以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る複合機1の外観構成を示すものである。本複合機1は、スキャナ機能、プリンタ機能、ファクシミリ機能を一体的に備えた多機能装置(MFD:Multi Function Device)である。複合機1の上部は、原稿の画像を読み取るためのスキャナ部2であり、複合機1の下部は、記録用紙に画像を記録するためのプリンタ部3である。本発明に係る給紙装置は、複合機1のスキャナ部2のADF5として実現されている。したがって、プリンタ機能等は本発明において任意の機構であり、例えば、スキャナ機能のみのスキャナ単体として本発明に係る給紙装置を実現してもよい。また、本実施の形態では、スキャナ部2のADF5に用いる給紙装置として本発明を実施しているが、本発明に係る給紙装置の用途は、スキャナに限定されるものではなく、例えば、プリンタや複写機等において記録用紙や原稿を給紙するための給紙装置として実現できることは当然である。
以下、スキャナ部2の構成について詳述する。
図1に示すように、スキャナ部2は、FBS(Flatbed Scanner)として機能する読取載置台4に対して、オート・ドキュメント・フィーダ(ADF:Auto Document Feeder)5を備えた原稿押さえカバー6が、背面側の蝶番を介して開閉自在に取り付けられてなる。読取載置台4は、複合機1の筐体として構成されており、原稿押さえカバー6と対向する天面にプラテンガラス20(図3参照)が配設されている。また、該プラテンガラス20に対向するようにして、読取載置台4の内部に画像読取ユニット21が内蔵されている。スキャナ部2をFBSとして使用する場合は、原稿押さえカバー6を開いてプラテンガラス20上に原稿を載置し、原稿押さえカバー6を閉じて該原稿をプラテンガラス20上に固定する。その後、画像読取ユニット21をプラテンガラス20に沿って走査させることにより該原稿の画像読取りを行う。
なお、原稿押さえカバー6の下面には、プラテンガラス20上に載置された原稿を押さえるために、スポンジ及び白板等からなる押さえ部材19が配設されている。また、本発明に係る給紙装置においてFBSの機能は任意であり、ADF5のみを備えた複合機1として本発明を実現してもよい。
原稿押さえカバー6には、給紙トレイ22から所定の搬送路26を経て排紙トレイ23へ原稿を連続搬送するADF5が備えられている。該ADF5による搬送過程において、原稿が読取面42を通過し、該読取面42の下方において画像読取ユニット21が該原稿の画像を読み取るようになっている。本発明に係る給紙装置は、このADF5において実現されている。
また、読取載置台4の正面側には、操作パネル7が設けられている。操作パネル7は各種操作ボタンや液晶表示部から構成されており、複合機1は、該操作パネル7からの指示によって動作するようになっている。また、複合機1は、操作パネル7による指示のほか、コンピュータに接続されて該コンピュータからプリンタドライバやスキャナドライバ等を介して送信される指示によっても動作する。
また、複合機1の正面の左上部には、記録媒体である各種小型メモリカードを装填可能なスロット部8が設けられている。該スロット部8に装填された小型メモリカードに記録された画像データを読み出してその画像データに関する情報を液晶表示部に表示させ、任意の画像をプリンタ部3により記録用紙に記録させることができる。このための入力は、上記操作パネル7から行うことができる。
図1,3に示すように、原稿押さえカバー6上に、給紙トレイ22及び排紙トレイ23が上下二段に構成されている。給紙トレイ22は、原稿押さえカバー6の上面と一体に形成されている。ADF5により画像読取りを行う原稿は、複数枚が積層された状態で、給紙方向の先端をADF5に挿入するようにして、給紙トレイ22上に載置される。また、給紙トレイ22には、複合機1の奥行き方向に隔てて一対の原稿ガイド24が、奥行き方向へスライド移動可能に設けられている。該原稿ガイド24は、給紙トレイ22から起立して、給紙トレイ22に載置される原稿の幅方向の位置を規制するものであり、周知の連動機構により、一対のいずれか一方の原稿ガイド24をスライド移動させると、他方の原稿ガイド24も連動して相反する方向へスライド移動する。
すなわち、原稿幅が狭い場合には、複合機1の正面側の一方の原稿ガイド24を背面側へスライド移動させると、これに連動して、背面側の他方の原稿ガイド24は正面側へスライド移動する。これにより、奥行き方向の略中央を中心として、一対の原稿ガイド24により規制される原稿幅を狭くすることができる。逆に、原稿幅が広い場合には、複合機1の正面側の一方の原稿ガイド24を正面側へスライド移動させると、これに連動して、背面側の他方の原稿ガイド24は背面側へスライド移動して、一対の原稿ガイド24により規制される原稿幅を広くすることができる。
上記一対の原稿ガイド24には、給紙トレイ22と上下方向に隔てて排紙トレイ23が一体的に形成されている。ADF5から排紙された原稿は、その両側を排紙トレイ23に担持されて、給紙トレイ22上の原稿と分離した状態で保持される。排紙トレイ23は、排紙方向の長さが原稿の長さより短いので、原稿の排紙方向先端側は、排紙トレイ23から垂れ下がるようにして、給紙トレイ22上に保持される。したがって、給紙トレイ22上の原稿の給紙方向後端部分の上に、排紙トレイ23上の原稿の排紙方向先端部分が重なるが、給紙トレイ22上の原稿の給紙方向先端部分と、排紙トレイ23上の原稿の排紙方向後端部分とは、排紙トレイ23により上下二段に保持されているので、これら原稿が混同することはない。また、排紙トレイ23を短くすることにより、原稿押さえカバー6上に必要な空間を小さくして、複合機1を薄型且つ小型にすることができる。
また、図19に示すように、給紙トレイ22の上面には、給紙トレイ22に載置すべき原稿の挿入方向を示す矢印19が記されている。前述したように、給紙トレイ22の上方に配設された排紙トレイ23は、左右一対の原稿ガイド24と一体に形成されており、ADF5から排紙された原稿の幅方向両端を担持するものである。したがって、図19に示すように、給紙トレイ22の幅方向略中央部分の上方には排紙トレイ23が存在せず、使用者は、ADFカバー28の上方から上記矢印19を視認することができる。
