伴って、図示しない規制部材による規制位置を通過して層厚が規制されてから、感光体811Yに対向する現像領域に搬送され、ここで感光体811Y上の静電潜像にYトナーを付着させる。この付着により、感光体811Y上にYトナー像が形成される。現像によってYトナーを消費した二成分現像剤は、現像ロールの回転に伴って現像装置813Yの筺体内に戻される。
上述の図示しないY,M,C,K用の4つのトナー補給装置は、それぞれY,M,C,Kトナーを収容するトナー収容器を着脱可能に支持している。そして、Y,M,C,Kトナー収容器内のY,M,C,Kトナーを、Y,M,C,K用の現像装置813Y,M,C,K内に補給するようになっている。なお、これらY,M,C,Kトナー収容器内には、それぞれ所定の間隙を介して対向する電極対が設けられており、プリンタ本体側から延びるリードを介して、その電極間に抵抗検知用バイアスが印加されるようになっている。これらリードには、それぞれY,M,C,Kトナー用の電流検知センサが接続されており、その電流検知値と、抵抗検知用バイアスの値とに基づいて、Y,M,C,Kトナーの電気抵抗値がそれぞれ求められる。
現像装置813Yの上記透磁率センサは、現像装置813Y内に収容される二成分現像剤の透磁率に応じた値の電圧を出力する。二成分現像剤の透磁率は、二成分現像剤のトナー濃度とある程度の相関を示すため、この透磁率センサはYトナー濃度に応じた値の電圧を出力することになる。この出力電圧の値は、図示しない上述の制御部に送られる。制御部は、RAM等の記憶手段に、透磁率センサからの出力電圧の目標値であるY用Vtrefを格納している。また、他のプロセスユニット801M,C,Kの現像装置813M,C,Kに搭載された透磁率センサからの出力電圧の目標値であるM用Vtref、C用Vtref、K用Vtrefのデータも格納している。Y用Vtrefは、図示しないYトナー補給装置の駆動制御に用いられる。具体的には、上記制御部は、Y用の現像装置813Yの透磁率センサからの出力電圧の値をY用Vtrefに近づけるように、図示しないY用トナー補給装置を駆動制御してY用の現像装置813Y内にYトナーを補給させる。この補給により、Y用の現像装置813Y内における二成分現像剤のYトナー濃度が所定の範囲内に維持される。他の現像装置813M,C,Kについても、同様のトナー補給制御が実施される。
図19は、本プリンタの電気回路の一部を示すブロック図である。同図において、制御部900は、プリンタ全体の制御を司る制御手段であり、演算処理を行うCPU900a、記憶手段たるRAM900b、ROM900c等を有している。かかる構成の制御部900には、周知の技術によって機内の温度を検知する機内温度センサ807が接続されている。また、各色用の現像装置(813Y,M,C,K)における上述の透磁率センサもそれぞれ接続されている。また、各プロセスユニット(801Y,M,C,K)にそれぞれ設けられた上述のY,M,C,K用光学センサ816Y,M,C,Kも接続されている。また、図示しない各色のトナー収容器内に収容されたY,M,C,Kトナーに流れる電流値を検知する上述のY,M,C,K用電流検知センサ809Y,M,C,Kも接続されている。更には、各種駆動回路901、画像処理部903、操作表示部808、各種バイアス電源回路904なども接続されている。
かかる構成において、各色用の現像装置(813Y,M,C,K)の透磁率センサは、それぞれ事物たる二成分現像剤の情報を取得する情報検知手段として機能している。また、Y,M,C,K用光学センサ816Yは、それぞれ事物たる感光体811Y,M,C,Kの光反射率の情報を取得する情報検知手段として機能している。また、定着温度センサ806cは、事物たる定着ローラ(806a)の表面温度の情報を取得する情報検知手段として機能している。また、ベルト用光学センサ855は、事物たる紙搬送ベルト(851)の光反射率の情報を取得する情報検知手段として機能している。また、Y,M,C,K用電流検知センサ809Y,M,C,Kは、それぞれ図示しないトナー収容器内に収容されるY,M,C,Kトナーに流れる電流値の情報を取得する情報検知手段として機能している。また、制御部900は、記憶手段たるRAM900bやROM900c内に格納された情報、接続された各種機器から送られてくる情報などを取得する情報取得手段として機能している。このように、本プリンタは、互いに異なる情報を取得する複数の情報取得手段を備えている。
上記各種駆動回路901は、制御部からの制御信号に基づいて、図示しないメインモータなどといった各種駆動源902における駆動のON/OFFを制御するための回路である。但し、上述の光書込ユニット2における光源の駆動については、かなり高速にON/OFFを制御する必要があるため、制御部とは別に、その駆動を制御する画像処理部903が設けられている。この画像処理部903は、パーソナルコンピュータ等の外部から送られてくる画像信号に基づいて、光書込ユニット802の光源やポリゴンモータ(ポリゴンミラーの駆動源)の駆動を制御する。
上記操作表示部808は、画像を表示する液晶ディスプレイ等からなる図示しない表示部と、ユーザーによる操作情報を受け付けるテンキー等からなる図示しない操作部とを有している。そして、制御部900からの制御信号に基づいて表示部に所定の画像を表示したり、操作表示部によって受け付けた操作情報を制御部900送信したりする。かかる構成の操作表示部808も、事物たる操作情報を取得する情報取得手段として機能している。
上記各種バイアス電源回路は、制御部900からの制御信号に基づいて、現像ロールに印加する現像バイアスなど、各種バイアスの値を制御するための回路である。
本発明において、情報取得手段によって取得される情報としては、センシング情報、パラメータ記憶情報、画像情報などが挙げられる。
上記センシング情報は、光学センサ、電圧センサ、電流センサ等の各種センサによって取得される情報である。画像形成装置においては、寸法、駆動速度、時間(タイミング)、重量、電流値、電圧値、振動、音、磁力、光量、温度、湿度、気圧、気流、各種ガス濃度等の情報がセンサによって取得可能である。
上記駆動速度としては、駆動モータ、定着ローラ、駆動ローラ、レジストローラ、搬送ローラ等の回転部材の回転速度などが挙げられ、周知のエンコーダー等によって検出することができる。
上記電流値としては、駆動モータの電流値や転写電流値などが挙げられ、周知の電流計によって検出することができる。また、被検対象(転写紙等)を介して一対の電極(搬送ローラ対など)を接触させて、その電極間の電流値を測定したり、被検対象の表面電位を測定したりして、被検対象の電気抵抗値を検知することもできる。
上記音としては、駆動モータや駆動伝達系からの発生音などが挙げられ、周知のマイクロフォン等によって検出することができる。その発生音の大きさに基づいて、駆動モータや駆動伝達系に付与される突発的なストレスを検知することができる。また、トナー像が転写される前の転写紙の表面にガイド部材等を接触させ、その接触に伴って発生する振動音や摺動音を検知することで、転写紙の表面粗さを検知することも可能である。
上記温度としては、気温、定着ローラ表面温度、駆動モータ温度などが挙げられ、周知の温度センサによって検出することができる。
上記光量は、反射型フォトセンサや透過型フォトセンサ等によって検出が可能で、搬送路内を搬送される紙の検知や、感光体に対するトナー付着量の検知などに利用することができる。また、複数のフォトセンサ間における所定光量以上の検知タンミングのずれにより、搬送路内における紙やベルト等の移動速度を検出することに利用することもできる。また、エンコーダー等によって検出した紙搬送ローラ対等の回転速度との併用により、紙搬送ローラ対と紙とのスリップを検知することもできる。また、所定の入射角で転写紙表面に入射した光について、所定の反射方向で光量を検出することで、転写紙表面の光沢性を検知することもできる。また、転写紙の厚み方向における紫外線の透過光量を検出することで、その転写紙について上質紙、再生紙、OHPの何れであるかを検知することもできる。また、LEDアレイ等の光源群からそれぞれ発した光を転写紙表面で反射させて、それぞれの反射光をCCD等の複数受光素子で検出することで、その転写紙表面についておもて面であるか裏面であるかを検知することもできる。また、赤外線またはμ波の光の吸収量を反射光量や透過光量によって検出することで、転写紙に含まれている水分量を検知することもできる。
上記寸法としては、紙を搬送ローラ対で挟んだときの両ローラの相対的な位置変位を光学センサ等で検知したり、紙が進入してくることによって押し上げられる部材の移動量を検知したりして求められる紙の厚みが挙げられる。また、所定の力で押圧した転写紙の変形量(湾曲量)を検出することで、その転写紙の剛性を検知することもできる。また、フォトセンサや接触センサ等を用いて、転写紙のカール量を検知することもできる。
現像剤(一成分又は二成分)の特性は、電子写真プロセスの機能の根幹に影響するため、システムの動作や出力にとって重要な因子となる。よって、現像剤の特性を知ることは異常の判定において極めて重要である。トナーの特性としては、潜像担持体に対する付着量、帯電量およびその分布、流動性、凝集度、二成分現像剤中における嵩密度、電気抵抗、誘電率、外添剤量、消費量、容器内残量、二成分現像剤中における濃度などが挙げられる。
現像剤の潜像担持体に対する付着量については、潜像担持体にテスト用の静電潜像を形成し、これを所定の現像条件で現像して得られた基準トナー像に対する光反射率(光反射量)を測定することで検知することができる。また、現像剤の電気抵抗や誘電率については、現像装置内に一対の電極を設け、印加電圧と電流の関係を測定することで検知することができる。また、現像装置内にコイルを設け、そのコイルにおける電圧電流特性を測定することで、現像剤のインダクタンスを検知することもできる。また、現像剤収容器(現像装置を含む)内に光学方式や静電容量式のレベルセンサを設けることで、現像剤の容器内残量を検知することもできる。
現像剤の特性と同様に、感光体の特性も電子写真プロセスの機能と密接に関わる。感光体の特性としては、感光膜厚、表面特性(摩擦係数、凹凸)、表面電位(各プロセス前後)、表面エネルギー、散乱光、温度、表面位置(フレ)、線速度、電位減衰速度、抵抗・静電容量、表面水分量等が挙げられる。
感光体の感光膜厚については、次のようにして検知することができる。即ち、感光体に接触する帯電ローラ等の帯電部材から感光体への電流値を検出する。そして、帯電部材への印加電圧と、予め調べられた感光体の誘電厚みに対する電圧電流特性とを比較することにより、感光膜厚を求めることができる。また、感光体の表面電位や温度については、周知の表面電位センサや温度センサによって検知することができる。また、非接触帯電方式における帯電部材と感光体とのギャップについては、ギャップを通過させた光の量を測定することで検知することが可能である。また、帯電による電磁波については、広帯域アンテナによって検知することができる。
使用されるトナーの特性も、装置の異常の判定に役立つ重要な要素である。また、感光体のベタ潜像部の電位検出値と、そのベタ画像に対する単位面積あたりのトナー付着量とに基づいて、トナーの帯電量を求めることもできる。また、転写体上においてドット(画素像)の周囲に飛び散ったトナーの量については、次のようにして求めることができる。即ち、赤外光のエリアセンサ等によって撮影した感光体上におけるドットパターン画像と、転写体上で同様に得たドットパターン画像との比較によって求めるのである。また、定着処理に伴って定着ローラ等の定着部材に逆転移してしまうトナーのオフセット量については、定着前の転写紙における反射光量と、その転写紙を定着した後の定着部材における反射光量との比較によって求めることができる。また、感光体等の転写元における転写残トナー量については、転写前後における転写元や転写先の光反射量の変化に基づいて求めることができる。また、感光体の非画像部に付着してしまういわゆるカブリトナーの量については、感光体又は転写体上において、比較的広範囲の波長領域を検知する光学センサで画像背景部を読み取ることで検知することができる。または、高解像度のエリアセンサで背景部のエリアごと画像情報を読み取り、その画像に含まれるトナー粒子数を計数することによっても求めることができる。
画像形成装置においては、形成されるトナー像の特性も、装置の異常を判定するための重要な要素となる。トナー像の高さについては、変位センサで縦方向から測定した奥行きと、平行光のリニアセンサで横方向から測定した遮光長とに基づいて求めることができる。形成されたトナー像の画像濃度については、光学センサによる検出光量(反射光量や透過光量)に基づいて求めることができる。また、トナー像の色については、反射光や透過孔の投光波長を検出することで求めることができる。画像濃度や色情報を得るには感光体上または中間転写体上のトナー像を被検対象としてよいが、色ムラなど、色のコンビネーションを測るには被検対象を転写紙上のトナー像にする必要がある。また、画像の階調性については、階調レベルごとに感光体上に形成されたトナー像や、転写体に転写されたトナー像の反射濃度を光学センサによって検出することで求めることができる。
形成される画像の質、即ち、画質も、装置の異常を判定するための重要な要素となる。トナー像の鮮鋭性については、スポット径の小さい単眼センサ、若しくは高解像度のラインセンサを用いて、ライン画像の繰り返しパターンを感光体上や転写体上で読み取ることによって求めることができる。また、トナー像の粒状性(ざらつき感)については、ハーフトーン画像を鮮鋭性の場合と同様に読み取って、予も取り結果のノイズ成分を算出することで求めることができる。また、紙の姿勢ズレによる転写紙上でのトナー像の相対的な傾きについては、次のようにして検知することができる。即ち、転写紙を幅方向の両端でそれぞれ検知する2つの紙検知センサを設け、両者の検知タイミングの差に基づいて求めるのである。また、重ね合わせトナー像における色ずれについては、中間転写体または転写紙上の重ね合わせ画像のエッジ部を、単眼の小径スポットセンサ若しくは高解像度ラインセンサで検知することによって求めることができる。また、紙やローラ等のスリップに起因する紙送り方向におけるトナー像の濃度ムラについては、小径スポットセンサ若しくは高解像度ラインセンサによって転写紙上における副走査方向の濃度ムラを測定し、特定周波数の信号量を計測することによって求めることができる。また、トナー像の光沢ムラについてはは、転写紙上におけるトナー像を正反射式光学センサで検知することで求めることができる。また、像流れや像かすれなどは、感光体や転写体上でトナー像をエリアセンサにより検知し、得られた画像情報を画像処理することで求めることができる。また、画像の後端白抜けやベタクロス白抜けについては、感光体や転写体上のトナー像を高解像度ラインセンサによって検知することで求めることができる。
上記温度を検出する温度センサとしては、異種金属同士や金属と半導体とを接合した接点に発生する熱起電力に基づいて温度を検出する熱電対方式のものを用いることができる。また、金属や半導体の抵抗率が温度によって変化することを利用した抵抗率変化素子方式のものでもよい。また、或る種の結晶において温度上昇に伴って結晶内の電荷の配置に偏りが生じて電荷を発生させることを利用した焦電型素子方式のものでもよい。また、温度による磁気特性の変化を検出する熱磁気効果素子方式のものでもよい。
上記湿度を検出する湿度センサとしては、H2OあるいはOH基の光吸収を測定する光学的測定方式のものや、水蒸気の吸着による材料の電気抵抗値変化を測定する方式のものを用いることができる。また、各種ガスについては、基本的にはガスの吸着に伴う、酸化物半導体の電気抵抗の変化を測定する周知のガスセンサによって検出することができる。また、気流(方向や流速)については、光学的測定法等によって検出が可能であるが、システムへの搭載を考慮すると、より小型なエアブリッジ型フローセンサが特に有用である。また、気圧の検出については、感圧材料を使用する、メンブレンの機械的変位を測定する方法や、振動を測定する方法などによって検出することができる。
