以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本明細書では、前後及び上下の方向は、車両の前後・上下方向に沿う方向を基準とし、左右の方向は、車両の前方側から後方側を見た際の左右の方向に沿う方向を基準とする。
第1実施形態の歩行者保護装置S1は、図1〜3に示すように、車両Vの前端側に配置されるフードパネル8の左右両縁側におけるフロントフェンダーFFの部位に配設される2つのエアバッグ装置19L・19Rから、構成されている。
フロントフェンダーFFの部位には、図2・3に示すように、ボディ1側の部材であるフードリッジリインホース2が、前後方向に沿って配設されており、フードリッジリインホース2の上方を覆うように、フロントフェンダーパネル12が、配設されている。フロントフェンダーパネル12は、周囲のフードパネル8と表面を略面一とするように、配設されている。フードパネル8は、左右方向の両縁側における後端8a近傍となる位置において、ヒンジ11を使用して、車両Vのボディ1に対して、前開きで開閉可能に連結されている。フードパネル8は、実施形態の場合、共に板金製とされるアウタパネル9とインナパネル10とから構成されている。実施形態の場合、フードパネル8は、アルミニウム製(アルミニウム合金製)とされている。
エアバッグ装置19L・19Rは、左右対称形とされる同一の部材から構成されている。実施形態では、右側に配設されるエアバッグ装置19Rを例に採り、説明する。エアバッグ装置19(19R)は、図3に示すように、エアバッグ31、エアバッグ31に膨張用ガスを供給するインフレーター26、折り畳まれたエアバッグ31とインフレーター26とを収納する収納部14、及び、収納部14の上方側を覆うエアバッグカバー20を、備えて構成されている。
折り畳まれたエアバッグ31とインフレーター26とを収納するための収納部14は、図2・3に示すように、フロントフェンダーFFの部位において前後方向に沿って配設されるもので、実施形態の場合、フロントフェンダーパネル12を下方に突出させるように凹ませて、フロントフェンダーパネル12と一体的に形成されている。具体的には、収納部14は、上方側を開口させた有底の略箱形状に、フロントフェンダーパネル12を凹ませて、構成されるもので、略上下方向に沿って配設される略四角筒形状の周壁部15と、周壁部15の下端側を閉塞するように配設される底壁部17と、を備えて構成されている。収納部14における上面側の開口14aの周囲には、エアバッグカバー20を収納可能な収納凹部12aが、フロントフェンダーパネル12を凹ませるようにして、形成されている。また、収納凹部12aにおける収納部14の開口14a周縁部位には、図3に示すように、エアバッグカバー20の後述する取付壁部21を挿通させるための複数の挿通孔12bが、貫通して、形成されている。
周壁部15における左右で対向する壁部15a・15bの外表面側には、エアバッグカバー20を収納部14に組み付けるための複数の係止爪部16が、突設されている。各係止爪部16は、先端側を下方に屈曲させて構成されて、この先端側を、エアバッグカバー20の後述する取付壁部21に形成される係止穴部21a周縁に、係止可能な構成とされている。なお、実施形態の場合、各係止爪部16は、壁部15a・15bに所定形状の切り込みを形成し、壁部15a・15bから切り起こすようにして、壁部15a・15bと一体的に形成されている。また、底壁部17には、図3に示すように、インフレーター26を収納部14に取り付けるためのボルト28を挿通させる挿通孔17aが、形成されている。また、実施形態の場合、収納部14は、底壁部17の下面側を、ボディ1側の部材であるフードリッジリインホース2に載置させるように、配設されている。