後述するように、給紙トレイ22からADF5の内部へは吸入シュート部29が形成されており(図2,3参照)、ADF5により画像読取りを行う原稿は、給紙方向の先端を吸入シュート部29に挿入するようにして、給紙トレイ22上に載置される。図19に示すように、上記矢印19の先端側の一部は、該吸入シュート部29内に達しており、原稿を挿入すべき位置が吸入シュート部29であることが明確に理解できるようになっている。したがって、使用者が排紙シュート部33(図3参照)に原稿を挿入するような誤操作が防止される。なお、矢印19の表示手段は、例えば、給紙トレイ22に印字したものであっても、給紙トレイ22の上面を凹凸形状にしたものであってもよい。
また、図1,2に示すように、給紙トレイ22のADF5が設けられていない側の端部には、給紙トレイ22の上面から起立する起立姿勢と、給紙トレイ22の上面と一体に倒伏する倒伏姿勢とに姿勢変化する原稿ストッパ25が設けられている。図1,2に示すように、原稿ストッパ25を起立姿勢とすることにより、例えば、給紙トレイ22と同程度の大きさの原稿がADF5から排出された際に、該原稿が原稿ストッパ25により制止され、給紙トレイ22から滑り落ちることが防止される。このように、排出された原稿を原稿ストッパ25で受け止めることにより、給紙トレイ22の面積を小さくすることができ、給紙トレイ22が一体的に形成された原稿押さえカバー6を小型化できる。また、原稿ストッパ25が不要な場合には、倒伏姿勢とすることにより、原稿押さえカバー6から突出せず、梱包時や保管時の複合機1のサイズをコンパクトにできる。
図2及び図3に示すように、ADF5の内部には、上記給紙トレイ22と排紙トレイ23とを連結するようにして、搬送路26が横向き略U字形状に形成されている。搬送路26は、原稿押さえカバー6に一体に形成されたADF本体27(装置本体)と、該ADF本体27に開閉自在に設けられたADFカバー28(カバー部材)とによって構成されている。ADF5の吸入シュート部29は、上記給紙トレイ22が延長されるようにして、ADF本体27と一体的に形成されたガイド板30と、ADFカバー28の内側に配設された区画板31とをガイド面として、上下に所定幅の通路として構成されている。
搬送路26は、上記吸入シュート部29から、湾曲部32を経て、排紙シュート部33へ横向き略U字形状に形成されており、湾曲部32及び排紙シュート部33も、ADF本体27、ADFカバー28、区画板31等により、所定幅の通路として連続的に形成されている。したがって、給紙トレイ22にセットされた原稿は、吸入シュート部29に案内されて湾曲部32へ給送され、排紙シュート部33から排紙トレイ23へ排紙される。
上記搬送路26には、原稿を搬送するための搬送手段が配設されている。詳細には、図に示すように、吸入ローラ34(第1のローラ)とこれに圧接する吸入ニップ片35(第1の当接部材)、分離ローラ36(第2のローラ)とこれに圧接する分離ニップ片37(第2の当接部材)、及び搬送ローラ38とこれに圧接するピンチローラ39によって搬送手段が構成されている。なお、搬送手段を構成する各ローラやニップ片の構成は一例であり、ローラの数や配置を変更したり、各ニップ片に代えてピンチローラを用いる等、その他の公知の搬送手段に変更できることは勿論である。
前述した搬送手段のうち、吸入シュート部29に配設された吸入ローラ34、吸入ニップ片35、分離ローラ36、及び分離ニップ片37が本発明に係る給紙装置を構成している。以下、これらの構成について詳述する。
図2から図4に示すように、吸入ローラ34は、吸入シュート部29の略中央に、そのローラ面の一部をガイド板30の上面から露出するようにして回転可能に設けられている。また、分離ローラ36は、該吸入ローラ34から給紙方向へ隔てた位置に、同様に、そのローラ面の一部をガイド板30の上面から露出するようにして回転可能に設けられている。これら吸入ローラ34及び分離ローラ36には搬送モータ52(図5参照)からの駆動力が伝達されて、回転駆動されるようになっている。この駆動機構及び駆動伝達機構については後述する。また、吸入ローラ34及び分離ローラ36は同径であり、同じ周速度で回転される。また、吸入ローラ34への駆動伝達においては1周クラッチ65(図8参照)が介設されており、吸入ローラ34は1周分の空転が可能となっている。
吸入ニップ片35は、上記区画板31の吸入ローラ34の対向位置に、吸入ローラ34と接離する方向へ揺動可能に設けられている。吸入ニップ片35は、吸入ローラ34の軸方向のローラ幅より若干狭い幅のパッド状のものであり、その給紙方向上流側の両側に回動軸40がそれぞれ形成されている。この回動軸40が区画板31の下面に形成された軸支部41に軸支されることにより、給紙方向下流側の端部が吸入ローラ34のローラ面に接触可能に進退する。また、吸入ニップ片35は、不図示のバネ部材により下方へ弾性付勢されており、原稿をニップしない状態で常時吸入ローラ34に接触されている。なお、パッド状の吸入ニップ片35に代えてローラを用いてもよいが、パッド状の当接部材とすることにより、当接部材を簡易且つ省スペースで実現することができ、また、当接部材に付与する弾性付勢力の調整が容易である。
分離ニップ片37は、上記区画板31の分離ローラ36の対向位置に、分離ローラ36と接離する方向へ揺動可能に設けられている。分離ニップ片37は、分離ローラ36の軸方向のローラ幅より若干狭い幅のパッド状のものであり、その給紙方向上流側を回動軸として、給紙方向下流側の端部が分離ローラ36のローラ面に接触可能に進退する。該分離ニップ片37は、不図示のバネ部材により下方へ弾性付勢されており、原稿をニップしない状態で常時分離ローラ36のローラ面に圧接されている。なお、パッド状の分離ニップ片37に代えてローラを分離ローラ36に当接させることとしてもよいが、パッド状の当接部材とすることにより、当接部材を簡易且つ省スペースで実現することができ、また、当接部材に付与する弾性付勢力の調整が容易である。
搬送ローラ38は、搬送路26の横向き略U字形状の湾曲部32に配設されている。該搬送ローラ38は、そのローラ面が湾曲部32の一部をなす程度の外径のものである。該搬送ローラ38は、上記吸入ローラ34及び分離ローラ36と同様に、搬送モータ52(図5参照)からの駆動力が伝達されて回転駆動される。
