JP4492051B2 - 液体噴射ヘッドの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液滴を吐出する液体噴射ヘッドの製造方法に関し、特に、インク滴を吐出するノズル開口と連通する圧力発生室に供給されたインクを圧電素子によって加圧することにより、ノズル開口からインク滴を吐出させるインクジェット式記録ヘッドの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インク滴を吐出するノズル開口と連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を圧電素子により変形させて圧力発生室のインクを加圧してノズル開口からインク滴を吐出させるインクジェット式記録ヘッドには、圧電素子の軸方向に伸長、収縮する縦振動モードの圧電アクチュエータを使用したものと、たわみ振動モードの圧電アクチュエータを使用したものの2種類が実用化されている。
【0003】
そして、たわみ振動モードのアクチュエータを使用したものとしては、例えば、振動板の表面全体に亙って成膜技術により均一な圧電材料層を形成し、この圧電材料層をリソグラフィ法により圧力発生室に対応する形状に切り分けて各圧力発生室毎に独立するように圧電素子を形成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、このインクジェット式記録ヘッドは、圧電素子が大気中に曝されているので、大気中に含まれる水分により圧電素子が破壊されるという問題を有している。そこで、このような問題を解決するため、圧電素子が設けられた流路形成基板の一方面上に、圧電素子を封止する圧電素子保持部を有する封止基板を接着剤によって接合した構造を有するインクジェット式記録ヘッドが提案されている(例えば、特許文献2参照)。なお、接着剤としては、例えば、エポキシ系接着剤を用いるのが一般的である。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−286131号公報 (第1図)
【特許文献2】
特開2003−127365号公報 (第2図、第7頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したインクジェット式記録ヘッドの製造方法では、流路形成基板と封止基板とをエポキシ系接着剤を介して当接させて圧電素子を封止しても、圧電素子保持部内は大気中とほぼ同じ湿度となってしまい、圧電素子が水分によって破壊されてしまうという問題がある。すなわち、流路形成基板と封止基板とを接着する際、空気中で加熱するため、大気中に存在する水分(水蒸気)が硬化途中のエポキシ系接着剤を通って圧電素子保持部内に浸入し、圧電素子保持部内の所定の相対湿度とすることができず、圧電素子保持部内に浸入した水分によって圧電素子が破壊され、製品不良となってしまうという問題がある。勿論、このような問題は、インクを吐出するインクジェット式記録ヘッドだけでなく、インク以外を吐出する他の液体噴射ヘッドにおいても同様に発生する。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み、圧電素子が水分によって破壊されるのを比較的容易に且つ有効に防止できる液体噴射ヘッドの製造方法を提供することを課題とする。
【0008】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、ノズル開口に連通して圧力発生室が設けられると共に当該圧力発生室内に圧力変化を生じさせる圧電素子が一方面側に振動板を介して設けられた流路形成基板と、該流路形成基板の前記圧電素子側の面に接合され前記圧電素子を封止する圧電素子保持部を有する封止基板とを具備する液体噴射ヘッドの製造方法であって、不活性ガスが充填された環境のもと、常温下で前記流路形成基板と前記封止基板とをエポキシ系接着剤によって仮接着し、さらに前記環境下で前記両基板を加熱することで前記接着剤を接着するという二段階の接着工程を具備することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法にある。
【0009】
かかる第1の態様では、不活性ガスが充填された環境のもと、常温下で前記両基板をエポキシ系接着剤で仮接着し、その後加熱処理を行うという工程により、加熱処理において発生する基板の歪みや伸縮をより抑制することができる。
【0012】
本発明の第2の様態は、ノズル開口に連通して圧力発生室が設けられると共に当該圧力発生室内に圧力変化を生じさせる圧電素子が一方面側に振動板を介して設けられた流路形成基板と、該流路形成基板の前記圧電素子側の面に接合され前記圧電素子を封止する圧電素子保持部を有する封止基板とを具備する液体噴射ヘッドの製造方法であって、不活性ガスが充填された環境下で、前記流路形成基板と前記封止基板とをエポキシ系接着剤により接着する前に、前記接着剤に含有される水分を除去する脱水工程を具備することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法にある。
【0013】
かかる第2の態様では、所定量の水分が除去されたエポキシ系接着剤を用いて接着工程を行うことにより、エポキシ系接着剤の硬化時にその内部に存在する水分が圧電素子保持部内に浸入するのを有効に防止することができる。
【0014】
