JP4483761B2 - 拡声通話装置 - Google Patents
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Description
本発明は、マイクロホン並びにスピーカを具備して拡声通話を行うインターホン等の拡声通話装置に関するものである。
従来の通話装置、例えば、ハンドセットを備えたインターホン親機においては、ハンドセットの代わりにマイクロホンとスピーカを備えた拡声通話装置たるドアホン子器との通話に際し、ドアホン子器から通話線を介して伝送される受話信号に含まれる周囲騒音のレベル(遠端側周囲騒音レベル)を推定し、その推定値に基づいて受話信号並びに通話線を介してドアホン子器に伝送される送話信号のレベルを調整することにより、来訪者の音声が適切な音量で聞こえるようにしていた(例えば、特許文献1参照)。
特開2002−185625号公報
しかしながら、ドアホン子器と同様に、ハンドセットの代わりにマイクロホンとスピーカを用いて拡声通話を行う拡声通話装置として構成されたインターホン親機においては、スピーカの音量を大きくすることでマイクロホンへの回り込み成分も増大するため、周囲騒音が大きい状況下ではハウリングが発生しやすくなるという問題があった。
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、その目的は、周囲騒音の大きさに応じた適切な音量で拡声通話が行えると同時にハウリングの発生を抑制することができる拡声通話装置を提供することにある。
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、マイクロホン並びにスピーカと、マイクロホンから出力される送話信号を遠端側に伝送する送話状態と遠端側から伝送される受話信号をスピーカに入力する受話状態とを択一的に切り換える音声スイッチと、マイクロホンとスピーカの音響結合によって生じる音響エコーを消去するエコーキャンセラと、通話音声の音声信号と周囲騒音の騒音信号とが混在する入力信号から騒音信号を抑圧して出力するノイズキャンセラと、マイクロホンから出力される送話信号に含まれる近端側の周囲騒音レベルを推定する近端側周囲騒音レベル推定手段と、スピーカへ入力する受話信号レベルを増減することでスピーカが鳴動する音声の音量を補正する音量補正手段と、音量補正手段で補正される前の前記受話信号が音声成分を含んでいる音声区間を検出する遠端側音声区間検出手段と、遠端側音声区間検出手段が音声区間を検出しているときに近端側周囲騒音レベル推定手段で推定した周囲騒音レベルに応じて音量補正手段における補正量を調整する音量補正量調整手段とを備え、ノイズキャンセラは、サンプリングされた入力信号を複数の周波数帯域へ離散フーリエ変換するフーリエ変換手段と、変換された入力信号に含まれる騒音信号の成分を各周波数帯域毎に求める騒音成分演算手段と、入力信号と騒音信号の成分から各周波数帯域毎に騒音信号の抑圧量を決めるためのゲイン関数を求めるゲイン関数演算手段と、各周波数帯域毎の入力信号とゲイン関数を乗算することで騒音信号が抑圧された出力信号を求める騒音抑圧演算手段と、騒音抑圧演算手段の出力信号を離散フーリエ逆変換して時間領域の出力信号を得るフーリエ逆変換手段とを備え、近端側周囲騒音レベル推定手段は、前記送話信号の瞬時パワーの短時間平均値を算出する短時間平均値算出部、並びに前記瞬時パワーの長時間平均値を算出する長時間平均値算出部を具備し、当該短時間平均値と長時間平均値を比較することで前記送話信号が音声成分を含んでいる音声区間を検出する近端側音声区間検出部と、前記送話信号に含まれる近端側周囲騒音レベルの推定値を算出する周囲騒音レベル算出部とを有し、近端側音声区間検出部が音声区間を検出していないときに近端側周囲騒音レベルの推定値を更新するとともに近端側音声区間検出部が音声区間を検出しているときは近端側周囲騒音レベルの推定値を更新しないことを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、騒音抑圧演算手段は、騒音成分演算手段で求めた少なくとも一つの周波数帯域の騒音信号の成分が所定のしきい値以上のときにだけ騒音信号を抑圧することを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、音声スイッチは、送話信号の信号経路に損失を挿入する送話側損失挿入手段と、受話信号の信号経路に損失を挿入する受話側損失挿入手段と、送話側及び受話側の各損失挿入手段から挿入する損失量を制御する挿入損失量制御手段とを備え、挿入損失量制御手段は、受話側損失挿入手段の出力点から音響エコー経路を介して送話側損失挿入手段の入力点へ帰還する経路の音響側帰還利得を推定するとともに、送話側損失挿入手段の出力点から回線エコー経路を介して受話側損失挿入手段の入力点へ帰還する経路の回線側帰還利得を推定し、音響側及び回線側の各帰還利得の推定値に基づいて閉ループに挿入すべき損失量の総和を算出する総損失量算出部と、送話信号及び受話信号を監視して通話状態を推定し、この推定結果と総損失量算出部の算出値に応じて送話側損失挿入手段及び受話側挿入損失手段の各挿入損失量の配分を決定する挿入損失量分配処理部とからなり、音声スイッチが受話状態に切り換えられ且つ総損失量算出部で算出する損失量の総和が所定のしきい値以上であればノイズキャンセラが停止することを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1〜3の何れかの発明において、受話側損失挿入手段の出力点から音響エコー経路を介して送話側損失挿入手段の入力点へ帰還する経路の音響側帰還利得を周波数帯域毎に推定する推定手段を備え、騒音抑圧演算手段は、推定手段で推定する音響側帰還利得が所定のしきい値以上である周波数帯域の騒音信号に対するゲイン関数を低下させることを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項1〜4の何れかの発明において、エコーキャンセラは、エコー経路の特性を適応的に同定する適応フィルタと、近端側の信号から適応フィルタの出力を減算する減算器と、ダブルトークを検出するダブルトーク検出部とを有し、ダブルトーク検出部によりダブルトークが検出されない状態でのみ適応フィルタの係数を更新するとともに、その他の状態では適応フィルタの係数を固定してなり、ゲイン関数演算手段は、ダブルトーク検出部によりダブルトークが検出されない状態ではゲイン関数を一律に低下させることを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項3の発明において、総損失量算出部が音響側帰還利得を推定するために参照する参照信号から騒音信号を抑圧して出力する第2のノイズキャンセラを備えたことを特徴とする。