搬送ローラ38の周囲には、ピンチローラ39が3箇所に設けられている。各ピンチローラは、その軸がバネ片に弾性付勢されてADF本体27又はADFカバー28に回転自在に支持されて、搬送ローラ38のローラ面に圧接している。そして、搬送ローラ38が回転すれば、これに従動してピンチローラ39も回転する。これらピンチローラ39により、原稿が搬送ローラ38に圧接されて、搬送ローラ38の回転力が原稿に伝達される。
搬送ローラ38の給紙方向下流側には、排紙シュート部33が形成されている。排紙シュート部33は、ADFカバー28の内面と搬送ローラ38とで構成された搬送路26の湾曲部32と連続するようにして、ADFカバー28と区画板31との間に形成されている。したがって、給紙トレイ22から搬送路26へ供給された原稿は、吸入シュート部29、湾曲部32、排紙シュート部33を順次経て、排紙トレイ23に排出される。
ADFカバー28は、図2に示すように、吸入ローラ34より給紙トレイ22側を回転軸として、上方へ回転自在に設けられている。ADFカバー28を開くことにより、ガイド板30と区画板31とが大きく離間され、吸入シュート部29及び湾曲部32が開放されるとともに、吸入ローラ34及び分離ローラ36と吸入ニップ片35及び分離ニップ片37とが大きく離間される。したがって、ADFカバー28を開くことにより、搬送路26において発生した紙詰まりを解消したり、ADF5の内部のメンテナンスを行うことができる。また、ADFカバー28の閉止動作と上記吸入ローラ34の空転とは連動しているが、この運動伝達機構については後述する。
図3に示すように、読取載置台4の上面にはプラテンガラス20が配設されている。該プラテンガラス20は、スキャナ部2をFBSとして使用する場合に原稿を載置するものであり、例えば透明なガラス板である。プラテンガラス20の一端側は、上記搬送ローラ38の下方にまで至っており、ADF5を用いて画像読取りを行う際の読取面42をも構成している。
読取載置台4の内部には、画像読取ユニット21が内蔵されている。画像読取ユニット21は、図3に示すように、CISユニット43、キャリッジ44、及び不図示の走査機構から構成されている。CISユニット43は、原稿に光を照射し、該原稿からの反射光を電気信号に変換するいわゆる密着型のイメージセンサであり、搬送ローラ38の対向位置において、搬送ローラ38の軸方向、すなわち原稿の幅方向を読取り方向として配設されている。
上記CISユニット43はキャリッジ44に搭載されてプラテンガラス20に密接しており、キャリッジ44は、不図示の走査機構によりプラテンガラス20の下方を走査可能に設けられている。スキャナ部2をFBSとして使用する場合には、キャリッジ44がプラテンガラス20の下方を走査されることにより、CISユニット43が該プラテンガラス20上に載置された原稿の画像を読み取る。一方、ADF5を使用する場合には、図に示すように、キャリッジ44が読取面42の下方に移動して静止し、CISユニット43が読取面42を通過する原稿の画像を読み取る。
なお、本実施の形態では、スキャナ部2がFBSとしても用いられるものであるから、画像読取ユニット21はプラテンガラス20に沿って走査可能なものとしているが、FBSは任意の機能であり、本発明をADF5のみで画像読取りを行うための給紙装置として実現する場合には、画像読取ユニット21は搬送ローラ38の対向位置に据え置けばよく、走査機構は不要である。また、本実施の形態では、画像読取ユニット21として密着型のCISユニット43を用いているが、例えば、縮小光学系のCCDユニットを用いる等、他の公知の画像読取ユニットを採用することも可能である。
図5は、複合機1の制御部45(制御手段)の構成を示している。該制御部45は、スキャナ部2のみでなくプリンタ部3も含む複合機1の全体動作を制御するものである。しかしながら、本実施形態の説明においては、プリンタ部3の構成要素を詳述する必要がないので、図5ではプリンタ部3の構成要素は省略されている。制御部45は、図に示すように、CPU46、ROM47、RAM48、EEPROM49を主とするマイクロコンピュータとして構成されており、バス50を介してASIC(Application Specific Integrated Circuit)51に接続されている。
ROM47には、複合機1の各種動作を制御するためのプログラム等が格納されている。RAM48は、CPU46が上記プログラムを実行する際に用いる各種データを一時的に記録する記憶領域又は作業領域として使用される。
ASIC51は、CPU46からの指令に従い、搬送(LF)モータ52に通電する相励磁信号等を生成して、該信号を搬送モータ52の駆動回路53に付与し、該駆動回路53を介して駆動信号を搬送モータ52に通電することにより、搬送モータ52の回転制御を行っている。
駆動回路53は、上記分離ローラ36及び搬送ローラ38に接続された搬送モータ52を駆動させるものであり、ASIC51からの出力信号を受けて、搬送モータ52を回転するための電気信号を形成する。該電気信号を受けて搬送モータ52が回転し、該搬送モータ52の回転力がギアや駆動軸等からなる周知の駆動機構を介して、分離ローラ36及び搬送ローラ38へ伝達される。なお、上記吸入ローラ34へは駆動伝達機構を介して分離ローラ36から駆動伝達される。
同様に、ASIC51は、CPU46からの指令に従い、キャリッジ(CR)モータ54に通電する相励磁信号等を生成して、該信号をキャリッジモータ54の駆動回路55に付与し、該駆動回路55を介して駆動信号をキャリッジモータ54に通電することにより、キャリッジモータ54の回転制御を行っている。
駆動回路55は、上記キャリッジ44に接続されたキャリッジモータ54を駆動させるものであり、ASIC51からの出力信号を受けて、キャリッジモータ54を回転するための電気信号を形成する。該電気信号を受けてキャリッジモータ54が回転し、該キャリッジモータ54の回転力が周知の走査機構を介して、キャリッジ44へ伝達されことによりキャリッジ44が走査される。
また、ASIC51には、搬送路26において原稿を検出するためのリードセンサ56や、分離ローラ36及び搬送ローラ38の回転量を検出するためにこれらに設けられたロータリエンコーダ57、キャリッジ44の移動量を検出するためのリニアエンコーダ58、ADFカバー28の開閉を検出するためのカバーセンサ59が接続されている。
