JP4492150B2 - インクカートリッジおよび記録システム - Google Patents

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本発明は、記録装置に着脱可能に装着されるインクカートリッジおよび記録システムに関するものである。
特開平9−85963号公報(特許文献1)に開示されているように、インク容器(以下インクカートリッジという)を着脱できるように構成されたインクジェット記録装置において、インクカートリッジを保持するホルダには、2つの部屋を設け、各部屋に多孔質材を充填するとともに、上端に上方に突出する凸部を形成し、一方の多孔質材の一端を大気導入口に、他の多孔質材の下面をインク供給口に連通させている。
一方、インクカートリッジは、底部にこれらの各凸部の挿入を可能ならしめる通孔を設けるとともに、これらの凸部により開弁可能な膜弁が張設され、インクカートリッジをホルダに装着することにより2つの部屋とインクカートリッジ内とが連通するように構成されている。
特開平9−85963号公報(図5等)
しかしながら、インクカートリッジ内は、一般に梱包されている状態では、負圧に設定されているため、インクカートリッジを装着する際に、インク供給口の弁が、大気導入口の弁より先に開放されると、記録装置側に貯留されているインクがインクカートリッジ内に逆流することになる。インクカートリッジ内のインクは、脱気状態に維持されていて、すでに排出されたインクが戻されるとその状態がくずれる。また、記録ヘッドのノズル内に形成されているインクのメニスカスもインクカートリッジ側に引かれて破壊される。その結果、良好なインクの吐出を行うことができなくなるという問題点があった。
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、インクカートリッジを装着した際、インクカートリッジへのインクの逆流を防止し、インクを正常な状態で維持するとともに記録ヘッドのインク吐出を良好に維持することができるインクカートリッジおよび記録システムを提供することを目的としている。
この目的を達成するために請求項1に記載のインクカートリッジは、インクを貯留するインク室を有し、そのインク室が減圧状態にあるものであって、前記インク室に連通して形成され、前記インク室内に大気を導入するために開口した大気導入口と、その大気導入口を前記インクカートリッジの外部に対して開放可能に封止する第1の封止手段と、前記インク室に連通して形成され、前記インク室内のインクを外部に供給するために開口したインク供給口と、そのインク供給口を介して前記インク室と連通する空間であって、前記インクカートリッジの外部に向かって延び、前記インク供給口とは反対の一端側が前記インクカートリッジの外部に開放されている供給側連通室と、その供給側連通室内に設けられ、前記インク供給口をインクカートリッジの外部に対して開放可能に封止する第2の封止手段と、その第2の封止手段よりも前記インク室側の前記供給側連通室内に設けられ、インクが前記供給側連通室から前記インク供給口を通過するのを阻止する逆止弁とを備えている。
請求項2に記載のインクカートリッジは、請求項1に記載のインクカートリッジにおいて、前記大気導入口と前記インク供給口とは、前記インク室の一側に並べて形成されている。
請求項3に記載のインクカートリッジは、請求項1または2に記載のインクカートリッジにおいて、前記インクカートリッジの姿勢を、前記逆止弁が前記インク供給口の下方に位置する姿勢としたときに、前記逆止弁は、その自重により移動して前記インク供給口を開放しており、前記供給側連通室から前記インク供給口に向かうインクの流れが生じたときのみ、インクが前記供給側連通室から前記インク供給口を通過するのを阻止する。
請求項4に記載のインクカートリッジは、請求項1から3のいずれかに記載のインクカートリッジにおいて、前記大気導入口を介して前記インク室と連通する空間であって、前記インクカートリッジの外部に向かって延び、前記大気導入口とは反対の一端側が開放されている大気側連通室を備え、前記第1の封止手段は、前記インクカートリッジの外部に対して前記大気導入口を覆って前記大気側連通室内に設けられ、前記第2の封止手段は、前記インクカートリッジの外部に対して前記インク供給口を覆って前記供給側連通室内に設けられている。
