JP4485148B2 - 冷間鍛造加工性と転造加工性に優れた高炭素鋼管およびその製造方法 - Google Patents

冷間鍛造加工性と転造加工性に優れた高炭素鋼管およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高炭素鋼管に係り、とくに冷間鍛造加工性と転造加工性の改善に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、地球環境の保全という観点から、自動車の排気ガス規制が厳しく要求され、自動車車体の軽量化が進められている。自動車車体を構成する部品、例えば、ドライブシャフト、ステアリングシャフト、ステアリングラックバー等の剛性を要求される部品にも、軽量化が要求されている。
【0003】
自動車の軽量化と剛性の確保を両立させるために、ドライブシャフト、ステアリングシャフト、ステアリングラックバー等の部品の中空化が進められている。
このような中空部品の製造方法の一つとして、例えば、特許文献1には、C:0.10〜0.65%、Si:0.05〜0.60%、Mn:0.25〜2.0 %を基本成分として、残部実質的にFeよりなる電縫鋼管に、鋼管組成に依存する所定の熱処理温度で焼準処理を施したのち、管端部をA3 変態点以下で縮径加工する電縫鋼管を用いた駆動軸の製造方法が提案されている。しかし、特許文献1に記載された方法では、絞り加工を高温あるいは温間で行う必要があり、工程が複雑となるうえ、絞り加工後の表面性状、寸法精度が低下するという問題があった。
【0004】
このようなことから、冷間引き抜き、焼準した高炭素鋼管を用いて、冷間鍛造加工(以下、スウェージ加工ともいう)で絞り加工した後、管端を平転造によりスプライン成形し、中空部品とすることがなされている。しかし、この方法では材料の強度が強く、スウェージ加工での生産性を向上できないという問題があった。
【0005】
スウェージ加工の生産性を向上させるために、冷間引き抜き後、高炭素鋼管を球状化焼鈍することが考えられるが、しかし、この方法では、スウェージ成形後の平転造によるスプライン加工で割れを発生しやすいという問題があった。
【0006】
【特許文献1】
特公昭61-49364号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した従来技術の問題を有利に解決し、冷間鍛造加工性と転造加工性に優れた高炭素鋼管およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【発明を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を達成するために、球状化焼鈍した高炭素鋼管がスウェージ加工後の平転造で割れを発生しやすい原因について鋭意検討した。その結果、鋼管組織をセメンタイトの球状化が進んだ組織とするほど、平転造時に割れが発生しやすいことを見出した。平転造時の割れ発生数とセメンタイトのアスペクト比(長径/短径)との関係を図1に示す。
【0009】
平転造時の割れ発生数は、次のようにして求めた。40mmφ×70mmt の試料をスウェージ加工により、25mmφ×9mmt に成形した後、山高さ1.3mm の歯24個を平転造加工した時に、加工した鋼管20本中で発生した割れ数で評価した。
図1から、割れ発生数が少ない、すなわち、良好な平転造加工性を得るためには、セメンタイトのアスペクト比を3以上にすることが必要であることがわかる。このことから、本発明者らは、冷間引き抜き後の熱処理条件を調整して、セメンタイトの形状を調整することで平転造加工性を改善できると考えた。
【0010】
一方、焼準したパーライト組織を有する高炭素鋼管を冷間引き抜き、熱処理するだけでは、平転造加工に適したセメンタイトの形状と良好なスウェージ加工性を確保するために必要な軟質化とを両立させることが難しいことを本発明者らは知見した。なお、本発明でいう、「良好なスウェージ加工性を確保するために必要な軟質化」とは、鋼管の引張強さTSが、次(1)式
TSN =9.806 { 30.5+43C60(C×Mn)} ………(1)
(ここで、TSN :焼準材相当強度( N/mm2 )、C,Mn:各元素の含有量(質量%))
で定義される焼鈍材相当強度TSN の90%以下となることをいうものとする。
【0011】
冷間引き抜きした後の熱処理温度と鋼管の引張強さTS、セメンタイトのアスペクト比との関係を図2に示す。焼準処理を施し、冷間引き抜きー熱処理を行った場合を点線で示す。図2から、焼準処理を施されパーライト組織を有する鋼管を、冷間引き抜きし、Ac1 変態点以上の温度で熱処理を行っても、セメンタイトの形状(アスペクト比)の変化は小さく、ほぼ、パーライト組織のままである。そのため、引張強さTSをほぼ焼準材相当強度TSN の90%以下にすることは困難である。また、熱処理温度を下げて、Ac1 変態点直下の温度で熱処理を行うと、引張強さTSが焼準材相当強度TSN の90%以下になるが、セメンタイトの球状化が進んで、アスペクト比が3未満となってしまう。すなわち、良好な平転造加工性を示すセメンタイトのアスペクト比3以上が得られる熱処理温度範囲では、鋼管の引張強さTSは高く、焼準材相当強度TSN の90%以下にできる温度範囲が非常に狭いことがわかる。
