JP4486509B2 - 電子顕微鏡 - Google Patents
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セミインレンズ形の場合は、対物レンズ3の下方に漏れ磁場5を生じる構造のため、試料4から放出された二次電子の多くは漏れ磁場5により対物レンズ3の光軸上に巻き上げられる。さらに加速電極(図示せず)で加速された二次電子は、対物レンズ3の軸上磁場に導かれて対物レンズ3の上方に達し、上方検出器6により検出されることになる。
上方検出器の信号検出量をSEI、下方検出器の信号検出量をLEIとおき、図2にWDを変化させた場合のSEIとLEIの変化を比較したグラフを示す。横軸はWD(mm)、縦軸は信号検出量である。ただし縦軸の信号検出量は、上方、下方それぞれの最大信号検出量を“1”として規格化している。図2から、WDの違いによって信号の検出量が変わり、あるWD(グラフ上ではWD=Bで示す)を境に、上方検出器と下方検出器の信号検出量が逆転していることが分かる。
同様の問題は反射電子を検出する場合にも生じるので、配置場所の異なる複数の反射電子検出器を取り付け、二次電子と同様の信号処理を行っている。
従って、以下、単に上方検出器、下方検出器と呼ぶ場合は、二次電子用の上方及び下方検出器、若しくは反射電子用の上方及び下方検出器を指すものとする。
上方検出器と下方検出器からの信号を別々に観察する場合、画像のコントラスト/明るさは、各々の表示画像に対して別々に設定する必要がある。また、複数の信号を加算して画像表示する場合は、一度個々の画像を観察画面上に表示し、観察画面上で像のコントラスト/明るさを調整してから画像加算を行う。
もし上方と下方検出器とで得られた画像を加算して観察を行う場合は、先ず下方及び上方検出器によって得られる画像のコントラスト/明るさを別々に調整する。次に操作者が加算ON/OFF操作部18で加算ONを選択することにより、信号選択/加算部10の端子A−A’、B−B’が共に接続されるので、加算された画像をディスプレイ12で観察することができる。
また、一度加算して観察している画像のコントラスト/明るさを変化させようとした場合、それぞれの検出器による検出信号量の検出効率が異なると、単純に各々の検出器に対してコントラストの値を比例して調整することはできず、別々にコントラスト/明るさの調整を行わなければならない。何故ならば、検出効率の低い検出器のコントラスト変化量を検出効率の高い検出器と同じ値で変化させると、検出効率の低い検出器の信号はよりノイズの多い信号となり、そのまま加算した画像もノイズの多い画像となってしまうからである。
試料表面に加速された電子線を照射し、発生する二次電子または反射電子を検出して試料表面の観察を行う電子顕微鏡において、
配置場所の異なる少なくとも2つの二次電子または反射電子検出器及びこれら各検出器の制御を行う検出器制御手段を有し、
前記各々の検出器からの信号を加算して画像として表示する表示手段と、観察条件に関する情報に基づいて、前記各々の検出器のコントラストを制御するためのコントラスト可変量係数を算出する算出手段と、操作者により設定される変化量を該算出手段に送る操作手段とを備え、
前記算出手段は、前記操作手段から受ける変化量に対して、前記コントラスト可変量係数に基づいて、前記各検出器のコントラストを制御するための制御信号を前記検出器制御手段に送ることを特徴とする。
前記作動距離<Bの場合は、
前記上方検出器に対する前記コントラスト可変量係数=1、
前記下方検出器に対する前記コントラスト可変量係数=LEI/SEI
を設定し、
B<前記作動距離の場合は、
前記上方検出器に対する前記コントラスト可変量係数=SEI/LEI、
前記下方検出器に対する前記コントラスト可変量係数=1
を設定することを特徴とする。
SSN>LSNの時、
前記上方検出器に対する前記コントラスト可変量係数=1