情報取得手段によって取得される情報の1つである上記パラメータ記憶情報は、RAM等の記憶手段に格納されているパラメータ情報である。画像形成装置においては、制御パラメータ、操作履歴、消費電力、消耗品消費量、各種画像形成条件(モード)設定履歴、警告履歴等がパラメータ情報として記憶手段に格納され得る。
上記制御パラメータは、帯電電位、現像バイアス値、定着温度値など制御部によって設定される情報である。帯電電位等の他に、中間調処理やカラー補正などの各種画像処理パラメータの設定値、制御部が装置の動作のために設定する各種のパラメータ(紙搬送のタイミング、画像形成前の準備モードの実行時間など)が挙げられる。
上記操作履歴としては、用紙サイズ、色数、枚数、画質指示などの指定のためにユーザーによって行われる操作の履歴情報が挙げられる。また、上記消費電力としては、全期間または特定期間単位(1日、1週間、1ヶ月など)の総合消費電力や、その分布、変化量(微分)、累積値(積分)などが挙げられる。また、上記消耗心消費量としては、全期間または特定期間単位(1日、1週間、1ヶ月など)におけるトナーや用紙等の消耗品の消費量が挙げられる。
情報取得手段によって取得される情報の1つである上記画像情報は、出力する画像の情報として、画像形成装置外部から入力されたり、スキャナ等によって原稿読取されたりする情報である。着色画素累積数、文字部比率、ハーフトーン部比率、色文字比率、主走査方向のトナー消費分布、RGB信号(画素単位の総トナー量)、原稿サイズ、縁有り原稿、文字の種類(大きさ、フォント)等の情報が画像情報として挙げられる。着色画素累積数については、GRB信号別の画像データを画素ごとにカウントすることによって求めることができる。また、上記文字部比率については、オリジナル画像を文字・網点・写真・背景に分離し、文字部とハーフトーン部との比率に基づいて求めることができる。更には、同様にして色文字の比率も求めることができる。また、トナー消費分布については、着色画素の累積値を主走査方向で区切った領域別にカウントし、カウント値に基づいて求めることができる。また、画像サイズについては、制御部が発生する画像サイズ信号または画像データでの着色画素の分布に基づいて求めることができる。また、文字の種類(大きさ、フォント)については、画像情報に含まれる文字の属性データに基づいて求めることができる。
なお、本発明において、「情報取得手段によって取得される情報」とは、電流値など、センサ等によって取得される情報そのものの他、取得された情報に基づいて算出あるいは特定される情報をも含む概念である。
次に、本プリンタの特徴的な構成について説明する。本プリンタは、各種の情報取得手段によって取得された複数種類の情報からなる多種情報について、MTS法によって異常であるか否かを判定するようになっている。そして、かかる判定を実施すべく、試作機(プリンタ標準機)から予め取得された正常指標情報である逆行列を記憶手段たる上記ROM900c内に記憶している。また、制御部900が、この逆行列に基づいて、実際に取得した各種情報の全て又は一部の組合せからなる組情報について異常であるか否かを判定し、結果に応じて操作表示部808に故障発生注意情報を表示させるようになっている。即ち、本プリンタにおいては、制御部900が、被検対象たるプリンタの異常を判定する判定手段として機能しているのである。なお、故障発生注意情報をユーザーに報知する報知手段として、操作表示部808の他に、音、印字、ランプ表示等による報知方式を採用したものを用いてもよい。
次に示す表1は、異常のない試作機から取得された各種情報に基づいて上記逆行列を構築するための、情報取得工程を説明する取得データテーブルである。この取得データテーブルでは、k種類の情報からなる組情報をn組取得して逆行列を構成する例を示している。
情報取得工程では、まず、1組目の組情報を構成するk種類の情報(y11、y12・・・・・・y1k)がそれぞれセンサや制御部100等によって取得され、データテーブル内の1行目のデータとして、それぞれ記憶手段内に記憶される。次いで、2組目の組情報を構成するk種類の情報(y21、y22・・・・・・y2k)がそれぞれセンサや制御部100等によって取得され、データテーブル内の2行目のデータとして、それぞれ記憶手段内に記憶される。以降、3組目からn組目までの組情報が同様に取得されて、データテーブル内の3行目・・・n行目のデータとして、それぞれ記憶手段内に記憶される。そして、最後に、各組情報を構成するk種類の情報について、それぞれn個における平均と標準偏差(σ)とが求められて、それぞれn+1、n+2行面のデータとして、記憶手段内に記憶される。
上記情報取得工程が終わると、次の表2に示すような正規化データテーブルが構築を構築する情報正規化工程が実施される。この正規化データテーブルは、上述の取得データテーブルに基づいて構築される。
データの正規化とは、各取得情報について、その絶対値情報ではなく、変量情報に変換するための処理であり、次に示す関係式に基づいて、各情報の正規化データが算出される。なお、次式におけるiは、n組の組情報のうちの何れか1つであることを示す符号である。また、jは、k種類の情報のうちの何れか1つであることを示す符号である。
上記情報正規化工程が終わると、次に、相関係数算出工程が行われる。この相関係数算出工程では、n組の正規化データ群において、それぞれk種類の正規化データのうち、互いに異なる2種類が成立し得る全ての組合せ(
kC
2通り)について、次式に基づいて相関係数r
pq(r
qp)が算出される。
全ての組合せについての相関係数r
pq(r
qp)が算出されると、次に、対角要素を1、その他のp行q列の要素を相関係数r
pqとした、k×k個の相関係数行列Rが構築される。なお、この相関係数行列Rの内容を、次式に示す。
このような相関係数算出工程が終わると、次に、行列変換工程が実施される。この行列変換工程により、上記数4で示した相関係数行列Rが、次式で示される逆行列A(R
−1)に変換される。逆行列Aの代わりに相関係数行列Rの余因子行列を用いてもよい(以下同様)。
本プリンタは、以上のような情報取得工程、情報正規化工程、相関係数算出工程、行列変換工程という一連のプロセスによって構築された逆行列Aを、工場出荷時の上記ROM(900c)内に予め記憶している。そして、出荷先において、複数のセンサ等によって実際に取得した各種の情報の全て又は一部の組合せからなる組情報について、逆行列Aによる多次元空間内におけるマハラノビスの距離Dを、次式に基づいて算出する。
上記制御部(900)は、このようにして求めたマハラノビスの距離Dを、予め設定した閾値と比較する。そして、マハラノビスの距離D(以下、マハラノビス距離という)が閾値よりも大きい場合には、取得された組情報について正常分布から大きくずれている異常データであると判定して、操作表示部(808)に故障発生注意情報を表示する。
かかる構成の本プリンタによれば、各種の情報の全て又は一部の組合せからなる組情報の実測値についての異常をMTS法によって判定することで、原因が明確に特定されない故障の発生を予測することができる。ところが、本発明者らは、このような予測を行う試作プリンタにおいて、異常であるにもかかわらず正常であると誤検知される場合があることを見出した。この誤検知の原因は、動作モードの設定に関連していた。
本プリンタにおいては、普通紙印字モード、OHP印字モードという2つの動作モードが、上記操作表示部(808)に対するユーザーの操作に基づいて選択可能である。普通紙印字モードが選択されると、100[mm/sec]というプロセス線速(各感光体、紙搬送ベルト851、各搬送ローラ、レジストローラ対804、定着ローラ806a等の線速)の設定条件下で画像が形成される。これに対し、OHP印字モードが選択されると、50[mm/sec]というプロセス線速の設定条件下で画像が形成される。
本発明者らは、試作プリンタにおいて、上述の2つの動作モードを混在させながら、紙搬送ベルト(851)の線速と、各感光体(811Y,M,C,K)の線速とを上述の光学センサによる検知結果に基づいて取得した。具体的には、紙搬送ベルト(851)の線速(以下、ベルト線速という)と、各感光体の線速(以下、ドラム線速という)とをそれぞれ測定しながら、200枚の転写紙に基準画像を形成した。これら200枚のうち、最初の100枚については、普通紙印字モード(以下、モード1ともいう)にて上質紙に基準画像を形成した。また、その後の100枚については、OHP印字モード(以下、モード2ともいう)にてOHPシートに基準画像を形成した。そして、200枚の転写紙のプリントアウトに伴って取得された200組の正常データ群の組情報に基づいて、逆行列Aを構築した。
図20は、この逆行列Aを用いたMTS法によって算出されるマハラノビス距離Dの2乗値と、紙搬送ベルト(851)の線速(以下、ベルト線速という)と、各感光体の線速(以下、ドラム線速という)との関係を示すグラフである。このような関係を成立させる逆行列Aを用いて、その後のプリントアウトの際に取得された次の表3に示すような組情報について、マハラノビス距離Dを算出してプリンタの異常を判定したとする。
この表3において、サンプル番号S5やS6の組情報は、何れもベルト線速及びドラム線速が正常範囲である100[mm/sec]あるいは50[mm/sec]から大きくずれている。よって、モード1、モード2にかかわらず異常であると判定されるべきである。ところが、マハラノビス距離Dの2乗が何れも比較的小さな値であるので、正常であると誤判定されてしまう。
そこで、本第2実施形態に係るプリンタにおいては、正常指標情報たる逆行列Aとして、動作モード等の特定情報に応じて内容の異なる複数のものを上記ROM(900c)に記憶させている。特定情報が動作モードである場合を例にすれば、動作モードをモード1に設定した条件下で取得した複数の組情報(例えばベルト線速及びドラム線速)に基づいて、モード1用の逆行列Aを構築して記憶させておく。また、モード2に設定した条件下で取得した複数の組情報に基づいて、モード2用の逆行列Aを構築して記憶させておく。そして、出荷先でのプリントアウトの際に、これら2つの逆行列Aのうち、上記CPU(900a)による動作モード設定値の取得結果に対応するものを特定して、異常の判定に使用させるようにしている。プリントアウトの際に取得された動作モード設定値がモード1である場合にはモード1用の逆行列Aを使用させる一方で、モード2である場合にはモード2用の逆行列Aを使用させるのである。
図21は、モード1用の逆行列Aを用いたMTS法によって算出されるマハラノビス距離Dの2乗値と、ベルト線速及びドラム線速との関係を示すグラフである。また、図22は、モード2用の逆行列Aを用いたMTS法によって算出されるマハラノビス距離Dの2乗値と、ベルト線速及びドラム線速との関係を示すグラフである。先に示した表3におけるサンプル番号S5の組情報は、何れのグラフにおいても、マハラノビス距離Dの2乗が5〜10と非常に大きい値になるので、容易に異常である判定され得ることがわかる。このように、本プリンタにおいては、特定情報の内容に応じて逆行列Aの正常分布が異なってしまうことによる誤判定を回避することができる。
図23は、上記制御部(900)によって実施される異常判定制御のフローの一例を示すフローチャートである。この異常判定制御では、まず、1ジョブが開始されるまで制御フローの進行が待機される(ステップ1:以下、ステップをSと記す)。この1ジョブとは、転写紙1枚へのプリントアウトを行うための各機器動作のことである。1ジョブが開始されたと判断されると(S1でY)、次に、ベルト線速やドラム線速等の実測値からなる組情報が取得された後(S2)、動作モード設定値等の特定情報が取得される(S3)。そして、上記ROM(900c)内に記憶されている複数の逆行列Aの中から、この特定情報に対応するものが特定される(S4)。次いで、その逆行列Aを用いたMTS法によって上記S2における組情報についてのマハラノビス距離Dが算出された後(S5)、それについて所定の閾値を超えるか否かが判断される(S6)。マハラノビス距離Dが閾値を超える場合には(S6でY)、何らかの原因によってプリンタ内に異常が発生している可能性が高い。よって、異常が発生していると判定されて故障発生注意情報が上記操作表示部(8)に表示された後、一連の制御フローが上記S1にリターンされる。一方、マハラノビス距離Dが閾値を超えない場合には(S6でN)、異常発生の可能性が低いので、異常であると判定されることなく、一連の制御フローが上記S1にリターンされる。
なお、理解を容易にするために、ベルト線速とドラム線速とからなる2次元空間におけるマハラノビス距離Dを求める例について説明した。しかし、より多くの次元の空間におけるマハラノビス距離Dを求めた方が、より多様な異常を検出することができる。動作モード設定値等の特定情報については、逆行列Aに含めても、含めなくてもよい。
また、特定情報が動作モード設定値である例について説明したが、湿度情報や温度情報である場合にも、本発明の適用が可能である。例えば、上述のY,M,C,Kトナー用電流検知センサ(809Y,M,C,K)によって取得された電流値に基づいて算出される各色トナーの電気抵抗値は、機内温度に応じてその正常値分布が異なってくる。よって、トナーの電気抵抗値の情報を含む複数の組情報について、温度に応じて値の異なる複数の逆行列Aを記憶させておき、出荷先におけるトナー電気抵抗の実測値に応じたものをそれらから特定させて異常判定に使用させてもよい。先に説明した線速の違いによる高速モードと高画質モードとの例では、線速70[mm/sec]や80[mm/sec]といった中間的な値を異常と判定させる必要があった。これに対して温度のような連続的に値が変化する因子に関しては中間的な値も正常と扱い得るため、温度ごとに正常値分布を設定する必要はないと本発明者らは考えていた。しかし、本発明者らは、温度のように連続的に変化する因子を用いる場合においても、複数の正常値分布を記憶して使い分けることが精度の良い異常判定に寄与することを見出した。
例えば、図48、図25、図26、図27は、それぞれ、温度を縦軸に、後述する方法によって測定したトナーの電気抵抗値を横軸に、それぞれとってマッピングした正常値分布を示すグラフである。図25、図26、図27は、25℃、35℃、40℃付近においてそれぞれ100回の画像形成を実施してマッピングした正常値分布を示している。また、図48は、これら3通りの温度においてそれぞれ100ずつ測定した計300回の測定データ全てに基づいて作成した正常値分布を示している。図48の分布を、図25、図26、図27と比較すると、図48の分布は、図25、図26、図27の分布の輪に比較して正常とみなされる範囲が大きい。更に、図25、図26、図27の分布の中心点(温度25℃且つ電気抵抗1.0、温度35℃且つ電気抵抗0.9、温度40℃且つ電気抵抗0.7)の各点を結ぶ線分上から外れた領域、例えば、温度31.6℃且つ電気抵抗0.75などの点も正常とされている。本発明者らの実験によれば、本例における各点(温度25℃且つ電気抵抗1.0、温度35℃且つ電気抵抗0.9、温度40℃且つ電気抵抗0.7)のように、複数のパラメータから構成される空間においてマッピングされる正常値の中心値が1つの直線に乗らない場合(非線形な変化を示す場合)には、得られる正常値分布は正常値の中心値を結ぶ線上に比較して大きく広がってしまうことが確認された。本例で言えば、温度25℃且つ電気抵抗1.0の点と、温度40℃且つ電気抵抗0.7の点とを結ぶ線分を境にして、温度35℃且つ電気抵抗0.9の点に向かう方向のみならず、その逆の方向へも正常な範囲が広がってしまっている。もしも、複数のパラメータから構成される空間においてマッピングされる正常値の中心値が1つの直線に乗るのであれば、所定の温度値ごとに個別の正常値分布を作成しなくても異常判定の精度はそれほど低下しない。例えば、図25、図26のグラフの元となる200個の測定値を元に作成した図24に示す正常値分布1つのみによって、温度25℃、温度35℃における異常判定を行っても、図25及び図26に示す2つの正常値分布を使用して異常判定を行う場合と比較して、それほど精度は低下しない。しかし、多くの場合は、正常値の中心値は非線形に変化することが予想される。このため、温度のように連続的に変化するパラメータを用いる場合においても、測定される温度の値に応じて正常値分布を使い分けないと、異常判定の精度が低下してしまうことになる。
