JP4482800B2 - 衝撃吸収式ステアリング装置 - Google Patents
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そこで、衝撃吸収荷重を変更するための変更部材を、火薬等の爆発手段によって一定の方向に素早く移動させることが考えられる。しかしながら、この場合、爆発手段に加え、爆発力を変更部材に対して一定の方向に伝えるための部材を設ける必要があり、構造が複雑となり、コストが高くつく傾向にある。
また、本発明において、上記衝撃吸収部材としての第1のステアリングコラムチューブと、第1のステアリングコラムチューブに相対摺動可能に嵌合する第2のステアリングコラムチューブとを備える場合がある。この場合、第1のステアリングコラムチューブを衝撃吸収部材として兼用でき、よりコスト安価である。
また、本発明において、上記電磁ソレノイドの操作軸は直動形の操作軸を含み、慣性部材は操作軸と一体に設けられる場合がある。この場合、電磁ソレノイドの操作力を慣性部材にダイレクトに伝達することができる。また、操作軸を例えば車両の前方向に沿って変位可能に配置することで、操作軸の変位方向と慣性の作用する方向とを一致させることができる。その結果、慣性部材をより素早く変位させることができる。
図1は、本発明の一実施の形態に係る衝撃吸収式ステアリング装置(以下では、単にステアリング装置ともいう)の模式的な一部断面側面図である。図1を参照して、衝撃吸収式ステアリング装置1は、ステアリングシャフト2を備えている。
ステアリングシャフト2は、車体(図示せず)に対して斜めに取り付けられており、車体後方に向かうに連れて上側に延びている。ステアリングシャフト2のアッパー側端部には、ステアリングホイール等の操舵部材3が一体回転可能に連結されている。ステアリングシャフト2のロアー側端部には、自在継手4を介して中間軸5の一端部が連結されている。中間軸5の他端部には、自在継手6を介してピニオン軸7が連結されている。ピニオン軸7の先端にはピニオン8が形成されており、このピニオン8と噛み合うラック9を有するラック軸10が車両の左右方向に延びている。
操舵部材3が回転操作されてステアリングシャフト2、中間軸5およびピニオン軸7が回転されると、この回転がピニオン8およびラック9によって、車両の左右方向に沿うラック軸10の直線移動に変換され、転舵輪が転舵される。
具体的には、図1のI−I線に沿う断面図である図3に示すように、ロアー固定ブラケット16および支持ブラケット14はそれぞれ、少なくとも一部が断面U字状に形成されており、ロアー固定ブラケット16の底板部17と支持ブラケット14の天板部18が上下方向に互いに対向している。支持ブラケット14の天板部18には、係止片19が例えば2つ取り付けられている。各係止片19は、上記所定の係止力を越える衝撃力が与えられると破壊され、支持ブラケット14との係合が解除されるようになっている。
図1および図3を参照して、本ステアリング装置1には、二次衝突時のコラムチューブ11の移動に関連して衝撃を吸収する衝撃吸収機構38が備えられている。この衝撃吸収機構38は、二次衝突時のコラムチューブ11の移動に移動抵抗を与えるための衝撃吸収部材としての板部材22と、板部材22を挟んで車両の前後に並ぶ固定部としての一対の扱き部材25,26と、直動形の電磁ソレノイド34と、電磁ソレノイド34を駆動制御するための制御部39とを備えている。
一対の扱き部材25,26は、二次衝突時に板部材22を扱き変形させるためのものであり、それぞれ板状に形成されている。
一対の扱き部材25,26にはそれぞれ挿通孔29,30が形成されている。また、板部材22には、挿通孔31が形成されている。通常時において、これら挿通孔29,31,30は、車両の前後方向FR沿って並んでおり、相対向している。
また、板部材22には、挿通孔31と連なり板部材22の後方に向けて延びる長尺の溝32が形成されている。この溝32の幅は、挿通孔31の直径よりも小さくされている。
操作軸35は、例えば丸棒に形成されており、電磁石36に励磁電流が供給されて発生する磁気力によって移動されるようになっている。操作軸35の軸線L1は、車両の前後方向FRに沿って延びている。第1の位置A1の操作軸35は、ハウジング37から後方X2に突出しており、前方X1、すなわち慣性の作用する方向に向けて移動可能となっている。これにより、操作軸35は、一次衝突時に操作軸35自身を第2の位置A2側へ付勢するための慣性力を生じる。なお、操作軸35は、側方から見て上下方向ULと交差する方向に変位可能とされていればよい。
