JP4492911B2 - 透明美爪料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は美爪料に関する。
さらに詳しくは、ネールエナメル、ネールエナメルベースコート、ネールエナメルオーバーコート等に代表される美爪料において、特定の平均粒径と比表面積を持つ微粒子シリカを配合して増粘することを特徴とする透明美爪料に関する。
【0002】
【従来の技術】
美爪料は被膜形成剤や溶剤と共に、メーキャップ効果を付与するために雲母チタンなどのパール剤や高分子積層フィルムをカットしたラメ剤を配合することが多い。
【0003】
しかし、これらのパール剤やラメ剤は、比重が大きく、容器中にて経時で沈降してしまうため、従来から、沈降防止のために有機変性粘土鉱物を配合する検討が行われてきた。
【0004】
例えば、特開平1-242514号公報においては、有機変性モンモリロナイト、シリカ及び非芳香族系溶剤を配合することにより、粘土鉱物に由来する良好なチキソトロピー性付与を利用して顔料やパール剤の沈降を防ぐ方法が採用されている。
また、特開平10-59828号公報においては、ポリオキシエチレン鎖及び/又はポリオキシプロピレン鎖を有するシリル化剤で処理した増粘付与性粉体を配合する方法が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、有機変性粘土鉱物を配合する方法では、沈降は防止できるものの、系が不透明になってしまうため、パール剤やラメ剤の光輝感が失われてしまい、美爪料としての魅力を半減させてしまう課題があった。
また、シリル化剤で処理した増粘性付与性付与粉体を配合した場合も十分な増粘効果が得られず、ラメが沈降してしまう傾向があった。
【0006】
一方、無機化合物の微粒子粉末を配合する美爪料としては、特開平10-218735号公報において、平均粒径1〜100nmの無機化合物を配合したネイル用化粧料が開示されている。
しかしながら、上記に開示されたネイル用化粧料は、シリカ微粒子などの無機化合物が単に塗膜の光沢や硬度を上げるために配合されたものであり、系の増粘効果は考慮されていない。
【0007】
また、無機化合物の配合により、パール剤やラメ剤の沈降を防止出来るほどに系を増粘させようとすると、平均粒径1〜100nmの無機化合物を多量に配合する必要があるため、透明性が著しく損なわれ、さらには使用性も重くなってしまうという開発上の課題があった。
【0008】
さらに、平均粒径が10nm以下の球状シリカであっても、非表面積が250m2/g以下のものでは、被膜硬度と光沢度は向上するものの、系は増粘せず、ラメ剤等の沈降防止効果が得られない。
【0009】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、溶剤系美爪料において特定の平均粒径及び非表面積を持つ微粒子シリカを配合すると、上記課題を解決出来ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明の目的は、系の透明性を損なうことなく、配合されたラメ剤またはパール剤が経時での沈降を抑制若しくは防止可能なほどに系が適度に増粘された透明美爪料を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は以下の通りである。
【0012】
(1)被膜形成剤と有機溶剤を含有する美爪料において、平均粒径10nm以下、比表面積が250m2/g以上の微粒子シリカを含有し、塗膜の(60°入射/60°反射時)光沢度が40以上、かつ系の可視光(波長550nm)透過率が40%以上であることを特徴とする透明美爪料(但し、微粒子シリカに対し0.01〜200質量%の水を配合する美爪料及びキャンデリラレジンを配合する美爪料及び酸化チタン0.5質量%と黒酸化鉄0.1質量%とグンジョウ1質量%とを配合する美爪料を除く)。
(2)前記微粒子シリカの含有量が、美爪料全量に対して0.05〜2.5%(質量百分率)である上記の透明美爪料。
(3)前記有機溶剤が非芳香族系の有機溶剤である上記の透明美爪料。
(4)トルエン、キシレンを含有しない上記の透明美爪料。
(5)ラメ剤及び/又はパール剤を含有する上記の透明美爪料。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳述する。
【0014】
