JP4487453B2 - 内燃機関用ノッキング検出装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の運転にともない発生する振動をセンサによって検出し、その振動波形信号からノッキング特有の周波数帯域の信号をフィルタによって濾波(抽出)し、その信号とノック判定レベルとの比較によりノッキングを検出するようにした内燃機関用ノッキング検出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、内燃機関の制御技術の1つとしてノッキング制御がある。ノッキングは、気筒内の末端ガスの自己着火により燃焼室内で発生する圧力振動であり、点火プラグ電極やピストンの過熱・溶損等の原因となり得る。ノッキング制御では、内燃機関の運転にともない発生する振動がノックセンサによって検出される。検出された振動波形信号から、ノッキング特有の周波数帯域の信号がフィルタによって濾波(抽出)される。濾波された信号が所定のノック判定レベルよりも大きい場合にノッキング発生と判定され、点火時期が遅角される。この遅角によりノッキングが抑制される。また、濾波された信号がノック判定レベル以下の場合にノッキングが発生していないと判定され、点火時期が進角される。この進角により、機関出力や燃費が向上する。なお、ノッキング発生と判定された場合に、点火時期に代えて、機関への燃料噴射量が一時的に増量補正される方法もある。この方法では、燃料噴射量の増量により燃焼室内の温度が低下し、ノッキングが抑制される。
【0003】
前記ノック判定レベルの設定については従来から種々の工夫がなされている。例えば、ノックセンサによって検出され、かつフィルタによって濾波された振動強度の度数分布が正規分布となることを前提に、複数の燃焼行程のデータを統計処理し、その正規分布における平均値及び標準偏差に基づきノック判定レベルを設定する方法が知られている。また、平均値及び標準偏差を擬似的に算出する手法の1つとして、前回算出時から今回算出時までの変化分の重み付けをして、これを前回算出値に足し込むことにより、擬似平均値及び擬似標準偏差を算出するものがある。この手法によると、擬似平均値及び擬似標準偏差を簡便に算出することができ、演算装置にかかる負荷が少なくてすむ。
【0004】
一方、特許第2730215号公報には、フィルタの濾波周波数帯域を、機関回転速度等の機関運転状態に応じて切替えることにより、ノッキングの検出性能を向上させる技術が記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ノックセンサでは、ノック検出周波数に応じて異なる傾向の信号が出力されるため、濾波周波数帯域が切替えられると、それにともなって擬似平均値及び擬似標準偏差も大きく変化する。また、前述したように擬似平均値及び擬似標準偏差の算出に際しては前回算出値が用いられるが、濾波周波数帯域の切替え時には、切替え直前の擬似平均値及び擬似標準偏差が前回算出値とされる。この値を用いて算出した擬似平均値及び擬似標準偏差は、切替え直後の理想的な擬似平均値及び擬似標準偏差とは大きく異なる。このため、濾波周波数帯域の切替え直後は、それまでに蓄積したデータを利用することができず、擬似平均値及び擬似標準偏差の算出がある程度繰り返されないと、切替え後の濾波周波数帯域に適合した信頼性の高い値とならない。このように、濾波周波数帯域が切替えられた場合、切替え後の濾波周波数帯域に適合した擬似平均値及び擬似標準偏差が算出されるまでに時間がかかる。この期間に擬似平均値及び擬似標準偏差を求めても正確な値でないため、ノック判定レベルを精度よく設定してノッキングを正確に検出することが困難である。
【0006】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、濾波周波数帯域が切替えられた場合に、切替え後の濾波周波数帯域に適した擬似平均値及び擬似標準偏差を短時間で算出することのできる内燃機関用ノッキング検出装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明では、内燃機関の運転にともない発生する振動をセンサで検出し、検出した振動波形信号からノッキング特有の周波数帯域の信号をフィルタで濾波し、濾波後の振動強度及び前回算出値に基づき、振動強度の度数分布における平均値及び標準偏差をそれぞれ擬似的に算出し、それらの擬似平均値及び擬似標準偏差を用いて設定したノック判定レベルと前記振動強度との比較によりノッキングを検出するとともに、前記内燃機関の運転状態が所定の切替え状態となった場合に前記フィルタの濾波周波数帯域を切替えるようにした内燃機関用ノッキング検出装置において、所定の濾波周波数帯域で算出された擬似平均値及び擬似標準偏差を再度同一の濾波周波数帯域で濾波されるまで保持する保持手段と、前記同一の濾波周波数帯域に切替えられたとき、前記保持手段により保持された擬似平均値及び擬似標準偏差を、切替え直後における前回算出値の初期値として設定する初期値設定手段とを備えている。
【0008】
上記の構成によれば、内燃機関の運転にともない発生する振動がセンサによって検出される。検出された振動波形信号からノッキング特有の周波数帯域の信号がフィルタによって濾波される。濾波後の振動強度と前回算出値とが用いられることにより、振動強度の度数分布における平均値及び標準偏差がそれぞれ擬似的に算出される。算出された擬似平均値及び擬似標準偏差が用いられることによりノック判定レベルが設定される。このノック判定レベルと振動強度とが比較され、その比較結果に基づきノッキング発生の有無が検出される。さらに、内燃機関の運転状態が所定の切替え状態になると、フィルタの濾波周波数帯域が切替えられる。
【0009】
ところで、所定の濾波周波数帯域で算出された擬似平均値及び擬似標準偏差は、再度同一の濾波周波数帯域で濾波されるまでの期間にわたり、保持手段により保持される。そして、初期値設定手段では、同一の濾波周波数帯域に切替えられた場合、保持手段で保持された擬似平均値及び擬似標準偏差が、切替え直後における濾波周波数帯域での前回算出値の初期値として設定される。
【0010】
設定された初期値は、切替え直後の理想的な値に近い。このため、前回算出値が適正な値となるまでに要する擬似平均値及び擬似標準偏差の演算回数が少なくてすむ。擬似平均値及び擬似標準偏差は、切替え後短時間で理想的な値に近づく。従って、濾波周波数帯域の切替え後の早い時期から、濾波周波数帯域に適合した擬似平均値及び擬似標準偏差を算出するとともに、ノック判定レベルを精度よく設定できるようになる。
【0011】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記濾波周波数帯域の切替えは、前記内燃機関の機関回転速度が所定の切替え回転速度になった場合に行われるものとする。
【0012】
上記の構成によれば、機関回転速度が所定の切替え回転速度よりも低い領域と高い領域とでは、互いに異なる濾波周波数帯域が使用される。そして、機関回転速度が変化して切替え回転速度になると、濾波周波数帯域が切替えられる。
【0013】
請求項3に記載の発明では、請求項1又は2に記載の発明において、前記擬似平均値及び擬似標準偏差を算出する擬似値算出手段は、前記擬似平均値及び前記擬似標準偏差に基づき、それらについての学習値をそれぞれ求めて記憶する学習手段と、前記擬似平均値及び前記擬似標準偏差が算出される毎に前記学習手段の学習値を更新する更新手段とを含むものであるとする。
【0014】
上記の構成によれば、擬似値算出手段による擬似平均値及び擬似標準偏差の算出に際しては、擬似平均値についての学習値と、擬似標準偏差についての学習値とがそれぞれ学習手段によって求められ記憶される。記憶された各学習値は、擬似平均値及び擬似標準偏差が算出される毎に、更新手段によって更新される。一方、保持手段では、所定の濾波周波数帯域から別の濾波周波数帯域への切替え前に記憶された各学習値が、再度同一の濾波周波数帯域で濾波されるまで保持される。そして、このように保持された学習値は、初期値設定手段において、切替え直後における前回算出値の初期値として用いられる。
【0015】
請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の発明において、前記学習手段は、前記擬似平均値及び前記擬似標準偏差を、それらについての学習値とするものであるとする。
【0016】
上記の構成によれば、学習手段による学習に際し、擬似平均値が、その擬似平均値についての学習値とされる。また、擬似標準偏差が、その擬似標準偏差についての学習値とされる。このため、学習値の算出に複雑な演算が不要であり、演算装置にかかる負荷が少なくてすむ。
【0017】
請求項5に記載の発明では、請求項3に記載の発明において、前記擬似値算出手段は、前記学習手段により各学習値が求められる学習領域を、その学習値が前記擬似平均値及び前記擬似標準偏差の算出に反映される学習値反映領域よりも狭く、かつ前記切替え状態寄りの領域に制限する学習領域制限手段をさらに含むものであるとする。
