以下、図面に基づいて本発明の実施の形態による無線基地局を採用したTDMA方式の移動通信システムについて説明する。図1は本実施の形態に係る無線基地局を採用したTDMA方式の移動通信システム内部の概略構成を示すブロック図である。尚、図16に示すTDMA方式の移動通信システム200と同一のものには同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。
図1に示すTDMA方式の移動通信システム100は、複数の一般型無線基地局1と、複数のIP接続型無線基地局10と、複数のディジタルコードレス親機2と、ISDN回線3を通じて一般型無線基地局1と通信接続すると共に、LAN回線6を通じてIP接続型無線基地局10と通信接続すると共に、ディジタルコードレス親機2と通信接続する制御装置を備えた構内交換機4と、一般型無線基地局1及びIP接続型無線基地局10に無線接続する子機5Aと、ディジタルコードレス親機2に無線接続する子機5Bとを有している。
構内交換機4は、LAN回線6にスイッチングHUB7を介して複数のIP接続型無線基地局10が通信接続されているものとする。
これら一般型無線基地局1及びIP接続型無線基地局10は、ARIB標準規格であるRCR STD−28標準規格に基づいて無線区間での呼制御手順を行うため、子機5Aに対して、同一の無線通信方式で通話及びデータ通信等のサービスを提供することができるものである。
つまり、子機5Aでは、一般型無線基地局1及びIP接続型無線基地局10を識別することなく、同一システム内に配置された任意の一般型無線基地局1やIP接続型無線基地局10との通信が可能となる。
図2はIP接続型無線基地局10内部の概略構成を示すブロック図である。
図2に示すIP接続型無線基地局10は、無線機能ブロック20と、LAN機能ブロック30とを有している。
無線機能ブロック20は、電波を送受信する2本のアンテナ20Aと、これら2本のアンテナ20Aを切替えるアンテナ切替部21と、電波を送信する送信部22と、電波を受信する受信部23と、送信部22及び受信部23で使用する周波数を生成するシンセサイザ部24と、データを変調又は復調するモデム部25と、TDMA−TDDフレームに変換するTDMA−TDD処理部26と、無線機能ブロック20に関わる様々な情報を報知するLCDやLED等の情報報知部27と、無線機能ブロック20に関わる様々な内容を記憶する無線機能メモリ部28と、この無線機能ブロック20全体を制御する無線側CPU29とを有している。
LAN機能ブロック30は、無線機能ブロック20とのインタフェースを司る無線インタフェース部31と、無線側及びLAN側双方で受信した音声データのパケット処理を施すDSP32と、32kADPCM音声データの圧縮・伸長を行うADPCMコーデック33と、LAN機能ブロック30に関わる様々な情報を記憶するLAN機能メモリ部34と、LAN回線6と通信接続するLANインタフェース機能を司ると共に、LAN機能ブロック30を制御するLAN側CPU35と、無線機能ブロック20及びLAN機能ブロック30双方に給電を行う電源部36とを有している。
まずは、本実施の形態を示すTDMA方式の移動通信システム100の発明ポイントについて説明する。図3は本実施の形態を示すTDMA方式の移動通信システム100に関わる発明ポイントの内容を端的に示す説明図である。
まず、本発明のポイントは、一般型無線基地局1、IP接続型無線基地局10及びディジタルコードレス親機2同士の無線区間での同期を確立する点にある。例えば一般型無線基地局1を基準局とし、IP接続型無線基地局10やディジタルコードレス親機2は、この基準局の電波送出タイミング(TDMA−TDDフレームの送出タイミング)に自局の電波送出タイミング(TDMA−TDDフレームの送出タイミング)を順次合わせることで、これら一般型無線基地局1、IP接続型無線基地局10及びディジタルコードレス親機2同士の無線区間での同期を確立するものである。
では、図3を用いてIP接続型無線基地局10(10A,10B)が基準局となる一般型無線基地局1Aに同期する場合を例にあげて説明する。
IP接続型無線基地局10Aは、基準局1Aからの電波を受信し、この基準局1Aの電波送出タイミングに自局10Aの電波送出タイミングを合わせ、自局10Aの電波を送出する。
他のIP接続型無線基地局10Bは、IP接続型無線基地局10Aの電波を受信し、このIP接続型無線基地局10Aの電波送出タイミングに自局10Bの電波送出タイミングを合わせ、自局10Bの電波を送出する。このように基準局1Aの電波送出タイミングに自局の電波送出タイミングを順次合わせこむことで、一般型無線基地局1、IP接続型無線基地局10やディジタルコードレス親機2間の無線区間での同期を確保することができる。
尚、無線同期の基準となる基準局を一般型無線基地局1とすることで、同一システム内に一般型無線基地局1が複数台存在したとしても、この一般型無線基地局1が構内交換機4からの同期信号にタイミングを合わせて電波を送出するようにしたので、どの一般型無線基地局1の電波送出タイミングに合わせこんだとしても、同じタイミングが得られる為、問題はない。
また、他の無線基地局と直接無線エリアが重ならない単独の配置となるIP接続型無線基地局10Cのような場合は、後述する動作モード(自走モード)の設定により、任意の電波送出タイミングで電波送出を行う場合もあり、非同期状態で運用することも可能である。
また、一般型無線基地局1A及びIP接続型無線基地局10A間の同期が確立したとしても、実際には同期信号として受信した電波はIP接続型無線基地局10が高精度のタイミングクロックを使用しているものの、その内蔵回路のハードウェアで一定範囲内のズレが生じる。
このようなずれが、例えば基準局となる一般型無線基地局1Aと同期する側のIP接続型無線基地局10Aにおいて双方で発生した場合、例えば一般型無線基地局1AのTDMA−TDDフレームとIP接続型無線基地局10AのTDMA−TDDフレームとのタイミングずれが時間軸上で時間の経過とともに発生することになる。
そこで、このような事態に対処すべく、無線同期による安定運用を確保するために、どの無線基地局に同期するのが最も安定した運用状態を確保できるか、またシステム全体で安定した同期状態となる同期制御に関する手順や、システムの稼動開始後も継続して同期状態を保持するような制御が必要となる。
さらに、運用中の同期先無線基地局の故障や、他システムの無線基地局や中継器等からの電波干渉により、同期状態が保持できなくなり、同期はずれを引き起こした時の処理も必要となる。そこで、この事態に対処するための具体的な処理内容について、以下に述べる。