請求項1の発明によれば、近端側周囲騒音レベル推定手段では、近端側音声区間検出部が音声区間を検出していないときに近端側周囲騒音レベルの推定値を更新するとともに近端側音声区間検出部が音声区間を検出しているときは近端側周囲騒音レベルの推定値を更新しないので、周囲騒音レベルに応じて音量補正手段における補正量が音量補正量調整手段によって適切な値に調整され、周囲騒音の大きさに応じた適切な音量で拡声通話が行え、また、遠端側音声区間検出手段が音声区間を検出しているときにだけ、音量補正量調整手段が近端側周囲騒音レベル推定手段で推定した周囲騒音レベルに応じて音量補正手段における補正量を調整するので、非音声区間では音量補正を行わないことによりスピーカからマイクロホンへの回り込みに起因したハウリングの発生を抑制することができる。さらに、第1のエコーキャンセラがマイクロホンとスピーカの音響結合によって生じる音響エコーを消去するので、スピーカからマイクロホンへの回り込みに起因したハウリングの発生をさらに抑制することができ、しかも、ノイズキャンセラによって通話音声の騒音信号のみを抑圧できるから通話品質の向上が図れる。
請求項2の発明によれば、騒音信号のレベルが小さい場合における通話音声の音質劣化を防ぐことができる。
請求項3の発明によれば、ノイズキャンセラを停止することで消費電流を低減して余計な電力消費を防ぐことができる。
請求項4の発明によれば、騒音抑圧演算手段が、推定手段で推定する音響側帰還利得が所定のしきい値以上である周波数帯域の騒音信号に対するゲイン関数を低下させるので、特定の周波数帯域における回り込みによってハウリングが発生するのを防ぐことができる。
請求項5の発明によれば、通話音声に影響を与えることなく騒音信号の抑圧量をさらに増すことができる。
請求項6の発明によれば、音声スイッチの誤動作、所謂片倒れが防止できる。
以下、集合住宅の共用玄関(ロビー)に設置され、集合住宅の各住戸に設置されている住戸機(インターホン親機や住宅情報盤など)との間で双方向の拡声通話(ハンズフリー通話)を行うロビーインターホンに本発明の技術思想を適用した実施形態について説明する。但し、本発明が適用可能な拡声通話装置はロビーインターホンに限定されるものではなく、例えば、各住戸に設置される住戸機に本発明の技術思想を適用することも可能である。
図1に本発明の実施形態1のブロック図を示す。本実施形態は、マイクロホン1並びにスピーカ2と、マイクロホン1から出力される送話信号を遠端側に伝送する送話状態と遠端側から伝送される受話信号をスピーカ2に入力する受話状態とを択一的に切り換える音声スイッチVSと、マイクロホン1とスピーカ2の音響結合によって生じる音響エコーを消去する第1のエコーキャンセラEC1と、遠端側における信号の回り込みによって生じる回線エコーを消去する第2のエコーキャンセラEC2と、通話音声の音声信号と周囲騒音の騒音信号とが混在する入力信号から騒音信号を抑圧して出力するノイズキャンセラNCと、マイクロホン1から出力される送話信号に含まれる近端側の周囲騒音レベルを推定する近端側周囲騒音レベル推定手段3と、スピーカ2へ入力する受話信号レベルを増減することでスピーカ2が鳴動する音声の音量を補正する音量補正手段4と、音量補正手段4で補正される前の受話信号が音声成分を含んでいる音声区間を検出する遠端側音声区間検出手段5と、遠端側音声区間検出手段5が音声区間を検出しているときに近端側周囲騒音レベル推定手段3で推定した周囲騒音レベルに応じて音量補正手段4における補正量を調整する音量補正量調整手段6とを備える。なお、本実施形態においては近端側周囲騒音レベル推定手段3、音量補正手段4、遠端側音声区間検出手段5、音量補正量調整手段6の各手段と、音声スイッチVSと、第1及び第2のエコーキャンセラEC1,EC2と、ノイズキャンセラNCとをDSP(ディジタル・シグナル・プロセッサ)やCPUなどのハードウェアを専用のソフトウェアで制御することによって実現している。したがって、相手の通話装置から伝送されてくる音声信号(受話信号)やマイクロホン1から出力される音声信号(送話信号)は図示しないA/D変換器によってディジタル値に量子化され、スピーカ2に入力する音声信号(受話信号)並びに相手の通話装置に伝送される音声信号(送話信号)は図示しないD/A変換器によってアナログ値に変換される。
第1のエコーキャンセラEC1は適応フィルタ7と減算器8からなる従来周知の構成を有し、スピーカ2−マイクロホン1間の音響結合により形成される帰還経路(音響エコー経路)HACのインパルス応答を適応フィルタ7により適応的に同定し、参照信号(スピーカ2への入力信号)y(n)から推定した擬似エコー成分(音響エコー)g(n)を減算器8によりマイクロホン1の出力信号s(n)から減算することで音響エコーを抑制するものである(e(n)=s(n)−g(n))。さらに本実施形態においては、近端側と遠端側とで話者がほぼ同時に話す状態、すなわちダブルトークを検出するダブルトーク検出部9を第1のエコーキャンセラEC1に備えている。このダブルトーク検出部9は、適応フィルタ7の収束を劣化させるレベルの信号が近端側の信号(送話信号)s(n)に含まれている場合にダブルトークを検出してダブルトーク検出フラグ(DTF)を立てる(DTF=1)ものである。適応フィルタ7は、ダブルトーク検出部9によりダブルトークが検出されない状態(DTF=0)でのみ、所定のアルゴリズム(例えば、LMS法等)に基づいて係数を更新するとともに、その他の状態では係数を更新せずにそれ以前の値に固定する。このようにダブルトーク検出部9がダブルトークを検出していないときにだけ適応フィルタ7が係数更新を行うことにより、適応フィルタ7の収束が劣化することを防ぐことができる。