【0018】
ここで、同一の濾波周波数帯域であっても、算出される擬似平均値及び擬似標準偏差は、内燃機関の運転状態に応じて変わってくる。例えば、切替え状態の近傍の領域と、同切替え状態から離れた領域とでは、擬似平均値及び擬似標準偏差が大きく異なる。従って、濾波周波数帯域の切替え直前に内燃機関の運転状態が急激に変化した際、仮に切替え状態から離れた領域の擬似平均値及び擬似標準偏差に基づき学習が行われると、本来必要としない領域において学習が行われたこととなる。そのため、再度この濾波周波数帯域に復帰した場合の切替え直後における前回算出値の初期値として、不適切な値が設定されるおそれがある。
【0019】
これに対し、請求項5に記載の発明では、学習手段により各学習値が求められる学習領域は、学習領域制限手段により制限される。制限の対象となる学習領域は、学習値が擬似平均値及び擬似標準偏差の算出に反映される学習値反映領域よりも狭く、かつ切替え状態寄りの領域である。別の表現をすると、上記のように制限された領域における擬似平均値及び擬似標準偏差が学習に用いられる。これらの値は、再度この濾波周波数帯域に復帰した場合の切替え直後の理想的な擬似平均値及び擬似標準偏差に近い。
【0020】
従って、内燃機関の運転状態が急激に変化したときに濾波周波数帯域が切替えられても、本来必要としない領域において学習がされることがなく、再度同じ濾波周波数帯域に戻ったときに、精度の高い学習値を前回算出値として利用することができる。このように学習機能が適正に働き、濾波周波数帯域の切替え後に素早くノッキングを検出することが可能となる。
【0021】
請求項6に記載の発明では、請求項5に記載の発明において、前記学習手段は、前記擬似平均値及び前記擬似標準偏差をそれぞれなまし処理することにより、前記擬似平均値及び前記擬似標準偏差についての各学習値を求めるものであるとする。
【0022】
ここで、内燃機関の運転状態の急変にともなう濾波周波数帯域の切替えにより、擬似平均値や擬似標準偏差が瞬間的に急激に変化した場合には、それらの値が適正な値でない可能性がある。この値を、そのまま学習値として記憶・更新し、濾波周波数帯域の切替え前における擬似平均値及び擬似標準偏差とすると、再度同じ濾波周波数帯域に戻った場合に、切替え直後における前回算出値の初期値として、誤った値が用いられるおそれがある。この誤った値が用いられると、切替え直後における擬似平均値及び擬似標準偏差の算出精度が低下する。
【0023】
これに対し、請求項6に記載の発明では、学習手段での学習値の算出に際し、そのときの擬似平均値及び擬似標準偏差がそのまま学習値とされるのではなく、同擬似平均値及び擬似標準偏差がなまし処理される。従って、前記のように濾波周波数帯域の切替えにより、擬似平均値や擬似標準偏差が瞬間的に急激に変化しても、それらの擬似平均値や擬似標準偏差が各学習値の算出に及ぼす影響が小さくなる。その結果、切替え直後における擬似平均値及び擬似標準偏差の算出精度の低下を抑制することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
以下、本発明の内燃機関用ノッキング検出装置を具体化した第1実施形態について、図1〜図7に従って説明する。
【0025】
図1に示すように、内燃機関11のシリンダブロック等には、その内燃機関11の燃焼室からシリンダブロックに伝わる振動を検出するためのセンサが取付けられている。このセンサとしては種々のタイプがあるが、ここでは、出力値の特性が、内燃機関11の振動の広い周波数範囲にわたって略フラットである非共振型のノックセンサ12が用いられている。ノックセンサ12には、バンドパスフィルタ(Band Pass Filter、以下「BPF」という)13、ピークホールド回路14等を介して電子制御装置(Electronic Control Unit 、以下「ECU」という)15が接続されている。
【0026】
BPF13は、ノックセンサ12によって検出された振動波形信号から、ノッキング特有の周波数帯域の信号を濾波(抽出)するためのものである。このBPF13では、ECU15からの切替え指令に応じて濾波周波数帯域が切替えられる。切替えの対象となる濾波周波数帯域は、中心周波数f0が低い値FLに設定された低濾波周波数帯域と、同中心周波数f0が高い値FHに設定された高濾波周波数帯域との2つである。
【0027】
ECU15からBPF13への切替え指令は、内燃機関11の運転状態が所定の切替え状態となったときに出される。本実施形態では、内燃機関11のクランク軸の回転速度である機関回転速度Neが、所定の切替え回転速度α(例えば3500回転/分)となったときに切替え指令が出される(図7参照)。
【0028】
このように機関回転速度Neに応じて濾波周波数帯域を切替えるのは、機関回転速度Neが所定の切替え回転速度αまでの低回転側の運転領域と、同機関回転速度Neが切替え回転速度αを越える高回転側の運転領域とでは、濾波周波数帯域毎にノック検出性の傾向が異なるからである。このため、切替え回転速度αを境として、その上下でノック検出性が最適な濾波周波数帯域を選択的に用いる(濾波周波数帯域を切替える)ことにより、ノック検出性を機関回転速度Neの全般にわたって良好にしている。
【0029】
なお、本実施形態では、低回転速度域において低濾波周波数帯域によるノック検出性が高く、高回転速度域において高濾波周波数帯域によるノック検出性能が高い内燃機関11を例に採っている。この内燃機関11では、機関回転速度Neが切替え回転速度αよりも低い場合に低濾波周波数帯域が選択され、切替え回転速度αよりも高い場合に高濾波周波数帯域が選択される。
【0030】
ピークホールド回路14は、ECU15からの指令信号に応じ、BPF13で濾波された信号の最大値を保持する。ECU15はマイクロコンピュータを中心に構成されており、中央処理装置(CPU)が、読出し専用メモリ(ROM)に記憶されている制御プログラム、初期データ、制御マップ等に従って演算処理を行い、その演算結果に基づいて各種制御を実行する。CPUによる演算結果は、ランダムアクセスメモリ(RAM20)において一時的に記憶される。例えば、RAM20では、後述する平均レベルAVEについての学習値AVE(L)及びAVE(H)がそれぞれ第1エリア21及び第2エリア22に一時的に記憶される。また、実効偏差MADについての学習値MAD(L)及びMAD(H)がそれぞれ第3エリア23及び第4エリア24に一時的に記憶される。
【0031】
ECU15は、ピークホールド回路14で保持された信号(アナログ値)をデジタル値(以下、「ノックAD値」という)に変換するためのアナログ/デジタル(A/D)変換器16を備えている。A/D変換器16によるA/D変換後の値は、ピーク出力値としてCPUに取込まれる。
【0032】
また、ECU15には、内燃機関11の運転状態を検出する各種センサ19が接続されている。各種センサ19としては、例えば、クランク軸が一定角度回転する毎に信号を出力するクランク角センサ、ノック検出の対象となっている気筒を特定するための気筒判別センサ、吸入空気量を検出する吸気量センサ、冷却水温を検出する水温センサ等が挙げられる。これらの検出信号のうち、吸気量センサ、水温センサ等の検出信号(アナログ値)は前記A/D変換器16によってデジタル値に変換される。
【0033】
さらに、ECU15には、内燃機関11に設けられたイグナイタ17、インジェクタ18等が接続されている。ECU15は、前述した各種センサ19からの検出信号に基づき、点火時期、燃料噴射量等を演算し、その演算結果に従ってイグナイタ17、インジェクタ18等を駆動制御する。また、ECU15は、前記ノックAD値に基づきノック判定レベルを設定し、このノックAD値とノック判定レベルとの比較により、内燃機関11におけるノッキング発生の有無を判定する。ノックAD値がノック判定レベルよりも大きい場合にはノッキングが発生していると判定し、ノックAD値がノック判定レベル以下の場合にはノッキングが発生していないと判定する。
【0034】
そして、ECU15は前記判定結果に基づいて、ノッキングの抑制と、機関出力、燃費等の向上とを両立させるための処理を行う。例えば、ノッキング発生と判定した場合には、点火時期を遅角してノッキングを抑制する。また、ノッキングが発生していないと判定した場合には、点火時期を進角して、機関出力や燃費を向上させる。
【0035】
次に、ノック判定レベルを設定する手順について説明する。図2のフローチャートは、ECU15によって実行されるノック判定レベル設定ルーチンを示しており、所定のタイミング、例えば所定クランク角毎に実行される。
【0036】
このルーチンの実行に際しては、ノックセンサ12を通じて検出される振動(正確には、その対数変換値)の度数分布が正規分布となることに着目し、その分布から求まる平均値m及び標準偏差σを用いてノック判定レベルを設定するようにしている。