まず、一般型無線基地局1、IP接続型無線基地局10及びディジタルコードレス親機2には、無線同期による安定運用を確保するために、同期先無線基地局の条件を定めた様々な無線同期条件を定めている。図4は無線同期条件の内容を端的に示す説明図である。
図4に示す無線同期条件は、同一システムグループ内の無線基地局(一般型無線基地局1、IP接続型無線基地局10及びディジタルコードレス親機2)であることを示す呼出符号と、無線基地局間の受信レベルが良好であるか否かを判断するための閾値レベルを示す受信レベル規定と、各無線基地局のグループ毎に付与された自局付加IDとの3つの条件である。
呼出符号は、呼出符号が一致すると、同一システムグループ内の無線基地局であることを認識するものである。
受信レベル規定は、無線基地局間の受信レベルが閾値レベル以上であると判定されると、同無線基地局との受信レベルが良好であると判断し、同期運用における周期的な電波受信の安定動作確保の条件となる。
自局付加IDは、無線基地局(一般型無線基地局1、ディジタルコードレス親機2及びIP接続型無線基地局10)の実サービスエリアにおける機器の配置を考慮し、各無線基地局のグループ毎に番号を付与し、例えば構内交換機4から安定した同期信号を得ることができる一般型無線基地局1には小さな番号を付し、さらに、一般型無線基地局1に近い配置順に、ディジタルコードレス親機2やIP接続型無線基地局10に番号を付与するものである。つまり、無線基地局の物理的な配置において、基準となる無線基地局を最も若番の付加IDとし、この無線基地局に同期する他のIP接続型無線基地局10は、それより大きい番号を付与し、無線環境が悪くなる、例えば基準となる無線基地局を中心に遠くに物理的に配置されたIP接続型無線基地局10ほど大きい番号の付加IDとなるように置局する。
自局の付加IDと無線基地局の付加IDとを比較し、自局の付加IDよりも無線基地局の付加IDが小さい場合に、同無線基地局を同期先無線基地局として選択するものである。
つまり、これら呼出符号、受信レベル規定及び自局付加ID等の無線同期条件を全て満たした場合に同期先無線基地局の条件を満たしたものと判断することができる。
さらに、これによりシステム起動時、基準となる無線基地局、例えば一般型無線基地局1を起点にして、この基準となる一般型無線基地局1の近傍に配置されたIP接続型無線基地局10から順に無線同期運用を開始し、遠端のIP接続型無線基地局10やディジタルコードレス親機2が最後に同期運用するといった起動順序となる。
結果、システム全体が、図3に示すような基準となる無線基地局を頂点としたピラミッド形の無線同期を形成するようにしたので、同期状態の把握が容易となる。また、同期外れが発生し、自走モードとなった場合でも、同期外れとなる以前のタイミングで電波を送出し続ける事で同期外れが発生した無線基地局を基準としている他の無線基地局は同期運用を継続でき、影響範囲を部分的にとどめることができる。さらに、該同期外れ状態の復旧もシステム全体に影響を与えること無く自律的且つ部分的に実施することができる。
また、一般型無線基地局1、IP接続型無線基地局10やディジタルコードレス親機2には、無線同期制御に関連する個別の設定情報がある。図5は無線同期制御に関わる個別の設定情報の内容を端的に示す説明図である。
図5に示す設定情報は、各一般型無線基地局1、IP接続型無線基地局10やディジタルコードレス親機2内部の内蔵ID−ROMの指定アドレスに格納されるものとする。
図5に示す設定情報は、自局に設定された動作モードと、自局の制御CH信号の送出位置を決定する棲み分け制御を開始する開始タイマ時間のパラメータとなる基準タイマ時間(タイマ単位)及び自局の付加IDの下位有効ビット数と、自局の後述する無線同期制御の保守機能である同期リトライ制御を実施する同期リトライ制御実施時刻とを有している。
動作モードとは、自局の任意の送出タイミングで電波出力する自走モードと、自局と基準となる無線基地局との無線同期を確立した後に電波出力する、すなわち他の無線基地局に無線同期をとる同期モードとがある。
基準タイマ時間は0〜60秒の間で設定され、付加IDの下位有効ビット数は00〜04の間に設定され、基準タイマ時間が30秒、下位有効ビット数が“4”の場合、棲み分け待合わせタイミング時間は30秒×4の120秒ということになる。尚、付加IDの下位有効ビット数はグループ番号に対応している。
同期リトライ制御実施時刻は00〜23時の間で設定され、例えば午前2時に設定されるのであれば、“02”ということになる。尚、この同期リトライ実施時刻が“00〜23”以外の値、例えばXXが設定された場合には、同期リトライ制御実施時刻は時刻が設定されていないものとする。
図4に示す無線同期条件や図5に示す設定情報は、例えば構内交換機4の制御装置に接続した保守端末からのコマンド操作で任意に設定変更可能である。
尚、請求項に記載の移動通信システムはTDMA方式の移動通信システム100、無線基地局は、一般型無線基地局1、IP接続型無線基地局10及びディジタルコードレス親機2に相当するものである。
次に本実施の形態を示すTDMA方式の移動通信システム100の動作について説明する。尚、本実施の形態で説明する無線同期制御に関して各フローチャートに示すソフト制御は、ARIBの第二世代コードレス電話システム標準規格(RCR STD−28標準規格)に制定されている自営標準システムの通信制御方式に準拠して行われている。また、説明の便宜上、基準局を一般型無線基地局1とし、この基準局に無線同期する無線基地局をIP接続型無線基地局10として説明する。
図6はIP接続型無線基地局10の無線同期制御処理に関わる処理動作を示すフローチャートである。
図6に示す無線同期制御処理は、IP接続型無線基地局10の電源を立ち上げ、このIP接続型無線基地局10が自走モードサービス若しくは同期モードサービスを運用するまでの各種処理は勿論のこと、これらサービス運用を安定化させるための保守機能を備えたものである。
図6においてIP接続型無線基地局10の無線側CPU29は、電源がONすると(ステップS11)、内蔵ソフトウェアの初期化処理を実行した後(ステップS12)、図5に示す内部ID−ROM(無線機能メモリ部28)に設定された動作モード、つまり自局の動作モード設定を確認する(ステップS13)。
無線側CPU29は、ステップS13にて動作モードが同期モード“01”であると判定されると、周辺の無線基地局を検索して、検出した同期先候補の無線基地局の制御CH信号の送出位置をスキャンする制御CH信号スキャン処理を実行する(ステップS14)。尚、この制御CH信号スキャン処理は、図7に示す制御CH送出周期のインターバル範囲で制御CH信号の送出位置を検出するための処理である。
