JP4486177B2 - Ac型プラズマディスプレイ装置及びac型プラズマディスプレイパネルの駆動方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電極間の放電を利用して画像表示を行うプラズマディスプレイ装置であって、特に、維持期間において電極に交流電圧を印加して放電を維持するAC型プラズマディスプレイパネルの構造および駆動方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のAC型プラズマディスプレイパネルの構成を図5に示す。
この図に示すように、従来のAC型プラズマディスプレイパネル(以下「パネル」という。)15は、放電空間2を挟んで第1のガラス基板13および第2のガラス基板4が対向して配置されている。第1のガラス基板13は透明なガラス基板であり、この第1のガラス基板13上には、誘電体層5および保護層6で覆われた複数の帯状の走査電極7と維持電極8とが交互に平行配列されている。なお、図中では1対の走査電極7と維持電極8のみが示されている。走査電極7、維持電極8はそれぞれ透明電極7a、8aと導電性を高めるための金属母線7b、8bとから構成されている。
【0003】
第2のガラス基板4上には、走査電極7および維持電極8と直交する方向に複数の帯状のデータ電極9が平行配列されている。なお、図中では1つのデータ電極9のみが示されている。データ電極9の間には、各データ電極9を隔離し、かつ、放電空間2を形成するための帯状の隔壁10が設けられている。また、データ電極9上から隔壁10の側面にわたって蛍光体11が形成されている。放電空間2にはヘリウム、ネオン、アルゴンの内、少なくとも一種類の希ガスとキセノンとの混合ガスが封入されている。走査電極7および維持電極8とデータ電極9との交点に1つの放電セルが形成される。
【0004】
このパネル15は表示面側である第1のガラス基板13側から画像表示を見るようになっている。パネル15は、放電空間2内での走査電極7と維持電極8との間の放電により発生する紫外線によって蛍光体11を励起し、この励起により生ずる蛍光体11からの可視光を表示発光に利用する。
【0005】
次に、従来のパネル15に画像データを表示させる方法について説明する。
画像データを表示するために、放電セルを初期化する初期化期間、放電セルにデータを書き込むアドレス期間および放電セルの発光を維持する維持期間を設定し、それぞれの期間で異なる信号波形を各電極に印加する。
【0006】
すなわち、初期化期間において、例えば、全ての走査電極7に、維持電極8およびデータ電極9に対して正極性のパルス電圧を印加し、保護層6および蛍光体11上に壁電荷を蓄積する。
【0007】
その後、アドレス期間において、走査電極7に順次、負極性のパルスを印加しながら、表示データがある場合に限ってデータ電極9に正極性のデータパルスを印加する。このとき、データ電極9と走査電極7間で起る放電によって走査電極7と維持電極8間の放電が誘起され、誘電体層5の上にデータパルスの有無に応じて壁電荷が形成される。この壁電荷の形成が放電セルにデータが書き込まれた状態を示す。
【0008】
続く維持期間において、走査電極7と維持電極8との間に一定の期間、放電を維持するのに十分な電圧を印加する。これにより、走査電極7と維持電極8の交点に放電プラズマが生成され、一定の期間、蛍光体11を励起発光させる。アドレス期間においてデータパルスが印加されなかった放電空間すなわちデータが書き込まれなかった放電セルでは、放電による発光は起こらない。
【0009】
このような従来のパネルでは、走査電極7と維持電極8の間隔12は、パッシェンの法則で決まる最小放電電圧が得られる値の近くに設定されている。これは、維持期間において走査電極7と維持電極8との間に印加する外部維持電圧Vsusを低くするためである。すなわち、維持電極8と走査電極7との間の放電開始電圧をVfssとし、またその間の壁電圧をVwssとするとき、