特定情報が連続した値をとり得る場合には、各温度値ごとに正常値分布を作成するのではなく、例えば「0℃未満」、「0℃以上10℃未満」、「10℃以上20℃未満」、「20℃以上30℃未満」といったように、温度を所定の温度範囲に分割し、測定された温度がどの温度範囲に属するかに応じて異常判定に使用する正常値分布を選択することが現実的である。このように特定情報を所定の範囲に分割する場合には、一つの範囲の中でも特定情報の値に応じた正常値分布の変化が起こり得る。例えば同じ「20℃以上30℃未満」の範囲内でも21℃において他の因子が形成する正常値分布と、29℃において他の因子が形成する正常値分布とが変わり得る。このため、本例のように特定情報自体を因子の一つとしても良い。なお、温度範囲を細かく分割すれば異常判定の精度は向上するが、多数の逆行列を記憶する必要があるために記憶容量が増大する。そこで異常判定の精度をあまり低下させずに記憶容量を節約するためには、正常値の中心値が比較的線形に変化する特定情報の範囲を、他の範囲に比べて広く取ることが有効である。例えば図25(25℃付近)、図26(35℃付近)、図27(40℃付近)に示す3つの分布を記憶する変わりに、図24(25℃〜35℃付近)と、図27(40℃付近)との2つの分布を記憶すれば、図25と比較して異常判定の精度を向上させたまま、記憶する正常値分布の数を2つで済ませることが出来る。
なお、トナーの抵抗値については、以下のようにして求めた。即ち、まず、互いに約1cmの間隔をもって対向させた一対の電極を現像装置中に設け、この電極の一方に印加した電圧Vと、他方に流れる電流Iとを測定し、これらから電気抵抗値A=V/Iを求める。こうして得られた電気抵抗値Aを、温度25℃で測定した電気抵抗値Bで割り、A/Bの値を因子とした。なおトナーの抵抗値は電極間の間隔や現像剤の状態などの装置設定によって変動するが、異常判定において重要なのは絶対的な抵抗値ではなくその変動であるので、上記のような相対的な値を電気抵抗値として扱っても問題はない。
本プリンタにおいて、異常判定装置を構成する複数の情報取得手段としては、次に列記するものが挙げられる。即ち、Y,M,C,K用光学センサ(816Y,M,C,K)、定着温度センサ(806c)、ベルト用光学センサ(855)、各電流検知センサ(809Y,M,C,K)、CPU(900a)、操作表示部(808)等である。また、RAM(900b)やROM(900c)が異常判定装置を構成する記憶手段として機能している。また、CPU(900a)が、異常判定装置を構成する異常判定手段として機能している。
次に、第2実施形態に係るプリンタの変形例装置ついて説明する。なお、本変形例装置の基本的な構成については、上記第2実施形態に係るプリンタと同じであるので、説明を省略する。
本プリンタは、特定情報の内容に応じて互いに内容の異なる複数の逆行列Aを記憶手段に記憶し、特定情報の取得結果に応じた逆行列Aをそれらの中から特定する点が、第2実施形態に係るプリンタと同じである。但し、それら複数の逆行列Aを、機械書込不能なROM(900c)に記憶しているのではなく、機械書込可能なRAM(900b)に記憶する点が、第2実施形態に係るプリンタと異なる。また、それら逆行列Aを工場出荷時のRAMに予め記憶していない。CPU(900a)が出荷先での初期運転期間に伴って取得される複数の情報からなる多種情報(組情報の他、特定情報も含む)についての複数の取得結果に基づいて、複数の逆行列Aを構築するようになっている。即ち、CPU(900a)が組情報の取得結果に基づいて、互いに内容の異なる複数の逆行列を構築する正常指標情報構築手段として機能する点も、第2実施形態に係るプリンタと異なるのである。なお、出荷先での初期運転期間においては、プリンタ内の各部材が新品であるので、各情報取得手段による各種情報の取得結果が、正常データとなる。
図28は、本プリンタの制御部(900)によって実施される逆行列構築制御のフローを示すフローチャートである。この逆行列構築制御は、出荷先における初期運転期間中に実行される。この初期運転期間は、具体的には、出荷後の第1回目のプリントジョブが行われてから、n回目のプリントジョブが行われるまでの期間である。図28に示す逆行列構築制御が実施される前提として、先に表1に示した取得データテーブルが、工場出荷時の本プリンタの上記RAM(900b)内にx個記憶されている。但し、各取得データテーブルは、何れもデータが空の状態になっており、それぞれ互いに異なる数値範囲のインデックスに関連付けて記憶されている。このインデックスは、動作モード設定値などといった特定情報の実測値に対応している。即ち、例えば、x1、x2、x3という3つの取得データテーブルが、それぞれ1〜5、6〜10、1〜15という数値範囲のインデックスに関連付けて記憶されており、その数値範囲の特定情報に適した組情報を格納するのである。
出荷後に初めに本プリンタの主電源が投入されると、逆行列構築制御が開始されて、組番号iの値が「0」に初期化される(S1)。この組番号iは、k種類の情報からなる組情報の実測回数を示す変数である。これが初期化された後、1ジョブが開始されると(S2でY)、組番号iに「1」が加算される(S3)。そして、各種センサやデータ読取によってk種類の情報からなる1つの組情報が取得(実測)された後(S4)、動作モード設定値等の特定情報Xが取得される(S5)。次に、上述したx個の取得データテーブルの中から、特定情報Xの内容(値)に対応する数値範囲のインデックスのものが選択され(S6)、これに組情報の取得結果が格納される(S7)。そして、組番号iについて「n」であるか否かが判定され(S8)、「n」でない場合には(S8でN)、制御フローが上記S2にループせしめられる。このループにより、次回の1ジョブにて、i+1番目の組情報が取得されて、適切な取得データテーブルに格納されることになる。一方、組番号iが「n」である場合には(S8でY)、n組の組情報についての情報取得工程が終了し、上述の情報正規化工程、相関係数算出工程、行列変換工程が順に行われる。具体的には、まず、x個の取得データテーブルに基づいてx個の正規化データテーブルが構築される(S9)。次いで、それぞれの正規化データテーブルに基づいて相関係数行列Rが構築された後、x個の逆行列Aが構築される(S10)。
以上の構成の本プリンタにおいては、複数の逆行列Aとして、それぞれ他のプリンタ試験機の試運転に基づいて構築されたものではなく、本プリンタの初期運転時に取得した各種情報に基づいて構築したものを用いる。よって、異常の判定に用いる情報の正常値が各種部品の精度誤差などによって製品毎にばらついてしまうことによる判定精度の悪化を回避することができる。しかも、複数の逆行列Aを出荷先にて自動で構築するので、出荷前に工場で各製品毎の試運転を行ってそれぞれの逆行列Aを構築することによるコストアップを回避することもできる。
次に、本変形例装置に、より特徴的な構成を付加した各変形装置実施例のプリンタについて説明する。
[変形装置実施例1]
本変形例装置は、初期のn回のジョブ運転期間などといった出荷先における初期運転期間に複数の逆行列Aを自動で構築するが、全ての逆行列Aを構築するために必要な条件がその期間内に整うとは限らない。例えば、動作モード設定値を特定情報として、動作モード1に対応する逆行列Aと、動作モード2に対応する逆行列Aとを構築する場合、両逆行列Aについて、それぞれある程度の数の組情報を取得する必要がある。ところが、普通紙の使用を前提とした動作モード1の状態におけるプリントアウトが頻繁に行われるのに対し、OHPシートの使用を前提とした動作モード2の状態におけるプリントアウトはごく希にしか行われないのが一般である。そうすると、初期運転期間内において、動作モード1の状態における組情報が多量に取得されるのに対し、動作モード2の状態における組情報は逆行列Aを構築し得る数が得られなくなることもある。このような場合に、僅かな数の組情報に基づいて動作モード2に対応する逆行列Aを無理に構築してしまうと、動作モード2における異常の判定精度を悪化させてしまう。
そこで、本変形装置実施例1に係るプリンタにおいては、工場からの出荷に先立って、互いに内容の異なる複数の仮逆行列を記憶手段たる上記ROM(900c)に予め記憶している。これら仮正常指標情報たる仮逆行列は、第2実施形態に係るプリンタにおける複数の逆行列Aと同様のものであり、他のプリンタ試験機の試運転に伴って取得された複数の組情報に基づいて構築されている。上記CPU(900a)は、必要に応じてこれら仮逆行列のうちの一部を、逆行列Aとして補填するように構成されている。具体的には、初期運転期間内に、動作モード2によるプリントアウト回数などといった所定の条件が整わずに、少なくとも何れか1つの逆行列Aを構築することができなかった場合に、不足分を仮逆行列によって補填するのである。
図29は、本変形装置実施例1に係るプリンタの制御部(900)によって実施される逆行列構築制御のフローを示すフローチャートである。同図において、S1〜S8の工程については、先の図28におけるS1〜S8と同様であるので、記載が省略されている。上述の初期運転期間内において、n回のプリントジョブに伴ってn個の組情報が取得されると(図28のS8でY)、取得組数特定処理が実施される(S9)。この取得組数特定処理とは、上述したx個の取得データテーブルについて、それぞれ内部に格納されている組情報の数を特定する処理である。かかる取得組数特定処理が実施されると、x個の取得データテーブルについて、所定の閾値を下回る数の組情報しか格納していないものを、逆行列Aの元材料としての使用対象から除外するためのテーブル除外処理が行われる(S10)。このテーブル除外処理により、所定の閾値を下回る数の組情報しか格納していない取得データテーブルが、使用対象から除外される。そして、除外されずに残った取得データテーブル、即ち、必要数の組情報を格納している取得データテーブルについて、それぞれ正規化データテーブルが構築される(S11)。次いで、得られた正規化データテーブルについてそれぞれ逆行列Aが構築される。すると、初期運転期間内に、所定の条件が整わなかった場合には、逆行列Aの数がx個未満になって不足する。そこで、不足分の逆行列Aが、上述の仮逆行列から補填されて、最終的にx個の逆行列Aが構築される(S13)。
かかる構成の本プリンタにおいては、初期運転期間内に、閾値を下回る数の組情報しか得られなかった取得データテーブルが発生したなど、所定の条件が整わなくても、全ての逆行列Aを必要数以上のデータ群とすることができる。そして、このことにより、複数の逆行列Aの少なくとも何れか1つを、僅かな数の組情報に基づいて無理に構築してしまうことによる異常の判定精度を回避することができる。
[変形装置実施例2]
本変形装置実施例2に係るプリンタは、初期運転期間内に所定の条件が整わずに、少なくとも何れか1つの逆行列Aを構築することができなかった場合に、不足分を補填する点が、変形装置実施例1に係るプリンタと同様である。但し、補填のための仮逆行列を工場出荷に先立って上記ROM(900c)内に記憶しているのではなく、逆行列Aを必要に応じてデータ受入手段によって受け入れて使用する点が、変形装置実施例1に係るプリンタと異なる。かかるデータ受入手段としては、上述の操作表示部(808)などが挙げられる。ユーザーのキー操作等によって入力される複数の仮逆行列を操作表示部(808)で受け入れるのである。また、フロッピー(登録商標)ディスクドライブや光ディスクドライブなどの記録媒体読取装置をデータ受入手段として設けて、それによってフロッピーディスク内や光ディスク内に記録されている仮逆行列を読み込んで受け入れるようにしてもよい。また、パーソナルコンピュータ等から送られてくる画像情報を受信する画像情報受信手段(入力ポート)をデータ受入手段として機能させて、それによって仮逆行列を受け入れるようにしてもよい。
図30は、本変形装置実施例2に係るプリンタの制御部(900)によって実施される逆行列構築制御のフローを示すフローチャートである。同図において、S1〜S8の工程については、先の図28におけるS1〜S8と同様であるので、記載が省略されている。また、S9〜S12の工程については、先の図29におけるS9〜S12と同様であるので、記載が省略されている。上述のテーブル除外処理(図29のS10)で除外されずに残った取得データテーブルに基づいて逆行列Aが構築されると(図29のS12)、除外テーブルの有無が判定される(図30のS13)。そして、除外テーブルが無い場合には(S13でN)、x個の仮逆行列が全て初期運転期間に取得された組情報に基づいて構築されているので、仮逆行列の補填が行われることなく、一連の制御フローが終了する。一方、除外テーブルがあった場合には(S13でY)、不足分の逆行列Aの入力が必要である旨をユーザーに報知する。この報知は、例えば操作表示部(8)に「マニュアルの120頁に記載されているデータ群をテンキーによって入力してい下さい。」などという指示情報が表示されることによって行われる。その指示に基づくユーザーの操作によって複数の逆行列Aが入力されると(S15でY)、入力された逆行列Aのうち、不足分に対応するものが補填されて、最終的にx個の逆行列Aが構築される。
かかる構成の本プリンタにおいても、初期運転期間内に、閾値を下回る数の組情報しか得られなかった取得データテーブルが発生したなど、所定の条件が整わなくても、全ての逆行列Aを必要数以上のデータ群とすることができる。そして、このことにより、複数の逆行列Aの少なくとも何れか1つを、僅かな数の組情報に基づいて無理に構築してしまうことによる異常の判定精度を回避することができる。
なお、これまで、画像としてフルカラー画像という多色画像を形成するプリンタについて説明したが、単色画像を形成するプリンタについても、本発明の適用が可能である。
次に、異常判定装置の第1参考形態について説明する前に、その異常判定装置の被検対象となる画像形成装置の一例について説明する。
図31は、本発明を適用した異常判定装置の被検対象となり得る画像形成装置である同複写機を示す概略構成図である。この複写機は、プリンタ部100と給紙部200とからなる画像形成手段と、スキャナ部300と、原稿搬送部400とを備えている。スキャナ部300はプリンタ部100上に取り付けられ、そのスキャナ部300の上に原稿自動搬送装置(ADF)からなる原稿搬送部400が取り付けられている。
スキャナ部300は、コンタクトガラス32上に載置された原稿の画像情報を読取センサ36で読み取り、読み取った画像情報を図示しない制御部に送る。制御部は、スキャナ部300から受け取った画像情報に基づき、プリンタ部100の露光装置21内に配設された図示しないレーザやLED等を制御してドラム状の4つの感光体40K,Y,M,Cに向けてレーザ書き込み光Lを照射させる。この照射により、感光体40K,Y,M,Cの表面には静電潜像が形成され、この潜像は所定の現像プロセスを経由してトナー像に現像される。なお、符号の後に付されたK,Y,M,Cという添字は、ブラック,イエロー,マゼンタ,シアン用の仕様であることを示している。
プリンタ部100は、露光装置21の他、1次転写ローラ62K,Y,M,C、2次転写装置22、定着装置25、排紙装置、図示しないトナー供給装置、トナー供給装置等も備えている。
給紙部200は、プリンタ部100の下方に配設された自動給紙部と、プリンタ部100の側面に配設された手差し部とを有している。そして、自動給紙部は、ペーパーバンク43内に多段に配設された2つの給紙カセット44、給紙カセットから記録体たる転写紙を繰り出す給紙ローラ42、繰り出した転写紙を分離して給紙路46に送り出す分離ローラ45等を有している。また、プリンタ部100の給紙路48に転写紙を搬送する搬送ローラ47等も有している。一方、手差し部は、手差しトレイ51、手差しトレイ51上の転写紙を手差し給紙路53に向けて一枚ずつ分離する分離ローラ52等を有している。