無線側CPU29は、ステップS14にて制御CH信号スキャン処理中に、図7に示す制御CH送出周期のインターバル範囲内で、図4に示す無線同期条件を同時に満足する、同期先候補となる無線基地局の制御CH信号を検出したか否かを判定する(ステップS15)。
無線側CPU29は、ステップS15にて制御CH信号を検出したのでなければ、制御CH信号を検出するための検出実行時間Tx分を経過したか否かを判定する(ステップS16)。尚、検出実行時間Txは、制御CH信号スキャン処理が起動すると、計時動作を開始するものである。
無線側CPU29は、検出実行時間Tx分を経過したのであれば、検出実行時間Tx分以内に図4に示す無線同期条件を同時に満足する、同期先候補となる無線基地局の制御CH信号を検出することができなかったものと判断し、無線同期失敗とみなして、強制的に自走モードサービスでの運用を開始する(ステップS17)。尚、自走モードサービスでは、他の無線基地局との同期をとることなく、自局の任意の電波タイミングで自局の制御CH信号の送出位置を決定すべく、棲み分け制御処理を実行することで、自走モードでのサービス運用を開始するものである。
また、無線側CPU29は、ステップS16にて検出実行時間Tx分を経過したのでなければ、インターバル範囲内で同期先候補の無線基地局の制御CH信号を検出すべく、ステップS15に移行する。
無線側CPU29は、ステップS15にて同期先候補となる無線基地局の制御CH信号の送出位置を検出したのであれば、この同期先候補の無線基地局の制御CH信号の送出位置に自局の制御CH信号の送出位置を合わせる制御CH位置合わせ処理を実行する(ステップS18)。尚、この制御CH位置合わせ処理は、同期先候補の無線基地局のTDMA−TDDフレームと自局のTDMA−TDDフレームとのタイミングを合わせる処理である。
無線側CPU29は、ステップS18にて同期先候補の無線基地局と自局の制御CH信号の送出位置を合わせた後、規定周期毎に同期先の制御CH信号との時間的なずれ量を測定し、ビット単位の基本ずれ量データとして基本ずれ量累積用カウンタに積算する基本ずれ量測定処理を実行する(ステップS19)。
無線側CPU29は、ステップS14の制御CH信号スキャン処理、ステップS18の制御CH位置合わせ処理、ステップS19の基本ずれ量測定処理を実行した後、同期先の無線基地局と自局とのフレーム同期を確立するものである。
無線側CPU29は、ステップS19の基本ずれ量測定処理を実行した後、自局の制御CH信号送出位置の棲み分け開始待合わせ処理を実行する(ステップS20)。尚、この棲み分け開始待合わせ処理は、自局の制御CH信号の送出位置を決定する棲み分け制御の開始タイミングを時間的にずらし、その後に、他の無線基地局の制御CH信号の送出位置と重なり合わないように、自局の制御CH信号の送出位置を最適な送出位置に決定する処理である。
無線側CPU29は、ステップS20にて棲み分け開始待合わせ処理が完了すると、無線同期制御に関する全ての処理を完了し、同期運用状態を保持する為に、同期先の無線基地局の監視及び同期タイミングずれの補正処理を継続しながら、無線同期モードでのサービス運用を開始する(ステップS21)。
また、無線側CPU29は、ステップS13にて動作モードが自走モード“00”であると判定されると、他の無線基地局と電波が重ならない単独配置等の無線同期制御を行わない自走モードサービスによる運用を開始する(ステップS22)。尚、自走モードサービスでは、他の無線基地局との同期をとることなく、自局の任意の電波タイミングで自局の制御CH信号の送出位置を決定すべく、棲み分け制御処理を実行することで、自走モードでのサービス運用を開始するものである。
また、無線側CPU29は、無線同期失敗によるステップS17の自走モードサービス中に、現在時刻が図5に示す同期リトライ制御実施時刻になると、保守機能である同期リトライ制御処理を実行する(ステップS23)。尚、この同期リトライ制御処理は、内部ID−ROMに設定された同期リトライ制御実施時刻に、自律的に機器をリセットし、再起動をかけることで、再度、無線同期制御処理を実行するものである。
無線側CPU29は、ステップS23にて同期リトライ制御処理を実行することで再起動をかけた後、再度、無線同期制御処理を実行すべく、ステップS12に移行する。
また、ステップS23の無線同期リトライ制御処理は、ステップS17の自走モードサービス中だけでなく、ステップS21にて無線同期モードでのサービス運用開始後に、同期先の無線基地局の故障や外来の電波干渉等の要因により同期はずれが発生してステップS17の自走モードサービスに移行した場合であっても、現在時刻が前述した同期リトライ制御実施時刻になると、この同期リトライ制御処理を起動するものである。
では、次に図6の無線同期制御処理におけるステップS14の制御CH信号スキャン処理について説明する。図8はIP接続型無線基地局10の同制御CH信号スキャン処理に関わる処理動作を示すフローチャートである。
図8において無線側CPU29は、設定した制御CH信号用周波数に対する最大受信レベルを初期化し(ステップS31)、制御CH信号の最大受信回数をRCR規格で規定の制御CH送出周期(N=25〜60)内で任意の値Nに設定した後(ステップS32)、Nインターバル範囲内で制御CH信号の受信動作を開始する(ステップS33)。
無線側CPU29は、受信した制御CH信号の呼出符号が、図4に示す無線同期条件に関わる自局の呼出符号と一致しているか否かを判定する(ステップS34)。尚、制御CH信号の呼出符号は、Nインターバルで周期的に報知される制御CH信号に含まれる制御情報(以下、単に制御CH情報と称する)で取得するものである。
無線側CPU29は、呼出符号が一致したと判定されると、受信した制御CH信号の受信レベルが、図4に示す無線同期条件に関わる受信レベル規定の閾値レベル以上であるか否かを判定する(ステップS35)。尚、制御CH信号の受信レベルは、Nインターバルで周期的に報知される制御CH情報で取得するものである。
無線側CPU29は、受信レベルが閾値レベル以上であると判定されると、受信した制御CH信号に関わる無線基地局の付加IDが、図4に示す無線同期条件に関わる自局の付加IDよりも若い番号であるか否かを判定する(ステップS36)。尚、制御CH信号に関わる無線基地局の付加IDは、Nインターバルで周期的に報知される制御CH情報で取得するものである。
無線側CPU29は、この受信した制御CH信号の付加IDが自局よりも若い番号であると判定されると、同制御CH信号は図4に示す無線同期条件を全て満たすものと判断し、この制御CH信号を同期先候補の無線基地局の制御CH信号と判断するものである。