第2のエコーキャンセラEC2は、第1のエコーキャンセラEC1と同様に適応フィルタ10と減算器11からなる従来周知の構成を有し、2線−4線変換回路Hと伝送路(本実施形態のロビーインターホンと住戸機との間で送話信号並びに受話信号を伝送するための線路)との間のインピーダンスの不整合による反射および相手の通話端末(例えば、インターホンシステムの住戸機など)におけるスピーカ−マイクロホン間の音響結合とにより形成される帰還経路(回線エコー経路)HLINのインパルス応答を適応フィルタ10により適応的に同定し、参照信号(送話信号)から推定した擬似エコー成分(回線エコー)を減算器11により受話信号から減算することで回線エコーを抑制するものである。
近端側周囲騒音レベル推定手段3は、図2に示すように入力信号(送話信号)の瞬時パワーの短時間平均値Psを算出する短時間平均値算出部30と、瞬時パワーの長時間平均値Pnを算出する長時間平均値算出部31と、短時間平均値Psと長時間平均値Pnを比較することで送話信号が音声成分を含んでいる音声区間を検出する近端側音声区間検出部32と、送話信号に含まれる近端側周囲騒音レベルの推定値Pn’を算出する周囲騒音レベル算出部33とを有する。
短時間平均値算出部30は、入力信号の瞬時値(絶対値)Pv(n)に正の定数ρ1(<1)を乗算した値と、遅延させた短時間平均値Ps(n−1)に正の定数(1−ρ1)を乗算した値とを加算する処理、すなわち、下記の式(1)の演算処理を行うことで短時間平均値Ps(n)を算出している。
Ps(n)=(1-ρ1)×Ps(n−1)+ρ1×Pv(n)…(1)
また長時間平均値算出部31は、入力信号の瞬時値Pv(n)に正の定数ρ2(0<ρ2<ρ1<1)を乗算した値と、遅延させた長時間平均値Pn(n−1)に正の定数(1−ρ2)を乗算した値とを加算する処理、すなわち、下記の式(2)の演算処理を行うことで長時間平均値Pn(n)を算出している。
また長時間平均値算出部31は、入力信号の瞬時値Pv(n)に正の定数ρ2(0<ρ2<ρ1<1)を乗算した値と、遅延させた長時間平均値Pn(n−1)に正の定数(1−ρ2)を乗算した値とを加算する処理、すなわち、下記の式(2)の演算処理を行うことで長時間平均値Pn(n)を算出している。
Pn(n)=(1-ρ2)×Pn(n−1)+ρ2×Pv(n)…(2)
近端側音声区間検出部32は、短時間平均値Ps(n)と長時間平均値Pn(n)との比(=Ps(n)/Pn(n))を所定の閾値δと比較し、δ<Ps(n)/Pn(n)ならば音声区間、Ps(n)/Pn(n)≦δならば非音声区間と判定し、音声区間と判定した場合に近端側音声区間検出フラグSDF1を1とし、非音声区間と判定した場合に近端側音声区間検出フラグSDF1を0とする。
近端側音声区間検出部32は、短時間平均値Ps(n)と長時間平均値Pn(n)との比(=Ps(n)/Pn(n))を所定の閾値δと比較し、δ<Ps(n)/Pn(n)ならば音声区間、Ps(n)/Pn(n)≦δならば非音声区間と判定し、音声区間と判定した場合に近端側音声区間検出フラグSDF1を1とし、非音声区間と判定した場合に近端側音声区間検出フラグSDF1を0とする。
周囲騒音レベル算出部33は、近端側音声区間検出フラグSDF1が0のとき、つまり、送話信号の非音声区間が検出されているときに入力信号の瞬時値Pv(n)に正の定数ρ3(ρ3<1、但し、ρ3はρ2と異なる値でも同じ値でも構わない)を乗算した値と、遅延させた周囲騒音レベルPn’(n−1)に正の定数(1−ρ3)を乗算した値とを加算する処理、すなわち、下記の式(3)の演算処理を行うことで周囲騒音レベルPn’(n)を算出している。但し、近端側音声区間検出フラグSDF1が1のとき、つまり、送話信号の音声区間が検出されているときには下記の式(3)の処理は行わずに周囲騒音レベルPn’(n)を更新しない(下記式(4)参照)。
Pn’(n)=(1-ρ3)×Pn’(n−1)+ρ3×Pv(n)…(3)
Pn’(n)=Pn’(n−1)…(4)
遠端側音声区間検出手段5は、近端側周囲騒音レベル推定手段3と同様に、受話信号の短時間平均値並びに長時間平均値を求めるとともに両平均値の比が所定の閾値よりも大きければ音声区間と判定して遠端側音声区間検出フラグSDF2を1とし、非音声区間と判定した場合に遠端側音声区間検出フラグSDF2を0とする。
Pn’(n)=Pn’(n−1)…(4)
遠端側音声区間検出手段5は、近端側周囲騒音レベル推定手段3と同様に、受話信号の短時間平均値並びに長時間平均値を求めるとともに両平均値の比が所定の閾値よりも大きければ音声区間と判定して遠端側音声区間検出フラグSDF2を1とし、非音声区間と判定した場合に遠端側音声区間検出フラグSDF2を0とする。
音量補正手段4は、音量補正量調整手段6から指示された音量補正量(増幅度)で受話信号を増幅してスピーカ2に出力する。音量補正量調整手段6は、近端側周囲騒音レベル推定手段3から入力する周囲騒音レベル(推定値)Pn’(n)を第1〜第4の基準値XL1〜XL4(XL4<XL1<XL3<XL2)と比較することで音量補正量を決定する。例えば、音量補正量調整手段6では、周囲騒音レベルPn’(n)が第1の基準値XL1よりも小さいときは音量補正量をゼロ(増幅度=0dB)に設定し、周囲騒音レベルPn’(n)が上昇して第1の基準値XL1を超えたら音量補正量を4dB(増幅度=4dB)に設定し、さらに周囲騒音レベルPn’(n)が上昇して第2の基準値XL2を超えたら音量補正量を8dB(増幅度=8dB)に設定し、反対に周囲騒音レベルPn’(n)が下降して第3の基準値XL3以下となれば音量補正量を4dBに設定し、さらに周囲騒音レベルPn’(n)が第4の基準値XL4以下まで下降すれば音量補正量を0dBに設定する。また音量補正量調整手段6は、遠端側音声区間検出手段5から入力する遠端側音声区間検出フラグSDF2が1(音声区間)のときにのみ、その時点で設定している音量補正量(0dB又は4dB又は8dB)を音量補正手段4に指示して音量補正を行わせる。