Vfss < Vsus +Vwss (1)
の関係がある。Vfssが最小になるようにパネルを設計することで、より低い印加電圧Vsusで表示放電を維持することができる。外部維持電圧Vsusは低いほど回路設計が容易になり、また無効電力による損失も低減できる。
【0010】
現在、製造されているパネルでは、封入ガスの全圧が約50〜60KPa、キセノンガスの分圧が5〜10%のとき、最も発光の効率が高くなることが知られている。また、その時、走査電極7と維持電極8の間隔12が80〜100μmのときに外部維持電圧Vsusは極小となり、Vsus=180〜200Vを得ている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
以上のような従来のパネルは、CRTなどの表示装置と比較して発光の効率が著しく低いという欠点があった。例えば、上述の間隔12が80〜100μmのパネルでは、発光効率1(lm/W)前後とCRTの5分の1程度である。
【0012】
一般に放電の発光効率は、電極間長が長いほど上昇することが知られている。これは、陰極となる電極近傍では大きな電圧降下があり、そこで消費される電力に対する発光の割合が少ないためである。電極間長を長くすると発光効率は上昇するが、放電開始電圧Vfssもパッシェン曲線にしたがって急激に上昇し、駆動が困難になる。
【0013】
また間隔12を拡大すると、その結果として隣接するセルの電極との間隔が縮まるため、隣接する放電セル間で望ましくない放電、すなわちクロストークが発生しやすくなる。上記の維持期間中、このクロストークが発生すると、画像表示が乱れ、画質の低下を招くという問題がある。
【0014】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、放電維持のための電圧を上昇させず、かつ、表示画像の画質低下を防止しつつ発光効率を向上させたAC型プラズマディスプレイ装置及びAC型プラズマディスプレイ装置の駆動方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明に係るAC型プラズマディスプレイ装置は以下の構成を有する。すなわち、AC型プラズマディスプレイ装置において、2枚の基板が隔壁を挟んで対向配置され、一方の基板上には行方向に第1の誘電体層で覆われた複数行の第1電極および第2電極が交互に形成され、他方の基板上には列方向に第2の誘電体層で覆われた複数の第3電極が形成され、第1電極と第2電極の間隔は第1電極と第3電極の間隔よりも広く設定されており、3つの電極の交点に1つの放電セルが構成される。AC型プラズマディスプレイ装置は、アドレス期間において、発光させる放電セルにデータを書きこみ、維持期間において、アドレス期間中にデータが書き込まれた放電セルに対して第1電極、第2電極及び第3電極間の表示放電を繰り返すことにより放電セルの発光を維持する。さらに、AC型プラズマディスプレイ装置は各電極を駆動する電極駆動手段を備える。電極駆動手段は、維持期間における表示放電を、i+1行に属する放電セルについては第1電極と第3電極との間で予備放電を起こして第1電極と第2電極との間に放電を誘起させることにより、そのi+1行に隣接するi行に属する放電セルについては第2電極と第3電極との間で予備放電を起こして第1電極と第2電極との間に放電を誘起させることにより発生させるように各電極を駆動する。このとき、電極駆動手段は、各放電セルにおいて第3電極との間で予備放電を起こす電極が第1電極または第2電極に表示放電毎に交互に切り替わるように各電極を駆動し、表示放電を繰り返す。維持期間では、期間t1において、i行の第1電極および第2電極にそれぞれ電圧Vおよび電圧−Vを印加するとともにi+1行の第1電極および第2電極にそれぞれ電圧−Vおよび電圧Vを印加し、期間t2において、i行の第1電極および第2電極とi+1行の第1電極および第2電極の各電極に接地電圧を印加し、期間t1と期間t2とを繰り返し、かつ、維持期間では第3電極に接地電圧を印加する。