さらに、無線側CPU29は、この検出した同期先候補の無線基地局と自局とのフレーム単位でのタイミングを合わせこむ補正処理を行う(ステップS37)。尚、この補正処理は、制御CH信号を受信する度に順次ずれ量を補正するものである。無線側CPU29は、Nインターバルで周期的に報知される制御CH情報で、絶対スロット位置情報を受信したか否かを判定する(ステップS38)。尚、絶対スロット位置情報は、同期先候補の無線基地局のTDMA−TDDフレームにおける、制御CH信号の送出スロット位置であり、この絶対スロット位置情報はNインターバル毎に送出される全ての制御CH情報要素の構成単位であるスーパーフレームで無線チャネル情報として報知されるものである。
無線側CPU29は、絶対スロット位置情報を受信したのであれば、同期先候補の無線基地局の制御CH信号の送出位置をスロット単位で認識し、同期先候補の無線基地局の付加ID、受信レベル及び制御CH信号の送出位置を無線機能メモリ部28に記憶する(ステップS39)。
さらに、無線側CPU29は、このスキャンタイミングでの制御CH信号の受信が成功したものと判断し、これ以上規定のインターバル範囲での制御CH信号の不要な受信動作を避けるべく、受信回数を強制的に最大受信回数に更新する(ステップS40)。
無線側CPU29は、受信回数が最大受信回数に到達したか否かを判定する(ステップS41)。無線側CPU29は、受信回数が最大受信回数に到達したのであれば、1スロット当り240ビットの中で、10ビット分タイミングを遅らせる方向にシフトし(ステップS42)、この制御CH信号が割り当てられたスロットの全240ビット分のタイミングの検索が完了したか否かを判定する(ステップS43)。
尚、ステップS42の10ビット分タイミングを遅らせる方向にシフトする処理は、機器のハードウェア性能による1回の処理でスキャン可能なビット幅により規定されており、設定されている制御CH信号の送出位置のインターバル値Nについて、該10ビット間隔で制御CH信号が割り当てられているスロットの全240ビット分のタイミングを検索完了するまで、繰り返し、制御CH信号のスキャン処理を実行すべく、ステップS32に移行する。
無線側CPU29は、ステップS43にてNインターバルについて、全240ビットの検索が完了したのであれば、ステップS42の10ビット分タイミングシフトで制御CH信号の送出位置をスロット単位、しかもビット単位で認識し、この制御CH信号の正確な送出位置をステップS39にて記憶している。
従って、無線側CPU29は、ステップS43にて全240ビットの検索が完了したのであれば、同期先候補の無線基地局の制御CH信号の送出位置をNインターバルの全範囲でスキャン完了したものと判断し、検索開始位置まで240ビット分タイミングを進めることで(ステップS44)、元の位置に戻し、一連の制御CH信号スキャン処理によって、制御CH信号受信に成功し同期先候補の無線基地局を検出したか否かを判定する(ステップS45)。
無線側CPU29は、同期先候補の無線基地局を検出し、その制御CH信号の絶対スロット位置を受信成功したのであれば、同期位置検出完了として制御CH受信処理データ(呼出符号、受信レベル、受信タイミングずれ量)を上位チャネルタスクへ通知し(ステップS46)、図6のステップS19の制御CH位置合わせ処理に移行する(ステップS47)。
また、無線側CPU29は、ステップS38にて無線同期条件を満たしているにも拘わらず、絶対スロット位置情報を受信していないと判定されると、絶対スロット位置情報の受信監視を継続すべく、最大受信回数を延長し(ステップS48)、ステップS34、ステップS35やステップS36の無線同期条件を満たさない場合と同様に、受信回数のカウンタを+1インクリメントした後(ステップS49)、受信回数が最大受信回数に到達したか否かを判断すべく、ステップS41に移行する。
無線側CPU29は、ステップS41にて受信回数が最大受信回数に到達したのでなければ、再度、無線同期条件を満たす制御CH信号を検出すべく、ステップS33に移行する。
また、無線側CPU29は、ステップS45にて同期先候補の無線基地局を検出したのでなければ、制御用ソフトウェアが持っているTx分のガードタイム(検出実行時間)を経過したか否かを判定する(ステップS50)。
無線側CPU29は、Tx分のガードタイム(検出実行時間)を経過したのであれば、同期位置検出失敗を上位チャネルタスクへ通知することで(ステップS51)、強制的に図6のステップS17の自走モードサービスで運用することになる(ステップS52)。
また、無線側CPU29は、ステップS50にてTx分のガードタイムを経過したのでなければ、制御CHモードが“3”であるか否かを判定する(ステップS53)。尚、制御CHモードについては、12CHと18CHの二つの周波数に割り当てられた制御CH信号を双方使用している場合の設定を“3”とし、12CHの制御CH信号のみ使用している場合を“1”、18CHの制御CH信号のみ使用している場合を“2”として設定するものである。
無線側CPU29は、制御CHモードが“3”であると判定されると、二つの周波数の内、制御CH信号をスキャン未実施の周波数に切替え(ステップS54)、このスキャン未実施の周波数の制御CH信号を受信すべく、ステップS32に移行する。
また、無線側CPU29は、ステップS53にて制御CHモードが“3”でないと判定されると、Tx分が経過するまで再度、同じ制御CH信号を受信すべく、ステップS32に移行する。
図8に示す制御CH信号スキャン処理によれば、インターバル範囲内で、無線同期条件を満たした同期先候補の無線基地局に関わる制御CH信号の正確な送出位置をスロット単位だけでなく、ビット単位で検出することができる。
次に図6の無線同期制御処理におけるステップS18の制御CH位置合わせ処理について説明する。図9はIP接続型無線基地局10の制御CH位置合わせ処理に関わる処理動作を示すフローチャートである。
図9において無線側CPU29は、リトライカウンタを初期化した後(ステップS61)、上位チャネルタスクより指示された、同期先無線基地局の制御CH信号用周波数を設定する(ステップS62)。
無線側CPU29は、図8の制御CH信号スキャン処理から同制御CH位置合わせ処理に移行するまでの時間経過による同期先無線基地局の制御CH信号の送出タイミングのずれによる位置合わせ処理の失敗を回避すべく、同期先無線基地局の制御CH信号の送出位置の1スロット先まで自局タイミングをシフトさせる(ステップS63)。