而して、近端側周囲騒音レベル推定手段3では、近端側音声区間検出部32が音声区間を検出していないときに近端側周囲騒音レベルの推定値Pn’(n)を更新するとともに近端側音声区間検出部32が音声区間を検出しているときは近端側周囲騒音レベルの推定値Pn’(n)を更新しないので、周囲騒音レベルに応じて音量補正手段4における補正量が音量補正量調整手段6によって適切な値に調整され、周囲騒音の大きさに応じた適切な音量で拡声通話が行え、また、遠端側音声区間検出手段5が音声区間を検出しているときにだけ、音量補正量調整手段6が近端側周囲騒音レベル推定手段3で推定した周囲騒音レベルに応じて音量補正手段4における補正量を調整するので、非音声区間では音量補正を行わないことによりスピーカ2からマイクロホン1への回り込みに起因したハウリングの発生を抑制することができる。但し、第1のエコーキャンセラEC1の適応フィルタ7が係数を更新しているときに音量補正手段4によって音量が補正されると適応フィルタ7の収束が劣化してしまう虞がある。そこで本実施形態では、適応フィルタ7が係数更新を行っていないとき、すなわち、ダブルトーク検出部9がダブルトークを検出していないとき(ダブルトーク検出フラグDTF=0のとき)にのみ音量補正手段4が音量を補正し、上述のように適応フィルタ7の収束が劣化するのを防いでいる。
ところで、ディジタルのFIRフィルタにより構成される適応フィルタ7では、疑似エコー成分g(n)の減算で消去されなかった消去誤差e(n)を最小とするように動作するアルゴリズムによってフィルタ係数を逐次修正しており、例えば、消去誤差e(n)の自乗平均値を最小化するアルゴリズム(例えば、LMS(Least-Mean-Square)法)が用いられる。このLMS法では、フィルタ係数の修正の大きさを調整する修正幅(ステップゲイン)がスカラ量として与えられており、高反響空間においては音声信号のような有色信号に対する収束時間が相当長くなってしまう。
そこで、ディジタルのFIRフィルタで構成された適応フィルタ7が消去誤差e(n)を最小とするようにフィルタ係数を逐次修正するためのアルゴリズムとして、従来周知の射影法を用いることが望ましい。射影法は、アルゴリズム内部において入力信号の自己相関を取り除くことにより、音声信号のような有色信号に対する収束速度を改善したものである。2次の射影法により適応フィルタ7のフィルタ係数(タップ係数ともいう)h(n)が下記の式(5)に従って逐次修正される。
h(n+1)=h(n)+μ[δ(n)x(n)+ε(n)x(n-1)] (5)
但し、
h(n)=(h1(n),h2(n),…,hL(n))T
T:ベクトルの転置
n:サンプリング時間
L:タップ長(タップ数)
μ:ステップゲイン(スカラ量)
x(n)=(x(n),x(n-1),…,x(n-L+1))T:入力信号(受話信号)ベクトル
δ(n),ε(n)は下記の連立方程式(6),(7)から求められる定数である。
但し、
h(n)=(h1(n),h2(n),…,hL(n))T
T:ベクトルの転置
n:サンプリング時間
L:タップ長(タップ数)
μ:ステップゲイン(スカラ量)
x(n)=(x(n),x(n-1),…,x(n-L+1))T:入力信号(受話信号)ベクトル
δ(n),ε(n)は下記の連立方程式(6),(7)から求められる定数である。
δ(n)x(n)Tx(n)+ε(n)x(n-1)Tx(n)=e(n) (6)
δ(n)x(n-1)Tx(n)+ε(n)x(n-1)Tx(n-1)=(1-μ)e(n-1) (7)
但し、e(n)は真のエコー成分と擬似エコー成分との差(消去誤差)である。
δ(n)x(n-1)Tx(n)+ε(n)x(n-1)Tx(n-1)=(1-μ)e(n-1) (7)
但し、e(n)は真のエコー成分と擬似エコー成分との差(消去誤差)である。
そして本実施形態では、スカラ量として与えられているステップゲインμをステップゲイン行列Mという対角行列に拡張する、いわゆるES法を上記射影法に組み合わせることにより、適応フィルタ7のフィルタ係数h(n)を下記の式(8)に従って逐次修正する。
h(n+1)=h(n)+M[δ(n)x(n)+ε(n)x(n-1)] (8)
但し、
M=diag[μ1,μ2,…,μL]
μi=μ0λi-1(i=1,2,…,L)
λ:インパルス応答変動量の減衰率(0<λ≦1)
ここで、FIRフィルタにインパルスを入力したときの出力(インパルス応答)がフィルタ係数そのものとなるから、フィルタ係数の修正の大きさは、設置空間(例えば、集合住宅の共用玄関)におけるインパルス応答の変動量と一致することになる。一般に、反響の程度に関わらず屋内におけるインパルス応答は指数関数的に減衰し、インパルス応答の変動量もインパルス応答と同じ減衰率で減衰することが知られている。従って、ES法においては、変動が大きいインパルス応答初期のフィルタ係数は大きなステップゲインで修正し、変動が小さくなったインパルス応答の後期のフィルタ係数は小さなステップゲインで修正するように重み付けする。具体的には、ステップゲイン行列Mの対角要素μi(i=1,2,…,L)を引数iの増加に伴って最大値μ0からインパルス応答の減衰特性と同じ傾きで減衰させることにより、結果的に収束時間を短縮することができる。
但し、
M=diag[μ1,μ2,…,μL]
μi=μ0λi-1(i=1,2,…,L)
λ:インパルス応答変動量の減衰率(0<λ≦1)