このとき、電圧Vの絶対値は、第1電極(または第2電極)を陰極としたときの第1電極(または第2電極)と第3電極との間の放電開始電圧より大きく、第3電極を陰極としたときの第1電極または第2電極と第3電極との間の放電開始電圧よりも小さく、かつ、第1電極または第2電極と第3電極との間に放電が存在する場合の第1電極と第2電極との間の放電開始電圧の2分の1よりも大きく、第1電極と第2電極との間の放電開始電圧の2分の1よりも小さく設定される。
【0017】
本発明に係るAC型プラズマディスプレイパネルの駆動方法は、2枚の基板が隔壁を挟んで対向配置され、一方の基板上には行方向に第1の誘電体層で覆われた複数行の第1電極および第2電極が交互に形成され、他方の基板上には列方向に第2の誘電体層で覆われた複数の第3電極が形成され、第1電極と第2電極の間隔が第1電極と第3電極の間隔より広く設定されており、3つの電極の交点に1つの放電セルを構成し、アドレス期間において、発光させる放電セルにデータを書きこみ、維持期間において、アドレス期間中にデータが書き込まれた放電セルに対して第1電極、第2電極及び第3電極間の表示放電を繰り返すことにより放電セルの発光を維持するAC型プラズマディスプレイパネルを駆動する方法である。その方法では、維持期間における表示放電を、i+1行に属する放電セルについては第1電極と第3電極との間で予備放電を起こして第1電極と第2電極との間に放電を誘起させることにより、i+1行に隣接するi行に属する放電セルについては第2電極と第3電極との間で予備放電を起こして第1電極と第2電極との間に放電を誘起させることにより発生させる。また、その前後においては、各放電セルにおいて第3電極との間で予備放電を起こす電極を表示放電毎に第1電極または第2電極に交互に切り替えながら表示放電を繰り返す。維持期間では、期間t1において、i行の第1電極および第2電極にそれぞれ電圧Vおよび電圧−Vを印加するとともにi+1行の第1電極および第2電極にそれぞれ電圧−Vおよび電圧Vを印加し、期間t2において、i行の第1電極および第2電極とi+1行の第1電極および第2電極の各電極に接地電圧を印加し、期間t1と期間t2とを繰り返し、かつ、維持期間では第3電極に接地電圧を印加する。このとき、電圧Vの絶対値は、第1電極(または第2電極)を陰極としたときの第1電極(または第2電極)と第3電極との間の放電開始電圧より大きく、第3電極を陰極としたときの第1電極または第2電極と第3電極との間の放電開始電圧よりも小さく、かつ、第1電極または第2電極と第3電極との間に放電が存在する場合の第1電極と第2電極との間の放電開始電圧の2分の1よりも大きく、第1電極と第2電極との間の放電開始電圧の2分の1よりも小さく設定される。
【0018】
上記の構成により、維持期間において、ある行に属する第1電極と、その隣接行に属する第2電極とが等電位になるため、隣接行間での第1電極および第2電極間の放電すなわちクロストークが防止され、これにより、第1電極および第2電極間長を拡大することができ、発光効率を大幅に向上したAC型プラズマディスプレイパネルを実現できる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、添付の図面を参照して本発明に係るAC型プラズマディスプレイパネルの実施形態を詳細に説明する。
【0020】
<第1の実施の形態>
(プラズマディスプレイパネルの構造)
図1はAC型プラズマディスプレイパネル(以下「パネル」という。)の構成を示す断面図である。図1の(b)は、図1の(a)においてのE−E'断面図である。
【0021】