プリンタ部100の給紙路48の末端付近には、レジストローラ対49が配設されている。このレジストローラ対49は、給紙カセット44や手差しトレイ51から送られてくる転写紙を受け入れた後、所定のタイミングで中間転写体たる中間転写ベルト10と2次転写装置22との間に形成される2次転写ニップに送る。
同複写機において、操作者は、カラー画像のコピーをとるときに、原稿搬送部400の原稿台30上に原稿をセットする。あるいは、原稿搬送部400を開いてスキャナ部300のコンタクトガラス32上に原稿をセットした後、原稿搬送部400を閉じて原稿を押さえる。そして、図示しないスタートスイッチを押す。すると、原稿搬送部400に原稿がセットされている場合には原稿がコンタクトガラス32上に搬送された後に、コンタクトガラス32上に原稿がセットされている場合には直ちに、スキャナ部300が駆動を開始する。そして、第1走行体33及び第2走行体34が走行し、第1走行体33の光源から発せられる光が原稿面で反射した後、第2走行体34に向かう。更に、第2走行体34のミラーで反射してから結像レンズ35を経由して読取りセンサ36に至り、画像情報として読み取られる。
このようにして画像情報が読み取られると、プリンタ部100は、図示しない駆動モータで支持ローラ14、15、16の1つを回転駆動させながら他の2つの支持ローラを従動回転させる。そして、これらローラに張架される中間転写ベルト10を無端移動させる。更に、上述のようなレーザ書き込みや、後述する現像プロセスを実施する。そして、感光体40K,Y,M,Cを回転させながら、それらに、ブラック,イエロー,マゼンタ,シアンの単色画像を形成する。これらは、感光体40K,Y,M,Cと、中間転写ベルト10とが当接するK,Y,M,C用の1次転写ニップで順次重ね合わせて静電転写されて4色重ね合わせトナー像になる。感光体40K,Y,M,C上にトナー像を形成する。
一方、給紙部200は、画像情報に応じたサイズの転写紙を給紙すべく、3つの給紙ローラのうちの何れか1つを作動させて、転写紙をプリンタ部100の給紙路48に導く。給紙路48内に進入した転写紙は、レジストローラ対49に挟み込まれて一旦停止した後、タイミングを合わせて、中間転写ベルト10と2次転写装置22の2次転写ローラ23との当接部である2次転写ニップに送り込まれる。すると、2次転写ニップにおいて、中間転写ベルト10上の4色重ね合わせトナー像と、転写紙とが同期して密着する。そして、ニップに形成されている転写用電界やニップ圧などの影響によって4色重ね合わせトナー像が転写紙上に2次転写され、紙の白色と相まってフルカラー画像となる。
2次転写ニップを通過した転写紙は、2次転写装置22の搬送ベルト24の無端移動によって定着装置25に送り込まれる。そして、定着装置25の加圧ローラ27による加圧力と、加熱ベルトによる加熱との作用によってフルカラー画像が定着せしめられた後、排出ローラ56を経てプリンタ部100の側面に設けられた排紙トレイ57上に排出される。
図32は、プリンタ部100を示す拡大構成図である。プリンタ部100は、ベルトユニット、各色のトナー像を形成する4つのプロセスユニット18K,Y,M,C、2次転写装置22、ベルトクリーニング装置17、定着装置25等を備えている。
ベルトユニットは、複数のローラに張架した中間転写ベルト10を、感光体40K,Y,M,Cに当接させながら無端移動させる。感光体40K,Y,M,Cと中間転写ベルト10とを当接させるK,Y,M,C用の1次転写ニップでは、1次転写ローラ62K,Y,M,Cによって中間転写ベルト10を裏面側から感光体40K,Y,M,Cに向けて押圧している。これら1次転写ローラ62K,Y,M,Cには、それぞれ図示しない電源によって1次転写バイアスが印加されている。これにより、K,Y,M,C用の1次転写ニップには、感光体40K,Y,M,C上のトナー像を中間転写ベルト10に向けて静電移動させる1次転写電界が形成されている。各1次転写ローラ62K,Y,M,Cの間には、中間転写ベルト10の裏面に接触する導電性ローラ74がそれぞれ配設されている。これら導電性ローラ74は、1次転写ローラ62K,Y,M,Cに印加される1次転写バイアスが、中間転写ベルト10の裏面側にある中抵抗の基層11を介して隣接するプロセスユニットに流れ込むことを阻止するものである。
プロセスユニット(18K,Y,M,C)は、感光体(40K,Y,M,C)と、その他の幾つかの装置とを1つのユニットとして共通の支持体に支持するものであり、プリンタ部100に対して着脱可能になっている。ブラック用のプロセスユニット18Kを例にすると、これは、感光体40Kの他、感光体40K表面に形成された静電潜像をブラックトナー像に現像するための現像手段たる現像ユニット61Kを有している。また、1次転写ニップを通過した後の感光体40K表面に付着している転写残トナーをクリーニングする感光体クリーニング装置63Kも有している。また、クリーニング後の感光体40K表面を除電する図示しない除電装置や、除電後の感光体40K表面を一様帯電せしめる図示しない帯電装置なども有している。他色用のプロセスユニット18Y,M,Cも、取り扱うトナーの色が異なる他は、ほぼ同様の構成になっている。同複写機では、これら4つのプロセスユニット18K,Y,M,Cを、中間転写ベルト10に対してその無端移動方向に沿って並べるように対向配設したいわゆるタンデム型の構成になっている。
図33は、4つのプロセスユニット18K,Y,M,Cからなるタンデム部20の一部を示す部分拡大図である。なお、4つのプロセスユニット18K,Y,M,Cは、それぞれ使用するトナーの色が異なる他はほぼ同様の構成になっているので、同図においては各符号に付すK,Y,M,Cという添字を省略している。同図に示すように、プロセスユニット18は、感光体40の周りに、帯電手段としての帯電装置60、現像装置61、1次転写手段としての1次転写ローラ62、感光体クリーニング装置63、除電装置64等を備えている。
感光体40としては、アルミニウム等の素管に、感光性を有する有機感光材を塗布し、感光層を形成したドラム状のものを用いている。但し、無端ベルト状のものを用いても良い。また、帯電装置60としては、帯電バイアスが印加される帯電ローラを感光体40に当接させながら回転させるものを用いている。感光体40に対して非接触で帯電処理を行うスコロトロンチャージャ等を用いてもよい。
現像装置61は、磁性キャリアと非磁性トナーとを含有する二成分現像剤を用いて潜像を現像するようになっている。内部に収容している二成分現像剤を攪拌しながら搬送して現像スリーブ65に供給する攪拌部66と、現像スリーブ65に付着した二成分現像剤のうちのトナーを感光体40K,Y,M,Cに転移させる現像部67とを有している。
攪拌部66は、現像部67よりも低い位置に設けられており、互いに平行配設された2本のスクリュウ68、これらスクリュウ間に設けられた仕切り板、現像ケース70の底面に設けられたトナー濃度センサ71などを有している。
現像部67は、現像ケース70の開口を通して感光体40に対向する現像スリーブ65、これの内部に回転不能に設けられたマグネットローラ72、現像スリーブ65に先端を接近させるドクタブレード73などを有している。ドクタブレード73と現像スリーブ65との間の最接近部における間隔は500[μm]程度に設定されている。現像スリーブ65は、非磁性の回転可能なスリーブ状の形状になっている。また、現像スリーブ65に連れ回らないようにないようされるマグネットローラ72は、例えば、ドクタブレード73の箇所から現像スリーブ65の回転方向にN1、S1、N2、S2、S3の5磁極を有している。これら磁極は、それぞれスリーブ上の二成分現像剤に対して回転方向の所定位置で磁力を作用させる。これにより、攪拌部66から送られてくる二成分現像剤を現像スリーブ65表面に引き寄せて担持させるとともに、スリーブ表面上で磁力線に沿った磁気ブラシを形成する。
磁気ブラシは、現像スリーブ65の回転に伴ってドクタブレード73との対向位置を通過する際に適正な層厚に規制されてから、感光体40に対向する現像領域に搬送される。そして、現像スリーブ65に印加される現像バイアスと、感光体40の静電潜像との電位差によって静電潜像上に転移して現像に寄与する。更に、現像スリーブ65の回転に伴って再び現像部67内に戻り、マグネットローラ72における磁極間の反発磁界の影響によってスリーブ表面から離脱した後、攪拌部66に戻される。攪拌部66内では、トナー濃度センサ71による検知結果に基づいて、二成分現像剤に適量のトナーが補給される。現像スリーブ65は、例えば、直径18[mm]で、表面にサンドブラスト処理や1〜数mmの深さを有する複数の溝の形成処理が施されたもので、表面粗さ(Rz)が10〜30[μm]程度になっている。
なお、現像装置61として、二成分現像剤を用いるものの代わりに、磁性キャリアを含まない一成分現像剤を用いるものを採用してもよい。また、同複写機においては、感光体40の線速を200[mm/sec]、現像スリーブ65の線速を240[mm/sec]としている。また、感光体40として、直径50[mm]のものを用いている。また、感光体40の厚みを30[μm]とし、光学系のビームスポット径を50×60[μm]とし、光量を0.47[mW]としている。また、感光体40の帯電(露光前)電位VOを−700[V]とし、露光後電位VLを−120[V]とし、且つ、現像バイアス電圧を−470[V]としている。即ち、350[V]の現像ポテンシャルで現像を行うようにしている。
現像スリーブ65上のトナーの帯電量は、−10〜−30[μC/g]の範囲が好適である。感光体40と現像スリーブ65の間隙である現像ギャップは、従来と同様に0.8〜0.4[mm]の範囲で設定でき、値を小さくすることで現像効率の向上を図ることが可能である。
感光体クリーニング装置63としては、ポリウレタンゴム製のクリーニングブレード75を感光体40に押し当てる方式のものを用いているが、他の方式のものを用いてもよい。同複写機では、クリーニング性を高める目的で、外周面を感光体40に接触させる接触導電性のファーブラシ76を、図中矢印方向に回転自在に設けたクリーニング装置63が採用されている。そして、ファーブラシ76にバイアスを印加する金属製電界ローラ77が図中矢示方向に回転自在に設けられ、その電界ローラ77にスクレーパ78の先端が押し当てられている。スクレーパ78によって電界ローラ77から除去されたトナーは、回収スクリュ79上に落下して回収される。
かかる構成の感光体クリーニング装置63は、感光体40に対してカウンタ方向に回転するファーブラシ76で、感光体40上の残留トナーを除去する。ファーブラシ76に付着したトナーは、ファーブラシ76に対してカウンタ方向に接触して回転するバイアスを印加された電界ローラ77に取り除かれる。電界ローラ77に付着したトナーは、スクレーパ78でクリーニングされる。感光体クリーニング装置63で回収したトナーは、回収スクリュ79で感光体クリーニング装置63の片側に寄せられ、トナーリサイクル装置80で現像装置61へと戻されて再利用される。
除電装置64は、除電ランプ等からなり、光を照射して感光体40の表面電位を除去する。このようにして除電された感光体40の表面は、帯電装置60によって一様帯電せしめられた後、光書込処理がなされる。
ベルトユニットの図中下方には、2次転写装置22が設けられている。この2次転写装置22は、2つのローラ23間に、2次転写ベルト24を掛け渡して無端移動させている。2つのローラ23のうち、一方は図示しない電源によって2次転写バイアスが印加される2次転写ローラとなっており、ベルトユニットのローラ16との間に中間転写ベルト10と2次転写ベルト24とを挟み込んでいる。これにより、両ベルトが当接しながら当接部で互いに同方向に移動する2次転写ニップが形成されている。レジストローラ対49からこの2次転写ニップに送り込まれた転写紙には、中間転写ベルト10上の4色重ね合わせトナー像が2次転写電界やニップ圧の影響で一括2次転写されて、フルカラー画像が形成される。2次転写ニップを通過した転写紙は、中間転写ベルト10から離間して、2次転写ベルト24の表面に保持されながら、ベルトの無端移動に伴って定着装置25へと搬送される。なお、2次転写ローラに代えて、転写チャージャ等によって2次転写を行わせるようにしてもよい。
2次転写ニップを通過した中間転写ベルト10の表面は、支持ローラ15による支持位置にさしかかる。ここでは、中間転写ベルト10が、おもて面(ループ外面)に当接するベルトクリーニング装置17と、裏面に当接する支持ローラ15との間に挟み込まれる。そして、ベルトクリーニング装置17により、おもて面に付着している転写残トナーが除去された後、K,Y,M,C用の1次転写ニップに順次進入して、次の4色トナー像が重ね合わされる。
ベルトクリーニング装置17は、クリーニング部材として2つのファーブラシ90,91を有している。これらは、直径20[mm]のアクリルカーボン製の起毛が、回転芯体に6.25[D/F、10万本/inch2]の密度で複数植毛されたもので、1×107[Ω]程度の電気抵抗を発揮する。ファーブラシ90,91は、これら複数の起毛をその植毛方向に対してカウンタ方向で中間転写ベルト10に当接させながら回転することで、ベルト上の転写残トナーを機械的に掻き取る。加えて、図示しない電源によってクリーニングバイアスが印加されることで、掻き取った転写残トナーを静電的に引き寄せて回収する。
ファーブラシ90,91に対しては、それぞれ金属ローラ92,93が接触しながら、順または逆方向に回転している。これら金属ローラ92,93のうち、中間転写ベルト10の回転方向上流側に位置する金属ローラ92には、電源94によってマイナス極性の電圧が印加されている。また、下流側に位置する金属ローラ93には、電源95によってプラス極性の電圧が印加される。そして、それらの金属ローラ92,93には、それぞれブレード96,97の先端が当接している。かかる構成では、中間転写ベルト10の図中矢印方向への無端移動に伴って、まず、上流側のファーブラシ90が中間転写ベルト10表面をクリーニングする。このとき、例えば金属ローラ92に−700[V]が印加されながら、ファーブラシ90に−400[V]が印加されると、まず、中間転写ベルト10上のプラス極性のトナーがファーブラシ90側に静電転移する。そして、ファーブラシ側に転移したトナーが更に電位差によってファーブラシ90から金属ローラ92に転移して、ブレード96によって掻き落とされる。
このようにして中間転写ベルト10上のトナーがファーブラシ90によって除去されるが、中間転写ベルト10上にはまだ多くのトナーが残っている。それらのトナーは、ファーブラシ90に印加されるマイナス極性のバイアスにより、マイナスに帯電される。これは、電荷注入または放電により帯電されるものと考えられる。次いで下流側のファーブラシ91を用いて今度はプラス極性のバイアスを印加してクリーニングを行うことにより、それらのトナーを除去することができる。除去したトナーは、電位差によりファーブラシ91から金属ローラ93に転移させ、ブレード97により掻き落とす。ブレード96、97で掻き落としたトナーは、図示しないタンクに回収される。
ファーブラシ91でクリーニングされた後の中間転写ベルト10表面は、ほとんどのトナーが除去されているがまだ少しのトナーが残っている。これらの中間転写ベルト10上に残ったトナーは、上述したようにファーブラシ91に印加されるプラス極性のバイアスにより、プラス極性に帯電される。そして、1次転写位置で印加される転写電界によって感光体40K,Y,M,C側に転写され、感光体クリーニング装置63で回収される。
レジストローラ対49は一般的には接地されて使用されることが多いが、転写紙Pの紙粉除去のためにバイアスを印加することも可能である。例えば、導電性ゴムローラを用いバイアスを印加する。直径18[mm]で、表面を1[mm]厚みの導電性NBRゴムとする。電気抵抗はゴム材の体積抵抗で10×109[Ω・cm]程度であり、印加電圧はトナーを転写する側(表側)には−800[V]程度の電圧が印加されている。また、紙裏面側は+200[V]程度の電圧が印加されている。