さらに、ASIC51には、搬送路26を搬送される原稿の画像読取りを行うCIS43や、複合機1の操作指示を行うための操作パネル7、各種小型メモリカードが挿入されるスロット部8、パソコン等の外部機器とパラレルケーブルやUSBケーブルを介してデータの送受信を行うためのパラレルインタフェース及びUSBインタフェース等が接続されている。さらに、ファクシミリ機能を実現するためのNCU(Network Control Unit)やMODEMも接続されている。
以下、分離ローラ36から吸入ローラ34への駆動伝達機構について詳述する。
図6はガイド板30を除いた状態を示すものであるが、図に示すように、吸入ローラ34及び分離ローラ36は、ガイド板30(図6において不図示)の下方において、ADF本体27に形成された軸支部61にそれぞれ軸支されて、給紙方向に隔てて並設されている。分離ローラ36の軸62には、搬送モータ52からの駆動が入力されている。該軸62の一端側(図手前側)には、搬送モータ52からの駆動を分離ローラ36から吸入ローラ34へ伝達するための駆動伝達機構63が配設されている。
駆動伝達機構63は、図6及び図7に示すように、分離ローラ36の軸62に嵌設されたギア64と、吸入ローラ34の一端側に設けられた1周クラッチ65と、ギア64から1周クラッチ65へ駆動伝達を行う駆動伝達ギア66とから構成されている。ギア64は外周に軸線と平行な歯が形成された平歯車であり、軸62との嵌合部分がD形状に形成されて軸62と一体に回るようになっている。
1周クラッチ65は、図8及び図9に示すように、クラッチギア67及び係止片68を主構成とするものである。クラッチギア67は、外周に軸線と平行な歯が形成された平歯車であり、軸線方向に穿設された軸孔69に吸入ローラ34の軸70が挿入されて、該軸70に対して回転自在となっている。また、軸孔69の外周に沿って円弧状に嵌合溝71が軸線方向に貫通するように形成されている。該嵌合溝71は、上記係止片68を嵌挿するためのものであり、係止部72が形成された周方向の一部を残した円弧状に形成されている。係止部72は、上記係止片68と当接することにより、該係止片68を介して吸入ローラ34に駆動力を伝達するためのものであり、上記嵌合溝71の円弧形状の両端面を構成している。
係止片68は、クラッチギア67が嵌められる吸入ローラ34の一方の端面から軸方向へ突出した棒状の部材である。該係止片68は、クラッチギア67の嵌合溝71と対応する位置から突出しており、嵌合溝71を通り抜けてクラッチギア67から突出する程度の長さである。
図9に示すように、吸入ローラ34の軸70にクラッチギア67が外嵌され、該クラッチギア67の嵌合溝71に係止片68が挿入されるようにして、吸入ローラ34とクラッチギア67とが組み合わされる。図に示すように、クラッチギア67の係止部72に対して、反時計回り方向側の位置に係止片68が当接している状態において、クラッチギア67が反時計回りに回転すると、係止部72が係止片68を反時計回り方向へ押すこととなる。したがって、図に示す係合状態のままで、クラッチギア67と吸入ローラ34とが共に反時計回りに回転する。
一方、クラッチギア67が静止している状態で、吸入ローラ34を反時計回りに回転させると、係止片68は嵌合溝71を摺動するので、クラッチギア67は共に回転せずに静止したままとなる。そして、吸入ローラ34が略1周分回転すると、係止片68が係止部72の時計方向側の位置に到達して当接する。その状態から、更に吸入ローラ34を反時計回りに回転させるには、係止片68が係止部72を反時計回り方向へ押しながら、吸入ローラ34とクラッチギア67とを反時計回り方向へ共に回転させることとなる。
このようにして、クラッチギア67及び係止片68を主構成とする1周クラッチ65は、係止片68がクラッチギア67の嵌合溝71を摺動する略1周分だけ、クラッチギア67の駆動伝達に拘わらず吸入ローラ34の空転を許容するものである。なお、前述では吸入ローラ34及びクラッチギア67が反時計回りに回転する場合について説明しているが、これらが時計回りに回転する場合も、吸入ローラ34は略1周分だけ空転が許容される。
図6及び図7に示すように、分離ローラ36の軸62に設けられたギア64と、1周クラッチ65のクラッチギア67との間には、駆動伝達ギア66が介設されている。駆動伝達ギア66は、外周に軸線と平行な歯が形成された平歯車であり、ギア64及びクラッチギア67と噛合している。これにより、ギア64から1周クラッチ65へ駆動伝達がなされる。
本実施の形態では、上記ADFカバー28の閉止動作における回転運動を上記吸入ローラ34の回転運動として伝達する運動伝達機構により、本発明に係る戻し手段が機械的に実現されている。以下、上記ADFカバー28の閉止動作と上記吸入ローラ34の空転とを連動させる運動伝達機構について詳述する。
上記運動伝達機構は、開姿勢の上記ADFカバー28を閉姿勢へ姿勢変化させる閉止動作に基づいて、上記吸入ローラ34を1周クラッチ65が許容する空転範囲の給紙逆方向端へ回転させるものであり、図10に示すように、ADFカバー28に設けられたギア73(第1の運動伝達ギア)と、吸入ローラ34の軸70に設けられたギア74(第2の運動伝達ギア)と、該軸70に配設されたトルクリミッタ75(摩擦クラッチ)とから構成されている。なお、図10は説明の便宜上、ガイド板30等を除いた状態を示している。
上記ギア73は、ADFカバー28の軸受け76Aと同軸に設けられた扇形状のものであって、外周に軸線と平行な歯が形成された平歯車である。図10に示すように、ADF本体27には、水平方向内側へ突出するようにして軸76が形成されている。ADFカバー28の幅方向両端には、該軸76と対応する位置に軸受け76Aが形成されており、該軸受け76Aが軸76を軸支することにより、ADF本体27に対してADFカバー28が回転可能となっている。上記ギア73は、ADFカバー28の一端側の軸受け76Aに、ADFカバー28から略下方へ突出するようにして一体に形成されており、ADFカバー28の開閉とともに軸76を中心に回転する。
上記ギア74は、吸入ローラ34の軸70の一端に固定されている。詳細に説明するに、軸70は、吸入ローラ34から、上記ギア73が設けられた側に向かって延設されており、該ギア73付近のADF本体27に形成された軸支部77に回転自在に支持されている。該軸70の延出端には、上記ギア73と噛合するギア74が設けられている。該ギア74は、外周に軸線と平行な歯が形成された平歯車であり、軸70との嵌合部分がD形状に形成されて軸70と一体に回るようになっている。