図1に示すように、パネル1において、放電空間2を挟んで第1のガラス基板3および第2のガラス基板4が対向して配置されている。第1のガラス基板3は透明なガラス基板であり、この第1のガラス基板3上には、誘電体層5および保護層6で覆われた対を成す帯状の第1電極Xと第2電極Yとからなる電極群が互いに平行配列されている。保護層6にはMgO(酸化マグネシウム)等の二次電子放射係数の高い材料を用いている。
【0022】
第2のガラス基板4上には、第1電極Xおよび第2電極Yと直交する方向に帯状の第3電極Aが配列されている。この第3電極Aはパネル1中では第2のガラス基板4上で並行に複数配列されている。それぞれの第3電極Aを隔離し、放電空間2を形成するための帯状の隔壁10が各第3電極A間に設けられている。また、第3電極A上から隔壁10の側面にわたって蛍光体11が形成されている。放電空間2にはヘリウム、ネオン、アルゴンの内、少なくとも一種類の希ガスとキセノンとの混合ガスが封入されている。第1電極Xおよび第2電極Yと、第3電極Aとが交差する点の近傍に一つの放電セルが形成される。
【0023】
このパネル1は表示面側である第1のガラス基板3側から画像表示を見るようになっており、放電空間2内の放電により発生する紫外線によって、蛍光体11を励起し、この励起により生ずる蛍光体11からの可視光を表示発光に利用するものである。
【0024】
図2はパネル1の第1のガラス基板3上の第1及び第2電極X、Yと、第3電極Aの配置を説明した図である。電極X、Yはそれぞれ合計n本あるとしている。同一行に属する1組の第1電極Xと第2電極Yとの間には放電ギャップ(以下「主放電ギャップ」という。)dssが形成される。また、各電極X,Y,Aの交点に放電セルCが形成されている。このように、放電セルCはパネル1において第1電極Xと第2電極Yの組を行とし、第3電極Aを列とするマトリクス状に配置される。また、図2において、第1電極X、第2電極Y及び第3電極Aをそれぞれ駆動するための第1電極駆動回路31x、第2電極駆動回路31y及び第3電極駆動回路31aが示されている。第1電極駆動回路31x、第2電極駆動回路31y及び第3電極駆動回路31aは、第1電極X、第2電極Y及び第3電極Aそれぞれの電位を所定の電位に制御することによりこれらを駆動する。
【0025】
図3は本実施形態のパネル1における第1電極Xと第2電極Yの間隔を説明した図である。図に示すように、本実施形態のパネルにおいては、主放電ギャップdssを430μmと、第3電極Aと第1電極X(または第2電極Y)との間のギャップ(以下「副放電ギャップ」という。)dsaを130μmとしており、主放電ギャップdssを副放電ギャップdsaに対して広い間隔に設定している。その結果、主放電ギャップdss<副放電ギャップdsaである従来技術とは異なり、高い発光効率が得られる。ここで、本実施形態のパネルの設計値の例を以下に示す。
セル間隔: 1080μm
主放電ギャップ: 430μm
隔壁高さ: 130μm
電極幅: 100μm
ガス組成: Xe(5%)、Ne(95%)
ガス圧力: 60kpa
【0026】
図3において、i行目のセルの第2電極Yiと、i+1行目のセルの第1電極Xi+1とのギャップdajは450μmとなり、主放電ギャップdss(=430μm)とほぼ同じ間隔になる。すなわち、同一セル内の第1電極Xiと第2電極Yi間の放電開始電圧(例えば、720V)と、異なるセル間の第1電極Xi+1と第2電極Yi間の放電開始電圧(例えば、750V)との差(30V)が小さくなり、このため、電極Yiと電極Xi+1との間でセルを越えた放電、すなわち、クロストークが発生しやすくなる。クロストークは画像表示を乱すため、このクロストークを防止する何らかの手段が必要となる。本実施形態のパネルでは、後述するようにクロストークを防止するように画像表示を制御する。
【0027】
(プラズマディスプレイパネルの制御)
以下本実施形態のパネル1を表示させるための制御について説明する。
最初に、以下の説明において参照する各電極間の放電開始電圧を次のように定義しておく。