【0012】
そこで、本発明者らは、平転造加工性に適したセメンタイトの形状と良好なスウェージ加工性を確保するために必要な軟質化とを両立させることができる製造条件について検討した。その結果、冷間引き抜き前に、仕上圧延温度を700 〜800 ℃として、縮径率:30%以上の縮径圧延を行い、セメンタイトのアスペクト比を3以上にしておくことが有効であることを見出した。仕上圧延温度を750 ℃として、縮径率:55%の縮径圧延を行った場合の、冷間引き抜き後の熱処理温度と引張強さTS、セメンタイトのアスペクト比との関係を実線で図2に示す。
【0013】
図2から、冷間引き抜き前に縮径圧延を施すことにより、アスペクト比が3程度で、かつ引張強さTSを焼鈍材相当強度TSN の90%以下とすることが、比較的広い熱処理温度範囲で可能となることがわかる。図2の例では、Ac1 変態点〜(Ac1 変態点+50℃)の温度範囲での熱処理が可能である。
本発明は、上記した知見に基づいて、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨は、次の通りである。
(1)質量%で、C:0.2 〜0.6 %、Si:1%以下、Mn:0.4 〜3%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、アスペクト比が3以上であるセメンタイトを分散させた組織を有し、引張強さTSが次(1)式
TSN =9.806 { 30.5+43C+60(C×Mn)} ………(1)
(ここで、TSN :焼準材相当強度( N/mm2 )、C,Mn:各元素の含有量(質量%))
で定義される焼準材相当強度TSN の90%以下であることを特徴とする冷間鍛造加工性と転造加工性に優れた高炭素鋼管。
(2)(1)において、r値が1.2 以上であることを特徴とする高炭素鋼管。
(3)(1)または(2)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cr:2%以下、Mo:2%以下、W:2%以下、Ni:2%以下、B:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含むことを特徴とする高炭素鋼管。
(4)(1)ないし(3)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ti:1%以下、Nb:1%以下、V:1%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含むことを特徴とする高炭素鋼管。
(5)質量%で、C:0.2 〜0.6 %、Si:1%以下、Mn:0.4 〜3%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼管素材を、850 〜950 ℃に加熱したのち、仕上圧延温度を700 〜800 ℃として、縮径率:30%以上の縮径圧延を行い、ついで所定の寸法の鋼管となるように冷間引き抜きしたのち、Ac1変態点〜(Ac1変態点+50℃)の範囲の温度で熱処理することを特徴とする(1)に記載の冷間鍛造加工性と転造加工性に優れた高炭素鋼管の製造方法。
(6)(5)において、前記縮径率:30%以上の縮径圧延を行う温度範囲が、700 〜750 ℃であることを特徴とする高炭素鋼管の製造方法。
(7)(5)または(6)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cr:2%以下、Mo:2%以下、W:2%以下、Ni:2%以下、B:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含むことを特徴とする高炭素鋼管の製造方法。
(8)(5)ないし(7)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ti:1%以下、Nb:1%以下、V:1%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含むことを特徴とする高炭素鋼管の製造方法。
【0014】
【発明の実施の形態】
まず、本発明鋼管の組成限定の理由について説明する。以下、組成における質量%は単に%で記す。
本発明の高炭素鋼管は、C:0.2 〜0.6 %、Si:1%以下、Mn:0.4 〜3%を含み、あるいはさらに、Cr:2%以下、Mo:2%以下、W:2%以下、Ni:2%以下、B:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、および/またはTi:1%以下、Nb:1%以下、V:1%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する。