さらに無線側CPU29は、同期先無線基地局の制御CH信号の受信動作を実行し(ステップS64)、この制御CH信号の受信に成功したか否かを判定する(ステップS65)。尚、制御CH信号の受信開始当初は、同期先よりも、ステップS63にて1スロット先に自局タイミングをシフトしているため、同期先無線基地局の制御CH信号は受信できないことになる。
無線側CPU29は、ステップS65にて制御CH信号の受信に成功したのでなければ、同期先無線基地局の制御CH信号の送出位置に自局タイミングが合うように、受信タイミングを10ビットずつ遅らせる方向にシフトし(ステップS66)、シフト毎にリトライカウンタを+1インクリメントする(ステップS67)。
無線側CPU29は、リトライカウンタが1スロット(240ビット)分のタイミングシフトを超える回数(25回)になったか否か、すなわちリトライオーバーしたか否かを判定する(ステップS68)。
無線側CPU29は、リトライオーバーをしたのであれば、同期先無線基地局の電波が何らかの要因で受信することができず、同期不可能であると判断し、強制的に機器をリセットして再起動をかけることで(ステップS69)、再度、同期先無線基地局の制御CH信号を受信すべく、本処理上はステップS64に移行する。この時、機器がリセットされている為ソフトウェア全体の処理としては、図6に示すステップS11の無線基地局電源ONから再開することになる。また、ステップS68にてリトライオーバーをしたのでなければ、同期先無線基地局の制御CH信号を受信すべく、ステップS64に移行する。
無線側CPU29は、ステップS65にて制御CH信号の受信に成功したのであれば、同期先無線基地局と自局の制御CH信号の送出位置が一致したものと判断し、送出タイミングのビット単位のずれ量を補正することで(ステップS70)、同期先無線基地局と自局とを同期状態として完全にロックする。
さらに無線側CPU29は、リトライカウンタ、測定回数カウンタ、ずれ量累積カウンタを初期化し(ステップS71,72,73)、図6のステップS19に示す基本ずれ量測定処理に移行する(ステップS74)。
図9に示す制御CH位置合わせ処理によれば、同期先無線基地局の制御CH信号の送出位置に自局の制御CH信号の送出位置のタイミングをビット単位で合わせるようにしたので、同期先無線基地局と自局とを同期状態にすることができる。
次に図6の無線同期制御処理におけるステップS19の基本ずれ量測定処理について説明する。図10はIP接続型無線基地局10の基本ずれ量測定処理に関わる処理動作を示すフローチャートである。
無線同期において、TDMA−TDDフレームにおける時間的に許容されるずれ幅は、52.1μS以内であるが、この許容差は本来、無線機器のハードウェアで電波送出、停止に対する過渡応答時間を吸収するものであり、40μs程度はハードウェア誤差として考慮する必要がある為、本無線同期ソフト制御に割当て可能な許容誤差範囲は、52.1μsからハードウェア誤差40μsを差し引いた12μs程度でありビットに換算すると5ビットである。
図10に示す基本ずれ量測定処理とは、ビットマージン5ビットの許容誤差範囲で同期状態を保持するために、実運用開始後に周期的に同期先無線基地局のタイミング監視及び補正処理を行う為の、基本ずれ量mデータを取得するものである。
図10において無線側CPU29は、図9のステップS72にて初期化した測定回数カウンタを+1インクリメントした後(ステップS81)、再度、同期先無線基地局の制御CH信号の受信動作を実行し、この同期先無線基地局の制御CH信号の受信に成功したか否かを判定する(ステップS82)。
無線側CPU29は、制御CH信号の受信に成功したのであれば、リトライカウンタをクリアし(ステップS83)、この受信情報に基づいて同期先無線基地局と自局のTDMA−TDDフレームタイミングのずれ量をビット単位で補正する(ステップS84)。
さらに無線側CPU29は、この受信情報に基づくタイミングのずれ量を、ずれ量累積カウンタに積算し(ステップS85)、30秒間を経過したか否かを判定する(ステップS86)。
尚、一連の処理は、実運用開始において、いたずらに起動時間を要することなく、通常のサービス機能を動作させながら、該サービス機能に与える通話品質上の影響を最小とし、且つ無線同期状態を安定的に継続させる為に必要な基本ずれ量のデータを取得する上で最適な30秒間の間、繰り返し実行されるものである。
無線側CPU29は、ステップS86にて30秒間を経過したのであれば、ずれ量累積カウンタの積算値にT/30(図7に示す監視周期T秒)をかけることで、次回以降の補正処理周期であるT秒に相当する基本ずれ量mを算出し(ステップS87)、測定回数カウンタ及びずれ量累積カウンタを初期化する(ステップS88)。尚、ステップS87の基本ずれ量mは、後述する図14の基本ずれ量予測・補正処理の基本データとして使用されるものである。
その後、無線側CPU29は、機器の実運用と平行して同期先無線基地局とのTDMA−TDDフレームの同期タイミングを監視するため、図7に示すように、同期先無線基地局の制御CH信号の受信間隔を実運用開始後の初回監視周期であるt1秒に設定した上で(ステップS89)、自局のハードウェアに対して電波受信モードを同期先の無線基地局の制御CH信号の全受信モードから通常受信モードへ設定変更した後(ステップS90)、上位チャネルタスクに無線同期制御完了を通知することで(ステップS91)、図6に示すステップS20の棲み分け開始待合わせ処理に移行する(ステップS92)。
また、無線側CPU29は、ステップS82にて制御CH信号の受信を成功したのでなければ、リトライカウンタを+1インクリメントし(ステップS93)、リトライカウンタが最大値に到達したか否かを判定する(ステップS94)。
無線側CPU29は、リトライカウンタが最大値に到達したのでなければ、制御CH信号の受信動作を実行すべく、ステップS81に移行する。無線側CPU29は、ステップS94にてリトライカウンタが最大値に到達したのであれば、同期先無線基地局の電波受信が失敗であると判断し、自局の機器をリセットし、再起動を実行する(ステップS95)。
図10に示す基本ずれ量測定処理によれば、同期先候補の無線基地局と自局の制御CH信号の送出位置を合わせた後、規定周期毎に同期先の制御CH信号との時間的なずれ量を測定し、ビット単位の基本ずれ量データとしてタイミング調整テーブルに保持することができる。
次に図6の無線同期制御処理におけるステップS20の棲み分け開始待合わせ処理について説明する。図11はIP接続型無線基地局10の棲み分け開始待ち合わせ処理に関わる処理動作を示すフローチャートである。