トルクリミッタ75は、吸入ギア34とギア74との間において軸70に設けられており、吸入ギア34とギア74との間で軸70の回転を伝達するとともに、所定以上の負荷が生じた場合には、回転伝達を遮断するものである。トルクリミッタ75としては、公知の摩擦クラッチを採用することができ、例えば、2つの円板を対抗させ、これら円板をバネ等により密着させてネジリモーメントを伝達する円板クラッチとして構成すればよい。これら円板の摩擦係数とバネ等による付勢力を適宜調整すれば、所定トルクまでは摩擦力により円板が一体に回転して回転伝達を行い、所定トルク以上が負荷されると円板が滑って回転伝達が遮断される。なお、このような摩擦クラッチの構成は一例であり、例えば、円錐クラッチや円周クラッチ、バネクラッチ等の他の公知の構成を採用できる。
図11及び図12に示すように、上記ADFカバー28の軸受け76Aは、上記ギア74が固定された軸70より給紙方向上流側に配設されている。そして、図に示すように、該軸受け76Aと嵌合する軸76を中心として給紙方向下流側が開閉するようになっている。
ADFカバー28に設けられたギア73は、ADF本体27に対してADFカバー28が閉じた閉姿勢、及びADF本体27に対してADFカバー28が完全に開いた開姿勢のいずれに姿勢においても、ギア74とは噛合しない扇形状となっている。そして、ADFカバー28の開閉動作の途中において、ギア73とギア74とが噛合し、ADFカバー28の回転がギア73、ギア74を介して吸入ローラ34の軸70に伝達されるようになっている。
前述したように、ADFカバー28の軸受け76Aが軸70より給紙方向上流側に配設されることにより、ADFカバー28を閉止するには、図における反時計回りにADFカバー28を回転することとなる。該ADFカバー28と共にギア73も軸受け76Aと嵌合する軸76を中心として反時計回りに回転し、ギア73と噛合するギア74は、時計回りに、すなわち給紙逆方向へ回転することとなる。したがって、ADFカバー28を閉止するための回転方向と、吸入ローラ34を給紙逆方向へ回転させる方向とが逆方向となるように配置できるので、運動伝達機構の構成が簡易となる。
以下、上記ADF5を用いた原稿の画像読取りにおける給紙動作について説明する。
ADF5を用いてスキャナ部2により画像読取りを行う場合には、図1に示すように、原稿押さえカバー6を読取載置台4に対して閉じた状態とする。また、図11に示すように、ADFカバー28はADF本体27に対して閉じた状態とする。したがって、ADFカバー28に設けられたギア73と、吸入ローラ34の軸70に設けられたギア74とは噛合していない。
そして、給紙トレイ22に読み取るべき原稿を載置する。該原稿は1枚であっても複数枚であってもよい。例えば、同じサイズの複数枚の原稿の画像読取りを行う場合には、各原稿を重ねて揃え、その一端を給紙トレイ22から吸入シュート部29に挿入する。
吸入シュート部29に挿入された原稿は、まず、吸入ローラ34及び吸入ニップ片35に当接する。このとき、吸入ローラ34は、図7に示したように、クラッチギア67の係止部72に対して、反時計回り方向側の位置に係止片68が当接した係合状態となっている。換言すれば、吸入ローラ34の係止片68は、1周クラッチ65の嵌合溝71が許容する空転範囲の給紙逆方向端に当接している。したがって、吸入ローラ34は給紙方向へ1周分の空転が可能である。
吸入ローラ34及び吸入ニップ片35に当接した原稿は、該吸入ローラ34を給紙方向へ空転させ、且つ吸入ニップ片35をバネ部材の弾性付勢力に反して退避させながら、更に奥へ挿入される。この際、原稿と接触している吸入ローラ34は原稿の挿入とともに空転するので、該原稿には、吸入ニップ片35を付勢するバネ部材の弾性付勢力が挿入に対する抵抗力として負荷される。このバネ部材の弾性付勢力を適宜調整することにより、使用者は殆ど抵抗を感じることなく、原稿を更に奥へ挿入することができる。したがって、原稿が吸入ローラ34及び吸入ニップ片35に当接することにより、その位置が挿入限界位置と誤認されることがない。なお、吸入ニップ片35は、原稿を上から下へ押さえつけて吸入ローラ34に圧接するものであるが、原稿には重力が働いているので、原稿の挿入に対して抵抗力を感じるような過剰な弾性付勢力を付与する必要はない。
吸入ローラ34を空転させながら、更に吸入シュート部29の奥部へ挿入された原稿は、つぎに、その先端が、分離ローラ36及び分離ニップ片37に当接する。分離ローラ36の軸62には、搬送モータ52からの駆動伝達機構による負荷があるため、分離ローラ36より奥部へ原稿を挿入するには、その負荷に反して分離ローラ36を回転させるか、分離ローラ36のローラ面上を原稿を摺動させることとなる。該負荷や摺動摩擦により、原稿の挿入に抵抗感が生じ、使用者は、原稿の挿入が完了したと判断する。該原稿を、先端が吸入シュート部29に挿入した状態で給紙トレイ22に載置することにより、原稿のセットが完了する。
つぎに、使用者は、操作パネル7を操作して、原稿の画像読取り開始を複合機1に指示する。操作パネル7には、例えばスタートボタンが設けられており、該スタートボタンを押すことにより、複合機1に画像読取り開始を指示できる。該指示を受けて、複合機1の制御部5は、駆動回路53を介して搬送モータ52を駆動させる。これを受けて、分離ローラ36に搬送モータ52の回転力が入力される。これにより、まず、分離ローラ36が回転し始めるが、原稿の先端は分離ローラ36と分離ニップ片37とでニップされていないので、原稿は給送されずに原稿セット位置に静止する。
前述したように、原稿を挿入する際に吸入ローラ34は給紙方向へ空転されているので、図13に示すように、該空転に伴って係止片68は係止部72から給紙方向へ進んだ位置となっている。この状態で、分離ローラ36の軸62に回転力が入力されると、分離ローラ36と共にギア64も給紙方向へ、すなわち反時計回りに回転する。この回転を受けて、ギア64に噛合している駆動伝達ギア66が時計回りに回転し、該回転を受けて、駆動伝達ギア66と噛合しているクラッチギア67が反時計回りに、すなわち給紙方向へ回転する。