本発明の第3の態様は、第2の態様において、前記脱水工程を、前記圧電素子保持部内の常温での相対湿度が20〜30%Rhとなるまで行うことを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法にある。
【0015】
かかる第3の態様では、接着工程後の圧電素子保持部内の相対湿度を小さくすることができる。
【0016】
本発明の第4の態様は、第1又は第2の態様において、前記不活性ガスが窒素、アルゴン、及びヘリウムの少なくとも一種を含むことを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法にある。
【0017】
かかる第4の態様では、所定の不活性ガスを用いた接着工程を行うことにより、流路形成基板と封止基板とを加熱する環境の湿度が低減され、圧電素子保持部内に水分が浸入するのを有効に防止することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの概略を示す分解斜視図であり、図2は、図1の平面図及び断面図である。図1及び図2に示すように、流路形成基板10は、本実施形態では面方位(110)のシリコン単結晶基板からなり、その一方面には予め熱酸化により形成した酸化シリコン(SiO2)からなる、厚さ1〜2μmの弾性膜50が形成されている。
【0019】
この流路形成基板10には、シリコン単結晶基板をその一方面側から異方性エッチングすることにより、複数の隔壁11によって区画された圧力発生室12が幅方向に並設されている。また、その長手方向外側には、後述する封止基板30のリザーバ部32と連通される連通部13が形成されている。さらに、この連通部13は、各圧力発生室12の長手方向一端部でそれぞれインク供給路14を介して連通されている。
【0020】
ここで、異方性エッチングは、シリコン単結晶基板のエッチングレートの違いを利用して行われる。例えば、本実施形態では、シリコン単結晶基板をKOH等のアルカリ溶液に浸漬すると、徐々に侵食されて(110)面に垂直な第1の(111)面と、この第1の(111)面と約70度の角度をなし且つ上記(110)面と約35度の角度をなす第2の(111)面とが出現し、(110)面のエッチングレートと比較して(111)面のエッチングレートが約1/180であるという性質を利用して行われる。かかる異方性エッチングにより、二つの第1の(111)面と斜めの二つの第2の(111)面とで形成される平行四辺形状の深さ加工を基本として精密加工を行うことができ、圧力発生室12を高密度に配列することができる。
【0021】
本実施形態では、各圧力発生室12の長辺を第1の(111)面で、短辺を第2の(111)面で形成している。この圧力発生室12は、流路形成基板10をほぼ貫通して弾性膜50に達するまでエッチングすることにより形成されている。ここで、弾性膜50は、シリコン単結晶基板をエッチングするアルカリ溶液に侵される量がきわめて小さい。また各圧力発生室12の一端に連通する各インク供給路14は、圧力発生室12より浅く形成されており、圧力発生室12に流入するインクの流路抵抗を一定に保持している。
【0022】
このような圧力発生室12等が形成される流路形成基板10の厚さは、圧力発生室12を配設する密度に合わせて最適な厚さを選択することが好ましい。例えば、1インチ当たり180個(180dpi)程度に圧力発生室12を配置する場合には、流路形成基板10の厚さは、180〜280μm程度、より望ましくは、220μm程度とするのが好適である。また、例えば、360dpi程度と比較的高密度に圧力発生室12を配置する場合には、流路形成基板10の厚さは、100μm以下とするのが好ましい。これは、隣接する圧力発生室12間の隔壁11の剛性を保ちつつ、配列密度を高くできるからである。なお、このような流路形成基板10は、図3に示すように、シリコン単結晶基板からなるシリコンウェハ130に複数個が一体的に形成される。そして、詳しくは後述するが、このシリコンウェハ130に圧力発生室12等を形成した後、シリコンウェア130を分割することによって複数の流路形成基板10となる。
また、流路形成基板10の開口面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が接着剤や熱溶着フィルム等を介して固着されている。
【0023】
一方、このような流路形成基板10の開口面とは反対側の弾性膜50の上には、厚さが例えば、約0.4μmの絶縁体膜55が形成され、この絶縁体膜55上には、厚さが例えば、約0.2μmの下電極膜60と、厚さが例えば、約1μmの圧電体層70と、厚さが例えば、約0.05μmの上電極膜80とが、後述するプロセスで積層形成されて、圧電素子300を構成している。ここで、圧電素子300は、下電極膜60、圧電体層70、及び上電極膜80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。そして、ここではパターニングされた何れか一方の電極及び圧電体層70から構成され、両電極への電圧の印加により圧電歪みが生じる部分を圧電体能動部という。本実施形態では、下電極膜60は圧電素子300の共通電極とし、上電極膜80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。何れの場合においても、各圧力発生室12毎に圧電体能動部が形成されていることになる。また、ここでは、圧電素子300と当該圧電素子300の駆動により変位が生じる振動板とを合わせて圧電アクチュエータと称する。なお、本実施形態では、弾性膜50、絶縁体膜55及び下電極膜60が振動板として作用する。