【0015】
C:0.2 〜0.6 %
Cは、素材の強度ならびに、部品(ドライブシャフト等製品)の焼入れ後の強度を確保するために、本発明では0.2 %以上の含有を必要とする。一方、0.6 %を超えて含有すると焼入れ後の靱性が低下する。このため、本発明では、Cは0.2 〜0.6 %の範囲に限定した。なお、好ましくは0.35〜0.45%である。
【0016】
Si:1%以下
Siは、脱酸剤として作用し、本発明では0.05%以上含有することが望ましい。0.05%未満では脱酸が不十分となりやすく、一方、1%を超えて含有すると脱酸の効果が飽和して経済的に不利となるばかりでなく、靱性にも悪影響を及ぼす。このため、Siは1%以下に限定することが好ましい。なお、好ましくは0.2 〜0.4 %である。
【0017】
Mn:0.4 〜3%
Mnは、素材の強度ならびに、部品(ドライブシャフト等製品)の焼入れ性を確保するために、0.4 %以上含有する。0.4 %未満では目標の強度が得られず、一方、3%を超えて含有すると、残留オーステナイト(以下、残留γとも記す)が生成し、焼戻し後の靱性が低下する。このため、Mnは0.4 〜3%とした。なお、好ましくは0.5 〜2.0 %である。
【0018】
Cr:2%以下、Mo:2%以下、W:2%以下、Ni:2%以下、B:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種以上
Cr、Mo、W、Ni、Bはいずれも、鋼管の強度を増加させる元素であり、必要に応じ選択して含有できる。
Crは、素材の強度ならびに、部品(ドライブシャフト等製品)の焼入れ性を高める作用を有する元素であり、強度増加を必要とする場合には0.5 %以上含有することが望ましい。一方、2%を超えて含有しても、効果が飽和して、含有量に見合う効果が期待できなくなり経済的に不利となるばかりでなく、加工性が低下する。このため、本発明では、Crは2%以下に限定することが好ましい。
【0019】
Moは、部品(ドライブシャフト等製品)の焼入れ性を高め、部品強度を増加させる作用を有する有効な元素であり、強度の増加が必要な場合には、0.2 %以上含有することが望ましい。一方、2%を超えて含有しても、効果が飽和して、含有量に見合う効果が期待できなくなり経済的に不利となるばかりでなく、加工性が低下する。このため、本発明では、Moは2%以下に限定することが好ましい。
【0020】
Wは、部品(ドライブシャフト等製品)の焼入れ性を高め、部品強度を増加させる作用を有する有効な元素であり、強度の増加が必要な場合には、0.2 %以上含有することが望ましい。一方、2%を超えて含有しても、焼入れ性の増加効果は飽和し、含有量に見合う効果が期待できなくなり経済的に不利となるばかりでなく、加工性が低下する。このため、本発明では、Wは2%以下に限定することが好ましい。
【0021】
Niは、部品(ドライブシャフト等製品)の焼入れ性を高め、部品強度を増加させる作用を有する有効な元素であり、強度の増加が必要な場合には、0.5 %以上含有することが望ましい。一方、2%を超えて含有しても、焼入れ性の増加効果は飽和し、含有量に見合う効果が期待できなくなり経済的に不利となるばかりでなく、加工性が低下する。このため、本発明では、Niは2%以下に限定することが好ましい。
【0022】
Cuは、部品(ドライブシャフト等製品)の焼入れ性を高め、部品強度を増加させる作用を有する有効な元素であり、強度の増加が必要な場合には、0.5 %以上含有することが望ましい。一方、2%を超えて含有しても、効果は飽和し、含有量に見合う効果が期待できなくなり経済的に不利となるばかりでなく、加工性が低下する。このため、本発明では、Cuは2%以下に限定することが好ましい。
【0023】
Bは、部品(ドライブシャフト等製品)の焼入れ性を高める作用を有する有用な元素であり、かつ、粒界を強化して焼き割れを防止できる効果も有する。このような効果は0.001 %以上の含有で顕著となるが、0.01%を超えて含有しても、これらの効果は飽和して、含有量に見合う効果が期待できなくなり経済的に不利となる。このため、本発明では、Bは0.01%以下に限定することが好ましい。
【0024】
Ti:1%以下、Nb:1%以下、V:1%以下のうちから選ばれた1種または2種以上
Ti、Nb、Vはいずれも、炭化物、窒化物あるいは炭窒化物を形成して、溶接部や熱処理時の結晶粒の粗大化を抑制し、靱性を向上させる作用を有する元素であり、必要に応じて選択して含有できる。
【0025】