Vfss:同一セル内における第1電極Xと第2電極Yとの間の放電開始電圧Vfaj:異なるセル間で放電する場合において、一のセルの第1電極Xと、一のセルに隣接する他のセルの第2電極Yとの間の放電開始電圧
Vfsa:第1電極X(または第2電極Y)をカソード(陰極)としたときの第1電極X(または第2電極Y)と第3電極Aとの間の放電開始電圧
Vfas:第3電極Aをカソードとしたときの第1電極X(または第2電極Y)と第3電極Aとの間の放電開始電圧
Vfssa:第1電極X(または第2電極Y)と第3電極Aとの間に放電が存在している場合の第1電極Xと第2電極Yとの間の放電開始電圧
【0028】
ここで、Vfssは従来のパネルにおける走査電極7と維持電極8間の放電開始電圧と同じものであるが、本実施形態では、第1電極Xと第2電極Yとのギャップを従来の場合よりも拡大しているので、その値は、従来の場合の放電開始電圧よりも大きくなる。また、VfsaとVfasとは放電の極性が異なるだけであるが、第1電極X上は二次電子放射係数が高いMgOからなり、第3電極A上は電子放射係数がMgOと比較してかなり低い蛍光体からなるため、Vfsa<<Vfasの関係が成り立つ。さらに、第1電極Xと第3電極Aとの間であらかじめ放電(以下、「予備放電」という。)が起った場合は、多量の初期電荷が発生する。このため、この予備放電直後に第1電極Xと第2電極Yとの間で放電させる場合、その放電開始電圧は予備放電させない場合と比べて大幅に低下する。すなわち、Vfssa<<Vfssとなる。
【0029】
本実施形態のパネルにおいて、各放電開始電圧は、
Vfss=720V
Vfaj=750V
Vfsa=250V
Vfas=350V
Vfssa=450V
であった。
【0030】
図4は、本実施形態のパネルに画像表示させるために各電極駆動回路31x、31y、31aにより各電極X、Y、Aに印加される電圧波形の一例を示した図である。この図では、第i行及び第i+1行における第1電極X、第2電極Y及び第3電極Aのそれぞれに印加される電圧波形を示している。図4の(a)は第i行の第1電極Xiに印加される電圧波形を、図4の(b)は第i行の第2電極Yiに印加される電圧波形を示す。図4の(c)は第i+1行の第1電極Xi+1に印加される電圧波形を、図4の(d)は第i+1行の第2電極Yi+1に印加される電圧波形を示す。図4の(e)は第3電極Aに印加される電圧波形を示す。
【0031】
図4に示すように、パネル1において画像データを表示させるために、セルを初期化する初期化期間、各セルに表示データの書き込みを行うアドレス期間および発光を維持させる維持期間をそれぞれ設定し、各期間において異なる信号波形(パルス)を電極に印加する。以下、各期間について説明する。
【0032】
(初期化期間の制御)
初期化期間においては、例えば図4に示すように、全ての第1電極Xに正極性の電圧波形を印加し、保護層6および蛍光体11上に壁電荷を蓄積する。初期化期間の電圧波形は、初期化期間が終了した時点で、第1電極X上の保護層6と第3電極A上の蛍光体11の間に加わる電圧がほぼVfsaになるように設定されている。初期化期間が終するとアドレス期間に移行する。
【0033】
(アドレス期間の制御)
アドレス期間においては、各第1電極Xに順次、負極性のパルス(以下「走査パルス」という。)を印加しながら第1電極Xを走査する。一つの第1電極Xが走査されている間、その第1電極Xに接続される複数のセルのうち表示データを書きこむセルについて、そのセルの第3電極Aに正極性のデータパルスを印加する。第3電極Aに正極性のデータパルスが印加された場合に限り、第3電極Aと第1電極X間で放電が起こり、この放電によって第1電極Xと第2電極Y間の放電が誘発され、保護層6の上にデータパルスの有無に応じて壁電荷が形成される。その後の維持期間においては、この壁電荷を利用して表示発光を行う。第1電極が順次走査されている間、第2電極Yは所定の電位に制御される。