図に示すように、クラッチギア67の係止部72と係止片68とは離れているので、クラッチギア67が回転し始めても、該回転は係止片68に直ぐには伝達されず、クラッチギア67は、吸入ローラ34の軸70を空転する。そして、クラッチギア67が回転し始めて、その係止部72が係止片68と当接する位置まで回転すれば、該係止部72が係止片68を反時計回り方向へ押すようにして回転伝達が開始される。これを受けて、吸入ローラ34が反時計回りに、すなわち給紙方向へ回転する。
給紙トレイ22上に載置された原稿の先端は、吸入ローラ34及び吸入ニップ片35の配設位置より奥部へ挿入されており、吸入ニップ片35により、吸入ローラ34のローラ面に圧接されている。したがって、吸入ローラ34が回転することにより、原稿は該回転を受けて給紙方向へ送り出される。
複数枚の原稿は一体として吸入ニップ片35により吸入ローラ34へ付勢されているが、該吸入ローラ34のローラ面と接触するのは最下位置の原稿のみなので、該原稿が吸入ローラ34の回転力を受けて給紙方向へ送り出される。これにより、原稿の先端が分離ローラ36と分離ニップ片37との間に進入して、これらにニップされる。該原稿は、分離ニップ片37により分離ローラ36のローラ面に圧接されて、分離ローラ36の回転力を受け、さらに給紙方向へ送り出される。上記吸入ローラ34により最下位置の原稿が送り出される際に、静電気等の影響により、その上に積重された原稿が重なるようにして送り出されることがあるが、分離ローラ36と分離ニップ片37との間に複数枚の原稿が進入しても、吸入ローラ34及び分離ローラ36の回転力を直接受けるのは最下位置の原稿のみなので、該原稿のみが複数枚の原稿から分離されて搬送路26へ給送される。
このようにして給送された原稿は、図3に示すように、搬送路26に案内されて読取面42へ向かって下方へ搬送される。すなわち、該原稿は、搬送ローラ38と分離ローラ36の直下流側に配設されたピンチローラ39とによってニップされ、該搬送ローラ38の回転力を受けて読取面42へ搬送される。原稿の先端が読取面42へ至るまでの搬送路26において、リードセンサ56により原稿の先端が検出され、搬送ローラ38に回転力を入力する搬送モータ52のエンコーダ量又はステップ数により、該原稿の先端が読取面42に到達したことが判断される。そして、原稿の先端が読取面42に到達すれば、CISユニット43が、読取面42を通過する原稿の画像読取りを開始する。
上記原稿は、CISユニット43により画像読取りが行われながら更に搬送され、原稿の先端側が、搬送ローラ38と読取面42の直下流のピンチローラ39とでニップされ、原稿の後端側が、搬送ローラ38と読取面42の直上流のピンチローラ39とでニップされた状態で、搬送ローラ38の回転力を受けて、湾曲部32に沿って反転するようにしてUターン搬送される。この間も、CISユニット43は、読取面42上を通過する原稿の画像を読み取る。そして、上記リードセンサ56が原稿の後端を検出し、搬送ローラ38に回転力を入力する搬送モータ52のエンコーダ量又はステップ数により、該原稿の後端が読取面42に到達したことが判断される。そして、原稿の後端が読取面42を通過すれば、CISユニット43による画像読取りが終了され、排紙シュート部33から排紙トレイ23へ原稿が排出される。
給紙トレイ22に載置されたすべての原稿を給紙し終えて、搬送モータ52が停止されると、吸入ローラ34も停止する。前述したように、吸入ローラ34を給紙方向へ回転している際には、クラッチギア67の係止部72に対して反時計回り側に係止片68が当接した係合状態であり、吸入ローラ34は該係合状態で停止する。したがって、係止片68は、1周クラッチ65の嵌合溝71が許容する空転範囲の給紙逆方向端に位置しているので、再び原稿を給紙トレイ22にセットする際に、吸入ローラ34が給紙方向へ、すなわち反時計回りに略1周分空転可能である。よって、前述と同様に、分離ローラ36及び分離ニップ片37に当接するまで吸入シュート部29に原稿の一端を挿入して、給紙トレイ22上に原稿をセットすることができる。
また、前述したように原稿が給紙トレイ22にセットされると、吸入ローラ34は、例えば図13に示すように、空転範囲の給紙逆方向端から給紙順方向へ空転した状態になる。したがって、その位置から給紙逆方向へ空転することも可能である。例えば、使用者が原稿を給紙トレイ22に一旦セットしたが、原稿を追加する目的等のために、該原稿を吸入シュート部29から引き抜くことがある。このような場合に、原稿の引き抜きに伴って、吸入ローラ34が給紙逆方向へ空転するので、使用者は殆ど抵抗を感じることなく原稿を吸入シュート部29から引き抜くことができる。
また、搬送路26において発生した紙詰まりを解消したり、ADF5の内部のメンテナンスを行うために、ADFカバー28が開かれた際に、使用者が、吸入ローラ34に触って回転させてしまうことがある。図12に示したように、ADFカバー28を開姿勢とした状態では、ガイド板30と区画板31とが大きく離間されて、吸入シュート部29及び湾曲部32が開放され、また、吸入ローラ34と吸入ニップ片35とが大きく離間される。吸入ローラ34のローラ面は、ガイド板30から露出しており、該吸入ローラ34は、略1周分の空転が可能である。したがって、紙詰まりの解消やメンテナンス作業の際に、使用者が不意に吸入ローラ34に触るおそれがあり、そのような接触により吸入ローラ34は容易に空転する。
例えば、紙詰まりの解消やメンテナンス作業の際に、図14に示すように、係止片68が、クラッチギア67の係止部72に対して時計回り側から当接した係合状態、すなわち、1周クラッチ65の嵌合溝71が許容する空転範囲の給紙順方向端に位置した状態まで、吸入ローラ34が空転されたとする。仮に、この係合状態のまま、原稿を給紙トレイ22にセットするとすれば、吸入ローラ34が給紙方向へ空転することができないので、原稿が吸入ローラ34に当接した際に、原稿の挿入に抵抗感が生じ、使用者は、原稿の挿入が完了したと誤認するおそれがある。
このように、吸入ローラ34が空転された状態から、ADFカバー28を閉止すると、ADFカバー28とともにギア73が回転し、図10に示したように、ギア73とギア74とが噛合する。これにより、ADFカバー28の回転運動が、ギア73及びギア74を介して吸入ローラ34の軸70に伝達される。
ADFカバー28の閉止動作において、ギア73は軸76を中心として反時計回りに回転し、ギア73と噛合するギア74は、時計回りに回転する。したがって、軸70とともに吸入ローラ34も時計回り、すなわち給紙逆方向へ回転する。図14に示したように、係止片68の時計回り側には、係止部72が存在しないので、該係止片68は、クラッチギア67の嵌合溝71を摺動するようにして時計回りに回転する。