エアバッグカバー20は、オレフィン系熱可塑性エラストマー等の合成樹脂製とされて、収納部14の上部側において、収納部14の開口14aを覆うように、配設されている。実施形態の場合、エアバッグカバー20は、上面側を、周囲のフロントフェンダーパネル12の外表面と略面一とするように、フロントフェンダーパネル12に形成される収納凹部12a内に収納されている。エアバッグカバー20は、収納部14における周壁部15の外周側に配設されるように下方に突設される取付壁部21と、収納部14の開口14aを覆うように配設される天井壁部22と、を備えて構成されている。取付壁部21は、収納部14の周壁部15の外周側に隣接して、断続的に、複数配設されており、周壁部15における壁部15a・15bに隣接して配設される部位には、それぞれ、係止爪部16を係止させるための複数の係止穴部21aが、形成されている。エアバッグカバー20は、各取付壁部21をフロントフェンダーパネル12に形成される挿通孔12bに挿通させ、収納部14の周囲に配設される複数の係止爪部16を係止穴部21a周縁に係止させることにより、収納部14(フロントフェンダーパネル12)に組み付けられている。
天井壁部22は、収納部14の開口14aを覆い可能に、前後方向に略沿って配設される長方形板状とされ、エアバッグ31の突出時に開き可能とされる扉部22aを備えて構成されている。天井壁部22における扉部22aの周縁には、エアバッグ31の突出時に破断可能とされる平面視で略コ字形状とされる破断予定部23と、開き時の回転中心となるヒンジ部24と、が、配設されている。実施形態の場合、扉部22aは、エアバッグ31の展開膨張時に、フードパネル8側に開き可能な構成とされている。
インフレーター26は、実施形態の場合、図2に示すごとく、収納部14の前後両端側となる2箇所に、配設されて、それぞれ、図示しないガス吐出口を備えた略円柱状とされている。各インフレーター26は、エアバッグ31内に膨張用ガスを流出可能に、エアバッグ31に連結されている。また、各インフレーター26は、図3に示すように、板金製のブラケット27により保持されており、このブラケット27を、ボルト28とナット29とを利用して、収納部14の底壁部17に固定させている。実施形態の場合、底壁部17から突出したボルト28は、フロントフェンダーパネル12(収納部14)の下部側に配設されるボディ1側の部材であるフードリッジリインホース2を貫通させた状態で、先端側にナット29を締結させている。
エアバッグ31は、インフレーター26から吐出される膨張用ガスを内部に流入させて展開膨張するもので、実施形態の場合、ポリエステルやポリアミド糸等を使用した織布から形成された袋状としており、図3に示すごとく、インフレーター26を固定するボルト28を利用して、インフレーター26とともに、収納部14に取付固定されている。エアバッグ31は、図1・2の二点鎖線及び図4に示すごとく、膨張完了時の形状を長手方向を前後方向に略沿わせた長方形板状とされるもので、膨張完了時に、フロントフェンダーFFの上方を、フードパネル8の左右方向の縁部側とヒンジ11の上方とを含めて、略全域にわたって覆うように構成されている。
車両Vには、図1に示すように、フロントバンパ4に、歩行者との衝突を検知可能なセンサ5が配設され、図示しないエアバッグ作動回路が、歩行者との衝突を検知した信号をセンサ5から入力させた際、インフレーター26を作動させて、エアバッグ31を展開膨張させるように、構成されている。
実施形態の歩行者保護装置S1では、車両搭載時において、フロントバンパ4に配設されるセンサ5が歩行者との衝突を検知し、エアバッグ装置19L・19Rの各インフレーター26に作動信号が入力されれば、インフレーター26から膨張用ガスが吐出され、エアバッグ31が、膨張用ガスを流入させて膨張することとなる。そして、エアバッグカバー20の扉部22aが、エアバッグ31に押されて、破断予定部23を破断させて開き、エアバッグ31が、収納部14の開口14aから上方に向かって突出し、図1・2の二点鎖線及び図4・5に示すごとく、膨張を完了させることとなる。
そして、第1実施形態の歩行者保護装置S1では、エアバッグ装置19L・19Rのエアバッグ31が、フロントフェンダーFFの上方を、前後方向に沿った略全域にわたって覆うように、膨張を完了させることとなることから、歩行者が車両Vと干渉した際に、膨張を完了させたエアバッグ31により、歩行者が、下方側にフードリッジリインホース2等の硬質部材が配置されるフロントフェンダーFF近傍の部位と干渉することを、防止できる。
従って、第1実施形態の歩行者保護装置S1では、歩行者が車両Vと干渉した際に、フロントフェンダーFFと干渉することを防止できる。