本発明に使用する微粒子シリカは、平均粒径は10nm以下、好ましくは7nm以下の微粒子シリカである。
平均粒径10nmを超えると、増粘効果を発揮させるには多量に配合することが必要となり、系の透明性や使用性が著しく損なわれてしまう。
また、比表面積は250m2/g以上、好ましくは350m2/g以上である。
比表面積が250m2/g未満であると、十分な増粘効果が得られず、ラメ剤等が経時で沈降してしまう。
上記特性を有する微粒子シリカは市販品を利用できる。
上記特性を有する微粒子シリカは、通常、球状の1次粒子が凝縮した不定形の凝縮粒子から構成される。
平均粒径は球状1次粒子の平均粒子径であり、1次粒子の電子顕微鏡写真から目視により測定される球状粒子径の平均値である。任意の100以上の粒子を測定して得られる平均粒子径が10nm以下であることが好ましい。
また、比表面積は球状1次粒子が凝縮した全体の比表面積であり、通常のBET法により測定される。
【0015】
上記微粒子シリカの配合量は、美爪料全量に対して0.1〜2.5%(質量百分率)、特に0.5〜1.5%(質量百分率)が好ましい。
0.1%未満では十分な増粘効果が得られず、パール剤、ラメ剤が沈降してしまうおそれがある。
一方、2.5%を超えると粘度が高くなりすぎ、塗布しにくくなったり、透明性が損なわれたりするおそれがある。
【0016】
上記の微粒子粉末シリカを、美爪料中に分散させて製造する際には、公知の分散装置、例えば、横型・縦型・アニュラー型の連続式のビーズミル、サンドグラインダーミル、ボールミル等の媒体攪拌ミルやバスケットミルなどのバッチ式ビーズミル、マイクロフルイダイザーやナノマイザー等の高圧分散装置などを用いる。
なお、媒体攪拌ミルで用いられるビーズ、サンド、ボールなどの媒体の材質はガラス、アルミナ、ジルコニア、チタン、スチールなどが用いられるが、特にジルコニアが好ましい。また、その大きさとしては通常直径0.3〜2.0mm程度のものが用いられる。
【0017】
本発明に使用する被膜形成剤は、通常用いられる公知のニトロセルロース、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、スルホンアミド樹脂等を使用することができる。
例えば、ニトロセルロースRS1/2秒、ニトロセルロースLIG1/2秒、ニトロセルロースHIG1/2秒、ニトロセルロースSS1/2秒、ニトロセルロースHIG1秒、ニトロセルロースHIG2秒、ニトロセルロースHIG7秒、ニトロセルロースHIG20秒、ニトロセルロースLIG1/4秒、ニトロセルロースHIG1/4秒、ニトロセルロースLIG1/8秒、ニトロセルロースHIG1/8秒、ニトロセルロースHIG1/16秒(以上はダイセル化学工業株式会社、旭化成工業株式会社などの商品名)、ショ糖安息香酸エステル樹脂、トルエンスルホン酸アミド樹脂等が挙げられる。
これらの皮膜形成剤は1種または2種以上を用いることができる。
【0018】
皮膜形成剤の配合量は、美爪料全量に対して5〜25%(質量百分率)、特に7〜20%(質量百分率)が好ましい。
5%未満では乾燥速度の低下、経時でのつや低下等を生じるおそれがある。
一方、25%を超えると粘度が高くなり、塗布しにくくなるおそれがある。
【0019】
本発明に使用する有機溶剤は、従来用いられているエステル系、アルコール系、炭化水素系等の公知の溶剤を使用することができる。
例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、乳酸エチル、乳酸ブチル、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、酢酸イソブチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、プロピルアルコール等が挙げられる。
特に酢酸ブチル、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、エチルアルコール等の非芳香族系の有機溶剤が好ましい。
また、本発明は、トルエン、キシレンなどの、通常、希釈剤として配合される有機溶剤を用いる必要がなく、健康上も好ましい。
有機溶剤は1種または2種以上を混合して用いることができる。
溶剤の配合量は、意図する使用性、配合する着色成分等によっても異なるが、一般に美爪料全量に対し25〜85%(質量百分率)程度である。