請求項5に記載のインクカートリッジは、請求項1から4のいずれかに記載のインクカートリッジにおいて、前記インク室を形成する底壁を備え、その底壁には、前記インク供給口と、軸穴とが形成されており、前記逆止弁は、前記供給側連通室内において前記インク供給口と対向配置された傘部と、その傘部から前記軸穴を通って前記インク室側に延びる軸部と、その軸部のうち前記インク室内に延びる部分に前記軸部よりも膨出した膨出部とを備え、前記インクカートリッジの姿勢を、前記傘部が前記インク供給口の下方に位置する姿勢としたときに、前記逆止弁はその自重により移動して、前記膨出部が前記底壁の上面に係止されて、前記傘部が前記インク供給口と間隔を空けて配置され前記供給側連通室から前記インク供給口に向かうインクの流れが生じた場合は、前記軸部が前記軸穴内を摺動し、前記傘部が前記インク供給口を密着して塞ぐように構成されている。
請求項6に記載のインクカートリッジは、請求項1から5のいずれかに記載のインクカートリッジにおいて、前記第1の封止手段および前記第2の封止手段は、前記インク室側から前記インクカートリッジの外部に向かって貫通した開口を有する弁座部と、その弁座部に向けて付勢され前記弁座部に着座して前記弁座部の開口を塞ぐ着座状態と、前記付勢に抗して前記弁座部側から押された場合に前記弁座部から離間して前記弁座部の開口を開放する開放状態とに移動可能な弁部材とを備えている。
請求項1に記載のインクカートリッジによれば、インクを供給する側の第2の封止手段よりもインク室側の供給側連通室内に、インクが供給側連通室からインク供給口を通過するのを阻止する逆止弁を備えているので、インクカートリッジが記録装置に装着されることにともない、大気を導入する側の第1の封止手段およびインクを供給する側の第2の封止手段が大気導入口及びインク供給口をそれぞれインクカートリッジの外部に対して開放した場合に、また、第1の封止手段が大気導入口を開放するのより先に第2の封止手段がインク供給口を開放した場合に、減圧状態にあるインク室にインク供給口からインクが逆流することを防止し、インクカートリッジ内の脱気されたインクに記録装置側のインクが混入してインクの脱気状態を劣化させたり、また記録ヘッドのノズル内のインクメニスカスが破壊されることによる記録ヘッドからのインクの吐出不良をなくし、記録品質を良好に保つことができるという効果がある。
請求項2に記載のインクカートリッジによれば、請求項1に記載のインクカートリッジの奏する効果に加え、大気導入口とインク供給口は、インク室の一側に並べて形成されているので、インクカートリッジが記録装置に装着されることにともない、第1および第2の封止手段が大気導入口及びインク供給口を開放する、すなわち、インクカートリッジが一つの方向から装着されることにより2つの封止手段が大気導入口及びインク供給口をそれぞれ開放できるので、インクカートリッジの記録装置への装着が容易であり、このときインクカートリッジの傾斜等により、いずれの封止手段が先に大気導入口、もしくは、インク供給口を開放しても上記の通りインクの逆流を防止することができるという効果がある。
請求項3に記載のインクカートリッジによれば、請求項1または2に記載のインクカートリッジの奏する効果に加え、前記インクカートリッジの姿勢を、前記逆止弁が前記インク供給口の下方に位置する姿勢としたときに、逆止弁は、その自重により移動してインク供給口を開放しており、供給側連通室からインク供給口に向かうインクの流れが生じたときのみ、インクが供給側連通室から前記インク供給口を通過するのを阻止するように構成されているので、少量の逆流は許容され、記録ヘッド側の圧力が大きく変動することを防止することができるという効果がある。すなわち、常態において弁が閉じられていてインクを供給する場合だけ弁を開くように構成すると、キャリッジの移動などにより記録ヘッド側の圧力が変動して上昇した場合に、全くインクが逃げる場所がなくなり、記録ヘッド側の圧力が高くなって、正常な吐出が行えなくなる。常態において、弁を開放することにより、インク室への多少の逆流を許容することにより、この現象を防止することができる。
請求項4に記載のインクカートリッジによれば、請求項1から3のいずれかに記載のインクカートリッジの奏する効果に加え、第1の封止手段は、大気導入口を覆って大気側連通室内に設けられ、第2の封止手段は、インク供給口を覆って供給側連通室内に設けられているので、導入される大気と供給されるインクとが完全に分離されていて供給されるインクに大気が混入されることがないという効果がある。