図11に示す棲み分け開始待合わせ処理とは、自局の制御CH信号の送出位置を決定する棲み分け制御の開始タイミングを時間的にずらし、その後に、他の無線基地局の制御CH信号の送出位置と重なり合わないように、自局の制御CH信号の送出位置を最適な送出位置に決定する処理である。
図11に示す無線側CPU29は、下位プログラムからの同期制御完了通知を受信した後(ステップS101)、図5で説明した内蔵ID−ROMのアドレス“106”に設定されている該棲み分け開始待合せタイミンング時間のパラメータとなる自局付加IDの下位有効ビット桁数(最大8ビット)を格納し(ステップS102)、自局付加IDの下位有効ビット桁数と該ID−ROMのアドレス“105”に設定されている基準タイマ時間とを乗算することで、棲み分け制御の開始タイマ時間を算出する(ステップS103)。尚、開始タイマ時間は、例えば基準タイマ時間が“30秒”、下位有効ビット桁数が4の場合、自局の付加IDが“02”の場合、下位有効ビット値は“2”となり、30秒×2を演算することで60秒ということになる。
無線側CPU29は、この算出した開始タイマ時間が“0”であるか否かを判定する(ステップS104)。無線側CPU29は、開始タイマ時間が“0”であると判定されると、棲み分け開始待合わせ時間はなしと判断し、直ちに自局の制御CH信号の送出位置をインターバル範囲内で決定する棲み分け制御動作を開始し(ステップS105)、インターバル範囲内で他のIP接続型無線基地局10と重なり合わないように自局の制御CH信号の送出位置を決定した後、図6のステップS21に示す無線同期モードでのサービス運用を開始する(ステップS106)。
また、無線側CPU29は、ステップS104にて開始タイマ時間が“0”でないと判定されると、この開始タイマ時間を起動し(ステップS106)、この開始タイマ時間がタイムアウトすると(ステップS107)、自局の制御CH信号の送出位置の棲み分け制御動作を開始すべく、ステップS105に移行する。
図11に示す棲み分け開始待合わせ処理によれば、基準となる無線基地局との無線区間での同期を確立した後、自局の付加IDの下位有効ビット数と基準タイマ時間とを乗算することで開始タイマ時間を算出し、この開始タイマ時間を起動して開始タイマ時間経過後に、自局の制御CH信号の送出位置を決定する棲み分け制御の処理動作を実行するようにしたので、棲み分け制御の開始タイミングを時間的にずらすことで、他の無線基地局と同時に制御CH信号の送出位置を決定する棲み分け制御を行い、個々の送出位置が重なり合う位置に決定してしまうような事態を回避し、ひいては、円滑な棲み分け制御を提供することができる。
次に図6の無線同期制御処理におけるステップS21の無線同期モードサービス処理内の状態監視・補正制御処理について説明する。図12はIP接続型無線基地局10の状態監視・補正制御処理に関わる処理動作を示すフローチャートである。
図12に示す状態監視・補正制御処理とは、同期モードサービス運用での無線同期状態を維持するために、図7に示すように、同期先無線基地局のTDMA−TDDフレームの1サイクル分の監視周期(T秒)に対応した同期タイミングを、設定されたスキャン周期t1(又はt2)秒毎にスキャンして、このスキャン周期t1(又はt2)毎に得た同期先無線基地局のフレームタイミングとのビット単位のずれ量を補正すると共に、スキャン周期t1(又はt2)のスキャン結果に基づいて、1サイクル分の監視周期(T秒)に対応した基本ずれ量mの更新値を得ることができる処理である。尚、この基本ずれ量mの更新値は、後述する図14のずれ量の予測・補正処理のずれ量カウンタの積算値に対する基本データとなる。
図12に示す無線側CPU29は、同期モードサービス運用中に(ステップS111)、測定回数カウンタを+1インクリメントした後(ステップS112)、同期先無線基地局の制御CH信号への受信動作を実行し、この制御CH信号の受信に成功したか否かを判定する(ステップS113)。
無線側CPU29は、制御CH信号の受信に成功したのであれば、同期先無線基地局の制御CH信号と自局の制御CH信号とのずれ量を継続監視用ずれ量累積カウンタに積算する(ステップS114)。
無線側CPU29は、同期先無線基地局の制御CH信号と自局の制御CH信号との間に、±3ビット以上のビットずれが発生したか否かを判定する(ステップS115)。無線側CPU29は、±3ビット以上のビットずれが発生したと判定されると、ビットずれ量を補正する(ステップS116)。尚、ステップS115にて±3ビット未満のビットずれを許容した理由は、後述する図14の基本ずれ量予測・補正処理にてスロット毎の割り込みで±1ビットの範囲で逐次予測補正を実施するからである。
無線側CPU29は、ビットずれ量を補正すると、1サイクル分の監視周期T(秒)に対する測定回数が規定回数(T/t1)以上であるか否かを判定する(ステップS117)。無線側CPU29は、測定回数が規定回数(T/t1)以上であると判定されると、測定回数が規定回数(T/t1)であるか否かを判定する(ステップS118)。
無線側CPU29は、測定回数が規定回数T/t1であると判定されると、図7に示す1サイクル分の監視周期T秒に対応する全データ量(1000T/5)を、図10のステップS87で算出した基本ずれ量mと今回測定によるずれ量累積カウンタの積算値との和で割って基本ずれ量mの更新値を算出する(ステップS119)。
無線側CPU29は、ステップS119の演算結果に基づいて現在のタイミング調整テーブルに保持している基本ずれ量mを更新するものである。
さらに、無線側CPU29は、基本ずれ量mの更新値を算出した後、同期先無線基地局の制御CH信号の受信間隔を、図7に示すように、1サイクル目のスキャン周期t1秒から、監視周期が長くなる、2サイクル目以降のスキャン周期t2秒(=t1×10秒)に設定変更する(ステップS120)。
尚、スキャン周期をt1秒からt2秒に設定変更する理由は2つある。まず、第1に、スキャンする5msという瞬間的な時間でも、同期監視だけのために全受信モードにする為、その間は無線区間での通信エラーとなる。このエラー率を最小限に留め、通常サービスの音声通話品質の劣化を防止する点にある。さらに、第2点は、2サイクル目以降の監視では、既に基本ずれ量測定処理(図10参照)や1サイクル目の処理が成功しているため、無線同期状態を継続保持するために信頼できる基本ずれ量mのデータが獲得できていると判断できる点にある。
無線側CPU29は、ステップS120にて監視周期t2秒に設定変更すると、測定回数カウンタ及び継続監視用のずれ量累積カウンタを初期化した後(ステップS121)、次サイクル以降の監視動作に移行することになる(ステップS122)。