【0037】
一般に、平均値mは、m=(変量の和/個数)で表され、標準偏差σは、σ=√(偏差の2乗の和/個数)で表される。これらの式に従って平均値m及び標準偏差σをそれぞれ計算すると、計算量が莫大となり、ECU15に加わる負荷が大きい。そこで、本実施形態では、下記の簡便な(式1)及び(式2)を用いることによって、これらの平均値m及び標準偏差σを擬似的に求めるようにしている。なお、一般的な式に従って求められる平均値m及び標準偏差σと区別するために、本実施形態では(式1)に従って求められる擬似平均値を「平均レベルAVE」といい、(式2)に従って求められる擬似標準偏差を「実効偏差MAD」というものとする。
【0038】
AVE=前回AVE+(ノックAD値−前回AVE)/係数……(式1)
MAD=前回MAD+((AVE−ノックAD値)−前回MAD)/係数……(式2)
上記(式1)中の「前回AVE」は、前回の制御周期で算出した平均レベルであり、(式2)中の「前回MAD」は、前回の制御周期で算出した実効偏差である。
【0039】
また、2つの濾波周波数帯域が機関回転速度Neに応じて切替えられることと、そのとき使用されている濾波周波数帯域に関し、平均レベルAVE及び実効偏差MADが求められること、については前述した通りである。本実施形態ではさらに、上記平均レベルAVEに基づき、2種類の学習値AVE(L),AVE(H)が求められ、RAM20の第1エリア21及び第2エリア22に記憶・更新される。また、上記実効偏差MADに基づき2種類の学習値MAD(L),MAD(H)が求められ、RAM20の第3エリア23及び第4エリア24に記憶・更新される。
【0040】
ECU15は、まずステップ100において、A/D変換器16によるノックAD値を取得する。詳しくは、そのときに使用されている濾波周波数帯域で濾波されるとともに、ピークホールド回路14によって保持された最大値(アナログ信号)を読込む。この最大値をA/D変換器16によってデジタル信号に変換し、ノックAD値として取込む。なお、ノックAD値としては、一定の期間にわたって積分したものを用いてもよい。
【0041】
次に、ステップ200において、前記ノックAD値を用いて平均レベルAVEを算出する。その詳細を図3及び図4に示す。図3のステップ201において、BPF13への切替え指令に応じて、濾波周波数帯域の中心周波数f0が切替えられたか否かを判定する。この判定条件が成立していないと、図4のステップ206において、前記(式1)に従って平均レベルAVEを算出する。
【0042】
続いて、ステップ207において、中心周波数f0が低い値FLであるか否か、すなわち、使用されている濾波周波数帯域が低濾波周波数帯域であるか否かを判定する。この判定条件が満たされている(f0=FL)と、ステップ208において、前記ステップ206で求めた平均レベルAVEを学習値AVE(L)としてRAM20の第1エリア21に記憶する。この処理は、振動波形信号が低濾波周波数帯域で濾波されている期間中行われる。従って、平均レベルAVEが算出される毎に、第1エリア21に記憶されている値が更新されることとなる。そして、高濾波周波数帯域への切替え直前に更新された学習値AVE(L)が直前擬似平均値とされる。
【0043】
また、ステップ209において、今回の学習値AVE(H)として前回の学習値AVE(H)を保持する。この処理もまた、振動波形信号が低濾波周波数帯域で濾波されている期間中行われる。保持の対象となる値は、前回、振動波形信号が高濾波周波数帯域で濾波されている期間に設定された直前擬似平均値、すなわち、同期間において低濾波周波数帯域への切替え直前に更新された学習値AVE(H)である。
【0044】
一方、前記ステップ207の判定条件が満たされていない(f0=FH)と、ステップ210において、前記ステップ206で求めた平均レベルAVEを、学習値AVE(H)としてRAM20の第2エリア22に記憶する。この処理は、振動波形信号が高濾波周波数帯域で濾波されている期間中行われる。従って、平均レベルAVEが算出される毎に、前記第2エリア22に記憶されている前回の学習値AVE(H)が更新されることとなる。そして、低濾波周波数帯域への切替え直前に更新された学習値AVE(H)が直前擬似平均値とされる。
【0045】
また、ステップ211において、今回の学習値AVE(L)として前回の学習値AVE(L)を保持する。この処理もまた、振動波形信号が高濾波周波数帯域で濾波されている期間中行われる。保持の対象となる値は、前回、振動波形信号が低濾波周波数帯域で濾波されている期間に設定された直前擬似平均値、すなわち、同期間において高濾波周波数帯域への切替え直前に更新された学習値AVE(L)である。そして、ステップ209又はステップ211の処理を経た後、「平均レベル算出ルーチン」を終了する。
【0046】
ところで、図3の前記ステップ201の判定条件が満たされている(切替え有り)と、次にステップ202において、中心周波数f0の切替えの態様を判定する。詳しくは、中心周波数f0が低い値FLに設定されている低濾波周波数帯域から、高い値FHに設定されている高濾波周波数帯域に切替えられたか否かを判定する。
【0047】
前記ステップ202の判定条件が満たされている(FLからFHへの切替え)と、ステップ203において、そのときRAM20の第2エリア22に記憶されている学習値AVE(H)を読出し、これを前回AVEとして設定し、ステップ205へ移行する。これに対し、ステップ202の判定条件が満たされていない(FHからFLへの切替え)と、ステップ204において、そのときRAM20の第1エリア21に記憶されている学習値AVE(L)を読出し、これを前回AVEとして設定し、ステップ205へ移行する。
【0048】
このように、切替え指令に応じて高濾波周波数帯域に切替えられた場合(ステップ202:YES)、その切替え直前の低濾波周波数帯域での濾波期間中保持された学習値AVE(H)が前回AVEの初期値として設定される。また、低濾波周波数帯域に切替えられた場合(ステップ202:NO)、その切替え直前の高濾波周波数帯域での濾波期間中保持された学習値AVE(L)が前回AVEの初期値として設定される。
【0049】
ステップ205では、前記(式1)に従って平均レベルAVEを算出する。この算出の際、前記ステップ203又は204で設定した値が(式1)中の前回AVEとして用いられる。その後、平均レベル算出ルーチンを終了し、図2のステップ300へ移行する。
【0050】
ステップ300では、前記平均レベルAVEを用いて実効偏差MADを算出する。その詳細を図5及び図6に示すが、前述した図3及び図4での平均レベルAVEの算出態様とほぼ同様である。
【0051】
図5のステップ301において、BPF13における濾波周波数帯域の中心周波数f0が切替えられたか否かを判定し、満たされていない(切替えなし)と、図6のステップ306において、前記(式2)に従って実効偏差MADを算出する。ステップ307において、使用されている濾波周波数帯域が低濾波周波数帯域(f0=FL)であるか否かを判定する。この判定条件が満たされている(f0=FL)と、ステップ308において、前記ステップ306で求めた実効偏差MADを学習値MAD(L)としてRAM20の第3エリア23に記憶する。ステップ309において、今回の学習値MAD(H)として前回の学習値MAD(H)を保持する。
【0052】
一方、前記ステップ307の判定条件が満たされていない(f0=FH)と、ステップ310において、前記ステップ306で求めた実効偏差MADを、学習値MAD(H)としてRAM20の第4エリア24に記憶する。ステップ311において、今回の学習値MAD(L)として前回の学習値MAD(L)を保持する。そして、ステップ309又はステップ311の処理を経た後、実効偏差算出ルーチンを終了する。
【0053】
ところで、図5の前記ステップ301の判定条件が満たされている(切替え有り)と、ステップ302において、低濾波周波数帯域(f0=FL)から、高濾波周波数帯域(f0=FH)に切替えられたか否かを判定する。
【0054】
前記ステップ302の判定条件が満たされている(FLからFHへの切替え)と、ステップ303において、そのとき第4エリア24に記憶されている学習値MAD(H)を読出し、これを前回MADとして設定し、ステップ305へ移行する。これに対し、ステップ302の判定条件が満たされていない(FHからFLへの切替え)と、ステップ304において、そのとき第3エリア23に記憶されている学習値MAD(L)を読出し、これを前回MADとして設定し、ステップ305へ移行する。
【0055】
ステップ305では、前述した(式2)に従って実効偏差MADを算出する。この算出の際、前記ステップ303又は304で設定した値が(式2)中の前回MADとして用いられる。その後、実効偏差算出ルーチンを終了し、図2のステップ400へ移行する。
【0056】
ステップ400では、次の(式3)に従ってノック判定レベルを設定する。