請求項5に記載のインクカートリッジによれば、請求項1から4のいずれかに記載のインクカートリッジの奏する効果に加え、逆止弁は、インク室を形成する底壁を備え、その底壁には、インク供給口と、軸穴とが形成されており、逆止弁は、供給側連通室内においてインク供給口と対向配置された傘部と、その傘部から軸穴を通ってインク室側に延びる軸部と、その軸部のうちインク室内に延びる部分に軸部よりも膨出した膨出部とを備え、インクカートリッジの姿勢を、傘部が前記インク供給口の下方に位置する姿勢としたときに、逆止弁はその自重により移動して、前記膨出部が前記底壁の上面に係止されて、前記傘部が前記インク供給口と間隔を空けて配置され供給側連通室からインク供給口に向かうインクの流れが生じた場合は、軸部が前記軸穴内を摺動し、傘部が前記インク供給口を密着して塞ぐように構成されているので、逆止弁を簡単かつ安価に形成できるとともに、上記のように記録ヘッド側での圧力変動を防止し、かつ逆流が生じた場合は、確実に阻止することができるという効果がある。
請求項6に記載のインクカートリッジによれば、請求項1から5のいずれかに記載のインクカートリッジの奏する効果に加え、インクカートリッジを記録装置に装着する前には弁座部が有するインク室側からインクカートリッジの外部に向かって貫通した開口は、弁座部に着座している弁部材によって塞がれている。一方、インクカートリッジが記録装置に装着されると、弁座部に着座している弁部材が弁座部側から押されて弁座部から離間し、弁座部の開口が開放される。よって、第1の封止手段および第2の封止手段を簡単な構成で形成することができるとともに、インクカートリッジの記録装置への装着が容易であるという効果がある。
以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施例におけるインクカートリッジ1と、そのインクカートリッジ1を装着するインクジェット記録装置2とを示した概略図である。
インクカートリッジ1は、インクを吐出する記録ヘッド7を備えたインクジェット記録装置2に着脱可能に構成され、記録ヘッド7に供給するインクを貯留するためのものである。
インクカートリッジ1は、上面を開放した中空箱状の本体ケース1aと、その本体ケース1aの開放上面を密閉する蓋1bとを備え、記録ヘッド7に供給するインクは本体ケース1aの内部に形成されるインク室16(図2参照)に貯留されている。尚、インクジェット記録装置2には、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のカラーインクがそれぞれ充填された複数個のインクカートリッジが装着される。
インクジェット記録装置2は、インクカートリッジ1を着脱可能に装着する装着部3と、インクカートリッジ1から可撓性のインク供給チューブ4を介して供給されるインクを貯留するタンク5と、そのタンク5に貯留されたインクを記録用紙6に向けて吐出する記録ヘッド7と、タンク5と記録ヘッド7とが搭載され水平方向に往復動作するキャリッジ8と、そのキャリッジ8が往復移動するガイドとなるキャリッジ軸9と、記録用紙6を搬送する搬送機構10と、パージ装置11とを備えている。
装着部3は、ベース部3aと、そのベース部3aの両側から立設するガイド部3bとから成り、ガイド部3bに挟まれたベース部3aには、インクカートリッジ1内に貯留されたインクを抽出する中空状の突出したインク抽出管12と、インクカートリッジ1内に大気を供給する大気供給路13とが配設されている。
このインク抽出管12の一端側には、インク供給チューブ4が連結され、インク抽出管12は、インク供給チューブ4を介してタンク5と連通されている。大気供給路13には、大気供給チューブ15の一端が連結され、他端は、大気に連通されている。
記録ヘッド7には、記録用紙6と対向する面に複数のノズル孔が備えられ、圧電素子からなるアクチュエータを駆動することによって、ノズル孔からタンク5に貯留されたインクが記録用紙6に向けて吐出される。尚、実際に記録動作をする場合には、記録ヘッド7を搭載したキャリッジ8が往復移動しながら、記録用紙6に記録が行われる。
また、記録ヘッド7は、装着部3よりも上方に配置されており、ノズル孔内のインクは、装着部3に装着されたインクカートリッジ1とノズル孔との水頭差により負の圧力(背圧)が与えられている。