Tiは、Nを固定して、焼入れ性に有効な固溶Bを確保する作用や、微細な炭化物を生成して溶接部や熱処理時の結晶粒の粗大化を抑制、靱性を向上させる作用を有する有効な元素である。これらの効果は0.02%以上の含有で顕著となるが、1%を超えて含有しても、効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できず経済的に不利となる。このため、本発明では、Tiは1%以下に限定することが好ましい。
【0026】
Nbは、溶接部や熱処理時の結晶粒の粗大化を抑制し、靱性を向上させる有効な元素である。これらの効果は0.02%以上の含有で顕著となるが、1%を超えて含有しても、効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できず経済的に不利となる。このため、本発明では、Nbは1%以下に限定することが好ましい。
Vは、微細な炭化物を生成して溶接部や熱処理時の結晶粒の粗大化を抑制し、靱性を向上させる有効な元素である。これらの効果は0.02%以上の含有で顕著となるが、1%を超えて含有しても、効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できず経済的に不利となる。このため、本発明では、Vは1%以下に限定することが好ましい。
【0027】
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。不可避的不純物としては、P:0.02%以下、S:0.02%以下、N:0.01%以下、O:0.01%以下が許容できる。
上記した組成に加えて、本発明鋼管はアスペクト比が3以上であるセメンタイトを分散させた組織を有する。なお、本発明でいう、セメンタイトのアスペクト比は、鋼管の円周方向に垂直な断面について、ナイタールエッチングした後、倍率2000倍の走査型電子顕微鏡(SEM )でセメンタイトを撮影し、画像解析によりそれぞれの粒子ごとに長径、短径を測定しその比(長径/短径)を算出して、アスペクト比とした。なお、10視野以上、全視野合計100 個以上のセメンタイトについて測定した平均値をその材料(鋼管)のアスペクト比として用いる。
【0028】
セメンタイトのアスペクト比が3未満では、平転造加工性が劣化する。セメンタイトのアスペクト比が3未満となり、セメンタイトの球状化が進むと、平転造加工では、セメンタイトと地鉄との界面に剥離が起こりやすい。この剥離の機構については、必ずしも明らかでないが、本発明者らは、次のように考えている。平転造のような引張り、圧縮が交互にかかる加工では、圧縮によって球状化セメンタイトは弾性的に変形しにくいため、球状化セメンタイトと地鉄の界面に転位が集積し、ボイド化して、続く引張り変形時に剥離が生じることが考えられる。このような剥離は、例えば、パーライトのようなラメラー状のセメンタイトでは生じ難い。これは、ラメラー状のセメンタイトは、圧縮変形において弾性的に変形できるために、セメンタイトと地鉄との界面に集積した転位がボイド化しがたいものと考えられる。
【0029】
本発明鋼管は、上記した組成および組織を有し、引張強さTS( N/mm2 )が次(1)式
TSN =9.806 { 30.5+43C+60(C×Mn)} ………(1)
(ここで、TSN :焼準材相当強度( N/mm2 )、C,Mn:各元素の含有量(質量%))で定義される焼準材相当強度TSN の90%以下である。
【0030】
引張強さTSが、焼準材相当強度TSN の90%を超えて高くなると、スウェージ加工性が低下する。このため、本発明では引張強さTSを焼準材相当強度TSN の90%以下に限定した。
また本発明鋼管は、好ましくは鋼管長手方向のr値が1.2 以上を有する。r値が1.2 以上となる鋼管は、内面にプラグを入れて減肉するような、縮径による増肉が抑制されるスウェージ加工で、スウェージ加工力が低減するという効果もある。図3に、引張強さを620 〜640 N/mm2 (64〜65kgf/mm2 )に調整した鋼管についてのスウェージ加工性とr値の関係を示す。図3では、スウェージ加工性は、30mm/sの送り速度で、40mmφ×70mmt の試料をスウェージ加工により35mmφ×5mmt に成形した場合の、スウェージ加工機のスピンドル電流値の大小で評価した。スピンドル電流値が小さいほどスウェージ加工性が良好であることになる。
【0031】
つぎに、本発明鋼管の製造方法について説明する。
本発明の鋼管製造方法では、上記した組成を有する鋼管を鋼管素材として利用する。上記した組成を有する鋼管であれば、その製法はとくに限定されない。電縫鋼管、継目無鋼管がいずれも適用可能である。
鋼管素材を、850 〜950 ℃に加熱したのち、縮径圧延を行う。本発明では、鋼管素材に縮径圧延を施すことにより、セメンタイトのアスペクト比を3以上、好ましくは3〜4程度とする。このためには、縮径圧延は、仕上圧延温度を700 〜800 ℃とし、縮径率:30%以上とすることが好ましい。
【0032】