前記下方検出器に対する前記コントラスト可変量係数=LSN/SSN
SSN<LSNの時、
前記上方検出器に対する前記コントラスト可変量係数=SSN/LSN
前記下方検出器に対する前記コントラスト可変量係数=1
を設定することを特徴とする。
図1の従来構成例の検出器切換部16が、図3では検出器選択部24に置き換わり、係数算出部23が追加されている。操作者が加算ON/OFF操作部18から加算ONを指示すると、加算ON/OFF制御部22を介して、信号選択/加算部10の端子A−A’,B−B’及び検出器選択部24の端子C−C’,D−D’は共に接続状態となる。加算OFFが選択されている時は、操作者による信号選択操作部19からの指示に従って、信号選択/加算部10及び検出器選択部24の端子は、上方または下方検出器のみの制御を行うように接続状態が設定される。
係数算出部23は、観察条件メモリ21から受け取った観察条件に関する情報に基づいて、上方検出器と下方検出器のそれぞれに対するコントラスト/明るさ制御に必要なコントラスト可変量係数を求めるとともに、コントラスト/明るさ操作部20から受け取るひとつの変化量に対して、求められたコントラスト可変量係数に基づいて、上方検出器と下方検出器の検出器制御部14,15に制御信号を送る。
図4は、横軸にWD、縦軸に上方検出器と下方検出器に与えるコントラスト可変量係数をとったグラフである。上方検出器のコントラスト可変量係数は、図2のグラフのSEIとLEIが等しくなるWD(=B)を境にして、WD<Bの時、コントラスト可変量係数=1、B<WDの時は、図2のグラフのSEIとLEIのデータを用いて、信号量比率=SEI/LEIを求め、この信号量比率をコントラスト可変量係数として用いる。
同様に下方検出器については、WD<Bの時、信号量比率=LEI/SEIをコントラスト可変量係数として用い、B<WDの時は、コントラスト可変量係数=1とする。
WD=Bの時はどちらかに設定すればよい。
WDの値は観察条件メモリ21から読み取ることができるので、図4のグラフからWDに応じたコントラスト可変量係数を設定することができる。
実施形態例1では、観察条件に依存して変わる検出効率を考慮して、予め観察条件から複数の検出器に設定すべきコントラスト可変量係数を求めておいたが、実施形態例2では、各々の検出器から得られた画像のS/N比に基づいて、各々の検出器に対して設定すべきコントラスト可変量係数を求めるようにしている。図5では、図3の構成に画像メモリ25、S/N計算部26、信号取込制御部27が追加されている。観察条件(この場合はWD)が変化した時、上方及び下方検出器で検出された信号は信号取込制御部27を介して画像メモリ25に取り込まれる。S/N計算部26は、画像メモリ25に取り込んだ画像についてS/Nを算出し、演算結果を係数算出部23に送る。S/Nを算出する方法としては、積算画像について信号とバックグランドノイズの比を求める方法や、フーリエ変換を用いた画像処理などの方法が従来技術として知られているが、本発明でS/Nを求める方法は特に限定しない。
SSN>LSNの時、
上方検出器の係数=1
下方検出器の係数=LSN/SSN
SSN<LSNの時、
上方検出器の係数=SSN/LSN
下方検出器の係数=1
SSN=LSNの時はどちらかに設定すればよい。
1:電子銃 14:検出器制御部(上方)
2:電子線 15:検出器制御部(下方)
3:対物レンズ 16:検出器切換部
4:試料 17:操作部
5:漏れ磁場 18:加算ON/OFF操作部
6:上方検出器 19:信号選択操作部
7:下方検出器 20:コントラスト/明るさ操作部
8:コントラスト/明るさ増幅器(上方) 21:観察条件メモリ
9:コントラスト/明るさ増幅器(下方) 22:加算ON/OFF制御部
10:信号選択/加算部 23:係数算出部
11:画像メモリ(表示用) 24:検出器選択部