操作軸35の先端部には、操作軸35が不用意に第1の位置A1(初期位置)から移動することを防止するためのピン72が設けられている。このピン72は、例えば中空の金属または樹脂部材により形成されており、操作軸35の先端の挿通孔に嵌合保持されている。
電磁ソレノイド34に関連して、マイクロプロセッサを含む制御手段としての制御部39(ECU)が設けられている。この制御部39は、一次衝突時の加速度等の車両関連情報に基づいて電磁ソレノイド34を駆動制御し、二次衝突時の衝撃吸収荷重を変更できるようにしている。
また、加速度センサ(図示せず)等のセンサが制御部39に接続されており、この加速度センサによって一次衝突時の加速度が検出されると、制御部39がこの加速度等に基づいて、衝撃吸収荷重の目標値を算出するようになっている。
一方、例えば比較的低速で走行中に一次衝突して低い加速度が検出され、算出した衝撃吸収荷重の目標値が所定の値未満である場合、制御部39は、電磁ソレノイド34の電磁石36に供給する励磁電流の方向を逆転し、操作軸35を第2の位置A2(図5参照)に移動させる。
図1を参照して、車両の走行中に一次衝突が発生すると、制御部39が衝撃吸収荷重を算出する。そして、算出した衝撃吸収荷重の目標値が所定の値以上であれば、制御部39は、電磁ソレノイド34の電磁石36への通電状態をそのまま維持し、操作軸35は第1の位置A1に保持される。
また、板部材22は、電磁ソレノイド34の操作軸35に対して、車両前下方に移動する(白抜き矢符参照)。これにより、操作軸35は、板部材22の挿通孔31の周面によって下向きに押圧され、一対の扱き部材25,26に両持ち支持される。このとき操作軸35は、挿通孔31から溝32に相対的に移動(図6(a)および図6(b)参照)し、溝32の周縁を塑性変形させる。
一方、図5に示すように、一次衝突に伴い制御部39が算出した衝撃吸収荷重の目標値が所定の値未満である場合、制御部39は、電磁ソレノイド34の電磁石36に供給する励磁電流の方向を逆転し、操作軸35を第2の位置A2に変位させる。このとき電磁石36に供給される励磁電流は、定格値よりも大きくなるようにされている。
この場合、衝撃吸収荷重は、板部材22が一対の扱き部材25,26によって塑性変形されることにより発生する。
さらに、電磁ソレノイド34の操作軸35自身を慣性部材として用いることで、電磁ソレノイド34の電磁石36の電磁力を慣性部材にダイレクトに伝達することができる。また、操作軸35を板部材22の前方X1に変位可能にすることで、操作軸35の変位方向と慣性の作用する方向とを一致させることができる。その結果、操作軸35をより素早く変位させることができる。
図7は、本発明の他の実施の形態に係るステアリング装置40の要部の一部断面側面図である。図8は、ステアリング装置40の一部分解斜視図である。なお、本実施の形態では、図1に示す実施の形態と異なる点について主に説明し、同様の構成には図に同一の符号を付してその説明を省略する。
具体的には、通常時において、板部材22の一部分がコラムチューブ11と平行に延びており、この部分に挿通孔31および溝32が形成されている。
通常時において、板部材22の挿通孔31は、一対の扱き部材25,26の挿通孔29,30とそれぞれ並んで相対向している。
図7、図9(a)および図9(b)を参照して、電磁ソレノイド41は、衝撃吸収荷重を増大するための第1の位置A3と衝撃吸収荷重を減少するための第2の位置A4とに回転変位可能な操作軸45と、操作軸45に操作力としての磁気力を付与するための電磁石46と、電磁石46を収容するハウジング47とを備えている。
側方から見て、操作軸45の軸線L2は、車両の前後方向FRに沿う直線L3と交差する方向W、すなわち、一時衝突時に慣性の作用する方向と交差する方向に延びている。この操作軸45は、電磁石46に励磁電流が供給されて発生する磁気力によって、第1の位置A3と第2の位置A4との間で回転可能となっている。
操作軸45の先端部がハウジング47のフランジ部48から突出し、常時挿通孔29,31,30に遊嵌されている。
以上が本ステアリング装置40の概略構成である。次に、本ステアリング装置40の動作について説明する。
一次衝突に伴い制御部が算出した衝撃吸収荷重の目標値が所定の値以上である場合、制御部は、電磁ソレノイド41の電磁石46への通電状態をそのまま維持し、操作軸45は第1の位置A3に保持される。