パージ装置11は、記録範囲外であって記録ヘッド7に対向するように配置されており、記録ヘッド7のノズル孔形成面を覆うパージキャップ11aと、パージキャップ11aと連通する廃インクチューブ11bと、廃インクチューブ11bを介してノズル孔からインクを吸引するポンプ11cとを備えている。
パージ処理を実行する場合には、キャリッジ8をパージ処理実行位置に移動させ、記録ヘッド7のノズル孔形成面をパージキャップ11aで覆う。この状態でポンプ11cを駆動して、記録ヘッド7の内部に溜まる気泡などを含んだ不良インクを吸引する。吸引された不良インクは、廃インクチューブ11bを介して図示しない廃インクタンクに貯められる。なお、記録動作やパージ処理は、インクジェット記録装置2に搭載された中央演算装置であるCPU(図示せず)の下で制御される。
次に、図2を参照して、インクカートリッジ1のインクジェット記録装置2へ装着されるジョイント部分(図1のA部分)の構成について説明する。図2(a)は、インクジェット記録装置2に装着する前の状態を、(b)は装着した後の状態を示すジョイント部分の断面図である。
インクカートリッジ1は、インク室16を形成する底壁1cと周壁1iとを有し上面が開放された本体ケース1aと、その本体ケース1aの開放上面を覆う蓋部材1bと、本体ケース1aの底壁1cをキャップするキャップ部材1eとにより構成され、本体ケース1aに蓋部材1bおよびキャップ部材1eとを溶着してインクカートリッジ1が形成される。キャップ部材1eには、後述する弁装置23、24を外部に露出する2つの露出孔1f、1gがそれぞれ形成されている。
底壁1cの下面には、インク室16内のインクを外側に供給するために開口した供給側連通室30と、インク室16内に大気を導入するために開口した大気側連通室50とが形成されている。両連通室30、50は、底壁1cの下面からそれぞれ一体に突出形成された筒壁1h、1k内に画定されている。
さらに、供給側連通室30内の底壁1cには、供給側連通室30とインク室16との間を連通する複数のインク供給口1dが形成されており、そのインク供給口1dを開閉する略傘状の逆止弁60が配設されている。逆止弁60については、後述する。
また、大気側連通室50内の底壁1cには、大気側連通室50とインク室16との間を連通する大気導入口1jが形成されている。この大気導入口1jは、実質的に大気側連通室50と実質的に同径に形成されている。大気導入口1jに対応する底壁1cの上面には、中空筒部材62がインク室16内に突出して形成さている。中空部材62は、内部流路を大気側連通室50、大気導入口1jと連通し、インク16内のインク液面より上に開口している。
連通室30、50には、それぞれ封止手段としての弁装置23,24が固着されている。供給側の弁装置23は、ゴム状の弾性部材で一体に製作された支持部材46と、樹脂材料で構成された弁部材54とを備えている。支持部材46は、ほぼ円筒形の外形をなし、弁座部46a、その弁座部46aよりもインク室16側に付勢部46b、付勢部46bの外周に取付部33とを一体に成形して構成される。弁部材54は、付勢部46bによって弁座部46aに当接する方向に付勢されてその付勢部46b内に収容されている。
取付部33は、付勢部46bの外径よりも大きく形成されている。また、連通室30は、取付部33を収納するために外側へ径が大きくなる段状面44を有している。
取付部33には、段状面44と対向する面に突起43が形成され、突起43を段状面44に押圧して変形させながらキャップ部材1eと段状面44との間に取付部33が挟持固着されている。
弁座部46aはその中央に軸線方向に貫通した開口41、その開口41の下部に挿入口35、さらにその下部にテーパ状の誘導路40を有する。挿入口35は、インクカートリッジ1が装着部3に装着されたとき、インク抽出管12が密着して挿入される大きさに形成さている。
付勢部46bは、弁座部46aの外周からインク室16側に円筒状に立ち上がった側壁部36と、その側壁部36と連接し弁部材54のインク室16側に当接するように内側に張り出した張出部37とにより形成され、張出部37の中央に開口37aを有している。付勢部46bは、弁部材54を弁座部46aに当接させる方向に、側壁部36と張出部37との弾性力により弁部材54を付勢し、常態では弁部材54を弁座部46aに密着させている。また、インク抽出管12が挿入孔35に挿入されて弁部材54をインク室16側に押し上げることで、側壁部36が伸びて張出部37を押し上げ、弁部材54の底部と弁座部46aとの間にインク流路のための隙間が形成される。