【0024】
また、流路形成基板10の圧電素子300側には、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を確保した状態で、その空間を密封可能な圧電素子保持部31を有する封止基板30がエポキシ系接着剤110によって接着され、圧電素子300はこの圧電素子保持部31内に密封されている。そして、この圧電素子保持部31内には、詳しくは後述するが、不活性ガス120が充填されている。
【0025】
さらに、封止基板30には、各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバ100の少なくとも一部を構成するリザーバ部32が設けられ、このリザーバ部32は、上述のように流路形成基板10の連通部13と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバ100を構成している。また、封止基板30の圧電素子保持部31とリザーバ部32との間の領域には、封止基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられている。そして、各圧電素子300から引き出されたリード電極90は、その端部近傍が貫通孔33内で露出されている。
【0026】
さらに、このような封止基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料(例えば、厚さが6μmのポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム)からなり、この封止膜41によってリザーバ部32の一方面が封止されている。また、固定板42は、金属等の硬質の材料(例えば、厚さが30μmのステンレス鋼(SUS)等)で形成される。この固定板42のリザーバ100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、リザーバ100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
【0027】
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドでは、図示しない外部インク供給手段からインクを取り込み、リザーバ100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、図示しない駆動ICからの駆動信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの下電極膜60と上電極膜80との間に駆動電圧を印加し、弾性膜50、絶縁体膜55、下電極膜60及び圧電体層70をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインク滴が吐出する。
【0028】
図4、図5及び図6は、圧力発生室12の長手方向のシリコンウェハの断面図である。以下、これら図4〜図6を参照して、本実施形態のインクジェット式記録ヘッドの製造方法について説明する。まず、図4(a)に示すように、流路形成基板10となるシリコンウェハ130を約1100℃の拡散炉で熱酸化して弾性膜50及び後述するマスク膜51を構成する二酸化シリコン膜52を全面に形成する。次いで、図4(b)に示すように、弾性膜50(二酸化シリコン膜52)上に、ジルコニウム(Zr)層を形成後、例えば、500〜1200℃の拡散炉で熱酸化して酸化ジルコニウム(ZrO2)からなる絶縁体膜55を形成する。次いで、図4(c)に示すように、例えば、少なくとも白金とイリジウムとからなる下電極形成膜65を絶縁体膜55上に形成後、下電極形成膜65をパターニングすることにより、圧力発生室12の列に対向する領域に所定幅で下電極膜60を形成する。
【0029】
次いで、図4(d)に示すように、シリコンウェハ130の全面に、各圧電素子を構成する圧電体層となる圧電体形成膜75を所定の厚さで形成する。本実施形態では、金属有機物を触媒に溶解・分散したいわゆるゾルを塗布乾燥してゲル化し、さらに600〜800℃の高温で焼成することで金属酸化物からなる圧電体形成膜75を得る、いわゆるゾル−ゲル法を用いて形成することにより、結晶が配向している圧電体形成膜75とした。なお、このように形成される圧電体形成膜75(圧電体層70)の材料としては、チタン酸ジルコン酸鉛系の材料を用いたが、インクジェット式記録ヘッドに使用する材料としては、良好な変位特性を得られればチタン酸ジルコン酸鉛系の材料に限定されない。また、このように成膜された圧電体形成膜75は、バルクの圧電体とは異なり結晶が優先配向しており、且つ本実施形態では、圧電体形成膜75は、結晶が柱状に形成されている。なお、優先配向とは、結晶の配向方向が無秩序ではなく、特定の結晶面がほぼ一定の方向に向いている状態をいう。また、結晶が柱状の薄膜とは、略円柱体の結晶が中心軸を厚さ方向に略一致させた状態で面方向に亘って集合して薄膜を形成している状態をいう。勿論、優先配向した粒状の結晶で形成された薄膜であってもよい。なお、このように薄膜工程で製造された圧電体形成膜75の厚さは、一般的に0.2〜5μmである。
【0030】