ここで、FIRフィルタにインパルスを入力したときの出力(インパルス応答)がフィルタ係数そのものとなるから、フィルタ係数の修正の大きさは、設置空間(例えば、集合住宅の共用玄関)におけるインパルス応答の変動量と一致することになる。一般に、反響の程度に関わらず屋内におけるインパルス応答は指数関数的に減衰し、インパルス応答の変動量もインパルス応答と同じ減衰率で減衰することが知られている。従って、ES法においては、変動が大きいインパルス応答初期のフィルタ係数は大きなステップゲインで修正し、変動が小さくなったインパルス応答の後期のフィルタ係数は小さなステップゲインで修正するように重み付けする。具体的には、ステップゲイン行列Mの対角要素μi(i=1,2,…,L)を引数iの増加に伴って最大値μ0からインパルス応答の減衰特性と同じ傾きで減衰させることにより、結果的に収束時間を短縮することができる。
而して、適応フィルタ7では、サンプリング周期毎に取り込んだ入力信号(受話信号)を受話信号ベクトルx(n)とし、x(n)Tx(n),x(n-1)Tx(n),x(n-1)Tx(n),x(n-1)Tx(n-1)を演算するとともに、メモリに記憶した消去誤差e(n)並びにステップゲイン行列Mの対角要素μiを読み出し、式(6)、(7)の連立方程式を解くことで定数δ(n),ε(n)を求め、さらに求めた定数δ(n),ε(n)とメモリから読み出したステップゲイン行列Mを用いて式(8)の右辺第2項を演算し、これをメモリから読み出したフィルタ係数h(n)に加算して次のフィルタ係数h(n+1)を演算することによりフィルタ係数h(n+1)を逐次修正し、フィルタ係数h(n+1)を真のインパルス応答に近付けていく処理を行っている。
上述のように本実施形態によれば、第1のエコーキャンセラEC1の適応フィルタ7において射影法とES法を組み合わせたES射影法のアルゴリズムによりフィルタ係数を適応的に同定させているので、従来のLMS法や学習同定法に比較して、高反響空間におけるフィルタ係数の収束時間を短縮することができる。但し、第2のエコーキャンセラEC2の適応フィルタ10で行うアルゴリズムは、必ずしも第1のエコーキャンセラEC1と共通である必要はなく、特にLMS法に比べて演算量の多いES射影法を共通に用いることはDSPやCPUの演算量が増大してしまうので、第1のエコーキャンセラEC1では適応フィルタ7のアルゴリズムにES射影法を用い、第2のエコーキャンセラEC2では適応フィルタ10のアルゴリズムに他のもの、例えば、LMS法や学習同定法などを用いてトータルの演算量を抑制することが望ましい。
音声スイッチVSは、送話信号の信号経路に損失を挿入する送話側損失挿入部13と、受話信号の信号経路に損失を挿入する受話側損失挿入部14と、送話側及び受話側の各損失挿入部13,14から挿入する損失量を制御する挿入損失量制御部15とを備える。また挿入損失量制御部15は、受話側損失挿入部14の出力点から音響エコー経路HACを介して送話側損失挿入部13の入力点へ帰還する経路の音響側帰還利得αを推定するとともに、送話側損失挿入部13の出力点から回線エコー経路HLINを介して受話側損失挿入部14の入力点へ帰還する経路の回線側帰還利得βを推定し、音響側及び回線側の各帰還利得α、βの推定値α’、β’に基づいて閉ループに挿入すべき損失量の総和を算出する総損失量算出部16と、送話信号及び受話信号を監視して通話状態を推定し、この推定結果と総損失量算出部16の算出値に応じて送話側損失挿入部13及び受話側挿入損失部14の各挿入損失量の配分を決定する挿入損失量分配処理部17とを具備する。
総損失量算出部16では、整流平滑器や低域通過フィルタ等を用いて送話側損失挿入部13の入力信号の短時間における時間平均パワーを推定し、同じく整流平滑器や低域通過フィルタ等を用いて受話側損失挿入部14の出力信号の短時間における時間平均パワーを推定し、音響エコー経路HACにて想定される最大遅延時間において受話側損失挿入部14の出力信号の時間平均パワーの推定値の最小値を求め、この最小値で送話側損失挿入部13の入力信号の時間平均パワーの推定値を除算した値を音響側帰還利得αの推定値α’とするとともに、整流平滑器や低域通過フィルタ等を用いて受話側損失挿入部14の入力信号の短時間における時間平均パワーを推定し、同じく整流平滑器や低域通過フィルタ等を用いて送話側損失挿入部13の出力信号の短時間における時間平均パワーを推定し、回線エコー経路HLINにて想定される最大遅延時間において送話側損失挿入部13の出力信号の時間平均パワーの推定値の最小値を求め、この最小値で受話側損失挿入部14の入力信号の時間平均パワーの推定値を除算した値を回線側帰還利得βの推定値β’とする。そして、総損失量算出部16は音響側帰還利得α及び回線側帰還利得βの各推定値α’,β’から所望の利得余裕MGを得るために必要な総損失量Ltを算出し、その値Ltを挿入損失量分配処理部17に出力する。
挿入損失量分配処理部17では、送話側損失挿入部13の入出力信号及び受話側損失挿入部14の入出力信号を監視し、これらの信号のパワーレベルの大小関係並びに音声信号の有無などの情報から通話状態(受話状態、送話状態等)を判定するとともに、判定された通話状態に応じた割合で総損失量Ltを送話側損失挿入部13と受話側損失挿入部14に分配するように各損失挿入部13,14の挿入損失量を調整する。
ところで本実施形態における総損失量算出部16は、上述のように各帰還利得α,βの推定値α’,β’に基づいて閉ループに挿入すべき損失量の総和を算出して適応更新する更新モード、並びに総損失量を所定の初期値に固定する固定モードの2つの動作モードを有し、相手側の通話端末との通話開始から第1及び第2のエコーキャンセラEC1,EC2が充分に収束するまでの期間には固定モードで動作するとともに第1及び第2のエコーキャンセラEC1,EC2が充分に収束した後の期間には更新モードで動作する。すなわち、総損失量算出部16では音響側帰還利得α及び回線側帰還利得βの推定値α’,β’がともに通話開始から所定時間(数百ミリ秒)以上継続して所定の閾値ε(例えば、通話開始時における各推定値α’,β’に対して10dB〜15dB小さい値)を下回った時点で第1及び第2のエコーキャンセラEC1,EC2が充分に収束したものとみなし、上記時点以前には総損失量を初期値に固定する固定モードで動作し、上記時点以降には各推定値α’,β’に基づいて総損失量を適応更新する更新モードに動作モードを切り換える。なお、固定モードにおける総損失量の初期値は更新モードにおいて随時更新される総損失量よりも充分に大きな値に設定される。