また、無線側CPU29は、ステップS113にて制御CH信号の受信に成功したのでなければ、リトライカウンタを+1インクリメントし(ステップS123)、リトライカウンタがリトライオーバーしたか否かを判定する(ステップS124)。
無線側CPU29は、リトライカウンタがリトライオーバーしたと判定されると、受信間隔(スキャン周期)を通話品質に影響を与えないt2秒に強制的に設定した後(ステップS125)、無線同期失敗として同期はずれ状態の自走モードサービス運用となる(ステップS126)。
また、無線側CPU29は、ステップS122にて次のサイクル目の監視動作に移行すると、ステップS111の処理動作に移行する。尚、この際、ステップS117及びステップS118の測定回数に対する規定回数はT/t1ではなく、T/t2ということになる。(t1秒は、1サイクル目の監視にのみ適用する)。
図12に示す状態監視・補正制御処理によれば、同期先無線基地局のTDMA−TDDフレームの1サイクル分の監視周期(T秒)に対応した同期タイミングを、設定されたスキャン周期t1(又はt2)秒毎にスキャンして、このスキャン周期t1(又はt2)毎に得た同期先無線基地局のフレームタイミングとのビットずれ量を補正すると共に、スキャン周期t1(又はt2)の監視結果に基づいて、1サイクル分の監視周期(T秒)に対応した基本ずれ量mの更新値を得るようにしたので、同期モードサービス運用での無線同期状態を安定して維持することができる。
次に図6の無線同期制御処理におけるステップS23の無線同期リトライ制御処理について説明する。図13はIP接続型無線基地局10の無線同期リトライ制御処理に関わる処理動作を示すフローチャートである。
図13に示す無線同期リトライ制御処理とは、同期先無線基地局の故障やリセット、或いは他の無線機器による電波干渉等で無線同期状態の保持が不可能となり、同期外れとなった場合に、現在時刻がリトライ制御実施時刻となると、所定条件に応じて、無線同期のリトライ動作を実行する処理である。
図13に示す無線側CPU29は、任意のY秒周期での割り込み監視処理を実行すると(ステップS131)、図5に示す内蔵ID−ROMのアドレス“29”に設定されている動作モード設定が同期モードであるか否かを判定する(ステップS132)。
無線側CPU29は、動作モード設定が同期モードであると判定されると、図5に示す内蔵ID−ROMのアドレス“30”に設定されている同期リトライ制御実施時刻が0〜23以外であるか否かを判定する(ステップS132A)。
無線側CPU29は、同期リトライ制御実施時刻が0〜23以外でないと判定されると、現在時刻がID−ROMのアドレス“30”に設定されている同期リトライ制御実施時刻であるか否かを判定する(ステップS133)。
無線側CPU29は、現在時刻が同期リトライ制御実施時刻であると判定されると、現在、自局が同期モードでの運用状態を保持しているか否かを判定する(ステップS134)。
無線側CPU29は、現在、自局が同期モードでの運用状態を保持していないと判定されると、同期外れにより自走モードになっていた場合には、リセット実施による使用中の音声CHの強制的な切断を未然に防止する為に全音声CHが空き状態であるか否かを判定する(ステップS135)。
無線側CPU29は、全音声CHが空き状態であると判定されると、リセット動作を繰り返してむやみにサービス運用を停止させるような不具合を防止するために、同日に同リトライ動作が既に実施されていることを示すリセット実施済みフラグがONであるか否かを判定する(ステップS136)。
無線側CPU29は、リセット実施済みフラグがONでないと判定されると、同日に同リトライ動作が実施されていないものと判断し、リセット実施済みフラグをONにして(ステップS137)、無線同期リトライ動作によるリセット動作を実行し(ステップS138)、この処理動作を終了する。
無線側CPU29は、ステップS132にて同期モードでないと判定されると、又はステップS132Aにて同期リトライ制御実施時刻が0〜23以外であると判定されると、又はステップS134にて同期運用中であると判定されると、又はステップS135にて全音声CHが空き状態でないと判定されると、無線同期リトライ動作によるリセット動作を実行することなく、この処理動作を終了する。
無線側CPU29は、ステップS136にてリセット実施済みフラグがONであると判定されると、同日に同無線同期リトライ動作が行われたものと判断し、この無線同期リトライ動作によるリセット動作を実行することなく、この処理動作を終了する。
無線側CPU29は、ステップS133にて現在時刻が同期リトライ制御実施時刻でないと判定されると、リセット実施済みフラグをOFFに設定し(ステップS139)、この処理動作を終了する。
図13に示す無線同期リトライ制御処理によれば、同期外れ中に、現在時刻がリトライ制御実施時刻となると、ステップS132、132A、133、134、135、136の全ての条件が整うと、強制的に機器のリセットを実行し、再度、無線同期制御の処理動作を実行させることで、自律的に同期モードに復旧し、システムの安定動作を保証することができる。
図14はIP接続型無線基地局10の同期タイミングの基本ずれ量予測・補正処理に関わる処理動作を示すフローチャートである。
図14に示す基本ずれ量予測・補正処理は、内蔵ファームウェアによるサブルーチンプログラムで割込処理により常時行われ、次回監視周期に対する自局と同期先無線基地局のTDMA−TDDフレームタイミングのずれを、基本ずれ量mに基づいて、ずれ量累積カウンタに積算された値より、ハードウェアのTDMA−TDD処理部26内蔵のフレーム補正用レジスタに結果をフィードバックして、タイミングのずれを±1ビットの範囲で予測補正するためのサブルーチン処理である。
図14において無線側CPU29は、TDMA−TDDフレームのスロット毎に割込み処理が発生し(ステップS141)、ずれ量累積カウンタの値が0以外であるか否かを判定する(ステップS142)。
無線側CPU29は、ずれ量累積カウンタの値が0以外であると判定されると、補正制御が必要であると判断し、タイミング補正用カウンタを+1インクリメントした後(ステップS143)、このタイミング補正用カウンタが1ビットずれのフレーム数に到達したか否かを判定する(ステップS144)。
無線側CPU29は、タイミング補正用カウンタが1ビットずれのフレーム数に到達したものと判断されると、ずれ量累積カウンタの値が0以上であるか否かを判定する(ステップS145)。
無線側CPU29は、ずれ量累積カウンタの値が0以上であると判定されると、プラス方向のずれであると判断し、ハードウェアのTDMA−TDD処理部26内蔵のフレーム補正用レジスタに1を加算する(ステップS146)。