【0034】
(維持期間の制御)
アドレス期間の後、維持期間に入ると、すべての電極X、Yに交流パルス(以下「維持パルス」という。)を印加して、アドレス期間で選択されたセル、すなわち、壁電荷が形成されたセルにおいて連続的にパルス放電を起こす。このとき、維持期間において第1電極Xiの電位と、それに隣接し、それと異なるセルに属する第2電極Yi+1及びYi-1の電位とが同じになるように維持パルスを制御する。このため、隣接する第1電極X間において互いに位相が逆となるような維持パルスを印加する。つまり、奇数行の第1電極Xと偶数行の第1電極Xとでは、逆位相の維持パルスが印加される。第2電極Yについても同様に維持パルスを印加する。つまり、奇数行の第2電極Yと偶数行の第2電極Yとでは、逆位相の維持パルスが印加される。これにより、第1電極X i+1 と第2電極Y i 間の望ましくない放電、すなわち、クロストークの発生を防止することができる。
【0035】
具体的には、図4の(a)と(c)に示すように、維持期間において第1電極Xiと第1電極Xi+1との間では、それらに印加されるパルスの位相が逆となっている。なお、アドレス期間から維持期間への切り換わりの直後においては、同期をとるためにパルス位相は逆となっていないが、それ以降は位相が逆となるように維持パルスを制御している。同様に、図4の(b)と(d)に示すように、第2電極Yiと第2電極Yi+1との間でも、それらに印加されるパルスの位相が逆となっている。
【0036】
ここで、本実施形態では、パネル1を駆動する場合の外部維持電圧Vsusの値は以下の関係を満たすように設定する。
Vfsa<Vwsa<Vfas (2)
Vfssa<Vsus+Vwss<Vfss (3)
ここで、Vwsaは第2電極Yと第3電極Aとの間の壁電圧である。このとき、Vwss≒Vsus、Vwsa≒Vsusであるので、上式(2)、(3)はそれぞれ、
Vfsa<Vsus<Vfas (2')
Vfssa/2<Vsus<Vfss/2 (3')
となる。
【0037】
また、第2電極Yの維持パルスには図4に示すように−Vsusのバイアス電圧を印加している。これは、維持期間の最初のパルスにおいて第2電極Y側をカソードとする予備放電を確実に開始させるためである。このような維持パルスを印加することで、第2電極Yをカソード側とした第2電極Yと第3電極A間の予備放電によって第1電極Xと第2電極Y間の放電が誘起され、通常の放電開始電圧Vfssより低い電圧Vfssaで放電が開始される。本実施例ではVfss−Vfssa=720V−450V=270Vの電圧低下が実現できた。
【0038】
図4において、維持期間における期間t1では、第i行の放電セルにおいて、第2電極Yi と第3電極Aとの間では第2電極Y i 側が負極性となるため、第2電極Yi 側をカソードとした第2電極Yiと第3電極Aとの間で予備放電が起こり、この予備放電により第1電極Xiと第2電極Yi間の放電が誘起される。この間、第i+1行の放電セルにおいて、第1電極Xi+1 と第3電極Aとの間では第1電極X i+1 側が負極性となるため、第1電極Xi+1 側をカソードとした第1電極Xi+1と第3電極Aとの間で予備放電が起こり、この予備放電により第1電極Xi+1と第2電極Yi+1間の放電が誘起される。次の期間t2では、第i行の放電セルにおいて、第1電極Xi と第3電極Aとの間では第1電極X i 側が負極性となるため、第1電極Xi 側をカソードとした第1電極Xiと第3電極Aとの間で予備放電が起こり、この放電により第1電極Xiと第2電極Yi間の放電が誘起される。その後、各放電セルにおいて、第3電極Aとの間で予備放電を起こす第1電極Xまたは第2電極が切り替りながら、第1電極Xと第2電極Y間の放電(主放電)が繰り返される。このように、予備放電と主放電とからなる表示放電が維持される。
【0039】