仕上圧延温度が700 ℃未満では、セメンタイトの球状化が進みすぎるという問題があり、一方、800 ℃を超えるとセメンタイトの球状化が進まなくなる。なお、好ましくは700 〜750 ℃である。仕上圧延温度を750 ℃以下とすることにより、鋼管長手方向のr値が1.2 以上となる。また、縮径率が30%未満では上記した効果が得られない。なお、縮径率の上限は圧延機の能力に依存して決定される。
【0033】
縮径加工を施された鋼管は、ついで、所定の寸法の鋼管となるように冷間引き抜き加工を施される。本発明では、冷間引き抜き加工は所定の寸法の鋼管とすることができれば、その条件、方法はとくに限定する必要はない。通常の、冷間引き抜き条件がいずれも適用できる。
冷間引き抜き後、鋼管は、Ac1変態点〜(Ac1変態点+50℃)の範囲の温度で熱処理を施される。熱処理温度が、Ac1変態点未満では、軟質化が不十分となり、一方、(Ac1変態点+50℃)を超えると、引張強さが増加し、焼準材相当強度の90%以下の引張強さに調整することが困難となり、スウェージ加工性が低下する。なお、Ac1変態点〜(Ac1変態点+50℃)の範囲の温度での保持時間は、1s〜60min とすることが好ましい。保持時間が1s未満では、軟質化が不十分となり、一方、60min を超えて長くなると、α→γ変態が進行しすぎて強度が高くなりすぎるという問題がある。
【0034】
【実施例】
(実施例1)
表1に示す組成の鋼管素材No.1(高炭素電縫管)を鋼管素材として用い、表2に示す条件で、縮径圧延、冷間引き抜き、熱処理を順次行い、高炭素鋼管(40mmφ×7mm肉厚)とした。なお、縮径圧延に代えて焼準処理(900 ℃×10min )を行ったのち、冷間引き抜き−熱処理を施した例を従来例とした。
【0035】
得られた鋼管について、セメンタイトのアスペクト比、引張強さ、r値、ならびに、スウェージ加工性とスウェージ加工後の平転造加工性を調査した。調査方法はつぎのとおりとした。
(1)セメンタイトのアスペクト比
得られた鋼管から採取した試片について、鋼管の円周方向に垂直な断面をナイタールエッチングした後、倍率2000倍の走査型電子顕微鏡(SEM )でセメンタイトを撮影し、画像解析により、セメンタイトのアスペクト比(=長径/短径)を求めた。なお、10視野以上、全視野合計100 個以上のセメンタイトについての平均値をその鋼管のアスペクト比とした。
(2)引張強さ
得られた鋼管から、鋼管長手方向を試験片引張軸方向とするJIS 12号引張試験片を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠して引張強さTSを測定した。
(3)r値
得られた鋼管から、鋼管長手方向を試験片引張軸方向とするJIS 12号A引張試験片を採取し、ゲージ長さが2mmの歪ゲージを貼付した後、公称歪で6〜7%の引張り変形を行い、そのときの長手方向の真歪eL に対する幅方向の真歪ew を測定して、その傾きρ(=eL /ew )から、ρ/(−1−ρ)を計算し、その値をr値とした。
(4)スウェージ加工性
得られた鋼管(40mmφ×7mmt)から、試験鋼管を採取し、スウェージ加工機により、送り速度:30mm/sで、35mmφ×5mmt の鋼管に成形(スウェージ加工)した時のスウェージ加工機のスピンドル電流値(A)を測定し、スウェージ加工性を評価した。なお、焼準処理した電縫管に冷間引き抜きを施した後、900 ℃×10min の熱処理を施した鋼管をスウェージ加工した場合のスピンドル電流値を基準とし、その90%以下のスピンドル電流値を示す場合をスウェージ加工性良(○)とした。それ以外はスウェージ加工性不良(×)とした。
(5)平転造加工性
得られた鋼管(40mmφ×7mmt)から、試験鋼管を採取し、スウェージ加工機により、25mmφ×9mmt の鋼管に成形(スウェージ加工)した後、山高さ1.3mm の歯24個を平転造加工した。平転造加工した鋼管20本中に発生した割れ数をもとめ、スウェージ加工後の平転造加工性を評価した。
【0036】
得られた結果を表2に併せて示す。
【0037】
【表1】
Figure 0004485148
【0038】
【表2】
Figure 0004485148
【0039】
本発明例はいずれも、セメンタイトのアスペクト比が3以上であって、かつ、引張強さが焼準材相当強度TSN の90%以下であり、スウェージ加工性とスウェージ後の平転造加工性に優れた鋼管となっている。なお、縮径圧延の仕上圧延温度が750 ℃の鋼管では、長さ方向のr値が1.2 以上となっている。これに対し、本発明の範囲を外れる比較例は、スウェージ加工性、スウェージ後の平転造加工性のいずれかが劣化している。
(実施例2)
表3に示す組成を有する高炭素鋼電縫管を鋼素材として、表4に示す条件で、縮径圧延、冷間引き抜き、熱処理を順次行い、実施例1と同様に、高炭素鋼管(40mmφ×7mm肉厚)とした。なお、縮径圧延に代えて焼準処理(900 ℃×10min )を行ったのち、熱処理を施した例を従来例とした。
【0040】