このように、本実施の形態によれば、電磁ソレノイド41の電磁石46の磁気力に加えて一次衝突時の慣性部材50の慣性力を用いることで、操作軸45および慣性部材50を素早く変位でき、極めて短時間のうちに衝撃吸収荷重を変更することができる。その結果、二次衝突が発生するまでの極めて短時間のうちに、衝撃吸収荷重を変更することができる。しかも、慣性を用いる簡易な構成なので、コスト安価である。
図10を参照して、本ステアリング装置55は、アッパーシャフト56とロアーシャフト57とを備えている。アッパーシャフト56は、操舵部材3に一体回転可能に連結された中空軸からなる。ロアーシャフト57は、アッパーシャフト56と同軸上に一体回転可能に連結されている。ロアーシャフト57の端部に自在継手4を介して中間軸5が連結されている。アッパーシャフト56およびロアーシャフト57は、互いにスプライン嵌合されてステアリングシャフト58を形成している。ステアリングシャフト58は、ステアリングコラム59によって回動自在に支持されている。
アッパーコラムチューブ60は、主にアッパーシャフト56を収容し、図示しない軸受を介してこのアッパーシャフト56を回動自在に支持している。ロアーコラムチューブ61は、主にロアーシャフト57を収容し、図示しない軸受を介してこのロアーシャフト57を回動自在に支持している。
ロアーコラムチューブ61には、ロアー固定ブラケット62が溶接により固定されている。このロアー固定ブラケット62は、車体側部材15に固定されており、車体に対して移動不能となっている。
本実施の形態では、アッパーコラムチューブ60、ロアーコラムチューブ61、電磁ソレノイド34および制御部39によって衝撃吸収機構77が形成されている。
通常時において、これら挿通孔64,65は、前後方向FRに並んで相対向している。また、ロアーコラムチューブ61には、挿通孔65と連なり第1の長手方向S1に延びる長尺の溝66が形成されている。溝66の幅W6は、挿通孔65の直径よりも小さくされている。
電磁ソレノイド34の操作軸35は、第1の位置A3において、ロアーコラムチューブ61に衝撃吸収可能に係合するようになっている。
図10を参照して、車両の走行時に一時衝突が発生すると、制御部39が衝撃吸収荷重を算出する。そして、算出した衝撃吸収荷重の目標値が所定の値以上であれば、制御部39は、電磁ソレノイド34の電磁石36への通電状態をそのまま維持し、操作軸35は第1の位置A1に保持される。
したがって、この場合、衝撃吸収荷重は、アッパーコラムチューブ60のかしめ部63のかしめ突起の摺動抵抗に加え、ロアーコラムチューブ61の溝66の周縁が電磁ソレノイド34の操作軸35によって塑性変形されることにより発生する。
これにより、操作軸35は、電磁石36の磁気力、および一次衝突時の操作軸35の慣性力によって極めて高速で移動し、二次衝突が発生する前に、第2の位置A2に到達する。なお、ピン72は、操作軸35の第2の位置A2への移動に伴い破断される。この状態で二次衝突が発生すると、アッパーコラムチューブ60は、ロアーコラムチューブ61に対して第1の長手方向S1に移動する。この場合、衝撃吸収荷重は、アッパーコラムチューブ60のかしめ部63のかしめ突起の摺動抵抗により発生する。
また、電磁ソレノイド34の操作軸35自身を慣性部材として用いることで、電磁ソレノイド34の電磁石36の電磁力を慣性部材にダイレクトに伝達することができる。また、操作軸35を挿通孔64の前方X1に向けて移動可能に配置することで、操作軸35の変位方向と慣性の作用する方向とを一致させることができる。その結果、操作軸35をより素早く変位させることができる。
図14および図15を参照して、本実施の形態の特徴とするところは、アッパーコラムチューブ60、ロアーコラムチューブ61、回転形の電磁ソレノイド41および制御部39によって、衝撃吸収機構79が形成されている点にある。
電磁ソレノイド41は、保持ブラケット67を介してアッパーコラムチューブ60に取り付けられている。保持ブラケット67は、ステアリングコラム59の軸線と直交する方向に延びている。
図14を参照して、一次衝突に伴い制御部39が算出した衝撃吸収荷重の目標値が所定の値以上である場合、制御部39は、電磁ソレノイド41の電磁石46への通電状態をそのまま維持し、図16(b)に示すように、操作軸45は第1の位置A3に保持される。
以上説明したように、本実施の形態によれば、電磁ソレノイド41の電磁石46の磁気力に加えて慣性部材50の一次衝突時の慣性力を用いることで、操作軸45および慣性部材50を素早く変位でき、極めて短時間のうちに衝撃吸収荷重を変更することができる。その結果、一次衝突による衝撃を検出してから二次衝突が発生するまでの極めて短時間のうちに衝撃吸収荷重を変更することができる。しかも、慣性を用いる簡易な構成なので、コスト安価である。