次に、本発明の第2実施形態である歩行者保護装置S2について説明をする。歩行者保護装置S2は、図6・7・10に示すように、フードパネル34と、フードパネル34の下部側に配設される跳ね上げ機構45と、フードパネル34の左右両縁近傍におけるフロントフェンダーFFの部位に配設される2つのエアバッグ装置19L・19Rと、から構成されている。エアバッグ装置19(19L・19R)は、前述の歩行者保護装置S1のエアバッグ装置19と同様の構成であり、同一の部材に同一の図符号を付して説明を省略する。
フードパネル34は、車両Vにおけるエンジンルーム7の上方を覆うように配設されて、左右方向の両縁側における後端34a近傍となる位置において、ヒンジ38を使用して、車両Vのボディ1に対して、前開きで開閉可能に連結されている。フードパネル34は、実施形態の場合、共に板金製とされるアウタパネル35とインナパネル36とから構成されている。実施形態の場合、フードパネル34は、アルミニウム製(アルミニウム合金製)とされている。
各ヒンジ38は、図8・9に示すように、フードパネル後端34aにおけるインナパネル36の下面側の部位に配設される軸支部39と、ボディ1側に配設されるボディ側部材41と、軸支部39とボディ側部材41とを回動可能に連結する棒状のピン40と、から構成されている。軸支部39は、略円板状とされて、インナパネル36の下面側部位から、下方に突出するように形成され、中央付近に、ピン40を挿通させる挿通孔39aを備えている。
ボディ側部材41は、棒状の本体部42と、本体部42をスライド可能に本体部42に外装されるとともに下端側をボディ1側に固定されている外筒部43と、を備えて構成されている。本体部42の上端側には、ピン40を挿通させる挿通孔42bを有した略円板状の頭部42aが、配設されている。そして、本体部42は、車両搭載時においては、頭部42a付近となる部位を、外筒部43の上端付近に保持されて上方への移動を規制され、跳ね上げ機構45作動時に、後述するロッド47の本体部47aによりフードパネル34の後端側部位34aを上方に押し上げた際に、外筒部43との連結状態が解除されて、外筒部43に対して上方にスライド可能に、構成されている。なお、実施形態の場合、フードパネル34の前端側部位34dは、エンジンルーム7の点検等のためにフードパネル34を開き可能とするように、所定の係止部材で解除可能にボディ1側に係止されており、跳ね上げ機構45の作動時には、ボディ1側に係止されている構成である。
跳ね上げ機構45は、フードパネル34の後端34a近傍となる左右両縁側の部位34b・34cに、配設されるもので、図7・10に示すごとく、フードパネル8の左側・右側縁部34b・34cの下部側となるボディ1側のフロントフェンダーパネル12とフードパネル34とで囲まれた隙間の部位SPに、配設されている。
跳ね上げ機構45は、多段式のピストンを備える構成とされ、アクチュエータとしての油圧シリンダ46と、シリンダ46により押上可能とされるロッド47と、から構成されている。ピストンロッド47の上端には、略円板状の本体部47aが配設され、駆動時に、本体部47aにより、フードパネル34の後端34a付近を上方に押し上げ可能な構成とされている。実施形態の場合、フードパネル34の後端部位34aは、跳ね上げ機構45により、50〜100mm程度跳ね上げられることとなる。この跳ね上げ量L1(図10参照)は、フードパネル34が歩行者と干渉した際に、塑性変形して、歩行者の運動エネルギーを吸収可能とするように、設定されている。そして、フードパネル34の跳ね上げ量は、跳ね上げられたフードパネル34が、歩行者と干渉して塑性変形した際に、フードパネル34の下部側のエンジンルーム7内に配置されるエンジン等の硬質部材に底着きするのを防止可能な寸法に、設定されている。
また、跳ね上げ機構45を駆動させるシリンダ46は、フロントバンパ4に配設されるセンサ5が歩行者との衝突を検知した際に、図示しない作動回路からの作動信号を入力させて、作動するように、構成されている。また、跳ね上げ機構45は、作動後に、突出したロッド47の位置を保持する図示しないストッパを、備える構成とされている。すなわち、上方に突出したロッド47の下方への移動が、ストッパにより防止されることから、跳ね上げられたフードパネル後端部位34aの付近に歩行者が干渉することとなっても、フードパネル34が下方移動することを抑えて、歩行者干渉時の運動エネルギーを確実に吸収するように塑性変形させることができ、フードパネル34により、歩行者を的確に保護することができる。