弁部材54は、図4に示すように、底部57と、その底部57の外周より垂直で上方にかつ円筒状に延びる弁側壁部56と、底部57と弁側壁部56とに渡って連続して形成された連通路58とを備えている。底部57は、弁座部46aと対向する端面に、連通路58よりも中心側でかつ開口41よりも外側となる位置に、弁座部46a側に突起し環状に形成された突起部材57aを有している。突起部材57aは、付勢部46bの押圧により弁座部46aを弾性変形させてその弁座部46aの上面に密着する。
弁装置24は、弁装置23と同様に、ゴム状の弾性部材で一体に製作された支持部材63と、樹脂材料で構成された弁部材65とを備えている。支持部材63は、支持部材46と同様に弁座部63a、付勢部63b、取付部63eを一体に成形して構成され、それらの機能は、支持部材46のものと同一であるので、その説明を省略する。
弁座部63aには、後述する弁部材65の操作部材67が挿通される貫通口63cが形成され、その弁座部63aの下部には、貫通口63cの周囲を囲むように、円筒状のシール部63dが一体に形成されている。
弁部材65は、図5に示すように、上部に円筒部66と下部に操作部材67とほぼ中央部に弁部68とを有する。弁部68は、図4に示す弁部材54と同様に、底部57と、弁側壁部56と、連通路58と、底部57下面の突起部材57aとを備えている。
円筒部66は、底部57から垂直に立ち上げられた円筒形であり、付勢部46bの開口を間隔をおいて貫通し、インクカートリッジ1が装着部3に正常に装着されて弁部材65が上昇したとき、筒部材62の内部流路と間隔をおいて位置する。
操作部材67は、底部57から垂直に下方に延設され突起であり、弁座部46aの貫通口63cとの間に大気の流通のための間隔をおいて、その貫通口63cを貫通して下方に突出している。
このインクカートリッジ1が装着される装着部3には、インク供給側には、インク抽出管12が突出して形成され、インク抽出管12の下部周囲は、スポンジ等の多孔質弾性体3cが、凹部に埋設されている。この多孔質弾性体3cは、万が一、インクがインク供給側から漏れた場合に、その漏れたインクを吸収するために設けられている。
インク抽出管12の上端には、その内部流路と外周とを半径方向に接続する連通口12aが欠切状に形成され、インク抽出管12が弁部材54に当接したとき、インク抽出管12の内部流路とインク室16との連通を確保する。
大気導入側は、インクカートリッジ1の支持部材63に形成されたシール部63dに対応して、凹部3dが形成され、その凹部3dには、操作部材67の下端とずれた位置に大気供給路13が形成されている。凹部3dは、図2(b)に示すように、インクカートリッジ1が装着部3に装着された場合に、シール部63dが嵌め込まれ、そのシール部63dの先端が弾性変形してこの凹部3dの底部に密着し、大気供給路13と大気導入口1jとを外側に対してシールして連通状態にする。
次に図3を参照して逆止弁60について説明する。図3は、逆止弁60の斜視図であって、逆止弁60は、弾性のある樹脂材料で一体に形成され、インク供給口1dと対向する膜状の傘部60cとそれに連接した軸部60bとを有し、軸部60bには、膨出部60aが形成されている。この軸部60bが、底壁1cに、インク供給口1dに隣接して形成された軸穴1nに摺動可能に挿入され、常態では、逆止弁自身の自重により膨出部60aが底壁上面に係止されて垂下され、傘部60cがインク供給口1dと間隔を空けた状態に保持される。したがって、常態においては、インク室16のインクはインク供給口1dから、連通室30へ流出することができる。一方、連通室30からインク室16に向かう流れが生じると、傘部60cが軸部60bを伴って持ち上げられ、傘部60cがインク供給口1dに密着して塞ぎ、逆流が阻止される。
次に図2(a)と(b)とを参照してインクカートリッジ1が、インクジェット記録装置2の装着部3に装着される前と後の状態について説明する。同図(a)は、インクカートリッジ1が、インクジェット記録装置2の装着部3に装着される前の状態を示す図であって、大気導入側は、操作部材67が、キャップ1eの底面から下方に突出し、その下端は、シール部63dの最下端より少し上方に位置するように配設されていて、弁部材65は、弁座部63aに密着している。