さらに、電磁ソレノイド41の操作軸45に慣性部材50を一体に設けているので、電磁石46の操作力を慣性部材50にダイレクトに伝達することができる。また、慣性部材50の重心Gをその回転中心Cからオフセットしているので、慣性部材50の重心Gに作用する慣性が操作軸45を回転させるモーメントを発生する。その結果、慣性部材50をより素早く変位させることができる。
例えば、図1および図7に示す各実施の形態において、対応する電磁ソレノイド34,41のハウジング37,47を、保持ブラケット67を介して一方の扱き部材25に固定してもよい。さらに、対応する電磁ソレノイド34,41のハウジング37,47を、他方の扱き部材26に固定してもよい。
さらに、図7および図14に示す各実施の形態において、電磁ソレノイド41の操作軸45と慣性部材50とを単一の部材により一体に形成してもよい。
また、図10および図14に示す各実施の形態において、慣性部材50に貫通孔54を設けることで回転中心Cと重心Gとをオフセットさせる構成を説明したが、これに限らず、例えば図17に示すように、慣性部材50の外周の一部を切欠くことで、回転中心Cと重心Gとをオフセットさせるようにしてもよい。さらに、対応する電磁ソレノイド34,41のハウジング37,47を、保持ブラケット67を介さずに直接アッパーコラムチューブ60に固定してもよい。また、対応する電磁ソレノイド34,41のハウジング37,47を、ロアーコラムチューブ61に固定してもよい。この場合、アッパーコラムチューブ60には、挿通孔64と連なり第2の長手方向S2に延びる溝が形成される。
11 コラムチューブ(可動部)
16 ロアー固定ブラケット(固定部)
22 板部材(衝撃吸収部材)
32 溝
34 電磁ソレノイド
35 操作軸(慣性部材)
38 衝撃吸収機構
40 ステアリング装置
41 電磁ソレノイド
42 衝撃吸収機構
45 操作軸
50 慣性部材
55 ステアリング装置
60 アッパーコラムチューブ(可動部、衝撃吸収部材、第1のステアリングコラムチューブ)
61 ロアーコラムチューブ(固定部、第2のステアリングコラムチューブ)
77 衝撃吸収機構
78 ステアリング装置
79 衝撃吸収機構
A1,A3 第1の位置
A2,A4 第2の位置
Claims (5)
- 二次衝突の衝撃により移動する可動部および移動不能な固定部と、
二次衝突時の可動部の移動に関連して衝撃を吸収する衝撃吸収機構とを備え、
上記衝撃吸収機構は、衝撃吸収荷重を増大するための第1の位置と減少するための第2の位置とに変位可能な操作軸を含む電磁ソレノイドと、
車両の一次衝突時の車両関連情報に基づいて上記電磁ソレノイドを制御する制御部と、
電磁ソレノイドの操作軸と一体変位可能に設けられ、一次衝突時に操作軸を第1または第2の位置へ付勢するための慣性力を生じる慣性部材とを備え、
一次衝突時、上記操作軸は、上記電磁ソレノイドの磁力と一次衝突の際の慣性部材の慣性力とによって変位可能であることを特徴とする衝撃吸収式ステアリング装置。 - 請求項1において、上記衝撃吸収機構は、二次衝突時に慣性部材と相対移動可能な溝を含む衝撃吸収部材を備え、二次衝突時に第1の位置の慣性部材が溝の周縁を塑性変形させることを特徴とする衝撃吸収式ステアリング装置。
- 請求項2において、上記衝撃吸収部材としての第1のステアリングコラムチューブと、第1のステアリングコラムチューブに相対摺動可能に嵌合する第2のステアリングコラムチューブとを備えることを特徴とする衝撃吸収式ステアリング装置。
- 請求項1において、上記衝撃吸収機構は、上記可動部に固定される衝撃吸収部材としての板部材と、板部材を扱くための扱き部材とを含み、
上記板部材は、二次衝突時に操作軸と相対移動可能な溝を含み、
二次衝突時に上記操作軸が第1の位置にあるとき、可動部および板部材の移動に伴って、板部材は、操作軸によって溝の周縁が塑性変形され、且つ扱き部材によって扱かれることで変形抵抗を生じ、
二次衝突時に上記操作軸が第2の位置にあるとき、可動部および板部材の移動に伴って、板部材は、操作軸によっては溝の周縁を塑性変形されず、扱き部材によって扱かれることで変形抵抗を生じることを特徴とする衝撃吸収式ステアリング装置。 - 請求項1ないし4のいずれかにおいて、上記電磁ソレノイドの操作軸は直動形の操作軸を含み、慣性部材は操作軸と一体に設けられることを特徴とする衝撃吸収式ステアリング装置。
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