第2実施形態の歩行者保護装置S2では、車両搭載時において、フロントバンパ4に配設されるセンサ5が歩行者との衝突を検知すると、跳ね上げ機構45のシリンダ46が、図示しない作動回路からの作動信号を入力させて、ロッド47を上方に突出させるように作動し、本体部47aによりフードパネル34の後端部位34が上方に押し上げられるようにして、フードパネル34が、跳ね上げられることとなる。同時に、エアバッグ装置19L・19Rの各インフレーター26に作動信号が入力されることとなって、インフレーター26から膨張用ガスが吐出され、エアバッグ31が、内部に膨張用ガスを流入させて、エアバッグカバー20の扉部22aを押し開いて形成された開口14aから上方に向かって突出することとなる。そして、エアバッグ31は、図11に示すごとく、跳ね上げられたフードパネル34の左右両縁側とフロントフェンダーパネル12との間に生じる隙間Hを塞ぐように、フロントフェンダーFFの上面側から、跳ね上げられたフードパネル34の左右方向の縁部34b・34cの上面側にかけてを、略全面にわたって覆うように、膨張を完了させることとなる。
そして、第2実施形態の歩行者保護装置S2においても、前述の歩行者保護装置S1と同様に、エアバッグ装置19L・19Rのエアバッグ31が、フロントフェンダーFFの上方を、前後方向に沿った略全域にわたって覆うように、膨張を完了させることとなることから、歩行者が車両Vと干渉した際に、膨張を完了させたエアバッグ31により、歩行者が、下方側にフードリッジリインホース2等の硬質部材が配置されるフロントフェンダーFF近傍の部位と干渉することを、防止できる。
また、第2実施形態の歩行者保護装置S2では、作動時に、フードパネル34が、跳ね上げ機構45により、図6の二点鎖線に示すごとく、後端34a側を上方に跳ね上げられることから、歩行者が車両と干渉した際に、フードパネル34に歩行者が干渉しても、上方移動させたフードパネル34における左右方向の中央付近のエリアを、大きく下方へ凹ませるように塑性変形させて、歩行者の運動エネルギーを吸収することができる。また、第2実施形態の歩行者保護装置S2では、膨張を完了させたエアバッグ31が、フードパネル34とフロントフェンダーパネル12との間に生じる隙間Hを塞ぐように配設されることから、歩行者が、フードパネル34における左右方向の縁部近傍の部位34b・34cと干渉することとなっても、エアバッグ31により、歩行者を的確に保護することができる。さらに、第3実施形態の歩行者保護装置S3では、膨張を完了させたエアバッグ31が、跳ね上げ機構45の上面側も覆うことから、歩行者が、跳ね上げ機構45と干渉することも抑えることができて、歩行者を一層的確に保護することができる。
次に、本発明の第3実施形態の歩行者保護装置S3について説明をする。歩行者保護装置S3は、図12〜14に示すように、フードパネル34と、フードパネル34の左右両縁34b・34c側の下方に配設される2つのエアバッグ装置50L・50Rと、から構成されている。フードパネル34は、前述の歩行者保護装置S2におけるフードパネル34と同様の構成であり、同一の部材に同一の図符号を付して説明を省略する。
実施形態の場合、エアバッグ装置50L・50Rは、図14に示すように、フードパネル8の左側・右側縁部34b・34cの下部側となるボディ1側のフロントフェンダーパネル12とフードパネル34とで囲まれた隙間の部位SPに、配設されている。エアバッグ装置50L・50Rは、左右対称形とされる同一の部材から構成されている。実施形態では、右側に配設されるエアバッグ装置50Rを例に採り、説明する。
エアバッグ装置50(50R)は、図14に示すように、エアバッグ58、膨張用ガスを吐出するインフレーター55、インフレーター55と連結されてエアバッグ58内に膨張用ガスを供給する供給パイプ56、折り畳まれたエアバッグ58を収納するケース51、及び、ケース51の上方側を覆うエアバッグカバー52を、備えて構成されている。
ケース51は、実施形態の場合、板金製とされて、上方側を開口させた有底の箱形状とされており、下面側を、フロントフェンダーパネル12の上面側に載置されるようにして、隙間SP内に、配設されている。実施形態の場合、ケース51は、隙間SPに沿って、前後方向に略沿うような長尺状として、構成されている。