ノック判定レベル=AVE+MAD・k ……(式3)
上記(式3)中、kは機関回転速度Ne及び機関負荷に対応した係数である。この係数kは、例えば機関回転速度Ne及び機関負荷と係数kとの関係を予め規定した制御マップを参照することにより、又は所定の演算式に従うことにより求められる。ステップ400の処理の実行後、ノック判定レベル設定ルーチンを終了する。
【0057】
上述した平均レベル算出ルーチンに従って各処理が行われると、機関回転速度Neが緩やかに変化した場合、中心周波数f0、平均レベルAVE、及びその学習値AVE(L),AVE(H)は、例えば図7に示すように変化する。このタイミングチャートでは、機関回転速度Neは、タイミングt10,t20において切替え回転速度α(=3500回転/分)に合致する。同機関回転速度Neは、タイミングt10よりも前の期間、及びタイミングt20よりも後の期間において切替え回転速度αよりも低くなり、タイミングt10〜t20の期間において切替え回転速度αよりも高くなる。
【0058】
なお、図7中の平均レベルAVEに関しては、実線は理想的な平均レベルの変化を示し、破線は従来技術による平均レベルの変化を示し、一点鎖線は本実施形態による平均レベルの変化を示している。
【0059】
タイミングt10よりも前の期間では、機関回転速度Neが切替え回転速度αよりも低いことから、振動波形信号が低濾波周波数帯域(f0=FL)で濾波される。平均レベル算出ルーチンでは、ステップ201→206→207→208→209→リターンの順に処理が行われる。(式1)に従って平均レベルAVEが算出される。この期間では学習値AVE(L)が更新されるが、特に、タイミングt10の直前に更新された値は、直前擬似平均値とされる。また、この期間では、学習値AVE(H)として前回の値が保持される。保持の対象となる値は、前回の高濾波周波数帯域での濾波期間中に更新された直前擬似平均値(AVE(H))である。
【0060】
タイミングt10では、機関回転速度Neが切替え回転速度αに合致することから、低濾波周波数帯域から高濾波周波数帯域(f0=FH)に切替えられる。この切替えにともない、理想的な平均レベルAVEが大きく変化(下降)する。平均レベル算出ルーチンでは、ステップ201→202→203→205→リターンの順に処理が行われる。ステップ205での平均レベルAVEの算出に際しては、(式1)中の前回AVEとして、直前擬似平均値が用いられる。すなわち、前回の高濾波周波数帯域での濾波期間(図示略)で最後に更新され、かつ低濾波周波数帯域での濾波期間(タイミングt10よりも前の期間)中に保持された学習値AVE(H)が前回AVEの初期値として用いられる。
【0061】
タイミングt10〜t20の期間では、機関回転速度Neが切替え回転速度αよりも高くなることから、振動波形信号が高濾波周波数帯域(f0=FH)で濾波される。平均レベル算出ルーチンでは、ステップ201→206→207→210→211→リターンの順に処理が行われる。この期間では、学習値AVE(H)が更新されるが、最後に更新される値は、次回の高濾波周波数帯域での平均レベルAVE算出に備えて直前擬似平均値とされる。また、この期間では学習値AVE(L)が保持される。保持の対象となる値は、前回の低濾波周波数帯域での濾波期間中、最後に更新された直前擬似平均値(AVE(L))である。
【0062】
タイミングt20では、機関回転速度Neが切替え回転速度αに合致することから、高濾波周波数帯域から低濾波周波数帯域(f0=FL)に切替えられる。この切替えにともない、理想的な平均レベルAVEが大きく変化(上昇)する。平均レベル算出ルーチンでは、ステップ201→202→204→205→リターンの順に処理が行われる。ステップ205での平均レベルAVEの算出に際しては、(式1)中の前回AVEの初期値として、前回の低濾波周波数帯域での濾波期間(t10よりも前の期間)で最後に更新され、かつ高濾波周波数帯域での濾波期間(t10〜t20)中に保持された学習値AVE(L)が用いられる。
【0063】
タイミングt20よりも後の期間では、機関回転速度Neが切替え回転速度αよりも低いことから、振動波形信号が再び低濾波周波数帯域(f0=FL)で濾波される。平均レベル算出ルーチンでは、前述したタイミングt10よりも前の期間と同様に、ステップ201→206→207→208→209→リターンの順に処理が行われる。また、学習値AVE(L)が更新されるとともに、学習値AVE(H)が保持される。保持の対象となる値は、前回の高濾波周波数帯域での濾波期間(t10〜t20)で最後に更新された直前擬似平均値(AVE(H))である。
【0064】
なお、実効偏差MAD及びその学習値MAD(L),MAD(H)についても、前述した平均レベルAVE及びその学習値AVE(L),AVE(H)と同様にして変化する。そのため、ここでは説明を省略する。
【0065】
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)高濾波周波数帯域から低濾波周波数帯域に切替えられた場合、切替え直前の値を切替え直後の前回AVEの初期値として用いる従来技術では、同初期値が低濾波周波数帯域での平均レベルAVEとは大きく異なっているため、前回AVEが適正な値となるまでに(式1)の演算が多数回必要となる。平均レベルAVEを再計算するのと同程度の回数の演算が必要となる。平均レベルAVEは図7において破線で示すように変化し、低濾波周波数帯域での理想的な値に近づくまでに時間がかかる。
【0066】
これに対し、本実施形態では、振動波形信号が低濾波周波数帯域(f0=FL)で濾波されている場合、(式1)に従って求めた平均レベルAVEを学習値AVE(L)として第1エリア21に記憶し、その値を、平均レベルAVEが算出される毎に更新している。高濾波周波数帯域(f0=FH)への切替え直前に更新した学習値AVE(L)を直前擬似平均値とし、振動波形信号が再度低濾波周波数帯域で濾波されるまで保持している。そして、低濾波周波数帯域に切替えられたとき、(式1)の演算に際し、前記直前擬似平均値を前回AVEの初期値として設定するようにしている。
【0067】
設定された初期値は、低濾波周波数帯域への切替え直後における理想的な平均レベルAVEに近い。このため、前回AVEが適正な値(理想的な平均レベルAVE)となるまでに要する(式1)の演算回数が少なくてすむ。平均レベルAVEは図7において一点鎖線で示すように変化し、切替え後短時間で理想的な平均レベルAVEに近づく。
【0068】
なお、低濾波周波数帯域から高濾波周波数帯域に切替えられた場合についても同様である。また、上記効果は、平均レベルAVEだけでなく実効偏差MADについても同様に得られる。
【0069】
(2)従来技術では、精度の高いノック判定レベルを設定しようとすると、濾波周波数帯域の切替え後、平均レベルAVE及び実効偏差MADがそれぞれ適正な値(理想的な値)になるまでの期間、同ノック判定レベルを設定することが困難である。これに対し本実施形態では、適正な平均レベルAVE及び実効偏差MADが、濾波周波数帯域の切替え後短時間で算出されることから、同切替え後の早い時期から精度の高いノック判定レベルを設定することができる。ノック判定レベルを設定できない期間(ノッキングの検出が可能となるまでの期間)を短くすることができる。濾波周波数帯域の切替え後の素早いノッキング検出が可能となる。
【0070】
(3)振動波形信号を低濾波周波数帯域で濾波しているときには、平均レベルAVEを学習値AVE(L)として算出・更新するとともに、実効偏差MADを学習値MAD(L)として算出・更新している。振動波形信号を高濾波周波数帯域で濾波しているときには、平均レベルAVEを学習値AVE(H)として算出・更新するとともに、実効偏差MADを学習値MAD(H)として算出・更新している。このため、学習値AVE(L),AVE(H),MAD(L),MAD(H)の算出に複雑な演算が不要であり、ECU15にかかる負荷が少なくてすむ。
【0071】
(4)平均レベルAVE及び実効偏差MADの各算出のために、(式1)及び(式2)を用いている。これらの式では、前回算出時から今回算出時までの変化分の重み付けをして、これを前回算出値に足し込むことにより、今回の平均レベルAVE及び実効偏差MADを算出するようにしている。このため、平均レベルAVE及び実効偏差MADが瞬間的に大きく変化しても、その変化の影響を受けにくい。また、周期の長い変化には追従しながら、それら平均レベルAVE及び実効偏差MADを簡便に算出することができる。その結果、ECU15にかかる負荷が少なくてすむ。
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態について、図8〜図12に従って説明する。第2実施形態の第1実施形態との主な相違点は、次の2点である。
【0072】