12:ディスプレイ 25:画像メモリ(S/N計算用)
13:制御部 26:S/N計算部
27:信号取込制御部
Claims (10)
- 試料表面に加速された電子線を照射し、発生する二次電子または反射電子を検出して試料表面の観察を行う電子顕微鏡において、
配置場所の異なる少なくとも2つの二次電子または反射電子検出器及びこれら各検出器の制御を行う検出器制御手段を有し、
前記各々の検出器からの信号を加算して画像として表示する表示手段と、観察条件に関する情報に基づいて、前記各々の検出器のコントラストを制御するためのコントラスト可変量係数を算出する算出手段と、操作者により設定される変化量を該算出手段に送る操作手段とを備え、
前記算出手段は、前記操作手段から受ける変化量に対して、前記コントラスト可変量係数に基づいて、前記各検出器のコントラストを制御するための制御信号を前記検出器制御手段に送ることを特徴とする電子顕微鏡。 - 前記各々の検出器に対して、何れの検出器の信号制御を行うかを選択する選択手段と、前記何れの検出器からの信号を画像として表示するかを選択する選択手段とを備えることを特徴とする請求項1に記載の電子顕微鏡。
- 前記各々の検出器による検出信号量の変化と観察条件の変化との相関関係データを予め求めておき、当該相関関係データに基づいて前記コントラスト可変量係数が算出されることを特徴とする請求項1又は2記載の電子顕微鏡。
- 前記各々の検出器は、セミインレンズ形走査顕微鏡の対物レンズの上方に取り付けられている上方検出器と当該対物レンズの下方に取り付けられている下方検出器であることを特徴とする請求項1乃至3何れか記載の電子顕微鏡。
- 前記試料表面と前記対物レンズの下端面との間の距離(作動距離)に応じた前記各々の検出器による検出信号量の相関関係データを予め求めておき、当該相関関係データに基づいて前記コントラスト可変量係数が算出されることを特徴とする請求項4記載の電子顕微鏡。
- 観察条件に応じて、検出効率が低い状態の検出器に対して設定されるコントラスト可変量係数は、検出効率が高い状態の検出器に対して設定されるコントラスト可変量係数よりも小さな値に設定することを特徴とする請求項1乃至5何れか記載の電子顕微鏡。
- 前記上方検出器と前記下方検出器による検出信号量をそれぞれSEI,LEIとおき、前記作動距離を変化させた時SEIとLEIが等しい値を与える作動距離の値をBとすると、
前記作動距離<Bの場合は、
前記上方検出器に対する前記コントラスト可変量係数=1、
前記下方検出器に対する前記コントラスト可変量係数=LEI/SEI
を設定し、
B<前記作動距離の場合は、
前記上方検出器に対する前記コントラスト可変量係数=SEI/LEI、
前記下方検出器に対する前記コントラスト可変量係数=1
を設定することを特徴とする請求項4又は5記載の電子顕微鏡。 - 前記各検出器により得られた各々の画像のS/Nを求め、当該各々の画像のS/Nの値に基づいて前記コントラスト可変量係数が算出されることを特徴とする請求項1記載の電子顕微鏡。
- 前記各々の検出器は、セミインレンズ形走査顕微鏡の対物レンズの上方に取り付けられている上方検出器と当該対物レンズの下方に取り付けられている下方検出器であることを特徴とする請求項8記載の電子顕微鏡。
- 前記上方検出器と前記下方検出器により得られた画像のS/NをそれぞれSSN,LSNとおくと、
SSN>LSNの時、
前記上方検出器に対する前記コントラスト可変量係数=1
前記下方検出器に対する前記コントラスト可変量係数=LSN/SSN
SSN<LSNの時、
前記上方検出器に対する前記コントラスト可変量係数=SSN/LSN
前記下方検出器に対する前記コントラスト可変量係数=1
を設定することを特徴とする請求項9記載の電子顕微鏡。
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