一般的に中間転写方式は紙粉が感光体にまで移動しづらいため、紙粉転写を考慮する必要が少なくアースになっていても良い。また、印加電圧として、DCバイアスが印加されているが、これは転写紙Pをより均一帯電させるためDCオフセット成分を持ったAC電圧でも良い。このようにバイアスを印加したレジストローラ対49を通過した後の紙表面は、若干マイナス側に帯電している。よって、中間転写ベルト10から転写紙Pへの転写では、レジストローラ対49に電圧を印加しなかった場合に比べて転写条件が変わり転写条件を変更する場合がある。
なお、同複写機は、2次転写装置22および定着装置25の下に、上述したタンデム部20と平行に延びるような、転写紙反転装置28(図31参照)を備えている。これにより、片面に対する画像定着処理を終えた転写紙が、切換爪で転写紙の進路を転写紙反転装置側に切り換えられ、そこで反転されて再び2次転写転写ニップに進入する。そして、もう片面にも画像の2次転写処理と定着処理とが施された後、排紙トレイ上に排紙される。
また、同複写機は、その構成要素の状態や、内部で生ずる現象に関連する様々な情報を取得する情報取得手段を備えている。この情報取得手段は、図34に示される制御部1、各種センサ2、操作表示部3などから構成されている。制御部1は、複写機全体の制御を司る制御手段であり、制御プログラムを記憶している情報記憶手段たるROM1c、演算データや制御パラメータ等を記憶する情報記憶手段たるRAM1b、演算手段たるCPU1a等を有している。操作表示部3は、文字情報等を表示する液晶ディスプレイ等から構成される図示しない表示部、テンキー等などによって操作者から入力情報を受け付けて制御部1に送る図示しない操作部などを有している。かかる構成の情報取得手段によって取得され得る情報としては、センシング情報、制御パラメータ情報、入力情報、画像読取情報などが挙げられる。
次に、複写機等の画像形成装置内において情報取得手段によって取得され得る各種の情報について詳述する。
(a)センシング情報
センシング情報としては、駆動関係、記録媒体の各種特性、現像剤特性、感光体特性、電子写真の各種プロセス状態、環境条件、記録物の各種特性などが取得する対象として考えられる。これらのセンシング情報の概要を説明すると、以下のようになる。
(a-1)駆動の情報
・感光体ドラムの回転速度をエンコーダーで検出したり、駆動モータの電流値を読み取ったり、駆動モータの温度を読み取る。
・同様にして、定着ローラ、紙搬送ローラ、駆動ローラなどの円筒状またはベルト状の回転する部品の駆動状態を検出する。
・駆動により発生する音を装置内部または外部に設置されたマイクロフォンで検出する。
(a-2)紙搬送の状態
・透過型または反射型の光センサ、あるいは接触タイプのセンサにより、搬送された紙の先端・後端の位置を読み取り、紙詰まりが発生したことを検出したり、紙の先端・後端の通過タイミングのずれや、送り方向と垂直な方向の変動を読み取る。
・同様に、複数のセンサ間の検出タイミングにより、紙の移動速度を求める。
・給紙時の給紙ローラと紙とのスリップを、ローラの回転数計測値と紙の移動量との比較で求める。
(a-3)紙などの記録媒体の各種特性
この情報は、画質やシート搬送の安定性に大きく影響する。この紙種の情報取得には以下のような方法がある。
・紙の厚みは、紙を二つのローラで挟み、ローラの相対的な位置変位を光学センサ等で検知したり、紙が進入してくることによって押し上げられる部材の移動量と同等の変位量を検知することによって求める。
・紙の表面粗さは、転写前の紙の表面にガイド等を接触させ、その接触によって生じる振動や摺動音等を検知する。
・紙の光沢は、規定された入射角で規定の開き角の光束を入射し、鏡面反射方向に反射する規定の開き角の光束をセンサで測定する。
・紙の剛性は、押圧された紙の変形量(湾曲量)を検知することにより求める。
・再生紙か否かの判断は、紙に紫外線を照射してその透過率を検出して行なう。
・裏紙か否かの判断は、LEDアレイ等の線状光源から光を照射し、転写面から反射した光をCCD等の固体撮像素子で検出して行なう。
・OHP用のシートか否かは、用紙に光を照射し、透過光と角度の異なる正反射光を検出して判断する。
・紙に含まれている水分量は、赤外線またはμ波の光の九州を測定することにより求める。
・カール量は光センサ、接触センサなどで検出する。
・紙の電気抵抗は、一対の電極(給紙ローラなど)を記録紙と接触させて直接測定したり、紙転写後の感光体や中間転写体の表面電位を測定して、その値から記録紙の抵抗値を推定する。
(a-4)現像剤特性
現像剤(トナー・キャリア)の装置内での特性は、電子写真プロセスの機能の根幹に影響するものである。そのため、システムの動作や出力にとって重要な因子となる。現像剤の情報を得ることは極めて重要である。この現像剤特性としては、例えば次のような項目が挙げられる。
・トナーについては、帯電量およびその分布、流動性・凝集度・嵩密度、電気抵抗、外添剤量、消費量または残量、流動性、トナー濃度(トナーとキャリアの混合比)を挙げることができる。
・キャリアについては、磁気特性、コート膜厚、スペント量などを挙げることができる。
なお、これらの項目を画像形成装置の中でそれぞれ単独で検出することは通常困難である。そこで、現像剤の総合的な特性として検出するとよい。この総合的な特性は、例えば次のように測定することができる。
・感光体上にテスト用潜像を形成し、予め決められた現像条件で現像して、形成されたトナー像の反射濃度(光反射率)を測定する。
・現像装置中に一対の電極を設け、印加電圧と電流の関係を測定する(抵抗、誘電率など)。
・現像装置中にコイルを設け、電圧電流特性を測定する(インダクタンス)。
・現像装置中にレベルセンサを設けて、現像剤容量を検出する。レベルセンサは光学式、静電容量式などがある。
(a-5)感光体特性
感光体特性も現像剤特性と同じく、電子写真プロセスの機能と密接に関わる。この感光体特性の情報としては、感光体の膜厚、表面特性(摩擦係数、凹凸)、表面電位(各プロセス前後)、表面エネルギー、散乱光、温度、色、表面位置(フレ)、線速度、電位減衰速度、抵抗・静電容量、表面水分量などが挙げられる。このうち、画像形成装置の中では、次のような情報を検出できる。
・膜厚変化に伴う静電容量の変化を、帯電部材から感光体に流れる電流を検知し、同時に帯電部材への印加電圧と予め設定された感光体の誘電厚みに対する電圧電流特性と照合することにより、膜厚を求める。
・表面電位、温度は従来周知のセンサで求めることができる。
・線速度は感光体回転軸に取りつけられたエンコーダーなどで検出される。
・感光体表面からの散乱光は光センサで検出される。
(a-6)電子写真プロセス状態
電子写真方式によるトナー像形成は、周知のように、感光体の均一帯電、レーザー光などによる潜像形成(像露光)、電荷を持ったトナー(着色粒子)による現像、転写材へのトナー像の転写(カラーの場合は中間転写体または最終転写材である記録媒体での重ね合わせ、または現像時に感光体への重ね現像を行なう)、記録媒体へのトナー像の定着という順序で行なわれる。これらの各段階での様々な情報は、画像その他のシステムの出力に大きく影響を与える。これらを取得することがシステムの安定を評価する上で重要となる。この電子写真プロセス状態の情報取得の具体例としては、次のようなものが挙げられる。
・帯電電位、露光部電位は従来公知の表面電位センサにより検出される。
・非接触帯電における帯電部材と感光体とのギャップは、ギャップを通過させた光の量を測定することにより検知する。
・帯電による電磁波は広帯域アンテナにより捉える。
・帯電による発生音
・露光強度
・露光光波長
(a-7)形成されたトナー像の特性
・パイルハイト(トナー像の高さ)を、変位センサで縦方向から奥行きを、平行光のリニアセンサで横方向から遮光長を計測して求める。
・トナー帯電量を、ベタ部の静電潜像の電位、その潜像が現像された状態での電位を測定する電位センサにより測定し、同じ箇所の反射濃度センサから換算した付着量との比により求める。
・ドット揺らぎまたはチリを、ドットパターン画像を感光体上においては赤外光のエリアセンサ、中間転写体上においては各色に応じた波長のエリアセンサで検知し、適当な処理をすることにより求める。
・オフセット量(定着後)を、記録紙上と定着ローラ上の対応する場所をそれぞれ光学センサで読み取って、両者比較することにより求める。
・転写工程後(PD上,ベルト上)に光学センサを設置し,特定パターンの転写後の転写残パターンからの反射光量で転写残量を判断する。
・重ね合わせ時の色ムラを定着後の記録紙上を検知するフルカラーセンサで検知する。
・画像濃度、色は光学的に検知する(反射光、透過光のいずれでもよい。色によって投光波長を選択する)。濃度及び単色情報を得るには感光体上または中間転写体上でよいが、色ムラなど,色のコンビネーションを測るには紙上の必要がある。
・階調性は、階調レベルごとに感光体上に形成されたトナー像または転写体に転写されたトナー像の反射濃度を光学センサにより検出する。
・鮮鋭性は、スポット径の小さい単眼センサ、若しくは高解像度のラインセンサを用いて、ライン繰り返しパターンを現像または転写した画像を読み取ることにより求める。
・粒状性(ざらつき感)は、鮮鋭性の検出と同じ方法により、ハーフトーン画像を読み取り、ノイズ成分を算出することにより求める。
・レジストスキューは、レジスト後の主走査方向両端に光学センサを設け、レジストローラONタイミングと両センサの検知タイミングとの差異から求める。
・色ずれは、中間転写体または記録紙上の重ね合わせ画像のエッジ部を、単眼の小径スポットセンサ若しくは高解像度ラインセンサで検知する。
・バンディング(送り方向の濃度むら)は、記録紙上で小径スポットセンサ若しくは高解像度ラインセンサにより副走査方向の濃度ムラを測定し、特定周波数の信号量を計測する。
・光沢度(むら)は、均一画像が形成された記録紙を正反射式光学センサで検知するように設ける。
・かぶりは、感光体上、中間転写体上、または記録紙上において、比較的広範囲の領域を検知する光学センサで画像背景部を読み取る方法、または高解像度のエリアセンサで背景部のエリアごと画像情報を取得し、その画像に含まれるトナー粒子数を数えるという方法がある。
(a-8)画像形成装置のプリント物の物理的な特性
・像流れ・かすれなどは、感光体上、中間転写体、あるいは記録紙上でトナー像をエリアセンサにより検知し、取得した画像情報を画像処理して判定する。
・チリは記録紙上の画像を高解像度ラインセンサまたはエリアセンサで取り込み、パターン部の周辺に散っているトナー量を算定することにより求める。
・後端白抜け、ベタクロス白抜けは、感光体上、中間転写体、あるいは記録紙上で高解像度ラインセンサにより検知する。
・カール・波打ち・折れは、変位センサで検出する。折れの検出のためには記録紙の両端部分に近い所にセンサを設置することが有効である。
・コバ面の汚れやキズは、排紙トレイに縦に設けたエリアセンサにより,ある程度排紙が溜まった時のコバ面をエリアセンサで撮影,解析する。
(a-9)環境状態
・温度検出には、異種金属どうし或いは金属と半導体どうしを接合した接点に発生する熱起電力を信号として取り出す熱電対方式、金属或いは半導体の抵抗率が温度によって変化することを利用した抵抗率変化素子、また、或る種の結晶では温度が上昇したことにより結晶内の電荷の配置に偏りが生じ表面に電位発生する焦電型素子、更には、温度による磁気特性の変化を検出する熱磁気効果素子などが採用できる。
・湿度検出には、H2O或いはOH基の光吸収を測定する光学的測定法、水蒸気の吸着による材料の電気抵抗値変化を測定する湿度センサ等がある
・各種ガスは、基本的にはガスの吸着に伴う、酸化物半導体の電気抵抗の変化を測定することにより検出する。
・気流(方向、流速、ガス種)の検出には、光学的測定法等があるが、システムへの搭載を考慮するとより小型にできるエアブリッジ型フローセンサが特に有用である。
・気圧・圧力の検出には、感圧材料を使用する、メンブレンの機械的変位を測定する等の方法がある。振動の検出にも同様に方法が用いられる。
(b)制御パラメータ情報
画像形成装置の動作は制御部によって決定されるため、制御部の入出力パラメータを直接利用することが有効である。
(b-1)画像形成パラメータ
画像形成のために制御部が演算処理により出力する直接的なパラメータで、以下のような例がある。
・制御部によるプロセス条件の設定値で、例えば帯電電位、現像バイアス値、定着温度設定値など
・同じく、中間調処理やカラー補正などの各種画像処理パラメータの設定値
・制御部が装置の動作のために設定する各種のパラメータで、例えば紙搬送のタイミング、画像形成前の準備モードの実行時間など
(b-2)ユーザー操作履歴
・色数、枚数、画質指示など、ユーザーにより選択された各種操作の頻度
・ユーザーが選択した用紙サイズの頻度
(b-3)消費電力
・全期間または特定期間単位(1日、1週間、1ヶ月など)の総合消費電力あるいはその分布、変化量(微分)、累積値(積分)
(b-4)消耗品消費情報
・全期間または特定期間単位(1日、1週間、1ヶ月など)のトナー、感光体、紙の使用量あるいはその分布、変化量(微分)、累積値(積分)
(b-5)故障発生情報
・全期間または特定期間単位(1日、1週間、1ヶ月など)の故障発生(種類別)の頻度あるいはその分布、変化量(微分)、累積値(積分)
(c)入力画像情報
ホストコンピュータから直接データとして送られる画像情報、あるいは原稿画像からスキャナーで読み取って画像処理をした後に得られる画像情報から、以下のような情報を取得することができる。
・着色画素累積数はGRB信号別の画像データを画素ごとにカウントすることにより求められる。
・例えば特許第2621879号の公報に記載されているような方法でオリジナル画像を文字・網点・写真・背景に分離し、文字部、ハーフトーン部などの比率を求めることができる。同様にして色文字の比率も求めることができる。
・着色画素の累積値を主走査方向で区切った領域別にカウントすることにより、主走査方向のトナー消費分布が求められる。
・画像サイズは制御部が発生する画像サイズ信号または画像データでの着色画素の分布により求められる。
・文字の種類(大きさ、フォント)は文字の属性データから求められる。
以上に掲げた各種の情報は、一般的な画像形成装置内において公知の技術によって取得し得るものである。これまで説明してきた複写機の情報取得手段は、少なくとも次に掲げる(1)〜(12)の情報を取得することができる。
(1)温度
同複写機は、温度の情報を取得する温度センサとして、原理及び構造が簡単でしかも超小型にできる抵抗変化素子を用いるものを備えている。
(2)湿度
小型にできる湿度センサが有用である。基本原理は感湿性セラミックスに水蒸気が吸着すると、吸着水によりイオン伝導が増加しセラミックスの電気抵抗が低下することによる。感湿性セラミックスの材料は多孔質材料であり、一般的にはアルミナ系、アパタイト系、ZrO2−MgO系などが使用される。
(3)振動
振動センサは、基本的には気圧及び圧力を測定するセンサと同じであり、システムへの搭載を考慮すると超小型にできるシリコン利用のセンサが特に有用である。薄いシリコンのダイアフラム上に作製した振動子の運動を、振動子と対向して設けられた対向電極間との容量変化を計測する、或いはSiダイアフラム自体のピエゾ抵抗効果を利用して計測することができる。
(4)トナー濃度(4色分)
各色ごとにトナー濃度を検出する。トナー濃度センサとしては従来より公知の方式のものを用いることができる。例えば、特開平6−289717号公報に記載されているような現像装置中の現像剤の透磁率の変化を測定するセンシングシステムにより、トナー濃度を検出することができる。
(5)感光体一様帯電電位(4色分)
各色用の感光体(40K,Y,M,C)について、それぞれ公知の電位センサ等によって一様帯電電位を検出する。