また、このように圧電体形成膜75を形成した後は、図5(a)に示すように、例えば、イリジウム(Ir)からなる上電極形成膜85を積層形成し、圧電体形成膜75及び上電極形成膜85を各圧力発生室12に対向する領域内にパターニングすることにより下電極膜60、圧電体層70及び上電極膜80からなる圧電素子300を形成する(図5(b))。次いで、図5(c)に示すように、金(Au)からなるリード電極形成膜95を流路形成基板10の全面に亘って形成後、例えば、レジスト等からなるマスクパターン(図示なし)を介してリード電極形成膜95を各圧電素子300毎にパターニングすることによってリード電極90を形成する。
【0031】
以上が膜形成プロセスである。このようにして膜形成を行った後、前述したアルカリ溶液によるシリコンウェハ130の異方性エッチングを行い、圧力発生室12、連通部13及びインク供給路14を形成する。具体的には、図6(a)及び図6(b)に示すように、シリコンウェハ130の圧電素子300側に、エポキシ系接着剤110を介して、予め圧電素子保持部31、リザーバ部32等が形成された封止基板形成材140を接着する接着工程を行う。
【0032】
詳しくは、まず、接着工程の前工程として、エポキシ系接着剤110に含有されている水分を所定量除去する脱水工程を行う。例えば、本実施形態では、シリンジに充填されたエポキシ系接着剤110の結露水分を大気中で蒸発させた後、エポキシ系接着剤110を一旦シリンジから取り出し、真空度10−2Torrで約30分間真空乾燥を行うことで、エポキシ系接着剤110から所定量の水分を除去した。これにより、後述する接着工程の際、圧電素子保持部31内にエポキシ系接着剤110に含まれる水分が浸入するのを有効に防止できる。ここで、脱水工程の条件、すなわち、真空度及び乾燥時間は、脱水工程だけを行った場合に圧電素子保持部31内の常温(約25℃)での相対湿度が20〜30%Rhとなるように決定するのが好ましい。これにより、シリコンウェハ130と封止基板形成材140とを良好に接着でき、且つ接着工程後の圧電素子保持部31内の相対湿度を小さくできる。
【0033】
次に、図6(a)に示すように、封止基板形成材140の圧電素子保持部31側の面に、脱水処理したエポキシ系接着剤110を塗布する。次いで、例えば、窒素、アルゴン及びヘリウム等の少なくとも一種を含む不活性ガス120の雰囲気下で、シリコンウェハ130と封止基板形成材140とをエポキシ系接着剤110を介して当接させ、常温で36時間放置し、両基板を仮接着する。これを、さらに、不活性ガスが充填されたオーブン内で、約65℃で5時間加熱することにより、エポキシ系接着剤110を完全に硬化させ、両基板を接着する(図6(b)参照)。また、これと同時に、圧電素子保持部31は、不活性ガス120が充填されて封止される。すなわち、圧電素子300は、不活性ガス120が充填された圧電素子保持部31内に密閉される。
【0034】
このように、本実施形態では、不活性ガス120を充填した環境下でシリコンウェハ130と封止基板形成材140とをエポキシ系接着剤110を介して当接させ、さらに不活性ガス120が充填されたオーブン内で加熱処理を行うことにより、水分が硬化途中のエポキシ系接着剤110を通って圧電素子保持部31内に浸入することはない。また、本実施形態では、このような接着工程の前に、エポキシ系接着剤110に含有された水分を所定量除去する脱水工程を行うようにしたので、その接着工程の際、エポキシ系接着剤110の硬化に伴い発生する水分(水蒸気)が圧電素子保持部31内に浸入することを防止できる。これにより、圧電素子300が水分によって破壊されるのを有効に防止することができる。特に、本実施形態では、脱水工程を行った後、不活性ガス120の雰囲気下で接着工程を行うようにしたので、圧電素子保持部31内の常温での相対湿度が1%Rh以下となり、圧電素子300が水分によって破壊されるのを有効に防止することができる。これにより、ヘッドの信頼性をさらに向上することができる。
【0035】
次に、図6(c)に示すように、シリコンウェハ130の封止基板形成材140との接合面とは反対側の面に形成されている二酸化シリコン膜52を所定形状にパターニングしてマスク膜51とし、このマスク膜51を介して前述したアルカリ溶液による異方性エッチングを行うことにより、シリコンウェハ130に圧力発生室12、連通部13及びインク供給路14等を形成する。なお、このように異方性エッチングを行う際には、封止基板形成材140の表面を封止した状態で行う。
【0036】
また、その後は、シリコンウェハ130の封止基板形成材140とは反対側の面にノズル開口21が穿設されたノズルプレート20を接合すると共に、封止基板形成材140にコンプライアンス基板40を接合して各チップサイズに分割することにより、図1に示すような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドとする。
【0037】
(実施形態2)
図7は、本発明の実施形態2に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの概略を示す平面図及び断面図である。図7に示すように、本実施形態では、封止基板30のリザーバ部32側とは反対側の領域に圧電素子保持部31と外部とを連通する封止孔34を設けるようにした。そして、この封止孔34の開口を封止部材150によって封止した以外は実施形態1と同様である。
【0038】