而して、通話開始直後の第1及び第2のエコーキャンセラEC1,EC2が充分に収束していない状態においては、固定モードで動作する総損失量算出部16によって充分に大きな値に設定される初期値の総損失量が閉ループに挿入されるため、不快なエコー(音響エコー並びに回線エコー)やハウリングの発生を抑制して安定した半二重通話を実現することができる。また、通話開始から時間が経過して第1及び第2のエコーキャンセラEC1,EC2が充分に収束した状態においては、総損失量算出部16の動作モードが固定モードから更新モードに切り換わって閉ループに挿入する総損失量が初期値よりも充分に低い値に減少するため、双方向の同時通話が実現できるものである。
ここで、更新モードにおける総損失量算出部16の具体的な動作を図3のフローチャートを参照して説明する。
総損失量算出部16は、固定モードから更新モードに移行した時点(t=t1)から所定のサンプリング周期で音響側帰還利得α並びに回線側帰還利得βの推定処理を実行してその推定値α'(n),β'(n)を算出し(ステップ1)、これら2つの推定値α'(n),β'(n)の積と利得余裕MGとから、閉ループの利得余裕をMG[dB]に保つために必要とされる総損失量所望値Lr(n)を下式により算出する(ステップ2)。
Lr(n)=20log|α'(n)・β'(n)|+MG[dB]
なお、α'(n),β'(n),Lr(n)はそれぞれ更新モード移行時点からn回目のサンプリングによって算出された帰還利得の推定値並びに総損失量所望値を示す。さらに、総損失量算出部16は上式から算出したn回目の総損失量所望値Lr(n)と、前回(n−1回目)の総損失量Lt(n-1)、すなわち前回の処理で決定されて実際に挿入された総損失量に対して今回算出した総損失量所望値Lr(n)が大きい場合、前回の総損失量Lt(n-1)に微少な増加量Δi[dB]を加算した値を今回の総損失量Lt(n)=Lt(n-1)+Δiとし(ステップ3、ステップ4)、前回の総損失量Lt(n-1)に対して今回算出した総損失量所望値Lr(n)が小さい場合、前回の総損失量Lt(n-1)から微少な減少量Δd[dB]を減算した値を今回の総損失量Lt(n)=Lt(n-1)−Δdとする(ステップ5、ステップ6)。
なお、α'(n),β'(n),Lr(n)はそれぞれ更新モード移行時点からn回目のサンプリングによって算出された帰還利得の推定値並びに総損失量所望値を示す。さらに、総損失量算出部16は上式から算出したn回目の総損失量所望値Lr(n)と、前回(n−1回目)の総損失量Lt(n-1)、すなわち前回の処理で決定されて実際に挿入された総損失量に対して今回算出した総損失量所望値Lr(n)が大きい場合、前回の総損失量Lt(n-1)に微少な増加量Δi[dB]を加算した値を今回の総損失量Lt(n)=Lt(n-1)+Δiとし(ステップ3、ステップ4)、前回の総損失量Lt(n-1)に対して今回算出した総損失量所望値Lr(n)が小さい場合、前回の総損失量Lt(n-1)から微少な減少量Δd[dB]を減算した値を今回の総損失量Lt(n)=Lt(n-1)−Δdとする(ステップ5、ステップ6)。
このように総損失量算出部16による総損失量の増減をΔi又はΔdの微少な値に抑えることにより、相手側の通話端末との通話開始直後のように第1及び第2のエコーキャンセラEC1,EC2が収束に向かって活発に係数を更新しているために音響側帰還利得α及び回線側帰還利得βの変化が激しい状態においても、聴感上の違和感をなくすことができる。しかも、本実施形態では、第1のエコーキャンセラEC1が収束するまでは音声スイッチVSを固定モードで動作させることで不快なエコーやハウリングの発生を抑制した半二重通話を実現し、第1のエコーキャンセラEC1が収束したら音声スイッチVSを更新モードで動作させることで双方向の同時通話を実現しており、第1のエコーキャンセラEC1の収束時間を短縮することで音声スイッチVSが固定モードで動作する期間、すなわち、半二重通話となる期間を短縮して早期に双方向の同時通話に移行させることができる。その結果、高反響空間においても快適な拡声通話が行えるものである。
ノイズキャンセラNCは、図4に示すようにA/D変換器(図示せず)でサンプリングされ且つ量子化されたディジタルの入力信号v(n)を複数の周波数帯域へ離散高速フーリエ変換するフーリエ変換部21と、変換された入力信号Vk(n)(kは周波数帯域の番号でk=1,2,…,m)に含まれる騒音信号の成分(以下、「騒音信号」と略す。)Nk(n)を各周波数帯域毎に求める騒音成分演算部22と、入力信号Vk(n)と騒音信号Nk(n)から各周波数帯域毎に騒音信号の抑圧量を決めるためのゲイン関数Gk(n)を求めるゲイン関数演算部23と、ゲイン関数Gk(n)に基づいて各周波数帯域k毎に騒音信号Nk(n)が抑圧された出力信号を求める騒音抑圧演算部24と、騒音抑圧演算部24の出力信号を離散フーリエ逆変換して時間領域の出力信号を得るフーリエ逆変換部25とを備える。
フーリエ変換部21は、ディジタルの入力信号v(n)を離散高速フーリエ変換して得られる振幅成分(実部)と位相成分(虚部)のうちで振幅成分Vk(n)のみを騒音成分演算部22に渡し、位相成分についてはフーリエ逆変換部25に渡す。但し、以下の説明では特に断らない限りフーリエ変換後の振幅成分を入力信号Vk(n)と呼ぶことにする。