(6)感光体露光後電位(4色分)
光書込後の感光体(40K,Y,M,C)の表面電位を、(5)と同様にして検出する。
(7)着色面積率(4色分)
入力画像情報から、着色しようとする画素の累計値と全画素の累計値の比から着色面積率を色ごとに求め、これを利用する。
(8)現像トナー量(4色分)
感光体(40K,Y,M,C)上で現像された各色トナー像における単位面積あたりのトナー付着量を、反射型フォトセンサによる光反射率に基づいて求める。反射型フォトセンサは対象物にLED光を照射し、反射光を受光素子で検出するものである。トナー付着量と光反射率とには相関関係が成立するため、光反射率に基づいてトナー付着量を求めることができる。
(9)紙先端位置の傾き
給紙部(200)の給紙ローラから2次転写ニップに至る給紙経路のどこかに、転写紙をその搬送方向に直交する方向の両端で検知する光センサ対を設置し、搬送されてくる転写紙の先端付近の両端を検出する。両光センサについて、給紙ローラの駆動信号の発信時を基準として、通過までの時間を計測し、時間のズレに基づいて送り方向に対する転写紙の傾きを求める。
(10)排紙タイミング
排出ローラ対(図31の56)を通過後の転写紙を光センサで検出する。この場合も給紙ローラの駆動信号の発信時を基準として計測する。
(11)感光体総電流(4色分)
感光体(40K,Y,M,C)からアースに流れ出る電流を検出する。感光体の基板と接地端子との間に、電流測定手段を設けることで、かかる電流を検出することができる。
(12)感光体駆動電力(4色分)
感光体の駆動源(モータ)が駆動中に費やす駆動電力(電流×電圧)を電流計や電圧計などによって検出する。
次に、異常判定装置の第1参考形態について説明する。
本第1参考形態においては、まず、本異常判定装置の基本的な構成について説明する。この異常判定装置は、これまで説明してきた同複写機を被検対象にして、その内部における異常の発生の有無を判定するものである。
図35は、本第1参考形態に係る異常判定装置における電気回路の要部を示すブロック図である。同図において、本異常判定装置は、事物の情報を取得する情報取得手段たる情報取得部501、異常判定手段たる異常判定部502、情報記憶手段たる情報記憶部503、データ入力手段たるデータ入力部504等を備えている。また、異常判定手段による判定結果を出力する判定結果出力手段たる判定結果出力部505も備えている。
情報取得部501は、上述した(1)〜(12)の情報を被検対象たる図示しない同複写機から取得するものである。この情報取得部501によって取得された(1)〜(12)の情報は、異常判定部502に送られる。異常判定部502は、異常の判定に必要な各種の演算を行うための演算手段(図示の例ではCPU501a)を有している。そして、情報取得部501から送られてきた情報を異常判定のための演算処理にそのまま使用したり、情報記憶部503に記憶させた後に使用したりする。具体的には、情報取得部501から送られてくる(1)〜(12)の情報に基づいて所定の計算を実施し、その計算結果と、情報記憶部503に記憶されている所定の閾値との比較結果に基づいて、同複写機内における異常の有無を判定する。
異常判定部502による判定結果は、判定結果出力部505によって出力される。この出力とは、判定結果を同複写機のユーザーに認識させるための印字出力、画像表示出力、音声出力などの他、判定結果情報をパーソナルコンピュータやプリンタなどといった外部の何らかの装置に出力する態様も含む概念である。かかる出力により、異常判定部502による判定結果が、同複写機のユーザーや、遠隔地にいるサービスマンなどに認識される。なお、情報取得部501は、RAM、ROM、ハードディスク等から構成され、情報取得部501によって取得された各種の情報の他、例えば制御プログラムやアルゴリズムなどの情報も記憶している。また、データ入力部504は、後述する閾値を情報記憶部503に記憶させるためのデータ入力を受け付けるものであり、これによって受け付けられた閾値のデータは、異常判定部502を介して情報記憶部503に送られる。
次に、本第1参考形態に係る異常判定装置の特徴的な構成について説明する。
異常判定部502は、同複写機内における異常として、複数種類の異常を包括した総合異常と、それら複数種類の異常のそれぞれである複数の個別異常とを判定するように構成されている。具体的には、複数の個別異常として、紙詰まり系、感光体劣化系、画像濃度変動系の3つの異常を、それぞれ判定する。総合異常は、これら3つの個別異常を包括したものである。
3つの個別異常の判定の際には、それぞれ、その個別異常に対応する個別異常用閾値を情報記憶部503から読み込んで、それと上述の計算結果とを比較して行う。これらの個別異常用閾値は、それぞれデータ入力手段たるデータ入力部504に対するデータ入力よって情報記憶部503に記憶されたものである。
このような構成の本異常判定装置では、3つの個別異常を包括した総合異常を検出したときにだけ、各個別異常の有無を判定することにより、判定の度に各個別異常の有無をそれぞれ確認することによる制御の煩雑化を抑えることができる。また、総合異常を検出した場合には、その総合異常に包括される3つの個別異常のうちのどれを検出したのかを特定する。そして、この特定により、総合異常の検出後後におけるメンテナンス対応の煩雑化とを抑えることができる。
また、本異常判定装置では、3つの個別異常の有無の判定のためにそれぞれ個別に使用する3つの個別異常用閾値を、データ入力手段への入力操作により、サービスマンやユーザーが初期設定したり、ユーザーが更新したりする。このような初期設定や更新により、各個別異常の有無を個々のユーザーに応じた精度で判定することができるようになる。
本異常判定装置については、被検対象である同複写機と一体に構成して同複写機の一部として機能させてもよいし、同複写機と別体で構成して同複写機から転送される(1)〜(12)の情報に基づいて異常の有無を判定させるようにしてもよい。
後者の場合、即ち、本異常判定装置を同複写機と別体で構成した場合には、図36に示すように、1つの異常判定装置500を用いて複数の複写機600をそれぞれ遠隔地で一括管理することが可能である。また、図37に示すように、社内LANやイントラネットなどと呼ばれるネットワーク上にて、複数のパーソナルコンピュータ700に繋げられた複数の複写機600を、通信回線を介して1つの異常判定装置500で一括管理することも可能である。これらのようにしてうに一括管理する場合であっても、データ入力部504として、通信回線を介して送られてくる個別異常用閾値のデータ入力を受け付けるものを用いれば、遠隔地にいるユーザーに対して本異常判定装置への個別異常用閾値のデータ入力を行わせることができる。また、判定結果出力部505として、通信回線を介して判定結果を出力するものを用いれば、それぞれ異なる遠隔地に設置された各複写機に対して、判定結果を送信してそれぞれのユーザーに報知することもできる。通信回線としては、有線、無線の何れでもよく、電気回線のほか光ファイバーを用いたものなど、あらゆる形態のものを使用することができる。なお、本異常判定装置を同複写機と別体で構成する場合には、同複写機内にある制御部、各種センサ、操作表示部(図34の1、2、3)等によって構成される情報取得手段が、本異常判定装置の情報取得部501として機能するのではない。有線又は無線からなる通信回線を通じて同複写機から送られてくる各種の情報を受信する受信手段が、本異常判定装置の情報取得部501として機能することになる。
一方、前者の場合、即ち、図38に示すように異常判定装置500を複写機600と一体に構成して複写機600の一部として機能させた場合には、複写機600の情報取得手段が異常判定装置500の情報取得手段としても機能する。具体的には、図34に示した制御部1、各種センサ2、操作表示部3等によって構成される情報取得手段が、本異常判定装置の情報取得部501として機能する。この場合、同複写機の制御部1を、本異常判定装置の異常判定部(図35の502)や情報記憶部(図35の503)として兼用してもよい。更には、同複写機の操作表示部3を、本異常判定装置のデータ入力部(図35の504)や判定結果出力部(図35の505)として兼用してもよい。判定結果出力部として、通信回線を介して判定結果を出力するものを用いれば、同複写機内における異常の発生を遠隔地の修理サービス機関に自動で知らせることができる。
以上のように、本異常判定装置を同複写機に対して一体、別体の何れの構成にしてもよいが、以下、一体に構成した場合を例にして説明することにする。
本異常判定装置は、情報取得部501によって取得した複数種類の情報((1)〜(12))からなる組情報に基づいて、MTS法によるマハラノビスの距離を求めて、上述した総合異常や個別異常の有無を判定するようになっている。そして、かかる判定を実現すべく、予め取得された正常組データ群を情報記憶部503内に記憶している。また、異常判定部502が、この正常組データ群と、上述した(1)〜(12)の情報の全て又は一部の組合せからなる組情報とに基づいて、マハラノビスの距離を求めるようになっている。
マハラノビスの距離を求めるためには、異常の判定に先立って、上記正常組データ群や、これの逆行列を予め構築しておく必要がある。次に示す表4は、異常のない状態の同複写機から取得された(1)〜(12)の情報に基づいて上記正常組データ群を構築するための、正常データ取得工程に用いられる取得データテーブルを示している。この取得データテーブルでは、k種類の情報からなる組情報をn組取得する例を示している。なお、この正常データ取得工程における(1)〜(12)の情報の取得は、異常を判定するために行われる情報取得工程ではなく、あくまでも、上記正常組データ群を構築するために行われる工程である。異常を判定するために行われる情報取得工程は、この正常データ取得工程によって上記正常組データ群が既に構築されている状態で実施される。
正常データ取得工程は、異常のない状態で実運転される同複写機から、(1)〜(12)の情報の組合せを正常な組情報として、複数組取得されることによって行われる。データの取得対象となる同複写機としては、工場から出荷される複数の複写機製品に共通する1つの正常組データ群を取得するための標準機を用いても良いし、各複写機製品をそれぞれ実運転して専用の正常組データ群を個別に取得してもよい。
正常データ取得工程においては、まず、1組目の組情報を構成するk種類の情報(y11、y12・・・・・・y1k)がそれぞれ同複写機の情報取得手段によって取得される。そして、テーブル内の1行目のデータとして、表4の取得データテーブルに格納される。次いで、2組目の組情報を構成するk種類の情報(y21、y22・・・・・・y2k)がそれぞれ情報取得手段によって取得され、テーブル内の2行目のデータとして、それぞれ取得データテーブルに格納される。以降、3組目からn組目までの組情報が同様に取得されて、テーブル内の3行目・・・n行目のデータとして、それぞれ取得データテーブルに格納される。そして、最後に、各組情報を構成するk種類の情報について、それぞれn個における平均と標準偏差(σ)とが求められて、それぞれn+1、n+2行目のデータとして、取得データテーブルに格納される。このようにして、構築された取得データテーブル内のデータが、上記正常組データ群として用いられる。
このようにして正常データ取得工程が終わると、次に、正規化データテーブルを構築するための情報正規化工程が実施される。次に示す表5は、この情報正規化工程にて構築される正規化データテーブルを示しており、これは表4に示した取得データテーブルに基づいて構築される。
データの正規化とは、各種情報の絶対値情報を変量情報に変換するための処理であり、次に示す関係式に基づいて、各種情報の正規化データが算出される。なお、次式におけるiは、n組の組情報のうちの何れか1つであることを示す符号である。また、jは、k種類の情報のうちの何れか1つであることを示す符号である。
情報正規化工程が終わると、次に、相関係数算出工程が行われる。この相関係数算出工程では、n組の正規化データ群において、それぞれk種類の正規化データのうち、互いに異なる2種類が成立し得る全ての組合せ(
kC
2通り)について、次式に基づいて相関係数r
pq(r
qp)が算出される。
全ての組合せについての相関係数r
pq(r
qp)が算出されると、次に、対角要素を1、その他のp行q列の要素を相関係数r
pqとした、k×k個の相関係数行列Rが構築される。なお、この相関係数行列Rの内容を、次式に示す。
このような相関係数算出工程が終わると、次に、行列変換工程が実施される。この行列変換工程により、上記数9で示した相関係数行列Rが、次式で示される逆行列A(R
−1)に変換される。
図39は、正常データ取得工程から行列変換工程までの一連のプロセスを示すフローチャートである。同図において、まず、複写機の状態と関連があるk個の情報が、複写機を動作させながらn組取得される(ステップ1−1:以下、ステップをSと記す)。次に、情報の種類(j)毎に、上記数7の関係式に基づいた平均値と標準偏差σとが算出され、算出結果に基づいて正規化データテーブルが構築される(S1−2)。そして、正規化データテーブルに基づいて相関係数行列Rが構築された後(S1−3)、逆行列Aに変換される(S1−4)。
以上のような正常データ取得工程、情報正規化工程、相関係数算出工程、行列変換工程という一連の工程によって逆行列Aを構築するのであるが、これらの工程の全て又は一部を本異常判定装置に実施させることも可能である。全てを実施させる場合には、工場出荷時の同複写機の情報記憶手段に、上記正常組データ群を予め記憶させておく必要は必ずしもない。出荷先において、異常を発生していない可能性が極めて高い初期運転時に、(1)〜(12)の情報を正常な組情報として取得させて上記正常組データ群や逆行列Aを構築させることができるからである。出荷直後の複写機製品は検品が終わったばかりの正常なものであるので、初期運転時における各種情報の取得結果を正常値として取り扱うことができる。上述の一連の工程を何れも本異常判定装置に実施させない場合には、工場出荷時の同複写機の情報記憶手段に、逆行列Aを予め記憶させておく必要がある。そして、予め記憶させておく逆行列Aとしては、上述の標準機から取得した正常組データ群に基づいて構築したものを各複写機製品に共通に用いてもよいし、複写機製品毎に個別に正常組データ群を取得して構築したものでもよい。なお、上記正常組データ群を予め記憶させておき、その正常組データ群から上記逆行列Aの変換を本異常判定装置に実施させるようにしてもよい。
上述のように、正常組データ群としては、標準機から取得されたものを各複写機製品に対して共通に用いてもよいし、各複写機製品をそれぞれ実運転して専用の正常組データ群を個別に取得してもよい。後者の場合には、異常の判定に用いる各種情報の正常値が各種部品の精度誤差などによって製品毎にばらついてしまうことによる判定精度の悪化を回避することができる。更に、工場出荷後の初期運転時に正常組データ群を取得させるように異常判定装置を構成すれば、出荷前に工場で製品毎の試運転を行ってそれぞれの正常組データ群を取得するという手間によるコストアップを回避することもできる。
正常組データ群をどのように取得するにしても、異常を判定する際の本異常判定装置の情報記憶部503には、上述のようにして構築された逆行列Aが記憶されている。そして、異常判定部502は、情報取得部501によって取得された(1)〜(12)の全てからなる全種組情報と、逆行列Aと、次式とに基づいて、マハラノビスの距離(以下、マハラノビス距離という)Dを算出する。
図40は、マハラノビス距離Dを算出する手順を示すフローチャートである。この手順では、まず、任意の状態でのk種類のデータx1,x2,・・・,xkが取得される(S2−1)。データの種類はy11,y12,・・・,y1kなどに対応する。次に、上記数7の関係式に基づいて、それぞれの取得データがX1,X2,・・・,Xkといった具合に規格化される。そして、すでに構築されている逆行列Aの要素akkを用いて決められた上記数11の関係式により、マハラノビス距離Dの二乗が算出される。図中の「Σ」は、添字pおよびqに関する総和を表している。なお、同複写機においては、上述した(1)〜(12)の情報が取得され、これらのうち、(4)〜(8)、(11)及び(12)の情報は4色分(4種類)あるので、xkにおけるkは、5+7×4=33[種類]となる。