得られた鋼管について、実施例1と同様に、セメンタイトのアスペクト比、引張強さ、r値、ならびに、スウェージ加工性とスウェージ加工後の平転造加工性を調査した。
得られた結果を表4に併記する。
【0041】
【表3】
Figure 0004485148
【0042】
【表4】
Figure 0004485148
【0043】
本発明例はいずれも、セメンタイトのアスペクト比が3以上であって、かつ、引張強さが焼準材相当強度TSN の90%以下であり、かつ、鋼管の長手方向のr値が1.2 以上で、スウェージ加工性とスウェージ後の平転造加工性に優れた鋼管となっている。これに対し、本発明の範囲を外れる比較例は、スウェージ加工性、スウェージ後の平転造加工性のいずれかが劣化している。
【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、スウェージ加工性、スウェージ後の平転造加工性に優れた高炭素鋼管を容易に製造でき、ドライブシャフト等の中空部品の生産性を高めることが可能となり、自動車車体の一層の軽量化が図れ、産業上格段の効果を奏する。また、本発明によれば、従来、スウェージ加工性が不良で、ドライブシャフト等の中空部品への適用ができなかった高炭素量の鋼管の使用も可能となり、ドライブシャフト等の中空部品の高強度化、軽量化に貢献することができるという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】平転造時の割れ発生数とセメンタイトのアスペクト比(長軸/短軸)との関係を示すグラフである。
【図2】冷間引き抜きの熱処理温度と鋼管の引張強さTS、セメンタイトのアスペクト比との関係を示すグラフである。
【図3】スウェージ加工性とr値の関係を示すグラフである。

Claims (8)

  1. 質量%で、
    C:0.2 〜0.6 %、 Si:1%以下、
    Mn:0.4 〜3%
    を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、アスペクト比が3以上であるセメンタイトを分散させた組織を有し、引張強さTSが下記(1)式で定義される焼準材相当強度TSN の90%以下であることを特徴とする冷間鍛造加工性と転造加工性に優れた高炭素鋼管。

    TSN =9.806 { 30.5+43C+60(C×Mn)} ………(1)
    ここで、TSN :焼準材相当強度( N/mm2
    C,Mn:各元素の含有量(質量%)
  2. r値が1.2 以上であることを特徴とする請求項1に記載の高炭素鋼管。
  3. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Cr:2%以下、Mo:2%以下、W:2%以下、Ni:2%以下、B:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の高炭素鋼管。
  4. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ti:1%以下、Nb:1%以下、V:1%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の高炭素鋼管。
  5. 質量%で、
    C:0.2 〜0.6 %、 Si:1%以下、
    Mn:0.4 〜3%
    を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼管素材を、850 〜950 ℃に加熱したのち、仕上圧延温度を700 〜800 ℃として、縮径率:30%以上の縮径圧延を行い、ついで所定の寸法の鋼管となるように冷間引き抜きしたのち、Ac1変態点〜(Ac1変態点+50℃)の範囲の温度で熱処理することを特徴とする請求項1に記載の冷間鍛造加工性と転造加工性に優れた高炭素鋼管の製造方法。
  6. 前記縮径率:30%以上の縮径圧延を行う温度範囲が、700 〜750 ℃であることを特徴とする請求項5に記載の高炭素鋼管の製造方法。
  7. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Cr:2%以下、Mo:2%以下、W:2%以下、N:2%以下、B:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含むことを特徴とする請求項5または6に記載の高炭素鋼管の製造方法。
  8. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ti:1%以下、Nb:1%以下、V:1%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含むことを特徴とする請求項5ないし7のいずれかに記載の高炭素鋼管の製造方法。
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