このように、維持期間において、偶数行に属する電極と奇数行に属する電極に対して、それらの電極間で逆位相となる維持パルスを印加するため、セルを越えて隣接する電極Xと電極Yとの間は常に同電位となる。これによって、維持期間において放電セル間のクロストークは完全に防止される。
【0040】
本実施の形態では、維持期間において常に第1電極Xまたは第2電極Yと第3電極Aとの間(すなわち副放電ギャップ)で起こした予備放電によって、第1電極Xと第2電極Yとの間の主放電ギャップでも放電を起こすので、主放電ギャップ間にだけ維持放電を発生させる従来のパネルと比較して、主放電ギャップが広い本実施形態のパネルを容易に駆動することができる。
【0041】
以上のようにして、各電極の駆動電圧の上昇およびクロストークの発生を抑制しつつ発光効率を高めたAC型プラズマディスプレイパネルを得ることができる。
【0042】
なお、上記の実施形態において第1電極、第2電極あるいは偶数、奇数等は便宜的に設定したもので、それぞれ入れ替えても基本的な動作は全く同じである。また、初期化期間の印加電圧波形は必ずしも上記の例と同じである必要はなく、アドレス期間において、その後の維持放電を容易にするための壁電荷が形成されるものであればよい。さらに初期化期間、アドレス期間および維持期間が本実施の形態のようにそれぞれ分離されている必要はなく、それぞれの期間が互いに重なり合っていてもよい。
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、第1電極と第2電極の間隔を広くしたAC型プラズマディスプレイ装置において、同一放電セル内の第1電極と第2電極の間隔と、隣接セル間の第1電極と第2電極の間隔とがほぼ等しくなる場合であっても、維持期間中の第1電極と第2電極間のクロストークを防止できる。これにより、画質を低下させることなく発光効率を向上したAC型プラズマディスプレイ装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るAC型プラズマディスプレイパネルの断面図。
【図2】 本発明に係るAC型プラズマディスプレイパネルの各電極の配置及びそれらを駆動する駆動回路を示した図。
【図3】 本発明に係るAC型プラズマディスプレイパネルの第1及び第2電極間の距離を示した図。
【図4】 第1の実施形態におけるAC型プラズマディスプレイパネルの各電極の駆動電圧波形を説明した図。
【図5】 従来のAC型プラズマディスプレイパネルの断面図。
【符号の説明】
1 AC型プラズマディスプレイパネル
2 放電空間
3 第1のガラス基板
4 第2のガラス基板
5 誘電体層
6 保護層
10 隔壁
11 蛍光体
31x 第1電極駆動回路
31y 第2電極駆動回路
31a 第3電極駆動回路
X 第1電極
Y 第2電極
A 第3電極
C 放電セル
Claims (2)
- 2枚の基板が隔壁を挟んで対向配置され、一方の前記基板上には行方向に第1の誘電体層で覆われた複数行の第1電極および第2電極が交互に形成され、他方の前記基板上には列方向に第2の誘電体層で覆われた複数の第3電極が形成され、前記第1電極と前記第2電極との間隔が前記第1電極と前記第3電極との間隔よりも広く設定されており、前記3つの電極の交点に1つの放電セルを構成し、アドレス期間において、発光させる放電セルにデータを書きこみ、維持期間において、前記アドレス期間中にデータが書き込まれた放電セルに対して前記第1電極、前記第2電極および前記第3電極間の表示放電を繰り返すことにより放電セルの発光を維持するAC型プラズマディスプレイ装置であって、
前記維持期間における表示放電を、i+1行に属する放電セルについては前記第1電極と前記第3電極との間で予備放電を起こして前記第1電極と前記第2電極との間に放電を誘起させることにより、前記i+1行に隣接するi行に属する放電セルについては前記第2電極と前記第3電極との間で予備放電を起こして前記第1電極と前記第2電極との間に放電を誘起させることにより発生させ、各放電セルにおいて前記第3電極との間で予備放電を起こす電極が前記第1電極または前記第2電極に表示放電毎に交互に切り替わりながら前記表示放電が繰り返されるように前記各電極を駆動する電極駆動手段を備え、