【0020】
本発明に使用可能な着色成分のパール剤及び/又はラメ剤は公知のものが使用できる。
パール剤としては、例えば、雲母チタン、ベンガラ被覆雲母、ベンガラ被覆雲母チタン、カーミン被覆雲母チタン、紺青被覆雲母チタン、酸化チタン被覆合成金雲母、ベンガラ・酸化チタン被覆合成金雲母、酸化チタン被覆ガラスフレーク、酸化チタン被覆アルミナフレーク、酸化チタン被覆シリカフレーク、酸化鉄・シリカ被覆アルミニウム、酸化鉄・シリカ被覆酸化鉄などが挙げられる。
ラメ剤としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、エポキシ樹脂被覆アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレート、アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレート、ウレタン樹脂被覆アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂被覆アルミニウム末等が挙げられる。
これらの配合量は特に限定されないが、通常、美爪料全量に対して、0.01〜20%(質量百分率)、好ましくは、0.5〜7%(質量百分率)である。
【0021】
本発明の透明美爪料には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記必須成分の他に、必要に応じて、上記以外の樹脂、可塑剤、顔料、香料、染料、薬剤、保湿剤、紫外線吸収剤、つや消し剤、充填剤、界面活性剤、金属石鹸等の一般に美爪料に配合される原料を配合し、常法により製造することができる。
【0022】
本発明の透明美爪料は、化粧品業界において一般にマニキュア類、美爪用製品等として用いられている爪被覆剤を広く含むものである。
例えば、ベースコート、ネールエナメル、トップコート(オーバーコート)の他、ネールガード等のネールケア製品等が挙げられる。
【0023】
本発明の透明美爪料の透明とは、着色剤を除いたエナメル基剤が透明という意味である。
美爪料の基剤が透明であることにより、容器に充填された美爪料及び爪上の乾燥した塗膜の中で、パール剤及び/又はラメ剤の光輝感を損なうことなく、極めて美しく見せることが可能である。
透明とは、分光光度計により測定した波長550nmの可視光の透過率が少なくとも40%以上であることを意味するが、好ましくは60%以上の透明性が得られる。
また、本発明の透明美爪料は、乾燥後の塗膜の(60°入射/60°反射時)光沢度が少なくとも40以上となり、通常、光沢計を用いて測定すると光沢度が80以上の好ましい光沢度が得られる。
【0024】
【実施例】
本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明する。
なお、配合量は特に断りのない限り%(質量百分率)である。
また、ニトロセルロースは、いずれも30%IPA品(30%のイソプロピルアルコールで湿潤させた状態)での配合量である。
【0025】
本実施例で用いた評価方法について説明する。
[粘度]
各試料の作製直後粘度を単一円筒型粘度計(芝浦システム社製vs-A1)により粘度測定を行った。
測定は直後1時間30℃の恒温槽に静置して行った。(測定条件;回転数0.6rpm,使用ローター2型)
[経時安定性]
各試料を透明なガラスビンに充填し、50℃の恒温槽に1ヶ月保存して、配合されたラメ剤の沈降度合いを確認した。評価は下記基準による。
<評価基準>
◎:変化なし(ラメ剤が全く沈降せず)
○:良好(殆どラメ剤が沈降せず)
△:やや不良(半分程度ラメ剤が下部に沈降)
×:不良(殆どのラメ剤が下部に沈降)
[透明性]
各試料について、1cm四方の石英セルに入れて分光光度計を用いて550nm波長の透過率を測定した。これにより透明性の評価を下記基準に従って行った。
<評価基準>
◎:60%以上
○:40〜60%
△:20〜40%
×:20%未満
[塗布のしやすさ]
各試料を10mlの筆つきガラスビンに充填し、それを用いて専門パネル(10名)に使用させ、爪への塗りやすさ(一度塗り、二度塗り)について、下記基準により総合評価した。
<評価基準>
◎:良好(きれいに滑らかに塗れる)
○:やや良好(ほぼ滑らかに塗れる)
△:やや不良(やや塗りづらい)
×:不良(非常に塗りづらい)
[光沢度]