このような構成のインクジェット式記録ヘッドの製造方法では、上述した実施形態1と同様に、不活性ガスが充填された環境下で、シリコンウェハと封止基板形成材とを脱水処理したエポキシ系接着剤110によって接着する接着工程を行う。次に、封止基板形成材の封止孔34を封止部材150により封止する。ここで、このような封止部材150の材料は、例えば、樹脂材料等が挙げられ、本実施形態では、エポキシ系接着剤を用いた。このエポキシ系接着剤は、上述した実施形態1と同様に、脱水工程を行って水分を所定量除去したものを使用するのが好ましい。例えば、本実施形態では、シリンジに充填されたエポキシ系接着剤の結露水分を大気中で蒸発させた後、エポキシ系接着剤を一旦シリンジから取り出し、真空度10−2Torrで約30分間真空乾燥を行うことで、エポキシ系接着剤から所定量の水分を除去したものを使用した。そして、不活性ガスが充填された環境下で、脱水処理したエポキシ系接着剤によって封止孔34の開口を塞ぐと共にこれをエポキシ系接着剤が硬化する温度で加熱処理することにより、封止孔34の開口周縁に封止部材150を形成し、この封止部材150によって封止孔34及び圧電素子保持部31を密封する。
【0039】
このように、本実施形態では、封止基板形成材に圧電素子保持部31と外部とを連通する封止孔34を設けるようにしたので、シリコンウェハと封止基板形成材との接着工程の際に、圧電素子保持部31内に存在する水分は封止孔34を通って外部に抜ける。そして、この接着工程の後、不活性ガスが充填された環境下で、封止孔34の開口を封止部材150によって封止するようにしたので、圧電素子保持部31内を所定の相対湿度とすることができる。特に、封止部材150を脱水処理したエポキシ系接着剤によって形成するのが有効である。これにより、水分によって圧電素子300が破壊されるのを有効に防止することができ、ヘッドの信頼性を向上することができる。
【0040】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述したものに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態では、接着工程の前に脱水工程を設けたが、接着工程だけでも圧電素子が破壊されるのを十分に防止する効果はあるので、脱水工程を設けなくてもよい。なお、脱水工程を行わなくても、接着工程の不活性ガスの環境を調整すれば、圧電素子保持部内の常温での相対湿度を10%Rh以下とすることができる。
【0041】
また、上述した一実施形態では、液体噴射ヘッドとしてインクを吐出するインクジェット式記録ヘッドを一例として説明したが、本発明は、広く液体噴射ヘッド及び液体噴射装置全般を対象としたものである。液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンタ等の画像記録装置に用いられる記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(面発光ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等を挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施形態1に係る記録ヘッドの分解斜視図である。
【図2】 実施形態1に係る記録ヘッドの平面図及び断面図である。
【図3】 実施形態1に係るシリコンウェハを示す斜視図である。
【図4】 実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図である。
【図5】 実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図である。
【図6】 実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図である。
【図7】 実施形態2に係る記録ヘッドの平面図及び断面図である。
【符号の説明】
10 流路形成基板、12 圧力発生室、20 ノズルプレート、21 ノズル開口、30 封止基板、40 コンプライアンス基板、60 下電極膜、70圧電体層、80 上電極膜、90 リード電極、95 リード電極形成膜、100 リザーバ、110 エポキシ系接着剤、120 不活性ガス、130 シリコンウェハ、140 封止基板形成材、300 圧電素子
Claims (3)
- ノズル開口に連通して圧力発生室が設けられると共に当該圧力発生室内に圧力変化を生じさせる圧電素子が一方面側に振動板を介して設けられた流路形成基板と、該流路形成基板の前記圧電素子側の面に接合され前記圧電素子を封止する圧電素子保持部を有する封止基板とを具備する液体噴射ヘッドの製造方法であって、
不活性ガスが充填された環境下で、前記流路形成基板と前記封止基板とをエポキシ系接着剤により接着する前に、前記接着剤に含有される水分を除去する脱水工程を具備することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。 - 請求項1において、前記脱水工程を、前記圧電素子保持部内の常温での相対湿度が20〜30%Rhとなるまで行うことを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
- 請求項1において、前記不活性ガスが窒素、アルゴン、及びヘリウムの少なくとも一種を含むことを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
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JP2003198431A JP4492051B2 (ja) | 2003-07-17 | 2003-07-17 | 液体噴射ヘッドの製造方法 |
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