そして、ADFカバー28が閉姿勢となれば、係止片68は、クラッチギア67の係止部72に対して反時計回り側に当接した係合状態となる。したがって、係止片68は、1周クラッチ65の嵌合溝71が許容する空転範囲の給紙逆方向端に戻るので、ADFカバー28閉止後に原稿を給紙トレイ22にセットする際に、吸入ローラ34が給紙方向へ、すなわち反時計回りに略1周分空転可能である。よって、前述と同様に、分離ローラ36及び分離ニップ片37に当接するまで吸入シュート部29に原稿の一端を挿入して、給紙トレイ22上に原稿をセットすることができる。
ADFカバー28に設けられたギア73は、吸入ローラ34の軸70に設けられたギア74に対して、前述したように、1周クラッチ65の嵌合溝71が許容する空転範囲の給紙順方向端に位置した吸入ローラ34を、給紙逆方向端まで摺動させるだけの回転を与えるギア比とすることが好適である。また、紙詰まりの解消やメンテナンス作業の際に、吸入ローラ34が空転された量によっては、ADFカバー28が完全に閉姿勢となる前に、吸入ローラ34が空転範囲の給紙逆方向端へ達することがあるが、その場合には、トルクリミッタ75により、ギア74から吸入ローラ34への回転伝達が遮断される。したがって、吸入ローラ34を空転範囲の給紙逆方向端に位置せしめた状態で、ADFカバー28を閉姿勢まで回転することができる。
このように複合機1に実現された給紙装置によれば、給紙トレイ22にセットする原稿の先端を吸入シュート部29に挿入する際に、原稿の先端と当接する吸入ローラ34が所定範囲で空転するので、原稿先端が吸入ローラ34の配設位置を通過する際に使用者は殆ど抵抗を感じることがなく、原稿を挿入限界位置まで確実に挿入することができる。これにより、給紙トレイ22にセットされた原稿が、吸入ローラ34の回転により給紙方向へ確実に送り出され、原稿の給紙が確実になされる。
また、給紙トレイ22にセットした原稿を抵抗なく引き抜くことができ、その際に原稿を破損することがない。さらに、紙詰まりの解消等のためにADFカバー28が開放されて、不意に吸入ローラ34が空転されても、該吸入ローラ34は、ADFカバー28の閉止動作に連動して、1周クラッチ65が許容する空転範囲の給紙逆方向端へ戻るので、常に給紙トレイ22への原稿のセットが確実になされる。
以下、上記第1の実施の形態の変形例について説明する。
本変形例は、第1の実施の形態におけるギア73を変更したものであり、その他の構成は同一である。したがって、変更箇所の構成のみについて詳述する。
図15及び図16に示すように、ADFカバー28には、上記ギア73に代えてギア78が設けられている。該ギア78は、ADFカバー28の軸受け76Aと同軸に設けられた扇形状のものであって、外周に軸線と平行な歯が形成された平歯車である。該ギア78は、ADFカバー28の一端側の軸受け76Aに、ADFカバー28から略下方へ突出するようにして一体に形成されており、ADFカバー28の開閉とともに該軸受け76Aと嵌合する軸76を中心に回転する。
上記ギア78は、図15に示すように、ADF本体27に対してADFカバー28が閉じた閉姿勢では、ギア74とは噛合しないが、図16に示すように、ADF本体27に対してADFカバー28が完全に開いた開姿勢では、ギア74と噛合する扇形状となっている。勿論、ADFカバー28の開閉動作の途中においても、ギア73とギア74とは噛合している。したがって、ADFカバー28を開姿勢としても、吸入ローラ34の軸70とADFカバー28とは連動した状態にある。
これにより、紙詰まりの解消やメンテナンス作業のために、ADFカバー28が開かれ、使用者が、吸入ローラ34に触ったとしても、該吸入ローラ34を回転させるには、ADFカバー28をともに回転させるか、トルクリミッタ75が滑り出す負荷を与える必要がある。したがって、使用者が不意に吸入ローラ34に触った程度の接触では、吸入ローラ34は回転せず、ADFカバー28を閉止すれば、吸入ローラ34は、1周クラッチ65が許容する空転範囲の給紙逆方向端に位置し、前述したように、その後の給紙トレイ22への原稿のセットが確実になされる。
(第2の実施の形態)
以下、本発明の第2の実施の形態について説明する。
第2の実施の形態は、第1の実施の形態における運動伝達機構の構成を変更したものであり、その他の構成は同一である。したがって、変更箇所の構成のみについて詳述する。
本実施の形態に係る運動伝達機構は、第1の実施の形態におけるギア73、ギア74及びトルクリミッタ75による運動伝達機構を摩擦伝導に変更したものである。詳細には、本運動伝達機構は、開姿勢の上記ADFカバー28を閉姿勢へ姿勢変化させる閉止動作に基づいて、上記吸入ローラ34を1周クラッチ65が許容する空転範囲の給紙逆方向端へ回転させるものであり、図17に示すように、ADFカバー28に設けられた扇形状車79(第1の運動伝達部材)と、吸入ローラ34の軸70に設けられた円筒車80(第2の運動伝達部材)とから構成されている。
上記扇形状車79は、ADFカバー28の軸受け76Aと同軸に設けられた扇形状の平車であり、外周面が摩擦伝導面である。該扇形状車79は、ADFカバー28の一端側の軸受け76Aに、ADFカバー28から略下方へ突出するようにして一体に形成されており、ADFカバー28の開閉とともに該軸受け76Aと嵌合する軸76を中心に回転する。
上記円筒車80は、吸入ローラ34の軸70の延出端に、上記扇形状車79と押圧接触可能に設けられている。該ギア74は、円筒形状の車の外周面が摩擦伝導面とされたものであり、軸70との嵌合部分がD形状に形成されて軸70と一体に回るようになっている。
前述したように、搬送路26において発生した紙詰まりを解消したり、ADF5の内部のメンテナンスを行うために、ADFカバー28が開かれた際に、使用者が、吸入ローラ34に触って回転させてしまうことがあるが、吸入ローラ34が空転された状態から、ADFカバー28を閉止すると、ADFカバー28とともに扇形状車79が回転し、図17に示したように、扇形状車79と円筒車80とが押圧接触する。これにより、ADFカバー28の回転運動が、扇形状車79及び円筒車80を介して吸入ローラ34の軸70に摩擦伝導される。