ガラス板上に試料を0.35mmのドクターブレードを用いて均一に塗布し、1時間室温にて乾燥後、塗膜の光沢についてD-2型光沢計を用いて入射角60°−反射角60°の値を測定した。
<評価基準>
◎:80以上
○:60以上80未満
△:40以上60未満
×:40未満
[乾燥速度]
実際の使用において、塗布直後から指先で触れた時に指紋がつかなくなるまでの時間を測定した。
<評価基準>
◎:1〜3分間
○:3〜5分間
△:5〜6分間
×:6分以上
[経時での剥がれ]
各試料を専門パネル(10名)に使用させ、3日間経過後の剥がれについて、下記基準により総合評価した。
<評価基準>
◎:非常に剥がれにくい
○:剥がれにくい
△:剥がれやすい
×:非常に剥がれやすい
【0026】
「実施例1〜6、比較例1〜5」
表1〜2に示す組成で常法により美爪料を調製した。
その際、微粒子シリカを配合する際は分散性の良好なアニュラー型ビーズ分散機を用いた。
そして、それぞれにつき上記評価方法により、経時の安定性、塗布のしやすさ、光沢、乾燥速度、経時での剥がれを評価した。
なお、実施例では、微粒子シリカに日本アエロジル株式会社製微粒子シリカ380S(平均粒径5nm,比表面積380m2/g)を使用した。
比較例では、微粒子シリカに、日本アエロジル株式会社製微粒子シリカ200(平均粒径12nm,比表面積200m2/g)と、有機変性粘土鉱物はエレメンティス社のベントン27を用いた。結果を表1、2に示す。
【0027】
【表1】
注1:ダイヤ工業社製ホログラムパウダーHG-S100
【0028】
【表2】
注1:ダイヤ工業社製ホログラムパウダーHG-S100
【0029】
表1〜2から明らかなように、本発明の実施例1〜5は、経時安定性、透明性、塗りやすさ、光沢、乾燥速度に優れ、経時でも剥がれにくい結果が得られた。
上記実施例において、ラメ剤の代わりにパール剤を配合した場合でも同様の効果が得られる。また、微粒子シリカに、日本アエロジル株式会社製 微粒子シリカ300(平均粒径7nm,比表面積300m2/g)、380(平均粒径7nm,比表面積380m2/g)を使用した場合も同様の効果が得られる。
以下に本発明のその他の実施例を挙げる。いずれも透明感に優れた美しい透明美爪料である。
【0030】
常法により得られる上記組成のオーバーコートは、乾燥性が良く、塗りやすさや光沢に優れ、経時でも剥がれにくく、また爪への圧迫感も少ない。
【0031】
常法により得られる上記組成のベースコートは、乾燥性が良く、塗りやすさや光沢に優れ、経時でも剥がれにくく、また爪への圧迫感も少ない。
【0032】
常法により得られる上記組成のネールエナメルは、パール剤及び/又はラメ剤が沈降しない適度な粘度を有し、乾燥性に優れ、塗りやすさや光沢に優れ、経時でも剥がれにくく、また爪への圧迫感も少ない。
【0033】
【発明の効果】
本発明の効果は下記の通りである。
(1)適度な粘度を有する透明美爪料である。
従来の有機変性粘度鉱物を用いた増粘系エナメルは不透明である。
(2)パール剤及び/又はラメ剤を配合すると、透明基剤の中で光輝感が美しく発揮される。
(3)パール剤及び/又はラメ剤の沈降を防止、抑制出来る。
(4)トルエンなどの芳香族系有機溶剤を使用する必要がない。
(5)塗膜の光沢に優れ、乾燥時間が短く、経時においても剥がれにくく、塗布がし易い美爪料が提供出来る。
Claims (5)
- 被膜形成剤と有機溶剤を含有する美爪料において、平均粒径10nm以下、比表面積が250m2/g以上の微粒子シリカを含有し、塗膜の(60°入射/60°反射時)光沢度が40以上、かつ系の可視光(波長550nm)透過率が40%以上であることを特徴とする透明美爪料(但し、微粒子シリカに対し0.01〜200質量%の水を配合する美爪料及びキャンデリラレジンを配合する美爪料及び酸化チタン0.5質量%と黒酸化鉄0.1質量%とグンジョウ1質量%とを配合する美爪料を除く)。
- 前記微粒子シリカの含有量が、美爪料全量に対して0.05〜2.5%(質量百分率)である請求項1記載の透明美爪料。
- 前記有機溶剤が非芳香族系の有機溶剤である請求項1または2記載の透明美爪料。
- トルエン、キシレンを含有しない請求項1、2または3記載の透明美爪料。
- ラメ剤及び/又はパール剤を含有する請求項1、2、3または4記載の透明美爪料。
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