一方、インク供給側も同様に、弁部材54が付勢部46bにより弁座部46aに密着している。
同図(b)に示すように、インクカートリッジ1が装着された場合には、インク供給側は、インク抽出管12の先端が、弁部材54を押し上げ、弁装置23が開放される。
大気導入側は、凹部3dの底に操作部材67の先端が当接し、弁部材65が固定された状態で、支持部材63の弁座部63aが、下方に移動され、弁装置24が開放される。
インクカートリッジ1はインク室16内のインクを脱気状態に維持するために減圧状態で包装袋内に包装されている。大気導入側の弁装置24およびインク供給側の弁装置23がほぼ同時に開放されると、インク供給管12と大気供給路13との両方からインク室16側へ向かう流れが生じるが、インク供給管12と記録ヘッド7との間の流路内に残留していたインクの逆流は逆止弁60によって阻止され、大気が大気供給路13から中空筒部材62内を通ってインク室16の上部に急速に流入する。このため、梱包状態で輸送中にインクカートリッジが転倒する等して中空筒部材62内にインクが侵入していたとしても、そのインクは、大気の流入と一緒にインク室16へ戻される。仮に、インクカートリッジを前記装着部に装着する際に、インクカートリッジが傾斜等して、大気導入側の弁部材65よりもインク供給側の弁部材54が先に開放された場合、上記のようにインク供給管12からインク室16へインクの急激な逆流が生じるが、その流れによって逆止弁60が上昇して膜状の傘部60cでインク供給口1dを閉じ、その流れは阻止される。好ましくは、インク供給管12と弁部材65の操作部材67との長さを適宜設定することで、インク供給側の弁装置23よりも大気導入側の弁装置24が先に確実に開放し、インク供給管12からの急激な逆流を阻止することができる。
常態では、逆止弁60は傘部60cがインク供給口1dから離れた位置へ自重で下降し、インク室16からインクが、インク供給口1d、弁部材54の連通路58、インク供給管12を通して記録ヘッド7に供給される。そしてインク室16からのインクの流出にともない、大気供給路13から中空筒部材62内を通ってインク室16の上部に大気が供給される。このとき、大気導入側の弁手段65の円筒部66は、中空筒部材62の内部流路と間隔を置いて位置し、大気の流路を確保している。
また、記録動作中、キャリッジ8の移動にともないインク供給チューブ4内のインクが慣性により移動し、そのチューブ4内の圧力が変動するが、上記のように常態では逆止弁60がインク供給口1dを開放しているので、上記圧力変動にともなうインク供給管12とインク室16との間のわずかな流通を許容できる。このため、記録ヘッド7での圧力変動を少なくでき、安定したインク吐出を行うことができる。
以上、実施例に基づいて本発明を説明したが、本発明は、上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
例えば、上記実施例では、逆止弁60を傘部と軸部とからなる傘状のものとしたが、例えば長方形の膜の一辺を固定し、他の辺を自由に開閉するような構造などの逆止弁としても良い。
また、装着部の大気導入路13を、インク供給管12と同様に中空筒状に突出させるとともに大気連通側の弁装置24をインク供給側の弁装置23と同一構造のものにすることもできる。また、インク供給管12を装着部から突出しない形状とするとともにインク供給側の弁装置23を大気連通側の弁装置24と同一構造のものにすることもできる。
さらに、各弁装置23,24に代えて、連通室30,50にゴム栓を嵌合し、装着部から突出した中空針状のインク供給管、大気導入管をそのゴム栓に突き刺すようにすることもできる。
本発明のインクカートリッジを装着するインクジェット記録装置を示した概略図である。 インクカートリッジをインクジェット記録装置に装着する前の状態(a)と後の状態(b)とを示す断面図である。 逆止弁を示す斜視図である。 弁部材を示した図で、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)はA−A線断面図、(d)は底面図である。 弁部材を示した図で、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は底面図である。