騒音成分演算部22は、フーリエ変換部21から受け取った入力信号Vk(n)のk番目の周波数帯域の瞬時信号パワーPV,k(n)(=Vk(n))を時間平均し、その平均値を騒音信号Nk(n)の信号パワーPN,k(n)(=<PV,k(n)>)とする。但し、<PV,k(n)>は瞬時信号パワーPV,k(n)の長時間平均値を表し、下記の式で求められる。
<PV,k(n)>=PV,k(n)×ρ+<PV,k-M(n)>×(1−ρ) 但し、ρは定数(エンベロープ係数)、Mは周波数帯域の分割数を表す。
ゲイン関数演算部23では、騒音信号Nk(n)を抑圧するためのゲイン関数Gk(n)を、時間フレームn並びに周波数帯域k毎に下記の式(9)によって演算する。
また、騒音信号の信号パワー<PV,k(n)>に対する瞬時信号パワーPV,k(n)の比を瞬時S/N比SNRk(n)(=PV,k(n)/<PV,k(n)>)とすれば、上記式(9)は下記の式(10)のように表すこともできる。
上記式(10)をグラフ化したものを図5に示す。
騒音抑圧演算部24は、各周波数帯域k毎の入力信号Vk(n)とゲイン関数Gk(n)を乗算することで騒音信号が抑圧された出力信号(振幅成分)P'V,k(n)(=Gk(n)×PV,k(n))を求め、求めた出力信号P'V,k(n)をフーリエ逆変換部25に渡す。そして、フーリエ逆変換部25において騒音信号が抑圧された振幅成分(実部)P'V,k(n)と位相成分(虚部)とを離散高速フーリエ逆変換することで周波数領域から時間領域に戻された出力信号y(n)が得られ、この出力信号y(n)がD/A変換器9によってディジタル信号からアナログ信号に変換されるのである。
ここで、ゲイン関数演算部23で実行されるゲイン関数Gk(n)の演算式(上記式(9)あるいは式(10))は、瞬時信号パワーPV,k(n)と騒音信号の信号パワー<PV,k(n)>が等しいとき、つまり、瞬時S/N比SNRk(n)=1のときにゲイン関数Gk(n)(あるいはG(SNRk(n))がゼロとなり、瞬時信号パワーPV,k(n)と騒音信号の信号パワー<PV,k(n)>が略等しいところで局所的に騒音信号を抑圧する点に特徴がある。
而して、話者が発声していないときのように入力信号に騒音信号(定常的な騒音信号)のみが含まれている場合、入力信号の瞬時信号パワーPV,k(n)とその長時間平均値<PV,k(n)>とが一致するので、入力信号の瞬時信号パワーPV,k(n)、つまり騒音信号の瞬時信号パワーがゲイン関数Gk(n)によってゼロ又はその近傍まで抑圧される。また、周囲騒音が十分に小さいために入力信号に音声信号のみが含まれているとみなせる場合、入力信号の瞬時信号パワーPV,k(n)のうちで音声信号の周波数帯域に一致する周波数帯域の瞬時信号パワーPV,k(n)がゲイン関数Gk(n)によって抑圧されてしまうけれども、音声信号の場合は定常的な騒音信号に比較して瞬時信号パワーPV,k(n)が短期的に大きく変動するので、実際は音声信号がほとんど抑圧されず、通話に支障が生じることはない。さらに、定常的な周囲騒音が存在する環境下で話者が発声しているときのように入力信号に音声信号と騒音信号が双方とも含まれている場合、音声信号の信号パワーと騒音信号の信号パワーが近い、つまり、瞬時S/N比が1に近い周波数帯域の各信号パワーが双方とも抑圧されるが、上述のように音声信号は定常的な騒音信号に比較して瞬時信号パワーが短期的に大きく変動するために瞬時S/N比も同様に短期間で大きく変動し、その結果、音声信号の瞬時信号パワーが抑圧される量が騒音信号の信号パワーが抑圧される量よりも十分に小さくなる。
例えば本発明者らの実験によると、周囲騒音として自動車のアイドリング音(音圧:80dBA)が存在する環境下で人の声(音圧:74dBA)が発せられた場合において、音声信号と騒音信号を合わせた入力信号の周波数特性(図6(a)参照)と、本実施形態で信号処理された後の入力信号の周波数特性(図6(b)参照)とを比較すれば、自動車のアイドリング音のように定常的な周囲騒音成分のみを抑圧し、周波数変動の激しい音声信号の振幅はほとんど減衰されずに維持されていることが判る。つまり、本実施形態によれば、従来例に比べて騒音信号の抑圧量を増大しつつ音声信号の歪みを抑えることができるのである。
但し、騒音信号を抑圧する限りにおいては多少なりとも音声信号に歪みを生じることは避けられないので、騒音成分演算部22で求めた少なくとも一つの周波数帯域における騒音信号Nk(n)の信号パワー<PV,k(n)>が、所定のしきい値(例えば、聴感上無視できない最小限のレベル)以上の場合にだけ、騒音抑圧演算部24が演算処理を行うようにすれば、騒音信号のレベルが小さい場合における音声信号の歪み(通話音声の音質劣化)を防ぐことができる。
また、音声スイッチVSが受話状態に切り換えられ且つ総損失量算出部16で算出する損失量の総和が所定のしきい値以上である場合、遠端側への騒音信号の影響がほとんど無視できるからノイズキャンセラNCによる騒音信号の抑圧は不要であり、かかる場合にノイズキャンセラNCを停止することで消費電流を低減して余計な電力消費を防ぐことができる。
さらに、第1のエコーキャンセラEC1が具備するダブルトーク検出部9がダブルトークを検出していないとき(DTF=0)、つまり、送話信号に含まれる音声信号のレベルが非常に低いときにゲイン関数演算部23がゲイン関数を一律に低下させれば、通話音声に影響を与えることなく騒音信号の抑圧量をさらに増すことができる。
ところで、音声スイッチVSの総損失量算出部16において、ノイズキャンセラNCにおける複数の周波数帯域毎に音響側帰還利得αの推定値α’を求め、その推定値α’kが所定のしきい値を超えて利得余裕がなくなったとみなせるときに、ノイズキャンセラNCの騒音抑圧演算部24が、当該周波数帯域の騒音信号に対するゲイン関数を低下させて抑圧量を増やすようにすれば、特定の周波数帯域における回り込みによってハウリングが発生するのを防ぐことができる。