エアバッグカバー52は、オレフィン系熱可塑性エラストマー等の合成樹脂製とされて、ケース51の上部側において、ケース開口51aを覆うように、配設されている。エアバッグカバー52は、開口51aを覆うように配設される扉部53を、エアバッグ58の展開膨張時に、開き可能とするように、扉部53の周囲の部位でケース51に取り付けられる構成とされている。扉部53の周縁には、エアバッグ58の展開膨張時に破断可能な破断予定部(図符号省略)と、開き時の回転中心となるヒンジ部(図符号省略)と、が配設されている。
インフレーター55は、実施形態の場合、図13に示すごとく、フードパネル34の後端近傍34aとなるケース51の後方側となる位置に、配設されている。インフレーター55は、ケース51内に配設されてエアバッグ58内に膨張用ガスを供給する供給パイプ56と連結されており、供給パイプ56を介して、エアバッグ58内に膨張用ガスを流出する構成とされている。供給パイプ56は、金属製とされて、図13に示すように、軸方向をケース51に沿わせるように略前後方向に沿って配設されている。供給パイプ56の上端側には、エアバッグ58内に膨張用ガスを吐出させる多数のガス吐出穴56a(図14・15参照)が、前後方向に沿って形成されている。
エアバッグ58は、インフレーター55から吐出される膨張用ガスを、供給パイプ56を介して、内部に流入させて展開膨張するもので、実施形態の場合、ポリエステルやポリアミド糸等を使用した織布から形成された袋状とされている。エアバッグ58は、実施形態の場合、展開膨張時に、フードパネル34の左右両縁34b・34c側を上方に押し上げる跳ね上げ機構としても作用する構成であり、展開膨張時にフードパネル34の左右両縁34b・34c側を上方に押し上げる押上部59と、跳ね上げ後にフードパネル34とフロントフェンダーパネル12との間に生じる隙間Hから突出して、フロントフェンダーFFの上方を、フードパネル34の左右方向の縁部34b・34cの上面側とヒンジ11の上方とを含めて、略全域にわたって覆う本体部60と、を備える構成とされている。膨張完了時のエアバッグ58において、押上部59は、ケース51内部からフードパネル34の下面側にかけて配設される部位であり、本体部60は、押上部59の上部側に配設される部位である。実施形態の場合、エアバッグ58は、膨張初期に、フードパネル34の左右両縁34b・34c側の部位を上方に押し上げやすくするために、押上部59の部位を蛇腹状に折り畳まれ、その後フロントフェンダーFFの上方とフードパネル34の左右方向の縁部34b・34cの上面側を迅速に覆い可能なように、本体部60を、膨張完了時の左右両縁側となる先端側を下面側に向けるようにロール折りして、折り畳まれて、ケース51内に収納されている。
なお、エアバッグ58の押上部59によるフードパネル34の跳ね上げ量は、フードパネル34が歩行者と干渉した際に、塑性変形して、歩行者の運動エネルギーを吸収可能とするように、設定されている。そして、フードパネル34の跳ね上げ量は、跳ね上げられたフードパネル34が、歩行者と干渉して塑性変形した際に、フードパネル34の下部側のエンジンルーム7内に配置されるエンジン等の硬質部材に底着きするのを防止可能な寸法に、設定されている。具体的には、エアバッグ58の押上部によるフードパネル34の跳ね上げ量L2(図14参照)は、50〜100mmに設定されている。また、フードパネル34の後端34a側に配設されるヒンジ38には、図9の括弧内に示すように、本体部42の周面から突出するように配設されるストッパ42cと、外筒部43に上下方向に略沿って配設される長穴状の係止穴部43aと、が、形成されている。係止穴部43aは、ストッパ42cを挿通可能に構成されている。このストッパ42cは、フードパネル34の左右両縁側部位34b・34cがエアバッグ58の膨張に伴って上方に押し上げられ、本体部42が上方へ移動した際に、係止穴部43aの上端側周縁に係止されて本体部42及びフードパネル34が必要以上に大きく上方に押し上げられるのを防止するために、配設されている。