1 インクカートリッジ
1c 底壁
1n 軸穴
2 インクジェット記録装置
1d インク供給口
1j 大気導入口
16 インク室
23 弁装置(第2の封止手段)
24 弁装置(第1の封止手段)
30 供給側連通室
50 大気側連通室
46a、63a 弁座部
54、65 弁部材
60 逆止弁
60a 膨出部
60b 軸部
60c 傘部

Claims (6)

  1. インクを貯留するインク室を有し、そのインク室が減圧状態にあるインクカートリッジにおいて、
    前記インク室に連通して形成され、前記インク室内に大気を導入するために開口した大気導入口と、
    その大気導入口を前記インクカートリッジの外部に対して開放可能に封止する第1の封止手段と、
    前記インク室に連通して形成され、前記インク室内のインクを外部に供給するために開口したインク供給口と、
    そのインク供給口を介して前記インク室と連通する空間であって、前記インクカートリッジの外部に向かって延び、前記インク供給口とは反対の一端側が前記インクカートリッジの外部に開放されている供給側連通室と、
    その供給側連通室内に設けられ、前記インク供給口を前記インクカートリッジの外部に対して開放可能に封止する第2の封止手段と、
    その第2の封止手段よりも前記インク室側の前記供給側連通室内に設けられ、インクが前記供給側連通室から前記インク供給口を通過するのを阻止する逆止弁とを備えていることを特徴とするインクカートリッジ。
  2. 前記大気導入口と前記インク供給口とは、前記インク室の一側に並べて形成されていることを特徴とする請求項1に記載のインクカートリッジ。
  3. 前記インクカートリッジの姿勢を、前記逆止弁が前記インク供給口の下方に位置する姿勢としたときに、前記逆止弁は、その自重により移動して前記インク供給口を開放しており、前記供給側連通室から前記インク供給口に向かうインクの流れが生じたときのみ、インクが前記供給側連通室から前記インク供給口を通過するのを阻止することを特徴とする請求項1または2に記載のインクカートリッジ。
  4. 前記大気導入口を介して前記インク室と連通する空間であって、前記インクカートリッジの外部に向かって延び、前記大気導入口とは反対の一端側が開放されている大気側連通室を備え、
    前記第1の封止手段は、前記インクカートリッジの外部に対して前記大気導入口を覆って前記大気側連通室内に設けられ、
    前記第2の封止手段は、前記インクカートリッジの外部に対して前記インク供給口を覆って前記供給側連通室内に設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のインクカートリッジ。
  5. 前記インク室を形成する底壁を備え、
    その底壁には、前記インク供給口と、軸穴とが形成されており、
    前記逆止弁は、前記供給側連通室内において前記インク供給口と対向配置された傘部と、その傘部から前記軸穴を通って前記インク室側に延びる軸部と、その軸部のうち前記インク室内に延びる部分に前記軸部よりも膨出した膨出部とを備え、
    前記インクカートリッジの姿勢を、前記傘部が前記インク供給口の下方に位置する姿勢としたときに、前記逆止弁はその自重により移動して、前記膨出部が前記底壁の上面に係止されて、前記傘部が前記インク供給口と間隔を空けて配置され
    前記供給側連通室から前記インク供給口に向かうインクの流れが生じた場合は、前記軸部が前記軸穴内を摺動し、前記傘部が前記インク供給口を密着して塞ぐように構成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のインクカートリッジ。
  6. 前記第1の封止手段および前記第2の封止手段は、
    前記インク室側から前記インクカートリッジの外部に向かって貫通した開口を有する弁座部と、
    その弁座部に向けて付勢され前記弁座部に着座して前記弁座部の開口を塞ぐ着座状態と、前記付勢に抗して前記弁座部側から押された場合に前記弁座部から離間して前記弁座部の開口を開放する開放状態とに移動可能な弁部材とを備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のインクカートリッジ。
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