異常判定部502は、このようにして求めた全種組情報(33種類の情報からなる組情報)についてのマハラノビス距離Dを、総合異常用閾値と比較して総合異常の有無を判定する。マハラノビス距離Dは、「1」よりも大きくなるほど被検データが正常から遠ざかっていることを示す。よって、マハラノビス距離Dが総合異常用閾値を超えた場合には、総合異常が「有り」と判定される。
本異常判定装置は、総合異常を「有り」判定した場合には、次に、その総合異常に包括される3つの個別異常(紙詰まり系、感光体劣化系、画像濃度変動系)について、それぞれ有無を判定する。次に示す表6は、同複写機における各個別異常と、それらの有無の判定に必要な組情報との関係の一例を示すテーブルである。
表6に示すように、紙詰まり系の異常については、上述した(1)から(12)までの12項目33種類(5項目+7項目×4色分)の情報のうち、次の7項目13種類の情報からなる組情報に基づいて判定することができる。即ち、(1)温度、(2)湿度、(3)振動、(7)着色面積率×4色分、(8)現像トナー量×4色分、(9)紙先端位置の傾き、及び(10)排紙タイミングである。以下、この組情報を第1組情報という。
また、感光体劣化系の異常については、次の7項目22種類の情報からなる組情報に基づいて判定することができる。即ち、(1)温度、(2)湿度、(5)感光体一様帯電電位×4色分、(6)感光体露光後電位×4色分、(7)着色面積率×4色分、(11)感光体総電流×4色分、及び(12)感光体駆動電力×4色分である。以下、この組情報を第2組情報という。
また、画像濃度変動系の異常は、次の7項目22種類の組情報に基づいて判定することができる。即ち、(1)温度、(2)湿度、(4)トナー濃度×4色分、(5)感光体一様帯電電位×4色分、(6)感光体露光後電位×4色分、(7)着色面積率×4色分、及び(8)現像トナー量×4色分である。以下、この組情報を第3組情報という。
表6から明らかなように、第1、第2、第3組情報は、情報の組合せが互いに異なっている。これは、異常の種類が異なれば、異常の判定に有用な情報の組合せも異なってくるからである。表6の例では、第1、第2、第3組情報のそれぞれについてマハラノビス距離Dを求めることで、発生した異常の種類を絞り込むことができる。そこで、本異常判定装置は、総合異常を「有り」と判断した場合には、第1、第2、第3組情報に基づいて、それぞれマハラノビス距離Dを求める。そして、それぞれ求めたマハラノビス距離Dを個別異常用閾値と比較して、紙詰まり系、感光体劣化系、画像濃度変動系の異常の有無を判定する。なお、個別異常である紙詰まり系、感光体劣化系、画像濃度変動系の異常をそれぞれ個別に判定するための各個別異常用閾値は、それぞれ上述した総合異常用閾値とは値が異なるのが一般的である。よって、第1、第2、第3組情報のそれぞれに基づいて求められた3つのマハラノビス距離Dは、それぞれ個別に対応する紙詰まり系用、感光体劣化系用、画像濃度変動用の個別異常用閾値と比較される。
これら3つのマハラノビス距離Dをそれぞれ求めるためには、同複写機から取得した第1、第2、第3組情報の他に、それらと同じ組合せの逆行列Aがそれぞれ必要になる。例えば同表の例であれば、第1、第2、第3組情報のそれぞれについて、12項目33種類(5項目+7項目×4色分)の情報からなる逆行列Aを共通に用いてしまうと、異常を正確に判定することができなくなる。第1組情報であれば、それと同じ7項目13種類の情報からなる逆行列Aを用いて、マハラノビス距離Dを求める必要がある。よって、判定に先立って、カテゴリ毎に、マハラノビス距離Dを求めるための逆行列Aを準備する必要がある。
それぞれの組情報のための逆行列Aを準備する方法は、大別して2通りある。第1の方法は、それぞれ専用の逆行列Aを構築しておく方法である。第2の方法は、各組情報に含まれる全種類の情報からなる全種組情報についての逆行列Aだけを記憶させておく方法である。この方法の場合には、第1、第2、第3組情報のための個別の逆行列Aを、全種組情報の集合からなる逆行列Aの中から選択した任意の正常値の組合せに基づいてそれぞれ構築することになる。例えば、表6の例であれば、全種組情報(12項目33種類)の集合からなる逆行列Aだけを記憶させておく。そして、紙詰まり系に対応する第1組情報の集合からなる逆行列Aについては、全種組情報の中から7項目13種類の情報を選択して構築するのである。かかる方法では、第1の方法に比べて、情報記憶部503に記憶させて置く情報量を少なくすることができる。
なお、総合異常だけでなく、各個別異常もマハラノビス距離Dに基づいて判定する例について説明したが、各個別異常については、マハラノビス距離Dとは異なる他の計算結果を用いるようにしてもよい。
本異常判定装置では、サービスマンやユーザーがユーザーの情報に応じて、データ入力部504に対して紙詰まり系用、感光体劣化系用、画像濃度変動用の3つの個別異常用閾値をそれぞれ入力して、初期設定したり更新したりすることが可能である。3つの個別異常用閾値にそれぞれ反映させるユーザーの情報としては、同複写機のメンテナンスについての習熟度や故障感知度合が挙げられる。これらの情報を個別異常用閾値に反映させる理由は、既に述べた通りである。また、ユーザーの情報として、同複写機の使用目的、業種、部門、用紙の大きさと使用頻度との関係、出力画像の種類と出力頻度との関係などを個別異常用閾値に反映させてもよい。同複写機の使用目的が取り扱い説明書などといった書物製品の製造である場合と、個人的なプリントアウト物の作成や画像の仮出力などである場合とでは、当然ながら、要求される画質、ひいてはユーザーの故障感知度合が異なってくる。また、ユーザーの業種や部門によっても、要求される画質や異常発生頻度が異なってくる。また、個人差にかかわらず、用紙の大きさによって故障を全く感じなかったり、感じてしまったりすることもあり得る。例えば、ドラム状の感光体の端部付近に傷が発生したことによる画像の乱れは、比較的大きなサイズの用紙の端部付近に発生するが、比較的小さなサイズの用紙には発生しない。このため、この種の画像の乱れは、感知度合の個人差にかかわらず、比較的大きなサイズの用紙の使用頻度が高いユーザーに感知され易くなる。また、画質の劣化は、個人差にかかわらず、テキスト文書画像よりも写真画像の方が感じ易くなるため、写真画像の出力頻度が高いユーザーに感知され易くなる。よって、同複写機の使用目的、業種、部門、用紙の大きさ別と使用頻度との関係、出力画像の種類と出力頻度との関係などを上述の3つの個別異常用閾値に反映させれば、個々のユーザーに応じた精度で各個別異常を検出させることができる。
ユーザーの情報を閾値に反映させる方法としては、ユーザーの情報に応じた係数を標準閾値に乗ずる方法が挙げられる。この標準閾値とは、一般的なユーザー(習熟度等が一般的であるユーザー)に基づいて決められた閾値のことである。次に示す表7は、紙詰まり系、感光体劣化系、画像濃度変動系の3つの個別異常用閾値に関する標準閾値の一例を示している。
表7に示した標準閾値はあくまでも一例であり、実際に設定される値はこれに限られるものではない。また、感光体劣化系用、紙詰まり系用、画像濃度変動系用という順で標準閾値が高くなる例を示したが、この順番に限られるものでもない。
次に示す表8は、ユーザーの情報である習熟度と、閾値用係数との関係の一例を示している。
表8においては、習熟度が低、中、高と高くなるにつれて、閾値用係数が「0.9」、「1.0」、「1.2」と高くなっている。これは次に説明する理由による。即ち、マハラノビス距離Dの値が大きくなるほど、異常の度合は大きくなる。このため、マハラノビス距離Dと比較される個別異常用閾値が小さくなるほど、より敏感に異常が検出される。一方、同じ度合の異常であっても、ユーザーの習熟度が高くなるほど、修理要請が発生し難くなる。すると、個々のユーザーに見合った異常検出精度にするためには、ユーザーの習熟度が高くなるほど、個別異常用閾値を大きくして、異常を検出し難くする必要がある。そこで、習熟度が低、中、高と高くなるにつれて、個別異常用閾値に乗じるための閾値用係数を「0.9」、「1.0」、「1.2」と高くしているのである。
次に示す表9は、ユーザーの情報である故障感知度合と、閾値用係数との関係の一例を示している。
表9においては、故障感知度合が低、中、高と高くなるにつれて、閾値用係数が「1.2」、「1.0」、「0.8」と低くなっている。これは次に説明する理由による。即ち、上述のように、マハラノビス距離Dと比較される個別異常用閾値が小さくなるほど、より敏感に異常が検出される。一方、同じ度合の異常であっても、ユーザーの故障感知度合が高くなるほど、修理要請が発生し易くなる。すると、個々のユーザーに見合った異常検出精度にするためには、ユーザーの故障感知度合が高くなるほど、個別異常用閾値を小さくして、異常を検出し易くする必要がある。そこで、故障感知度合が低、中、高と高くなるにつれて、個別異常用閾値に乗じるための閾値用係数を「1.2」、「1.0」、「0.8」と低くしているのである。
次に示す表10は、ユーザーの業種と、部門と、閾値用係数との関係を示している。
ユーザーの業種が印刷に関するものであり、且つユーザーの部門が生産に関するものである場合、同複写機の使用目的が書物製造である可能性が高い。そして、画質低下や紙詰まり発生頻度の上昇が敏感にユーザーに感知される可能性が高い。そこで、表10においては、閾値用係数が「0.8」という最も小さい値に設定されている。
次に示す表11は、出力画像の種類と、出力頻度と、閾値用係数との関係を示している。
画質の異常(例えば画像濃度変動系)は、ユーザーの感知度合の個人差にかかわらず、テキスト文書、図面、広告チラシ、写真という順で感知され易くなるのが一般的である。このため、個人差にかかわらず、テキスト文書を他の種類の画像よりも高い頻度で出力するユーザーは、画質の異常を感知し難くなる。この逆に、写真を他の種類の画像よりも高い頻度で出力するユーザーは、画質の異常を感知し易くなる。そこで、表11に示した例では、テキスト文書、図面、広告チラシ、写真の4種類の画像における出力頻度の順番と、それぞれの感知され易さの順番とを考慮して、閾値用係数を設定している。例えば、個人差にかかわらず、画質の異常が最も感知され難くなるのは、テキスト文書、図面、広告チラシ、写真という順で出力頻度が低くなるようなプリントアウトが行われた場合である。そこで、かかる順番になる場合には、閾値用係数として、各順のうちで最も小さい値である「1.00」」を用いる。この逆に、個人差にかかわらず、画質の異常が最も感知され易くなるのは、写真、広告チラシ、図面、テキスト文書という順で出力頻度が低くなるようなプリントアウトが行われた場合である。そこで、かかる順番になる場合には、閾値用係数として、各順のうちで最も大きい値である「1.50」を用いる。
以上のようにして、ユーザーの情報を各個別異常用閾値(紙詰まり系、感光体劣化系、画像濃度変動系)に反映させれば、個々のユーザーに応じた精度で各個別異常を検出させることができる。
各個別異常用閾値(紙詰まり系、感光体劣化系、画像濃度変動系)には、ユーザーの情報の他、同複写機が設置される環境情報を反映させることが望ましい。これは次に説明する理由による。即ち、マハラノビス距離Dの計算結果が同じ値であっても、個人差にかかわらず、環境によって感知度合が変わってくるような異常もあり得る。例えば、マハラノビス距離Dの計算結果が同じ値であっても、同複写機が使用される湿度に応じて、紙詰まりがより多く発生したり少なく発生したりするといったことがある。このような場合に、各個別異常用閾値を同複写機が設定される環境情報にも応じて設定すれば、環境によって個人差にかかわらず異常の感知度合が変わってくることによる異常発生報知時期の不適切化を抑えることができる。
寿命到達などといった何らかの事情によって同複写機を新旧入れ替えする際には、新しい同複写機における各個別異常用閾値(紙詰まり系、感光体劣化系、画像濃度変動系)を、古い同複写機で使用されていた各個別異常用閾値とそれぞれ同じ値に初期設定することが望ましい。これは次に説明する理由による。即ち、各個別異常用閾値の初期設定が、ユーザーに完全に見合った値であることは少なく、繰り返しの異常検出と、そのときのユーザーの異常に対する感知度合等とに応じて、徐々に適した値に更新していくのが望ましい。このような更新がなされていた場合に、新旧入れ替えに伴って、古い同複写機で使用されていた各個別異常用閾値は、初期設定よりもユーザーに適した値に更新されて、ユーザーの要望にかなり近づいた値になっている可能性が高い。にもかかわらず、新しい同複写機に対して、これらの個別異常用閾値を採用せずに、ユーザーの情報を一般的に反映させた値を各個別異常用閾値として採用すると、それらの値をユーザーの要望から遠ざけてしまうことになる。そこで、古い同複写機で使用されていたものと同じ値に各個別異常用閾値を初期設定するのである。このようにすれば、新しい同複写機に対して、ユーザーの情報を一般的に反映させた値を各個別異常用閾値として初期設定することによる異常検知精度の悪化を回避することができる。
また、各個別異常用閾値(紙詰まり系、感光体劣化系、画像濃度変動系)については、異常の発生に基づくユーザーの修理要請履歴情報に応じて更新することが望ましい。このような更新を行うことで、各個別異常用閾値を初期設定から徐々にユーザーの要望に応じた値に変化させていくことができるからである。
総合異常の判定結果と、同複写機の点検結果との関係によっては、情報記憶部503に記憶させている上記正常組データ群を更新することが望ましい。具体的には、総合異常が「無し」と判定されるにもかかわらず、同複写機の点検で何らかの異常が認められた場合には、上記正常組データ群の中に、正常ではない組情報が含まれている。かかる組情報が含まれていることで、マハラノビス空間内における正常空間範囲が本来よりも広くなっている結果、異常を検出できなくなっているのである。そこで、正常ではない組情報を正常組データ群の中から削除して、正常組データ群を更新するのである。削除した分だけ、新たな正常な組情報を追加して更新してもよい。正常ではない組情報を削除することで、その組情報が正常組データ群に含まれることによる誤判定を回避することができる。なお、正常でない組情報については、上述した正規化データテーブルの中から、標準偏差の大きなものを探し出すことで、特定することが可能である。
本異常判定装置においては、総合異常についての計算結果であるマハラノビス距離Dに応じて、各種情報の取得頻度や、総合異常の有無の判定頻度を変化させるように、情報取得部501や異常判定部502を構成している。具体的には、総合異常についてのマハラノビス距離Dが総合異常用閾値にある程度近づいたら、各種情報の取得頻度や判定頻度をそれまでよりも高くするようにしている。このようにする理由について、図41、図42及び図43を用いて説明する。
図41は、同複写機における総合異常についてのマハラノビス距離Dと、経過時間(運転時間)との関係の一例を示すグラフである。同図において、異常検出閾値とは、総合異常の有無の判定に用いられる総合異常用閾値のことである。また、故障発生閾値は、同複写機が故障を発生させるまで個別異常を進行させたときにおけるマハラノビス距離Dと同じ値である。マハラノビス距離Dがこの故障発生閾値まで大きくなった段階で、同複写機に故障が発生するのである。総合異常に包括される個別異常の種類によっては、図示のように、マハラノビス距離Dが故障発生閾値に対してある程度まで近づいた時点から、その上昇率が急激に高くなることもある。このような場合には、総合異常の検出が大幅に遅れてしまうおそれがある。