1つ目の相違点は、図8に示すように、学習値AVE(L),AVE(H),MAD(L),MAD(H)の算出が行われる学習領域を、それらの学習値が平均レベルAVE及び実効偏差MADの算出に反映される学習値反映領域よりも狭く、かつ切替え回転速度α(=3500回転/分)寄りの領域に制限していることである。この領域は、例えば切替え回転速度αを上限値とし、かつそれよりも所定値低い値(例えば2500回転/分)を下限値とする領域(以下「下側領域RL」という)と、切替え回転速度αを下限値とし、かつそれよりも所定値高い値(例えば4500回転/分)を上限値とする領域(以下「上側領域RH」という)とからなる。
【0073】
2つ目の相違点は、学習値AVE(L),AVE(H),MAD(L),MAD(H)の算出に際し、そのときどきの平均レベルAVE及び実効偏差MADをそのままの形で用いるのではなく、次の(式4)〜(式7)に従ってそれぞれなまし処理していることである。
【0074】
AVE(L)=前回AVE(L)+(AVE−前回AVE(L))/係数……(式4)
AVE(H)=前回AVE(H)+(AVE−前回AVE(H))/係数……(式5)
MAD(L)=前回MAD(L)+(MAD−前回MAD(L))/係数……(式6)
MAD(H)=前回MAD(H)+(MAD−前回MAD(H))/係数……(式7)
次に、前記相違点を中心に、平均レベルAVE及び実効偏差MADを算出する手順について説明する。図10は、第1実施形態での図4に対応するフローチャートであり、濾波周波数帯域の非切替え時に行われる平均レベルAVEの算出処理を示している。なお、図4と同様の処理については、同一のステップ数を付して説明を省略する。
【0075】
ステップ207の判定条件が満たされている(f0=FL)と、ステップ212において、機関回転速度Neが下側領域RL(2500<Ne<3500)に入っているか否かを判定する。この判定条件が満たされていると、ステップ213において、前記(式4)に従って学習値AVE(L)を算出する。従って、機関回転速度Neが下側領域RLに属している期間において、平均レベルAVEが算出される毎に、RAM20の第1エリア21に記憶されている学習値AVE(L)が更新されることとなる。そして、高濾波周波数帯域への切替え直前に更新された学習値AVE(L)が直前擬似平均値とされる。
【0076】
ステップ212の判定条件が満たされていないと、ステップ214において、今回の学習値AVE(L)として前回の学習値AVE(L)を保持する。この保持処理は、振動波形信号が低濾波周波数帯域で濾波されている期間のうち、機関回転速度Neが下側領域RLの下限値(2500回転/分)以下となる期間に行われる。
【0077】
このように第2実施形態によると、振動波形信号が低濾波周波数帯域で濾波されていれば、学習値AVE(L)が更新される第1実施形態とは異なり、低濾波周波数帯域であっても、機関回転速度Neが下側領域RLに入った場合にのみ、学習値AVE(L)の算出・更新が行われる。
【0078】
なお、図10には、ステップ207の判定条件が満たされた場合の学習値AVE(H)についての記載がないが、この学習値AVE(H)としては前回の値が保持されるものとする。保持の対象となる値は、振動波形信号が前回の高濾波周波数帯域で濾波されている期間に設定された直前擬似平均値、すなわち、同期間において低濾波周波数帯域への切替え直前に更新された値(学習値AVE(H))である。そして、前記ステップ213又は214の処理を経た後、平均レベル算出ルーチンを終了する。
【0079】
一方、前記ステップ207の判定条件が満たされていない(f0=FH)と、ステップ215において、機関回転速度Neが上側領域RH(3500<Ne<4500)に入っているか否かを判定する。この判定条件が満たされていると、ステップ216において、前記(式5)に従って学習値AVE(H)を算出する。従って、機関回転速度Neが上側領域RHに入っている期間において、平均レベルAVEが算出される毎に、RAM20の第2エリア22に記憶されている値(学習値AVE(H))が更新されることとなる。そして、低濾波周波数帯域への切替え直前に更新された学習値AVE(H)が直前擬似平均値とされる。
【0080】
ステップ215の判定条件が満たされていないと、ステップ217において、今回の学習値AVE(H)として前回の学習値AVE(H)を保持する。この保持処理は、振動波形信号が高濾波周波数帯域で濾波されている期間のうち、機関回転速度Neが上側領域RHの上限値(4500回転/分)以上となる期間に行われる。
【0081】
このように、第2実施形態によると、振動波形信号が高濾波周波数帯域で濾波されていれば学習値AVE(H)が更新される第1実施形態とは異なり、高濾波周波数帯域であっても、機関回転速度Neが上側領域RHに入った場合にのみ、学習値AVE(H)の算出・更新が行われる。
【0082】
なお、図10には、ステップ207の判定条件が満たされない場合の学習値AVE(L)についての記載がないが、この学習値AVE(L)としては前回の値が保持されるものとする。保持の対象となる値は、振動波形信号が前回の低濾波周波数帯域で濾波されている期間に設定された直前擬似平均値、すなわち、同期間において高濾波周波数帯域への切替え直前に更新された学習値AVE(L)である。そして、前記ステップ216又は217の処理を経た後、平均レベル算出ルーチンを終了する。
【0083】
図11は、第1実施形態での図6に対応するフローチャートであり、濾波周波数帯域の非切替え時に行われる実効偏差MADの算出処理を示している。なお、図6と同様の処理については同一のステップ数を付して説明を省略する。
【0084】
ステップ307の判定条件が満たされている(f0=FL)と、ステップ312において、機関回転速度Neが下側領域RL(2500<Ne<3500)に入っているか否かを判定する。この判定条件が満たされていると、ステップ313において、前記(式6)に従って学習値MAD(L)を算出する。ステップ312の判定条件が満たされていないと、ステップ314において、今回の学習値MAD(L)として前回の学習値MAD(L)を保持する。そして、前記ステップ313又は314の処理を経た後、実効偏差算出ルーチンを終了する。
【0085】
一方、前記ステップ307の判定条件が満たされていない(f0=FH)と、ステップ315において、機関回転速度Neが上側領域RH(3500<Ne<4500)に入っているか否かを判定する。この判定条件が満たされていると、ステップ316において、前記(式7)に従って学習値MAD(H)を算出する。ステップ315の判定条件が満たされていないと、ステップ317において、今回の学習値MAD(H)として前回の学習値MAD(H)を保持する。そして、前記ステップ316又は317の処理を経た後、実効偏差算出ルーチンを終了する。
【0086】
なお、図11には、ステップ307の判定条件が満たされる場合の学習値MAD(H)についての記載と、満たされない場合の学習値MAD(L)についての記載とがないが、これらの学習値MAD(H),MAD(L)については前回の値が保持されるものとする。
【0087】
図12は、第1実施形態での図7に対応するタイミングチャートであり、機関回転速度Neが急激に変化した場合の、中心周波数f0、平均レベルAVE、及びその学習値AVE(L),AVE(H)の変化を示している。このタイミングチャートでは、機関回転速度Neは、第1実施形態と同様に、タイミングt10,t20において切替え回転速度α(=3500回転/分)に合致する。同機関回転速度Neは、切替え回転速度αよりも低い期間のうち、タイミングt9〜t10の期間と、タイミングt20〜t21の期間とにおいて下側領域RLに入る。また、機関回転速度Neは、切替え回転速度αよりも高い期間のうち、タイミングt10〜t11の期間と、タイミングt19〜t20の期間とにおいて上側領域RHに入る。
【0088】
なお、図12中の平均レベルAVEに関し、実線は理想的な平均レベルの変化を示し、二点鎖線は本実施形態での平均レベルの変化を示している。また、濾波周波数帯域が切替えられるタイミングt10,t20については、第1実施形態と同様であるため、詳しい説明を省略する。
【0089】
タイミングt9よりも前の期間では、機関回転速度Neが下側領域RLの下限値(2500回転/分)よりも低いことから、振動波形信号が低濾波周波数帯域(f0=FL)で濾波される。この場合、平均レベル算出ルーチンでは、ステップ201→206→207→212→214→リターンの順に処理が行われる。この期間では、学習値AVE(L),AVE(H)として前回の値が保持される。学習値AVE(L)に関し保持の対象となる値は、下側領域RL内に入っていた機関回転速度Neが、その下側領域RLの下限値よりも低くなる直前に更新された値である。また、学習値AVE(H)に関し保持の対象となる値は、前回の高濾波周波数帯域での濾波期間(図示略)中、低濾波周波数帯域への切替え直前に更新された直前擬似平均値(AVE(H))である。
【0090】