ADFカバー28の閉止動作において、扇形状車79は軸76を中心として反時計回りに回転し、該扇形状車79と押圧接触する円筒車80は、時計回りに回転する。したがって、軸70とともに吸入ローラ34も時計回り、すなわち給紙逆方向へ回転する。そして、ADFカバー28が閉姿勢となれば、図7に示したように、吸入ローラ34は1周クラッチ65の嵌合溝71が許容する空転範囲の給紙逆方向端に戻るので、ADFカバー28閉止後に原稿を給紙トレイ22にセットする際に、吸入ローラ34が給紙方向へ、すなわち反時計回りに略1周分空転可能である。よって、前述と同様に、分離ローラ36及び分離ニップ片37に当接するまで吸入シュート部29に原稿の一端を挿入して、給紙トレイ22上に原稿をセットすることができる。
また、紙詰まりの解消やメンテナンス作業の際に、吸入ローラ34が空転された量によっては、ADFカバー28が完全に閉姿勢となる前に、吸入ローラ34が空転範囲の給紙逆方向端へ達することがある。吸入ローラ34にはクラッチギア67を介して駆動機構の負荷があるので、該負荷により、扇形状車79と円筒車80とが滑って、摩擦伝導が遮断される。したがって、吸入ローラ34を空転範囲の給紙逆方向端に位置せしめた状態で、ADFカバー28を閉姿勢まで回転することができる。
このように第2の実施の形態に係る運動伝達機構によっても、上記第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。また、図には示していないが、上記第1の実施の形態の変形例と同様に、上記扇形状車79を、ADF本体27に対してADFカバー28が閉じた閉姿勢では、円筒車80と押圧接触せず、ADF本体27に対してADFカバー28が完全に開いた開姿勢では、円筒車80と押圧接触する扇形状としてもよい。
これによれば、紙詰まりの解消やメンテナンス作業のために、ADFカバー28が開かれ、使用者が、吸入ローラ34に触ったとしても、該吸入ローラ34を回転させるには、ADFカバー28をともに回転させるか、扇形状車79と円筒車80とが滑り出す負荷を与える必要がある。したがって、使用者が不意に吸入ローラ34に触った程度の接触では、吸入ローラ34は回転せず、ADFカバー28を閉止すれば、吸入ローラ34は、1周クラッチ65が許容する空転範囲の給紙逆方向端に位置し、前述したように、その後の給紙トレイ22への原稿のセットが確実になされる。
(第3の実施の形態)
以下、本発明の第3の実施の形態について説明する。
第3の実施の形態は、第1の実施の形態において運動伝達機構で実現されている戻し手段を、ソフトウェアとして実現したものであり、その他の構成は同一である。したがって、変更箇所の構成のみについて詳述する。
前述したようにADFカバー28は、ADF本体27に対して開閉可能となっており、該ADFカバー28の開閉は、図5に示したように、カバーセンサ59により検知される。カバーセンサ59は、例えば、ADFカバー28に設けられたフィラーを検知する光学センサやマグネットセンサ等の公知のものが採用できる。
本実施の形態に係る戻し手段は、制御部45により実現され、ADFカバー28が閉止された際に、吸入ローラ34を、1周クラッチ65が許容する空転範囲の給紙逆方向端へ位置するように、駆動機構の回転制御をするものである。
図18は、制御部45による駆動機構の制御を示すフローチャートである。スキャナ部2のADF5は、給紙トレイ22上に原稿がない状態であり、原稿のセットと画像読取りのスタート待ちの状態にある。
この状態から、搬送路26において発生した紙詰まりを解消したり、ADF5の内部のメンテナンスを行うために、ADFカバー28が開かれると、カバーセンサ59がADFカバー28が開姿勢となったことを検知する(S1)。使用者は、ADFカバー28を開姿勢にした状態で、ジャム処理やメンテナンスを行う。この際にも、吸入ローラ34は1周クラッチ65が許容する範囲で空転可能なので、使用者が不意に吸入ローラ34に触って、例えば、図14に示したように、1周クラッチ65の嵌合溝71が許容する空転範囲の給紙順方向端に位置した状態まで、吸入ローラ34が空転されることがある。
このように、吸入ローラ34が空転された状態から、ADFカバー28を閉止すると、カバーセンサ59がADFカバー28が閉姿勢となったことを検知する(S2)。制御部45は、この検知信号を受けて、駆動回路53を介して搬送モータ52を所定時間正転させる(S3)。ここで、搬送モータ52の正転方向は吸入ローラ34及び分離ローラ36を給紙順方向へ回転させる方向である。
搬送モータ52から分離ローラ36の軸62に駆動入力されると、該軸62と共にギア64が給紙順方向、すなわち図14における反時計回りに回転する。そして、該ギア64と噛合する駆動伝達ギア66が時計回りに回転し、該駆動伝達ギア66と噛合するクラッチギア67が反時計回りに回転する。図に示したように、クラッチギア67の係止部72の反時計回り側には、係止片68が存在しないので、クラッチギア67は、係止片68を嵌合溝71に摺動させるようにして吸入ローラ34の軸70に対して回転する。すなわち、吸入ローラ34が静止した状態で、クラッチギア67のみが反時計回りに回転する。
そして、クラッチギア67が略1周分回転すれば、図7に示したように、該クラッチギア67の係止部72が、係止片68に対して時計回り側に当接した係合状態となる。すなわち、係止片68が、1周クラッチ65の嵌合溝71が許容する空転範囲の給紙逆方向端に戻る。さらに、搬送モータ52が回転されることにより、係止部72から係止片68へ駆動伝達されて、吸入ローラ34が反時計回り、すなわち給紙順方向へ回転する。
このように、搬送モータ52が、吸入ローラ34が1周クラッチ65の嵌合溝71が許容する空転範囲の給紙逆方向端に戻るに十分な時間だけ正転された後、制御部45は搬送モータ52の駆動を停止する(S4)。そして、その後の原稿セット及び画像読取りスタートの待機状態に復帰する。
これにより、ADFカバー28閉止後に原稿を給紙トレイ22にセットする際に、吸入ローラ34が給紙方向へ、すなわち反時計回りに略1周分空転可能である。よって、前述と同様に、分離ローラ36及び分離ニップ片37に当接するまで吸入シュート部29に原稿の一端を挿入して、給紙トレイ22上に原稿をセットすることができる。
なお、上記各実施の形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。