無線側CPU29は、フレーム補正用レジスタに1を加算すると、自局のフレーム幅を算出した予測ずれ量に基づいてタイミングずれが発生した時点でのスロットにおいてビット単位で補正し、この補正処理完了後、タイミング補正用カウンタをクリアにすることで(ステップS147)、この処理動作を終了する。
また、無線側CPU29は、ステップS145にてずれ量累積カウンタの値が0以上でないと判定されると、マイナス方向のずれであると判断し、フレーム補正用レジスタから1を減算し(ステップS148)、自局のフレーム幅を算出した予測ずれ量に基づいてタイミングずれが発生した時点でのスロットにおいてビット単位で補正し、この補正処理完了後、タイミング補正用カウンタをクリアすべく、ステップS147に移行する。
図14に示す基本ずれ量予測・補正処理によれば、割込処理により常時行われ、次回監視周期に対する自局と同期先無線基地局のTDMA−TDDフレームタイミングのずれを、基本ずれ量mに基づいて、ずれ量累積カウンタに積算された値より、ハードウェアのTDMA−TDD処理部26内蔵のフレーム補正用レジスタに結果をフィードバックして、タイミングのずれを±1ビットの範囲で予測補正することができる。
本実施の形態によれば、自局が同期モードであると判定されると、自局以外の複数の無線基地局の内、選択したフレーム同期の基準となる無線基地局から制御CH信号を含むフレーム信号を受信し、このフレーム信号内の制御CH信号の送出位置に、前記自局のフレーム信号の送出タイミングを合わせ、自局と基準となる無線基地局との無線区間でのフレーム同期を確立するようにしたので、例えばISDN回線3を通じて構内交換機4と接続する一般型無線基地局1、LAN回線6を通じて接続する構内交換機4に接続するIP接続型無線基地局10、ディジタルコードレス親機2等の異なる種別の無線基地局同士であっても無線区間でフレーム同期を確立し、同期確立後の制御CH信号の送信位置を決定する棲み分け制御を同期制御による起動の時間差を吸収する待ち合わせタイミングにおいて実施することで、電波の効率的な有効利用を確保すると共に、無線基地局同士の電波干渉を防止でき、サービス品質の大幅向上を図ることができる。
本実施の形態によれば、図8の制御CH信号スキャン処理に示すように、自局以外の無線基地局から制御CH信号を含むフレーム信号を受信すると、このフレーム信号に含まれる制御情報に基づいて、このフレーム信号を送出した無線基地局の呼出符号、受信レベル及び付加IDを検出し、無線基地局及び自局の呼出符号が一致し、無線基地局及び自局間の受信レベルが閾値レベル以上で、かつ、無線基地局及び自局の付加IDの比較に基づいて、この無線基地局が自局の無線同期に対する基準となる条件を満足すると判定されると、この無線基地局を、前記基準となる無線基地局に決定するようにしたので、システム全体で各無線基地局が、最適な無線基地局を基準となる無線基地局にすることができる。
本実施の形態によれば、図13の無線同期リトライ制御処理に示すように、自局と基準となる無線基地局との無線区間での同期状態を保持することができなくなっても、現在時刻が同期リトライ制御実施時刻となると、自局と基準となる無線基地局との無線区間での同期を再度確立するための無線同期処理を実行するようにしたので、自局と無線基地局との同期状態を自律的に復旧することができる。
本実施の形態によれば、図8の制御CH信号スキャン処理に示すように、自局が同期モードであると判定されると、検出実行時間Txを計時するタイマを起動し、この検出実行時間Tx以内に、自局と前記基準となる無線基地局との無線区間での同期を確立することができない場合には、自局の任意の送出タイミングでフレーム信号の電波を出力する、自走モードでの運用を開始するようにしたので、基準となる無線基地局と自局との無線区間での同期が確立できなくて、サービス運用を開始することができないような事態を確実に回避することができる。
本実施の形態によれば、自局の任意の送出タイミングでフレーム信号の電波を出力する自走モード及び、自局と前記基準となる無線基地局との無線区間での同期を確立した後にフレーム信号の電波を出力する同期モードを含む無線基地局の動作モードを有し、構内交換機4の制御装置に接続した保守端末からの所定操作に応じて、各無線基地局の動作モードを任意に設定変更可能としたので、システム運用後に無線基地局の動作モードの設定に変更の必要性が生じたとしても、このような設定変更に十分対処することができる。
本実施の形態によれば、図11の棲み分け開始待合わせ処理に示すように、基準となる無線基地局との無線区間での同期を確立した後、自局の付加ID(最大8ビット)の下位有効ビット数と基準タイマ時間とを乗算することで開始タイマ時間を算出し、この開始タイマ時間を起動して開始タイマ時間経過後に、自局の制御CH信号の送出位置を決定する棲み分け制御の処理動作を実行するようにしたので、棲み分け制御の開始タイミングを時間的にずらすことで、複数の無線基地局が一斉に制御CH信号の送出位置を決定する棲み分け制御を行うような事態を回避し、ひいては、円滑な棲み分け制御を提供することができる。
尚、上記実施の形態においては、基準局を一般型無線基地局1とし、この基準局に無線同期する無線基地局をIP接続型無線基地局10Aとする実施の形態について説明したが、例えば基準局に同期する無線基地局をディジタルコードレス親機2にしても、同様の効果が得られることは言うまでもない。
また、上記実施の形態においては、無線基地局(一般型無線基地局1、IP接続型無線基地局10及びディジタルコードレス親機2)毎に運用中の動作モードや付加ID等の設定情報やステータス情報等が設定され、図15に示すように様々な確認手段で無線基地局の設定情報やステータス情報等を識別できるようにしても良い。
例えば構内交換機4の制御装置に各無線基地局の運用中の動作モードや付加IDが一括管理され、この制御装置のシリアルポートに接続した保守端末からの保守コマンドが投入されると、保守端末では、特定の無線基地局の動作モードや、例えば起動中、自走モード中、同期モード中、閉塞中、障害又は電源OFF中等のステータス情報、同期先無線基地局の付加IDや、その運用中の制御CH情報等を画面表示するようにしても良い。尚、LAN回線に接続されたPC端末からでも、指定操作に応じて、特定の無線基地局の設定情報やステータス情報等の様々な情報を画面表示させるようにしても良い。
また、IP接続型無線基地局10の情報報知部27では、LEDランプとLCD表示部とを有し、例えばLEDランプの表示内容で同無線基地局の運用中の動作モード、例えば青色で同期運用中、緑色で自走運用中、赤色で閉塞中を報知し、LCD表示部で同期先無線基地局の付加IDや自局の運用モード等を報知するようにしても良い。