第3実施形態の歩行者保護装置S3では、車両搭載時において、フロントバンパ4に配設されるセンサ5が歩行者との衝突を検知すると、エアバッグ装置50L・50Rの各インフレーター55に作動信号が入力されることとなって、インフレーター55から膨張用ガスが吐出され、エアバッグ58が、供給パイプ56を介して、内部に膨張用ガスを流入させて、エアバッグカバー52の扉部53を押し開いて形成された開口51aから上方に向かって突出することとなる。そして、上方に突出する各エアバッグ58の押上部59が、フードパネル34の左右両縁側部位34b・34cを上方に押し上げるようにしてフードパネル34が跳ね上げられ、さらに、フードパネル34が跳ね上げられて形成されたフードパネル34とフロントフェンダーパネル12との間の隙間Hから、各エアバッグ58の本体部60が突出して、エアバッグ58の本体部60が、図15に示すごとく、フロントフェンダーFFの上面側から、跳ね上げられたフードパネル34の左右方向の縁部34b・34cの上面側にかけてを、略全面にわたって覆うように、膨張を完了させることとなる。
そして、第3実施形態の歩行者保護装置S3においても、エアバッグ装置50L・50Rのエアバッグ58が、フロントフェンダーFFの上方を、前後方向に沿った略全域にわたって覆うように、膨張を完了させることとなることから、歩行者が車両Vと干渉した際に、膨張を完了させたエアバッグ58により、歩行者が、下方側にフードリッジリインホース2等の硬質部材が配置されるフロントフェンダーFF近傍の部位と干渉することを、防止できる。
また、第3実施形態の歩行者保護装置S3では、作動時に、フードパネル34が、エアバッグ58により、左右両縁側の部位34b・34cを押し上げられるようにして、図12の二点鎖線に示すごとく、上方に跳ね上げられることから、歩行者が車両と干渉した際に、フードパネル34に歩行者が干渉しても、上方移動させたフードパネル34における左右方向の中央付近のエリアを、大きく下方へ凹ませるように塑性変形させて、歩行者の運動エネルギーを吸収することができる。また、第3実施形態の歩行者保護装置S3では、膨張を完了させたエアバッグ58が、フードパネル34とフロントフェンダーパネル12との間に生じる隙間Hを塞ぐように配設されることから、歩行者が、フードパネル34における左右方向の縁部近傍の部位34b・34cと干渉することとなっても、エアバッグ58により、歩行者を的確に保護することができる。
さらに、第3実施形態の歩行者保護装置S3では、収納部位としてのケース51から上方に突出するエアバッグ58を利用してフードパネル34を跳ね上げる構成としていることから、フードパネルを跳ね上げる跳ね上げ機構を別途配設させる必要がなくなって、好ましい。勿論、第3実施形態のごとく、フードパネル34の下方にエアバッグ装置50を配設させる構成の場合にも、フードパネルを跳ね上げるための跳ね上げ機構を別途配設させる構成としてもよい。
なお、第1・第2実施形態の歩行者保護装置S1・S2では、エアバッグ装置19における収納部14の開口14aを覆うエアバッグカバー20として、合成樹脂製のものを使用しているが、エアバッグカバーはこれに限られるものではなく、エアバッグカバー62として、フロントフェンダーパネル12と同様に板金製とされるものを、フロントフェンダーパネル12の収納凹部12aに、合成樹脂製のクリップ64を利用して係合させ、エアバッグ31の展開膨張時に、クリップ64の収納凹部12aへの係合を解除して、開き可能な構成のものを使用してもよい。図16のエアバッグ装置19Aでは、収納部14Aは、フロントフェンダーパネル12と別体とされており、エアバッグカバー62は、開き時の飛散を防止するために、ストラップ65により、収納部14Aの周壁部15に連結されている構成である。また、エアバッグカバー62は、図16の二点鎖線に示すごとく、開き時の先端側を、上方移動したフードパネル34より上方に突出させないように、構成されている。
また、第2・第3実施形態の歩行者保護装置S2・S3では、エアバッグ31・58が、膨張完了時に、フードパネル34の左右両縁34b・34cの上方を覆う構成とされているが、膨張完了時に、ヒンジ34の上方を覆うことを考慮しなければ、エアバッグ58Aとして、図15の二点鎖線に示すごとく、膨張完了時に、フロントフェンダーパネル12の上方のみを覆う構成のものを使用してもよい。