タイミングt9〜t10の期間では、機関回転速度Neが下側領域RL(2500<Ne<3500)に入ることから、平均レベル算出ルーチンでは、ステップ201→206→207→212→213→リターンの順に処理が行われる。(式4)に従って演算が行われることにより、平均レベルAVEがなまし処理されて学習値AVE(L)が算出される。この際、(式4)中の前回AVE(L)の初期値としては、タイミングt9まで保持されてきた値が用いられる。そして、タイミングt10の直前に算出された学習値AVE(L)が直前擬似平均値とされる。また、この期間では、学習値AVE(H)として前回の値が保持される。
【0091】
タイミングt10では、機関回転速度Neが切替え回転速度αに合致することから、中心周波数f0がFLからFHに切替えられる。この切替えにともない、理想的な平均レベルAVEが大きく変化する。しかし、前回の高濾波周波数帯域での濾波期間(図示略)で最後に更新され、かつ切替え直前の低濾波周波数帯域での濾波期間(タイミングt10よりも前の期間)中保持された学習値AVE(H)が、切替え直後の平均レベルAVEの算出に際し、前回AVEの初期値として用いられる。このため、急変する平均レベルAVEに対し、図12において二点鎖線で示すように若干の遅れはあるものの、切替え直後の平均レベルAVEの算出に際し、切替え直前の平均レベルAVEを前回算出値(前回AVE)として用いる場合(従来技術に相当)に比べ、切替え後、比較的短時間で、理想的な平均レベルAVEに近い値を算出することができる。
【0092】
タイミングt10〜t11の期間においては、機関回転速度Neが上側領域RH(3500<Ne<4500)に入ることから、平均レベル算出ルーチンでは、ステップ201→206→207→215→216→リターンの順に処理が行われる。(式5)に従って演算が行われることにより、平均レベルAVEがなまし処理されて学習値AVE(H)が算出される。(式5)中の前回AVE(H)の初期値としては、タイミングt10まで保持された値が用いられる。学習値AVE(L)については前回の値、すなわち、タイミングt10の直前に算出された学習値AVE(L)が保持される。
【0093】
タイミングt11〜t19の期間においては、機関回転速度Neが上側領域RHの上限値(4500回転/分)以上となることから、平均レベル算出ルーチンでは、ステップ201→206→207→215→217→リターンの順に処理が行われる。この期間では、学習値AVE(L)として、引き続き前回の値が保持される。また、学習値AVE(H)として、前回の値、すなわち、タイミングt11の直前に算出された学習値AVE(H)が保持される。
【0094】
機関回転速度Neが下降する過程では、前述した上昇過程と同様の処理が行われる。具体的には、タイミングt19〜t20の期間では、機関回転速度Neが上側領域RH(3500<Ne<4500)に入ることから、前記タイミングt10〜t11の期間と同様の処理が行われる。学習値AVE(L)については、タイミングt19まで保持されてきた値が引き続き保持される。これに対し、学習値AVE(H)については、(式5)に従って演算が行われる。なお、(式5)中の前回AVE(H)の初期値としては、タイミングt19まで保持されてきた値が用いられる。
【0095】
タイミングt20では、機関回転速度Neが切替え回転速度αと同一になることから、前記タイミングt10と同様の処理が行われる。ここで、平均レベルAVEの算出に際しては、(式1)中の前回AVEとして、タイミングt20まで保持されてきた学習値AVE(L)が用いられる。この学習値AVE(L)は、タイミングt10の直前に算出された値であり、理想的な値に近い。このため、切替え直前の平均レベルAVEを切替え直後の前回算出値(前回AVE)として用いて今回の平均レベルAVEを算出した場合(従来技術に相当)よりも短い時間で適正な平均レベルAVEを算出することができる。
【0096】
タイミングt20〜t21の期間では、機関回転速度Neが下側領域RL(2500<Ne<3500)に入ることから、前記タイミングt9〜t10の期間と同様の処理が行われる。学習値AVE(L)については、(式4)に従って演算が行われる。この(式4)中の前回AVE(L)の初期値としては、タイミングt20まで保持されてきた値が用いられる。学習値AVE(H)については、タイミングt20の直前に算出された値が保持される。このように、タイミングt20〜t21の期間では、学習値AVE(L)のみが更新される。
【0097】
タイミングt21よりも後の期間では、機関回転速度Neが下側領域RLの下限値(2500回転/分)以下となることから、前記タイミングt9よりも前の期間と同様の処理が行われる。この期間では、学習値AVE(L)として、タイミングt21の直前に算出された値が保持される。また、学習値AVE(H)としては、タイミングt21まで保持されてきた値が、引き続き保持される。
【0098】
なお、実効偏差MAD及びその学習値MAD(L),MAD(H)についても、前述した平均レベルAVE及びその学習値AVE(L),AVE(H)と同様にして変化する。そのため、ここでは説明を省略する。
【0099】
以上詳述した第2実施形態によれば、第1実施形態での(1)〜(4)の効果に加え、以下の効果が得られる。
(5)同一の濾波周波数帯域であっても、算出される平均レベルAVE及び実効偏差MADは、内燃機関11の運転状態(機関負荷、機関回転速度Ne等)に応じて変わってくる。例えば、切替え回転速度α近傍の下側領域RL及び上側領域RHとそれ以外の領域とでは、平均レベルAVE及び実効偏差MADが大きく異なる。このため、濾波周波数帯域の切替え直前に内燃機関11の運転状態が急激に変化した際、仮に後者の領域における平均レベルAVE及び実効偏差MADに基づき学習が行われると、本来必要としない領域で学習が行われたこととなる。その結果、再度同じ濾波周波数帯域に復帰した場合において、切替え直後の前回算出値(前回AVE,前回MAD)の初期値として不適切な値が設定されるおそれがある。
【0100】
例えば、変速機のシフトアップにともない、機関回転速度Neの属する領域が図9の「A」から「B」に急激に変化した場合には、本来は図中の値a1を学習すべきであるにもかかわらず、この値a1を学習する機会がなく、機関回転速度Neの変化前の運転状態(領域A)において値a2が取込まれてしまう。これは、ノッキング制御中であれば領域に関係なく常時学習が行われるためである。
【0101】
これに対し、第2実施形態では、学習値AVE(L),MAD(L)を算出する学習領域を下側領域RLに制限し、学習値AVE(H),MAD(H)を算出する領域を上側領域RHに制限している。そして、これらの下側領域RL及び上側領域RHを、いずれも図8に示すように学習値反映領域よりも狭く、かつ切替え回転速度α寄りの領域に設定している。しかも、下側領域RLの上限値及び上側領域RHの下限値を切替え回転速度αと同じにしている。これらの学習に用いられる値AVE,MADは、再度同じ濾波周波数帯域に復帰した場合の切替え後の濾波周波数帯域において、理想的な平均レベルAVE及び実効偏差MADに近い値である。
【0102】
従って、内燃機関11の運転状態が急激に変化した際に濾波周波数帯域が切替えられても、本来必要としない領域(図9の領域A)において学習がされることがなく、再度同じ濾波周波数帯域に戻ったときに、精度の高い学習値AVE(L),AVE(H),MAD(L),MAD(H)を前回算出値として利用することができる。このように学習機能が適正に機能するため、濾波周波数帯域の切替え後に素早くノッキングを検出することが可能となる。
【0103】
(6)機関回転速度Neの急変にともなう濾波周波数帯域の切替えにより、平均レベルAVEが瞬間的に急激に変化した場合には、それが真の値でない可能性がある。この値を、そのまま濾波周波数帯域の切替え直前における平均レベルAVEとすると、再度同じ濾波周波数帯域に戻った場合の切替え直後における前回算出値の初期値に誤った値が用いられ、平均レベルAVEの算出精度が低下する。
【0104】
これに対し、第2実施形態では、学習値AVE(L),AVE(H),MAD(L),MAD(H)の算出に際し、そのときの平均レベルAVE及び実効偏差MADをそのまま学習値とするのではなく、同平均レベルAVE及び実効偏差MADをそれぞれなまし処理している。従って、濾波周波数帯域の切替えにより、前記のように平均レベルAVEや実効偏差MADが瞬間的に急激に変化しても、それらが各学習値AVE(L),AVE(H),MAD(L),MAD(H)の算出に及ぼす影響を小さくすることができる。その結果、切替え直後における平均レベルAVE及び実効偏差MADの算出精度の低下を抑制することができる。
(第3実施形態)