前記維持期間では、期間t1において、i行の前記第1電極および前記第2電極にそれぞれ電圧Vおよび電圧−Vを印加するとともにi+1行の前記第1電極および前記第2電極にそれぞれ電圧−Vおよび電圧Vを印加し、期間t2において、i行の前記第1電極および前記第2電極とi+1行の前記第1電極および前記第2電極の各電極に接地電圧を印加し、前記期間t1と前記期間t2とを繰り返し、かつ、前記維持期間では前記第3電極に接地電圧を印加し、
前記電圧Vの絶対値は、前記第1電極(または前記第2電極)を陰極としたときの前記第1電極(または前記第2電極)と前記第3電極との間の放電開始電圧より大きく、前記第3電極を陰極としたときの前記第1電極または前記第2電極と前記第3電極との間の放電開始電圧よりも小さく、かつ、前記第1電極または前記第2電極と前記第3電極との間に放電が存在する場合の前記第1電極と前記第2電極との間の放電開始電圧の2分の1よりも大きく、前記第1電極と前記第2電極との間の放電開始電圧の2分の1よりも小さく設定されたことを特徴とするAC型プラズマディスプレイ装置。 - 2枚の基板が隔壁を挟んで対向配置され、一方の前記基板上には行方向に第1の誘電体層で覆われた複数行の第1電極および第2電極が交互に形成され、他方の前記基板上には列方向に第2の誘電体層で覆われた複数の第3電極が形成され、前記第1電極と前記第2電極との間隔が前記第1電極と前記第3電極との間隔よりも広く設定されており、前記3つの電極の交点に1つの放電セルを構成し、アドレス期間において、発光させる放電セルにデータを書きこみ、維持期間において、前記アドレス期間中にデータが書き込まれた放電セルに対して前記第1電極、前記第2電極及び前記第3電極間の表示放電を繰り返すことにより放電セルの発光を維持するAC型プラズマディスプレイパネルの駆動方法であって、
前記維持期間における表示放電を、i+1行に属する放電セルについては前記第1電極と前記第3電極との間で予備放電を起こして前記第1電極と前記第2電極との間に放電を誘起させることにより、前記i+1行に隣接するi行に属する放電セルについては前記第2電極と前記第3電極との間で予備放電を起こして前記第1電極と前記第2電極との間に放電を誘起させることにより発生させ、また、その前後において、各放電セルにおいて前記第3電極との間で予備放電を起こす電極を前記第1電極または前記第2電極に前記表示放電毎に交互に切り替えながら前記表示放電を繰り返し、
前記維持期間では、期間t1において、i行の前記第1電極および前記第2電極にそれぞれ電圧Vおよび電圧−Vを印加するとともにi+1行の前記第1電極および前記第2電極にそれぞれ電圧−Vおよび電圧Vを印加し、期間t2において、i行の前記第1電極および前記第2電極とi+1行の前記第1電極および前記第2電極の各電極に接地電圧を印加し、前記期間t1と前記期間t2とを繰り返し、かつ、前記維持期間では前記第3電極に接地電圧を印加し、
前記電圧Vの絶対値は、前記第1電極(または前記第2電極)を陰極としたときの前記第1電極(または前記第2電極)と前記第3電極との間の放電開始電圧より大きく、前記第3電極を陰極としたときの前記第1電極または前記第2電極と前記第3電極との間の放電開始電圧よりも小さく、かつ、前記第1電極または前記第2電極と前記第3電極との間に放電が存在する場合の前記第1電極と前記第2電極との間の放電開始電圧の2分の1よりも大きく、前記第1電極と前記第2電極との間の放電開始電圧の2分の1よりも小さく設定されたことを特徴とするAC型プラズマディスプレイパネルの駆動方法。
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