具体的には、図42は、図41のような特性を示す同複写機において、4tという時間間隔で総合異常を判定した場合のマハラノビス距離Dと経過時間との関係を示すグラフである。同図において、故障は、時点32tから時点36tの間で発生するが、時点32tではマハラノビス距離Dがまだ異常検出閾値に達していないので総合異常が検出されない。時点32tの次に総合異常の判定が行われるのは時点36tであるが、この間に異常が急速に進行するため、時点36tの到来よりも早く、総合異常が発生してしまう。このため、同図に示した例では、故障発生後に総合異常を検出することになり、総合異常の発生を予測することができなくなっている。
図43は、総合異常についてのマハラノビス距離Dが異常検出閾値にある程度まで近づいた段階で、総合異常の判定頻度をより高くした場合におけるマハラノビス距離Dと経過時間との関係の一例を示すグラフである。同図において、判定頻度変更閾値は、総合異常の判定頻度を変更するか否か決定するための閾値であり、異常検出閾値よりも小さい値に設定されている。図示の例では、マハラノビス距離Dが時間経過に伴って少しずつ大きくなっていき、時点24tあたりから、マハラノビス距離Dの上昇率(上昇量/単位時間)が高まり始まる。そして、時点28tよりも少し早い段階でマハラノビス距離Dが判定頻度変更閾値に達し、時点28tで異常判定部502がそのことを認識して総合異常の判定頻度を4t間隔から1t間隔に高める。その後、時点32.5tでマハラノビス距離Dが異常検出値に達する。そして、それより僅かに遅れた時点33tにおいて、異常判定部502によって総合異常が検出された後、時点34tで故障が発生する。時点28tで判定頻度が高められたことにより、故障発生よりも早い段階で総合異常が検出されるようになったのである。従って、計算結果たるマハラノビス距離Dに応じて、総合異常の有無の判定頻度を変化させるように異常判定部502を構成することで、次のことが可能になる。即ち、マハラノビス距離Dの上昇率が急激に高まることに起因して総合異常の発生を予測することができなくなるといった事態を抑えることができる。
判定結果によっては、画像形成条件を変更させたり、画像形成動作の一部を制限させたりすることが望ましい。具体的には、次の(a)〜(c)に列記する対応が考えられる。
(a)装置を停止させる
マハラノビス距離Dが閾値異常になったり、マハラノビス距離Dの経時的な増加率が大きくなったりしたときなどに、装置を強制的に作動できなくして、ユーザーに対してメンテナンスを要求する。
(b)画像形成動作を制限したり、制御パラメータを変更したりする
(b−1)色モードの変更
(b−2)記録速度の変更
(b−3)画像の中間調部の線数の変更
(b−4)中間調処理方法の変更
(b−5)使用する紙種の制限
(b−6)レジスト制御のパラメータ変更
(b−7)画像形成プロセスのパラメータ(一様帯電電位、露光量、現像バイアス、転写バイアス等)の変更
(c)消耗品や部品の補給・交換
マハラノビス距離Dの算出結果に基づいて、自動的に補給や交換を行なわせるようにする。
発生した個別異常の種類によっては、その進行によって故障が発生したとしても、同複写機の機能を制限することで、修理準備が整うまでの期間の運転が可能になる場合もある。例えば、何らかの理由により、ドラム状の感光体のドラム軸端部付近に大きな損傷が起こったとする。すると、その感光体の軸線方向のほぼ全領域を使用する大きなサイズの用紙でプリントアウトを行った場合には、その用紙の端部付近に、著しい画質劣化や汚れなどが発生してしまう。但し、感光体のその損傷領域を使用しないで済む小さなサイズの用紙でプリントアウトを行った場合には、画質劣化や汚れが起こらない。よって、ドラム状の感光体のドラム軸端部付近に大きな損傷が起こったとしても、大きなサイズの用紙の使用を禁止するように機能制限を行うことで、修理準備が整うまでの期間に同複写機を運転してプリントアウトを実施することができる。そこで、本異常判定装置においては、各個別異常の発生に応じて、同複写機の機能を制限する機能制限手段を設けている。図44は、この機能制限手段によって機能制限が行われた際における同複写機の操作表示部の表示画面例を示す模式図である。A4サイズよりも小さい用紙を使用すれば、画質劣化や汚れが起こらない場合の表示画面例である。
次に、異常判定装置の第2参考形態について説明する。
図45は、本第2参考形態に係る異常判定装置における電気回路の要部を示すブロック図である。同図と、先に示した図35とを比較すると、本異常判定装置の電気回路の構成は第3実施形態に係る異常判定装置とほぼ同様であるが、次の点が異なっている。即ち、データ表示部506を有する点と、異常判定部502、情報記憶部503、データ入力部504、及びデータ表示部506によって閾値設定手段たる閾値設定部507が構成されている点である。
本異常判定装置における情報取得部501も、上述した(1)〜(12)の情報を被検対象たる同複写機から取得するものである。異常判定部502は、情報記憶手段に記憶されている各種データと、情報取得手段501によって取得された(1)〜(12)の情報とに基づいて、総合異常や、これに包括される紙詰まり系、感光体劣化系、画像濃度変動系の3つの個別異常の有無を判定する。それぞれの異常の判定については、第1参考形態と同様に、マハラノビス距離Dと、それぞれ専用の個別異常用閾値との比較とによって行う。また、総合異常を有りと判定したときにだけ、3つの個別異常の有無について判定を行う。データ表示部506は、液晶ディスプレイ等からなり、異常判定部502から送られてくる画像信号に基づいて、画像を表示する。
これら異常判定部502、情報記憶部503、データ入力部504、及びデータ表示部506によって構成される閾値設定部507は、情報記憶部503に記憶される総合異常用、紙詰まり系用、感光体劣化系用、画像濃度異常系用の個別異常用閾値をそれぞれ設定する。その設定の具体的な方法は次の通りである。即ち、情報記憶部503内には、ユーザーの情報を得るためにそのユーザーに対して所定の質問を行うための質問実施用プログラムが格納されている。異常判定部502は、この質問実施用プログラムに基づいて、データ表示部506に各種の質問情報を表示させる。例えば「紙詰まりが頻繁に発生するようになったときに、その原因を追究することができますか?」「感光体を自分で交換することができますか?」などといった質問である。ユーザーがこれらの質問に対する回答データをそれぞれデータ入力部504に入力すると、異常判定部502は入力された回答データをユーザーの情報として情報記憶部503に記憶させていく。
このような質問実施用プログラムが終了すると、情報記憶部503にはユーザーの情報が複数記憶される。異常判定部502は、これらのユーザーの情報と、情報記憶部503に記憶されている各種データとに基づいて、紙詰まり系用、感光体劣化系用、画像濃度変動系用の3つの個別異常用閾値を初期設定する。このときに利用される各種データは、例えば先に表7、表8、表9、表10、表11に示したデータである。このような初期設定により、紙詰まり系用、感光体劣化系用、画像濃度変動系用の3つの個別異常用閾値に、ユーザーの情報が反映されて、各個別異常の判定精度がユーザーに見合ったものになる。
かかる構成の本異常判定装置においては、データ入力部504に入力されるデータが、個別異常用閾値そのものでなくて、ユーザーの情報である点が、第1参考形態に係る異常判定装置と大きく異なっている。ユーザーに個別異常用閾値を入力させる代わりに、ユーザーの情報を回答形式で入力させているのである。ユーザーは、異常判定方法を熟知していないことが殆どである。このようなユーザーに対して、マニュアル等を参照させながら紙詰まり系用、感光体劣化系用、画像濃度変動系用の個別異常用閾値をそれぞれ計算させて入力させると、不便感を与えることになりかねない。しかし、本異常判定装置のように、ユーザーの情報を回答形式で入力させ、それに基づいてそれら個別異常用閾値を設定すれば、上述のような不便感を与えてしまうといった事態を回避することができる。また、それら個別異常用閾値を決定するためにユーザーに複雑な計算を行わせるといった事態も回避することができる。
閾値設定部507は、紙詰まり系用、感光体劣化系用、画像濃度変動系用の個別異常用閾値をユーザーの情報に基づいてそれぞれ初期設定するだけでなく、必要に応じて変化させるように構成されている。具体的には、上述のように、これら個別異常用閾値の初期設定がユーザーに完全に見合った値になることは少ない。実体験に基づいて各個別異常用閾値を少しずつ調整していかないと、それらは完全なものにはならないことが殆どである。よって、各個別異常の検出精度に応じて、それぞれに対応する個別異常用閾値を徐々に更新していくことが望ましい。そこで、本異常判定装置においては、紙詰まり系用、感光体劣化系用、画像濃度変動系用の各個別異常用閾値を、それぞれユーザーによってデータ入力部504に入力される所定のデータに基づいて変化させるように、閾値設定部507を構成しているのである。この所定のデータについては、例えば次のようにしてユーザーに入力してもらうとよい。即ち、予め情報記憶部503に閾値更新プログラムを記憶させておく。また、マニュアルなどにより、データ入力504に対して所定の操作を行うことでこの閾値更新プログラムが起動されることを予めユーザーに知らせておく。ユーザーの操作によって閾値更新プログラムが起動されると、データ表示部506に「異常の報知タイミングをどのように感じましたか? 該当する番号のキーを押して下さい 1:報知が早すぎる、2:報知が遅すぎる」などといった表示を行う。そして、ユーザーが該当するキーを押すと、次に「異常の種類は? 該当する番号のキーを押して下さい 1:紙詰まり系、2:感光体劣化系、3:画像濃度変動系」などといった表示を行う。そして、ユーザーが該当するキーを押すと、その異常についての個別異常用閾値を、「報知が早すぎる」あるいは「報知が遅すぎる」という情報に基づいて、変化させるのである。この情報が、上述した所定のデータである。「報知が早すぎる」場合には、個別異常用閾値をそれまでよりも大きくすればよい。また、「報知が遅すぎる」場合には、個別異常用閾値をそれまでよりも小さくすればよい。
また、閾値設定部507は、上述した総合異常用閾値を、総合異常についての計算結果であるマハラノビス距離Dの変化率に応じて変化させるように構成されている。かかる構成になっているのは、次に説明する理由による。即ち、図46は、同複写機における総合異常についてのマハラノビス距離Dと、経過時間との関係の一例を示すグラフに、マハラノビス距離Dの変化を解り易くする延長線を付したものである。同図において、時点12tから時点24tまでの期間における棒グラフは、ほぼ直線的な右上がりの斜線となっており、単位時間あたりのマハラノビス距離Dの変化率がほぼ同じになっていることを示している。しかしながら、時点24t以降は、単位時間あたりの変化率が時間毎に上昇し始めているので、折れ線グラフとなっている。図中の点線aは、時点24tから時点28tまでの変化率が、時点20tから時点24tまでと同じである場合のマハラノビス距離Dを示しているが、実際のグラフはこれよりも急角度で上昇していることがわかる。時点28tから時点32tまで、時点32tから時点36tまでも、それぞれ同様である。図示の例は、先に示した図42と同様に、「マハラノビス距離D<異常検出閾値」となる時点32tで総合異常を検出することができず、その後の時点36tで総合異常を検出する前に故障が発生してしまうおそれがある。そこで、本異常判定装置の閾値設定部507は、連続する2つの期間で、変化率が連続して増加した場合には、図示のように異常検出閾値をそれまでよりも小さくするように変化させる。すると、時点32tに用いられる異常検出閾値は、小さく変化した後の値となるので、時点32tにて総合異常が検出される。そして、この検出により、マハラノビス距離Dの上昇率が急激に高まることに起因して総合異常の発生を予測することができなくなるといった事態を抑えることができる。
なお、総合異常用閾値をマハラノビス距離Dの変化率に応じて変化させる代わりに、第3実施形態に係る異常判定装置と同様に、マハラノビス距離Dが総合異常用閾値にある程度近づいた時点で総合異常の有無の判定頻度を高くしてもよい。また、本異常判定装置においては、図34に示した複写機の操作表示部3を、図45に示した本異常判定装置のデータ入力部504及びデータ表示部506として兼用してもよい。また、本異常判定装置においても、第1参考形態に係る異常判定装置と同様に、判定結果をデータ表示部506に出力するようになっている。図47は、感光体劣化系の異常の検出に伴ってデータ表示部506に出力される画像の一例を示している。また、本異常判定装置においても、第3実施形態に係る異常判定装置と同様の機能制限手段を設けている。
以上、第1実施形態に係る異常判定装置、これの変形例装置、又は各実施例においては、情報記憶手段たる情報記憶部503が、正常指標情報として、互いに値の異なる複数の正常組データ群を記憶しているものであり、且つ、判定手段たる異常判定部502が、これら複数の正常組データ群のうち、被検対象たる複写機における異常の有無の判定に用いるものを、所定のタイミングで切り換えるものになっている。かかる構成では、上述したように、情報取得部501による取得情報の正常値が動作モード設定などといった特定情報の内容に応じて異なってしまうことによる誤判定を回避することができる。
また、第2実施形態に係るプリンタおいては、複数の情報取得手段によって取得される複数種類の情報からなる多種情報についての複数の取得結果に基づいて、互いに内容の異なる複数の逆行列Aを構築する正常指標情報構築手段たるCPU(900a)を設けている。かかる構成では、上述した理由により、プリンタにおける製品毎の部品誤差による判定精度の低下を回避しつつ、各製品について出荷前に各逆行列を構築するための試運転を行うことによるコストアップを回避することができる。
また、第2実施形態に係るプリンタや変形例装置においては、複数の正常指標情報としてそれぞれデータ群の逆行列Aを用い、且つ、判定手段たる制御部(900)がそれら逆行列Aに基づいてマハラノビス距離Dを算出して異常の判定に用いるように構成されている。かかる構成では、単純に標準データと取得データとの比較によって異常を判定する従来の画像形成装置とは異なり、MST法を利用して原因が明確に特定されない故障の発生を予測することができる。
また、第2実施形態に係る変形装置の実施例1や実施例2においては、異常判定装置として変形例装置の構成を有するものを用いている。そして、変形装置実施例1に係るプリンタにおいては、互いに内容の異なる複数の仮正常指標情報たる仮逆行列を記憶手段たるROM(900c)内に記憶している。更に、所定期間内に所定の条件が整わなかったことにより、複数の逆行列Aのうち、少なくとも何れか1つを構築することができなかった場合には、それを仮逆行列で補填する処理を行うように、正常指標情報構築手段たる制御部(900)が構成されている。かかる構成では、上述した理由により、出荷先で所定の条件が整わなかったことに起因する異常の判定精度の悪化を回避することができる。
また、第2実施形態に係る変形装置の実施例2に係るプリンタにおいては、外部からのデータを受け入れるデータ受入手段たる操作表示部(808)を備えている。更に、出荷先において、所定期間内に所定の条件が整わなかったことにより、複数の逆行列Aのうち、少なくとも何れか1つを構築することができなかった場合には、それをデータ受入手段によって受け入れられた逆行列Aで補填する処理を行うように、正常指標情報構築手段たる制御部(900)が構成されている。かかる構成でも、上述した理由により、出荷先で所定の条件が整わなかったことに起因する異常の判定精度の悪化を回避することができる。
また、第2実施形態に係るプリンタや、これの変形例装置においては、情報取得手段の少なくとも1つとして、温度情報、湿度情報又は動作モード設定値を取得するものを用いるとともに、複数の逆行列Aとして、温度、湿度又は動作モード設定値に応じて内容の異なるものをそれぞれ用いるように構成されている。かかる構成では、特定情報たる温度、湿度又は動作モード設定値の内容に応じて取得情報の正常値が異なってしまうことによる誤判定を回避することができる。