次に、本発明を具体化した第3実施形態について、図13〜図16に従って説明する。第3実施形態は、図15に示すように、学習領域である下側領域RLの上限値が切替え回転速度αよりも若干低い値に設定され、同じく学習領域である上側領域RHの下限値が切替え回転速度αよりも若干高い値に設定されている点において、第2実施形態と異なっている。具体的には、切替え回転速度αを3000回転/分とした場合において、下側領域RLの下限値及び上限値は、それぞれ2500回転/分及び2950回転/分に設定されている。また、上側領域RHの下限値及び上限値は、それぞれ3050回転/分及び3500回転/分に設定されている。
【0105】
続いて、平均レベルAVEを算出する手順について説明する。図13及び図14は、第1実施形態での図3と第2実施形態での図10とに対応するフローチャートであり、ノックAD値を用いて平均レベルAVEを算出する手順を示している。
【0106】
この平均レベル算出ルーチンでは、まず図13のステップ250において、そのときに選択されている濾波周波数帯域の中心周波数f0(FL又はFH)を記憶する。ステップ251において、前記ステップ207と同様にして、中心周波数f0が低い値FLであるか否かを判定する。この判定条件が満たされている(f0=FL)と、ステップ252において、機関回転速度Neが切替え回転速度α(=3000回転/分)以上であるか否かを判定する。このようにして、濾波周波数帯域を切替えるための切替え条件が成立しているかどうかを判定する。
【0107】
ステップ252の判定条件が満たされていない(Ne<α)と、切替え条件が成立していないことから、ステップ256において、前記ステップ206と同様にして前記(式1)に従って平均レベルAVEを算出する。続いて、ステップ257において、機関回転速度Neが下側領域RL(2500≦Ne<2950)に入っているか否かを判定する。この判定条件が満たされていると、ステップ258において、前記ステップ213と同様にして、前記(式4)に従って学習値AVE(L)を算出する。従って、機関回転速度Neが下側領域RLに属している期間において、平均レベルAVEが算出される毎に、RAM20の第1エリア21に記憶されている学習値AVE(L)が更新されることとなる。そして、高濾波周波数帯域への切替え直前に更新された学習値AVE(L)が直前擬似平均値とされる。ステップ258の処理を経た後、平均レベル算出ルーチンを終了する。
【0108】
なお、ステップ257の判定条件が満たされていない場合、すなわち、Ne<2500の場合、及び2950≦Ne<3000の場合には、ステップ258の処理を行うことなくそのまま平均レベル算出ルーチンを終了する。
【0109】
一方、前記ステップ252の判定条件が満たされている(Ne≧3000)と、切替え条件が成立していることから、ステップ253において、中心周波数f0を低い値FLから高い値FHに切替える。ステップ254において、前記ステップ203と同様にして、そのときRAM20の第2エリア22に記憶されている学習値AVE(H)を読出し、これを前回AVEとして設定した後、ステップ255へ移行する。このように高濾波周波数帯域に切替えられた場合、その切替え直前の低濾波周波数帯域での濾波期間中保持された学習値AVE(H)が前回AVEの初期値として設定される。
【0110】
ステップ255では、前記ステップ205と同様にして、前記(式1)に従って平均レベルAVEを算出する。この算出の際、前記ステップ254で設定した値が(式1)中の前回AVEとして用いられる。その後、平均レベル算出ルーチンを終了する。
【0111】
ところで、前記ステップ251の判定条件が満たされていない(f0=FH)と、図14のステップ259において、機関回転速度Neが切替え回転速度α(=3000回転/分)よりも低いか否かを判定する。このようにして、濾波周波数帯域を切替えるための切替え条件が成立しているかどうかを判定する。この判定条件が満たされていない(Ne≧α)と、切替え条件が成立していないことから、ステップ263において、前記ステップ206と同様にして前記(式1)に従って平均レベルAVEを算出する。続いて、ステップ264において、機関回転速度Neが上側領域RH(3050≦Ne<3500)に入っているか否かを判定する。この判定条件が満たされていると、ステップ265において、前記ステップ216と同様にして、前記(式5)に従って学習値AVE(H)を算出する。従って、機関回転速度Neが上側領域RHに属している期間において、平均レベルAVEが算出される毎に、RAM20の第2エリア22に記憶されている学習値AVE(H)が更新されることとなる。そして、低濾波周波数帯域への切替え直前に更新された学習値AVE(H)が直前擬似平均値とされる。ステップ265の処理を経た後、平均レベル算出ルーチンを終了する。
【0112】
なお、ステップ264の判定条件が満たされていない場合、すなわち、3000≦Ne<3050の場合、及びNe≧3500の場合には、ステップ265の処理を行うことなくそのまま平均レベル算出ルーチンを終了する。
【0113】
一方、前記ステップ259の判定条件が満たされている(Ne<3000)と、切替え条件が成立していることから、ステップ260において、中心周波数f0を高い値FHから低い値FLに切替える。ステップ261において、前記ステップ204と同様にして、そのときRAM20の第1エリア21に記憶されている学習値AVE(L)を読出し、これを前回AVEとして設定しステップ262へ移行する。このように低濾波周波数帯域に切替えられた場合、その切替え直前の高濾波周波数帯域での濾波期間中保持された学習値AVE(L)が前回AVEの初期値として設定される。
【0114】
ステップ262では、前記ステップ205と同様にして、前記(式1)に従って平均レベルAVEを算出する。この算出の際、前記ステップ261で設定した値が(式1)中の前回AVEとして用いられる。その後、平均レベル算出ルーチンを終了する。
【0115】
なお、実効偏差MADを算出する手順については、前述した平均レベルAVEを算出する手順と同様であるため、ここでは説明を省略する。
図16は、第1実施形態での図7、及び第2実施形態での図12に対応するタイミングチャートであり、機関回転速度Ne、平均レベルAVE、学習値AVE(L),AVE(H)の変化を示している。このタイミングチャートでは、機関回転速度Neがタイミングt30,t40において切替え回転速度α(=3000回転/分)となる。同機関回転速度Neは、切替え回転速度αよりも低い期間のうち、タイミングt28〜t29の期間と、タイミングt41〜t42の期間とにおいて下側領域RLに入る。また、機関回転速度Neは、切替え回転速度αよりも高い期間のうち、タイミングt31〜t32の期間と、タイミングt38〜t39の期間とにおいて上側領域RHに入る。なお、図中の平均レベルAVEに関し、二点鎖線は理想的な平均レベルの変化を示し、実線は本実施形態での平均レベルの変化を示している。
【0116】
タイミングt28よりも前の期間では、機関回転速度Neが下側領域RLの下限値(2500回転/分)よりも低いことから、振動波形信号が低濾波周波数帯域(f0=FL)で濾波される。この場合、平均レベル算出ルーチンでは、ステップ250→251→252→256→257→リターンの順に処理が行われる。この期間では、学習値AVE(L),AVE(H)として前回の値が保持される。タイミングt28〜t29の期間では、機関回転速度Neが下側領域RL(2500≦Ne<2950)に入り、ステップ257の判定条件が満たされることから、ステップ250→251→252→256→257→258→リターンの順に処理が行われる。この期間では、学習値AVE(L)が算出・更新され、学習値AVE(H)として前回の値が保持される。
【0117】
タイミングt29〜t30の期間では、ステップ257の判定条件が満たされなくなることから、前述したタイミングt28よりも前の期間と同様の順で処理が行われる。学習値AVE(L),AVE(H)としては、前回の値が保持される。タイミングt30では、機関回転速度Neが切替え回転速度αに合致し、ステップ252の判定条件が満たされる。このため、ステップ250→251→252→253→254→255→リターンの順に処理が行われる。
【0118】
タイミングt30〜t31の期間においては、ステップ251,259,264の判定条件がいずれも満たされないことから、ステップ250→251→259→263→264→リターンの順に処理が行われる。学習値AVE(L),AVE(H)としては、前回の値が保持される。タイミングt31〜t32の期間においては、機関回転速度Neが上側領域RH(3050≦Ne<3500)に入ることから、ステップ250→251→259→263→264→265→リターンの順に処理が行われる。この期間では、学習値AVE(H)が算出・更新され、学習値AVE(L)として前回の値が保持される。タイミングt32〜t38の期間においては、機関回転速度Neが上側領域RHの上限値(3500回転/分)以上となることから、前述したタイミングt30〜t31の期間と同様の順で処理が行われる。この期間では、学習値AVE(L),AVE(H)として、前回の値が保持される。