なお、本実施形態では送話信号経路における第1のエコーキャンセラEC1と音声スイッチVSとの間にノイズキャンセラNCを設けているが、送話信号経路から音声スイッチVSの総損失量算出部16が帰還利得の推定値を求めるために参照する参照信号(送話信号)を別のノイズキャンセラを介して取り込むようにしても構わない。このようにノイズキャンセラで参照信号に含まれる騒音信号を抑圧した後に総損失量算出部16が帰還利得の推定値を求めるようにすれば、騒音信号による音声スイッチVSの誤動作(いわゆる、片倒れ)を防止することができる。
1 マイクロホン
2 スピーカ
3 近端側周囲騒音レベル推定手段
4 音量補正手段
5 遠端側音声区間検出手段
6 音量補正量調整手段
EC1 第1のエコーキャンセラ
7 適応フィルタ
8 減算器
9 ダブルトーク検出部
2 スピーカ
3 近端側周囲騒音レベル推定手段
4 音量補正手段
5 遠端側音声区間検出手段
6 音量補正量調整手段
EC1 第1のエコーキャンセラ
7 適応フィルタ
8 減算器
9 ダブルトーク検出部
Claims (6)
- マイクロホン並びにスピーカと、マイクロホンから出力される送話信号を遠端側に伝送する送話状態と遠端側から伝送される受話信号をスピーカに入力する受話状態とを択一的に切り換える音声スイッチと、マイクロホンとスピーカの音響結合によって生じる音響エコーを消去するエコーキャンセラと、通話音声の音声信号と周囲騒音の騒音信号とが混在する入力信号から騒音信号を抑圧して出力するノイズキャンセラと、マイクロホンから出力される送話信号に含まれる近端側の周囲騒音レベルを推定する近端側周囲騒音レベル推定手段と、スピーカへ入力する受話信号レベルを増減することでスピーカが鳴動する音声の音量を補正する音量補正手段と、音量補正手段で補正される前の前記受話信号が音声成分を含んでいる音声区間を検出する遠端側音声区間検出手段と、遠端側音声区間検出手段が音声区間を検出しているときに近端側周囲騒音レベル推定手段で推定した周囲騒音レベルに応じて音量補正手段における補正量を調整する音量補正量調整手段とを備え、
ノイズキャンセラは、サンプリングされた入力信号を複数の周波数帯域へ離散フーリエ変換するフーリエ変換手段と、変換された入力信号に含まれる騒音信号の成分を各周波数帯域毎に求める騒音成分演算手段と、入力信号と騒音信号の成分から各周波数帯域毎に騒音信号の抑圧量を決めるためのゲイン関数を求めるゲイン関数演算手段と、各周波数帯域毎の入力信号とゲイン関数を乗算することで騒音信号が抑圧された出力信号を求める騒音抑圧演算手段と、騒音抑圧演算手段の出力信号を離散フーリエ逆変換して時間領域の出力信号を得るフーリエ逆変換手段とを備え、
近端側周囲騒音レベル推定手段は、前記送話信号の瞬時パワーの短時間平均値を算出する短時間平均値算出部、並びに前記瞬時パワーの長時間平均値を算出する長時間平均値算出部を具備し、当該短時間平均値と長時間平均値を比較することで前記送話信号が音声成分を含んでいる音声区間を検出する近端側音声区間検出部と、前記送話信号に含まれる近端側周囲騒音レベルの推定値を算出する周囲騒音レベル算出部とを有し、近端側音声区間検出部が音声区間を検出していないときに近端側周囲騒音レベルの推定値を更新するとともに近端側音声区間検出部が音声区間を検出しているときは近端側周囲騒音レベルの推定値を更新しないことを特徴とする拡声通話装置。 - 騒音抑圧演算手段は、騒音成分演算手段で求めた少なくとも一つの周波数帯域の騒音信号の成分が所定のしきい値以上のときにだけ騒音信号を抑圧することを特徴とする請求項1記載の拡声通話装置。
- 音声スイッチは、送話信号の信号経路に損失を挿入する送話側損失挿入手段と、受話信号の信号経路に損失を挿入する受話側損失挿入手段と、送話側及び受話側の各損失挿入手段から挿入する損失量を制御する挿入損失量制御手段とを備え、
挿入損失量制御手段は、受話側損失挿入手段の出力点から音響エコー経路を介して送話側損失挿入手段の入力点へ帰還する経路の音響側帰還利得を推定するとともに、送話側損失挿入手段の出力点から回線エコー経路を介して受話側損失挿入手段の入力点へ帰還する経路の回線側帰還利得を推定し、音響側及び回線側の各帰還利得の推定値に基づいて閉ループに挿入すべき損失量の総和を算出する総損失量算出部と、送話信号及び受話信号を監視して通話状態を推定し、この推定結果と総損失量算出部の算出値に応じて送話側損失挿入手段及び受話側挿入損失手段の各挿入損失量の配分を決定する挿入損失量分配処理部とからなり、
音声スイッチが受話状態に切り換えられ且つ総損失量算出部で算出する損失量の総和が所定のしきい値以上であればノイズキャンセラが停止することを特徴とする請求項1又は2記載の拡声通話装置。 - 受話側損失挿入手段の出力点から音響エコー経路を介して送話側損失挿入手段の入力点へ帰還する経路の音響側帰還利得を周波数帯域毎に推定する推定手段を備え、
騒音抑圧演算手段は、推定手段で推定する音響側帰還利得が所定のしきい値以上である周波数帯域の騒音信号に対するゲイン関数を低下させることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の拡声通話装置。 - エコーキャンセラは、エコー経路の特性を適応的に同定する適応フィルタと、近端側の信号から適応フィルタの出力を減算する減算器と、ダブルトークを検出するダブルトーク検出部とを有し、ダブルトーク検出部によりダブルトークが検出されない状態でのみ適応フィルタの係数を更新するとともに、その他の状態では適応フィルタの係数を固定してなり、
ゲイン関数演算手段は、ダブルトーク検出部によりダブルトークが検出されない状態ではゲイン関数を一律に低下させることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の拡声通話装置。 - 総損失量算出部が音響側帰還利得を推定するために参照する参照信号から騒音信号を抑圧して出力する第2のノイズキャンセラを備えたことを特徴とする請求項3記載の拡声通話装置。
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