【0119】
機関回転速度Neが下降する過程では、前述した上昇過程と同様の処理が行われる。具体的には、タイミングt38〜t39の期間では、機関回転速度Neが上側領域RH(3050≦Ne<3500)に入り、ステップ264の判定条件が満たされることから、前記タイミングt31〜t32の期間と同様の順に処理が行われる。
【0120】
タイミングt39〜t40の期間では、機関回転速度Neが切替え回転速度αと上側領域RHとの間の領域(3000≦Ne<3050)に入ることから、前記タイミングt30〜t31の期間と同様の順に処理が行われる。タイミングt40では、機関回転速度Neが切替え回転速度αと同一になることから、前記タイミングt30と同様の順に処理が行われる。タイミングt40〜t41の期間では、機関回転速度Neが切替え回転速度αと下側領域RLとの間の領域(2950≦Ne<3000)に入ることから、前記タイミングt29〜t30の期間と同様の順に処理が行われる。
【0121】
タイミングt41〜t42の期間では、機関回転速度Neが下側領域RL(2500≦Ne<2950)に入ることから、前記タイミングt28〜t29の期間と同様の順で処理が行われる。タイミングt42よりも後の期間であって、機関回転速度Neが下側領域RLの下限値(2500回転/分)を下回る場合には、前記タイミングt28よりも前の期間と同様の処理が行われる。
【0122】
なお、実効偏差MAD及びその学習値MAD(L),MAD(H)についても、前述した平均レベルAVE及びその学習値AVE(L),AVE(H)と同様にして変化する。そのため、ここでは説明を省略する。
【0123】
以上詳述した第3実施形態によれば、下側領域RLの上限値が切替え回転速度αよりも若干低く、上側領域RHの下限値が切替え回転速度αよりも若干高いが、第2実施形態と同様に、上述した(1)〜(6)の効果を奏する。すなわち、上下各領域RL,RHが学習値反映領域よりも狭く、かつ切替え回転速度α寄りに設定されていれば、上側領域RHの下限値及び下側領域RLの上限値が切替え回転速度αに一致している場合も一致していない場合も、効果上の差異はほとんどない。
【0124】
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
・内燃機関で発生する振動を検出するセンサとして、前述した非共振型のノックセンサ以外にも、燃焼室内の圧力を検出する筒内圧センサ、燃焼光を検出する燃焼光センサ等を用いてもよい。
【0125】
・本発明は、機関回転速度Ne以外にも、機関運転状態としての機関負荷(吸気管圧力、吸入空気量、スロットル開度等)が所定の大きさになったときに濾波周波数帯域を切替えるようにしたノッキング検出装置にも適用可能である。
【0126】
・第1実施形態と第2実施形態(又は第3実施形態)とを組合わせ、内燃機関の運転状態に応じて平均レベルAVE及び実効偏差MADの算出方法を切替えるようにしてもよい。例えば、運転状態がゆっくり変化する場合には、第1実施形態の算出方法を採用し、運転状態が急に変化する場合には、第2実施形態又は第3実施形態の算出方法に切替えるようにしてもよい。
【0127】
・第1実施形態においても、第2実施形態及び第3実施形態と同様にして、学習値AVE(L),AVE(H),MAD(L),MAD(H)を更新する領域を、切替え回転速度α近傍の領域に制限するようにしてもよい。詳しくは、振動波形信号を低濾波周波数帯域(f0=FL)で濾波しているときには、機関回転速度Neが下側領域RLに入っている場合にのみ学習値AVE(L),MAD(L)を更新する。また、振動波形信号を高濾波周波数帯域(f0=FH)で濾波しているときには、機関回転速度Neが上側領域RHに入っている場合にのみ学習値AVE(H),MAD(H)を更新するようにする。
【0128】
・本発明は、三つ以上の濾波周波数帯域を、機関運転状態に応じて切替えるようにしたノッキング検出装置にも適用可能である。また、本発明は、互いに濾波周波数帯域の異なる複数のBPFを用い、いずれか1つのBPFによってノッキングを検出するとともに、機関運転状態に応じて、使用するBPFを切替えるようにしたノッキング検出装置にも適用可能である。
【0129】
・前記(式1)及び(式2)における係数を機関運転状態に応じて異ならせてもよい。例えば、定速走行時等、機関運転状態の変化が少ない場合には、係数を大きな値に設定して、平均レベルAVE、実効偏差MADがあまり変化しないようにする。また、加減速時等、機関運転状態の変化が多い場合には係数を小さな値に設定して、平均レベルAVE、実効偏差MADを速く適正な値に収束させる。
【0130】
・前記実施形態では、濾波周波数帯域が切り替わる毎に、1つ前の同一濾波周波数帯域で求めた学習値を前回算出値として設定したが、これに限られない。複数回前の同一濾波周波数帯域で求めた学習値を前回算出値としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の内燃機関用ノッキング検出装置を具体化した第1実施形態について、その構成を示すブロック図。
【図2】ノック判定レベルを設定する手順を示すフローチャート。
【図3】ノック判定レベルの設定において、平均レベルを算出する手順の一部を示すフローチャート。
【図4】同じく平均レベルを算出する手順の一部を示すフローチャート。
【図5】ノック判定レベルの設定において、実効偏差を算出する手順の一部を示すフローチャート。
【図6】同じく実効偏差を算出する手順の一部を示すフローチャート。
【図7】平均レベル、学習値等の具体的な変化の態様を示すタイミングチャート。
【図8】本発明の第2実施形態において、学習領域と学習値反映領域との関係を説明するための概念図。
【図9】学習領域と学習値反映領域との関係を説明するための概念図。
【図10】平均レベルを算出する手順の一部を示すフローチャート。
【図11】実効偏差を算出する手順の一部を示すフローチャート。
【図12】平均レベル、学習値等の具体的な変化の態様を示すタイミングチャート。
【図13】本発明の第3実施形態において、平均レベルを算出する手順の一部を示すフローチャート。
【図14】同じく平均レベルを算出する手順の一部を示すフローチャート。
【図15】学習領域と学習値反映領域との関係を説明するための概念図。
【図16】平均レベル、学習値等の具体的な変化の態様を示すタイミングチャート。
【符号の説明】
11…内燃機関、12…ノックセンサ、13…BPF(バンドパスフィルタ)、15…ECU(電子制御装置)、20…RAM。

Claims (6)

  1. 内燃機関の運転にともない発生する振動をセンサで検出し、検出した振動波形信号からノッキング特有の周波数帯域の信号をフィルタで濾波し、濾波後の振動強度及び前回算出値に基づき、振動強度の度数分布における平均値及び標準偏差をそれぞれ擬似的に算出し、それらの擬似平均値及び擬似標準偏差を用いて設定したノック判定レベルと前記振動強度との比較によりノッキングを検出するとともに、前記内燃機関の運転状態が所定の切替え状態となった場合に前記フィルタの濾波周波数帯域を切替えるようにした内燃機関用ノッキング検出装置において、
    所定の濾波周波数帯域で算出された擬似平均値及び擬似標準偏差を再度同一の濾波周波数帯域で濾波されるまで保持する保持手段と、
    前記同一の濾波周波数帯域に切替えられたとき、前記保持手段により保持された擬似平均値及び擬似標準偏差を、切替え直後における前回算出値の初期値として設定する初期値設定手段と
    を備えることを特徴とする内燃機関用ノッキング検出装置。
  2. 前記濾波周波数帯域の切替えは、前記内燃機関の機関回転速度が所定の切替え回転速度になった場合に行われる請求項1に記載の内燃機関用ノッキング検出装置。
  3. 前記擬似平均値及び擬似標準偏差を算出する擬似値算出手段は、前記擬似平均値及び前記擬似標準偏差に基づき、それらについての学習値をそれぞれ求めて記憶する学習手段と、前記擬似平均値及び前記擬似標準偏差が算出される毎に前記学習手段の学習値を更新する更新手段とを含むものである請求項1又は2に記載の内燃機関用ノッキング検出装置。
  4. 前記学習手段は、前記擬似平均値及び前記擬似標準偏差を、それらについての学習値とする請求項3に記載の内燃機関用ノッキング検出装置。
  5. 前記擬似値算出手段は、前記学習手段により各学習値が求められる学習領域を、その学習値が前記擬似平均値及び前記擬似標準偏差の算出に反映される学習値反映領域よりも狭く、かつ前記切替え状態寄りの領域に制限する学習領域制限手段をさらに含む請求項3に記載の内燃機関用ノッキング検出装置。
  6. 前記学習手段は、前記擬似平均値及び前記擬似標準偏差をそれぞれなまし処理することにより、前記擬似平均値及び前記擬似標準偏差についての各学習値を求める請求項5に記載の内燃機関用ノッキング検出装置。
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